説明

ポリイミド樹脂積層体の製造方法及び金属張積層板の製造方法

【課題】金属層との高い接着性を付与し、且つポリイミドエッチング形状を優れるものとすることができるなどの特長を有する接着性層を有するポリイミド樹脂層の製造方法を提供する。
【解決手段】次の工程、I)ポリアミド酸の溶液を塗布、乾燥して、線熱膨張係数が1〜30(×10-6/K)の低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)となる層を形成する工程、II)非熱可塑性ポリイミド樹脂(A)の前駆体樹脂(A')及び熱可塑性ポリイミド樹脂(B)の前駆体樹脂(B')を含み、A'/(A'+B')が0.30〜0.85である混合溶液を塗布、乾燥して、厚みが0.1〜3.0μmの範囲にある接着性層(Y)となる層を形成する工程、並びにIII)イミド化して、ポリイミド樹脂層(X)及び接着性層(Y)を形成する工程を備え、任意の順で工程I)、II)を行った後、工程III)を行うことにより接着性層を有するポリイミド樹脂積層体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性層を有する膜状又は層状のポリイミド樹脂積層体及びその表面に金属層が積層する金属張積層板の製造方法に関する。この金属張積層板は、プリント配線板用に適する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の電子回路には、絶縁材と導電材からなる積層板を回路加工したプリント配線板が使用されている。プリント配線板は、絶縁基板の表面(及び内部)に、電気設計に基づく導体パターンを、導電性材料で形成固着したものであり、基材となる絶縁樹脂の種類によって、板状のリジットプリント配線板と、柔軟性に富んだフレキシブルプリント配線板とに大別される。フレキシブルプリント配線板は、可撓性を持つことが特徴であり、常時屈曲を繰り返すような可動部では接続用必需部品となっている。また、フレキシブルプリント配線板は、電子機器内で折り曲げた状態で収納することも可能であるために、省スペース配線材料としても用いられる。フレキシブルプリント配線板の材料となるフレキシブル基板は、基材となる絶縁樹脂にはポリイミドエステルやポリイミド樹脂が多く用いられているが、使用量としては耐熱性のあるポリイミド樹脂が圧倒的に多い。一方、導電材には導電性の点から一般に銅箔が用いられている。
【0003】
フレキシブル基板は、その構造から3層フレキシブル基板と、2層フレキシブル基板があり、銅箔層等の導電材層とポリイミド樹脂層等の絶縁材層を有する金属張積層板である。3層フレキシブル基板は、ポリイミドなどのベースフィルムと銅箔をエポキシ樹脂やアクリル樹脂などの接着剤で貼り合わせて、ベースフィルム層(絶縁樹脂層の主層)、接着剤層、銅箔層の3層で構成される。一方、2層フレキシブル基板は特殊工法を採用して、接着剤を使用せずに、ベースフィルム層、銅箔層の2層で構成される積層板である。2層フレキシブル基板は、エポキシ樹脂やアクリル樹脂などの耐熱性の低い接着剤層を含まないので、信頼性が高く、回路全体の薄膜化が可能でありその使用量が増加している。一方、別の観点からすると、フレキシブル基板のベースフィルム層は、熱膨張係数が低いことがカールの発生を防止するために望まれているが、熱膨張係数が低いポリイミド樹脂は接着性が劣るため、接着剤を使用せずに全部をポリイミド樹脂とする場合は、良接着性のポリイミド樹脂層を接着面側に接着性付与層として設けることが必要であった。また、両面に銅箔層を有するフレキシブル基板も知られており、片面に銅箔層を有する片面フレキシブル基板を製造したのち、2枚のフレキシブル基板を重ね合わせて積層する方法又は片面フレキシブル基板に銅箔を重ね合わせて積層する方法などが知られている。
【0004】
近年、電子機器における高性能化、高機能化の要求が高まっており、それに伴って電子デバイスに使用される回路基板材料であるプリント配線板の高密度化が望まれている。プリント配線板を高密度化するためには、回路配線の幅と間隔を小さくする、すなわちファインピッチ化する必要があり、併せて回路加工時の寸法安定性も要求される。また、ポリイミド樹脂層のエッチング加工時におけるエッチング精度に関しても例外ではなく、エッチング後の加工形状等に関してもその要求は厳しい。一般的に、接着性層として使用される熱可塑性ポリイミドは、ポリイミド樹脂層のベースとなる低熱膨張性ポリイミドとはアルカリ処理液等による溶解速度(エッチング速度)等の性状が異なるため、エッチング加工時にアンダーカットを生じたり、接着性層が庇状に残存したりする問題が生じた。
【0005】
そこで、これらの問題を解決するために、接着性層である熱可塑性ポリイミド層の厚みを薄くした材料が提案されている。例えば、特開平2006−190824号公報(特許文献1)では、COF(チップオンフィルム)の製造工程におけるICチップ実装時の配線沈み込みを防止するために導体と接するポリイミド層の厚みを2.0μm以下の積層板が提案されている。一方、非熱可塑性ポリイミドの最外層にある熱可塑性ポリイミドの厚み比率を規定し、ウェットエッチング時のオーバーエッチングやアンダーカットを制御する手法が提案されている(特許文献2)。しかし、これらの方法では非熱可塑性ポリイミドと熱可塑性ポリイミドのエッチング速度に充分に注意を払う必要があるため、オーバーエッチングやアンダーカット含めたエッチング形状を精度よく制御することは困難であった。また、ポリイミド樹脂層のエッチング加工時のエッチング形状を向上させるために、ポリイミド樹脂層を単一層とした材料が提案されている(特許文献3)。しかしながら、このようなポリイミド樹脂層は熱可塑性ポリイミドをベース層としたものであり、その熱膨張係数は金属と比べて大きいため、材料の寸法安定性を制御することは困難であった。
【0006】
【特許文献1】特開平2006−190824号公報
【特許文献2】特開平2005−111858号公報
【特許文献3】特開平2004−276413号公報
【0007】
また、接着性層を有するポリイミド樹脂層の形成方法としては、基材上に非熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体溶液を塗布、乾燥し、その上に熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体溶液を塗布、乾燥し、硬化させる方法が従来知られており、例えば、特許文献1にも開示されている。この場合、熱可塑性ポリイミド樹脂層が接着性層となるが、所望の接着性を付与するためには一定以上の厚みが必要であり、すると上記のようにエッチング形状の問題等が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ポリイミド樹脂層に特定の接着性層を形成することで、金属層との高い接着性を付与し、且つポリイミドエッチング形状を優れるものとすることができるなどの特長を有する接着性層を有するポリイミド樹脂層の製造方法を提供する。他の目的は、プリント基板のファインピッチ化にも応える十分な接着強度を担保しつつ、絶縁樹脂層の極薄化にも対応できる金属張積層板を提供することを目的とする。他の目的は、両面金属張積層板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明者等が検討を行ったところ、ポリイミド樹脂層の接着性層の形成を適切に改良することにより、これを用いたポリイミド樹脂層は、金属層との接着強度も高く、ポリイミドエッチング時の形状を制御することが容易となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、次の工程I)〜III)、
I)ポリアミド酸の溶液を塗布、乾燥して、線熱膨張係数が1〜30(×10-6/K)の範囲にある低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)となる層を形成する工程、
II)非熱可塑性ポリイミド樹脂(A)の前駆体樹脂(A')及び熱可塑性ポリイミド樹脂(B)の前駆体樹脂(B')を含む混合溶液であって、前駆体樹脂(A')及び(B')の合計100重量部に対して前駆体樹脂(A')を30〜85重量部含む混合溶液を塗布、乾燥して、厚みが0.1〜3.0μmの範囲にある接着性層(Y)となる層を形成する工程、並びに
III)イミド化して、低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)及び接着性層(Y)を形成する工程、を備え、任意の順で工程I)、II)を行った後、工程III)を行うことを特徴とする低熱膨張性のポリイミド樹脂層の少なくとも片面に接着性層を有するポリイミド樹脂積層体の製造方法である。
【0011】
また、本発明は、次の工程a)〜d)、
a)基材上にポリアミド酸の溶液を塗布、乾燥して、線熱膨張係数が1〜30(×10-6/K)の範囲にある低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)となる層を形成する工程、
b)該低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)となる層の上に、非熱可塑性ポリイミド樹脂(A)の前駆体樹脂(A')及び熱可塑性ポリイミド樹脂(B)の前駆体樹脂(B')を含む混合溶液であって、前駆体樹脂(A')及び(B')の合計100重量部に対して前駆体樹脂(A')を30〜85重量部含む混合溶液を塗布、乾燥して、厚みが0.1〜3.0μmの範囲にある接着性層(Y)となる層を形成する工程、
c)イミド化して、低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)及び接着性層(Y)を形成する工程、並びに
d)接着性層(Y)の表面に金属箔を重ね合わせて熱圧着する工程、又は接着性層(Y)の表面に金属薄膜層を蒸着する工程、
を備えることを特徴とする金属張積層板の製造方法である。
【0012】
更に、本発明は、次の工程f)〜h)、
f)金属箔の上に、上記混合溶液を塗布、乾燥して、上記接着性層(Y)となる層を形成する工程、
g)該接着性層(Y)となる層の上に、ポリアミド酸の溶液を塗布、乾燥して、線熱膨張係数が1〜30(×10-6/K)の範囲にある低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)となる層を形成する工程、並びに
h)イミド化して、低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)及び接着性層(Y)を形成する工程、
を備えることを特徴とする金属張積層板の製造方法である。
【0013】
更にまた、本発明は、次の工程i)〜m)、
i)金属箔の上に、上記混合溶液を塗布、乾燥して、上記接着性層(Y)となる層を形成する工程、
j)該接着性層(Y)となる層の上に、ポリアミド酸の溶液を塗布、乾燥して、線熱膨張係数が1〜30(×10-6/K)の範囲にある低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)となる層を形成する工程、
k)更に、該低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)となる層の上に、前記混合溶液を塗布、乾燥して、厚みが0.1〜3.0μmの範囲にある接着性層(Y)となる層を形成する工程、
l)イミド化して、低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)及び接着性層(Y)を形成する工程、並びに
m)接着性層(Y)の表面層に金属箔を重ね合わせて熱圧着する工程、又はe)接着性層(Y)の表面層に金属薄膜層を蒸着する工程
を備えることを特徴とする金属張積層板の製造方法である。
【0014】
本発明の好ましい実施の態様を次に示す。
1) 工程II)、工程I)、工程II)、次いで工程III)を行う上記のポリイミド樹脂積層体の製造方法。
2) 非熱可塑性ポリイミド樹脂(A)の線熱膨張係数が、1〜30(×10-6/K)の範囲である上記のポリイミド樹脂積層体の製造方法。
3) 熱可塑性ポリイミド樹脂(B)のガラス転移温度が、200〜320℃の範囲である上記のポリイミド樹脂積層体の製造方法。
4) 非熱可塑性ポリイミド樹脂(A)の前駆体樹脂(A')が、低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)を形成するために使用されるポリアミド酸と同種である上記のポリイミド樹脂積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ポリイミド樹脂層と金属層との間に高い接着性を付与し、且つポリイミドエッチング時にアンダーカットや庇状のエッチング残りを発生させないことができるので、優れた金属張積層板を提供することが可能となる。また、本発明で得られる接着性層は、高温加熱下における発泡の発生による不具合を抑制することができる。更に、本発明の製造方法では、特殊な樹脂原料又は特段の樹脂合成を必要とせず、従来公知の安価な樹脂原料を使用でき、しかも簡便に樹脂を混合することによって、高性能の接着性層を形成できるものであるので、その工業的価値は高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、接着性層を有するポリイミド樹脂積層体の製造方法に関する本発明を説明し、次に金属張積層板の製造方法に関する本発明の説明をするが、共通する部分は同時に説明する。
【0017】
本発明の製造方法で得られる接着性層を有するポリイミド樹脂積層体は、低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)の少なくとも片面に接着性層(Y)を有するものである。接着性層(Y)もポリイミド樹脂層からなるが、ポリイミド樹脂層(X)より接着性が高い。なお、接着性層を有するポリイミド樹脂積層体は、有利にはポリイミド樹脂の層又はフィルム状であり、ポリイミド樹脂の層の場合は、金属箔、樹脂フィルム等の基材又は剥離フィルム等の保護膜の上に又は間に積層して存在することができる。
【0018】
以下、本発明の製造方法で得られる接着性層を有するポリイミド樹脂積層体をポリイミド樹脂積層体又は積層体というときがある。また、ポリイミド樹脂層(X)と接着性層(Y)を合わせて絶縁樹脂層ともいう。また、ポリアミド酸はポリイミド樹脂の前駆体であるが、ポリイミド樹脂層(X)を形成するポリイミド樹脂の前駆体と接着性層(Y)を形成するポリイミド樹脂の前駆体を区別するため、前者の前駆体のみを指す場合に限りポリアミド酸という。ポリイミド樹脂とその前駆体は、製品と前駆体の関係にあるため、いずれか一方を説明することにより他方の構造が理解される。
【0019】
接着性層を有するポリイミド樹脂積層体の態様は特に限定されるものではなく、皮膜であってもよく、単離のフィルム、シートであってもよい。また、金属箔、ガラス板、樹脂フィルム等の基材に積層した状態のものでもよい。なお、ここでいう基材とはポリイミド樹脂層が積層されるシート状の樹脂(ポリイミド樹脂であっても、樹脂が積層された積層体であってもよい)又は金属箔等をいう。また、接着性層を有するポリイミド樹脂層の全体厚みは、3〜100μm、好ましくは3〜50μmの範囲にある。接着性層を有するポリイミド樹脂積層体は、ポリイミド樹脂層(X)をX、接着性層(Y)をYで表せば、層構造として、X/Y、Y/X/Y、X/Y/X/Y等の構造を取り得る。しかし、少なくとも1つX/Yの層構造を表面側に有し、Yを表面に有する。また、必要により基材Sを有することができ、S/X/Y、S/Y/X/Y、S/X/Y/X/Y等の構造を取り得る。ここで、ポリイミド樹脂層(X)と接着性層(Y)からなり基材Sを有しない積層体又はその層構造を本積層体ともいう。
【0020】
ポリイミド樹脂は、ポリイミド樹脂の前駆体(ポリアミド酸)をイミド化(硬化)することによって形成することができるが、イミド化の詳細については後述する。
【0021】
ポリイミド樹脂層として適用できるポリイミド樹脂としては、いわゆるポリイミド樹脂を含めて、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリイミドエステル、ポリエーテルイミド、ポリシロキサンイミド等の構造中にイミド基を有する耐熱性樹脂がある。
【0022】
本発明の接着性層を有するポリイミド樹脂積層体において、ポリイミド樹脂層(X)としては、低熱膨張性のポリイミド樹脂層が適する。具体的には、線熱膨張係数が1×10-6 〜30×10-6(1/K)、好ましくは1×10-6 〜25×10-6(1/K)、より好ましくは15×10-6 〜25×10-6(1/K)の範囲にある低熱膨張性のポリイミド樹脂層を適用すると大きな効果が得られる。したがって、低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)となるポリアミド酸の層としては、これをイミド化することにより上記ポリイミド樹脂層を与えるものが使用される。このような低熱膨張性のポリイミド樹脂は、非熱可塑性のポリイミド樹脂である。非熱可塑性のポリイミド樹脂は低熱膨張性に優れるが、接着性に劣るという特徴を有する。
【0023】
ポリイミド樹脂層(X)を構成するポリイミド樹脂としては、下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミド樹脂が好ましい。一般式(1)において、Ar1は式(2)又は式(3)で表される4価の芳香族基を示し、Ar3は式(4)又は式(5)で表される2価の芳香族基を示し、R1は独立に炭素数1〜6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、X及びYは独立に単結合又は炭素数1〜15の2価の炭化水素基、O、S、CO、SO2若しくはCONHから選ばれる2価の基を示し、nは独立に0〜4の整数を示し、qは構成単位の存在モル比を示し、0.1〜1.0、好ましくは0.5〜1.0の範囲である。
【0024】
【化1】

【0025】
上記構造単位は、単独重合体中に存在しても、共重合体の構造単位として存在してもよい。構造単位を複数有する共重合体である場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在してもよい。
【0026】
ポリイミド樹脂は、一般に、ジアミンと酸無水物とを反応させて製造されるので、ジアミンと酸無水物を説明することにより、ポリイミド樹脂の具体例が理解される。上記一般式(1)において、Ar3はジアミンの残基ということができ、Ar1は酸無水物の残基ということができるので、好ましいポリイミド樹脂をジアミンと酸無水物により説明する。しかし、この方法によって得られるポリイミド樹脂に限定されない。
【0027】
酸無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸無水物が好ましく挙げられる。
また、2,2',3,3'-、2,3,3',4'-又は3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物等が好ましく挙げられる。また、3,3'',4,4''-、2,3,3'',4''-又は2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物等が好ましく挙げられる。
【0028】
その他の酸無水物として、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物等が挙げられる。
【0029】
ジアミンとしては、例えば、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、2'-メトキシ-4,4'-ジアミノベンズアニリド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2'-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジヒドロキシ-4,4'-ジアミノビフェニル、4,4'-ジアミノベンズアニリド等が好ましく挙げられる。
また、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[1-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[1-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4'-(4-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、ビス[4,4'-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、9,9-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン等が好ましく挙げられる。
【0030】
その他のジアミンとして、2,2−ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4'-メチレンジ-o-トルイジン、4,4'-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4'-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、3,3'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエタン、3,3'-ジアミノジフェニルエタン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、ベンジジン、3,3'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメトキシベンジジン、4,4''-ジアミノ-p-テルフェニル、3,3''-ジアミノ-p-テルフェニル、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4'-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン等が挙げられる。
【0031】
酸無水物、ジアミンはそれぞれ、その1種のみを使用してもよく2種以上を併用して使用することもできる。また、上記一般式(1)に含まれないその他の酸無水物又はジアミンを上記の酸無水物又はジアミンと共に使用することもでき、この場合、その他の酸無水物又はジアミンの使用割合は90モル%以下、好ましくは50モル%以下とすることがよい。酸無水物又はジアミンの種類や、2種以上の酸無水物又はジアミンを使用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張性、接着性、ガラス転移点(Tg)等を制御することができる。
【0032】
ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸の合成は、ほぼ等モルの酸無水物及びジアミンを溶媒中で反応させることにより行うことができる。使用する溶媒については、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、n-メチルピロリジノン、2-ブタノン、ジグライム、キシレン等が挙げられ、これらの1種若しくは2種以上併用して使用することもできる。
【0033】
合成されたポリアミド酸は溶液とされて使用される。通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、ポリアミド酸は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。
【0034】
ポリイミド樹脂層を形成する方法は特に限定されず、例えば、ポリアミド酸の溶液を基材上に塗布した後に乾燥、イミド化することで形成できるが、塗布する方法も特に制限されず、コンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。その後、乾燥、イミド化してポリイミド樹脂層とする。
【0035】
また、乾燥、イミド化の方法も特に制限されず、例えば、60〜400℃の温度条件で1〜60分加熱するといった熱処理が好適に採用される。このような熱処理を行うことで、ポリアミド酸の脱水閉環が進行するため、ポリイミド樹脂層を形成させることができる。ポリイミド樹脂層の厚みは3〜100μm、好ましくは5〜50μmの範囲にあることがよい。
【0036】
ポリイミド樹脂層(X)は、単層のみから形成されるものでも、複数層からなるものでもよい。ポリイミド樹脂層を複数層とする場合、基材上又は接着性層となる層上にポリアミド酸の溶液を塗布し、乾燥する操作を繰り返して所定のポリアミド酸層を形成した後、イミド化を行ってポリイミド樹脂層とする。ポリイミド樹脂層が3層以上からなる場合、同一の構成のポリアミド酸を2回以上使用してもよい。層構造が簡単である2層又は単層、特に単層は、工業的に有利に得ることができる。なお、複数層の場合においても、各ポリイミド樹脂層は、上記低熱膨張性のポリイミド樹脂層とする。
【0037】
ポリイミド樹脂層(X)が2層以上からなる場合で、エッチング形状をより優れるものとするためには、層を構成する各々のポリイミド樹脂層のエッチング速度が5μm/min以上であることが好ましく、10μm/min以上であることがより好ましい。エッチング速度が5μm/minに満たない場合は、良好なエッチング形状が得られにくく、エッチング速度の値が高いほうが良好なエッチング形状が得られ好ましい。また、良好なエッチング形状を得るためには、各層のエッチング速度の比率を制御することが好ましく、最も早いエッチング速度(H)を示すポリイミド樹脂層と、最も遅いエッチング速度(L)を示すポリイミド樹脂層のエッチング速度比(H/L)は、1〜2程度、好ましくは1〜1.6程度であることが有利である。なお、本発明でいうエッチング速度の測定は、後記の実施例に記載した方法による。
【0038】
接着性層(Y)は、非熱可塑性ポリイミド樹脂(A)の前駆体樹脂(A’)及び熱可塑性ポリイミド樹脂(B)の前駆体樹脂(B')を含む混合溶液を塗布、乾燥後、イミド化して形成される。
【0039】
上記前駆体樹脂(A’)及び(B')は、公知の酸無水物とジアミンから得られるポリイミド樹脂の前駆体樹脂が適用でき、公知の方法で製造することができる。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンをほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0〜100℃で30分〜24時間撹拌し重合反応させることで得られる。反応にあたっては、得られるポリイミド樹脂の前駆体樹脂が有機溶媒中に5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%となるように反応成分を溶解することがよい。重合反応する際に用いる有機溶媒については、極性を有するものを使用することがよく、有機極性溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルフォキシド、硫酸ジメチル、フェノール、ハロゲン化フェノール、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム等が挙げられる。これらを2種類以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の一部使用も可能である。
【0040】
上記前駆体樹脂(A’)及び(B')は、前駆体樹脂(A')及び(B')の合計100重量部に対して前駆体樹脂(A')を30〜85重量部、好ましくは30〜70重量部、より好ましくは30〜60重量部となるように混合した混合溶液として使用される。通常、それぞれの反応溶媒溶液として混合した混合溶液を使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。混合溶液中の前駆体樹脂(A')の混合割合が上記下限未満であると、得られる接着性層(Y)のエッチング特性等が熱可塑性ポリイミド樹脂(B)の特性に類似する傾向になり、絶縁樹脂層のエッチング時の形状不良等が発生する可能性がある。また、前駆体樹脂(A')の混合割合が上記上限を超えると、接着性層(Y)の接着性が劣るものとなる。
【0041】
接着性層(Y)は、低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)の片面又は両面に積層するように存在させる。接着性層(Y)を設ける方法は特に制限されず、例えば、ポリイミド樹脂層(X)となるポリアミド酸層の上に前記混合溶液を塗布、乾燥して、少なくとも2層の前駆体樹脂層を形成した後、熱処理によってイミド化を行う方法が挙げられる。逆に、接着性層(Y)となる層の上にポリイミド樹脂層(X)となるポリアミド酸層の層を形成した後、熱処理によってイミド化を行う方法もある。ポリイミド樹脂層(X)と接着性層(Y)の一方又は両方を複数層設ける場合は、接着性層(Y)となる層を形成し、次にその上にポリイミド樹脂層(X)となる層を形成し、そして接着性層(Y)となる層を形成し、その後熱処理によってイミド化を行う方法が挙げられる。また、接着性層(Y)が低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)の両面に積層する場合においても、例えば、基材上に前記混合溶液を塗布、乾燥後、既述の積層方法と同様にして、少なくとも3層の前駆体樹脂層を形成した後、イミド化を行う方法が挙げられる。接着性層(Y)を両面に有する積層体は両面に金属箔を有する金属張積層板の製造に有利に使用できる。
【0042】
低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)の厚みを、接着性層(Y)の厚み(接着性層が両面にある場合は、2つの接着性層の合計厚み)で除した値は、1〜40の範囲内にあることが好ましく、2〜30の範囲内にあることがより好ましい。
【0043】
なお、接着性層(Y)が低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)の両面にある場合には、それぞれ2つの接着性層の材料と厚みは、それぞれ等しくてもよいし異なってもよい。
【0044】
非熱可塑性ポリイミド樹脂(A)は、線熱膨張係数が1×10-6 〜30×10-6(1/K)の範囲のものが好ましく、より好ましくは1×10-6 〜25×10-6(1/K)、更に好ましくは15×10-6 〜25×10-6(1/K)がよい。このようなポリイミド樹脂は、低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)に適用できるものを使用することが好ましく、上記一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミド樹脂が好ましい。このような樹脂を用いることで、高温加熱下における発泡の発生による不具合を抑制することができる。また、非熱可塑性ポリイミド樹脂(A)は、低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)の線熱膨張係数との差が5×10-6(1/K)以下となるように選定されることが好ましい。このような樹脂を選定することで、金属層の積層時における反りを抑制できる。また、低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)のポリイミド樹脂は、非熱可塑性ポリイミド樹脂(A)は同種であるか又はエッチング特性が類似しているものであることが好ましく、このような樹脂を選定することで、ポリイミドエッチング形状もより良好となる。なお、エッチング特性が類似しているとは、エッチング条件においてエッチング速度の比が0.5〜2程度の範囲にあることをいう。また、非熱可塑性ポリイミド樹脂(A)のエッチング速度は5μm/min以上であることが好ましく、より好ましくは10μm/min以上であることがよい。また、ポリイミド樹脂が同種であるとは、ポリイミド樹脂を得るために使用されるジアミン及び酸無水物の種類が同一であるか、ジアミン及び酸無水物の成分が80モル%以上共通するものをいい、ほぼ同様な熱膨張係数、接着性又はエッチング特性等を示すことをいう。
【0045】
熱可塑性ポリイミド樹脂(B)は、一般式(6)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体樹脂が好ましい。一般式(6)において、Ar4は式(7)、式(8)又は式(9)で表される2価の芳香族基を示し、Ar5は式(10)又は式(11)で表される4価の芳香族基を示し、R2は独立に炭素数1〜6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、V及びWは独立に単結合又は炭素数1〜15の2価の炭化水素基、O、S、CO、SO2若しくはCONHから選ばれる2価の基を示しmは独立に0〜4の整数を示し、pは構造単位の存在モルを示し、0.1〜1.0の範囲である。
【0046】
【化2】

【0047】
【化3】

【0048】
上記構造単位は、単独重合体中に存在しても、共重合体の構造単位として存在してもよい。構造単位を複数有する共重合体である場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在してもよい。このような構造単位を有するポリイミド前駆体樹脂の中で、好適に利用できるポリイミド前駆体樹脂は、イミド化後に熱可塑性ポリイミド樹脂となるポリイミド前駆体樹脂である。
【0049】
上記一般式(6)において、Ar4はジアミンの残基ということができ、Ar5は酸二無水物の残基ということができるので、好ましいポリイミド樹脂をジアミンと酸二無水物により説明する。しかし、この方法によって得られるポリイミド前駆体樹脂に限定されない。
【0050】
ジアミンとしては、例えば、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、2'-メトキシ-4,4'-ジアミノベンズアニリド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2'-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジヒドロキシ-4,4'-ジアミノビフェニル、4,4'-ジアミノベンズアニリド等が挙げられる。その他、上記ポリイミド樹脂の説明で挙げたジアミンを挙げることができる。
【0051】
酸二無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸無水物が挙げられる。その他、上記ポリイミド樹脂の説明で挙げた酸二無水物を挙げることができる。
【0052】
ジアミン、酸二無水物はそれぞれ、その1種のみを使用してもよく2種以上を併用して使用することもできる。また、上記以外のジアミン及び酸二無水物を併用することもできる。
【0053】
熱可塑性ポリイミド樹脂(B)は、ガラス転移温度200〜320℃の範囲のものであることが好ましい。このようなポリイミド樹脂を使用することで、金属層との接着強度が向上する。このポリイミド樹脂を合成するために使用される好ましいジアミンとしては、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,2-ジメチルプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、パラフェニレンジアミン、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルエーテルから選ばれる1種以上のジアミンがある。また、好ましい酸無水物としては、無水ピロメリット酸、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,4,4'-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物から選ばれる1種以上の酸無水物がある。上記ジアミン及び酸無水物については、それぞれその1種のみを使用してもよく2種以上を併用して使用することもできる。
【0054】
非熱可塑性ポリイミド樹脂(A)の前駆体樹脂(A')は、低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)となるポリアミド酸と同種のものであることが好ましい。このような樹脂を選定することで、接着性層(Y)のエッチング特性が低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)のエッチング特性に類似する傾向になり、ポリイミドエッチング形状が更に良好となる。
【0055】
次に、本発明の金属張積層板の製造方法について詳細を説明する。本発明の金属張積層板の製造方法には、上記したように工程a)〜d)を備える製造方法(製造方法A)、工程f)〜h)を備える製造方法(製造方法B)及び工程j)〜m)を備える製造方法(製造方法C)がある。
【0056】
製造方法Aは、
a)基材上にポリアミド酸の溶液を塗布、乾燥して、線熱膨張係数が1〜30(×10-6/K)の範囲にある低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)となる層を形成する工程、
b)該低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)となる層の上に、非熱可塑性ポリイミド樹脂(A)の前駆体樹脂(A')及び熱可塑性ポリイミド樹脂(B)の前駆体樹脂(B')を含む混合溶液であって、前駆体樹脂(A')及び(B')の合計100重量部に対して前駆体樹脂(A')を30〜85重量部含む混合溶液を塗布、乾燥して、厚みが0.1〜3.0μmの範囲にある接着性層(Y)となる層を形成する工程、
c)イミド化して、低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)及び接着性層(Y)を形成する工程、並びに
d)接着性層(Y)の表面に金属箔を重ね合わせて熱圧着する工程、又は接着性層(Y)の表面に金属薄膜層を蒸着する工程、
を備える金属張積層板の製造方法である。
【0057】
製造方法Bは、
f)金属箔の上に、非熱可塑性ポリイミド樹脂(A)の前駆体樹脂(A')及び熱可塑性ポリイミド樹脂(B)の前駆体樹脂(B')を含む混合溶液であって、前駆体樹脂(A')及び(B')の合計100重量部に対して前駆体樹脂(A')を30〜85重量部含む混合溶液を塗布、乾燥して、厚みが0.1〜3.0μmの範囲にある接着性層(Y)となる層を形成する工程、
g)該接着性層(Y)となる層の上に、ポリアミド酸の溶液を塗布、乾燥して、線熱膨張係数が1〜30(×10-6/K)の範囲にある低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)となる層を形成する工程、並びに
h)イミド化して、低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)及び接着性層(Y)を形成する工程、
を備える金属張積層板の製造方法である。
【0058】
製造方法Cは、
i)金属箔の上に、非熱可塑性ポリイミド樹脂(A)の前駆体樹脂(A')及び熱可塑性ポリイミド樹脂(B)の前駆体樹脂(B')を含む混合溶液であって、前駆体樹脂(A')及び(B')の合計100重量部に対して前駆体樹脂(A')を30〜85重量部含む混合溶液を塗布、乾燥して、厚みが0.1〜3.0μmの範囲にある接着性層(Y)となる層を形成する工程、
j)該接着性層(Y)となる層の上に、ポリアミド酸の溶液を塗布、乾燥して、線熱膨張係数が1〜30(×10-6/K)の範囲にある低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)となる層を形成する工程、
k)更に、該低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)となる層の上に、前記混合溶液を塗布、乾燥して、厚みが0.1〜3.0μmの範囲にある接着性層(Y)となる層を形成する工程、
l)イミド化して、低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)及び接着性層(Y)を形成する工程、並びに
m)接着性層(Y)の表面層に金属箔を重ね合わせて熱圧着する工程d1、又は接着性層(Y)の表面層に金属薄膜層を蒸着する工程d2
を備える金属張積層板の製造方法である。
【0059】
本発明の製造方法(A)で得られる金属張積層板は、基材上に低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)、接着性層(Y)が配置され、更にその接着性層(Y)を介して金属層が配置される。そして、工程a)はポリイミド樹脂積層体の製造方法における工程I)と対応する。工程b)はポリイミド樹脂積層体の製造方法における工程II)と対応する。工程c)はポリイミド樹脂積層体の製造方法における工程III)と対応する。したがって、工程a)〜c)はポリイミド樹脂積層体の製造方法における工程I)〜III)について説明した同様な方法で行うことができる。工程d)は、接着性層(Y)の表面に金属箔を重ね合わせて熱圧着する工程d1、又は接着性層(Y)の表面に金属薄膜層を蒸着する工程d2からなる。
【0060】
工程d)は、熱圧着する工程d1又は蒸着する工程d2により行うことができる。
【0061】
工程d1において、使用する金属箔としては、鉄箔、ニッケル箔、ベリリウム箔、アルミニウム箔、亜鉛箔、インジウム箔、銀箔、金箔、スズ箔、ジルコニウム箔、ステンレス箔、タンタル箔、チタン箔、銅箔、鉛箔、マグネシウム箔、マンガン箔及びこれらの合金箔が挙げられる。このなかでも、銅箔(銅合金箔)又はステンレス箔が適する。ここでいう銅箔とは、銅又は銅を主成分とする銅合金の箔を言う。好ましくは銅含有率が90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上の銅箔である。銅箔が含有している金属としては、クロム、ジルコニウム、ニッケル、シリコン、亜鉛、ベリリウム等を挙げることができる。また、これらの金属が2種類以上含有される合金箔であっても良い。また、ステンレス箔は、材質に制限はないが、例えばSUS304のようなステンレス箔が好ましい。
【0062】
金属箔は、ポリイミド樹脂層が積層する面にシランカップリング剤処理が施されていてもよい。シランカップリング剤は、アミノ基又はメルカプト基等の官能基を有するシランカップリング剤が好ましく、より好ましくはアミノ基を有するシランカップリング剤がよい。具体例としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。この中でも、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン及びN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランから選択される少なくとも1種であることがよい。特に、3-アミノプロピルトリエトキシシラン又は/及び3-アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0063】
シランカップリング剤は極性溶媒の溶液として使用する。極性溶媒としては、水又は水を含有する極性有機溶媒が適する。極性有機溶媒としては、水との親和性を有する極性の液体であれば、特に限定されない。このような極性有機溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。シランカップリング剤溶液は、0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜2.0重量%、より好ましくは0.5〜1.0重量%濃度の溶液がよい。
【0064】
シランカップリング剤処理は、シランカップリング剤を含む極性溶媒の溶液が接触する方法であれば、特に限定されず、公知の方法を利用することができる。例えば、浸漬法、スプレー法、刷毛塗りあるいは印刷法等を用いることができる。温度は0〜100℃、好ましくは10〜40℃付近の常温でよい。また、浸漬時間は、浸漬法を適用する場合、10秒〜1時間、好ましくは30秒〜15分間処理することが有効である。処理後、乾燥する。乾燥方法は、特に限定されず、自然乾燥、エアガンによる吹きつけ乾燥、あるいはオーブンによる乾燥等を用いることができる。乾燥条件は、極性溶媒の種類にもよるが、10〜150℃で5秒〜60分間、好ましくは25〜150℃で10秒〜30分間、更に好ましくは30〜120℃で1分〜10分間である。
【0065】
金属箔が銅箔である例としては、フレキシブル基板用途に用いる場合が挙げられる。この用途として用いられる場合の銅箔の好ましい厚みは3〜50μmの範囲であり、より好ましくは5〜30μmの範囲であるが、ファインピッチの要求される用途で用いられる銅張積層板には、薄い銅箔が好適に用いられ、この場合、5〜20μmの範囲が適している。また、本発明は表面粗度が小さい銅箔を用いても樹脂層に対する優れた接着性が得られることから、特に、表面粗度が小さい銅箔を用いる場合に適している。好ましい銅箔の表面粗度は、十点平均粗さで0.1〜3μmの範囲が適している。特にファインピッチの要求される用途で用いられる銅箔については、表面粗度は十点平均粗さで0.1〜1.0μmが適している。
【0066】
金属箔がステンレス箔である例としては、ハードディスクドライブに搭載されているサスペンション(以下、HDDサスペンション)用途に用いる場合が挙げられる。この用途として用いられる場合のステンレス箔の好ましい厚みは10〜100μmの範囲がよく、より好ましくは15〜70μmの範囲がよく、更に好ましくは15〜50μmの範囲がよい。
【0067】
工程d1において、金属箔を熱圧着する方法は特に制限されず、適宜公知の方法を採用することができる。金属箔を張り合わせる方法としては、通常のハイドロプレス、真空タイプのハイドロプレス、オートクレーブ加圧式真空プレス、連続式熱ラミネータ等を挙げることができる。金属箔を張り合わせる方法の中でも、十分なプレス圧力が得られ、残存揮発分の除去も容易に行え、更に金属箔の酸化を防止することができるという観点から真空ハイドロプレス、連続式熱ラミネータを用いることが好ましい。
【0068】
また、熱圧着は、150〜450℃の範囲内に加熱しながら金属箔をプレスすることが好ましい。より好ましくは150〜400℃の範囲内である。更に、好ましくは150〜380℃の範囲内である。別の観点からはポリイミド樹脂層又は改質イミド化層のガラス転移温度以上の温度であることがよい。また、プレス圧力については、使用するプレス機器の種類にもよるが、通常、1〜50MPa程度が適当である。
【0069】
次に、工程d)が蒸着する工程d2により行われる場合について説明する。
【0070】
工程d2において、金属薄膜層は蒸着法により形成する。蒸着法は、特に限定されないが、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法等を使用でき、特に、スパッタリング法が好ましい。このスパッタリング法はDCスパッタ、RFスパッタ、DCマグネトロンスパッタ、RFマグネトロンスパッタ、ECスパッタ、レーザービームスパッタ等各種手法があるが、特に制限されず、適宜採用することができる。スパッタリング法による金属薄膜層の形成条件については、例えば、アルゴンガスをスパッタガスとして使用し、圧力は好ましくは1×10-2〜1Pa、より好ましくは5×10-2〜5×10-1Paであり、スパッタ電力密度は、好ましくは1〜100Wcm-2、より好ましくは1〜50Wcm-2の条件で行う方法がよい。この場合、金属薄膜層からなる金属層は十分に薄いものとすることができる。このようにして形成した金属薄膜層の上に、適宜、無電解めっき又は電解めっきによって厚膜の導体金属層としてもよい。
【0071】
蒸着で設ける金属薄膜層に適した金属としては、銅、ニッケル、クロムやこれらの合金がある。蒸着法においては、金属の薄膜を形成できるという利点があるが、厚膜を形成するには不向きである。そこで、金属薄膜層を厚くして電気抵抗を下げたり、強度を高める場合は、その上に比較的厚い銅薄膜層を設けてもよい。
【0072】
蒸着法による金属薄膜の形成は、銅を薄膜層として用いることが好ましい。この際、接着性をより向上させる下地金属薄膜層を表面処理ポリイミド樹脂層に設け、その上に銅薄膜層を設けてもよい。下地金属薄膜層としては、ニッケル、クロムやこれらの合金層がある。下地金属薄膜層を設ける場合、その厚みは銅薄膜層厚みの1/2以下、好ましくは1/5以下で、1〜50nm程度の厚みとすることがよい。この下地金属薄膜層もスパッタリング法により形成することが好ましい。
【0073】
ここで用いられる銅は一部に他の金属を含有する合金銅でも良い。スパッタリング法により形成させる銅又は銅合金は好ましくは銅含有率が90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上のものである。銅が含有し得る金属としては、クロム、ジルコニウム、ニッケル、シリコン、亜鉛、ベリリウム等を挙げることができる。また、これらの金属が2種類以上含有される銅合金であってもよい。
【0074】
工程d1において形成される金属薄膜層の厚みは、0.01〜1.0μmの範囲であることがよく、好ましくは0.05〜0.5μm、より好ましくは0.1〜0.5μmである。薄膜層を更に厚くする場合には、無電解めっき又は電解めっきによって、厚膜にしてもよい。このようにして形成される金属層は、サブトラクティブ法ないしはセミアディティブ法で回路形成を行うこともできる。
【0075】
この金属張積層板の製造方法(A)によって得られる積層板は、ポリイミド樹脂層の片面又は両面に金属箔を有する積層板である。片面に金属箔を有する積層板は、工程a)で使用する基材を金属箔以外の材料とするか、剥離可能な金属箔又は金属箔以外の材料とすることにより得られる。両面に金属箔を有する積層板は、工程a)で使用する基材を金属箔とすることにより得られる。また、この製造方法(A)によって片面に金属箔を有する積層板を製造し、基材を剥離し、剥離面に金属箔を積層することによっても得ることができる。
【0076】
次に、金属張積層板の製造方法(B)について説明する。金属張積層板の製造方法(B)の工程f)は接着性層(Y)となる層を設ける工程であり、製造方法(A)の工程b)に対応する。したがって、これを金属箔上に設ける以外は、工程b)と同様に行うことができる。工程g)はポリイミド樹脂層(X)となる層を設ける工程であり、製造方法(A)の工程a)に対応する。したがって、これを接着性層(Y)となる層上に設ける以外は、工程b)と同様に行うことができる。工程h)はイミド化してポリイミド樹脂層(X)及び接着性層(Y)を形成する工程であり、製造方法(A)の工程c)に対応する。したがって、工程c)と同様に行うことができる。
【0077】
この金属張積層板の製造方法(B)によって得られる積層板は、金属箔/接着性層(Y)/ ポリイミド樹脂層(X)の層構造を有する片面金属張積層板である。
【0078】
次に、金属張積層板の製造方法(C)について説明する。金属張積層板の製造方法(C)の工程i)及びj)は金属箔上に接着性層(Y)となる層及びポリイミド樹脂層(X)なる層を設ける工程であり、製造方法(B)の工程f)及びg)に対応する。したがって、工程f) 及びg)と同様に行うことができる。工程k)はポリイミド樹脂層(X)となる層の上に接着性層(Y)となる層を設ける工程であり、工程i)に対応する。したがって、これをポリイミド樹脂層(X)となる層の上に設ける以外は、工程i)と同様に行うことができる。工程l)ははイミド化してポリイミド樹脂層(X)及び接着性層(Y)を形成する工程であり、製造方法(A)の工程c)に対応する。したがって、工程c)と同様に行うことができる。工程m)は接着性層(Y)の表面に金属層を熱圧着で設ける工程d1又は金属薄膜層を蒸着する工程d2であり、製造方法(A)の工程d)に対応する。したがって、製造方法(A)の工程d1又はd2と同様に行うことができる。
【0079】
この金属張積層板の製造方法(C)によって得られる積層板は、金属箔/接着性層(Y)/ポリイミド樹脂層(X)/接着性層(Y)/金属層の層構造を有する両面金属張積層板である。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例により具体例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、本発明の実施例において特にことわりない限り各種測定、評価は下記によるものである。
【0081】
[接着強度の測定]
接着強度は、ストログラフVES05D(東洋精機製作所社製)を用いて、幅1mmの短冊状に切断したサンプルについて、室温で90°、1mmピール強度を測定することにより評価した。
【0082】
[線熱膨張係数の測定]
線熱膨張係数は、サーモメカニカルアナライザー(セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、サンプルを250℃まで昇温し、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、240℃から100℃までの平均線熱膨張係数(CTE)を求めることにより評価した。
【0083】
[ガラス転移温度の測定]
粘弾性アナライザー(レオメトリックサイエンスエフィー株式会社製RSA−II)を使って、10mm幅のサンプルを用いて、1Hzの振動を与えながら、室温から400℃まで10℃/分の速度で昇温した際の、損失正接(Tanδ)の極大から求めた。
【0084】
[接着性層の厚み測定]
接着性層の厚みは、走査型透過電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、透過モードに設定し、サンプルの断面を観察し、接着性層の厚みを確認することにより測定した。
【0085】
[エッチング速度の測定]
ポリイミドフィルムを80℃に加熱したエッチング液(エチレンジアミン11.0wt%、エチレングリコール22.0wt%、水酸化カリウム33.5wt%)に浸漬し、ポリイミドが完全に溶解した時間を測定し、ポリイミドフィルムの膜厚を測定時間で除することにより求めた。
【0086】
[ポリイミドエッチング形状の測定]
まず100mm角の金属張積層板を用い、金属層側をエッチングし、100μm径のビアを形成して試験片とした。その後、金属層をエッチングマスクとして、水酸化カリウム33.5wt%、エチレンジアミン11wt%、エチレングリコール22wt%からなる水溶液をエッチング液として用い、80℃のエッチング液に、試験片を10〜60秒間浸漬した。浸漬後に試験片を断面研磨し、絶縁樹脂層のサイドエッチング形状を観察した。
なお、エッチング後の絶縁樹脂層において、ポリイミド樹脂層と接着性層の境界が確認されないレベルのものを「優」とし、ポリイミド樹脂層と接着性層の境界が僅かに確認されるレベルのものを「良」とし、ポリイミド樹脂層と接着性層の境界が確認できるが、凹凸のないレベルのものを「可」と評価した。また、ポリイミド樹脂層と接着性層の境界において、凹凸が確認されるものを「不可」と評価した。
【0087】
次に、以下の実施例に基づいて、本発明を具体的に説明する。本発明はこれに限定されないことは勿論である。なお、本実施例に用いた略号は下記のとおりである。
MABA:2'-メトキシ-4,4'-ジアミノベンズアニリド
DAPE44:4,4'-ジアミノジフェニルエーテル
m-TB:4,4'-ジアミノ-2,2'-ジメチルビフェニル
TPE-R:1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン
APB:1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン
PMDA:無水ピロメリット酸
BTDA:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
DMAc:N,N-ジメチルアセトアミド
【0088】
作製例1
500mlのセパラブルフラスコの中において、撹拌しながら20.7gのMABA(0.08モル)を343gのDMAcに溶解させた。次に、その溶液を窒素気流中で28.5gのPMDA(0.13モル)及び10.3gのDAPE44(0.05モル)を加えた。その後、約3時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリイミド樹脂の前駆体溶液s1を得た。
得られた前駆体溶液s1を、ステンレス基材の上に塗布し、130℃で5分間乾燥し、15分かけて360℃まで昇温させてイミド化を完了させ、ステンレス基材に積層されたポリイミド樹脂層を得、この樹脂層をステンレス基材から剥離することで、厚み25μmのポリイミドフィルムS1を得た。このフィルムの線熱膨張係数は、14.6×10-6(1/K)であった。また、エッチング速度は13μm/minであった。
【0089】
作製例2
500mlセパラブルフラスコの中において、撹拌しながら12.08gのm-TB(0.057モル)、4.75gのTPE-R(0.016モル)及び1.63gのDAPE44(0.008モル)を264gのDMAcに溶解させた。次に、その溶液を窒素気流下で17.55gのPMDA(0.08モル)を加えた。その後、約3時間撹拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリイミド樹脂の前駆体溶液s2を得た。
得られた前駆体溶液s2を、ステンレス基板の上に塗布し、130℃で5分間乾燥し、15分かけて360℃まで昇温させてイミド化を完了させ、ステンレス基材に積層されたポリイミド樹脂層を得、この樹脂層をステンレス基材から剥離することで、厚み25μmのポリイミドフィルムS2を得た。このフィルムの線熱膨張係数は、17.0×10-6(1/K)であった。また、エッチング速度は12μm/minであった。
【0090】
作製例3
500mlのセパラブルフラスコの中において、撹拌しながら29.5gのAPB(0.1モル)を367gのDMAcに溶解させた。次に、その溶液を窒素気流中で9.1gのPMDA(0.04モル)及び20.2gのBTDA(0.06モル)を加えた。その後、約3時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリイミド樹脂の前駆体溶液s3を得た。
得られた前駆体溶液s3を、ステンレス基板の上に塗布し、130℃で5分間乾燥し、15分かけて360℃まで昇温させてイミド化を完了させ、ステンレス基材に積層されたポリイミド樹脂層を得、この樹脂層をステンレス基材から剥離することで、厚み25μmのポリイミドフィルムS3を得た。このフィルムのガラス転移温度は、218℃であった。また、エッチング速度は7μm/minであった。
【0091】
作製例4
5gの3-アミノプロピルトリメトキシシラン、500gのメタノール及び2.5gの水を混合し、2時間撹拌することで、シランカップリング剤溶液を調整した。予め水洗したステンレス箔1(新日本製鐵株式会社製 SUS304 H-TA、厚み20μm)をシランカップリング剤溶液(液温約20℃)へ30秒間浸漬した後、一旦大気中に引き上げ、余分な液を落とした。次いで圧縮空気を約15秒間吹き付けて乾燥した。その後、110℃で30分間加熱処理を行い、シランカップリング剤処理のステンレス箔2を得た。
【0092】
実施例1
作製例1で得られた前駆体溶液s1における前駆体成分a1と、作製例3で得られた前駆体溶液s3における前駆体成分b3との重量比が70対30の割合になるように、前駆体溶液s1及び前駆体溶液s3を混合した後、DMAcを加えて希釈し、前駆体成分としての固形分濃度を12重量%に調整した混合溶液p1を用意した。
前駆体溶液s1を、ステンレス基材の上に塗布し、130℃で2分間乾燥して、硬化後の厚みが25μmとなるようにポリイミド前駆体樹脂層を形成した。この前駆体樹脂層の上に、前記の混合溶液p1をウェット厚み約30μmで塗布し、130℃で2分間乾燥後、15分かけて360℃まで昇温させてイミド化を完了させ、ステンレス基材に積層されたポリイミド樹脂層を得、この樹脂層をステンレス基材から剥離することで、接着性層を有するポリイミドフィルムL1を作製した。このフィルムの接着性層の厚みは1.0μmであった。
得られたフィルムの接着性層の面に、ステンレス箔2のシランカップリング剤処理面を重ね合わせ、高性能高温真空プレス機で、370℃、20MPa、1分の条件でプレスを行い、ポリイミド樹脂層、接着性層及びステンレス箔層から構成される金属張積層板1を得た。絶縁樹脂層とステンレス箔の接着強度、絶縁樹脂層のエッチング形状を評価した。結果を表1に示す。得られた金属張積層板1は接着強度に優れており、エッチング後の絶縁樹脂層の形状も非常に良好であった。なお、接着強度は、0.5kN/m以上を問題なしとした。
【0093】
実施例2
作製例1で得られた前駆体溶液s1における前駆体成分a1と、作製例3で得られた前駆体溶液s3における前駆体成分b3との重量比が50対50の割合になるように、前駆体溶液s1及び前駆体溶液s3を混合した後、DMAcを加えて希釈し、前駆体成分としての固形分濃度を12重量%に調整した混合溶液p2を用意した。
実施例1における混合溶液p1の代わりに、前記の混合溶液p2を使用した以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド樹脂層、接着性層及びステンレス箔層から構成される金属張積層板2を得た。絶縁樹脂層とステンレス箔の接着強度、絶縁樹脂層のエッチング形状を評価した。結果を表1に示す。得られた金属張積層板2は接着強度に優れており、エッチング後の絶縁樹脂層の形状も良好であった。
【0094】
実施例3
作製例1で得られた前駆体溶液s1における前駆体成分a1と、作製例3で得られた前駆体溶液s3における前駆体成分b3との重量比が30対70の割合になるように、前駆体溶液s1及び前駆体溶液s3を混合した後、DMAcを加えて希釈し、前駆体成分としての固形分濃度を12重量%に調整した混合溶液p3を用意した。
実施例1における混合溶液p1の代わりに、前記の混合溶液p3を使用した以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド樹脂層、接着性層及びステンレス箔層から構成される金属張積層板3を得た。絶縁樹脂層とステンレス箔の接着強度、絶縁樹脂層のエッチング形状を評価した。結果を表1に示す。得られた金属張積層板3は接着強度に優れており、エッチング後の絶縁樹脂層の形状も問題はなかった。
【0095】
実施例4
作製例2で得られた前駆体溶液s2における前駆体成分a2と、作製例3で得られた前駆体溶液s3における前駆体成分b3との重量比が70対30の割合になるように、前駆体溶液s2及び前駆体溶液s3を混合した後、DMAcを加えて希釈し、前駆体成分としての固形分濃度を12重量%に調整した混合溶液p4を用意した。
実施例1における混合溶液p1の代わりに、前記の混合溶液p4を使用した以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド樹脂層、接着性層及びステンレス箔層から構成される金属張積層板4を得た。絶縁樹脂層とステンレス箔の接着強度、絶縁樹脂層のエッチング形状を評価した。結果を表1に示す。得られた金属張積層板4は接着強度に優れており、エッチング後の絶縁樹脂層の形状も良好であった。
【0096】
実施例5
作製例2で得られた前駆体溶液s2における前駆体成分a2と、作製例3で得られた前駆体溶液s3における前駆体成分b3との重量比が50対50の割合になるように、前駆体溶液s2及び前駆体溶液s3を混合した後、DMAcを加えて希釈し、前駆体成分としての固形分濃度を12重量%に調整した混合溶液p5を用意した。
実施例1における混合溶液p1の代わりに、前記の混合溶液p5を使用した以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド樹脂層、接着性層及びステンレス箔層から構成される金属張積層板5を得た。絶縁樹脂層とステンレス箔の接着強度、絶縁樹脂層のエッチング形状を評価した。結果を表1に示す。得られた金属張積層板5は接着強度に優れており、エッチング後の絶縁樹脂層の形状も問題なかった。
【0097】
実施例6
作製例2で得られた前駆体溶液s2における前駆体成分a2と、作製例3で得られた前駆体溶液s3における前駆体成分b3との重量比が30対70の割合になるように、前駆体溶液s2及び前駆体溶液s3を混合した後、DMAcを加えて希釈し、前駆体成分としての固形分濃度を12重量%に調整した混合溶液p6を用意した。
実施例1における混合溶液p1の代わりに、前記の混合溶液p6を使用した以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド樹脂層、接着性層及びステンレス箔層から構成される金属張積層板6を得た。絶縁樹脂層とステンレス箔の接着強度、絶縁樹脂層のエッチング形状を評価した。結果を表1に示す。得られた金属張積層板6は接着強度に優れており、エッチング後の絶縁樹脂層の形状も問題なかった。
【0098】
実施例7
実施例1で得た接着性層を有するポリイミドフィルムL1を使用し、このフィルムの接着性層面に、金属原料が成膜されるように、RFマグネトロンスパッタリング装置(ANELVA;SPF-332HS)にセットし、槽内を3×10-4Paまで減圧した後、アルゴンガスを導入し真空度を2×10-1Paとし、RF電源にてプラズマを発生した。このプラズマにてニッケル:クロムの合金層[比率8:2、99.9重量%、以下、ニクロム層(第一スパッタリング層)]が膜厚30nmとなるようにポリイミドフィルムへ成膜した。ニクロム層を成膜した後、同一雰囲気にて、このニクロム層上にさらにスパッタリングにより銅(99.99重量%)を0.2μm成膜して第二スパッタリング層を得た。
次いで、上記スパッタ膜(第二スパッタリング層)を電極として電解めっき浴にて8μm厚の銅めっき層を形成した。電解めっき浴としては、硫酸銅浴(硫酸銅100g/L、硫酸220g/L、塩素40mg/L、アノードは含りん銅)を使用し、電流密度2.0A/dm2にてめっき膜を形成した。めっき後には十分な蒸留水で洗浄し乾燥を行い、金属張積層板7を作製した。絶縁樹脂層と金属層の接着強度、絶縁樹脂層のエッチング形状を評価した。結果を表1に示す。得られた金属張積層板7は接着強度に優れており、エッチング後の絶縁樹脂層の形状も非常に良好であった。
【0099】
実施例8
実施例1で調整した混合溶液p1を用意し、この混合溶液p1をステンレス箔2のシランカップリング剤処理面に、ウェット厚み約30μmで塗布し、130℃で2分間乾燥した。この層の上に、前駆体溶液s1を、硬化後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃で2分間乾燥後、15分かけて360℃まで昇温させてイミド化を完了させ、ステンレス箔層、接着性層及びポリイミド樹脂層から構成される金属張積層板8を得た。絶縁樹脂層とステンレス箔の接着強度、絶縁樹脂層のエッチング形状を評価した。結果を表1に示す。得られた金属張積層板8は接着強度に優れており、エッチング後の絶縁樹脂層の形状も非常に良好であった。
【0100】
実施例9
実施例1で調整した混合溶液p1を用意し、この混合溶液p1をステンレス箔2のシランカップリング剤処理面に、ウェット厚み約30μmで塗布し、130℃で2分間乾燥した。この層の上に、前駆体溶液s1を、硬化後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃で2分間乾燥後、更に、この層の上に、混合溶液p1をウェット厚み約30μmで塗布し、130℃で2分間乾燥後、15分かけて360℃まで昇温させてイミド化を完了させ、ステンレス箔層、接着性層、ポリイミド樹脂層及び接着性層から構成される積層体9’を作製した。
得られた積層体9’の接着性層の表面側に、ステンレス箔2のシランカップリング剤処理面を重ね合わせ、高性能高温真空プレス機で、370℃、20MPa、1分の条件でプレスを行い、ポリイミド樹脂層、接着性層及びステンレス箔層から構成される金属張積層板9を得た。絶縁樹脂層とステンレス箔の接着強度、絶縁樹脂層のエッチング形状を評価した。結果を表1に示す。得られた金属張積層板9は接着強度に優れており、エッチング後の絶縁樹脂層の形状も非常に良好であった。
【0101】
実施例10
実施例9で得た積層体9’の接着性層の表面側に、金属原料が成膜されるように、RFマグネトロンスパッタリング装置(ANELVA;SPF-332HS)にセットし、槽内を3×10-4Paまで減圧した後、アルゴンガスを導入し真空度を2×10-1Paとし、RF電源にてプラズマを発生した。このプラズマにてニッケル:クロムの合金層[比率8:2、99.9重量%、以下、ニクロム層(第一スパッタリング層)]が膜厚30nmとなるようにポリイミドフィルムへ成膜した。ニクロム層を成膜した後、同一雰囲気にて、このニクロム層上にさらにスパッタリングにより銅(99.99重量%)を0.2μm成膜して第二スパッタリング層を得た。
次いで、上記スパッタ膜(第二スパッタリング層)を電極として電解めっき浴にて8μm厚の銅めっき層を形成した。電解めっき浴としては、硫酸銅浴(硫酸銅100g/L、硫酸220g/L、塩素40mg/L、アノードは含りん銅)を使用し、電流密度2.0A/dm2にてめっき膜を形成した。めっき後には十分な蒸留水で洗浄し乾燥を行い、金属張積層板10を作製した。絶縁樹脂層と金属層の接着強度、絶縁樹脂層のエッチング形状を評価した。結果を表1に示す。得られた金属張積層板10は接着強度に優れており、エッチング後の絶縁樹脂層の形状も非常に良好であった。
【0102】
比較例1
作製例1で得られたポリイミドS1に、ステンレス箔2を重ね合わせ、高性能高温真空プレス機で、370℃、20MPa、1分の条件でプレスを行い、金属張積層板11を得た。絶縁樹脂層とステンレス箔の接着強度は0.1kN/m未満であった。
【0103】
比較例2
作製例2で得られたポリイミドS2に、ステンレス箔2を重ね合わせ、高性能高温真空プレス機で、370℃、20MPa、1分の条件でプレスを行い、金属張積層板12を得た。絶縁樹脂層と銅箔の接着強度は0.1kN/m未満であった。
【0104】
比較例3
実施例1における混合溶液p1をウェット厚み約30μmで塗布の代わりに、作製例3で得られたポリイミド樹脂の前駆体溶液s3を、硬化後の厚みが1.0μmとなるように塗布したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミドフィルムを得た後、金属張積層板13を作製した。得られた金属張積層板13は接着強度、寸法安定性には問題なかったが、エッチング後の絶縁樹脂層の形状に凹凸が生じた。
【0105】
比較例4
作製例1で得られた前駆体溶液s1における前駆体成分a1と、作製例3で得られた前駆体溶液s3における前駆体成分b3との重量比が25対75の割合になるように、前駆体溶液s1及び前駆体溶液s3を混合した後、DMAcを加えて希釈し、前駆体成分としての固形分濃度を12重量%に調整した混合溶液p7を用意した。
実施例1における混合溶液p1をウェット厚み約30μmで塗布の代わりに、前記の混合溶液p7を、硬化後の厚みが1.0μmとなるように塗布したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミドフィルムを得た後、金属張積層板14を作製した。得られた金属張積層体14は接着強度、寸法安定性には問題なかったが、エッチング後の絶縁樹脂層の形状に凹凸が生じた。
【0106】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程I)〜III)、
I)ポリアミド酸の溶液を塗布、乾燥して、線熱膨張係数が1〜30(×10-6/K)の範囲にある低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)となる層を形成する工程、
II)非熱可塑性ポリイミド樹脂(A)の前駆体樹脂(A')及び熱可塑性ポリイミド樹脂(B)の前駆体樹脂(B')を含む混合溶液であって、前駆体樹脂(A')及び(B')の合計100重量部に対して前駆体樹脂(A')を30〜85重量部含む混合溶液を塗布、乾燥して、厚みが0.1〜3.0μmの範囲にある接着性層(Y)となる層を形成する工程、並びに
III)イミド化して、低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)及び接着性層(Y)を形成する工程、
を備え、任意の順で工程I)、II)を行った後、工程III)を行うことを特徴とする低熱膨張性のポリイミド樹脂層の少なくとも片面に接着性層を有するポリイミド樹脂積層体の製造方法。
【請求項2】
工程II)、工程I)、工程II)、次いで工程III)を行うことを特徴とする請求項1記載のポリイミド樹脂積層体の製造方法。
【請求項3】
非熱可塑性ポリイミド樹脂(A)の線熱膨張係数が、1〜30(×10-6/K)の範囲であることを特徴とする請求項1記載の接着性層を有するポリイミド樹脂積層体の製造方法。
【請求項4】
熱可塑性ポリイミド樹脂(B)のガラス転移温度が、200〜320℃の範囲であることを特徴とする請求項1記載の接着性層を有するポリイミド樹脂積層体の製造方法。
【請求項5】
非熱可塑性ポリイミド樹脂(A)の前駆体樹脂(A')が、低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)を形成するために使用されるポリアミド酸と同種であることを特徴とする請求項1記載の接着性層を有するポリイミド樹脂積層体の製造方法。
【請求項6】
次の工程a)〜d)、
a)基材上にポリアミド酸の溶液を塗布、乾燥して、線熱膨張係数が1〜30(×10-6/K)の範囲にある低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)となる層を形成する工程、
b)該低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)となる層の上に、非熱可塑性ポリイミド樹脂(A)の前駆体樹脂(A')及び熱可塑性ポリイミド樹脂(B)の前駆体樹脂(B')を含む混合溶液であって、前駆体樹脂(A')及び(B')の合計100重量部に対して前駆体樹脂(A')を30〜85重量部含む混合溶液を塗布、乾燥して、厚みが0.1〜3.0μmの範囲にある接着性層(Y)となる層を形成する工程、
c)イミド化して、低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)及び接着性層(Y)を形成する工程、並びに
d)接着性層(Y)の表面に金属箔を重ね合わせて熱圧着する工程、又は接着性層(Y)の表面に金属薄膜層を蒸着する工程、
を備えることを特徴とする金属張積層板の製造方法。
【請求項7】
次の工程f)〜h)、
f)金属箔の上に、非熱可塑性ポリイミド樹脂(A)の前駆体樹脂(A')及び熱可塑性ポリイミド樹脂(B)の前駆体樹脂(B')を含む混合溶液であって、前駆体樹脂(A')及び(B')の合計100重量部に対して前駆体樹脂(A')を30〜85重量部含む混合溶液を塗布、乾燥して、厚みが0.1〜3.0μmの範囲にある接着性層(Y)となる層を形成する工程、
g)該接着性層(Y)となる層の上に、ポリアミド酸の溶液を塗布、乾燥して、線熱膨張係数が1〜30(×10-6/K)の範囲にある低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)となる層を形成する工程、並びに
h)イミド化して、低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)及び接着性層(Y)を形成する工程、
を備えることを特徴とする金属張積層板の製造方法。
【請求項8】
次の工程i)〜m)、
i)金属箔の上に、非熱可塑性ポリイミド樹脂(A)の前駆体樹脂(A')及び熱可塑性ポリイミド樹脂(B)の前駆体樹脂(B')を含む混合溶液であって、前駆体樹脂(A')及び(B')の合計100重量部に対して前駆体樹脂(A')を30〜85重量部含む混合溶液を塗布、乾燥して、厚みが0.1〜3.0μmの範囲にある接着性層(Y)となる層を形成する工程、
j)該接着性層(Y)となる層の上に、ポリアミド酸の溶液を塗布、乾燥して、線熱膨張係数が1〜30(×10-6/K)の範囲にある低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)となる層を形成する工程、
k)更に、該低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)となる層の上に、前記混合溶液を塗布、乾燥して、厚みが0.1〜3.0μmの範囲にある接着性層(Y)となる層を形成する工程、
l)イミド化して、低熱膨張性のポリイミド樹脂層(X)及び接着性層(Y)を形成する工程、並びに
m)接着性層(Y)の表面層に金属箔を重ね合わせて熱圧着する工程、又は接着性層(Y)の表面層に金属薄膜層を蒸着する工程
を備えることを特徴とする金属張積層板の製造方法。

【公開番号】特開2009−184130(P2009−184130A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23546(P2008−23546)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】