説明

ポリイミド樹脂粒子の製造方法

【課題】アミド基含有のポリイミド樹脂粒子を、安定に得るための製造方法を提供する。
【解決手段】ポリイミド溶液からポリイミド樹脂粒子を析出させる製造方法であって、該ポリイミド溶液が主鎖骨格にアミド基を有するポリイミド樹脂を含み、該ポリイミド溶液を40℃から80℃の温度に保持した状態で、貧溶媒として少なくともカルボン酸とアルコールを添加して、ポリイミド樹脂粒子を析出させるポリイミド樹脂粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド溶液にポリイミド樹脂の貧溶媒を添加し、ポリイミド樹脂粒子を析出させる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、耐熱性、電気絶縁性、耐溶剤性に優れていることから、電子材料として広く使用されている。しかし、耐溶剤性に優れているために、逆に成形加工の際に困難を伴うことがあった。これまでは、前駆体であるポリアミド酸を塗工し、フィルム形態として用いることが一般的であった。
【0003】
近年、電子材料の製造方法にも変化があり、フィルムではなく、様々な基材に塗工することが可能な溶液タイプの耐熱材料の開発が求められており、有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂の開発が検討されている。ポリイミド樹脂が溶媒に可溶であることで、加工の自由度が飛躍的に向上する。また、用途によって、適した溶媒を選択することも可能となる。さらに、熱安定性や低熱膨張特性を示す材料の開発が求められており、可溶性かつ剛直な構造のポリイミド樹脂の開発が検討されている。しかし、ポリイミド樹脂を粒子化することは容易ではなく、特に剛直な構造では、単に貧溶媒に投入するなどの方法では、樹脂が粉体にならずに塊状になってしまうことやゲル状になってしまうことがある。この様なポリイミド樹脂の塊は非常に堅く、事後に粉砕することは容易ではない。更に、塊の中に重合時等に使用した副原料や溶媒等が取り込まれてしまい、後に使用する際に不純物として混入するという問題もあった。
【0004】
可溶性を示すポリイミド樹脂粒子の製造方法はいくつか知られているが、ポリイミド樹脂粒子の製造方法は、ポリアミド酸からポリイミドへ変性する際の溶解性の変化を利用して析出させるものであり、特に条件を操作してその粉体の形状を任意に制御することは検討されていなかった(特許文献1)。ポリイミド樹脂の製造方法として、貧溶媒の添加方法を制御することで、粒径を制御したポリイミド樹脂を製造する方法が報告されているが、工程が煩雑であり、工業的な生産には適していない(特許文献2)。溶液を加熱して貧溶媒を添加する方法が報告されているが、ポリイミド樹脂が屈曲した構造の場合に適している方法であり、使用している貧溶媒が剛直な構造のポリイミド樹脂には適していない(特許文献3)。
【0005】
また、熱的特性に優れるアミド基含有可溶性ポリイミド樹脂が知られているが、樹脂粒子の製造方法については、ほとんど述べられていない(特許文献4)。
【特許文献1】特許第3596284号公報
【特許文献2】特開2008−81718号公報
【特許文献3】特開平9−77868号公報
【特許文献4】特開2010−106225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の技術が有する上記課題に鑑みてなされたもので、アミド基含有のポリイミド樹脂粒子を、安定に得るための製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
主鎖骨格にアミド基を有するポリイミド樹脂においては、そのアミド基の存在により、従来の方法では安定的に粒径が制御されたポリイミド樹脂粒子を得ることができなかった。そこで、鋭意検討した結果、ポリイミド溶液の温度を制御し、特定の溶媒の組み合わせによる貧溶媒を使用することにより、解決できることを見出した。
【0008】
本願発明は以下の構成を有するものである。
【0009】
1.ポリイミド溶液からポリイミド樹脂粒子を析出させる製造方法であって、該ポリイミド溶液が主鎖骨格にアミド基を有するポリイミド樹脂を含み、該ポリイミド溶液を40℃から80℃の温度に保持した状態で、貧溶媒として少なくともカルボン酸とアルコールを添加して、ポリイミド樹脂粒子を析出させることを特徴とするポリイミド樹脂粒子の製造方法。
【0010】
2.前記貧溶媒の添加量がポリイミド樹脂に対して重量で、カルボン酸が2〜10倍量、アルコールが2〜20倍量であることを特徴とする1.に記載のポリイミド樹脂粒子の製造方法。
【0011】
3.前記ポリイミド樹脂が一般式(1)で表されることを特徴とする1.または2.に記載のポリイミド樹脂粒子の製造方法。
【0012】
【化1】

【0013】
(Afは芳香環及びフッ素原子を含む2価の有機基、Bは2価の有機基を示す)
4.前記一般式(1)中で表されるAfが下記一般式(2)で表されることを特徴とする3.に記載のポリイミド樹脂粒子の製造方法。
【0014】
【化2】

【0015】
(Dは単結合、CR基(ここで、Rは、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基である。炭素原子に結合する2つのRは、それぞれ異なっていてもよく、環を形成しても構わない。また、アルキル基及びアリール基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい)、CO基、SO基、SiR基(ここで、Rは前記同義である)、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる官能基である。Eはフッ素原子及びフッ素原子を含有する有機基、mは0〜4の整数、lは0〜4の整数である)
5.上記1.〜4.のいずれかに記載の製造方法で製造されたポリイミド樹脂粒子であり、樹脂中の残存溶媒が、樹脂に対して1重量%以下であることを特徴とするポリイミド樹脂粒子。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、安定的に粒径が制御されたポリイミド樹脂粒子を得ることができる。したがって例えば、これを適した有機溶媒等に溶解して使用することが可能であり、また、混入する不純物の量を低減することも可能である。特に電子材料用途で使用する際に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
ポリイミド溶液からポリイミド樹脂粒子を析出させる製造方法であって、該ポリイミド溶液が主鎖骨格にアミド基を有するポリイミド樹脂を含み、該ポリイミド溶液を40℃から80℃の温度に保持した状態で、貧溶媒として少なくともカルボン酸とアルコールを添加して、ポリイミド樹脂粒子を析出させることを特徴とするポリイミド樹脂粒子の製造方法である。この方法によれば、得られるポリイミド樹脂が塊とならず、後に強固な塊を粉砕する等の作業を行うことなしに、後の加工性が良好な樹脂を得ることができる。また、ポリイミド樹脂粒子の中に重合時等に使用した副原料や溶媒等が取り込まれてしまうことが低減でき、その結果不純物の含有量を低下することが可能となる。
【0018】
本発明のポリイミド樹脂の製造方法は、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸を重合し、その後、脱水触媒とイミド化剤を添加し、イミド化反応溶媒中でイミド化を完結した後、イミド化反応溶媒中に、貧溶媒を投入し、ポリイミド樹脂として得る製造方である。なお本明細書中での「ポリイミド溶液」という表現に「イミド化反応液」は含まれるものとする。
【0019】
本発明のポリイミド樹脂粒子の製造方法はポリイミドとしてのイミド基を含有するだけでなく、アミド基を有する剛直な骨格を含有するポリイミドについて効果的に好適に用いることができる。
【0020】
本発明のポリイミド樹脂は、一般式(1)で表されるポリイミド樹脂であることが、熱的特性、特にフィルム化したときの線熱膨張係数を低くできるという点で、好ましい。
【0021】
【化3】

【0022】
(Afは芳香環及びフッ素原子を含む2価の有機基、Bは2価の有機基を示す)
上記一般式(1)中で表されるAfが下記一般式(2)で表されることが、さらに熱的特性の点で好ましい。
【0023】
【化4】

【0024】
(Dは単結合、CR基(ここで、Rは、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基である。炭素原子に結合する2つのRは、それぞれ異なっていてもよく、環を形成しても構わない。また、アルキル基及びアリール基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい)、CO基、SO基、SiR基(ここで、Rは前記同義である)、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる官能基である。Eはフッ素原子及びフッ素原子を含有する有機基、mは0〜4の整数、lは0〜4の整数である)
フッ素原子は、上記一般(2)中、Dに含まれていても、Eに含まれてもよいが、剛直なポリマー構造とするためには、Eに含まれることが好ましい。つまり、m=1〜4の整数であることが好ましい。また、Eは入手性の観点から、フッ素原子あるいはトリフルオロメチル基であることが好ましい。
【0025】
上記(1)式は、アミド結合を有していることから、Afの出発原料としては、ジアミンが一般的に使用される。使用されるジアミンは、1,4−ジアミノ−2−フルオロヘンゼン、1,4−ジアミノ−2,3−ジフルオロベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ジフルオロベンゼン、1、4−ジアミノ−2,6−ジフルオロベンゼン、1,4−ジアミノ−2,3,5−トリフルオロベンゼン、1、4−ジアミノ、2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン、1,4−ジアミノ−2−(トリフルオロメチル)ヘンゼン、1,4−ジアミノ−2,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1、4−ジアミノ−2,6−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2,3,5−トリス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1、4−ジアミノ、2,3,5,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン、2−フルオロベンジジン、3−フルオロベンジジン、2,3−ジフルオロベンジジン、2,5−ジフルオロベンジジン、2、6−ジフルオロベンジジン、2,3,5−トリフルオロベンジジン、2,3,6−トリフルオロベンジジン、2,3,5,6−テトラフルオロベンジジン、2,2’−ジフルオロベンジジン、3,3’−ジフルオロベンジジン、2,3’−ジフルオロベンジジン、2,2’,3−トリフルオロベンジジン、2,3,3’−トリフルオロベンジジン、2,2’,5−トリフルオロベンジジン、2,2’,6−トリフルオロベンジジン、2,3’,5−トリフルオロベンジジン、2,3’,6,−トリフルオロベンジジン、2,2’,3,3’−テトラフルオロベンジジン、2,2’,5,5’−テトラフルオロベンジジン、2,2’,6,6’−テトラフルオロベンジジン、2,2’,3,3’,6,6’−ヘキサフルオロベンジジン、2,2’,3,3’,5,5’、6,6’−オクタフルオロベンジジン、2−(トリフルオロメチル)ベンジジン、3−(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2、6−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,5−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,6−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,5,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,3’−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,5−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,6−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’,5−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’,6,−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,3,3’−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0026】
次に本発明の上記一般式(1)中のBについて説明する。
【0027】
上記一般式(1)中のBの構造は任意のものが使用可能である。使用できるジアミンモノマーの具体例として、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,3'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、3,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,3'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,4'−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、4,4'−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4'−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4'−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4'−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4'−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3'−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3'−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6'−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3',3'−テトラメチル−1,1'−スピロビインダン、6,6'−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3',3'−テトラメチル−1,1'−スピロビインダン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、trans−1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4−ジアミノ−2−フルオロヘンゼン、1,4−ジアミノ−2,3−ジフルオロベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ジフルオロベンゼン、1、4−ジアミノ−2,6−ジフルオロベンゼン、1,4−ジアミノ−2,3,5−トリフルオロベンゼン、1、4−ジアミノ、2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン、1,4−ジアミノ−2−(トリフルオロメチル)ヘンゼン、1,4−ジアミノ−2,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1、4−ジアミノ−2,6−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2,3,5−トリス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1、4−ジアミノ、2,3,5,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン、2−フルオロベンジジン、3−フルオロベンジジン、2,3−ジフルオロベンジジン、2,5−ジフルオロベンジジン、2、6−ジフルオロベンジジン、2,3,5−トリフルオロベンジジン、2,3,6−トリフルオロベンジジン、2,3,5,6−テトラフルオロベンジジン、2,2’−ジフルオロベンジジン、3,3’−ジフルオロベンジジン、2,3’−ジフルオロベンジジン、2,2’,3−トリフルオロベンジジン、2,3,3’−トリフルオロベンジジン、2,2’,5−トリフルオロベンジジン、2,2’,6−トリフルオロベンジジン、2,3’,5−トリフルオロベンジジン、2,3’,6,−トリフルオロベンジジン、2,2’,3,3’−テトラフルオロベンジジン、2,2’,5,5’−テトラフルオロベンジジン、2,2’,6,6’−テトラフルオロベンジジン、2,2’,3,3’,6,6’−ヘキサフルオロベンジジン、2,2’,3,3’,5,5’、6,6’−オクタフルオロベンジジン、2−(トリフルオロメチル)ベンジジン、3−(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2、6−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,5−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,6−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,5,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,3’−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,5−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,6−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’,5−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’,6,−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,3,3’−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジンが挙げられる。
【0028】
上記Bの好ましい具体例としては、上記Afの具体例として示したジアミンが使用される。
【0029】
目的物性に応じて、他のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを使用することができる。上記一般式(1)で表される本発明のポリイミドの繰り返し単位は、溶解性と低線熱膨張係数のバランスにより選択されるが、ポリマー全体の30モル%以上、好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上含んでいることが好ましい。また、上記一般式(1)の繰り返し単位は、規則的に配列されていてもよいし、ランダムにポリイミド中に存在していてもよい。
【0030】
上記一般式(1)の繰り返し単位以外の併用可能な他のテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス[(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル]ベンゼン二無水物、1,4−ビス[(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル]ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、4,4'−ビス[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]ビフェニル二無水物、4,4'−ビス[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]ビフェニル二無水物、ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルフィド二無水物、2,2−ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}−1,1,1,3,3,3−プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。
【0031】
上記一般式(1)の繰り返し単位以外の併用可能な他のジアミンとしては、上記一般式(1)のBで説明した同等のジアミンが使用される。
【0032】
ポリアミド酸の重合に使用される有機溶媒としては、使用するテトラカルボン酸二無水物およびジアミンと反応せず、前駆体であるポリアミド酸を溶解することができれば特に制限されない。例えば、メチル尿素、N,N−ジメチルエチルウレアのようなウレア系溶媒、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、テトラメチルスルフォンのようなスルホキシドあるいはスルホン系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N’−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチルラクトン、ヘキサメチルリン酸トリアミドのようなアミド系溶媒、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化アルキル系溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、p−クレゾールメチルエーテルなどのエーテル系溶媒を挙げることができ、通常これらの溶媒を単独で用いるか必要に応じて2種以上を適宜組み合わせて用いて良い。ポリアミド酸の溶解性及び反応性の観点から、DMF,DMAc、NMPなどが好ましく使用される。
【0033】
前駆体であるポリアミド酸からポリイミドとする方法としては、ポリアミド酸に脱水触媒とイミド化剤を添加したポリアミド酸ワニスを、反応溶媒中でイミド化する方法が挙がられる。
【0034】
上記にあるイミド化剤としては、3級アミンを用いることができる。3級アミンとしては複素環式の3級アミンがさらに好ましい。複素環式の3級アミンの好ましい具体例としてはピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリンなどをあげることができる。酸無水物としては具体的には無水酢酸、プロピオン酸無水物、n−酪酸無水物、安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物等が好ましい具体例として挙げることができる。
【0035】
イミド化剤や脱水触媒の添加量としては、ポリアミド酸のアミド基に対して、イミド化剤は0.5から5.0倍モル当量、さらには0.7〜2.5倍モル当量、特には0.8〜2.0倍モル当量が好ましい。また、脱水触媒は0.5から10.0倍モル当量、さらには0.7〜5.0倍モル当量、特には0.8〜3.0倍モル当量が好ましい。
【0036】
ポリアミド酸溶液にイミド化剤や脱水触媒を加える際、溶剤に溶かさず直接加えても良いし、溶剤に溶かしたものを加えても良い。直接加える方法ではイミド化剤や脱水触媒が拡散する前に反応が急激に進行しゲルが生成することがある。好ましくはイミド化剤や脱水触媒を溶剤に溶かし、その溶液をポリアミド酸溶液に混合することが好ましい。
【0037】
イミド化反応溶媒中に、貧溶媒を投入し、ポリイミド樹脂として得る方法について記載する。
【0038】
本発明で使用する貧溶媒としては、ポリイミド溶液に含有されている有機溶剤と混和し、ポリイミド樹脂に対して貧溶媒であり、かつ樹脂に対して溶解性の異なる2種類以上の溶媒を用いることができる。溶媒種としては、カルボン酸とアルコールから1種類以上それぞれ選択される2種類以上の溶媒であることが好ましい。ポリイミド樹脂粒子を得る際の貧溶媒として、その汎用性の高さから一般的にアルコールは好適に用いられているが、本発明のようなアミド基を含有するポリイミド樹脂においてはアルコールのみでは、樹脂同士の凝集が起こり、良好な樹脂粒子を得ることが困難である。カルボン酸を貧溶媒として併用することで、アミド基やイミド基同士の凝集を防ぐことができ、塊状にならすに良好な樹脂粒子を得ることができる。また、カルボン酸のみでも樹脂粒子を得ることは可能であるが、樹脂に対してアルコールよりも溶解性が高いため、析出能力が十分でなく、収率が悪化する可能性があり、また大量の溶媒量が必要となり好ましくない。添加する貧溶媒量としては重量で、樹脂に対して5〜20倍量が好ましい。5倍量以下であると十分な収率が確保できない可能性があり好ましくない。20倍量以上であると取得でききる樹脂に対して溶媒量がかなり大量となってしまい、生産性の観点から好ましくない。カルボン酸の添加量は、ポリイミド樹脂の凝集効果を十分に発現させるために、ポリイミド樹脂に対して重量で2〜10倍量であることが好ましく、生産性の観点から3〜5倍量であることがさらに好ましい。アルコールの添加量は、十分な収率を確保するという観点から重量で2〜20倍量であることが好ましく、生産性の観点から5〜15倍量であることが特に好ましい。イミド化反応液への貧溶媒の添加は、はじめにカルボン酸を添加し、その後アルコールを添加する方法またはカルボン酸とアルコールをあらかじめ混合しておき、その混合溶媒をイミド化反応液に添加する方法が好ましい。用いるカルボン酸としては、特に限定はないが、鎖式モノカルボン酸が好ましく、入手性および単離後の乾燥のしやすさという観点から酢酸であることが最も好ましい。用いるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、2−プロピルアルコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、2−ブチルアルコール、2−ヘキシルアルコール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、フェノール、t−ブチルアルコールなどが挙げられる。上記アルコールの中でも2−プロピルアルコール、2−ブチルアルコール、2−ペンチルアルコール、フェノール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコールが、単離後のポリイミド樹脂の安定性という観点から好ましく、この後の工程である乾燥のしやすさという観点から2−プロピルアルコールが特に好ましい。
【0039】
イミド化反応液に貧溶媒を添加する際、温度を制御しながら、貧溶媒を投入することで、さらに安定的にポリイミド樹脂を得ることができる。この時のイミド化反応液の温度としては、40℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上70℃以下がさらに好ましく、55℃以上65℃以下であることが、特に好ましい。40℃以下の温度であると、ポリイミド樹脂の溶解性が悪く、貧溶媒を添加した際に樹脂が析出しやすく、塊状となって分離してしまう可能性がある。また80℃以上の温度にすると、イミド化率の低下が起こる可能性が高くなるために好ましくない。上述したような温度に制御することで、ポリイミド樹脂の溶液への溶解性を保持しながら、貧溶媒との親和性も向上させることができ、塊状になることなく良好なポリイミド樹脂粒子を得ることが可能となる。
【0040】
ポリイミド樹脂溶液を貧溶媒中に投入する際、ポリイミド樹脂溶液の固形分濃度は、撹拌が可能な粘度であるならば特に制限されないが、粒径を制御するという観点から濃度は希薄である方が好ましい。しかし、希薄すぎる場合、ポリイミド樹脂を析出させるために、大量の貧溶媒を使用することとなり、好ましくない。これらの観点より、ポリイミド樹脂溶液の固形分濃度が15%以下、好ましくは10%以下の状態になるように希釈を行った後に、貧溶媒溶液中にポリイミド溶液を投入することが好ましい。
【0041】
ここで得られたポリイミド樹脂粒子は、少量のイミド化剤や脱水剤を含んでいるため、上記貧溶媒、特に2−プロピルアルコール等のアルコール系溶媒で数回洗浄することが好ましい。
【0042】
得られたポリイミド樹脂粒子の乾燥方法は、真空乾燥でも、熱風乾燥でもよい。樹脂に含まれる溶媒を完全に乾燥させるためには、真空乾燥の使用が望ましく、乾燥温度は100〜200℃の範囲が好ましく、120〜150℃以下で行うことが特に好ましい。
【0043】
ポリイミド樹脂粒子の粒径は、ハンドリングのしやすさ、本発明の樹脂粒子を溶媒に溶解して溶液を得る場合の工程など加工性の観点から1μm以上5000μm未満であることが好ましく、2μm以上3000μm未満であることが特に好ましい。なお、本明細書中での「良好な樹脂粒子」とは、粒径が1μm以上5000μm未満である樹脂粒子のことを表している。
【0044】
上記の方法で得られたポリイミド樹脂粒子中には微量の重合溶剤などの残存溶媒が存在する。これらを完全に除去することは非常に困難である。この残存溶媒は、ここから先の加工においては不純物となるため、多量に存在していると問題となる。残存溶媒量は、2重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることが更に好ましい。ここでの残存溶媒量とは、樹脂の重量に対して、残存している溶媒の重量の割合を表している。
【0045】
本発明のポリイミド樹脂は、例えば適した有機溶媒等に溶解して使用することが可能であり、また、混入する不純物の量を低減することも可能である。特に電子材料用途で使用する際に有用である。使用できる溶媒としては、アミド系溶媒や、エーテル系、ケトン系、エステル系、グリコールエーテル系、及びグリコールエステル系溶媒などがあげられる。アミド系溶媒としては、溶解性の観点からN,N−ジメチルアセトアミドまたはN,N−ジメチルホルムアミドを用いることが好ましい。また、アミド系以外の溶媒としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルトリグライムより選択される溶媒であることが好ましく、アミド系溶媒との沸点の差が少ないという観点からシクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートより選択される溶媒を用いることが特に好ましい。アミド系溶媒とアミド系以外の溶媒との混合溶媒も使用できる。
【0046】
本発明に係るポリイミド樹脂粒子は、例えば適した有機溶媒等に溶解して、フィルム状に成形し、その表面に金属酸化物や透明電極等の各種無機薄膜を形成していても良い。これら無機薄膜の製膜方法は特に限定されるものではなく、例えばCVD法、スパッタリング法や真空蒸着法、イオンプレーティング法等のPVD法であっても良い。
【0047】
本発明に係るポリイミド樹脂粒子は、耐熱性、絶縁性等のポリイミド本来の特性に加えて、高い寸法安定性及び高い有機溶媒への溶解性を有し、さらに塗工性にも優れることから、これらの特性が有効とされる分野・製品、例えば、印刷物、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー基板、TFT基板、光学フィルムおよびその他の光学材料、液晶表示装置、有機EL及び電子ペーパー等の画像表示装置、電子デバイス材料、あるいは太陽電池に好適に使用され、さらには現在ガラスが使用されている部分の代替材料として適用すすることができる。
【実施例】
【0048】
(評価方法)
本明細書中に記載の材料特性値等は以下の評価法によって得られたものである。
【0049】
<樹脂中の残存溶媒量の測定>
樹脂を1wt%の濃度で1,3−ジオキソランに溶解し、この溶液中の残存溶媒濃度をガスクロマトグラフィーにて測定を行った。ガスクロマトグラフィーの装置は、Hp6890series GC System、HP6890series AutoSampler(HEWLETT PACKARD製)、HG−2500(GL Scteaces製)、KAPSEL−CON Ye−3R(八重崎空圧製)を使用し、カラムは123−7032(J&W製)を用いた。サンプルの注入量は2μl、注入口の温度は225℃、圧力は9.5psiとした。オーブンの初期温度は35℃とし、5分間保持した後、昇温速度20℃/分で155℃まで昇温した。キャリアガスはHeとし、圧力9.5psi、流量2.2ml/分とした。検出器はFIDで、H流量40ml/分、AIR流量450ml/分とした。樹脂合成時に使用した溶媒についてそれぞれ検量線を作成した。
【0050】
(合成例1)
<アミド基含有テトラカルボン酸二無水物の合成(下記式(3))>
【0051】
【化5】

【0052】
ポリテトラフルオロエチレン製のシール栓に4枚羽根撹拌翼を具備したステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコに、トリメリット酸無水物クロライド67.4gを入れ、酢酸エチル190gとn−ヘキサン190gからなる混合溶媒を加えて溶解させ、溶液Aを調製した。更に別の容器に2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(以下、TFMB)25.6gを酢酸エチル72gとn−ヘキサン72gからなる混合溶媒を加えて溶解させ、脱酸剤としてプロピレンオキサイド9.2gを加えて溶液Bを調製した。
【0053】
エタノールアイスバス中で−20℃程度に冷却下で、溶液Aに攪拌下溶液Bを滴下して3時間攪拌し、その後室温で12時間攪拌した。析出物を濾別し、酢酸エチル/n−ヘキサン混合溶媒(体積比1:1)でよく洗浄した。その後、濾別し、60℃で12時間、さらに120℃で12時間真空乾燥して収率70%で白色の生成物を得た。FT−IRにて3380cm−1(アミド基NH伸縮振動)、3105cm−1(芳香族C−H伸縮振動)、1857cm−1、1781cm−1(酸無水物基C=O伸縮振動)、1677cm−1(アミド基C=O伸縮振動)のピーク、また、H−NMRで、δ11.06ppm(s、NH、2H)、δ8.65ppm(s、フタルイミド上、3位CaromH、2H)、δ8.37ppm(フタルイミド上、5および6位CaromH、4H)、δ7.46ppm(d、中央ビフェニル上、6および6’位CaromH、2H)、δ8.13ppm(d、中央ビフェニル上、5および5’位CaromH、2H)、δ8.27ppm(s、中央ビフェニル上、3および3’位CaromH、2H)のピークを確認することができたことから、目的物である上記式(3)に示すアミド基含有テトラカルボン酸二無水物が得られたことを確認した。この化合物の融点をDSCで測定したところ、274℃であった。
【0054】
(合成例2)
<ポリイミド溶液の合成>
ポリテトラフルオロエチレン製のシール栓に4枚羽根撹拌翼を具備したステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコに、TFMB9.7gを入れ、重合用溶媒として脱水したDMF153gを仕込み攪拌した後、この溶液に、合成例(1)のアミド基含有テトラカルボン酸二無水物20.2gを加え、10分撹拌後、酢酸17gを添加し、室温で撹拌することでポリアミド−アミド酸を得た。なお、この反応溶液におけるジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応液に対して15重量%となっていた。
【0055】
5時間撹拌後に、DMFを88g添加し撹拌したのち、イミド化触媒としてピリジンを4.8gを添加して、完全に分散させた。分散させた溶液中に無水酢酸7.4gを添加して攪拌し、100℃で4時間攪拌して、ポリイミド溶液を得た。
【0056】
(実施例1)
<ポリイミド樹脂粒子の製造>
合成例2で合成したポリイミド溶液を60℃に加熱し、撹拌しながら、酢酸160gを10分程度で添加した。その後、2−プロピルアルコール(以下、IPA)440gを30分かけて添加し、目的とするポリイミド樹脂粒子を沈殿させた。その後、2時間放冷し、液温が25℃となったところで、桐山ロートにより、吸引ろ過し、さらに300gのIPAにて洗浄した。この洗浄を5回繰り返し、桐山ロートにより、吸引ろ過し120℃に設定した真空オーブンで一晩乾燥させることで、収量28.5g(収率:95%)で粒径が2〜300μmの良好な樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子中の残存溶媒はDMF:0.5wt%であり、その他の溶媒は検出されなかった。
【0057】
(実施例2)
<ポリイミド樹脂粒子の製造>
合成例2で合成したポリイミド溶液を60℃に加熱し、撹拌しながら、酢酸160gを10分程度で添加した。その後、酢酸40gとIPA80gを混合した溶液を20分かけて添加し、その後、IPA280gを30分かけて添加し、目的とするポリイミド樹脂粒子を沈殿させた。その後、2時間放冷し、液温が25℃となったところで、桐山ロートにより、吸引ろ過し、さらに300gのIPAにて洗浄した。この洗浄を5回繰り返し、桐山ロートにより、吸引ろ過し120℃に設定した真空オーブンで一晩乾燥させることで、収量28.5g(収率:95%)で粒径が2〜200μmの良好な樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子中の残存溶媒はDMF:0.4wt%であり、その他の溶媒は検出されなかった。
【0058】
(比較例1)
<ポリイミド樹脂粒子の製造>
合成例2で合成したポリイミド溶液を、室温にて撹拌しながら、IPA100g添加したところで、ポリイミド樹脂が塊状となって相分離してしまい、粒子を得ることはできなかった。さらにIPA500を添加し、桐山ロートにより、吸引ろ過し、塊状の樹脂を分離した。この塊を、はさみでカットして、300gのIPAにて洗浄した。この洗浄を5回繰り返し、桐山ロートにより、吸引ろ過し120℃に設定した真空オーブンで一晩乾燥させることで、収量28.5g(収率:95%)で生成物を得た。得られた樹脂粒子中の残存溶媒はDMF:2.0wt%、IPA:0.5wt%であった。
【0059】
(比較例2)
<ポリイミド樹脂粒子の製造>
合成例2で合成したポリイミド溶液を、60℃に加熱して撹拌しながら、IPAを添加したが、IPA60g添加したところでポリイミド樹脂がダマ状となってしまい、粒径が5〜20mmのあられ状の粒子となってしまった。さらにIPA500を添加し、桐山ロートにより、吸引ろ過し、あられ状の樹脂を分離した。この樹脂を、300gのIPAにて洗浄した。この洗浄を5回繰り返し、桐山ロートにより、吸引ろ過し120℃に設定した真空オーブンで一晩乾燥させることで、収量28.5g(収率:95%)で生成物を得た。得られた樹脂粒子中の残存溶媒はDMF:1.5wt%、IPA:0.5wt%であった。
【0060】
(比較例3)
<ポリイミド樹脂粒子の製造>
IPA600gを撹拌しながら、合成例2で合成したポリイミド溶液を3時間かけて添加したところ、ポリイミド樹脂は、繊維状になった。桐山ロートにより、吸引ろ過し、繊維状のポリイミド樹脂を、はさみでカットして、300gのIPAにて洗浄した。この洗浄を5回繰り返し、桐山ロートにより、吸引ろ過し120℃に設定した真空オーブンで一晩乾燥させることで、収量25.0g(収率:83%)で生成物を得た。得られた樹脂粒子中の残存溶媒はDMF:2.5wt%、IPA:0.5wt%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド溶液からポリイミド樹脂粒子を析出させる製造方法であって、該ポリイミド溶液が主鎖骨格にアミド基を有するポリイミド樹脂を含み、該ポリイミド溶液を40℃から80℃の温度に保持した状態で、貧溶媒として少なくともカルボン酸とアルコールを添加して、ポリイミド樹脂粒子を析出させることを特徴とするポリイミド樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記貧溶媒の添加量がポリイミド樹脂に対して重量で、カルボン酸が2〜10倍量、アルコールが2〜20倍量であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
前記ポリイミド樹脂が一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミド樹脂粒子の製造方法。
【化1】

(Afは芳香環及びフッ素原子を含む2価の有機基、Bは2価の有機基を示す)
【請求項4】
前記一般式(1)中で表されるAfが下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項3に記載のポリイミド樹脂粒子の製造方法。
【化2】

(Dは単結合、CR基(ここで、Rは、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基である。炭素原子に結合する2つのRは、それぞれ異なっていてもよく、環を形成しても構わない。また、アルキル基及びアリール基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい)、CO基、SO基、SiR基(ここで、Rは前記同義である)、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる官能基である。Eはフッ素原子及びフッ素原子を含有する有機基、mは0〜4の整数、lは0〜4の整数である)
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法で製造されたポリイミド樹脂粒子であり、樹脂中の残存溶媒が、樹脂に対して1重量%以下であることを特徴とするポリイミド樹脂粒子。

【公開番号】特開2013−7003(P2013−7003A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142123(P2011−142123)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】