説明

ポリイミド粒子の製造方法及びポリイミド粒子

【課題】 特定の化学構造からなり粒径が揃ったポリイミド微粒子、好ましくは平均粒子径が2.0μm未満で粒度分布が単峰性のポリイミド微粒子を、再現性良く安定的に、且つ効率よく得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 テトラカルボン酸成分の主成分がピロメリット酸類からなり、且つジアミン成分の主成分がパラフェニレンジアミンからなるポリイミド粒子の製造法方において、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とをテトラカルボン酸成分に対して0.1〜5.0倍モル量の水を含有した溶媒中で重合イミド化反応させてポリイミド粒子を析出させることを特徴とするポリイミド粒子の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の化学構造からなり粒径が揃ったポリイミド微粒子を再現性よく安定的に且つ効率よく得ることができる製造方法、及び該製造方法で得ることができる新規なポリイミド微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド粒子の製造方法は既に種々知られている。例えば、特許文献1には、ビフェニルテトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分とをアミド系溶媒に溶解した均一溶液を、比較的高温で撹拌しながら反応させてポリイミド粉末を析出させる、ポリイミド粉末の製造方法が開示されている。
【0003】
特許文献2は、ポリイミドフィルム中にポリイミド微粒子を分散含有させた易滑性ポリイミドフィルムに関する。ここには、芳香族テトラカルボン酸と芳香族ジアミンとを有機極性溶媒中で反応させてポリアミド酸溶液を調製した後、ポリアミド酸溶液を加熱することによって、ポリイミド微粒子を析出させて得ることが記載されている。また実施例2では、ピロメリット酸二無水物とパラフェニレンジアミンとを用いて、低濃度で、粒径が2〜3μmのポリイミド微粒子を得ている。
【0004】
特許文献3も、ポリイミド粒子を用いた易滑性ポリイミドフィルムに関する。ここには、極性溶媒にパラフェニレンジアミンおよびピロメリット酸二無水物が80%以上の等モル量を混合物中のポリイミドが3〜10質量%となる割合で加え、必要であれば分散剤を加えて、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下に撹拌しながら160℃程度まで昇温し、この温度で2〜5時間程度加熱した後冷却してポリイミド粒子を得ることが記載されている。また参考例1では、ピロメリット酸二無水物とパラフェニレンジアミンとを用いて、メジアン径0.3μm、分布範囲0.1〜1μm、短径と長径との比が3〜6の柱状粒子からなるポリイミド粒子を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57−200452号公報
【特許文献2】特開平06−100714号公報
【特許文献3】特開2005−126707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、ピロメリット酸二無水物とパラフェニレンジアミンからポリイミド微粒子はすでに得られている。しかし、その製造方法についての検討は必ずしも十分ではなく、さらに改良の余地があった。
すなわち、溶媒中でポリイミド粒子を析出させて製造する場合に、微粒子化すると粒子表面積が大幅に増加するので、ポリイミド粒子相互間やポリイミド粒子と溶媒との間に非常に大きな相互作用が働き、反応混合物(ポリイミド微粒子分散液)中で、ポリイミド微粒子が凝集して大粒径粒子になったり、粒度分布が大きくなったり、多峰性になるという問題が生じた。特に高濃度の場合には、前記問題に加えて、さらに反応混合物が固化するという問題が生じた。
ポリイミド粒子が大粒径粒子になったり、粒度分布が大きくなったり、多峰性になったりすると、粒径が揃ったポリイミド微粒子を、再現性良く安定的に、且つ効率よく得ることは難しくなる。また、反応終了後の反応混合物の取扱い性、例えば反応槽からの抜き出しや洗浄の際の取扱い性が悪くなる。さらに、反応混合物が固化すると反応を継続できなくなり工業的に取り扱うことは極めて困難になる。
【0007】
本発明は、特定の化学構造からなり粒径が揃ったポリイミド微粒子、好ましくは平均粒子径が2.0μm未満で粒度分布が単峰性のポリイミド微粒子を、前記のような問題の発生を抑制して、再現性良く安定的に、且つ効率よく得ることができる製造方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、前記製造方法で得ることができる新規なポリイミド微粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の各項に関する。
(1) テトラカルボン酸成分の主成分がピロメリット酸類からなり、且つジアミン成分の主成分がパラフェニレンジアミンからなるポリイミド粒子の製造法方において、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを、テトラカルボン酸成分に対して0.1〜5.0倍モル量の水を含有した溶媒中で重合イミド化反応させてポリイミド粒子を析出させることを特徴とするポリイミド粒子の製造方法。
【0009】
(2) テトラカルボン酸成分とジアミン成分との合計量が、テトラカルボン酸成分とジアミン成分と水を含有した溶媒との合計量に対して10質量%以上の濃度であることを特徴とする前記項1に記載のポリイミド粒子の製造方法。
【0010】
(3) 得られるポリイミド粒子の平均粒子径が2.0μm未満であり、粒度分布が単峰性であり、且つ粒子形状が不定形であることを特徴とする前記項1または2に記載のポリイミド粒子の製造方法。
【0011】
(4) テトラカルボン酸成分の主成分がピロメリット酸類からなり、ジアミン成分の主成分がパラフェニレンジアミンからなり、平均粒子径が2.0μm未満であり、粒度分布が単峰性であり、粒子形状が不定形であることを特徴とするポリイミド粒子。
【0012】
(5) 短径と長径との比が3.0未満の不定形の粒子を主成分とすることを特徴とする前記項4に記載のポリイミド粒子。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、特定の化学構造からなり粒径が揃ったポリイミド微粒子、好ましくは平均粒子径が2.0μm未満で粒度分布が単峰性のポリイミド微粒子を、安定的に且つ効率よく得ることができる製造方法、さらに前記製造方法で得ることができる新規なポリイミド微粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】:実施例1で得られたポリイミド粒子のSEM写真
【図2】:実施例2で得られたポリイミド粒子のSEM写真
【図3】:実施例2で得られたポリイミド粒子の粒度分布のヒストグラム
【図4】:実施例3で得られたポリイミド粒子のSEM写真
【図5】:参考例1で得られたポリイミド粒子の粒度分布のヒストグラム
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のポリイミド粒子(粉末)は、テトラカルボン酸成分の主成分がピロメリット酸類からなりジアミン成分の主成分がパラフェニレンジアミンからなる。ここで、主成分とは各成分中80モル%以上、好ましくは90モル%以上、特に100モル%を意味する。このような化学組成は、平均粒子径が小さいポリイミド粒子を得るうえで好適である。なお、ピロメリット酸類とは、好ましくはピロメリット酸二無水物であり、ピロメリット酸及びそのエステル化物などの誘導体であっても構わない。ピロメリット酸類以外のテトラカルボン酸成分としては、ビフェニルテトラカルボン酸類などのベンゼン環を2個有する芳香族テトラカルボン酸類を好適に用いることができる。パラフェニレンジアミン以外のジアミン成分としては、メタフェニレンジアミンやジアミノジフェニルエーテルなどのベンゼン環を1個乃至2個有する芳香族ジアミンを好適に用いることができる。
【0016】
本発明のポリイミド粒子の製造方法は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを、略等モルの割合で用い、テトラカルボン酸成分に対して0.1〜5.0倍モル量の水を含有した溶媒中で重合イミド化反応させて、反応混合物中にポリイミド粒子として析出させることを特徴とする。
略等モルとは、好ましくはテトラカルボン酸成分とジアミン成分とのモル比[テトラカルボン酸成分/ジアミン成分]が、0.95〜1.05程度である。
使用する溶媒は、その溶媒中でテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを重合イミド化できるが、重合イミド化の結果得られるポリイミド粒子は実質的に溶解することができず析出する溶媒であればよく、好ましくは有機極性溶媒である。
有機極性溶媒としては、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタムなどの窒素原子を分子内に含有する有機極性溶媒、例えばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ヘキサメチルスルホルアミドなどの硫黄原子を分子内に含有する有機極性溶媒、例えばクレゾール、フェノール、キシレノールなどフェノール類からなる有機極性溶媒、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラグライムなどの酸素原子を分子内に含有する有機極性溶媒、その他、アセトン、ジメチルイミダゾリン、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ピリジン、テトラメチル尿素などを挙げることができる。これらの溶媒は単独で又これらの溶媒を混合して好適に使用できる。
【0017】
本発明のポリイミド粒子の製造方法において、溶媒は、テトラカルボン酸成分に対して0.1〜5.0倍モル量、好ましくは0.2〜4.0倍モル量、より好ましくは0.5〜2.0倍モル量の水を含有したものを用いる。水を含有しないか或いは水を含有してもその量がテトラカルボン酸成分に対して0.1倍モル未満の場合には高濃度で製造すると反応混合物が固化したり、粒度分布(粒子径の分布)が多峰性になって広がったりするので好ましくなく、また5.0倍モル量を超える場合にも、粒度分布が多峰性になって広がることがある。
【0018】
本発明のポリイミド粒子の製造方法において、テトラカルボン酸成分とジアミン成分との合計量が、テトラカルボン酸成分とジアミン成分と水を含有した溶媒との合計量に対して10質量%以上、好ましくは10質量%超、より好ましくは12質量%以上、特に好ましくは14質量%以上であって、30質量%以下、好ましくは28質量%以下の比較的高濃度で、重合イミド化反応させて反応混合液中にポリイミド粒子として析出させることが好適である。このような比較的高濃度で安定してポリイミド粒子を得ることは、作業性や経済性において効率がよくなるのでより好適である。この濃度範囲よりも高濃度にすると、反応混合物の固化が起こり易くなることがあり、またこの濃度範囲よりも低濃度にすると、粒度分布が多峰性になって広がる場合があり、いずれの場合も本発明の効果が十分には発揮され難くなる。
【0019】
本発明の製造方法は、引用文献1,3に記載された方法を好適に採用できる。限定するものではないが、より具体的に説明すると、例えば撹拌装置を備える反応容器内に、所定量の溶媒と所定量の水とを加え、更にテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを略等モル量加え、比較的低温好ましくは50℃以下より好ましくは40℃以下特に好ましくは室温以下の低温で、撹拌混合する。この混合物を、撹拌を続けながら150℃以上、好ましくは160〜250℃程度の高温に昇温し、その温度で0.5〜20時間程度加熱撹拌して重合イミド化を行う。重合イミド化は、好ましくは還流下で行われる。揮発成分を反応系外に抜き出す必要はない。重合イミド化によって生成するポリイミドは溶媒に実質的に溶解しないので、反応混合物中にポリイミド粒子として析出する。
なお、重合イミド化反応は、窒素ガスの流通下などの乾燥した不活性雰囲気下で好適に行われる。また、反応混合物中には、必要ならば分散剤を加えても構わない。
【0020】
比較的低温で撹拌混合された溶媒と水とテトラカルボン酸成分とジアミン成分とからなる混合物は、実質的にポリアミック酸が形成しないように、加熱によって急速に150℃以上に昇温して重合イミド化を行うことが好ましい。(限定するものではないが、好ましい一つの態様としては、50℃から150℃までの昇温時間が、5時間以下、好ましくは3時間以下、より好ましくは2時間以下、特に好ましくは1時間以下である。)150℃未満で反応を始めても構わないが、比較的低温で長時間反応すると、イミド化が抑制され重合のみによるポリアミック酸の形成が主になるので必ずしも好ましくない。ただし本発明では、反応混合物中に比較的多量の水が存在するのでこの重合反応は比較的限定された範囲に留まる。このためポリアミック酸が析出することもない。最終的には150℃以上の高温まで昇温して重合イミド化してポリイミド粒子を析出させることが重要である。
【0021】
本発明のポリイミド粒子の製造方法は、粒径が揃ったポリイミド微粒子、好ましくは平均粒子径が2.0μm未満で粒度分布が単峰性のポリイミド微粒子を、再現性良く安定的に、且つ効率よく得ることができる。特に比較的高濃度では、反応混合物が容易に固化するために、ポリイミド粉末を安定的に且つ効率よく得ることができなかったところ、本発明の製造方法を用いることによって、粒径が揃ったポリイミド粒子、好ましくは平均粒子径が2.0μm未満で粒度分布が単峰性のポリイミド粒子を、再現性良く安定的に、且つ効率よく得ることができる。
本発明の製造方法によって得られるポリイミド粒子は、平均粒子径が、好ましくは2.0μm未満、より好ましくは1.0μm未満であり、好ましくは0.05μm超、より好ましくは0.1μm超であり、粒度分布が、好ましくは多峰性ではなく単峰性であり、粒子形状が、好ましくは棒状ではなくて不定形であって、短径と長径との比[長径/短径]が、好ましくは3.0未満、より好ましくは2.5未満、さらに好ましくは2.0未満の不定形の粒子を主成分(好ましくは全粒子中の個数の割合で60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上)とする新規なポリイミド粒子である。
なお、粒度分布が単峰性(単分散)とは、粒度分布が単分散の状態であって、ポリイミド粒子の粒度分布のヒストグラムが一つの峰(ピーク)のような形状を示す場合を表す。一方、粒度分布が多峰性(多分散)とは、粒度分布が多分散の状態であって、ポリイミド粒子の粒度分布のヒストグラムが複数の峰を示す場合を表す。
さらに、粒子形状が不定形とは、例えば棒状のような一定の粒子形状を持たないで、種々の形状からなることを意味する。
【0022】
反応混合物中に析出して得られたポリイミド粒子は、混合物(分散液)のままで、或いはろ過などによって溶媒と分離し乾燥して微粉末として、或いは一旦分離したポリイミド粒子を別の溶媒中に分散させた分散液として好適に用いることができる。
【0023】
なお、本発明のポリイミド粒子は、従来ポリイミド粒子が用いられていた成形材料用途や各種材料の充填剤用途で好適に用いることができる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例等によってより詳しく説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0025】
以下、ポリイミド粒子の評価方法について説明する。
〔ポリイミド粒子の粒度分布〕
測定はレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置HORIBA LA−920を用いた。分散媒であるエタノールに、試料であるポリイミド粒子のN−メチル−2−ピロリドン分散液を添加し、透過率が90%前後になるように調整した。測定前に超音波処理を4分間行なった。
【0026】
〔ポリイミド粒子のSEM写真、ポリイミド粒子の形状〕
試料であるポリイミド粒子のN−メチル−2−ピロリドン分散液を、ブフナー漏斗とろ紙(富士フィルム製 micro filter FR−20,pore size:0.2μm)とを用いて減圧ろ過を行なった。得られたろ物を、真空乾燥機を用いて100℃、15時間、10mmHg以下で加熱減圧して乾燥した。乾燥後の固形物を乳鉢と乳棒とを用いてバラバラに解し測定用サンプル粉末を得た。得られた粉末とエタノールとの混合液を、超音波処理を4分間行なって分散液を得た。
粒子の観察は日立ハイテクノロジーズ製S−4800型電界放出形走査電子顕微鏡を用いて行なった。試料台に前記分散液を適量滴下し室温で乾燥させた。試料をスパッタにより金被膜し観察を行なった。
【0027】
〔実施例1〕
攪拌機、還流冷却器、温度計を備えた容量500mlの四つ口セパラブルフラスコに、ピロメリット酸二無水物21.81g(0.1mol)、p-フェニレンジアミン10.81g(0.1mol)、純水1.80g(0.1mol)、及び溶媒のN−メチル−2−ピロリドン183.1gを仕込み混合した。この混合物を120℃のオイルバスで加熱し始め、回転速度150rpmで攪拌しながら、190℃まで昇温(50℃から150℃までの昇温時間は1時間以下)し、その温度で3時間加熱して黄色のポリイミド粒子が析出した反応混合物(分散液)を得た。
【0028】
得られたポリイミド粒子を、評価したところ、平均粒子径は0.6μm、粒度分布は単峰性、粒子形状は(棒状ではなく)不定形であり、ポリイミド粒子の主成分は短径と長径との比が2.5未満であった。
これらの結果を表1にまとめた。
また、ポリイミド粒子のSEM写真を図1に示した。
【0029】
〔実施例2〕
攪拌機、還流冷却器、温度計を備えた容量500mlの四つ口セパラブルフラスコに、ピロメリット酸二無水物32.72g(0.15mol)、p-フェニレンジアミン16.22g(0.15mol)、純水2.70g(0.15mol)、及び溶媒のN−メチル−2−ピロリドン195.8gを仕込み混合した。この混合物を120℃のオイルバスで加熱し始め、回転速度150rpmで攪拌しながら、190℃まで昇温(50℃から150℃までの昇温時間は1時間以下)し、その温度で3時間加熱して黄色のポリイミド粒子が析出した反応混合物(分散液)を得た。
【0030】
得られたポリイミド粒子を、評価したところ、平均粒子径は0.4μm、粒度分布は単峰性、粒子形状は(棒状ではなく)不定形であり、ポリイミド粒子の主成分は短径と長径との比が2.5未満であった。
これらの結果を表1にまとめた。
また、ポリイミド粒子のSEM写真と粒度分布のヒストグラムを図2と図3に示した。
【0031】
〔実施例3〕
攪拌機、還流冷却器、温度計を備えた容量500mlの四つ口セパラブルフラスコに、ピロメリット酸二無水物32.72g(0.15mol)とp-フェニレンジアミン16.22g(0.15mol)、純水2.70g(0.15mol)、及び溶媒のN−メチル−2−ピロリドン141.4gを仕込み混合した。この混合物を120℃のオイルバスで加熱し始め、回転速度150rpmで攪拌しながら、190℃まで昇温(50℃から150℃までの昇温時間は1時間以下)し、その温度で3時間加熱して黄色のポリイミド粒子が析出した反応混合物(分散液)を得た。
【0032】
得られたポリイミド粒子を、評価したところ、平均粒子径は0.5μm、粒度分布は単峰性、粒子形状は(棒状ではなく)不定形であり、ポリイミド粒子の主成分は短径と長径との比が2.5未満であった。
これらの結果を表1にまとめた。
また、ポリイミド微粒子のSEM写真を図4に示した。
【0033】
〔参考例1〕
攪拌機、還流冷却器、温度計を備えた容量500mlの四つ口セパラブルフラスコに、ピロメリット酸二無水物15.27g(0.07mol)とp-フェニレンジアミン7.57g(0.07mol)、純水1.26g(0.07mol)、及び溶媒のN−メチル−2−ピロリドン457.9gを仕込み混合した。この混合物を120℃のオイルバスで加熱し始め、回転速度150rpmで攪拌しながら、190℃まで昇温(50℃から150℃までの昇温時間は1時間以下)し、その温度で3時間加熱して黄色のポリイミド粒子が析出した反応混合物(分散液)を得た。
【0034】
得られたポリイミド粒子を、評価したところ、平均粒子径は1.2μm、粒度分布は多峰性、粒子径上は短径と長径との比が3.0以上の棒状であった。
これらの結果を表1にまとめた。
また、ポリイミド粒子の粒度分布のヒストグラムを図5に示した。
【0035】
〔比較例1〕
純水を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様に反応を行ったところ、反応混合物が固化した。
【0036】
〔比較例2〕
純水を使用しなかったこと以外は、実施例2と同様に反応を行ったところ、反応混合物が固化した。
【0037】
〔比較例3〕
純水を使用しなかったこと以外は、実施例3と同様に反応を行ったところ、反応混合物が固化した。
【0038】
【表1】

【0039】
本発明によって、特定の化学構造からなり粒径が揃ったポリイミド微粒子、好ましくは平均粒子径が2.0μm未満で粒度分布が単峰性のポリイミド微粒子を、再現性よく安定的に且つ効率よく得ることができる製造方法、さらに前記製造方法によって得ることができる新規なポリイミド微粒子を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸成分の主成分がピロメリット酸類からなり、且つジアミン成分の主成分がパラフェニレンジアミンからなるポリイミド粒子の製造法方において、
テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを、テトラカルボン酸成分に対して0.1〜5.0倍モル量の水を含有した溶媒中で重合イミド化反応させてポリイミド粒子を析出させることを特徴とするポリイミド粒子の製造方法。
【請求項2】
テトラカルボン酸成分とジアミン成分との合計量が、テトラカルボン酸成分とジアミン成分と水を含有した溶媒との合計量に対して10質量%以上の濃度であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド粒子の製造方法。
【請求項3】
得られるポリイミド粒子の平均粒子径が2.0μm未満であり、粒度分布が単峰性であり、且つ粒子形状が不定形であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミド粒子の製造方法。
【請求項4】
テトラカルボン酸成分の主成分がピロメリット酸類からなり、ジアミン成分の主成分がパラフェニレンジアミンからなり、平均粒子径が2.0μm未満であり、粒度分布が単峰性であり、粒子形状が不定形であることを特徴とするポリイミド粒子。
【請求項5】
短径と長径との比が3.0未満の不定形の粒子を主成分とすることを特徴とする請求項4に記載のポリイミド粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−23606(P2013−23606A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160679(P2011−160679)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】