説明

ポリイミド系コーティング用組成物

【課題】 得られる塗膜の撥水撥油性に優れ、塗膜表面の均一性が良好なポリイミド系コーティング用組成物を提供すること。
【解決手段】 フッ素化アルキル基含有ビニル系単量体(A)とアミド基含有ビニル系単量体(B)及び/又はポリオキシエチレン鎖含有ビニル系単量体(C)を含む単量体類(i)を重合して得られるフッ素系共重合体(I)と、ポリイミド系樹脂(II)を含有することを特徴とするポリイミド系コーティング用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、得られる塗膜の撥水撥油性に優れ、塗膜表面の均一性が良好なポリイミド系コーティング用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド系樹脂を用いたコーティング剤は、得られる加工物の良好な耐熱性、耐薬品性から電気絶縁材料や工業用部品のコーティング材料、フィルム材に広く用いられている。しかし、該樹脂の溶液を基材に塗布して溶剤を揮発させることによって得られる塗膜は厚みにムラができやすい。また、塗膜表面の汚れを防ぐために、表面に防汚性、撥水撥油性を持たせることが求められている。そこで、表面に撥水性を付与するために、シリコーンオイルを添加したポリアミドイミド系樹脂塗料が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、前記特許文献1に提案されたポリアミドイミド系塗料は、特定のシリコーンオイルを有機溶剤とともに併用してポリアミドイミド樹脂を溶解させたものであり、シリコーンの性状から明らかなように、得られる塗膜の撥水性は得られるものの撥油性を発現させることはできない。さらに、シリコーンとポリアミドイミド樹脂等の極性の高い樹脂とは相溶性が悪く、シリコーンの添加量を増やすと得られる塗膜表面にブリードアウトしやすくなり、この結果、表面の均一性が失われるため、用途が限られるのが実情であり、改良が求められている。
【特許文献1】特開2003−327906号公報(第3〜5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような実情に鑑み、本発明の課題は、得られる塗膜の撥水撥油性に優れ、塗膜表面の均一性が良好なポリイミド系コーティング用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、特定の構造を有するフッ素系の化合物(重合体)をポリイミド系樹脂と併用して用いることにより、表面が均一で撥水撥油性に優れる塗膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち本発明は、フッ素化アルキル基含有ビニル系単量体(A)と、アミド基含有ビニル系単量体(B)及び/又はポリオキシエチレン鎖含有ビニル系単量体(C)とを含む単量体類(i)を重合して得られるフッ素系共重合体(I)と、ポリイミド系樹脂(II)とを含有することを特徴とするポリイミド系コーティング用組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、塗膜表面の均一性が良好で、撥水撥油性を有するポリイミド系樹脂の塗膜を得ることができる。該塗膜は従来にない撥水撥油性と耐熱性・強靭性・耐薬品性を兼ね備えるものであり、耐熱性フィルムや耐薬品性塗料、潤滑性塗料、耐熱絶縁塗料などのコーティング剤として各種の工業用部材に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で用いるフッ素系共重合体(I)は、塗膜の表面を均一にする(厚膜を均一にする)効果と、塗膜表面に撥水撥油性を発現させる効果とを有する。一般に、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系化合物は、樹脂溶液のレベリング性を高めたり、加工物の表面に撥水撥油性を付与させたりする効果があるが、いずれのフッ素系化合物であっても同じ効果が発現されることはなく、ポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂のような極性の高い官能基を有する樹脂を含有する樹脂溶液に対しては、十分は効果を発現させうるフッ素系化合物がないのが現状であった。その理由としては、樹脂とフッ素系化合物との相溶性の不足によるものが第一に考えられる。即ち、フッ素化アルキル基を有する化合物は、一般に有機溶媒との相溶性を発現させるための親媒性基が導入されているが、該親媒性基は広範な有機溶剤への相溶性に注力して設計されることが多く、樹脂への相溶性を考慮したものではない。前述のポリイミド系樹脂は溶剤選択性が高く、即ち汎用の他の化合物との相溶性の問題があることが知られている。そのため、汎用の有機溶剤への相溶性を高めた従来のフッ素系化合物とポリイミド系樹脂とを混合した際には、有機溶剤が大量に存在している樹脂溶液の状態では均一になっているように見えても、溶剤含有量が少なくなったときや、完全に揮発した後では、均一に混合していない可能性がある。溶剤乾燥型の樹脂溶液から得られる塗膜の表面均一性に問題が生じているのも、このことが原因の一つと考えられる。従って、本発明の最も重要な点は、ポリイミド系樹脂との相溶性が良好なフッ素系化合物として、フッ素化アルキル基含有ビニル系単量体(A)と、アミド基含有ビニル系単量体(B)及び/またはポリオキシエチレン鎖含有ビニル系単量体(C)とを必須の単量体として用いて得られるフッ素系共重合体(I)を用いる点にある。
【0009】
前記フッ素化アルキル基含有ビニル系単量体(A)としては、分子中にビニル基とフッ素化アルキル基とを有する化合物であれば特に制限はないが、原料が入手し易く、重合性が良好であることから、(メタ)アクリルエステル基を含有するものが好ましく、具体的には下記一般式(1)で表されるフッ素化(メタ)アクリレートや、一般式(2)で表されるパーフルオロアルキル基を複数個有するフッ素化(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0010】
【化1】

[式中、Rは同一又は異なる炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基または部分フッ素化アルキル基であり、直鎖状、分岐状または主鎖中に酸素原子が介入したもの、例えば−(OCFCFCF(CF等でも良く、Rは水素原子、メチル基、塩素原子またはフッ素原子であり、Xは2価の連結基で、mは0または1である。]
で示されるものが挙げられる。
【0011】
前記一般式(1)、(2)中のX(2価の連結基)としては、以下のものが挙げられる。
【0012】
【化2】

(式中、nは1〜10の整数であり、Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。)、
または、
【0013】
【化3】

【0014】
これらの中でも、特に得られる加工物(塗膜)の表面の撥水撥油性に優れ、且つ工業的入手が容易である点から、下記一般式(3)
【0015】
【化4】

[式中、R’は炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基であり、直鎖状でも分岐状でも良く、Rは水素原子又はメチル基である。]
で表される化合物を用いることが好ましく、特にR’中の炭素数が4〜12、さらに好ましくは6〜10の化合物を用いることが好ましい。
【0016】
前記単量体(1)としては、例えば下記構造式(1−1)〜(1−55)及び(2−1)で示される化合物が挙げられる。
【0017】
【化5】

【0018】
【化6】

【0019】
【化7】

【0020】
【化8】

【0021】
前記フッ素化アルキル基含有ビニル系単量体(A)は、1種類だけを用いても構わないし、2種類以上を同時に用いても構わない。
【0022】
本発明で用いるアミド基含有ビニル系単量体(B)、ポリオキシエチレン鎖含有ビニル系単量体(C)は、得られるフッ素系共重合体(I)と、後述するポリイミド系樹脂(II)との相溶性を高める効果がある。特にアミド基含有ビニル系単量体(B)はその効果が高く、ポリイミド系樹脂の透明性を損なわないため、透明性を必要とする場合には優れた効果を発揮する。
【0023】
前記アミド基含有ビニル系単量体(B)としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン等が挙げられ、1種類だけを用いても構わないし、2種類以上を同時に用いても構わない。これらの中でも、ポリイミド系樹脂(II)との相溶性がより良好な化合物が得られる点からジメチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドンを用いることが好ましい。
【0024】
前記ポリオキシエチレン鎖含有ビニル系単量体(C)としては、ポリオキシエチレン鎖とビニル基とを1分子中に有するものであれば良く、ビニル基が複数含まれていても良い。ビニル基としては、原料の入手性、各種コーティング組成物中の配合物に対する相溶性が良いこと、重合反応性が良好なことから(メタ)アクリルエステル基を含有するものが好ましい。又、前記ポリオキシエチレン鎖の重合度としては1〜50であることが好ましく、5〜30であることが特に好ましい。更に、ポリオキシエチレン鎖とその他のポリオキシアルキレン鎖とを有するビニル系単量体の場合には、オキシエチレン鎖の繰り返し数とその他のオキシアルキレン鎖の繰り返し数との比(オキシエチレン)/(オキシアルキレン)が1以上であること、即ち、オキシエチレン鎖の繰り返し数のほうが大きいことが好ましい。
【0025】
前記ポリオキシエチレン鎖含有ビニル系単量体(C)としては、例えば、重合度1〜100のポリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、末端が炭素数1〜6のアルキル基によってキャップされた重合度1〜100のポリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等の、末端が炭素数1〜6のアルキル基によってキャップされたポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0026】
また、市販品としては、新中村化学工業株式会社製NKエステル M−20G、M−40G、M−90G、M−230G、AM−90G、AMP−10G、AMP−20G、AMP−60G、日本油脂株式会社製ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350、AE−90、AE−200、AE−400、PME−100、PME−200、PME−400、PME−1000、PME−4000、70PEP−350B、50PEP−300、55PET−400、55PET−800等が挙げられる。
【0027】
また、1分子中に2個以上のビニル基を有するビニル系単量体として、重合度1〜100のポリエチレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等の重合度1〜100のポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、末端が炭素数1〜6のアルキル基によってキャップされた重合度1〜100のポリエチレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等の末端が炭素数1〜6のアルキル基によってキャップされた重合度1〜100のポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0028】
前記ポリオキシエチレン基含有ビニル系単量体(C)としては、1種類だけを用いても構わないし、2種類以上を同時に用いても構わない。
【0029】
本発明で用いるフッ素系共重合体(I)の原料である単量体類(i)中の、フッ素化アルキル基含有ビニル系単量体(A)、アミド基含有ビニル系単量体(B)、ポリオキシエチレン鎖含有ビニル系単量体(C)の含有率としては、特に限定されるものではないが、得られる加工物の撥水撥油性と表面均一性のバランスに優れる点から、前記単量体類(i)中のフッ素化アルキル基含有ビニル系単量体(A)の含有率が5〜50重量%であり、かつ、アミド基含有ビニル系単量体(B)とポリオキシエチレン鎖含有ビニル系単量体(C)の合計の含有率が40重量%以上であることが好ましい。更に好ましいのは、フッ素化アルキル基含有ビニル系単量体(A)の含有率が15〜45重量%であり、最も好ましいのは20〜40重量%である。また、アミド基含有ビニル系単量体(B)とポリオキシエチレン鎖含有ビニル系単量体(C)の合計の含有率が50重量%以上であることが特に好ましい。
【0030】
本発明で用いるフッ素系共重合体(I)の原料である単量体類(i)中には、その他の共重合可能な単量体を併用することが出来る。このとき用いることができる単量体としては、例えば、スチレン、核置換スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピリジン、ビニルスルホン酸、酢酸ビニル等の脂肪酸ビニル、またα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、即ちアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の一価ないし二価のカルボン酸、またα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の誘導体として、炭素数1〜18の直鎖あるいは分岐構造のアルキル基の(メタ)アクリル酸エステル(以後この表現はアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルの両方を総称するものとする。)、即ち(メタ)アクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ドデシル、ステアリルエステル等、また(メタ)アクリル酸の炭素数1〜18のヒドロキシアルキルエステル、即ち2−ヒドロキシエチルエステル、ヒドロキシプロピルエステル、ヒドロキシブチルエステル等が挙げられる。
【0031】
また(メタ)アクリル酸の炭素数1〜18のアミノアルキルエステル、例えば、ジメチルアミノエチルエステル、ジエチルアミノエチルエステル、ジエチルアミノプロピルエステル等;(メタ)アクリル酸の、炭素数が3〜18のエーテル酸素含有アルキルエステル、例えば、メトキシエチルエステル、エトキシエチルエステル、メトキシプロピルエステル、メチルカルビルエステル、エチルカルビルエステル、ブチルカルビルエステル等;橋状結合含有モノマー、例えばジシクロペンタニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等;アルキル基の炭素数が1〜18のアルキルビニルエーテル、例えば、メチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等;(メタ)アクリル酸のグリシジルエステル、例えば、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等;サートマー社製スチレンマクロモノマー、東亜合成(株)社製AA−6、AN−6等の各種マクロモノマー等が挙げられる。また、市販品として共栄社化学(株)社製HOA−MS、HOA−MPL、HOA−MPE、HOA−HH、東亞合成(株)社製アロニックス M−5300、M−5400、M−5500、M−5600、M−5700等が挙げられる。
【0032】
更に、シリコーン鎖を有するビニル系単量体や、γ−メタクリロキシプロピルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のシランカップング基含有単量体;分子中に極性基、とりわけアニオン性基や水酸基を含有するモノマー、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、部分スルホン化スチレン、モノ(アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(メタクリロキシエチル)アシッドホスフェート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
これらの単量体は、1種類だけを用いても構わないし、2種類以上を同時に用いても構わない。
【0034】
フッ素系共重合体(I)の製造方法には何ら制限はなく、種々の方法即ちラジカル重合法、カチオン重合法、アニオン重合法等の重合機構に基づき、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、更に乳化重合法等によって製造できる。
【0035】
また、フッ素系共重合体(I)の構造についても特に制限はなく、上記重合機構に基づいたランダム、交互、ブロック共重合体、各種リビング重合法或いは高分子反応を応用し分子量分布を制御したブロック、グラフト、スター型重合体等を自由に選択可能である。更に、このような重合体を得た後に、各種高分子反応、放射線、電子線紫外線等のエネルギー線を応用した方法等により重合体を変性することも可能である。
【0036】
前記した製造方法のなかでも、工業的にはラジカル重合法が簡便であり好ましい。この場合重合開始剤としては、種々のものを使用することができ、例えば過酸化ベンゾイル、過酸化ジアシル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、フェニルアゾトリフェニルメタン等のアゾ化合物、Mn(acac)等の金属キレート化合物等が挙げられる。また、必要に応じてラウリルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、エチルチオグリコール酸、オクチルチオグリコール酸等の連鎖移動剤や、更にγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のカップリング基含有チオール化合物等の連鎖移動剤を併用することも可能である。
【0037】
また、光増感剤や光開始剤の存在下での光重合、あるいは放射線や熱をエネルギー源とする重合によってもフッ素系共重合体(I)を得ることができる。
【0038】
重合は、溶剤の存在下又は非存在下のいずれでも実施できるが、作業性が良好となることから溶剤存在下の重合が好ましい。溶剤としては、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類;2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−オキシプロピオン酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル等のモノカルボン酸エステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の極性溶剤;メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、エチルセロソルブアセテート等のエーテル類;プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール類及びそのエステル類;トリクロルエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類;パーフルオロオクタン、パーフルオロトリ−n−ブチルアミン等のフッ素化イナートリキッド類等が挙げられる。
【0039】
本発明においては、フッ素系共重合体(I)は1種類だけを用いても、2種類以上を同時に用いても構わない。
【0040】
本発明で用いるポリイミド系樹脂(II)は、ポリイミドの繰り返し単位を有する樹脂であって、熱硬化性ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のいずれも用いることができる。前駆体のポリアミド酸を有機溶剤に溶解させ、コーティングした後に加熱により乾燥および硬化させることができるものであればイミド基以外の構造としては、特に限定されるものではない。
【0041】
本発明で用いるフッ素系共重合体(I)とポリイミド系樹脂(II)の混合割合としては、特に限定されるものではないが、得られる加工物表面の撥水撥油性の発現と、耐熱性・機械的強度のバランスに優れる点から、ポリイミド系樹脂(II)100重量部に対して、フッ素系共重合体(I)が0.1〜10重量部であることが好ましく、0.3〜5重量部であることが更に好ましい。
【0042】
本発明で得られるポリイミド系コーティング用組成物は、優れた塗膜均一性と優れた撥水撥油性を有し、耐熱性フィルムや耐薬品性塗料、潤滑性塗料、耐熱絶縁塗料などのコーティング剤として各種の工業用部材に使用することが出来る。
【実施例】
【0043】
次に本発明をより詳細に説明するための実施例及び比較例を掲げるが、これらの説明によって本発明が何等限定されるものでないことは勿論である。
【0044】
合成例1
撹拌装置、コンデンサー、温度計を備えたガラスフラスコにフッ素化アルキル基含有ビニル系単量体としてCH=CH−CO−O−CHCH−C17を20重量部、ポリオキシエチレン(EO)鎖含有ビニル系単量体としてM−230G(日本油脂株式会社製、CH=C(CH)−CO−O−(EO)−CH、nの平均値22)を80重量部、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKと略す)233重量部を仕込み、還流下に、重合開始剤としてパーブチルO(日本油脂株式会社製)1重量部を添加した後、12時間還流し重合を完結させた。真空下でMIBKを留去し、フッ素系共重合体(I−1)を得た。
【0045】
合成例2
撹拌装置、コンデンサー、温度計を備えたガラスフラスコにフッ素化アルキル基含有ビニル系単量体としてCH=CH−CO−O−CHCH−C17を30重量部、アミド基含有ビニル系単量体としてジメチルアクリルアミド(株式会社興人製)を70重量部、MIBK 233重量部を仕込み、還流下に、重合開始剤としてパーブチルO 1重量部を添加した後、12時間還流し重合を完結させた。真空下でMIBKを留去し、フッ素系共重合体(I−2)を得た。
【0046】
合成例3
単量体としてCH=CH−CO−O−CHCH−C17を35重量部、N−ビニルピロリドン(和光純薬工業株式会社製)を65重量部使用すること以外は、合成例2と同様にして、フッ素系共重合体(I−3)を得た。
【0047】
合成例4
単量体としてCH=CH−CO−O−CHCH−C17を35重量部、M−230G を35重量部、ジメチルアクリルアミドを30重量部使用すること以外は、合成例2と同様にして、フッ素系共重合体(I−4)を得た。
【0048】
合成例5
単量体としてCH=CH−CO−O−CHCH−C17を15重量部、ジメチルアクリルアミドを75重量部、サイラプレーンFM−0721(チッソ株式会社製、片末端メタクリロキシ基変性シリコーン)を10重量部使用すること以外は、合成例2と同様にして、フッ素系共重合体(I−5)を得た。
【0049】
合成例6
単量体としてCH=CH−CO−O−CHCH−C17を30重量部、ポリオキシプロピレン鎖含有ビニル系単量体PP−1000(日本油脂株式会社製)を70重量部使用すること以外は、合成例2と同様にして、フッ素系共重合体(I−6)を得た。
【0050】
実施例1〜6、及び比較例1、2
ポリアミドイミド樹脂トーロンAI−10(ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社製)100重量部をジメチルアセトアミド400重量部に50℃にて撹拌、溶解して溶液を調製し、これに合成例1〜6で得られたフッ素系共重合体(I−1)〜(I−6)を、ポリアミドイミド樹脂100重量部に対して第1表に示す濃度となるように添加し、それぞれのコーティング用組成物を調製した。これらのコーティング用組成物を用いて、塗膜の表面の平滑性、透明性および撥水撥油性を以下に示す方法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0051】
比較例3
フッ素系共重合体の代わりに下記構造式で表されるフッ素系化合物Fluowet OTN(クラリアント株式会社製)を用いる以外は、比較例2と同様にして、評価した。評価結果を表1に示す。
2p+1O−(CHCHO)−H
(式中、p、qはそれぞれ6〜10、平均6.5の分布品である。)
【0052】
評価方法
コーティング用組成物を硝子板に2ml滴下し、厚さ0.152mmのアプリケーターで平らにならした。これを恒温槽に入れて、140℃で1時間、次に260℃で15分、さらに315℃で5分間加熱した後、取り出して放冷し、塗膜を得た。この塗膜表面の平滑性と透明性を目視にて評価した。
【0053】
平滑性
○:塗膜にしわやざらつきがないもの
×:塗膜にしわ、もしくはざらつきがあるもの
【0054】
透明性
○:塗膜と硝子を通して、くもりが無く透明性が良好である。
△:塗膜と硝子を通して、若干の曇りがあるが、実用上問題がない。
×:塗膜と硝子を通して、くもりがある、又は透明性が無い。
【0055】
撥水撥油性:接触角の測定
前記で得られた塗膜の表面に水、ジヨードメタン、およびn−ドデカンの液滴を落とし、その接触角を自動接触角計CA−W150(協和界面科学株式会社製)を用いて測定し、撥水撥油性を評価した。
【0056】
【表1】

【0057】
表1の脚注:
測定不可:塗膜が不透明で表面が荒れていて(凹凸があって)接触角の測定において信頼性のあるデータが得られなかった。
【0058】
表1から明らかなように、フッ素化アルキル基含有ビニル系単量体(A)とアミド基含有ビニル系単量体(B)及び/またはポリオキシエチレン基含有ビニル系単量体(C)を必須単量体とするフッ素系共重合体(I)と、ポリイミド系樹脂(II)とを含有してなるコーティング用組成物が、塗膜の平滑性に優れ、かつ撥水撥油性を発現することが判明した。特に、アミド基含有ビニル系単量体(B)を含有するフッ素系共重合体(I)がポリイミド系樹脂(II)との相溶性に優れ、透明性が良好であることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化アルキル基含有ビニル系単量体(A)とアミド基含有ビニル系単量体(B)及び/又はポリオキシエチレン鎖含有ビニル系単量体(C)を含む単量体類(i)を重合して得られるフッ素系共重合体(I)と、ポリイミド系樹脂(II)を含有することを特徴とするポリイミド系コーティング用組成物。
【請求項2】
前記単量体類(i)中のフッ素化アルキル基含有ビニル系単量体(A)の含有率が5〜50重量%であり、かつ、アミド基含有ビニル系単量体(B)とポリオキシエチレン鎖含有ビニル系単量体(C)の合計の含有率が40重量%以上である請求項1記載のポリイミド系コーティング用組成物。
【請求項3】
アミド基含有ビニル系単量体(B)が、ジメチルアクリルアミド及び/又はN−ビニルピロリドンである請求項1記載のポリイミド系コーティング用組成物。
【請求項4】
フッ素化アルキル基含有ビニル系単量体(A)が下記一般式(3)
【化1】

[式中、R’は炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基であり、直鎖状でも分岐状でも良く、Rは水素原子又はメチル基である。]
で表される化合物である請求項1記載のポリイミド系コーティング用組成物。
【請求項5】
前記一般式(3)中のR’中の炭素数が4〜12である請求項4記載のポリイミド系コーティング用組成物。
【請求項6】
ポリイミド系樹脂(II)100重量部に対して、フッ素系共重合体(I)を0.1〜10重量部配合する請求項1〜5いずれか1項記載のポリイミド系コーティング用組成物。


【公開番号】特開2007−138027(P2007−138027A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334077(P2005−334077)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】