説明

ポリウレタン−ポリ尿素に基づく微孔性被膜

本発明は、新規な微孔性被膜、および微孔性被膜の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な微孔性被膜、および微孔性被膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは従来から、溶液、ハイソリッド系および水性分散体といった様々な適用形態で、布地の被覆に広く使用されてきた。塗料分野では特に、長年にわたって、生態学的理由により、ますます溶媒系からハイソリッド系に、特に水系になる傾向がある。
【0003】
ポリウレタン合成皮革品については、幾分異なった状況がある。この場合、微孔性被膜は、多くの場合一般に今でも、いわゆる凝固浴法によって製造されている。
【0004】
一般に秀でた凝固浴法では、有機溶媒(例えばジメチルホルムアミド)に溶解したポリウレタンで布地を被覆するか、またはそれに布地を浸す。凝固の後直ちに水浴に浸漬する。得られる被膜の柔軟性および良好な水蒸気透過性は、注目に値する。該方法は、有機溶媒の特定の性質(溶解力、水との混和性など)の故に、同溶媒の使用に拘束される。
【0005】
この方法の欠点は、特に、極めて多量の溶媒を再生および再利用するための安全な取扱いに必要であり、コストがかかる処理にある。
【0006】
バインダーのための揮発性溶媒および低揮発性非溶媒の使用に依存する蒸発凝固のような代替法を用いると、穏やかな加熱の際に、まず溶媒が優先的に揮発するので、非溶媒の割合が着実に増えるにつれてバインダーは凝固する。この方法の欠点は、可能な最適化および多量の溶媒の使用の必要性のために、操作パラメーターによって著しく制限される、多大な技術的不都合および範囲を含む。
【0007】
同様に使用される塩、酸または電解質凝固法は、電解質の高含有量によってバインダーを凝固させる濃縮塩溶液または酸混合水などに、被覆された基材、または手袋の場合は初めに分散体に浸漬された型を浸漬することを含む。この方法の欠点は、技術的に複雑な実施、特に多量に発生する汚染廃液にある。
【0008】
イソシアネートプレポリマーで被覆された基材を水に浸漬し、次いで、CO除去により多孔性構造物としてポリ尿素を生ずる、プレポリマー法は、とりわけ、組成物の極めて高い反応性およびそれに関連した短い加工時間の故に、不利な方法であることがわかっている。
【0009】
熱感受性となるよう調製された非後架橋性バインダーについては、温度上昇によって凝固する可能性が存在するが、これにより多くの場合許容できない被膜が得られる。
【0010】
DE−A 19 856 412は、ほとんど有機溶媒を必要とせず、塩浴、酸浴または他の電解質浴は全く必要とせず、全体的に簡単な操作で構成される、後架橋性ポリウレタン水性分散体に基づいた水性凝固法を記載している。記載されている方法は、薄い厚さで非微孔性の緻密なフィルムを被覆するのに特に有用である。
【0011】
DE−A 10 300 478は、主にDE−A 19 856 412の後架橋性ポリウレタン水性分散体に基づいた方法を記載しており、その方法によって、分散体は発泡状態で布地基材に適用され得、100℃〜110℃の温度で特定の凝固剤によって熱的に凝固され、自動車内、家具表面または衣類分野に例えば印刷人工皮革として使用される緻密な被膜の製造に使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
生態学的に安全なポリウレタンポリ尿素水性分散体(PUR分散体)に基づき、現在の従来技術に従った、水性凝固による高い層付加量を有する微孔性被膜の製造方法は、なお十分に実現されていない。従って、そのような方法が本発明の目的である。
【0013】
PUR分散体への従来の凝固剤の添加は、常に、ポリウレタンの自発的沈殿を招く。従って、これは、はけ塗り性ペーストの適当な製造方法ではない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
意外にも、特定のPUR分散体(I)をカチオン性凝固剤(II)と混合する場合に、はけ塗り性ペーストが得られることが見出された。
【0015】
また、高い層付加量を有する微孔性被膜が、以下の工程を含む新規な方法によって得られることが見出された:
A.アニオン性親水化ポリウレタンポリ尿素水性分散体(I)およびカチオン性凝固剤(II)を含有するはけ塗り性塗料(1)を調製する工程、
B.低温でフォームの少なくとも部分的な凝固を伴って(1)を発泡させる工程、
C.発泡し、少なくとも部分的に凝固した組成物(1)を布地支持体に適用する工程、
D.乾燥工程、および
E.任意に、高温での更なる乾燥工程によってフォームマトリックスを固定する工程。
【0016】
本発明は更に、はけ塗り性塗料(1)が、下記群:
I.)固体樹脂100gあたり0.1〜15ミリグラム当量の−COO基、−SO基またはPO2−基の含有量を有するアニオン性親水化ポリウレタン水性分散体;
II.)好ましくは一般式(2)で示される構造単位、より好ましくは一般式(1)および一般式(2)で示される構造単位を含むカチオン性凝固剤:
【化1】

[式中、Rは、C=O、−COO(CH−、または−COO(CH−であり、Xは、ハライドイオン、好ましくは塩化物イオンである。];
III.)発泡剤;
IV.)架橋剤;および
V.)任意に増粘剤
から選択される成分を含有し、これらを均一になるまで既知の混合法によって工程B.)の前に任意の順序で一緒に混合することを特徴とする、はけ塗り性塗料(1)の製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の組成物中に含有されるアニオン性親水化ポリウレタン水性分散体(I)は、
A)イソシアネート官能性プレポリマーを、
A1)有機ポリイソシアネート、
A2)400〜8000g/molの範囲、好ましくは400〜6000g/molの範囲、より好ましくは600〜3000g/molの範囲に数平均分子量、および1.5〜6の範囲、好ましくは1.8〜3の範囲、より好ましくは1.9〜2.1の範囲にOH官能価を有するポリマーポリオール、
A3)任意に、32〜400g/molの範囲に分子量を有するヒドロキシル官能性化合物、および
A4)任意に、イソシアネート反応性の、アニオン性または潜在的アニオン性親水化剤および/または場合により非イオン性親水化剤
から調製し、
B)次いで、その遊離NCO基を、完全にまたは部分的に、
B1)任意に、32〜400g/molの範囲に分子量を有するアミノ官能性化合物、および/または
B2)イソシアネート反応性、好ましくはアミノ官能性の、アニオン性または潜在的アニオン性の親水化剤
と、連鎖延長しつつ反応させ、
工程B)の前、間または後に、得られたプレポリマーを水に分散し、存在する潜在的イオン基を、中和剤との部分的または完全反応によってイオン状態に転化する
ことによって得られる。
【0018】
アニオン性親水化を達成するため、A4)および/またはB2)には、少なくとも1個のNCO反応性基(例えば、アミノ基、ヒドロキシル基またはチオール基)を含有し、更に、アニオン性基として−COOまたは−SOまたは−PO2−、或いは潜在的アニオン性基としてそれらの完全にまたは部分的にプロトン化された酸形態を含有する、親水化剤を使用しなければならない。
【0019】
好ましいアニオン性ポリウレタン水性分散体(I)は、好ましくは固体樹脂100gあたり0.1〜15ミリグラム当量の、低い親水性アニオン性基含有量を有する。
【0020】
良好な沈降安定性を達成するため、ポリウレタン分散体I.)の数平均粒子寸法は、レーザー相関分光法による測定で、好ましくは750nm未満、より好ましくは500nm未満、最も好ましくは400nm未満である。
【0021】
NCO官能性プレポリマーを調製するため、成分A1)の化合物のNCO基の、成分A2)〜A4)の化合物のNCO反応性基(例えば、アミノ基、ヒドロキシル基またはチオール基)に対する比は、1.05〜3.5の範囲、好ましくは1.2〜3.0の範囲、より好ましくは1.3〜2.5の範囲である。
【0022】
工程B)では、これらの化合物のイソシアネート反応性アミノ基の、プレポリマーの遊離イソシアネート基に対する当量比が、40〜150%、好ましくは50〜125%、より好ましくは60〜120%の範囲となるような量で、アミノ官能性化合物を使用する。
【0023】
成分A1)に適したポリイソシアネートは、当業者によく知られているNCO官能価が2の芳香族、芳香脂肪族、脂肪族または脂環式ポリイソシアネートを包含する。
【0024】
このような適当なポリイソシアネートの例は、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,2,4−および/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタンまたはそれらの任意の望ましい異性体含有量の混合物、1,4−シクロへキシレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トルイレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,2’−および/または2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−および/または1,4−ビス−(2−イソシアナトプロプ−2−イル)ベンゼン(TMXDI)、1,3−ビス−(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)、およびC〜C−アルキル基を含有するアルキル2,6−ジイソシアナトヘキサノエート(リジンジイソシアネート)である。
【0025】
上記したポリイソシアネートと同様に、ウレトジオン、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造の変性ジイソシアネート、並びに1分子あたり2個を超えるNCO基を含有する非変性ポリイソシアネート、例えば4−イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート(ノナントリイソシアネート)またはトリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネートを使用することもできる。
【0026】
好ましくは、上記した種類のポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物は、脂肪族的および/または脂環式的に結合しているイソシアネート基をもっぱら含有し、混合物については、2〜4の範囲、好ましくは2〜2.6の範囲、より好ましくは2〜2.4の範囲に平均NCO官能価を有する。
【0027】
A1)に、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、異性体ビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、およびそれらの混合物を使用することが特に好ましい。
【0028】
A2)には、400〜8000g/mol、好ましくは400〜6000g/mol、より好ましくは600〜3000g/molの範囲に数平均分子量Mを有するポリマーポリオールを使用する。これらは、好ましくは1.5〜6の範囲、より好ましくは1.8〜3の範囲、最も好ましくは1.9〜2.1の範囲にOH官能価を有する。
【0029】
このようなポリマーポリオールは、よく知られているポリウレタン塗料技術の、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリエステルポリオール、ポリウレタンポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリカーボネートポリオール、およびポリエステルポリカーボネートポリオールである。これらを、A2)に、単独でまたは互いの所望の混合物として使用できる。
【0030】
このようなポリエステルポリオールは、ジオール並びに場合によりトリオールおよびテトラオールと、ジカルボン酸並びに場合によりトリカルボン酸およびテトラカルボン酸、またはヒドロキシカルボン酸、或いはラクトンとから形成されたよく知られている重縮合物である。ポリエステルを調製するために、随意のポリカルボン酸を用いる代わりに、対応するポリカルボン酸無水物または対応する低級アルコールのポリカルボン酸エステルを使用することもできる。
【0031】
適当なジオールの例は、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールのようなポリアルキレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール(各種異性体)、1,4−ブタンジオール(各種異性体)、1,6−ヘキサンジオール(各種異性体)、ネオペンチルグリコール、またはネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートであり、これらのうち、1,6−ヘキサンジオール(各種異性体)、ネオペンチルグリコール、およびネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートが好ましい。これらの他に、トリメチロールプロパン、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールベンゼン、またはトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートのようなポリオールを使用することもできる。
【0032】
有用なジカルボン酸は、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、テトラクロロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マロン酸、スベリン酸、2−メチルコハク酸、3,3−ジエチルグルタル酸、および/または2,2−ジメチルコハク酸を包含する。対応する無水物を、酸の供給源として使用することもできる。
【0033】
エステル化されるポリオールの平均官能価が2を超える場合、安息香酸およびヘキサンカルボン酸のようなモノカルボン酸を、併せて同様に使用できる。
【0034】
好ましい酸は、上記した種類の脂肪族酸または芳香族酸である。アジピン酸、イソフタル酸、および場合によりトリメリット酸が特に好ましい。
【0035】
末端ヒドロキシル基含有ポリエステルポリオールの調製における反応体として有用なヒドロキシカルボン酸は、例えば、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシデカン酸、ヒドロキシステアリン酸などを包含する。適当なラクトンは、カプロラクトン、ブチロラクトン、および同族体を包含する。カプロラクトンが好ましい。
【0036】
A2)には同様に、400〜8000g/molの範囲、好ましくは600〜3000g/molの範囲に数平均分子量Mを有する、ヒドロキシル含有ポリカーボネート、好ましくはポリカーボネートジオールを使用できる。これらは、炭酸ジフェニル、炭酸ジメチルまたはホスゲンのようなカルボン酸誘導体と、ポリオール、好ましくはジオールとの反応によって得ることができる。
【0037】
このようなジオールの例は、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノールA、および上記種類のラクトン変性ジオールである。
【0038】
ポリカーボネートジオールは、好ましくは、40重量%〜100重量%のヘキサンジオールを含有し、1,6−ヘキサンジオールおよび/またはヘキサンジオール誘導体が好ましい。このようなヘキサンジオール誘導体は、ヘキサンジオールに基づき、末端OH基の他にエステル基またはエーテル基を含有する。このような誘導体は、ヘキサンジオールと過剰のカプロラクトンとの反応によって、或いはヘキサンジオールのそれ自体によるエーテル化によりジヘキシレングリコールまたはトリへキシレングリコールを形成することによって得られる。
【0039】
純粋なポリカーボネートジオールに代えてまたは加えて、A2)に、ポリエーテル−ポリカーボネートジオールを使用することもできる。
【0040】
ヒドロキシル含有ポリカーボネートは、好ましくは直鎖構造を有する。
【0041】
A2)には同様に、ポリエーテルポリオールを使用できる。
有用なポリエーテルポリオールは、例えば、カチオン開環によるテトラヒドロフランの重合によって得られるような、よく知られているポリウレタン化学のポリテトラメチレングリコールポリエーテルを包含する。
【0042】
有用なポリエーテルポリオールは同様に、スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよび/またはエピクロロヒドリンの、二官能性または多官能性スターター分子へのよく知られている付加物を包含する。エチレンオキシドの二官能性または多官能性スターター分子への少なくとも部分的な付加物に基づいたポリエーテルポリオールを、成分A4)(非イオン性親水化剤)として使用することもできる。
【0043】
有用なスターター分子は、従来技術の化合物の全て、例えば、水、ブチルジグリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、プロピレングリコール、ソルビトール、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、1,4−ブタンジオールを包含する。好ましいスターター分子は、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、およびブチルジグリコールである。
【0044】
ポリウレタン分散体(I)の特に好ましい態様は、成分A2)として、ポリカーボネートポリオールおよびポリテトラメチレングリコールポリオールの混合物を含有し、この混合物中のポリカーボネートポリオールの割合は20重量%〜80重量%の範囲であり、この混合物中のポリテトラメチレングリコールポリオールの割合は80重量%〜20重量%の範囲である。ポリテトラメチレングリコールポリオールの割合が30重量%〜75重量%であり、ポリカーボネートポリオールの割合が25重量%〜70重量%であることが好ましい。ポリテトラメチレングリコールポリオールの割合が35重量%〜70重量%であり、ポリカーボネートポリオールの割合が30重量%〜65重量%であることが特に好ましい。ただし、各々において、ポリカーボネートポリオールおよびポリテトラメチレングリコールポリオールの重量%の合計は100%であり、ポリカーボネートポリオールおよびポリテトラメチレングリコールポリエーテルポリオールの合計によって与えられる成分A2)の割合は、少なくとも50重量%、好ましくは60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%である。
【0045】
成分A3)の化合物は、62〜400g/molの分子量を有する。
A3)には、20個までの炭素原子を含有する特定の分子量範囲のポリオール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)、水素化ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、およびそれらの互いの所望の混合物を使用できる。
【0046】
特定の分子量範囲のエステルジオール、例えば、α−ヒドロキシブチル−ε−ヒドロキシカプロン酸エステル、ω−ヒドロキシヘキシル−γ−ヒドロキシ酪酸エステル、β−ヒドロキシエチルアジペート、またはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートも適している。
【0047】
A3)には更に、単官能性イソシアネート反応性ヒドロキシル含有化合物を使用できる。このような単官能性化合物の例は、エタノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、2−エチルヘキサノール、1−オクタノール、1−ドデカノール、1−ヘキサデカノールである。
【0048】
成分A3)に好ましい化合物は、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、およびトリメチロールプロパンである。
【0049】
成分A4)としてのアニオン性または潜在アニオン性親水化化合物は、少なくとも1個のイソシアネート反応性基(例えばヒドロキシル基)および少なくとも1個の官能基(例えば、−COO、−SO、−PO(O[ここで、Mは、例えば、金属カチオン、H、NH、NHRであり、各々についてのRは、C〜C12アルキル、C〜Cシクロアルキルおよび/またはC〜Cヒドロキシアルキルであってよい。])を含有する化合物である。該官能基は、水性媒体との相互作用でpH依存性解離平衡状態になり、それによって、負または中性の電荷を有し得る。有用なアニオン性または潜在アニオン性親水化化合物は、モノ−およびジヒドロキシカルボン酸、モノ−およびジヒドロキシスルホン酸、モノ−およびジヒドロキシホスホン酸、およびそれらの塩を包含する。このようなアニオン性または潜在的アニオン性親水化剤の例は、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ヒドロキシピバリン酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、並びにDE−A 2 446 440、第5〜9頁、式I〜IIIに記載されているような2−ブテンジオールおよびNaHSOから形成されたプロポキシル化付加物である。成分A4)に好ましいアニオン性または潜在的アニオン性親水化剤は、カルボキシレート基またはカルボキシル基および/またはスルホネート基を含有する上記した種類のものである。
【0050】
特に好ましいアニオン性または潜在的アニオン性親水化剤A4)は、イオン基または潜在的イオン基としてカルボキシレート基またはカルボキシル基を含有するもの、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ヒドロキシピバリン酸、およびそれらの塩である。
【0051】
成分A4)に有用な非イオン性親水化化合物は、例えば、少なくとも1個のヒドロキシル基またはアミノ基、好ましくは少なくとも1個のヒドロキシル基を含有するポリオキシアルキレンエーテルを包含する。
【0052】
例は、一分子あたり平均5〜70個、好ましくは7〜55個のエチレンオキシド単位を含有し、適当なスターター分子のアルコキシル化による従来法で得られる、モノヒドロキシル官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールである(例えば、Ullmanns Encyclopaedie der technischen Chemie, 第4版、第19巻、Verlag Chemie, ヴァインハイム、第31〜38頁)。
【0053】
これらは、純粋なポリエチレンオキシドエーテル、或いは存在するアルキレンオキシド単位全てに基づいて少なくとも30mol%、好ましくは少なくとも40mol%のエチレンオキシド単位を含有する混合ポリアルキレンオキシドエーテルのいずれかである。
【0054】
特に好ましい非イオン性化合物は、40〜100mol%のエチレンオキシド単位および0〜60mol%のプロピレンオキシド単位を含有する単官能性混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルである。
【0055】
このような非イオン性親水化剤に有用なスターター分子は、飽和モノアルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、ペンタノール(各種異性体)、ヘキサノール(各種異性体)、オクタノール(各種異性体)、およびノナノール(各種異性体)、n−デカノール、n−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノール、n−オクタデカノール、シクロヘキサノール、異性体メチルシクロヘキサノールまたはヒドロキシメチルシクロヘキサン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンまたはテトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテル))、不飽和アルコール(例えば、アリルアルコール、1,1−ジメチルアリルアルコールまたはオレインアルコール、芳香族アルコール(例えば、フェノール、異性体クレゾールまたはメトキシフェノール)、芳香脂肪族アルコール(例えば、ベンジルアルコール、アニスアルコールまたはシンナミルアルコール))、第二級モノアミン(例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、N−エチルシクロヘキシルアミンまたはジシクロヘキシルアミン)、および複素環式第二級アミン(例えば、モルホリン、ピロリジン、ピペリジンまたは1Hピラゾール)を包含する。好ましいスターター分子は、上記種類の飽和モノアルコールである。スターター分子として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルまたはn−ブタノールを使用することが特に好ましい。
【0056】
アルコキシル化反応に有用なアルキレンオキシドは、特に、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドであり、それらは、アルコキシル化反応において、所望の順序でまたは混合物として使用され得る。
【0057】
成分B1)には、ジアミンまたはポリアミン、例えば、1,2−エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、イソホロンジアミン、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの異性体混合物、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリアミノノナン、1,3−キシリレンジアミン、1,4−キシリレンジアミン、α,α,α’,α’−テトラメチル−1,3−および−1,4−キシリレンジアミン、および4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、および/またはジメチルエチレンジアミンを使用できる。ヒドラジン、またはアジポヒドラジドのようなヒドラジドを使用することもできる。イソホロンジアミン、1,2−エチレンジアミン、1,4−ジアミノブタン、ヒドラジン、およびジエチレントリアミンが好ましい。
【0058】
成分B1)には更に、第一級アミノ基に加えて第二級アミノ基も含有するか、或いは(第一級または第二級)アミノ基に加えてOH基も含有する、化合物を使用できる。それらの例は、第一級/第二級アミン(例えば、ジエタノールアミン、3−アミノ−1−メチルアミノプロパン、3−アミノ−1−エチルアミノプロパン、3−アミノ−1−シクロヘキシルアミノプロパン、3−アミノ−1−メチルアミノブタン)、アルカノールアミン(例えば、N−アミノエチルエタノールアミン、エタノールアミン、3−アミノプロパノール、ネオペンタノールアミン)である。
【0059】
成分B1)には更に、単官能性イソシアネート反応性アミン化合物、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、イソノニルオキシプロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン、ジエチル(メチル)アミノプロピルアミン、モルホリン、ピペリジン、またはそれらの適当な置換誘導体、第一級/第一級ジアミンおよびモノカルボン酸から形成されたアミド−アミン、第一級/第一級ジアミンのモノケチム(Monoketime)、第一級/第三級アミン、例えばN,N−ジメチルアミノプロピルアミンを使用できる。
【0060】
成分B1)に好ましい化合物は、1,2−エチレンジアミン、1,4−ジアミノブタン、およびイソホロンジアミンである。
【0061】
成分B2)としてのアニオン性または潜在アニオン性親水化化合物は、少なくとも1個のイソシアネート反応性基、好ましくはアミノ基、および少なくとも1個の官能基(例えば、−COO、−SO、−PO(O[ここで、Mは、例えば、金属カチオン、H、NH、NHRであり、各々についてのRは、C〜C12アルキル、C〜Cシクロアルキルおよび/またはC〜Cヒドロキシアルキルであってよい。])を含有する化合物である。該官能基は、水性媒体との相互作用でpH依存性解離平衡状態になり、それによって、負または中性の電荷を有し得る。
【0062】
有用なアニオン性または潜在アニオン性親水化化合物は、モノ−およびジアミノカルボン酸、モノ−およびジアミノスルホン酸、モノ−およびジアミノホスホン酸、およびそれらの塩である。このようなアニオン性または潜在的アニオン性親水化剤の例は、N−(2−アミノエチル)−β−アラニン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸、エチレンジアミンプロピルスルホン酸、エチレンジアミンブチルスルホン酸、1,2−または1,3−プロピレンジアミン−β−エチルスルホン酸、グリシン、アラニン、タウリン、リジン、3,5−ジアミノ安息香酸、並びにIPDIおよびアクリル酸の付加物(EP−A 0 916 647の実施例1)である。更に、アニオン性または潜在的アニオン性親水化剤として、WO−A 01/88006からのシクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸(CAPS)を使用することもできる。
【0063】
成分B2)に好ましいアニオン性または潜在的アニオン性親水化剤は、カルボキシレート基またはカルボキシル基および/またはスルホネート基を含有する上記した種類のもの、例えば、N−(2−アミノエチル)−β−アラニンの塩、2−(2−アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸の塩、またはIPDIおよびアクリル酸の付加物(EP−A 0 916 647の実施例1)の塩である。
【0064】
アニオン性または潜在的アニオン性親水化剤および非イオン性親水化剤の混合物を使用することもできる。
【0065】
特定のポリウレタン分散体を調製するための好ましい態様では、成分A1)〜成分A4)および成分B1)〜成分B2)を以下の量で使用し、個々の量の合計は常に100重量%となる:
5重量%〜40重量%の成分A1)、
55重量%〜90重量%の成分A2)、
0.5重量%〜20重量%の、成分A3)および成分B1)の合計、
0.1重量%〜25重量%の、成分A4)および成分B2)の合計。
ただし、成分A1)〜成分A4)および成分B1)〜成分B2)の合計量に基づいて、0.1重量%〜5重量%のA4)および/またはB2)からのアニオン性または潜在的アニオン性親水化剤を使用する。
【0066】
特定のポリウレタン分散体を調製するための特に好ましい態様では、成分A1)〜成分A4)および成分B1)〜成分B2)を以下の量で使用し、個々の量の合計は常に100重量%となる:
5重量%〜35重量%の成分A1)、
60重量%〜90重量%の成分A2)、
0.5重量%〜15重量%の、成分A3)および成分B1)の合計、
0.1重量%〜15重量%の、成分A4)および成分B2)の合計。
ただし、成分A1)〜成分A4)および成分B1)〜成分B2)の合計量に基づいて、0.2重量%〜4重量%のA4)および/またはB2)からのアニオン性または潜在的アニオン性親水化剤を使用する。
【0067】
特定のポリウレタン分散体を調製するための極めて特に好ましい態様では、成分A1)〜成分A4)および成分B1)〜成分B2)を以下の量で使用し、個々の量の合計は常に100重量%となる:
10重量%〜30重量%の成分A1)、
65重量%〜85重量%の成分A2)、
0.5重量%〜14重量%の、成分A3)および成分B1)の合計、
0.1重量%〜13.5重量%の、成分A4)および成分B2)の合計。
ただし、成分A1)〜成分A4)および成分B1)〜成分B2)の合計量に基づいて、0.5重量%〜3.0重量%のA4)および/またはB2)からのアニオン性または潜在的アニオン性親水化剤を使用する。
【0068】
アニオン性親水化ポリウレタン分散体(I)の調製は、均一相で一段階以上で、または多段階反応の場合は部分的に分散相で実施できる。A1)〜A4)から完全にまたは部分的に重付加した後、分散、乳化または溶解処理を実施する。適切な場合は、これに続いて、分散相において更なる重付加または変性を実施する。
【0069】
任意の従来技術の方法を使用でき、その例は、プレポリマー混合法、アセトン法、または溶融分散法である。アセトン法が好ましい。
【0070】
アセトン法による製造方法は、典型的には、初期導入物として成分A2)〜成分A4)およびポリイソシアネート成分A1)の全量または一部分を導入し、イソシアネート官能性ポリウレタンプレポリマーを調製し、場合により水混和性であるがイソシアネート不活性である溶媒で希釈し、50〜120℃の範囲の温度まで加熱することを含む。イソシアネート付加反応を、ポリウレタン化学で知られている触媒を用いて促進できる。
【0071】
有用な溶媒は、アセトン、2−ブタノンのような通常の脂肪族ケト官能性溶媒を包含し、それらは、製造過程の開始時だけでなく後でも、場合により少しずつ添加できる。アセトンおよび2−ブタノンが好ましい。
【0072】
キシレン、トルエン、シクロヘキサン、酢酸ブチル、メトキシプロピルアセテート、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、エーテル単位またはエステル単位含有溶媒のような他の溶媒を、付加的に使用でき、そして完全にまたは部分的に留去でき、或いはN−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンの場合は分散体中に完全に残留することができる。しかしながら、通常の脂肪族ケト官能性溶媒は別として、他の溶媒を使用しないことが好ましい。
【0073】
その後、反応の開始時に添加されなかったA1)〜A4)の成分を添加する。
【0074】
A1)〜A4)からのポリウレタンプレポリマーの調製において、イソシアネート基のイソシアネート反応性基に対する量比は、1.05〜3.5の範囲、好ましくは1.2〜3.0の範囲、より好ましくは1.3〜2.5の範囲である。
【0075】
プレポリマーを形成するための成分A1)〜成分A4)の反応は、部分的にまたは完全に、しかしながら好ましくは完全に、達成される。このようにして、溶媒を含まずにまたは溶液として、遊離イソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマーが得られる。
【0076】
潜在的アニオン性基のアニオン性基への部分的または完全転化をもたらす中和工程には、第三級アミン(例えば、各アルキル基中に1〜12個、好ましくは1〜6個、より好ましくは2〜3個の炭素原子を含有するトリアルキルアミン)のような塩基、または対応する水酸化物のようなアルカリ金属塩基を使用する。
【0077】
それらの例は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、トリプロピルアミン、N−メチルモルホリン、メチルジイソプロピルアミン、エチルジイソプロピルアミン、およびジイソプロピルエチルアミンである。ジアルキルモノアルカノールアミン、アルキルジアルカノールアミン、およびトリアルカノールアミンの場合のように、アルキル基は、例えば、ヒドロキシル基を含有してもよい。有用な中和剤は更に、適切な場合には、アンモニア水、水酸化ナトリウム、または水酸化カリウムのような無機塩基を包含する。
【0078】
アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、またはジイソプロピルエチルアミン、および水酸化ナトリウム、並びに水酸化カリウムが好ましく、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが特に好ましい。
【0079】
中和される酸基に対して50〜125mol%、好ましくは70〜100mol%の量で、塩基を使用する。分散体の水に中和剤を含有させることによって、中和を分散工程と同時に行うこともできる。
【0080】
その後、更なる処理工程で、溶解がまだ終わっていないか或いはある程度しか終わっていないならば、得られたプレポリマーを、アセトンまたは2−ブタノンのような脂肪族ケトンを用いて溶解させる。
【0081】
工程B)の連鎖延長では、NH−および/またはNH−官能性成分を、プレポリマーのまだ残っているイソシアネート基と、部分的にまたは完全に反応させる。好ましくは、水への分散前に連鎖延長/連鎖停止を実施する。
【0082】
連鎖停止は、典型的には、イソシアネート反応性基を含有するアミンB1)、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、イソノニルオキシプロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン、ジエチル(メチル)アミノプロピルアミン、モルホリン、ピペリジン、またはそれらの適当な置換誘導体、第一級/第一級ジアミンおよびモノカルボン酸から形成されたアミド−アミン、第一級/第一級ジアミンのモノケチム(Monoketime)、N,N−ジメチルアミノプロピルアミンのような第一級/第三級アミンを用いて実施する。
【0083】
NH基またはNH基を含有する定義B2)に従うアニオン性または潜在的アニオン性親水化剤を用いて、部分的または完全連鎖延長を実施する場合、好ましくは、分散前にプレポリマーの連鎖延長を行う。
【0084】
アミン成分B1)およびB2)は、本発明の方法では、場合により、単独でまたは混合物として、水または溶媒で希釈した状態で使用でき、基本的に任意の順序で添加できる。
【0085】
水または有機溶媒を希釈剤として使用する場合、B)に使用される連鎖延長成分の希釈剤含有量は、好ましくは70重量%〜95重量%の範囲である。
【0086】
好ましくは、連鎖延長に続いて分散を実施する。分散のため、溶解および連鎖延長されたポリウレタンポリマーを、適切な場合には例えば激しい撹拌のような実質的な剪断によって、分散用の水に導入するか、または逆に、分散用の水を連鎖延長されたポリウレタンポリマー溶液に撹拌しながら入れる。水を、溶解され連鎖延長されたポリウレタンポリマーに添加することが好ましい。
【0087】
次いで、分散工程後、分散体中にまだ存在している溶媒を、典型的には蒸留によって除去する。分散工程中の除去も同じく可能である。
【0088】
ポリウレタン分散体(I)中の有機溶媒の残留濃度は、典型的には、分散体全体に基づいて1.0重量%未満である。
【0089】
本発明に必須であるポリウレタン分散体(I)のpHは、典型的には9.0未満、好ましくは8.5未満、より好ましくは8.0未満であり、最も好ましくは6.0〜7.5の範囲である。
【0090】
ポリウレタン分散体(I)の固形分は、40重量%〜70重量%の範囲、好ましくは50重量%〜65重量%の範囲、より好ましくは55重量%〜65重量%の範囲である。
【0091】
ポリウレタン分散体(I)は、非官能性であってよく、或いはヒドロキシル基またはアミノ基によって官能化されていてよい。また、好ましくない態様では、分散体(I)は、例えばDE−A 19 856 412に記載されているように、ブロックトイソシアネート基の形で反応性基を有していてもよい。
【0092】
組成物中の凝固剤(II)は、少なくとも2個のカチオン性基を含有する有機化合物、好ましくは従来技術の知られているカチオン性凝集剤および沈殿剤、例えば、下記物質の塩のカチオン性ホモポリマーまたはコポリマーであってよい:ポリ[2−(N,N,N−トリメチルアミノ)エチルアクリレート]、ポリエチレンイミン、ポリ[N−(ジメチルアミノメチル)アクリルアミド]、置換アクリルアミド、置換メタクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、または4−ビニルピリジン。
【0093】
好ましい凝固剤(II)は、一般式(2)で示される構造単位を含むカチオン性アクリルアミドコポリマー、より好ましくは一般式(1)で示される構造単位および一般式(2)で示される構造単位を含むカチオン性アクリルアミドコポリマーである:
【化2】

[式中、Rは、C=O、−COO(CH−、または−COO(CH−であり、Xは、ハライドイオン、好ましくは塩化物イオンである。]。
【0094】
カチオン性凝固剤(II)は、より好ましくは、500,000〜50,000,000g/molの範囲に数平均分子量を有するポリマーである。
【0095】
このような凝固剤(II)は、例えば、活性汚泥のための凝集剤として、Praestol(登録商標)(Degussa Stockhausen(ドイツ国クレーフェルト))の商標名で市販されている。Praestol(登録商標)タイプの好ましい凝固剤は、Praestol(登録商標)K111L、K122L、K133L、BC 270L、K 144L、K 166L、BC 55L、185K、187K、190K、K222L、K232L、K233L、K234L、K255L、K332L、K 333L、K 334L、E 125、E 150、およびそれらの混合物である。Praestol(登録商標)185K、187K、190K、およびそれらの混合物が、極めて特に好ましい凝固剤である。
【0096】
上記した凝固剤の場合のモノマー、特にアクリルアミドの残留濃度は、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、最も好ましくは0.025重量%未満である。
【0097】
凝固剤は、固体状、または水溶液或いは水性分散体として使用できる。水性分散体または水溶液の使用が好ましい。
【0098】
気泡安定剤(III)として、既知の市販化合物、例えば、水溶性脂肪酸アミド、スルホスクシンアミド、ヒドロカルビルスルホネート、または石鹸様化合物(脂肪酸塩)、例えば、親油性基が12〜24個の炭素原子を含有するもの;特にヒドロカルビル基中に12〜22個の炭素原子を含有するアルカンスルホネート、ヒドロカルビル基全体に14〜24個の炭素原子を含有するアルキルベンゼンスルホネート、或いは12〜24個の炭素原子を含有する脂肪酸の脂肪酸アミドまたは石鹸様脂肪酸塩を使用する。水溶性脂肪酸アミドは、好ましくは、モノ−またはジ(C2〜3−アルカノール)アミンの脂肪酸アミドである。石鹸様脂肪酸塩は、例えば、アルカリ金属塩、アミン塩、または非置換アンモニウム塩であり得る。有用な脂肪酸は、一般に知られている化合物、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リシノール酸、ベヘン酸、またはアラキドン酸、或いは工業銘柄の脂肪酸、例えば、ココ脂肪酸、獣脂脂肪酸、大豆脂肪酸、または工業銘柄のオレイン酸、およびそれらの水素化生成物を包含する。
【0099】
気泡安定剤(III)は、有利には、発泡条件下または適用条件下のいずれにおいても分解しないものである。
【0100】
スルホスクシンアミドおよびステアリン酸アンモニウムの混合物を使用することが好ましい。スルホスクシンアミドおよびステアリン酸アンモニウムの混合物は、好ましくは20重量%〜60重量%のステアリン酸アンモニウム、より好ましくは30重量%〜50重量%のステアリン酸アンモニウム、および好ましくは80重量%〜40重量%のスルホスクシンアミド、より好ましくは70重量%〜50重量%のスルホスクシンアミドを含有し、これらの重量パーセントは2種類の気泡安定剤類の不揮発性成分に基づき、両方の重量パーセントの合計は100重量%である。
【0101】
本発明の塗料は架橋剤(IV)も含有する。架橋剤(IV)および水性ポリウレタン分散体(I)の選択に依存して、一成分系だけでなく二成分系も調製できる。本発明の目的のための一成分塗料系は、検出可能な程度まで、即ち後の適用に不利になる程度まで架橋反応が起こることなく、バインダー成分(I)および架橋剤成分(IV)を一緒に貯蔵できる塗料である。本発明の目的のための二成分塗料系は、バインダー成分(I)および架橋剤成分(IV)を、それらの高い反応性の故に別々の容器に貯蔵しなければならない塗料である。2つの成分は、適用直前にしか混合できず、その後、一般に、更なる活性化なしで反応する。
【0102】
適当な架橋剤(IV)は、例えば、ブロックトまたは非ブロックトポリイソシアネート架橋剤、アミド−およびアミン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、アルデヒドおよびケトン樹脂、例えばフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、レゾール、フラン樹脂、尿素樹脂、カルバミン酸エステル樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シアナミド樹脂、またはアニリン樹脂である。20mol%までのメラミンを当量の尿素で置き換えることができるが、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂が好ましい。メチロール化メラミン、例えば、ビ−、トリ−、および/またはテトラメチロールメラミンが特に好ましい。
【0103】
メラミン−ホルムアルデヒド樹脂は、通常、固形分が30重量%〜70重量%の範囲、好ましくは35重量%〜65重量%の範囲、より好ましくは40重量%〜60重量%の範囲である濃縮水溶液として使用される。
【0104】
増粘剤(V)として、デキストリン誘導体、デンプン誘導体、またはセルロース誘導体のような市販増粘剤を使用でき、その例は、セルロースエーテルまたはヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸系、ポリビニルピロリドン系、ポリ(メタ)アクリル酸化合物系またはポリウレタン系(会合型増粘剤)の有機完全合成増粘剤、およびベントナイトまたはシリカのような無機増粘剤である。
【0105】
本発明に必須である組成物は、典型的には、乾燥物質に基づいて、80〜99.5重量部の分散体(I)、0.5〜5重量部のカチオン性凝固剤(II)、0.1〜10重量部のフォーム助剤(III)、0〜10重量部の架橋剤(IV)、および0〜10重量%の増粘剤(V)を含有する。
【0106】
好ましくは、本発明に必須である組成物は、乾燥物質に基づいて、85〜97重量部の分散体(I)、0.75〜4重量部のカチオン性凝固剤(II)、0.5〜6重量部のフォーム助剤(III)、0.5〜5重量部の架橋剤(IV)、および0〜5重量%の増粘剤(V)を含有する。
【0107】
より好ましくは、本発明に必須である組成物は、乾燥物質に基づいて、89〜97重量部の分散体(I)、0.75〜3重量部のカチオン性凝固剤(II)、0.5〜5重量部のフォーム助剤(III)、0.75〜4重量部の架橋剤(IV)、および0〜4重量部の増粘剤(V)を含有する。
【0108】
成分(I)〜(V)と同様、他の水性バインダーを、本発明に必須である組成物に使用することもできる。このような水性バインダーは、例えば、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエポキシまたは他のポリウレタンポリマーからなり得る。同様に、例えばEP−A−0 753 531に記載されているような放射線硬化性バインダーとの組み合わせも可能である。更に、他のアニオン性または非イオン性分散体、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート、およびコポリマー分散体を使用することも可能である。
【0109】
本発明の方法では、高速回転での組成物の機械的撹拌によって、即ち高剪断力の投入によって、または例えば圧縮空気の導入によるような発泡ガスの復元によって、発泡を完遂する。
【0110】
物理的発泡は、任意の望ましい機械的撹拌技術、混合技術および分散技術を用いて達成することができる。一般に空気を導入するが、窒素および他の気体も、この目的のために使用できる。
【0111】
本発明の塗料は、従来技術の方法を用いて、任意の順で全成分を均一に混合することによって、成分(I)〜(V)から調製される。成分(II)は、発泡工程の間または後に添加してもよい。
【0112】
本発明の塗料は、更に、酸化防止剤および/または光安定剤および/または例えば、乳化剤、消泡剤、増粘剤のような他の助剤および添加剤を含有してもよい。最終的に、充填材、可塑剤、顔料、シリカゾル、アルミニウム分散体、クレイ分散体、流れ制御剤、またはチキソトロープ剤を含有してもよい。本発明のPUR分散体ベース被膜に求められている特性および意図されている使用に依存して、最終生成物は、このような充填材を乾燥物質全体に基づいて70重量%まで含有してもよい。
【0113】
更に、ポリアクリレートによって本発明の塗料を変性することもできる。この目的を達成するために、例えば、DE−A−1 953 348、EP−A−0 167 188、EP−A−0 189 945およびEP−A−0 308 115に記載されているように、ポリウレタン分散体の存在下で、オレフィン性不飽和モノマー(例えば、(メタ)アクリル酸とC1〜18アルコールとのエステル、スチレン、ビニルエステル、またはブタジエン)のエマルション重合を実施する。モノマーは1個以上のオレフィン性二重結合を含有している。モノマーは更に、ヒドロキシル基、エポキシ基、メチロール基またはアセトアセトキシ基のような官能基を含有し得る。
【0114】
本発明は更に、幅広い種類の支持材上に微孔性被膜を製造するための本発明の塗料の使用を提供する。
【0115】
有用な支持材は、特に、布地、並びに金属、ガラス、セラミック、コンクリート、天然石、皮革、天然繊維およびプラスチック(例えば、PVC、ポリオレフィン、ポリウレタン)からなるシート様基材などを包含する。
【0116】
本発明の目的のための布地は、例えば、織物、編物、結合および非結合繊維性不織ウェブである。布地は、合成繊維、天然繊維および/またはそれらの混紡物で構成され得る。基本的に、任意の繊維からなる布地が、本発明の目的に適している。
【0117】
本発明の塗料は、安定であり、それらの製造方法に依存して最大24時間までの加工時間を一般に有する。
【0118】
本発明の塗料は、被覆後に高い引張強さで優れた伸縮性を示すので、特に、可撓性基材上への微孔性被膜の製造に有用である。
【0119】
微孔性被膜は、成分I.)〜V.)を含有する本発明の塗料によって製造され、初期段階で発泡される。
【0120】
本発明の方法では、高速回転での組成物の機械的撹拌によって、即ち高剪断力の投入によって、または例えば圧縮空気の導入によるような発泡ガスの復元によって、発泡を完遂する。
【0121】
物理的発泡は、任意の望ましい機械的撹拌技術、混合技術および分散技術を用いて達成することができる。一般に空気を導入するが、窒素および他の気体も、この目的のために使用できる。
【0122】
このように得られたフォームを、発泡の最中またはその直後、基材に適用するか或いは型に導入して乾燥させる。
【0123】
間に乾燥工程を伴った多層適用も、基本的に可能である。
【0124】
しかしながら、フォームのより迅速な乾燥および固定のため、30℃を超える温度を好ましくは使用する。しかしながら、乾燥温度は200℃、好ましくは160℃を超えるべきではない。被膜の噴出を防ぐために適切な昇温勾配を用いた二段階以上での乾燥も可能である。
【0125】
乾燥は一般に、通常の加熱および乾燥装置、例えば、(循環空気)乾燥室、温風、またはIR放熱器を用いて達成される。加熱表面、例えばロールの上方に被覆基材を通すことによる乾燥も可能である。
【0126】
適用および乾燥は、各々バッチ式または連続で実施できるが、全体的に連続した方法が好ましい。
【0127】
乾燥前、ポリウレタンフォームのフォーム密度は、典型的には50〜800g/lの範囲、好ましくは200〜700g/lの範囲、より好ましくは300〜600g/lの範囲である(1リットルのフォーム体積に基づいた、投入材料全ての質量(単位:g))。
【0128】
乾燥および凝固後、ポリウレタンフォームは、連続した気泡を含んでなる、微孔性の少なくとも部分的に連続気泡である構造を有する。乾燥フォームの密度は、典型的には0.3〜0.7g/cm、好ましくは0.3〜0.6g/cm、最も好ましくは0.3〜0.5g/cmの範囲である。
【0129】
ポリウレタンフォームは、良好な機械的強度および高い弾性を示す。典型的には、最大応力は0.2N/mmを超え、最大伸びは250%を超える。好ましくは、最大応力は0.4N/mmを超え、最大伸びは350%を超える(DIN 53504による測定)。
【0130】
乾燥後、ポリウレタンフォームの厚さは、典型的には0.1mm〜50mmの範囲、好ましくは0.5mm〜20mmの範囲、より好ましくは1mm〜10mmの範囲、最も好ましくは1mm〜5mmの範囲である。
【0131】
更に、ポリウレタンフォームを、更なる材料、例えば、ヒドロゲル、(半)透過性フィルム、被膜、または他のフォームに基づく材料に、接着、貼合せ、または被覆できる。
【0132】
次いで、発泡させた組成物を、通常の塗布器具(例えば、ブレード、例えば塗布ナイフ、ロール、または他のフォームアプリケーター)を用いて支持体に適用する。適用は、面の一方または両方にできる。第二乾燥工程後の重量増加が布地支持体に基づいて30%〜100%、好ましくは40%〜80%、より好ましくは45%〜75%の範囲になるように、適用割合を選択する。1平方メートルあたりの適用割合は、閉じたブレードシステムにおける圧力、またはスクリーンの特性因子に影響され得る。湿潤付加重量は、好ましくは、布地支持体の重量に対応する。支持体上でフォームがつぶれる割合は、気泡安定剤(III)および凝固剤(II)の特性および量、並びに水性ポリウレタン分散体(I)のイオン性に依存する。
【0133】
得られた連続気泡構造物を、35℃〜100℃、好ましくは60℃〜100℃、より好ましくは70℃〜100℃の温度での乾燥によって固定する。乾燥は、通常の乾燥機で実施できる。マイクロ波(HF)乾燥機での乾燥も同様に可能である。
【0134】
その後、必要ならば、フォームマトリックスを更なる乾燥工程で再度固定することができる。この任意の追加固定工程は、好ましくは100℃〜175℃、より好ましくは100℃〜150℃、最も好ましくは100℃〜139℃で実施し、PURフォームマトリックスが十分に架橋されることが確実となるように、乾燥工程の継続時間を選択する。
【0135】
代わりに、好ましくは100℃〜175℃、より好ましくは100℃〜150℃、最も好ましくは100℃〜139℃まで直接加熱することによって、凝固に続いて一段階で、乾燥および固定を実施することができる。この場合、PURフォームマトリックスの十分な乾燥および十分な固定が確実となるように、接触時間を選択する。
【0136】
乾燥された布地支持体を、硬化の前、間または後に、例えば、ピーチ加工、ベロア仕上げ、起毛および/またはタンブリングによって表面処理してもよい。
【0137】
本発明の塗料は、例えば特に高いフォーム付加量を実現するために、二層以上で支持体に適用することもできる。
【0138】
更に、本発明の微孔性被膜は、多層構造で使用することもできる。
【0139】
本発明はまた、本発明の微孔性被膜で被覆された基材も提供する。優れた性能特性の故に、本発明の組成物およびそれから製造された被膜/層は、上着類、合成皮革品、靴、家具張り、自動車用内装品、スポーツ用品(このリストは例にすぎず、限定ではない)を被覆または製造するのに特に有用である。
【実施例】
【0140】
特に記載がない限り、全てのパーセントは重量による。
固形分は、DIN-EN ISO 3251に従って測定した。
NCO含有量は、特に記載がない限り、DIN-EN ISO 11909に従って容量的に測定した。
【0141】
使用した物質および略語

【0142】
ポリウレタン分散体(I)の平均粒子寸法(数平均を記載する)の測定は、レーザー相関分光法を用いて実施した(測定機器:Malvern Zetasizer 1000, Malver Inst. Limited)。
【0143】
実施例1:PUR分散体(成分I)
144.5gのDesmophen(登録商標)C2200、188.3gのPolyTHF(登録商標)2000、71.3gのPolyTHF(登録商標)1000、および13.5gのLB 25ポリエーテルを、70℃まで加熱した。次いで、45.2gのヘキサメチレンジイソシアネートおよび59.8gのイソホロンジイソシアネートの混合物を、70℃で5分の間に添加し、理論NCO値に達するまで得られた混合物を還流しながら撹拌した。調製済みのプレポリマーを50℃で1040gのアセトンに溶解し、その後、10分の間に計量供給された、1.8gのヒドラジン水和物、9.18gのジアミノスルホネートおよび41.9gの水の溶液と混合した。続いて、得られた混合物を10分間撹拌した。そして、21.3gのイソホロンジアミンおよび106.8gの水の溶液を添加した後、254gの水を添加することによって、10分の間に分散体を形成した。これに続いて、減圧下での蒸留によって溶媒を留去した。
【0144】
得られた白色分散体は、以下の特性を有していた。

【0145】
実施例2:PUR分散体(成分I)
アジピン酸、ネオペンチルグリコールおよびヘキサンジオールに基づいた二官能性ポリエステルポリオール(平均分子量1700g/mol、OH価=66)2159.6g、エチレンオキシド/プロピレンオキシド(70/30)に基づいた単官能性ポリエーテル(平均分子量2250g/mol、OH価25mgKOH/g)72.9gを、65℃まで加熱した。次いで、241.8gのヘキサメチレンジイソシアネートおよび320.1gのイソホロンジイソシアネートの混合物を、65℃で5分の間に添加し、4.79%の理論NCO値に達するまで得られた混合物を100℃で撹拌した。調製済みのプレポリマーを50℃で4990gのアセトンに溶解し、その後、2分の間に計量供給された、187.1gのイソホロンジアミンおよび322.7gのアセトンの溶液と混合した。続いて、混合物を5分間撹拌した。そして、63.6gのジアミノスルホネート、6.5gのヒドラジン水和物および331.7gの水の溶液を、5分の間に計量供給した。1640.4gの水を添加することによって分散体を形成した。これに続いて、減圧下での蒸留によって溶媒を留去した。
【0146】
得られた白色分散体は、以下の特性を有していた。

【0147】
実施例3:PUR分散体(成分I)
アジピン酸、ネオペンチルグリコールおよびヘキサンジオールに基づいた二官能性ポリエステルポリオール(平均分子量1700g/mol、OH価=66)2210.0gを、65℃まで加熱した。次いで、195.5gのヘキサメチレンジイソシアネートおよび258.3gのイソホロンジイソシアネートの混合物を、65℃で5分の間に添加し、3.24%の理論NCO値に達するまで得られた混合物を100℃で撹拌した。調製済みのプレポリマーを50℃で4800gのアセトンに溶解し、その後、5分の間に計量供給された、29.7gのエチレンジアミン、95.7gのジアミノスルホネートおよび602gの水の溶液と混合した。続いて、混合物を15分間撹拌した。そして、1169gの水を、20分の間に計量供給した。これに続いて、減圧下での蒸留によって溶媒を留去した。
【0148】
得られた白色分散体は、以下の特性を有していた。

【0149】
実施例4:PUR分散体(成分I)
987.0gのPolyTHF(登録商標)2000、375.4gのPolyTHF(登録商標)1000、761.3gのDesmophen(登録商標)C2200、および44.3gのLB 25ポリエーテルを、標準的な撹拌装置で70℃まで加熱した。次いで、237.0gのヘキサメチレンジイソシアネートおよび313.2gのイソホロンジイソシアネートの混合物を、70℃で5分間かけて添加し、理論NCO値に達するまで、または実際のNCO値が理論NCO値を僅かに下回るようになるまで、混合物を120℃で撹拌した。調製済みのプレポリマーを4830gのアセトンに溶解し、その過程で、50℃まで冷却し、その後、10分間にわたって計量供給された、25.1gのエチレンジアミン、116.5gのイソホロンジアミン、61.7gのジアミノスルホネートおよび1030gの水の溶液と混合した。続いて、混合物を10分間撹拌した。その後、1250gの水を添加することによって、分散体を形成した。これに続いて、減圧下での蒸留によって溶媒を留去した。
【0150】
得られた白色分散体は、以下の特性を有していた。

【0151】
実施例5:PUR分散体(成分I)
34.18gのPolyTHF(登録商標)2000、85.1gのPolyTHF(登録商標)1000、172.6gのDesmophen(登録商標)C2200、および10.0gのLB 25ポリエーテルを、標準的な撹拌装置で70℃まで加熱した。次いで、53.7gのヘキサメチレンジイソシアネートおよび71.0gのイソホロンジイソシアネートの混合物を、70℃で5分間かけて添加し、理論NCO値に達するまで、または実際のNCO値が理論NCO値を僅かに下回るようになるまで、混合物を120℃で撹拌した。調製済みのプレポリマーを1005gのアセトンに溶解し、その過程で、50℃まで冷却し、その後、10分間にわたって計量供給された、5.70gのエチレンジアミン、26.4gのイソホロンジアミン、9.18gのジアミノスルホネートおよび249.2gの水の溶液と混合した。続いて、混合物を10分間撹拌した。その後、216gの水を添加することによって、分散体を形成した。これに続いて、減圧下での蒸留によって溶媒を留去した。
【0152】
得られた白色分散体は、以下の特性を有していた。

【0153】
実施例6:PUR分散体(成分I)
987.0gのPolyTHF(登録商標)2000、375.4gのPolyTHF(登録商標)1000、761.3gのDesmophen(登録商標)C2200、および44.3gのLB 25ポリエーテルを、標準的な撹拌装置で70℃まで加熱した。次いで、237.0gのヘキサメチレンジイソシアネートおよび313.2gのイソホロンジイソシアネートの混合物を、70℃で5分間かけて添加し、理論NCO値に達するまで、または実際のNCO値が理論NCO値を僅かに下回るようになるまで、混合物を120℃で撹拌した。調製済みのプレポリマーを4830gのアセトンに溶解し、その過程で、50℃まで冷却し、その後、10分間にわたって計量供給された、36.9gの1,4−ジアミノブタン、116.5gのイソホロンジアミン、61.7gのジアミノスルホネートおよび1076gの水の溶液と混合した。続いて、混合物を10分間撹拌した。その後、1210gの水を添加することによって、分散体を形成した。これに続いて、減圧下での蒸留によって溶媒を留去した。
【0154】
得られた白色分散体は、以下の特性を有していた。

【0155】
実施例7:PUR分散体(成分I)
201.3gのPolyTHF(登録商標)2000、76.6gのPolyTHF(登録商標)1000、155.3gのDesmophen(登録商標)C2200、2.50gの1,4−ブタンジオール、および10.0gのLB 25ポリエーテルを、標準的な撹拌装置で70℃まで加熱した。次いで、53.7gのヘキサメチレンジイソシアネートおよび71.0gのイソホロンジイソシアネートの混合物を、70℃で5分間かけて添加し、理論NCO値に達するまで、または実際のNCO値が理論NCO値を僅かに下回るようになるまで、混合物を120℃で撹拌した。調製済みのプレポリマーを1010gのアセトンに溶解し、その過程で、50℃まで冷却し、その後、10分間にわたって計量供給された、5.70gのエチレンジアミン、26.4gのイソホロンジアミン、14.0gのジアミノスルホネートおよび250gの水の溶液と混合した。続いて、混合物を10分間撹拌した。その後、243gの水を添加することによって、分散体を形成した。これに続いて、減圧下での蒸留によって溶媒を留去した。
【0156】
得られた白色分散体は、以下の特性を有していた。

【0157】
実施例8:PUR分散体(成分I)
201.3gのPolyTHF(登録商標)2000、76.6gのPolyTHF(登録商標)1000、155.3gのDesmophen(登録商標)C2200、2.50gのトリメチロールプロパン、および10.0gのLB 25ポリエーテルを、標準的な撹拌装置で70℃まで加熱した。次いで、53.7gのヘキサメチレンジイソシアネートおよび71.0gのイソホロンジイソシアネートの混合物を、70℃で5分間かけて添加し、理論NCO値に達するまで、または実際のNCO値が理論NCO値を僅かに下回るようになるまで、混合物を120℃で撹拌した。調製済みのプレポリマーを1010gのアセトンに溶解し、その過程で、50℃まで冷却し、その後、10分間にわたって計量供給された、5.70gのエチレンジアミン、26.4gのイソホロンジアミン、14.0gのジアミノスルホネートおよび250gの水の溶液と混合した。続いて、混合物を10分間撹拌した。その後、293gの水を添加することによって、分散体を形成した。これに続いて、減圧下での蒸留によって溶媒を留去した。
【0158】
得られた白色分散体は、以下の特性を有していた。

【0159】
実施例9:PUR分散体(成分I)
1072gのPolyTHF(登録商標)2000、407.6gのPolyTHF(登録商標)1000、827gのDesmophen(登録商標)C2200、および48.1gのLB 25ポリエーテルを、標準的な撹拌装置で70℃まで加熱した。次いで、257.4gのヘキサメチレンジイソシアネートおよび340gのイソホロンジイソシアネートの混合物を、70℃で5分間かけて添加し、理論NCO値に達するまで、または実際のNCO値が理論NCO値を僅かに下回るようになるまで、混合物を120℃で撹拌した。調製済みのプレポリマーを4820gのアセトンに溶解し、その過程で、50℃まで冷却し、その後、10分間にわたって計量供給された、27.3gのエチレンジアミン、126.5gのイソホロンジアミン、67.0gのジアミノスルホネートおよび1090gの水の溶液と混合した。続いて、混合物を10分間撹拌した。その後、1180gの水を添加することによって、分散体を形成した。これに続いて、減圧下での蒸留によって溶媒を留去した。
【0160】
得られた白色分散体は、以下の特性を有していた。

【0161】
実施例1〜9のPUR分散体からのフォームペーストおよび微孔性被膜の製造
調製されたフォームペーストを、転写法で、一液型のImprapermおよびImpranil銘柄のトップコート上に下塗または中塗として標準的に適用した。
【0162】
実施例1〜9のPUR分散体からフォームペーストを調製するために使用できる装置の例:

【0163】
フォームをロールコーター上方のナイフで適用した。塗布ギャップは、湿潤フォームの適用に対し0.3mm〜0.5mmとすべきである。フォーム密度は300〜600g/lとすべきである。
2つのロールの間の距離が、基材、フォーム湿潤付加物および紙の全体厚さと概して等しくなるように、貼合せシステムを設定した。
【0164】
フォーム塗布に有用な基材は、綿織物および綿編物、セルロース繊維不織ウェブ、およびそれらの混合物である。起毛された基材および起毛されていない基材の両方を使用できる。起毛されていない面に塗料を適用した場合が好ましかった。布地製品については140〜200g/mの基材が適しており、シューアッパーについては240g/mまでの基材が適している。
【0165】
実施例1〜9のPUR分散体から調製された被覆ペーストは、以下の着色ペーストを用いて着色できる。

【0166】
ペーストを調製するため、十分に大きい容器内で、実施例1〜9のPUR分散体を25%アンモニア溶液約1%と一緒にまず導入する。
最終的なフォーム安定増粘化を達成し得るために、その過程でpHは7.5〜8.5に達した。
次いで、上記した装置の1つを用いて撹拌しながら、2.0〜2.5%のStokal SR気泡安定剤および1.0〜1.5%のStokal STAステアリン酸アンモニウムを添加した。
第一の均一化に続いて、必要に応じて、その後、任意の望ましい着色を実施できた。
顔料を分散した後、Acrafix MLメラミン樹脂架橋剤を、約1.0〜1.5%で添加した。
続いて、約1500〜2000rpmの速度で所望の密度に調整した。
撹拌を継続しながら、Praestol(登録商標)185 Kの添加によって、得られたフォームを最終的に凝固させた。凝固によってフォーム体積は変化しなかった(粘度はやや上昇した)。また、代わりに、発泡工程前にPraestol(登録商標)185 Kを添加した。
適切な場合は、調製されるフォームの安定性を確実にするために、約2.5%のMirox AMポリアクリル酸を使用して最後に僅かな増粘化を達成した。
3ゾーン乾燥ダクト(ゾーン1:80℃、ゾーン2:100℃、ゾーン3:160℃)を用いて、フォームを乾燥および/または架橋させた。
良好な機械的性質および優れた微孔性構造を有するきれいな白色フォームが、例外なく得られた(フォーム番号1〜10)。
【0167】
【表1】

【0168】
フォーム1〜10は全て微孔性構造を有している。凝固剤なし(フォーム11の配合)では、独立気泡の非微孔性フォームが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性親水化ポリウレタン水性分散体(I)およびカチオン性凝固剤(II)を含有する組成物を発泡させ、乾燥させることを含む、微孔性被膜の製造方法。
【請求項2】
アニオン性親水化ポリウレタン水性分散体(I)が、
A)イソシアネート官能性プレポリマーを、
A1)有機ポリイソシアネート、
A2)400〜8000g/molの範囲に数平均分子量および1.5〜6の範囲にOH官能価を有するポリマーポリオール、
A3)任意に、62〜400g/molの範囲に分子量を有するヒドロキシル官能性化合物、および
A4)任意に、イソシアネート反応性の、アニオン性または潜在的アニオン性親水化剤および場合により非イオン性親水化剤
から調製し、
B)次いで、その遊離NCO基を、完全にまたは部分的に、
B1)32〜400g/molの範囲に分子量を有するアミノ官能性化合物、および
B2)アミノ官能性の、アニオン性または潜在的アニオン性の親水化剤
と、連鎖延長しつつ反応させ、
工程B)の前、間または後に、プレポリマーを水に分散し、存在する潜在的イオン基を、中和剤との部分的または完全反応によってイオン状態に転化する
ことによって得られることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
A1)に、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、異性体ビス−(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、およびそれらの混合物を使用し、A2)に、ポリカーボネートポリオールおよびポリテトラメチレングリコールポリオールの混合物を使用して、アニオン性親水化ポリウレタン水性分散体(I)を調製し、ポリカーボネートポリオールおよびポリテトラメチレングリコールポリエーテルポリオールの合計によって与えられる成分A2)の割合が少なくとも70重量%であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
カチオン性凝固剤(II)が、500,000〜50,000,000g/molの範囲に数平均分子量を有し、一般式(1)および(2):
【化1】

[式中、Rは、C=O、−COO(CH−、または−COO(CH−であり、Xは、ハライドイオンである。]
で示される構造単位を含んでなるポリマーであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ポリウレタン分散体(I)およびカチオン性凝固剤(II)に加え、助剤および添加剤(III)を含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
助剤および添加剤(III)として、発泡剤および気泡安定剤である、水溶性脂肪酸アミド、スルホスクシンアミド、ヒドロカルビルスルホネート、ヒドロカルビルスルフェート、または脂肪酸塩を含有することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
発泡剤および気泡安定剤として、スルホスクシンアミドおよびステアリン酸アンモニウムの混合物を使用し、これらの混合物が70重量%〜50重量%のスルホスクシンアミドを含有することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られる微孔性被膜。
【請求項9】
乾燥状態で微孔性連続気泡構造および0.3〜0.7g/cmの密度を有することを特徴とする、請求項8に記載の微孔性被膜。
【請求項10】
アニオン性親水化ポリウレタン水性分散体(I)およびカチオン性凝固剤(II)を含有する組成物。
【請求項11】
請求項8または9に記載の微孔性被膜で被覆された基材。
【請求項12】
上着類、合成皮革品、靴、家具張り、自動車用内装品、スポーツ用品からなる群から選択される、請求項11に記載の基材。

【公表番号】特表2009−533499(P2009−533499A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504596(P2009−504596)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/002678
【国際公開番号】WO2007/115679
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】