説明

ポリウレタン、ポリウレタンの製造方法、およびポリウレタンを用いた製品

【課題】実用性の高い紫外線吸収剤をポリウレタン鎖に結合させて一体化させたポリウレタンを提供する。
【解決手段】下記成分(a)〜(c)、好ましくはさらに成分(d)を反応させて得られるポリウレタンが提供される。成分(a):ポリオール成分(b):ポリイソシアナト化合物成分(c):水酸基を有する特定のトリアジン誘導体、その互変異性体、立体異性体、ならびにそれらの塩。成分(d):下式(2)のカルボン酸ジオール、その互変異性体、立体異性体、ならびにそれらの塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリウレタン、ポリウレタンの製造方法、およびポリウレタンを用いた製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンとは、主鎖にウレタン結合(−NHCOO−)を含む高分子化合物の総称である。ポリウレタンは、例えば、ポリオール(活性水素化合物)とポリイソシアナト化合物(ポリイソシアネート)との重付加反応(下記スキーム1)によって得ることができる。このとき、原料や反応条件を種々変化させることで、様々なポリウレタンを製造することが可能である。例えば、ウレタン結合以外の部分(R,R’)の構造や重合度nを変化させることにより、ポリウレタンの物性を変化させることができる。さらに、例えば、重合(重付加)反応と発泡反応(脱炭酸)とが同時に起こるような反応条件を用いることにより、多泡性のウレタンフォームを製造することもできる。このように、ポリウレタンは、他の高分子と比較してユニークな特性を持ち、さらに、多種多様な特性を持たせることが可能であるため、その用途はきわめて広い。
【化8】

【0003】
ポリウレタンの重要な用途の一つに、塗料としての用途がある。この場合、塗膜の光による劣化を防止する目的で、紫外線吸収剤を前記ポリウレタン塗料に加えることがある。しかしながら、ポリウレタン塗料に単に紫外線吸収剤を混合するのみでは、前記紫外線吸収剤がポリウレタンと分離してしまうおそれがある。例えば、ポリウレタン塗料の塗膜に何らかの溶媒(例えば水等)が付着すると、紫外線吸収剤のみが前記溶媒に抽出されてしまうおそれがある。また、ポリウレタン塗料の塗膜を単に通常の使用状態で長時間静置しておいても、次第に紫外線吸収剤が塗膜表面に析出し、塗膜と分離してしまう場合がある(この現象を「ブリードアウト」ということがある)。このように、紫外線吸収剤がポリウレタンと分離してしまうと、光によるポリウレタン塗膜の劣化を防止するという本来の目的を十分に達成することができない。
【0004】
このような問題を解決する目的で、紫外線吸収剤の分子量を大きくすることによりポリウレタン樹脂との相溶性を高め、分離を低減させる試みも行われている。しかし、この方法では、ポリウレタンと紫外線吸収剤との分離が十分に防止できないおそれがある。そこで、反応性基を有する紫外線吸収剤をポリウレタンのポリマー鎖に結合させ、前記ポリマー鎖と一体化させて紫外線吸収剤の分離を防ぐことが行われている(特許文献1および2)。この場合、ポリウレタンとの反応性に優れたベンゾフェノン系紫外線吸収剤やベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が用いられる。
【特許文献1】特許第3580832号公報
【特許文献2】特開2005−206720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤は、紫外線吸収性能が十分でないという問題がある。また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤には、発癌性のおそれが指摘されているものもある。さらに、安全性に問題のないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であっても、非常に高価で、実用上、コストの負担が大きいという問題がある。
【0006】
このように、ベンゾフェノン系およびベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤は、ポリウレタン鎖に結合させて用いる場合、いずれも実用上の問題がある。しかしながら、これら以外の紫外線吸収剤は、ポリウレタン鎖に結合させて一体化させること自体が困難である。
【0007】
そこで、本発明は、実用性の高い紫外線吸収剤をポリウレタン鎖に結合させて一体化させたポリウレタンの提供を目的とする。さらに、本発明は、そのようなポリウレタンを効率よく製造することができるポリウレタンの製造方法、および前記ポリウレタンを用いた製品をも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のポリウレタンは、ポリウレタン鎖に、トリアジン誘導体である紫外線吸収剤が、直接、または他の原子団を介して間接的に共有結合しているポリウレタンである。
【0009】
また、本発明のポリウレタンの製造方法は、前記本発明のポリウレタンを製造する方法であって、
(A)下記成分(a)〜(c)を反応させる工程
を含む製造方法である。なお、後述するように、本発明のポリウレタンは、この製造方法に限定されず、どのような方法で製造しても良い。

成分(a):ポリオール
成分(b):ポリイソシアナト化合物
成分(c):トリアジン誘導体
【0010】
さらに、本発明の製品は、前記本発明のポリウレタンを含み、ポリウレタンフォーム、寝具、オムツ、緩衝材、断熱材、構造材、エラストマー、工業部品、ロール、パッキン、靴底、ホース、土木用品、建築材用品、防水材、屋上防水溶剤、屋内床材、目土防水材、繊維、スポーツウェアー、下着、雨具、合成皮革、人工皮革、靴、衣類、塗料、接着剤、自動車用部品、木工用品、ハードコートフィルム、または積層フィルムとして使用される製品である。
【発明の効果】
【0011】
本発明者等は、鋭意研究の結果、トリアジン誘導体が、紫外線吸収性能、コスト、安全性等に優れており、かつ、ポリウレタン鎖に結合させて一体化させることができることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明によれば、トリアジン誘導体である実用性の高い紫外線吸収剤をポリウレタン鎖に結合させて一体化させたポリウレタンを提供することができる。さらに、本発明の製造方法によれば、そのような本発明のポリウレタンを効率よく製造することが可能である。本発明のポリウレタンは、紫外線吸収剤の分離が効果的に防止されているので、耐光性、耐侯性等の性能に優れ、前述のような種々の製品に用いることができる。さらに、本発明のポリウレタンの用途はこれに限定されず、どのような用途に用いても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0014】
本発明で用いる各種化合物に互変異性体または立体異性体(例:幾何異性体、配座異性体、光学異性体等)が存在する場合は、特に断らない限り、いずれの異性体も本発明に用いることができる。また、本発明で用いる各種化合物が塩を形成しうる場合は、特に断らない限り、前記塩も本発明に用いることができる。前記塩は、例えば、酸付加塩でも塩基付加塩でも良い。前記酸付加塩を形成する酸は無機酸でも有機酸でも良く、前記塩基付加塩を形成する塩基は無機塩基でも有機塩基でも良い。前記無機酸としては、特に限定されないが、例えば、硫酸、リン酸、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜フッ素酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜フッ素酸、亜塩素酸、亜臭素酸、亜ヨウ素酸、フッ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過フッ素酸、過塩素酸、過臭素酸、および過ヨウ素酸等があげられる。前記有機酸も特に限定されないが、例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p−ブロモベンゼンスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸等があげられる。前記無機塩基としては、特に限定されないが、例えば、水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩等があげられ、より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウム等があげられる。前記有機塩基も特に限定されないが、例えば、エタノールアミン、トリエチルアミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等があげられる。これらの塩の製造方法も特に限定されず、例えば、前記電子供与体・受容体連結分子に、前記のような酸や塩基を公知の方法により適宜付加させる等の方法で製造することができる。
【0015】
本発明で用いる各種化合物において、置換基等に異性体が存在する場合は、特に断らない限り、どの異性体でも良い。例えば、単に「フェニレン基」という場合は、o−フェニレン基でも、m−フェニレン基でも、p−フェニレン基でも良い。単に「ナフチル基」という場合は、1−ナフチル基でも2−ナフチル基でも良い。また、単に「ブチル基」という場合は、n−ブチル基でも、イソブチル基でも、sec−ブチル基でも、tert−ブチル基でも良い。
【0016】
また、本発明において、「アルキル基」とは、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基およびtert−ブチル基等が挙げられる。アルキル基を構造中に含む基(アルキルアミノ基、アルコキシ基等)においても同様である。また、ペルフルオロアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基およびtert−ブチル基等から誘導されるペルフルオロアルキル基が挙げられ、ペルフルオロアルキル基を構造中に含む基(ペルフルオロアルキルスルホニル基、ペルフルオロアシル基等)においても同様である。本発明において、アシル基としては、特に限定されないが、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、エトキシカルボニル基、等が挙げられ、アシル基を構造中に含む基(アシルオキシ基、アルカノイルオキシ基等)においても同様である。また、本発明において、アシル基の炭素数にはカルボニル炭素を含み、例えば、炭素数1のアルカノイル基(アシル基)とはホルミル基を指すものとする。さらに、本発明において、「ハロゲン」とは、任意のハロゲン元素を指すが、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。また、本発明で使用する有機化合物において、「ヘテロ原子」とは、前記有機化合物の分子骨格中に組み込まれた原子であって、炭素および水素以外の原子をいう。また、本発明で「不活性ガス」とは、希ガスを含めて反応性に乏しい気体全般を指し、例えば窒素ガス等を含む。希ガスとは、周期表第18族元素のヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンおよびラドンの6元素のいずれかからなる気体をいう。不活性ガスとは、狭義には希ガスのみを指すことがあるが、本発明では、前述の通りさらに広い概念を指す。
【0017】
[1.ポリウレタン]
本発明のポリウレタンは、前述の通り、ポリウレタン鎖に、トリアジン誘導体である紫外線吸収剤が、直接、または他の原子団を介して間接的に共有結合しているポリウレタンである。本発明のポリウレタンは、例えば、下記化学式(i)で表されることが好ましい。
【化9】

前記化学式(i)中、
〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、直鎖若しくは分枝アルキル基、直鎖若しくは分枝アルコキシ基、置換若しくは無置換フェニル基、または任意の置換基であり、
Uは、ポリウレタン鎖であり、Lは、任意の原子団であるか、または存在しない。なお、R〜R16は、例えば、前記化学式(1)と同じで良い。好ましいR〜R16は、化学式(1)について後述する通りである。

また、本発明のポリウレタンは、前述の成分(a)〜(c)を反応させて得られるポリウレタンであることがより好ましい。

成分(a):ポリオール
成分(b):ポリイソシアナト化合物
成分(c):トリアジン誘導体
【0018】
[1−1.成分(a)(ポリオール)]
前記成分(a)(ポリオール)は、特に制限されない。例えば、前記ポリオールは、低分子ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、シリコーンポリオール、低分子ジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルポリカーボネートジオール、ポリブタジエンジオール、およびシリコーンジオール、からなる群から選択される少なくとも一つが好ましいが、これら以外のポリオールでも良い。
【0019】
前記低分子ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)、2−イソプロピル−1,4−ブタンジオール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール(例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール)、シクロヘキサンジオール(例えば1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール)、2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン等の脂環式ジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパン等の三価以上のポリオールが挙げられる。
【0020】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、前記低分子ポリオール等のポリオールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸のエステル形成性誘導体(エステル、無水物、ハライド等)、ラクトン、ヒドロキシカルボン酸等とのエステル化物が挙げられる。前記多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸、脂肪族ジカルボン酸(例えば水添ダイマー酸、ダイマー酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、トリカルボン酸(例えばトリメリト酸、トリメシン酸、ひまし油脂肪酸の三量体等)、テトラカルボン酸(例えばピロメリット酸)等が挙げられる。前記多価カルボン酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、酸無水物、ハライド(クロライド、ブロマイド等)、エステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、アミルエステル等の低級脂肪族エステル)等が挙げられる。前記ラクトンとしては、例えば、γ−カプロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。また、前記ヒドロキシカルボン酸は、例えば、前記ラクトンが開環した構造のヒドロキシカルボン酸であっても良い。
【0021】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、ポリテトラメチレングリコール、前記低分子ポリオールのオキサイド付加物等が挙げられる。前記エチレンオキサイド付加物としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等が挙げられ、前記プロピレンオキサイド付加物としては、例えば、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。前記低分子ポリオールのオキサイド付加物としては、例えば、エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0022】
前記ポリオールは、例えば、水酸基を2つ含むジオールであっても良いし、水酸基を3つ以上含んでいても良いが、ジオールが好ましい。また、前記ジオールとしては、例えば、低分子ジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、およびポリエーテルジオールからなる群から選択される少なくとも一つがさらに好ましい。前記ジオールを化学式HO−R’−OHで表した場合、R’は特に制限されず、例えば、炭化水素基であっても良いが、酸素、ケイ素等のヘテロ原子を含む原子団であっても良い。前記炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状でも分枝状でも良く、環状構造を含んでいてもいなくても良く、芳香族基を含んでいても含んでいなくても良い。前記炭化水素基は、特に制限されないが、例えば、直鎖もしくは分枝アルキレン基、環状構造を有する基、芳香族性を有する基などが好ましい。環状構造を有する基としては、例えば、1,2−シクロへキシレン基、1,3−シクロへキシレン基、1,4−シクロへキシレン基などが好ましく、それらの基が二つ以上、直接にまたはアルキレン基等を介して結合した基であっても良い。前記芳香族性を有する基としては、例えば、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基などが好ましく、それらの基が二つ以上、直接にまたはアルキレン基等を介して結合した基であっても良い。前記低分子ジオールとしては、特に制限されないが、例えば、前記において例示した各低分子ジオールなどが挙げられ、1種類のみを用いても2種以上を併用しても良い。前記ポリカーボネートジオールは、例えば、下記化学式(7)で表されるポリカーボネートジオールであっても良い。
【化10】

【0023】
前記化学式(7)中、L100は任意であり、各L100は、互いに同一でも異なっていても良い。L100としては、例えば、炭化水素基が好ましい。前記炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状でも分枝状でも良く、環状構造を含んでいてもいなくても良く、芳香族基を含んでいても含んでいなくても良い。前記炭化水素基としては、直鎖もしくは分枝アルキレン基、芳香族性を有する基などが好ましい。前記芳香族性を有する基としては、例えば、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基などが好ましく、それらの基が二つ以上、直接にまたはアルキレン基等を介して結合した基であっても良い。また、前記化学式(7)中、重合度nは、特に制限されないが、例えば1〜30、好ましくは3〜7である。また、前記化学式(7)で表されるポリカーボネートジオールの分子量は、特に制限されないが、例えば300〜4000、好ましくは500〜1000である。重合度nと、分子量(Mw)との関係は、例えば、前記化学式(7)で表されるポリカーボネートジオールが1,6−ヘキサンジオールのポリカーボネートジオール(L100=C12)である場合、n=1のときMw=262、n=2のときMw=406、n=3のときMw=550、n=6のときMw=982、n=27のときMw=4006となる。前記ポリエステルジオールは、例えば、前記化学式(7)において、カーボネート結合(−O−CO−O−)をエステル結合(−O−CO−)に変えた構造で表されるポリエステルジオールであっても良い。前記ポリエーテルジオールは、例えば、前記化学式(7)において、カーボネート結合(−O−CO−O−)をエーテル結合(−O−)に変えた構造で表されるポリエーテルジオールであっても良い。これらポリカーボネートジオール、ポリエステルジオールおよびポリエーテルジオールは、例えば、前記低分子ポリオールの一種類または二種類以上を重合させて得られる構造を有していても良い。この場合の低分子ポリオールとしては、特に制限されないが、例えば、前記において例示した各低分子ポリオールなどが挙げられる。これらの中でも、ポリマーの強度等の観点から、炭素数2〜10の直鎖アルキレンジオールが好ましく、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールがより好ましく、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールを用いることがさらに好ましい。
【0024】
前記化学式(7)で表されるポリカーボネートジオールは、例えば、下記式(8)で表されるポリカーボネートジオール(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールのポリカーボネートジオール)、または、下記式(9)で表されるポリカーボネートジオール(1,6−ヘキサンジオールのポリカーボネートジオール)であっても良い。
【化11】

【0025】
さらに、前記ポリオールとしては、前述の各種ポリオール以外にも、例えば、ポリウレタン合成において一般的に用いられる他のポリオールも、好ましく用いることができる。また、前記成分(a)としては、これら各種ポリオールのうち、一種類のみを用いても良いし、必要に応じ複数種類併用しても良い。なお、前記成分(a)(ポリオール)の分子量(Mw)は、特に制限されないが、例えば300〜4000、好ましくは500〜1000である。
【0026】
[1−2.成分(b)(ポリイソシアナト化合物)]
前記成分(b)(ポリイソシアナト化合物)は、特に制限されない。前記ポリイソシアナト化合物は、イソシアナト基を2つ含むジイソシアナト化合物であっても良いし、イソシアナト基を3つ以上含んでいても良いが、ジイソシアナト化合物が好ましい。例えば、下記化学式(10)で表されるジイソシアナト化合物を用いることができる。
【化12】

【0027】
前記化学式(10)中、L200は任意である。L200としては、例えば、炭化水素基が好ましい。前記炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状でも分枝状でも良く、環状構造を含んでいてもいなくても良く、芳香族基を含んでいても含んでいなくても良い。前記炭化水素基としては、直鎖もしくは分枝アルキレン基、環状構造を有する基、または芳香族性を有する基が好ましい。環状構造を有する基としては、例えば、1,2−シクロへキシレン基、1,3−シクロへキシレン基、1,4−シクロへキシレン基等が好ましく、それらの基が二つ以上、直接にまたはアルキレン基等を介して結合した基であっても良い。前記芳香族性を有する基としては、例えば、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基等が好ましく、それらの基が二つ以上、直接にまたはアルキレン基等を介して結合した基であっても良い。
【0028】
ジイソシアナト化合物(ジイソシアネート)は特に制限されず、芳香族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート等を適宜用いることができるが、脂環式イソシアネートが、耐光性、強度、柔軟性等の観点から好ましい。前記芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。前記脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トランス−1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等が挙げられる。前記脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート等が挙げられる。
【0029】
前記ジイソシアナト化合物としては、例えば、下記式(11)〜(14)のいずれかで表されるジイソシアナト化合物が特に好ましい。下記式(11)で表される化合物すなわち4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンは、通常、MDIと略称される。下記式(12)で表される化合物、すなわち、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンは、MDIのベンゼン環に水素原子12個を付加させた構造を有するから、H12MDIなどと略称されることがある。下記式(13)で表される化合物すなわち1,6−ジイソシアナトヘキサン(ヘキシレンジイソシアネート)は、HDIなどと略称されることがある。下記式(14)で表される化合物すなわち3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシル=イソシアネート(イソホロンジイソシアネート)は、IPDI等と略称されることがある。
【化13】

【化14】

【0030】
1分子中にイソシアナト基を3つ以上有するポリイソシアナト化合物としては、例えば、トリフェニルメタントリイソシアネート、1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート等が挙げられる。また、例えば、前記において例示した各ジイソシアナト化合物(ジイソシアネート)のイソシアヌレート三量化物、ビウレット三量化物、トリメチロールプロパンアダクト化物等も挙げられる。
【0031】
前記成分(b)としては、前述のMDI、H12MDI、HDI、IPDI、および他に例示した前記各種ポリイソシアナト化合物以外にも、例えば、ポリウレタン合成において一般的に用いられる他のジイソシアナト化合物も、好ましく用いることができる。なお、前記成分(b)としては、前述した各種ポリイソシアナト化合物のうち、一種類のみを用いても良いし、必要に応じ複数種類併用しても良い。また、前記ポリイソシアナト化合物は、カルボジイミド変性、イソシアヌレート変性、ビウレット変性等の変性物の形で用いてもよく、各種のブロッキング剤によってブロックされたブロックイソシアネートの形で用いてもよい。
【0032】
[1−3.成分(c)(紫外線吸収剤)]
前記成分(c)(紫外線吸収剤)は、前述の通り、トリアジン誘導体である。前記トリアジン誘導体は、下記化学式(1)で表されるトリアジン誘導体、その互変異性体および立体異性体、ならびにそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一つの化合物であることが好ましい。トリアジン誘導体である紫外線吸収剤の中でも、下記化学式(1)であらわされるトリアジン誘導体が、特に紫外線吸収性能、コスト、安全性等に優れており、かつ、ポリウレタン鎖に結合させて一体化させやすく、実用性が高いためである。
【化15】

前記化学式(1)中、
は、直鎖若しくは分枝アルキレン基であるか、または存在せず、
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、または直鎖若しくは分枝状置換基であり、前記直鎖若しくは分枝状置換基は、主鎖中に、C、N、O、S、PおよびSiを含んでいても含んでいなくても良く、
〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、直鎖若しくは分枝アルキル基、直鎖若しくは分枝アルコキシ基、置換若しくは無置換フェニル基、または任意の置換基である。
【0033】
前記化学式(1)中、RおよびRの少なくとも一方が水酸基であることが好ましい。また、前記化学式(1)中、R、R11、R12およびR16からなる群から選択される少なくとも一つが水酸基であることが好ましい。また、Lは、炭素数1〜18の直鎖もしくは分枝アルキレン基であることが好ましく、炭素数1〜12の直鎖もしくは分子アルキレン基であることがより好ましく、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキレン基であることがさらに好ましく、Lがメチレン基であることが特に好ましい。
【0034】
前記化学式(1)中、RおよびRの少なくとも一方が、直鎖若しくは分枝アルキル基であることが好ましい。前記直鎖若しくは分枝アルキル基の炭素数は、例えば1〜18、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜6である。RおよびRは、例えば、両方が、前記直鎖若しくは分枝アルキル基であっても良いし、一方が前記直鎖若しくは分枝アルキル基であり、他方が水素原子であっても良い。また、前記直鎖若しくは分枝アルキル基は、その鎖中のメチレン基(−CH−)に代えて酸素原子(エーテル結合)を有する基であることも好ましい。
【0035】
前記化学式(1)中、R〜R16において、前記直鎖若しくは分枝アルキル基の炭素数は、例えば1〜18、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜6である。前記直鎖若しくは分枝アルコキシ基においても同様である。R〜R16において、前記直鎖若しくは分枝アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基が特に好ましく、前記直鎖若しくは分枝アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基またはtert−ブトキシ基が特に好ましい。
【0036】
前記化学式(1)で表されるトリアジン誘導体は、例えば、下記化学式(3)で表されるトリアジン誘導体、またはその互変異性体若しくは立体異性体であることが好ましい。
【化16】

前記化学式(3)中、R1000は、直鎖若しくは分枝アルキル基であり、RおよびR〜R16は、前記化学式(1)と同じである。R1000において、前記直鎖若しくは分枝アルキル基の炭素数は、例えば1〜18、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜6である。
【0037】
また、前記化学式(3)中、RおよびR〜R16は、それぞれ独立に、水素原子または直鎖もしくは分枝アルキル基であることが好ましい。前記直鎖若しくは分枝アルキル基の炭素数は、例えば1〜18、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜6であり、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基が特に好ましい。
【0038】
前記化学式(1)で表されるトリアジン誘導体のうち、特に好ましいトリアジン誘導体は、例えば、下記式(4)〜(6)で表されるトリアジン誘導体、ならびにそれらの互変異性体および立体異性体からなる群から選択される少なくとも一つであるが、これらに限定されるものではない。
【化17】

【化18】

【化19】

【0039】
前記化学式(4)または(5)で表されるトリアジン誘導体は、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社から、商品名チヌビン400として購入可能である。ただし、前記化学式(4)または(5)で表されるトリアジン誘導体は、これに限定されず、他の方法により入手、合成等しても良い。また、前記化学式(6)で表されるトリアジン誘導体は、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社から、商品名チヌビン405として購入可能である。ただし、前記化学式(6)で表されるトリアジン誘導体は、これに限定されず、他の方法により入手、合成等しても良い。なお、チヌビン(TINUVIN)は、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社の登録商標である。
【0040】
[1−4.成分(d)(カルボン酸ジオール)]
本発明のポリウレタンは、前記成分(a)〜(c)に加え、さらに、下記化学式(2)で表されるカルボン酸ジオール、その互変異性体および立体異性体、ならびにそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一つ(成分(d))を反応させて得られるポリウレタンであることが、より好ましい。
【化20】

前記化学式(2)中、
17は、水素原子、直鎖若しくは分枝アルキル基、飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分枝若しくは環状炭化水素基、または任意の原子団であり、
18は、水素原子または保護基であり、
およびLは、それぞれ独立に、直鎖若しくは分枝アルキレン基、飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分枝若しくは環状炭化水素基、または任意の原子団であるか、または存在しない。
【0041】
前記化学式(2)中、R18は、保護基であっても良いが、水素原子であることが、脱保護の必要がないため好ましい。LおよびLに付加した水酸基の反応性が十分に高ければ、前記化学式(2)中のカルボキシル基を保護基(R18)で保護しなくても、本発明のポリウレタンの製造を目的とする反応に用いることができる。この観点から、Lにおいて、前記直鎖若しくは分枝アルキレン基の炭素数は、例えば1〜18、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜6であり、メチレン基が特に好ましい。Lにおいても同様である。LおよびLは、いずれもメチレン基であることが特に好ましい。また、R17、LおよびLにおいて、「飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分枝若しくは環状炭化水素基」の炭素数は、例えば、1〜18、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜6である。環状炭化水素基は、芳香環でも非芳香環でも良く、例えば、ベンゼン、ナフタレン、シクロヘキサン等から誘導される基が挙げられる。
【0042】
前記化学式(2)で表される化合物(カルボン酸ジオール)は、例えば、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、ジメチロールブタン酸(DMBA)ジメチロール酪酸、およびジメチロール吉草酸からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。さらに、これら以外にも、例えば、ポリウレタン合成において一般的に用いられる他のカルボン酸ジオールも、好ましく用いることができる。また、前記化学式(2)で表される化合物(カルボン酸ジオール)は、一種類のみ用いても良いし、必要に応じ二種類以上併用しても良い。
【0043】
なお、前記成分(a)〜(c)を(好ましくは、さらに前記成分(d)を)反応させた場合、どのように結合して本発明のポリウレタンを形成するかは、必ずしも明らかではない。前記成分(c)については、例えば、以下のように考えられる。すなわち、前記化学式(1)で表されるトリアジン誘導体の2級水酸基の酸素原子(下記化学式中、「α」の符号および矢印で示す酸素原子)が、縮合、重付加等により、ポリウレタン鎖に結合していることが考えられる。また、前記トリアジン誘導体が前記化学式(3)で表される場合、R1000の付加した酸素原子(下記化学式中、「β」の符号および矢印で示す酸素原子)からR1000が脱離し、前記酸素原子が、縮合、重付加等により、ポリウレタン鎖に結合していることも考えられる。ただし、これらは、推定可能な反応機構および構造の一例であり、本発明の化合物の構造は、これらの考察により何ら限定されない。
【化21】

【化22】

【0044】
また、本発明のポリウレタンは、例えば、前述の通り、前記成分(a)〜(c)を(好ましくは、さらに前記成分(d)を)反応させることにより得ることができる。しかしながら、本発明のポリウレタンの製造方法は何ら限定されず、どのような製造方法により製造しても良い。例えば、前記成分(a)〜(c)(あるいは、前記成分(a)〜(d))と異なる構造の原料を用いた製造方法でも本発明のポリウレタンと同じ構造のポリウレタンが得られるのであれば、その方法で製造しても良く、得られたポリウレタンは本発明のポリウレタンである。
【0045】
[2.ポリウレタンの製造方法]
本発明のポリウレタンを製造する方法は、前述の通り、何ら限定されない。例えば、前述の通り、前記成分(a)〜(c)を反応させて本発明のポリウレタンを製造することができるが、さらに前記成分(d)を反応させても良い。例えば、反応系に水を加えて反応させる場合は、前記成分(a)〜(c)に加え、さらに前記成分(d)を反応させると、反応効率、ポリウレタンの収率等に優れ好ましい。また、本発明のポリウレタンの製造方法は、例えば、一段階でポリウレタン鎖を合成する方法(ワンショット法)でも良い。あるいは、あらかじめポリオールとポリイソシアナト化合物とを反応させてイソシアナト基末端プレポリマーを合成し、さらにジアミンなどの鎖伸長剤を用いて目的のポリウレタンを得る方法(プレポリマー法)でも良い。前記ワンショット法では、例えば下記式(I)を満たすことが好ましく、前記プレポリマー法では、例えば下記式(II)を満たすことが好ましいが、この限りではない。

0.8≦NCO/OH≦1.0 (I)
1.2≦NCO/OH≦4.0 (II)

前記式(I)および(II)中、「NCO」とは、前記成分(a)〜(c)(さらに前記成分(d)を反応させる場合は、前記成分(a)〜(d))の全ての成分におけるイソシアナト基(−NCO)数の合計であり、「OH」とは、前記成分(a)〜(c)(さらに前記成分(d)を反応させる場合は、前記成分(a)〜(d))の全ての成分における水酸基(−OH)数の合計である。また、前記プレポリマー法において、NCO/OHの下限値は、より好ましくは1.5以上であり、上限値は、より好ましくは2.0以下である。
【0046】
また、本発明のポリウレタンを製造するに際しては、例えば、各成分を溶媒に溶かして反応を行っても良い。また、例えば、水や後述の各種有機溶媒等を、実質的に反応の妨げとならない条件設定下において、分散媒として用いて反応を行っても良い。前記溶媒および分散媒の種類は、例えば、後述するように、公知のポリウレタンの製造方法を参考にして適宜選択することができる。また、これらの方法は、前述のワンショット法およびプレポリマー法のいずれと組み合わせることも可能である。
【0047】
本発明のポリウレタンの製造方法において、前記成分(a)〜(d)を反応させる場合は、例えば、前記成分(a)〜(d)の全てを一度に反応させても良い。すなわち、前記成分(a)〜(c)を反応させる前記工程(A)において、前記成分(d)を共に反応させても良い。しかしながら、前記成分(a)〜(c)を先に反応させ(前記工程(A))、その生成物に後から前記成分(d)を反応させる(前記工程(B))製造方法によれば、前記成分(c)(トリアジン誘導体)がポリウレタン鎖にさらに効率よく結合しやすいため、より好ましい。この理由は必ずしも明らかではないが、例えば以下のように考えられる。すなわち、前記成分(d)(カルボン酸ジオール)を前記成分(c)(トリアジン誘導体)と同時に添加すると、前記成分(c)の反応性が低いために、カルボン酸ジオール(成分(d))だけが前記成分(a)および(b)と優先的に反応し、トリアジン誘導体(成分(c))が結合しない。これに対し、成分(d)を添加せずにあらかじめ前記成分(a)〜(c)を反応させると、トリアジン誘導体(成分(c))を効率よくポリウレタン鎖に結合させることができるのである。ただし、この考察は、推定可能な反応機構の一例であり、本発明を何ら限定しない。
【0048】
前記工程(A)および(B)で、それぞれどのような反応が起こるかについても、必ずしも明らかではないが、例えば以下のように考えられる。すなわち、前記工程(A)では、前記成分(a)(ポリオール)および前記成分(b)(ポリイソシアナト化合物)が重合して鎖長が短いプレポリマー鎖を形成するとともに、そのプレポリマー鎖に前記成分(c)(トリアジン誘導体)が結合する。その結果、前記成分(c)(トリアジン誘導体)が鎖に結合して一体となったプレポリマーが生じる。次に、前記工程(B)では、前記工程(A)の生成物であるプレポリマーが前記成分(d)(カルボン酸ジオール)と共重合し、鎖長が長くなったポリマーが生成する。また、前記工程(A)の生成物として、前記成分(b)と前記成分(c)(トリアジン誘導体)との反応物(前記成分(a)(ポリオール)と反応していない)が残っていた場合、これが前記成分(d)(カルボン酸ジオール)と反応し、前記ポリマー(ポリウレタン)の鎖中に組み込まれると考えられる。ただし、これらは、前記工程(A)および(B)で起こる可能性がある、あるいは推定可能な反応機構の一例である。前記工程(A)および(B)とそれらの生成物、ならびに本発明は、これらの記述により何ら限定されない。
【0049】
以下、前記本発明のポリウレタンの製造方法について、さらに具体的に説明する。
【0050】
本発明の製造方法は、前記工程(A)を含む以外は特に制限されないが、例えば前述の通り、前記工程(B)をさらに含むことが好ましい。さらに、例えば、本発明の製造方法は、前記工程(A)および(B)以外の工程を適宜含んでいても良いし、含んでいなくても良い。また、例えば、本発明の製造方法においては、反応物質として、前記成分(a)〜(d)以外の成分を適宜用いても良いし、用いなくても良い。前記成分(a)(ポリオール)および前記成分(b)(ポリイソシアナト化合物)は特に制限されず、様々な化合物を幅広く選択可能である。また、紫外線吸収剤としてポリウレタン鎖に組み込む前記成分(c)(トリアジン誘導体)の量も特に制限されず、適宜調整可能である。
【0051】
本発明の製造方法は、例えば、以下のようにして行うことができる。なお、反応温度、反応時間、溶媒、分散媒、濃度、物質量比等の各種反応条件は、以下の条件に限定されない。例えば、前記各種反応条件は、公知のポリウレタンの製造方法等を参考にして適宜変更を加えることもできる。また、以下では、主として
(A)前記成分(a)〜(c)を反応させる工程
および
(B)前記工程(A)の反応生成物と前記成分(d)とを反応させる工程
を含む製造方法について説明するが、この方法は、例えば、前記成分(d)および前記工程(B)を省略する、あるいは、前記工程(A)において前記成分(a)〜(d)の全てを一度に反応させ、前記工程(B)を省略するなど、適宜変更が可能である。
【0052】
[2−1.工程(A)]
まず、前記工程(A)を行う。具体的には、例えば、以下のようにして行うことができる。
【0053】
すなわち、まず、前記成分(a)(ポリオール)、前記成分(b)(ポリイソシアナト化合物)、および前記成分(c)(トリアジン誘導体)を準備する。前記成分(a)(ポリオール)の物質量(モル数)は、特に制限されず、適宜設定すれば良い。前記ワンショット法の場合、前記成分(b)(ポリイソシアナト化合物)1molに対する前記成分(a)(ポリオール)の物質量は、例えば、前記式(I)に基づき1.00〜1.25molであるが、これには限定されない。前記プレポリマー法の場合、前記成分(b)(ポリイソシアナト化合物)1molに対する前記成分(a)(ポリオール)の物質量は、例えば、前記式(II)に基づき0.25〜0.84mol、好ましくは0.50〜0.84mol、より好ましくは0.50〜0.64molであるが、これには限定されない。前記成分(c)(トリアジン誘導体)の物質量(モル数)も、特に制限されず、適宜設定することができる。例えば、本発明で製造されるポリウレタン(ウレタン樹脂)において、紫外線吸収剤すなわち前記成分(c)(トリアジン誘導体)の含有量は、質量比で、例えば0.1〜50.0%、好ましくは0.4〜20.0%、より好ましくは1.0〜10.0%であるが、この数値には限定されない。前記成分(c)(トリアジン誘導体)は、比較的少量でも十分な紫外線吸収能が得られ、ポリウレタンの他の物性への影響等を考慮すると、10.0質量%以下がより好ましい。前記成分(b)(ポリイソシアナト化合物)1molに対する前記成分(c)(トリアジン誘導体)の物質量は、特に制限されず、適宜設定することができる。反応成分(原料)が後述の実施例の物質であり、前記NCO/OHが1.5、製造されるポリウレタンの樹脂酸価が15、ポリウレタン中における前記成分(c)(トリアジン誘導体)の含有量が前述の数値範囲として計算すると、前記成分(b)(ポリイソシアナト化合物)1molに対する前記成分(c)(トリアジン誘導体)の物質量は、例えば0.001〜0.660mol、好ましくは0.005〜0.265mol、より好ましくは0.013〜0.125molである。また、反応成分(原料)が実施例の物質以外である場合、前記NCO/OHが1.5以外の数値である場合、および、樹脂酸価が15以外の数値である場合も、この数値範囲に準じて決定することができる。なお、本発明では、樹脂酸価の単位は、特に記載しない限り、mg−KOH/gであるものとする。また、本発明の製造方法において、原料モノマー等の反応成分(前記成分(a)〜(d)およびその他の成分)の使用量比は、非常に自由度が高く、例えば、原料モノマーの性質(鎖の剛直性の高さ)、製造されるポリウレタンの用途等に応じて適宜設定可能であり、本明細書に記載の数値範囲により何ら制限されない。
【0054】
次に、前記成分(a)〜(c)を反応させる。このとき、必要に応じ、前記成分(a)〜(c)以外の成分、例えば触媒等を適宜共存させてもよい。前記触媒としては、特に制限されないが、例えば、DBTDL(ジブチルスズジラウレート)、およびその他の金属触媒、アミン触媒等が挙げられる。前記触媒の物質量(モル数)は、特に制限されず、触媒の種類等によっても異なるが、前記成分(b)(ポリイソシアナト化合物)1molに対し、例えば1〜10000μmol、好ましくは10〜1000μmol、より好ましくは50〜500μmolである。
【0055】
前記反応は、例えば、無溶媒で行っても良いが、反応制御の容易性等の観点から、溶媒を用いて行うことが好ましい。前記溶媒は、特に制限されないが、前記成分(a)〜(c)の溶解性、反応性等の観点から、例えば、ケトン、鎖状脂肪族炭化水素、環状脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル、エステル、アミド、スルホキシド、アルコール等が好ましい。前記ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等が挙げられる。前記鎖状脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘキサン、2−メチルペンタン、ヘプタン、オクタン等が挙げられる。前記環状脂肪族炭化水素としては、例えば、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が挙げられる。前記芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等が挙げられる。前記エーテルとしては、例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等が挙げられる。前記エステルとしては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。前記アミドとしては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。前記スルホキシドとしては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール等が挙げられる。これら溶媒は、一種類のみ使用しても二種類以上併用しても良い。なお、本発明の製造方法における、溶媒以外の全反応成分(前記成分(a)〜(d)含む)の全質量をA、前記溶媒の質量をBとすると、下記式(III)で表される反応成分含有量C(%)は、特に制限されないが、例えば10〜100%、好ましくは40〜100%、より好ましくは70〜100%である。なお、アルコールについては、反応条件設定によっては、例えば、溶媒でなく反応停止剤として用いることもできる。

C=A/(A+B)×100 (III)

【0056】
前記反応の温度は特に制限されず、各反応成分(特に、前記成分(b)(ポリイソシアナト化合物))の種類等によっても異なるが、例えば40〜180℃、好ましくは60〜150℃、より好ましくは60〜100℃である。また、前記反応の時間は特に制限されず、前記反応温度および各反応成分(特に、前記成分(b)(ポリイソシアナト化合物))の種類等によっても異なるが、例えば1〜12時間、好ましくは1〜6時間、より好ましくは1.5〜4時間である。反応は、例えば、反応速度向上、反応の均一性、反応暴走の防止等の観点から、反応系をよく攪拌しながら行うことが好ましい。また、反応は、例えば、大気中で行っても良いが、副反応防止等の観点から、窒素、アルゴン等の不活性ガス中で行ってもよい。
【0057】
反応追跡は、例えば、GPC(ゲル濾過クロマトグラフィー)等を用いて行うことができる。工程(A)の終了時は適宜決定すれば良く、特に制限されないが、例えば、GPC等による分析で、原料が消失したら、あるいはピークの変動がなくなったら、反応終了とし、次の工程(B)に移ることができる。
【0058】
[2−2.工程(B)]
次に、前記工程(B)を行う。具体的な方法は特に制限されない。例えば、前記工程(A)で得られた反応混合物を精製せずに、すなわち、溶媒の除去等を何も行わずに前記成分(d)(カルボン酸ジオール)を加え、そのまま反応させて前記工程(B)を行っても良い。したがって、工程(B)で使用する溶媒は、例えば、前記工程(A)と同様でも良い。前記成分(d)の添加量は特に制限されない。反応成分(原料)が後述の実施例の物質であり、NCO/OH=1.5で、紫外線吸収剤(前記成分(c))のポリウレタン樹脂中質量比が4%、樹脂酸価が例えば0〜60mg−KOH/g、好ましくは5〜30mg−KOH/g、より好ましくは10〜30mg−KOH/gとして計算すると、前記成分(d)の添加量は、前記工程(A)における前記成分(b)(ポリイソシアナト化合物)の使用量1molに対し、例えば0〜0.53mol、好ましくは0.08〜0.35mol、より好ましくは0.15〜0.35molとなる。反応成分(原料)が実施例の物質以外である場合、前記NCO/OHが1.5以外の数値である場合、および、樹脂酸価が前記以外の数値である場合も、この数値範囲に準じて決定することができる。本工程では、必要に応じ、前記成分(d)以外の成分を適宜添加しても良いし、添加しなくても良い。また、必要に応じ、溶媒等を適宜追加しても良いし、追加しなくても良い。反応温度および反応時間は特に制限されないが、例えば、前記工程(A)で例示した数値範囲と同様である。反応は、例えば、反応速度向上、反応の均一性、反応暴走の防止等の観点から、反応系をよく攪拌しながら行うことが好ましい。また、反応は、例えば、大気中で行っても良いが、副反応防止等の観点から、窒素、アルゴン等の不活性ガス中で行ってもよい。反応追跡は、例えば、GPC(ゲル濾過クロマトグラフィー)等を用いて行うことができる。工程(B)の終了時は適宜決定すれば良く、特に制限されないが、例えば、GPC等による分析で、原料が消失したら、あるいはピークの変動がなくなったら、反応終了とすることができる。
【0059】
[2−3.工程(C):鎖伸長]
本発明の製造方法では、前記工程(B)の生成物をもって本発明のポリウレタンとしても良い。しかしながら、前述の通り、本発明の製造方法は、前記工程(A)および(B)以外の工程を適宜含んでいても良い。例えば、前記工程(B)の生成物をさらに鎖伸長剤と反応させる工程(C)を含んでいても良い。具体的な方法は特に制限されない。例えば、前記工程(B)で得られた反応混合物を精製せずに、すなわち、溶媒の除去等を何も行わずに鎖伸長剤を加え、そのまま鎖伸長工程(C)を行っても良い。したがって、工程(C)で使用する溶媒は、例えば、前記工程(B)と同様でも良い。また、鎖伸長工程(C)では、溶媒以外に、例えば、水等の分散媒を添加して反応させることが好ましいが、分散媒を添加せずに反応させることもできる。分散媒を添加する場合、添加量は、特に制限されないが、例えば、前記溶媒の質量の1.0〜50.0倍、好ましくは1.5〜20.0倍、より好ましくは2.0〜10.0倍である。前記鎖伸長剤は特に制限されないが、例えば、ポリアミンが好ましく、ジアミンまたはトリアミンがより好ましい。前記ジアミンとしては、例えば、アルキレンジアミン、ポリエーテルジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン等が挙げられる。前記アルキレンジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン(EDA)、プロピレンジアミン(PDA)等が挙げられる。前記ポリエーテルジアミンとしては、例えば、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンジアミン等が挙げられる。前記脂環式ジアミンとしては、例えば、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。前記芳香族ジアミンとしては、m−キシリレンジアミン、α−(m/pアミノフェニル)エチルアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、ジメチルチオトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。前記ジアミンとしては、これら以外に、ヒドラジン、およびジカルボン酸ジヒドラジド化合物等も挙げられる。また、前記トリアミンとしては、例えば、ジアルキレントリアミン等が挙げられる。前記ジアルキレントリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン等が挙げられる。前記鎖伸長剤の添加量は特に制限されないが、前記工程(A)における前記成分(b)(ポリイソシアナト化合物)の使用量1molに対し、例えば0.15〜0.68mol、好ましくは0.15〜0.45mol、より好ましくは0.30〜0.45molである。なお、この数値範囲は、前記NCO/OHが、例えば1.2〜4.0、好ましくは1.5〜4.0、より好ましくは1.5〜2.0である場合に適用できるが、NCO/OHがこれ以外の数値範囲である場合も、前記鎖伸長剤の添加量は、これに準じて決定できる。必要に応じ、前記鎖伸長剤以外の成分を適宜添加しても良いし、添加しなくても良い。例えば、本工程において、水を加えて乳化して反応させる場合には、系のpHを適切に保つために中和剤を添加することが好ましい。前記中和剤は特に制限されないが、例えば、第3級アミン、アンモニア、トリメチルアンモニウムヒドロキシド、金属水酸化物等があげられる。前記第3級アミンとしては、例えば、トリアルキルアミン、N,N−ジアルキルアルカノールアミン、トリアルカノールアミン等が挙げられる。前記トリアルキルアミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン(TEA)、トリブチルアミン等が挙げられる。前記N,N−ジアルキルアルカノールアミンとしては、例えば、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N,N−ジプロピルエタノールアミン、1−ジメチルアミノ−2−メチル−2−プロパノール等が挙げられる。前記トリアルカノールアミンとしては、例えば、トリエタノールアミン等が挙げられる。前記金属水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げられる。これら中和剤の中でも、イソシアナト基(−NCO)との反応性に乏しいという観点から、第3級アミンが特に好ましい。イソシアナト基(−NCO)との反応性に乏しければ、残留のイソシアナト基(−NCO)と水酸基(−OH)との反応による鎖伸長を阻害しにくいためである。前記中和剤の添加量は特に制限されないが、前記成分(d)(カルボン酸ジオール)の使用量(mol)に対し、例えば10〜100mol%、好ましくは30〜100mol%、より好ましくは60〜100mol%である。また、必要に応じ、溶媒、分散媒等を適宜追加しても良いし、追加しなくても良い。
【0060】
鎖伸長工程(C)における反応温度は特に制限されず、適宜設定できる。前記反応温度は、反応物質、特にイソシアナト化合物(イソシアネート)、鎖伸長剤の種類にもよるが、例えば10〜80℃、好ましくは20〜60℃、より好ましくは25〜40℃である。例えば、前記工程(B)終了時に温度が高すぎるのであれば、適切な温度まで冷却した後に前記中和剤および鎖伸長剤を添加し、反応させても良い。反応時間も特に制限されず、適宜設定できる。適切な反応時間は、前記反応温度によっても異なり、反応物質、特にイソシアナト化合物(イソシアネート)、鎖伸長剤の種類にもよるが、例えば0.5〜6時間、好ましくは0.5〜3時間、より好ましくは1〜2時間である。反応は、例えば、反応速度向上、反応の均一性、反応暴走の防止等の観点から、反応系をよく攪拌しながら行うことが好ましい。また、反応は、例えば、大気中で行っても良いが、副反応防止等の観点から、窒素、アルゴン等の不活性ガス中で行ってもよい。反応追跡は、例えば、GPC(ゲル濾過クロマトグラフィー)等を用いて行うことができる。工程(C)の終了時は適宜決定すれば良く、特に制限されないが、例えば、GPC等による分析で、原料が消失したら、あるいはピークの変動がなくなったら、反応終了とすることができる。
【0061】
以上のようにして本発明のポリウレタンを製造することができる。さらに、これを例えばポリウレタン塗料として用いる場合、前記工程(B)または(C)終了後の反応溶液またはエマルジョンに増粘剤を添加して適切な粘度とし、これを塗料としても良い。さらに、必要に応じ、ワックス、消泡剤等を適宜添加して塗料としても良い。また、例えば、ポリウレタンフォームとする場合は、前記反応工程の少なくとも一つにおいて、発泡剤を共存させても良い。
【0062】
[3.ポリウレタンを用いた製品]
本発明のポリウレタンの用途は特に制限されず、どのような用途に用いても良いが、塗料としての用途に特に適している。本発明のポリウレタンは、紫外線吸収剤の分離が効果的に防止されており、耐光性、耐侯性等の性能に優れているためである。本発明のポリウレタンは、例えば、下記表1に示す各種ポリウレタン塗料に適し、これらの中でもラッカー型塗料に特に適する。なお、下記表1の記載は、「ポリウレタン原料工業の概要」第4版(ウレタン工業会)第49ページ「表24 硬化様式によるポリウレタン塗料の分類」の記載を参考に、一部改変したものである。ただし、本発明においては、下記表1中の分類は単なる例示であり、本発明のポリウレタンを用いた塗料はこれらに限定されない。また、下記表1中の硬化方法および硬化条件も単なる例示であって、これらに何ら限定されない。例えば、ラッカー型塗料は、反応を伴って硬化させても良い。

【表1】

【0063】
塗料としては、例えば、屋外建材用塗料、自動車用塗料、粉体塗料、クリアトップコーティング、インクジェット印刷材および昇華転写印刷材のオーバープリント保護コート層、LCDディスプレイなどに使用する粘着剤、各種印刷物用保護コーティング、繊維処理ポリマー薬剤、オレフィン化粧材用保護コーティング、窓貼り用保護コーティング等が挙げられるが、本発明のポリウレタンは、これらに限定されず、どのような塗料に用いても良い。
【0064】
さらに、本発明のポリウレタンは、塗料に限定されず、どのような用途に用いても良い。例えば、本発明のポリウレタンを製造する際に、前記各種反応条件等を適宜調整することにより、用途に合わせた特性を付与することが可能である。本発明のポリウレタンは、例えば、前述の通り、ポリウレタンフォーム、寝具、オムツ、緩衝材、断熱材、構造材、エラストマー、工業部品、ロール、パッキン、靴底、ホース、土木用品、建築材用品、防水材、屋上防水溶剤、屋内床材、目土防水材、繊維、スポーツウェアー、下着、雨具、合成皮革、人工皮革、靴、衣類、塗料、接着剤、自動車用部品、木工用品、ハードコートフィルム、または積層フィルムとして使用される製品に用いることができるし、これら以外の任意の製品あるいは用途に用いることも可能である。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0066】
以下の実施例において、PCD Mw1000は、日本ポリウレタン工業株式会社から購入したポリカーボネートジオールである(商品名ニッポラン981)。その構造は、前記化学式(9)に記載の通りである。なお、前記PCD Mw1000の「Mw1000」とは、重量平均分子量が約1000であることを示す。チヌビン400およびチヌビン405(いずれも商品名)は、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社から購入した。トリアジン誘導体の構造は前述の通りである。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(商品名RUVA−100)は、大塚化学株式会社から購入した。H12MDI(4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン)は、住化バイエルウレタン株式会社から購入した(商品名ディスモジュールW)。H12MDIの構造は、前記化学式(12)に記載の通りである。DBTDL(ジラウリン酸ジ−n−ブチルすず)は、関東化成工業株式会社から購入した。DMPA(ジメチロールプロピオン酸)は、関東化成工業株式会社から購入した。EDA(エチレンジアミン)は、キシダ化学株式会社から購入した(1級)。NMP(N−メチル−2−ピロリドン)は、三菱化学株式会社から購入した。TEA(トリエチルアミン)は、キシダ化学株式会社から購入した(1級)。消泡剤(商品名SNデフォーマー777)は、サンノプコ株式会社から購入した。また、GPCは、特に断らない限り、株式会社 島津製作所製の機器(機器名 島津高速液体クロマトグラフ用 送液ユニットLC−6A 紫外線分光光度計検出器SPD−6A(測定波長254nm)クロマトパックC−6R)および株式会社 島津製作所製のカラム(商品名 島津高速液体クロマトグラム用 高性能充てんカラム Shim−pack GPC−802C,801C)を用い、移動相にTHF(関東化学株式会社から購入した テトラヒドロフラン 鹿1級)を用いて行った。溶液中の固形分含有率(NV)は、幅5cm×長さ5cm×深さ1cmの金属容器に前記溶液1gを計量し、200℃オーブンに10分入れた後、空冷し、乾燥前後の重量から求めた。粘度は、特に断らない限り、B型粘度計およびローターNo.2を用い、25±0.5℃下にて測定した。平均粒子径は、株式会社堀場製作所製「動的光散乱式粒径分布測定装置 BL−550(商品名)」にて測定した。平均粒子径は、特に断らない限り、メジアン径を表示している。
【0067】
[実施例1]
以下のようにして、本発明のポリウレタンを製造(合成)した。
【0068】
下記表2に記載の反応物質を用い、前記反応工程(A)〜(C)を行って本発明のポリウレタンを合成した。
【表2】

【0069】
工程(A)〜(C)は、以下のようにして行った。
【0070】
[工程(A)]
攪拌機、温度計、窒素通気管、冷却管のついた反応器に、NMP(715.9g)、あらかじめNMPにて1質量%に希釈したDBTDL(12.6g)、PCD Mw1000(860.0g)、チヌビン400(64.7g)、H12MDI(524.8g)を加えた。反応系中への窒素ガスの通気および攪拌を続けながら85℃まで加熱し、さらに窒素ガスの通気および攪拌を続けながら85℃で反応を続けた。反応はGPCで追跡し、85℃で1.5時間反応したところで工程(A)を終了した。
【0071】
[工程(B)]
前記工程(A)終了後、攪拌しながら空冷し、50℃まで冷ました反応器内に、DMPA(56.3g)を加えた。反応系中への窒素ガスの通気および攪拌を続けながら再度85℃まで加熱し、さらに窒素ガスの通気および攪拌を続けながら85℃で反応を続けた。反応はGPCで追跡し、85℃で3時間反応したところで工程(B)を終了した。
【0072】
[工程(C)]
前記工程(B)終了後、攪拌しながら空冷し、60℃まで冷ました反応器内に、中和剤としてTEA(42.5g)を徐々に滴下しながら加えた。さらに攪拌しながら、あらかじめ50℃に加温したイオン交換水(2819.3g)を徐々に加えて乳化させた。さらに攪拌しながら空冷し、40℃まで冷ました反応器内に、EDA(36.2g)を徐々に滴下しながら加えた。さらに、40℃で反応を続けた。反応はGPCで追跡し、40℃で1時間反応したところで工程(C)を終了した。このようにして本発明のポリウレタンを製造することができた。さらに、工程(C)終了後、後処理として、反応器内に、あらかじめ10質量%に水希釈した消泡剤(7.7g)を加え、5分間攪拌し、本発明のポリウレタンを含むエマルジョンを得た。このエマルジョンは、わずかに茶色がかった白濁色の液体であった。このエマルジョン中における固形分含有率(NV)は29.7%(質量比)、粘度は15.0mPa・s、ポリウレタンの平均粒子径は62.4nmであった。
【0073】
GPCによる前記反応工程(A)〜(C)の追跡結果を、下記表3および図1に示す。図1は、反応混合物のGPCによるクロマトグラムである。表3は、図1のクロマトグラムから算出される各物質のピークの面積比等を示す表である。図1中、(1)は、前記工程(A)開始直前の原料混合物のクロマトグラムを示す。(2)は、前記工程(A)終了直後、DMPA添加前の反応混合物のクロマトグラムを示す。(3)は、前記工程(B)終了後において、TEAで中和した直後の反応混合物のクロマトグラムを示す。(4)は、前記工程(C)終了直後の反応混合物のクロマトグラムを示す。図中の数字は、各ピークのリテンションタイム(保持時間)である。「UVAモノマー」とは、未反応のチヌビン400(紫外線吸収剤)であると推定されるピークを示す。「UVA+H12MDI」とは、チヌビン400とH12MDIとの反応生成物であると推定されるピークを示す。リテンションタイムが約29分以下のなだらかなピークは、ポリウレタン(チヌビン400とH12MDIとPCDとの反応生成物、あるいはチヌビン400とH12MDIとPCDとDMPAとの生成物)であると推定されるピークを示す。表3中、「分子構造(推定)」の欄において、「UVAモノマー」とは、未反応のチヌビン400(紫外線吸収剤)を示す。「UVA+H12MDI」とは、チヌビン400とH12MDIとの反応生成物を示す。「UVA+12MDI+PCD」とは、チヌビン400とH12MDIとPCDとの反応生成物、あるいはチヌビン400とH12MDIとPCDとDMPAとの生成物を示す。「リテンションタイム」は、前記各分子構造から想定される、GPCリテンションタイムのおよその数値を示す。(1)〜(4)の各欄は、図1における(1)〜(4)のクロマトグラムに相当し、それぞれの欄における数値(%)は、ピーク面積比を示す。
【表3】

【0074】
表3および図1に示した通り、反応前すなわち前記工程(A)を行う前(クロマトグラム(1))は、トリアジン誘導体であるUVAモノマー(チヌビン400)のピークが強く現れていたが、前記工程(A)後(クロマトグラム(2))は、UVAモノマーのピークは完全に消失した。さらに、前記工程(B)後(クロマトグラム(3))、前記工程(C)後(クロマトグラム(4))と反応が進行するにしたがい、ポリウレタンのピークが次第に強くなった。前記工程(C)後(クロマトグラム(4))では、チヌビン400とH12MDIとの反応生成物(二量体)のピークもほぼ完全に消失した。さらに、図1に示したとおり、前記工程(C)後(クロマトグラム(4))では、リテンションタイムが約20分と短いピークが増大した。このことは、トリアジン誘導体であるチヌビン400(紫外線吸収剤)が結合したポリウレタンが、鎖伸長剤の作用によりさらに高分子化したことを示唆する。
【0075】
このように、本実施例によれば、前記本発明の製造方法を用いて、トリアジン誘導体である紫外線吸収剤が鎖に結合したポリウレタンを効率よく製造することができた。
【0076】
なお、本実施例で得られた、本発明のポリウレタンを含むエマルジョンは、後述の特性評価において、そのままポリウレタン塗料として用いた。
【0077】
[実施例2]
トリアジン誘導体としてチヌビン400に代えてチヌビン405を同質量用いる以外は実施例1と同様にポリウレタンを合成し、本発明のポリウレタンを含むエマルジョンを得た。このエマルジョンは、わずかに茶色がかった白濁色の液体であり、固形分含有率は29.3%(質量比)、粘度は13.5mPa・s、平均粒子径は57.0nmであった。
【0078】
なお、本実施例で得られた、本発明のポリウレタンを含むエマルジョンは、後述の特性評価において、そのままポリウレタン塗料として用いた。
【0079】
[参考例1]
トリアジン誘導体に代えてベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であるRUVA−100(大塚化学株式会社の商品名)を同質量用いる以外は実施例1と同様にポリウレタンを合成し、ポリウレタンを含むエマルジョンを得た。このエマルジョンは、わずかに茶色がかった白濁色の液体であり、固形分含有率は29.7%(質量比)、粘度は18.0mPa・s、平均粒子径は68.3nmであった。このエマルジョンを、後述の特性評価において、そのままポリウレタン塗料として用いた。
【0080】
[比較例1]
トリアジン誘導体であるチヌビン400またはチヌビン405(紫外線吸収剤)を合成に用いないこと以外は、実施例1または2と同様にポリウレタンを合成し、ポリウレタンを含むエマルジョンを得た。このエマルジョンは、白濁色の液体であり、固形分含有率は30.2%(質量比)、粘度は10.0mPa・s、平均粒子径は95.8nmであった。このエマルジョンを、後述の特性評価において、そのままポリウレタン塗料として用いた。
【0081】
[比較例2]
工程(C)において、イオン交換水に代えて同質量のNMPを用いる以外は比較例1と同様にして、ポリウレタンを合成した。イオン交換水を加えなかったため、生成物はエマルジョンではなく、ポリウレタンを含む溶液であった。この溶液は、少し黄味がかった透明の液体であり、固形分含有率は20.1%(質量比)、粘度は460.0mPa・sであった。なお、イオン交換水を加えなかったのは、後述のように、水に難溶な紫外線吸収剤を溶解させて用いるためである。この溶液を、後述の特性評価において、そのままポリウレタン塗料として用いた。
【0082】
なお、実施例1、実施例2、参考例1、比較例1および比較例2のポリウレタン合成において、各反応物質(原料比)の配合比率は、ほぼ同じであるが、下記表4にまとめて記す。
【表4】

【0083】
また、実施例1、実施例2および参考例1の反応をGPCで追跡した結果を、下記表5にまとめて記す。測定方法、および各項目の意味は、前記表3と同じである。ただし、「UVA」は、それぞれの合成で用いた紫外線吸収剤を示す。また、下記表5中、実施例1のデータは、前記表3と同じデータである。
【表5】

【0084】
[実施例3]
前記成分(a)〜(d)、すなわちDBTDL(12.6g)、PCD Mw1000(成分(a))、H12MDI(成分(b))、チヌビン400(成分(c))、およびDMPA(成分(d))を、前記工程(A)および(B)の二段階に分けずに一段階で反応させる以外は、実施例1と同様にしてポリウレタンを合成した。
【0085】
すなわち、まず、攪拌機、温度計、窒素通気管、冷却管のついた反応器に、NMP(715.9g)、あらかじめNMPにて1質量%に希釈したDBTDL(12.6g)、PCD Mw1000(860.0g)、チヌビン400(64.7g)、H12MDI(524.8g)、DMPA(56.3g)を加えた。反応系中への窒素ガスの通気および攪拌を続けながら85℃まで加熱し、さらに窒素ガスの通気および攪拌を続けながら85℃で反応を続けた。反応はGPCで追跡し、85℃で3.0時間反応したところで、いったん反応を終了した。
【0086】
その後、攪拌しながら空冷し、60℃まで冷ました反応器内に、中和剤としてTEA(42.5g)を徐々に滴下しながら加えた。さらに攪拌しながら、あらかじめ50℃に加温したイオン交換水(2819.3g)を徐々に加えて乳化させた。さらに攪拌しながら空冷し、40℃まで冷ました反応器内に、EDA(36.2g)を徐々に滴下しながら加えた。さらに、40℃で反応を続けた。反応はGPCで追跡し、40℃で1時間反応したところで反応を終了した。このようにして本発明のポリウレタンを製造することができた。さらにその後、後処理として、反応器内に、あらかじめ10質量%に水希釈した消泡剤(7.7g)を加え、5分間攪拌し、本発明のポリウレタンを含むエマルジョンを得た。このエマルジョンは、わずかに黄色がかった白濁色の液体であった。このエマルジョン中における固形分含有率(NV)は29.7%(質量比)、粘度は10.0mPa・s、ポリウレタンの平均粒子径は82.7nmであった。このエマルジョンを、後述の特性評価において、そのままポリウレタン塗料として用いた。
【0087】
[実施例4]
チヌビン400に代えてチヌビン405を用いる以外は実施例3と同様にして(1段階合成で)本発明のポリウレタンを含むエマルジョンを得た。このエマルジョンは、わずかに黄色がかった白濁色の液体であった。このエマルジョン中における固形分含有率(NV)は29.9%(質量比)、粘度は10.0mPa・s、ポリウレタンの平均粒子径は71.7nmであった。このエマルジョンを、後述の特性評価において、そのままポリウレタン塗料として用いた。
【0088】
[参考例2]
チヌビン400(トリアジン誘導体の紫外線吸収剤)に代えて、RUVA−100(ベンゾトリアゾール系紫外線)を同質量用いる以外は実施例3と同様にして(1段階合成で)ポリウレタンを含むエマルジョンを得た。このエマルジョンは、わずかに茶色がかった白濁色の液体であった。このエマルジョン中における固形分含有率(NV)は30.0%(質量比)、粘度は14.5mPa・s、ポリウレタンの平均粒子径は58.3nmであった。このエマルジョンを、後述の特性評価において、そのままポリウレタン塗料として用いた。
【0089】
[実施例5]
トリエチルアミン(中和剤)を最初から加える以外は、すなわち、NMP(715.9g)、あらかじめNMPにて1質量%に希釈したDBTDL(12.6g)、PCD Mw1000(860.0g)、チヌビン400(64.7g)、H12MDI(524.8g)、DMPA(56.3g)と同時にTEA(42.5g)を加え、その後にトリエチルアミンを加えない以外は、実施例4と同様にして本発明のポリウレタンを含むエマルジョンを得た。このエマルジョンは、わずかに茶色がかった白濁色の液体であった。このエマルジョン中における固形分含有率(NV)は30.1%(質量比)、粘度は15.0mPa・s、ポリウレタンの平均粒子径は65.4nmであった。このエマルジョンを、後述の特性評価において、そのままポリウレタン塗料として用いた。
【0090】
なお、GPCで反応を追跡した結果、前記成分(a)〜(d)を1段階で反応させた実施例3〜5においても、ポリマー鎖にトリアジン系紫外線吸収剤(チヌビン400または405)が導入されていることが確認できた。測定方法は、前述の実施例1、実施例2および参考例1と同様である。実施例3、実施例4および参考例2の反応をGPCで追跡した結果を、下記表6にまとめて記す。下記表6中、(1)は、反応開始直前の原料混合物(前記成分(a)〜(d)を含む)のGPC測定結果を示す。(2)は、TEAで中和した直後の反応混合物のGPC測定結果を示す。(3)は、反応終了後の反応混合物のGPC測定結果を示す。それ以外の各項目の意味は、前記表3および表5と同じである。ただし、「UVA」は、それぞれの合成で用いた紫外線吸収剤を示す。下記表6の「UVA+12MDI+PCD」の欄に示すとおり、実施例3および実施例4においては、反応の進行につれて、一定の収率で、ポリマー鎖にトリアジン誘導体(紫外線吸収剤)が結合したポリウレタンが得られた。実施例4については、図2にクロマトグラムを示す。図2中、(1)は、下記表6における(1)のクロマトグラムを示す。(3)は、下記表6における(3)のクロマトグラムを示す。「UVA+12MDI+PCD」は、チヌビン405とH12MDIとPCDとDMPAとの生成物すなわち目的のポリウレタンのピークを示す。図中の数字は、各ピークのリテンションタイム(保持時間)である。それ以外は図1と同様である。なお、実施例5についても、同様に、反応開始直前および反応終了後の反応混合物のGPCを測定し、ポリマー鎖にトリアジン誘導体(紫外線吸収剤)が結合したポリウレタンが得られていることが確認された。
【表6】

【0091】
以上により合成した実施例1〜5、参考例1〜2および比較例1〜2のエマルジョンまたは溶液について、その合成方法、組成、特性値(物性値)および外観を、下記表7にまとめて示す。なお、下記表7中、vis(F.C.#4)とは、JIS(旧)K5400 フォードカップ#4を使用して、25.0±0.5℃下にて測定し、試料の連続流出に要した秒数を示す。vis(B型)とは、前述のB型粘度計で測定した粘度である。NV(固形分含有率)およびメジアン系(平均粒子径)については前述の通りである。また、UVA(4%)とは、紫外線吸収剤の含有率が、紫外線吸収剤以外の固形分100部に対し4部(質量比)となるように添加したことを示す。「DMPA AV=15」とは、ポリウレタンの樹脂酸価が15mg−KOH/gになるようにDMPAの添加量を調整したことを示す。「Index1.50」とは、前述のNCO/OH値が1.50であることを示す。
【表7】

【0092】
[比較例3]
比較例1で得られたエマルジョンに、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であるアデカノールUC−3140(ADEKA株式会社の商品名)を加えて分散させ、紫外線吸収剤を含むエマルジョンとした。なお、アデカノールUC−3140の添加量は、比較例1で得られたエマルジョン1000gに対して30.2gの比率とした。このエマルジョンを、後述の特性評価において、そのままポリウレタン塗料として用いた。
【0093】
[比較例4]
比較例2で得られた溶液に、トリアジン誘導体の紫外線吸収剤である前記チヌビン400を加え、攪拌しながら60℃まで加熱した。なお、チヌビン400の添加量は、比較例2で得られた溶液1000gに対して8.0gの比率とした。そのまま60℃で加熱を続け、紫外線吸収剤(チヌビン400)が完全に溶解するまで30分間加熱を続け、紫外線吸収剤を含む溶液とした。この溶液を室温まで冷却させたが、紫外線吸収剤の析出や分離は起こらなかった。この溶液を、後述の特性評価において、そのままポリウレタン塗料として用いた。
【0094】
[比較例5]
比較例2で得られた溶液に、トリアジン誘導体の紫外線吸収剤である前記チヌビン405を加え、攪拌しながら60℃まで加熱した。なお、チヌビン405の添加量は、比較例2で得られた溶液1000gに対して8.0gの比率とした。そのまま60℃で加熱を続け、紫外線吸収剤(チヌビン405)が完全に溶解するまで30分間加熱を続け、紫外線吸収剤を含む溶液とした。この溶液を室温まで冷却させたが、紫外線吸収剤の析出や分離は起こらなかった。この溶液を、後述の特性評価において、そのままポリウレタン塗料として用いた。
【0095】
[参考例3]
比較例2で得られた溶液に、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である前記RUVA−100を加え、攪拌しながら60℃まで加熱した。なお、RUVA−100の添加量は、比較例2で得られた溶液1000gに対して8.0gの比率とした。そのまま60℃で加熱を続け、紫外線吸収剤(RUVA−100)が完全に溶解するまで30分間加熱を続け、紫外線吸収剤を含む溶液とした。この溶液を室温まで冷却させたが、紫外線吸収剤の析出や分離は起こらなかった。この溶液を、後述の特性評価において、そのままポリウレタン塗料として用いた。
【0096】
<ポリウレタン塗料の評価特性評価>
以上のようにして合成した実施例1〜5、参考例1〜3および比較例1〜5のポリウレタンエマルジョンまたは溶液を、実際にポリウレタン塗料として使用し、その特性を確認(評価)した。具体的には、前記各ポリウレタン塗料を、それぞれ、フィルム厚25μmのPETフィルム(東レ株式会社製、商品名ルミラー#QR32)に、乾燥塗膜厚が100mg/dm(10.0g/m)になるよう塗装し、150℃で2分乾燥させた。そして、このポリウレタン塗料塗工PETフィルムについて、一般物性および促進耐候性(耐光性も含む)をそれぞれ評価した。
【0097】
一般物性の試験条件(評価条件)は、下記の通りである。

鉛筆硬度 JIS K 5600−5−4(1999)による。
鉛筆は、三菱鉛筆株式会社製uni(商品名)を用いた。
碁盤目密着 JIS K 5600−5−6(1999)による。
膜厚は10μm、カット間隔は1mmとした。
スチールウールラビング
スチールウール#0000により、荷重100g、1往復/秒
でラビングし、ポリウレタン塗工層が剥離するまでの往復回数
を表記した。
耐水 80℃の温水に4時間浸漬後、外観を目視で評価した。
過酷耐水 70℃の温水に100時間浸漬後、外観を目視で評価した。
耐EtOH 室温にて、EtOHに24時間浸漬後、外観を目視で評価した。

【0098】
促進耐候性試験は、ダイプラウィンテス株式会社製 ダイプラ・メタルウェザー KU−R5型(商品名)空冷式冷凍機外置きを用い、当該製品のマニュアルに記載された通常の使用方法に従って行った。試験条件は、以下の通りである。

試験モード:照射+シャワー
光源:メタルハライドランプ
フィルタ:295〜780nm KF−1フィルタ(可視光含む)
照射:540W/m(岩崎照度計)、BPT63℃、50%RH
シャワー:照射1時間毎に1分間シャワー実施
【0099】
前記一般物性の試験結果を、下記表8に示す。表8に記載の通り、実施例のポリウレタン塗料により形成された塗膜は、一般物性において、比較例および参考例のポリウレタン塗料と何ら遜色ない性能を示した。すなわち、本実施例のポリウレタンは、その性能を損なわずにトリアジン誘導体(紫外線吸収剤)を鎖に結合させることができた。
【表8】

【0100】
さらに、促進耐侯性の試験結果を、下記表9に示す。表中、「L」「a」「b」は、光照射前または200時間光照射後の、L表色系(JIS Z 8729)による色度である。色差は、前記L表色系(JIS Z 8729)による、光照射前と200時間光照射後との色差である。外観評価における「WS」とは、ウォータースポット(塗膜に水滴の痕が残ってしまう現象のこと)を示し、ウォータースポットが生じないほど外観が良好であると評価した。
【表9】

【0101】
表9中、目視の評価は、結果が良好な方から順に「○」「○△」「△」「×」の四段階で示している。例えば、黄金変が「×」の評価は、黄金変が著しいことを示し、光沢が「×」の評価は、光沢がほとんど失われていることを示す。なお、黄金変(黄変)は、PETフィルムの変色に由来する。この黄金変(黄変)が起こる原因は必ずしも明らかでないが、例えば、ポリウレタン塗料が光照射により変質して紫外線吸収能が低下し、さらにその下にあるPETフィルムが紫外線により変質するためと考えられる。
【0102】
なお、表9においては、試験前後における色差、特にΔEを参照することにより、塗料としての実用性を確認することができる。ΔEが小さければ、光照射による変色が少なく、塗料としての実用性が十分であることを意味する。
【0103】
表9から分かる通り、本発明のポリウレタン塗料である実施例1〜5は、200時間光照射後でも、試験前後における色差が十分に小さく(すなわち変色が少なく)、実用性が十分であった。前述の通り、実施例1〜5のポリウレタンは、紫外線吸収剤としてトリアジン誘導体を鎖に結合させている。これに対し、紫外線吸収剤を含まない比較例1および2では、すぐに紫外線吸収による変色および変質が起こり、実用に耐えなかった。また、トリアジン誘導体を鎖に結合させず、単に混合または分散させただけの比較例1〜5では、短時間の光照射には耐えたが、200時間光照射後では、表9に記載のように大きな変色および変質が起こってしまった。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(RUVA−100)を混合した参考例3でも同様である。
【0104】
さらに、表9から分かる通り、実施例1〜5のポリウレタンは、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(RUVA−100)を鎖に結合させた参考例1および2と比較しても、耐侯性および耐光性において何ら遜色なく、むしろ、参考例1および2よりもさらに優れた性能を示した。すなわち、本発明によれば、安全かつ安価で取り扱いやすいトリアジン誘導体を紫外線吸収剤に用いて、高価で取扱が難しいベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤よりもさらに優れた紫外線吸収能をポリウレタンに付与することができた。
【0105】
また、目視観察によれば、実施例1〜5の試験片は、200時間光照射後でも色むらがほとんど生じなかった。これに対し、比較例1〜5および参考例3の試験片は、色むらが激しく、かつ、変色が著しかった。さらに、参考例1、参考例2、においても、かなりの黄金変(黄変)および色むらが生じていた。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上説明した通り、本発明によれば、前記化学式(1)で表される実用性の高い紫外線吸収剤をポリウレタン鎖に結合させて一体化させたポリウレタンを提供することができる。さらに、本発明の製造方法によれば、そのような本発明のポリウレタンを効率よく製造することが可能である。本発明のポリウレタンは、紫外線吸収剤の分離が効果的に防止されているので、耐光性、耐侯性等の性能に優れる。本発明のポリウレタンの用途は特に制限されず、どのような用途に用いても良いが、塗料としての用途に特に適している。さらに、本発明のポリウレタンは、塗料に限定されず、どのような用途に用いても良い。例えば、本発明のポリウレタンは、ポリウレタンフォーム、寝具、オムツ、緩衝材、断熱材、構造材、エラストマー、工業部品、ロール、パッキン、靴底、ホース、土木用品、建築材用品、防水材、屋上防水溶剤、屋内床材、目土防水材、繊維、スポーツウェアー、下着、雨具、合成皮革、人工皮革、靴、衣類、塗料、接着剤、自動車用部品、木工用品、ハードコートフィルム、または積層フィルムとして使用される製品に用いることができるし、これら以外の任意の製品あるいは用途に用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は、ポリウレタン製造の実施例における反応混合物のGPCによるクロマトグラムである。
【図2】図2は、ポリウレタン製造の別の実施例における反応混合物のGPCによるクロマトグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン鎖に、トリアジン誘導体である紫外線吸収剤が、直接、または他の原子団を介して間接的に共有結合しているポリウレタン。
【請求項2】
下記化学式(i)で表される請求項1に記載のポリウレタン。
【化1】


前記化学式(i)中、
〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、直鎖若しくは分枝アルキル基、直鎖若しくは分枝アルコキシ基、置換若しくは無置換フェニル基、または任意の置換基であり、
Uは、ポリウレタン鎖であり、Lは、任意の原子団であるか、または存在しない。
【請求項3】
下記成分(a)〜(c)を反応させることにより得られる請求項1または2記載のポリウレタン。

成分(a):ポリオール
成分(b):ポリイソシアナト化合物
成分(c):トリアジン誘導体
【請求項4】
前記成分(c)のトリアジン誘導体が、下記化学式(1)で表されるトリアジン誘導体、その互変異性体および立体異性体、ならびにそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一つである請求項3記載のポリウレタン。
【化2】


前記化学式(1)中、
は、直鎖若しくは分枝アルキレン基であるか、または存在せず、
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、または直鎖若しくは分枝状置換基であり、前記直鎖若しくは分枝状置換基は、主鎖中に、C、N、O、S、PおよびSiを含んでいても含んでいなくても良く、
〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、直鎖若しくは分枝アルキル基、直鎖若しくは分枝アルコキシ基、置換若しくは無置換フェニル基、または任意の置換基である。
【請求項5】
前記化学式(1)中、Lがメチレン基である請求項4に記載のポリウレタン。
【請求項6】
前記化学式(1)中、RおよびRの少なくとも一方が、直鎖若しくは分枝アルキル基であるか、または、前記直鎖若しくは分枝アルキル基の鎖中のメチレン基に代えて酸素原子(エーテル結合)を有する基である、請求項4または5に記載のポリウレタン。
【請求項7】
前記化学式(i)または(1)中、RおよびRの少なくとも一方が水酸基である請求項2および4〜6のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項8】
前記化学式(i)または(1)中、R、R11、R12およびR16からなる群から選択される少なくとも一つが水酸基である請求項2および4〜7のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項9】
前記化学式(1)で表されるトリアジン誘導体が、下記化学式(3)で表されるトリアジン誘導体、またはその互変異性体若しくは立体異性体である請求項4〜8のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【化3】

前記化学式(3)中、R1000は、直鎖若しくは分枝アルキル基であり、RおよびR〜R16は、前記化学式(1)と同じである。
【請求項10】
およびR〜R16が、それぞれ独立に、水素原子または直鎖もしくは分枝アルキル基である請求項9記載のポリウレタン。
【請求項11】
前記化学式(1)で表されるトリアジン誘導体が、下記式(4)〜(6)で表されるトリアジン誘導体、ならびにそれらの互変異性体および立体異性体からなる群から選択される少なくとも一つである請求項4記載のポリウレタン。
【化4】

【化5】

【化6】

【請求項12】
前記成分(a)におけるポリオールが、低分子ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、シリコーンポリオール、低分子ジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルポリカーボネートジオール、ポリブタジエンジオール、およびシリコーンジオール、からなる群から選択される少なくとも一つである請求項3〜11のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項13】
前記成分(a)〜(c)に加え、さらに下記成分(d)を反応させることにより得られる請求項3〜12のいずれか一項に記載のポリウレタン。

成分(d):下記化学式(2)で表されるカルボン酸ジオール、その互変異性体および立体異性体、ならびにそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一つ
【化7】

前記化学式(2)中、
17は、水素原子、直鎖若しくは分枝アルキル基、飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分枝若しくは環状炭化水素基、または任意の原子団であり、
18は、水素原子または保護基であり、
およびLは、それぞれ独立に、直鎖若しくは分枝アルキレン基、飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分枝若しくは環状炭化水素基、または任意の原子団であるか、または存在しない。
【請求項14】
前記化学式(2)中、LおよびLがメチレン基であり、R18が水素原子である請求項13に記載のポリウレタン。
【請求項15】
前記化学式(2)で表される化合物が、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、ジメチロールブタン酸(DMBA)ジメチロール酪酸、およびジメチロール吉草酸からなる群から選択される少なくとも一つである請求項13または14に記載のポリウレタン。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれかに記載のポリウレタンを製造する方法であって、
(A)前記成分(a)〜(c)を反応させる工程
を含む製造方法。
【請求項17】
請求項13〜15のいずれか一項に記載のポリウレタンを製造するための、請求項16に記載の製造方法であって、
(B)前記工程(A)の反応生成物と前記成分(d)とを反応させる工程
をさらに含む製造方法。
【請求項18】
請求項13〜15のいずれか一項に記載のポリウレタンを製造するための、請求項16に記載の製造方法であって、前記工程(A)において、前記成分(a)〜(c)とともに前記成分(d)を反応させる製造方法。
【請求項19】
請求項16〜18のいずれか一項に記載の製造方法によって得られるポリウレタン。
【請求項20】
請求項1〜15および19のいずれか一項に記載のポリウレタンを含み、ポリウレタンフォーム、寝具、オムツ、緩衝材、断熱材、構造材、エラストマー、工業部品、ロール、パッキン、靴底、ホース、土木用品、建築材用品、防水材、屋上防水溶剤、屋内床材、目土防水材、繊維、スポーツウェアー、下着、雨具、合成皮革、人工皮革、靴、衣類、塗料、接着剤、自動車用部品、木工用品、ハードコートフィルム、または積層フィルムとして使用される製品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−47675(P2010−47675A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212222(P2008−212222)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(591176225)桜宮化学株式会社 (22)
【Fターム(参考)】