説明

ポリウレタンの製造において有用な連鎖延長剤、および対応するポリウレタン

【課題】イソシアネート反応性化合物、ポリイソシアネート、連鎖延長剤を含む反応性混合物を提供する。
【解決手段】式(I)で示されるジアミノ置換複素環である新規の連鎖延長剤を使用する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、ジアミノ置換複素環である新規連鎖延長剤、ポリウレタン(PU)の製造における新規連鎖延長剤の使用、このようにして得られるPU、前記連鎖延長剤を含有する反応性組成物、およびPUの製造法に関する。
【0002】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)は公知であり、これまでに多くの用途において使用されて
いる。しかしながら、熱可塑性ポリウレタンの製造、使用、および最終特性において(特
に、これまで互いに相反するものとして考えられてきた特性のバランスにおいて)幾つか
の問題が依然として存在している。
【0003】
ポリマーまたはオリゴマーのH-結合(すなわちH-ブリッジ)によって形成される超分子ポリマーも知られている。当業者(skilled reader)であれば、WO-A-9746607とEP-A-1213309;“四重水素結合を使用して自己相補的モノマーから形成させる可逆性ポリマー(Reversible Polymers Formed from Self-Complementary Monomers Using Quadruple Hydrogen Bonding)”,R.P.Sijbesmaらによる,Science,Vol.278,28 November 1997;および“四重水素結合に基づく新規ポリマー(New Polymers Based on the Quadruple Hydrogen Bonding Motif)”,Brigitte J.B.による,Folmer,91-103ページ,PhD Thesis,Technische Universiteit Eindhoven,2000;等の文献を挙げることができるであろう。
【0004】
1997年におけるRonald F.M.Langeの“可逆性ポリマーネットワークにおける多重水素結合(Multiple Hydrogen Bonding in Reversible Polymer Networks)”という博士論文には、イミド単位と2,4-ジアミノトリアジン単位との間の三重水素結合の形成に基づく超分子ポリマーブレンドが説明されている。マレイミド-スチレンと2,4-ジアミノ-6-ビニル-1,3,5-トリアジン-スチレンを含むブレンド組成物が、共沈法を使用して作製された。コポリマーは、強力な溶媒中に溶解しなければならず、水中にて凝結させなければならなかった。コポリマー間の水素結合相互作用によって分子混和性の(molecularly miscible)ポリマーブレンドが得られた。
【0005】
1998年におけるFelix H.Beijerの“超分子化学における協働多重水素結合(Cooperative
Multiple Hydrogen Bonding in Supramolecular Chemistry)”という博士論文には、2,4-ウレイド-6-メチル-1,3,5-トリアジンダイマーが説明されている。そのモノマーは、2,4-ジアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジンと単官能イソシアネートとの反応によって合成さ
れた。結晶構造は、単結晶X線回折によって決定された。分子内水素結合のうちの1つがウレイド置換基間の中央窒素に向けられているので、四重水素結合したダイマーは観察されなかった。
【0006】
2001年におけるKy Hirschbergの“超分子ポリマー”という博士論文には、ディスク形
状のウレイドトリアジン誘導体のサーモトロピック液晶挙動が研究されている(上記のFelix H.Beijerの研究を参照)。そのモノマーは、2,4-ジアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジンと単官能イソシアネートとの反応によって合成された。
【0007】
しかしながら、上記文献のいずれも本発明を開示もしくは説明するものではない。
(発明の概要)
すなわち、本発明の目的は、以下のモノマー:
a) 少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物;
b) 少なくとも1種のポリイソシアネート;および
c) 少なくとも1種の、下記の式Iで示される本発明の連鎖延長剤;
を含むポリウレタンポリマーを提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物、少なくとも1種
のポリイソシアネート、および少なくとも1種の式Iの連鎖延長剤を反応させることを含む、上記ポリマーの製造法を提供することにある。本発明の製造法は溶媒を使用しないのが好ましい。
【0009】
1つの実施態様においては、本発明の製造法は、少なくとも1種の式Iの連鎖延長剤を少
なくとも1種のイソシアネート反応性化合物中に予め溶解する工程を含む。
他の実施態様においては、本発明の製造法は、粉末形態の少なくとも1種の式Iの連鎖延長剤と、少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物および少なくとも1種のポリイソシアネートとを反応させる工程を含む。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物、少なくと
も1種のポリイソシアネート、および少なくとも1種の式Iの連鎖延長剤を含む反応性混合物を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物と少なくと
も1種の式Iの連鎖延長剤とを含む混合物を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、式Iの化合物を、ポリウレタンの製造において連鎖延長剤
として使用することを提供することにある。
【0012】
(発明の詳細な説明)
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下に記載の説明を参照すればより明らかになるであろう。
【0013】
本発明は特定の連鎖延長剤の使用に基づいており、こうした連鎖延長剤を使用することにより、最終的なポリウレタンに所望の特性をもたせることができる。
本発明において使用される連鎖延長剤は、式I
【0014】
【化1】

【0015】
〔式中、
XとYは、互いに独立的にNまたはCであって、このときXとYの少なくとも一方が窒素であり;
Rは、水素、ヒドロキシル、直鎖もしくは分岐鎖のC1-C36アルキル、好ましくはC1-C24ア
ルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC2-C24アルケニル、C3-C6シクロアルキル、C6-C10アリー
ル、アラルキル、アルカリール、ポリエーテル、またはペルフルオロアルキルであるか;
あるいは-OR’、-C(O)R’、-CO(O)R’、または-C(O)OR’であって、このときR’は、R、C1-C36オリゴオキシアルキレン、好ましくはC1-C20オリゴオキシアルキレン、またはペル
フルオロアルキルの意味を有する;そして
R’とR”は、互いに独立的に水素またはC1-C6アルキルである〕で示される。
【0016】
上記式において、アリールとは、5〜10個の炭素原子を有する芳香族基を意味している
。例としては、フェニルやナフチルがある。アリール基は、1個のヘテロ原子(O、N、またはS)が介在していてもよい。このような基の例としては、チオニル、インデニル、フラン、ピロール、キノリン、およびイソキノリンなどがある。
【0017】
アルキルアリールは、アルキル基とアリール基を有していて、アリール部分によって分子の残部に連結している、上記にて定義の基である。
アラルキルは、アルキル基とアリール基を有していて、アルキル部分によって分子の残部に連結している、上記にて定義の基である。
【0018】
ペルフルオロアルキルは、全ての水素がフッ素で置換されている、上記にて定義のアルキル基である。
本発明の連鎖延長剤は、2,4-ジアミノ-6-R-1,3,5-トリアジンであるのが好ましく、こ
のときRは上記の意味を有する。
【0019】
好ましいアルケニル基はビニルである。R’とR”が共に水素であるのが好ましい。
Rはアルキル基であるのが好ましく、1または2〜30個の炭素原子を有し、1または2〜18
個の炭素原子を有するのが好ましく、1または2〜12個の炭素原子を有するのが特に好ましく;Rは直鎖であるのが好ましい。
【0020】
連鎖延長剤は市場から(たとえばデグッサ社から)広く得られる。連鎖延長剤は、当業界に公知の方法にしたがって製造することもできる。たとえば、本発明の製造法は、R-ylシアニドとジシアンジアミドとを反応させて、対応する2,4-ジアミノ-6-R-1,3,5-トリアジ
ンを生成させることを含む。
【0021】
この連鎖延長剤は、少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物、少なくとも1種のポリイソシアネート、および少なくとも1種の本発明の連鎖延長剤からのポリウレタンの製造において使用される。
【0022】
たとえば、本発明で使用するのに適した有機ポリイソシアネートは、ポリウレタンの製造に対して当業界に公知のポリイソシアネートの全てを含み、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、および芳香族脂肪族ポリイソシアネート(araliphatic polyisocyanate)から選択することができる。
【0023】
特に、2,4’-異性体,2,2’-異性体,および4,4’-異性体の形のジフェニルメタンジイソシアネート、これらの混合物、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)と、2より大きいイソシアネート官能価を有する“クルード”MDIもしくはポリメリックMDI(ポリメチレン
ポリフェニレンポリイソシアネート)(これらは好ましくないが)として当業界に公知のオ
リゴマーとの混合物;2,4-異性体と2,6-異性体の形のトルエンジイソシアネート(TDI)、これらの混合物;1,5-ナフタレンジイソシアネート;ならびに1,4-ジイソシアナートベンゼン(PPDI);等の芳香族ポリイソシアネートが使用される。挙げることができる他の有機ポリ
イソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,6-ジイソシアナートヘキサン、および4,4’-ジイソシアナートジシクロ-ヘキシルメタン(HMDI)等の脂肪族ジイ
ソシアネートがある。好ましいのは、TDIもしくはMDI、PPDI、IPDI、HMDI、および他の脂肪族イソシアネートである。最も好ましいのはMDI、特に4,4’-MDIである。プレポリマーも使用することができる。混合物も使用することができる。
【0024】
本発明において使用するのに適したイソシアネート反応性化合物は、ポリウレタンの製造に対して当業界に公知のイソシアネート反応性化合物の全てを含む。特に重要なのは、5〜500mgKOH/g(特に10〜150mgKOH/g)の平均ヒドロキシル価、1.5〜3(特に1.8〜2.2)のヒ
ドロキシル官能価、および一般には500〜20,000(好ましくは500〜10,000)のMWを有するポリオールおよびポリオール混合物である。混合物も使用することができる。
【0025】
これらのポリオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアミドポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリオレフィンポリオール、およびポリシロキサンポリオールなどであってよい。イソシアネート反応性化合物は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、またはこれらの混合物であるポリオールが好ましい。
【0026】
使用できるポリエーテルポリオールとしては、多官能開始剤の存在下でのアルキレンオキシド(たとえば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、または
テトラヒドロフラン)の重合によって得られる生成物があり、前記開始剤は一般に、1分子当たり2〜8個の活性水素原子を含有する。適切な開始剤化合物は、複数の活性水素原子を含有し、たとえば水、ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、フェニレンジアミン、トルエンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、エチレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、シクロヘキサンジメタノール、レゾルシノール、ビスフェノールA、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオー
ル、ペンタエリスリトール、ソルビトール、およびスクロースなどがある。開始剤の混合物および/または環状オキシドの混合物も使用することができる。特に有用なポリエーテ
ルポリオールとしては、先行技術において詳細に説明されているような二官能開始剤もしくは三官能開始剤へのエチレンオキシドとプロピレンオキシドの同時付加または逐次付加によって得られるポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリ(オキシエチレン-オキシプロピレン)ジオール、およびポリ(オキシエチレン-オキシプ
ロピレン)トリオールがある。特に有用で好ましい他のポリエーテルポリオールとしては
、テトラヒドロフランの重合によって得られるポリテトラメチレングリコールがある。
【0027】
使用できるポリエステルポリオールとしては、多価アルコール(たとえば、エチレング
リコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリエーテルポリオール、またはこのような多価アルコールの混合物)とポリカルボン酸、特にジカルボン酸またはそれらの
エステル形成誘導体(たとえば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、コハク酸ジメチル
、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、セバシン酸、無水フタル酸、無水テトラクロロフタル酸、テレフタル酸ジメチル、またはこれらの混合物)とのヒドロキシ末端反応
生成物がある。ラクトン(たとえばカプロラクトン)とポリオールとを組み合わせての重合、あるいはヒドロキシカルボン酸(たとえばヒドロキシカプロン酸)の重合によって得られるポリエステルも使用することができる。
【0028】
ポリアミドポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリオレフィンポリオール、およびポリシロキサンポリオールなども当業界に知られている。当業者であれば、たとえば「ポリウレタンハンドブック第2版,G.Oertel,1994」等の公知の文献を挙げることができる。
【0029】
他の低分子量の連鎖延長剤も、好ましくはないが使用することができる。標準的な連鎖延長剤は従来から低分子量のポリオールであり、一般にはジオールである。
ポリウレタンの製造に際しては、他の従来の成分(添加剤および/または助剤)を使用す
ることができる。これらの成分としては、触媒、界面活性剤、防炎剤(flame proofing agents)、充填剤、顔料、および安定剤などがある。
【0030】
触媒としては、ウレタン結合とウレア結合の成形を促進する物質〔たとえば、カルボン酸の錫塩等の錫化合物(たとえば、ジブチル錫ジラウレート、酢酸第一錫、およびオクタ
ン酸第一錫);またはアミン(たとえば、ジメチルシクロヘキシルアミンやトリエチレンジ
アミン)〕を使用することができる。
【0031】
このPU鎖は、当業界に公知の標準的な方法(たとえば、「ポリウレタンハンドブック第
2版,G.Oertel,1994」を参照)によって得られる。PU鎖は特に、イソシアネート、イソシ
アネート反応性化合物(ポリオール)、および本発明の連鎖延長剤の反応によって得られる。
【0032】
この反応は、バッチプロセスであっても連続プロセスであってもよい。全ての反応物を一度に反応させることもできるし、あるいは逐次的に反応させることもできる。当業界に公知のプレポリマーも使用することができる。先ず本発明の連鎖延長剤の全部または一部をイソシアネート反応性化合物の全部または一部と混合し、次いで残部の反応物を一緒に反応させることも可能である。本発明の連鎖延長剤の全部または一部を、イソシアネート反応性化合物の全部または一部とあらかじめ混合することにより、使用する連鎖延長剤とイソシアネート反応性化合物に応じて、溶液、懸濁液、または分散液が得られる。
【0033】
反応押出や反応射出成形を含めたプロセスも使用することができ、一般的に言えば、それらのプロセスから導かれるいかなるバッチプロセスまたは連続プロセスも使用することができる。たとえば、1つの実施態様においては、連鎖延長剤をあらかじめポリオール(上記参照)と混合し、このようにして得られる溶液、懸濁液、または分散液を反応押出プロ
セスにおいて使用する。たとえば、他の実施態様においては、イソシアネートとポリオールを押出スクリューの一端において装入し、本発明の連鎖延長剤を同じ箇所において加えるか、または下流の箇所において加える。この実施態様においては、連鎖延長剤は粉末形態であるのが好ましく、粉末の粒径によって反応速度が制御される。固体連鎖延長剤の粒径を使用することは、これまでに知られているアミンベースの連鎖延長剤(液体)(化学的
に保護しないと非常に反応性が高い)と比較して、反応速度を制御するための有用な手段
である。
【0034】
1つの実施態様においては、溶媒を使用しない方法が行われる(この場合、溶媒とは、反応生成物および/または混合物が溶解されるが、合成操作の後に生成物から除去される、
揮発性の有機化合物を意味するよう意図されている)。
【0035】
ポリイソシアネート組成物と多官能イソシアネート反応性組成物の量、および反応させようとする連鎖延長剤の量は、得ようとするポリウレタンの特性によって異なり、当業者によって容易に決定される。イソシアネートインデックスは広い範囲で変わってよい(た
とえば80〜400、好ましくは95〜105)。
【0036】
好ましい実施態様においては、本発明の連鎖延長剤の量(重量%)は、総重量を基準とし
て0.5〜20重量%、好ましくは1〜15重量%、最も好ましくは1〜10重量%を構成する。低めの値(たとえば1〜5重量%)は軟質のPUに適しており、高めの値(たとえば5重量%を超える)は
硬質のPUに適している。
【0037】
ポリウレタン鎖は、5〜60%のハードブロックを構成するのが好ましく、10〜50%のハー
ドブロックを構成するのがさらに好ましく、10〜40%のハードブロックを構成するのがさ
らに好ましく、10〜30%のハードブロックを構成するのがさらに好ましい。ハードブロッ
ク含量は、一般には、イソシアネートと連鎖延長剤との反応生成物の重量対PU総重量の比として定義される、ということをここに記載しておく。
【0038】
ポリウレタン鎖は、当業界に公知の広い範囲の分子量(MWn)を有してよい。
本発明のポリウレタンポリマーは多くの態様において有用である。本発明の連鎖延長剤は、これまで達成されていない特性を有するPUを得ることを可能にする。特に、本発明のPUは一般には熱可塑性であるが、本発明はこうした特定の実施態様に限定されない。
【0039】
本発明の連鎖延長剤は、塗料、フィルム、接着剤、衣料、履き物、シーリング、および自動車用途等の多くの分野において可能性を広げる。
本発明は、高い動的弾性要件を有するTPU(すなわち、PUがエラストマーである)の製造
に特に適している。引張ヒステリシスが極めて低く、レジリエンスが高い。他の実施態様においては、本発明によれば、硬度が低いが良好な物理的特性を有するTPUを製造するこ
とができる。本発明により、ショアーA硬度値の低いTPUを得ることが可能となる。さらに他の実施態様においては、本発明は、良好な動的性能と改良された熱安定性を有する中硬度〜高硬度のTPUに適用することができる。本発明によってフォームも製造することがで
きる(特に、発泡フィルムを得ることができる)。
【0040】
本発明はさらに、架橋弾性PUを提供する(架橋は、三官能成分を使用することによって
得ることができる)。
本発明のPUは、一般には発泡体ではない。必要に応じて発泡PUを製造することができ、このとき密度は、通常は100〜1000kg/m3の範囲であり、好ましくは300〜900kg/m3の範囲
である。発泡は、合成時にその場で達成することもできるし、あるいは好ましくは後処理工程によって達成することもできる。
【0041】
指摘しておかなければならないことは、本発明の連鎖延長剤は、これまで知られている芳香族アミンとは対照的に毒性ではないので、保健と毒性の面での要件に関してさらなる利点をもたらす、という点である。さらに、脂肪族ジアミン連鎖延長剤と比較して、異なった反応性によって製造が促進される。
【0042】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、これらの実施例によって本発明が限定されることはない。
(実施例)
(実施例1)
計算量の2,4-ジアミノ-6-ノニル-1,3,5-トリアジン(デグッサ社から入手)と計算量のポリエステルポリオール〔分子量が2200g/モルの二官能エチレングリコール-1,4-ブタンジ
オールアジペート(ハンツマン社から入手)〕とを混合し、連続的に攪拌しながら110〜120℃に加熱することによって溶解した。連鎖延長剤をポリオール中に溶解させた状態のマスターブレンドが得られた。425cm3の紙コップ中に計算量のマスターブレンドを50〜60℃にて秤量し、次いで計算量のジフェニルメタン-4,4’-ジシイソアネートを加えた。最後に
、触媒であるメタチン(Metatin)(登録商標)S26(ローム&ハース社から市販)またはダブコ(Dabco)(登録商標)S(エアープロダクツ社から市販)を加えた。全ての試剤を真空ミキサー
にて1500rpmの速度で20〜30秒混合した。混合・脱気したブレンドをテフロン(登録商標
)被覆の金属パンに注ぎ、140℃にセットされたホットプレートによって約80℃に加熱し
た。反応混合物をホットプレート上で1時間キュアーし、オーブン中にて80℃で16時間キ
ュアーした。
【0043】
最初の工程において、ポリエステルポリオールを、本発明のトリアジン連鎖延長剤の代わりに計算量の1,4-ブタンジオール連鎖延長剤と混合したこと以外は、同じ手順にしたがって対照標準材料を作製した。
【0044】
配合処方中の連鎖延長剤の割合を系統的に変えることによって(2〜5重量%)、ショアーA硬度が60〜80の範囲のTPUが得られた。一般には、トリアジン連鎖延長剤をベースとするTPUは、1,4-ブタンジオール連鎖延長剤をベースとする同程度の硬度の対照標準材料と比較して、改良された反撥弾性(10%高い)と引張ヒステリシス(30%低い)性能を示した。
【0045】
(実施例2)
ポリオール成分が、官能価が2で、分子量が1000(p-THF1000)または2000(p-THF2000)で
あるポリ-テトラヒドロフラン(デュポン社から市販)であったこと以外は、実施例1に記載の手順と同じ手順を使用して一連の材料を作製した。p-THF1000の場合は、ポリオール/連鎖延長剤溶液をジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネートで硬化させたが、p-THF2000/
連鎖延長剤溶液はプレポリマー(33.3重量%p-THF2000/66.6重量%ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、試剤を窒素雰囲気下にて80℃で2時間攪拌することによって作製)で硬化させた。
【0046】
1,4-ブタンジオールと4,4’-ビス(2-ヒドロキシエチル)キノン(HQEE)を連鎖延長剤として使用して対照標準材料を作製した。
配合処方中の連鎖延長剤の割合を系統的に変えることによって(2〜4重量%)、ショアーA硬度が50〜75の範囲の材料が得られた。トリアジン連鎖延長剤をベースとするTPUは、1,4-ブタンジオールまたはHQEEをベースとする同程度の硬度のTPUと比較して、改良された反撥弾性(10〜20%高い)と引張ヒステリシス(30〜40%低い)を示した。
【0047】
(実施例3)
計算量の2,4-ジアミノ-6-ノニル-1,3,5-トリアジン(デグッサ社から入手)と計算量のポリエステルポリオール〔分子量が2200g/モルの二官能エチレングリコール-1,4-ブタンジ
オールアジペート(ハンツマン社から入手)〕とを混合し、連続的に攪拌しながら110〜120℃に加熱することによって溶解した。連鎖延長剤をポリオール中に溶解させた状態のマスターブレンドが得られた。425cm3の紙コップ中に計算量のマスターブレンドを50〜60℃にて秤量し、次いで計算量のジフェニルメタン-4,4’-ジシイソアネートを加えた。最後に
、触媒であるメタチン(登録商標)S26(ローム&ハース社から市販)またはダブコ(登録商標)S(エアープロダクツ社から市販)を加えた。全ての試剤を真空ミキサーにて1500rpmの速度で20〜30秒混合した。混合・脱気したブレンドをテフロン(登録商標)被覆の金属パンに注ぎ、140℃にセットされたホットプレートによって約80℃に加熱した。反応混合物
をホットプレート上で1時間キュアーし、オーブン中にて80℃で16時間キュアーした。同
じ手順を使用して、添加剤パッケージ〔イルガノックス(Irganox)(登録商標)とイルガフ
ォス(Irgafos)(登録商標)、どちらもチバ社から市販〕をポリオール中に溶解した。数分
攪拌することによって均質した後、連鎖延長剤/添加剤パッケージをポリオール中に溶解
させた状態のマスターブレンドを得た。20リットルの円筒容器中に計算量のマスターブレンドを秤量した。攪拌を開始した。触媒(オクタン酸錫(II))を酢酸エトキシエチル中20重量%溶液として加え、混合した。最後に、計算量のジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネートを加えた。この反応混合物をさらに45秒攪拌し、トレーに注いだ。反応による発熱を熱電対で約15分測定した。トレーをオーブン中に置き、80℃で16時間キュアーした。こうして得られたTPUを自然冷却し、周囲温度にて粒状にした。155℃にてフィルムを押し出し、試験部品を射出成形した。
【0048】
配合処方中の連鎖延長剤の量を系統的に変えることによって(2〜3重量%)ある範囲の材
料を作製した。
得られた結果は以下のとおりであった:ショアーA硬度値は59〜64の範囲;200%伸張後の
残留歪みは3.4%未満;ヒステリシスはかなり低い;レジリエンスは64〜68%。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のモノマーを含む、必要に応じて熱可塑性の弾性ポリウレタンポリマー:
a) 少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物;
b) 少なくとも1種のポリイソシアネート;および
c) 少なくとも1種の以下の式Iで示される連鎖延長剤
【化1】

〔式中、
XとYは、互いに独立的にNまたはCであって、このときXとYの少なくとも一方が窒素であり;
Rは、水素、ヒドロキシル、直鎖もしくは分岐鎖のC1-C36アルキル、直鎖もしくは分岐
鎖のC2-C24アルケニル、C3-C6シクロアルキル、C6-C10アリール、アラルキル、アルカリ
ール、ポリエーテル、またはペルフルオロアルキルであるか;あるいは-OR’、-C(O)R’、-CO(O)R’、または-C(O)OR’であって、このときR’は、R、C1-C36オリゴオキシアルキレン、またはペルフルオロアルキルの意味を有する;そして
R’とR”は、互いに独立的に水素またはC1-C6アルキルである〕。
【請求項2】
連鎖延長剤において、XとYが窒素である、請求項1記載のポリウレタンポリマー。
【請求項3】
連鎖延長剤において、R’とR”が水素である、請求項1または2に記載のポリウレタンポリマー。
【請求項4】
連鎖延長剤において、Rが直鎖のC1-C30アルキル基またはC2-C30アルキル基である、請
求項1〜3のいずれか一項に記載のポリウレタンポリマー。
【請求項5】
イソシアネート反応性化合物がポリエーテルポリオールである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリウレタンポリマー。
【請求項6】
イソシアネート反応性化合物がポリエステルポリオールである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリウレタンポリマー。
【請求項7】
イソシアネートが、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、および芳香族脂肪族ポリイソシアネートから選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリウレタンポリマー。
【請求項8】
5〜60%の範囲の、好ましくは10〜50%の範囲の、さらに好ましくは10〜40%の範囲の、さらに好ましくは10〜30%の範囲の硬質ブロック含量を有する、請求項1〜7のいずれか一項
に記載のポリウレタンポリマー。
【請求項9】
0.5〜20重量%の範囲の、好ましくは1〜15重量%の範囲の、さらに好ましくは1〜10重量%の範囲の、さらに好ましくは1〜5重量%の範囲の連鎖延長剤含量を有する、請求項1〜8の
いずれか一項に記載のポリウレタンポリマー。
【請求項10】
少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物、少なくとも1種のポリイソシアネート、および少なくとも1種の式Iの連鎖延長剤を反応させることを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリウレタンポリマーの製造法。
【請求項11】
溶媒を使用しない、請求項10記載の製造法。
【請求項12】
少なくとも1種の式Iの連鎖延長剤を少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物中に
予め溶解する工程を含む、請求項10または11に記載の製造法。
【請求項13】
粉末形態の少なくとも1種の式Iの連鎖延長剤と、少なくとも1種のイソシアネート反応
性化合物および少なくとも1種のポリイソシアネートとを反応させる工程を含む、請求項10または11に記載の製造法。
【請求項14】
反応押出を含む、請求項10〜13のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれか一項に記載したような、少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物、少なくとも1種のポリイソシアネート、および、少なくとも1種の式Iの連鎖延長剤を含む、反応性混合物。
【請求項16】
および請求項1〜6のいずれか一項に記載したような、少なくとも1種のイソシアネート
反応性化合物、少なくとも1種の式Iの連鎖延長剤を含む混合物。

【公開番号】特開2011−80076(P2011−80076A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260225(P2010−260225)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【分割の表示】特願2006−505490(P2006−505490)の分割
【原出願日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(500030150)ハンツマン・インターナショナル・エルエルシー (56)
【Fターム(参考)】