説明

ポリウレタンウレア弾性繊維

【課題】物理的性能を保ったまま、ポリウレタンウレア重合体と混合でき、優れた熱合着性能を有するポリウレタンウレア弾性繊維を安定的に製造する。
【解決手段】N,N’−ジメチルアセトアミド溶媒中で溶液重合法により得られる硬度80A以下30A以上であるポリウレタン重合体を、5重量%以上40重量%以下含有することを特徴とするポリウレタンウレア弾性繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にポリウレタンウレア弾性繊維を混用した衣料製品のほつれ防止に有用な熱合着性を有するポリウレタンウレア弾性繊維。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン弾性繊維は、高度のゴム弾性を有し、引張応力、回復性などの機械的性質、熱的性質に優れているため、レッグウェア、インナーウェア、スポーツウエア、水着等、他分野の衣料や、紙オムツ、包帯、サポーター、マスク、自動車内装材、組紐、テープ等、非衣料分野にも広く使用されている。
ポリウレタン弾性繊維は、主としてセグメント化ポリウレタンからなる弾性繊維であり、高分子量ポリオール、ジイソシアネート、鎖延長剤を主原料としたブロック共重合体を基本としており、化学構造的には屈曲性に富むソフトセグメントと、水素結合による強い分子間力により結合構造をつくりやすいハードセグメントから構成される。ハードセグメントの水素結合力は、耐熱性などの物性に大きく影響し、「ソフトセグメント分子量」/「ハードセグメント分子量」の比が小さいほど耐熱性に優れる。そして、ハードセグメントを構成する鎖延長剤の種類によって、低分子ジアミンを用いウレア結合を有するポリウレタンウレア重合体と、低分子ポリオールを用いウレタン結合からなるポリウレタン重合体に分類することができる。また、ウレア結合の方がウレタン結合よりも水素結合が強いため、ポリウレタンウレア重合体の方が耐熱性に優れ、現在生産されているポリウレタン弾性繊維の原料の主流となっている。本明細書中では、このようなポリウレタンウレア重合体を主成分としてなる弾性繊維をポリウレタンウレア弾性繊維と称する。ポリウレタン重合体を主成分としてなる弾性繊維はポリウレタンウレア弾性繊維に比べて耐熱性や回復性に劣るが、比較的低温で熱セットできるという特性を活かし、例えばウール織物やゾッキパンストなどの分野に用いられる。
【0003】
ポリウレタンウレア弾性繊維は、一般的な衣料分野に使用される場合、通常交編織された布帛は、裁断、縫製、仕上げ加工等の製造工程を経て製品となる。ポリウレタンウレア弾性繊維を用いて交編織された生地は、裁断して縫製する際に、縁部がほつれやすく縫製しにくい、さらにほつれた縁部で布帛の編地組織からポリウレタンウレア弾性繊維が抜けて、その部分の布帛の伸縮性が低下するという懸念がある。
また、通常の製品において、裁断したままの状態では縁部がほつれてしまうため、ほつれ防止をするために、何らかの縁始末が行われている。例えば、裁断した縁部を折り返して2重にして縫合したり、テープ等の別布で包み込んで縫製するのが一般的である。しかし、これらの縁始末や縫製といったほつれ止めの後処理作業は、衣料製品の生産工程において手間がかかり、経済的にも大きな負担となる。しかも、このように縁始末や縁部の縫製を施した衣料製品では、その上にアウターウェアを着用した際に、アウターウェアに段差が凸状になって現れ、外観を損なう。また、ポリウレタンウレア弾性繊維を用いた衣料は、ファンデーション、パンティストッキングなどの体に直接フィットさせる製品が多く、厚くなった縁部が着用感を低下させるという問題もある。
【0004】
ポリウレタンウレア弾性繊維を用いた衣料の縁始末や縁部の縫製に関わる問題については、近年ファッション化が進むブラジャー、ガードル、ボディスーツ等のファンデーション分野において、裁断部の縁始末や縫製をしないことで、下着のラインがアウターウェアに現れない、いわゆる切りっぱなし開口部を有する衣類製品の製造方法が検討されている。
例えば、編組織が非弾性糸と弾性糸とを同行させた1×1編み組織で、かつ各編針において非弾性糸と弾性糸のうち少なくとも一方が閉じ目により編成された経編地からなる縁始末不要な生地を用いた衣類が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
しかし、生地の設計によって構造的に裁断した縁部のほつれを起こりにくくしているため、特許文献1の場合生地全体が厚地になるなど、生地設計によって得られる布帛に制約があり、衣類の用途が限定される可能性がある。
また、低融点のポリウレタン重合体を主成分としてなる弾性繊維を用い、それ以外の糸をプレーティング編により編みたて、ヒートセット加工を施したほつれ止め機能がある編地を用い、同様に切りっぱなし開口部を有する衣類が提案されている。(特許文献2又は3参照)
しかしながら、低融点のポリウレタン重合体を主成分としてなる弾性繊維は、生地や製品を型止めするためのセット工程や、染色工程での熱による物性低下が大きく、ポリウレタンウレア弾性繊維が通常使用される温度条件では、生地の回復性能低下や、糸切れが起こることがあり、この生地を使用する製品では、加工条件に熱的制約が生じる可能性がある。
【0006】
さらに、例えばポリウレタン重合体と、ポリウレタンウレア重合体のように、2種類のポリウレタン成分を含有する紡糸原液から紡糸されたポリウレタン弾性繊維を用いた繊維構造物を、ポリウレタンウレア重合体の熱変形温度以上で熱処理することにより、ほつれを生じ難い伸縮性繊維構造物の製造方法が提案されている(特許文献4、5)。しかし、本製造方法で得られる生地のほつれ抑制効果は、上述の低融点のポリウレタン重合体を主成分としてなる弾性繊維を用いた場合に比べて十分満足とは言えない。また、特許文献4、5の明細書中では、ポリウレタン重合体を溶媒に溶解した後、ポリウレタンウレア重合体の溶液に混合しているが、ポリウレタン重合体を溶媒に溶解する場合、ポリウレタン重合体の架橋構造の破壊や、分子量低下、粘度低下、黄変などが生じ、結果的にポリウレタンウレア弾性繊維の物理的性能が低下する可能性がある。さらに、用いられるポリウレタン重合体の硬度によって、適切な重合方法を選択する必要があることについて開示されていない。
【0007】
なお、特許文献6にはポリウレタンウレア重合体と、溶液重合法により重合したポリウレタン重合体の2種類のポリウレタン成分を含有するポリウレタン弾性繊維について開示されているが、これは耐塩素性能を向上させる効果を示しており、ほつれ防止の効果については開示されていない。また、用いられるポリウレタン重合体の硬度によって適切な重合方法を選択する必要があることについても開示されていない。
【特許文献1】特開2003−147618号公報
【特許文献2】特開2005−113349号公報
【特許文献3】特開2005−350800号公報
【特許文献4】特開2005−330617号公報
【特許文献5】特開2007−177359号公報
【特許文献6】特許第3909468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記従来の技術にない優れた熱合着性能を有するポリウレタンウレア弾性繊維および、このポリウレタンウレア弾性繊維を安定的に製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討の結果、本発明をなすに至った。すなわち、本発明は下記の通りである。
1.N,N’−ジメチルアセトアミド溶媒中で溶液重合法により得られる硬度80A以下30A以上であるポリウレタン重合体を、5重量%以上40重量%以下含有することを特徴とするポリウレタンウレア弾性繊維
2.ポリウレタン重合体がポリエーテル系ポリウレタン重合体である、第1記載のポリウレタンウレア弾性繊維
3.ポリウレタン重合体が架橋型ポリウレタン重合体である、第1または第2に記載のポリウレタンウレア弾性繊維
4.ポリウレタン重合体の架橋量が0.05×10−5mol/g以上、50×10−5mol/g以下であることを特徴とする第1から第3のいずれかに記載のポリウレタンウレア弾性繊維
5.ポリウレタン重合体のK値が1.2以上3.0以下であることを特徴とする第1から第4のいずれかに記載のポリウレタンウレア弾性繊維
6.ポリウレタン重合体の溶液と、ポリウレタンウレア重合体の溶液を混合して得られる紡糸原液から、乾式紡糸法により紡糸されることを特徴とする第1から第5に記載のポリウレタンウレア弾性繊維
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、硬度80A以下30A以上のポリウレタン重合体を物理的性能を保ったまま、ポリウレタンウレア重合体と混合でき、優れた熱合着性能を有するポリウレタンウレア弾性繊維を得ることと、このポリウレタンウレア弾性繊維を安定的に製造することができる。
熱合着性能とは、ポリウレタンウレア弾性繊維の熱変形を利用して、生地中の糸を拘束させる性能である。熱合着性能の高いポリウレタンウレア弾性繊維を使った布帛に熱を加えることでポリウレタンウレア弾性繊維同士の接点、または、ポリウレタンウレア弾性繊維と相手繊維との接点で、ポリウレタンウレア弾性繊維が大きく熱変形し糸同士の接点が拘束される。熱合着は、熱融着のようにポリウレタン弾性繊維の熱融解作用を利用するものではなく、熱変形作用を利用するものである。
【0011】
ポリウレタン重合体を含むポリウレタンウレア弾性繊維を得るためには、ポリウレタンウレア弾性繊維の紡糸原液にポリウレタン重合体を溶解させるか、または、ポリウレタンウレア弾性繊維の紡糸原液と同じ溶媒にポリウレタン重合体を溶解させた後、ポリウレタンウレア弾性繊維の紡糸原液と混合させる必要がある。しかしながら、ポリウレタン重合体を溶媒に溶解させる場合、溶解に要する時間が長時間になると、溶解時の熱や攪拌羽のせん断エネルギーによりポリウレタン重合体の分子量低下、架橋構造の破壊、更にはそれらに由来する、黄変、物性低下が起きてしまい、結果的にポリウレタン重合体を含むポリウレタンウレア弾性繊維の物理的性能の低下が起きてしまう。
【0012】
ポリウレタン重合体を溶媒に溶解させる場合、上記の物理的性能の低下を抑制するために溶解時間を短縮する必要があり、そのためには、あらかじめポリウレタン重合体を細かいチップ状に成型し、ポリウレタン重合体と溶媒との接触面積を増やす必要がある。しかしながら、硬度80A以下のポリウレタン重合体の場合、工業的に細かいチップ状に成型することが困難であるため、上記の方法で硬度80A以下のポリレタン重合体の溶解時間を短縮することが出来ない。
また、溶媒に溶解しやすいポリウレタン重合体であっても、溶質の濃度が上昇するにつれて溶解速度が低下するため、ポリウレタン重合体を20重量%より高い濃度で短時間に溶解させることは困難である。そのため、ポリウレタン重合体を溶解させて20重量%より高い濃度の溶液を調整しようとすると溶解時間が長時間となり、ポリウレタン重合体の分子量低下、架橋構造の破壊、更にはそれらに由来する、黄変、物性低下が懸念される。
【0013】
本発明では、硬度80A以下のポリウレタン重合体をポリウレタンウレア弾性繊維の紡糸原液と同じ溶媒で溶液重合することで、ポリウレタン重合体を任意の濃度で溶媒に均一に溶解した溶液を得ることができる。そのため、ポリウレタン重合体の溶解作業を必要とせず、ポリウレタン重合体を溶解するための作業時間を実質的に無くすことが出来る。
また、得られたポリウレタン重合体の溶液は容易にポリウレタンウレア弾性繊維の紡糸原液に混合することができるため、物理的性能の低下を起こさずにポリウレタン重合体をポリウレタンウレア弾性繊維に含有させることが出来る。
【0014】
本発明では硬度80A以下のポリウレタン重合体を含むポリウレタンウレア弾性繊維を生地、衣料製品に用いることで、加工処理時の熱により、生地中でポリウレタンウレア弾性繊維同士、またはポリウレタンウレア弾性繊維と相手糸との接触点で、生地への張力、圧縮又はポリウレタンウレア弾性繊維自身の残留応力により、ポリウレタンウレア弾性繊維の圧縮変形が起こる。この変形点で、ポリウレタンウレア弾性繊維同士、又はポリウレタンウレア弾性繊維と相手糸の熱合着が起こるため、生地組織からポリウレタンウレア弾性繊維や相手糸が抜けにくくなりカールやほつれが抑制された生地を得ることが出来る。また、本発明のポリウレタンウレア弾性繊維は耐熱性に優れるため、加工処理における熱的条件の制約が少なく、ポリウレタンウレア弾性繊維が使用される繊維製品で一般的に用いられるあらゆる相手糸との組合せの製品を提供することができる。
【0015】
本発明のポリウレタンウレア弾性繊維を用いた編地又は織物は、加工処理時の熱により、生地のカールやほつれが抑制されるため、縫製時の加工性に優れている。また、加工処理時の熱でも糸切れが起こりにくく、生地組織中のポリウレタンウレア弾性繊維が抜けにくくなり、生地品位が高い製品が得られ、回復性能等の物性低下が少ないため、フィット感に優れたストレッチ衣料を提供することが可能となる。さらに、裁断部を後始末不要とした生地は、ストレッチファンデーション等において、着用感に優れた衣料として利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本願発明について具体的に説明する。
本発明においては、ポリウレタンウレア弾性繊維は、N,N’−ジメチルアセトアミド溶媒中で溶液重合法により得られるポリウレタン重合体を含有することを特徴とするものである。
本発明に用いることができるポリウレタン重合体を製造する方法に関しては、公知のポリウレタン化反応の技術を用いることができる。例えば、ポリアルキレンエーテルグリコールとジイソシアネートをジイソシアネート過剰の条件下で反応させ、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成し、次いで、このウレタンプレポリマーをジオールで鎖伸長反応を行い、ポリウレタン重合体を得ることができる。
【0017】
本発明で用いられるポリウレタン重合体の硬度は、JIS−K7311に規定されている硬度が、80A以下である。70A以下のものが好ましく、65A以下のものがさらに好ましい。この範囲の硬度のポリウレタン重合体をポリウレタンウレア弾性繊維に含有させることで、ポリウレタンウレア弾性繊維の熱変形を起こしやすくすることができ、生地を熱処理した際に、ポリウレタンウレア弾性繊維同士または相手繊維との接触面積が広がり、より高い熱合着性能を得ることができる。また、ポリウレタンウレア弾性繊維の強度の観点から、ポリウレタン重合体の硬度は30A以上が好ましく、35A以上がさらに好ましい。
【0018】
本発明のポリウレタンウレア弾性繊維は、ポリウレタン重合体を5重量%以上40重量%以下含有するものである。ポリウレタン重合体を5重量%以上とすることで、熱合着性能をポリウレタンウレア弾性繊維に付与することができる。熱合着性能の観点からより好ましくは10重量%以上、特に好ましくは15%重量以上である。また、ポリウレタン重合体の含有量を40重量%以下とすることで、加工処理時の熱での糸切れが起こりにくく、良好な伸縮物性を有する生地がえられる。ポリウレタンウレア弾性繊維およびその生地製品の耐熱性、物理的特性の観点から、ポリウレタン重合体の含有量は、より好ましくは35重量%以下であり、特に好ましくは30重量%以下である。
【0019】
本発明に用いられるポリウレタン重合体は、ポリウレタンウレア弾性繊維に高い耐熱性と回復性を付与するために、架橋型のポリウレタン重合体が好適である。本発明において、架橋型のポリウレタン重合体とは、ポリウレタン分子の分岐構造、又はアロファネート結合やイソシアヌレート構造により、ポリウレタン重合体の一部が三次元的な網目構造を有しているものである。架橋型のポリウレタン重合体を得るには、分子中に3つ以上の官能基を有する、高分子量ポリオール、イソシアネート化合物、低分子ポリオールを用いる方法、イソシアネートの反応時にアロファネート結合やイソシアヌレート構造によって架橋構造を生じさせる方法等がある。成形性の観点から、アロファネート結合による架橋構造を有するものが好ましい。また、本発明に用いられるポリウレタン重合体中の架橋量は、ポリウレタンウレア弾性繊維の紡糸工程の安定性に寄与する。ポリウレタン重合体中の架橋量が少なすぎるとポリウレタンウレア弾性繊維の耐熱性が低下することにより紡糸安定性が悪くなる場合があり、ポリウレタン重合体中の架橋量が多すぎるとノズル詰まりがおこり、紡糸工程での安定性が悪くなったり、糸の熱合着性が低下する場合がある。
【0020】
紡糸安定性と熱合着性の観点から0.05×10−5mol/g以上、50×10−5mol/g以下が好ましく、より好ましくは0.1×10−5mol/g以上、10×10−5mol/g以下であり、特に好ましくは0.4×10−5mol/g以上、5×10−5mol/g以下である。
本発明に用いられるポリウレタン重合体のK値は、1.2以上3.0以下とするものである。
K=(ジイソシアネートに由来するNCO基モル数)/(ポリエーテル系ジオールに由来するOH基モル数)
K値を3.0以下とすることで、ポリウレタン重合体が熱変形しやすくなり、ポリウレタンウレア弾性繊維に良好な熱合着性能を付与することが出来る。ポリウレタンウレア弾性繊維により高い熱合着性を付与する観点から、K値は2.8以下がより好ましく、特に好ましくは2.5以下である。また、K値を1.2以上とすることで、ポリウレタン重合体に適度な耐熱性を付与することができるため、安定的な紡糸が出来る。紡糸工程の安定性の観点からK値は、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは2.0以上である。
【0021】
本発明に用いるポリウレタン重合体は、例えば、高分子ポリオール、ジイソシアネート、低分子ジオールを反応させて得ることができる。また、単官能性活性水素原子を有する末端停止剤を反応させてもよい。高分子ポリオールとしては、実質的に線状のホモ又は共重合体からなる各種ジオール、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルアミドジオール、ポリアクリルジオール、ポリチオエステルジオール、ポリチオエーテルジオール、ポリエステルジオール、又はこれらの混合物又はこれらの共重合物等が挙げられる。ポリエーテルグリコールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラオキシメチレングリコール、ポリオキシペンタメチレングリコール、テトラメチレン基と2,2−ジメチルプロピレン基から成る共重合ポリエーテルグリコール、テトラメチレン基と3−メチルテトラメチレン基から成る共重合ポリエーテルグリコール又はこれらの混合物等である。ポリエステルジオールとしては、アジピン酸、フタル酸などの二塩基酸とエチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのグリコール類との縮合脱水反応によるアジペート系ポリエステルジオール、ε−カプロラクトンの開環重合によるポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートジオール等である。高分子ポリオールは、数平均分子量として600以上5,000以下のものが好ましい。より好ましくは、600以上3000以下であり、特に好ましくは、800以上2000以下である。
【0022】
本発明に用いるポリウレタン重合体を合成するためのジイソシアネートとしては、脂肪族、脂環族、芳香族のジイソシアネートが挙げられる。例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート、m−及びp−キシリレンジイシシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート、1,3−及び1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、3−(α−イソシアナートエチル)フェニルイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート又はこれらの混合物又はこれらの共重合物等が挙げられる。好ましくは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートである。
【0023】
本発明に用いるポリウレタン重合体を合成するための鎖延長剤として用いるジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,10−デカンジオール、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサンを用いることができる。好ましくは、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールである。単官能性活性水素原子を有する末端停止剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3−メチル−1−ブタノール等のモノアルコールや、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、t−ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン等のモノアルキルアミンや、ジエチルアミン、ジメチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン等のジアルキルアミンが挙げられる。これらは単独で、又は混合して用いてもよい。
【0024】
本発明に用いるポリウレタンウレア重合体は、例えば、高分子ポリオール、ジイソシアネート、2官能性アミン、および単官能性活性水素原子を有する末端停止剤を反応させて得ることができる。
高分子ポリオールとしては、実質的に線状のホモ又は共重合体からなる各種ジオール、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルアミドジオール、ポリアクリルジオール、ポリチオエステルジオール、ポリチオエーテルジオール、ポリカーボネートジオール又はこれらの混合物又はこれらの共重合物等が挙げられる。好ましくはポリアルキレンエーテルグリコールであり、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラオキシメチレングリコール、ポリオキシペンタメチレングリコール、ポリエステルジオール、テトラメチレン基と2,2−ジメチルプロピレン基から成る共重合ポリエーテルグリコール、テトラメチレン基と3−メチルテトラメチレン基から成る共重合ポリエーテルグリコール又はこれらの混合物等である。中でも、優れた弾性機能を示す、ポリテトラオキシメチレングリコール、テトラメチレン基と2,2−ジメチルプロピレン基から成る共重合ポリエーテルグリコールが好適であり、数平均分子量としては500以上5,000以下が好ましい。より好ましい数平均分子量は、1,000以上3,000以下である。
【0025】
ジイソシアネートとしては、脂肪族、脂環族、芳香族のジイソシアネートが挙げられる。例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート、m−及びp−キシリレンジイシシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート、1,3−及び1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、3−(α−イソシアナートエチル)フェニルイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート又はこれらの混合物又はこれらの共重合物等が挙げられる。好ましくは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートである。
【0026】
鎖延長剤として用いる2官能性アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、トリエチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ピペラジン、o−,m−及びp−フェニレンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、N,N’−(メチレンジ−4,1−フェニレン)ビス[2−(エチルアミノ)−ウレア]等が挙げられる。これらは単独で、又は混合して用いることができる。好ましくは、エチレンジアミン単独、又は1,2−プロピレンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、2−メチル−1,5−ペンタジアミンの群から選ばれる少なくとも1種が5〜40モル%含まれるエチレンジアミン混合物が挙げられる。より好ましくは、エチレンジアミン単独である。
【0027】
単官能性活性水素原子を有する末端停止剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3−メチル−1−ブタノール等のモノアルコールや、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、t−ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン等のモノアルキルアミンや、ジエチルアミン、ジメチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン等のジアルキルアミンが挙げられる。これらは単独で、又は混合して用いることができる。モノアルコールより1官能性アミンであるモノアルキルアミンまたはジアルキルアミンが好ましい。
【0028】
本発明のポリウレタンウレア重合体を製造する方法に関しては、公知のポリウレタン化反応の技術を用いることができる。例えば、ポリアルキレンエーテルグリコールとジイソシアネートをジイソシアネート過剰の条件下で反応させ、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成し、次いで、このウレタンプレポリマーを2官能性アミンで鎖伸張反応を行い、ポリウレタンウレア重合体を得ることができる。
本発明中のポリウレタンウレア弾性繊維は、後述の評価方法にて、190℃でポリウレタンウレア弾性繊維同士の熱合着剥離応力が0.25cN/dt以上であることを特徴とする。熱合着剥離応力が0.25cN/dt以上とすることで、製品生地のほつれ防止機能を得ることができる。生地中でほつれ防止機能を発現させる観点から、ポリウレタンウレア弾性繊維同士の熱合着剥離応力は0.30cN/dt以上であることが好ましく、0.40cN/dt以上であることがより好ましい範囲である。
【0029】
ポリウレタンウレア弾性繊維中にポリウレタン重合体を含有させるには、どのような方法をとってもよいが、ポリウレタン重合体とポリウレタンウレア重合体を均一に混合したポリウレタン組成物を用いるのが好適である。
本発明のポリウレタンウレア弾性繊維は、ジメチルシリコーンを1.0%以上6.0%以下含有することが好ましい。1.0%以上ジメチルシリコーンを含有することで、ポリウレタンウレア弾性繊維を使用する際に、パッケージからの糸の解じょが良好となり、経時での解じょ性の低下を抑制することができる。
【0030】
油剤として、ジメチルシリコーン、鉱物油の他、ポリエステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等の変成シリコーンを含有しても良いが、油剤成分中の変成シリコーンの含有量は、前述の理由から、あわせて1.0%未満であることが好ましい。また、ポリウレタンウレア弾性繊維に付与した際に、ジメチルシリコーン成分が2.5%以上含有するように、ポリウレタンウレア弾性繊維への油剤の含有量にあわせて、油剤中のジメチルシリコーン成分の含有量を変えることが好ましい。油剤中のジメチルシリコーンの含有量は、50%以上が好ましい。さらに油剤には、タルク、コロイダルアルミナ等の鉱物性微粒子、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩粉末、高級脂肪族カルボン酸、高級脂肪族アルコール、パラフィン、ポリエチレン等の常温で固体のワックス等を単独、または必要に応じて任意に組み合わせて用いても良い。
【0031】
また本発明のポリウレタンウレア弾性繊維は、油剤中の変性シリコーンの含有率が0.001%未満であることが好ましい。変性シリコーンはジメチルシリコーン鎖の末端、中間部側鎖を官能基で修飾したものであり、例えば、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン等があげられる。含有量を0.001%未満とすることで、ポリウレタンウレア弾性繊維の熱合着性を発現することができる。より好ましくは、変性シリコーンを含有しないものである。
【0032】
油剤の含有のさせ方は、乾式紡糸後にポリウレタンウレア弾性繊維に付与してもよく、また油剤を紡糸原液に予め含有させて乾式紡糸してもよく、そのいずれを行っても良い。乾式紡糸後に油剤を付与する場合、紡糸原液が乾式紡糸され繊維形成後であれば特に限定されないが、巻き取り機に巻き取られる直前が好ましい。ポリウレタン弾性繊維を巻き取った後で油剤を付与すると、巻き取り玉から繊維を解舒するのが困難である。付与方法は、油剤バス中に回転させた金属円筒の表面上に作った油膜に紡糸直後の糸を接触させる方法、ガイド付きのノズル先端から定量吐出した油剤を糸へ付着させる方法など公知の方法を用いることが出来る。また、油剤の紡糸原液への含有のさせ方は、紡糸原液を製造するどの時点に添加してもよく、紡糸原液に油剤を溶解又は分散させておく。
【0033】
本発明のポリウレタンウレア弾性繊維は、ポリウレタン重合体を5%以上40%以下、ポリウレタンウレア重合体を60%以上含むポリウレタン組成物を、アミド系極性溶媒に溶解して得られた紡糸原液を乾式紡糸して好適に製造される。乾式紡糸は溶融紡糸や湿式紡糸に比べてハードセグメント間の水素結合による物理架橋を最も強固に形成させることが出来るため好ましい。
ポリウレタンウレア弾性繊維の紡糸原液には、通常用いられる他の化合物、例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、耐ガス着色防止剤、耐塩素剤、着色剤、艶消し剤、滑剤、充填剤等を添加してもよい。
【実施例】
【0034】
本発明について、以下具体的に説明する。本発明を実施例で更に詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例等における測定値は、下記の測定法により求めたものである。
以下にポリウレタンウレア弾性繊維の性能評価のための各評価方法について述べる。
(1)硬度
ポリウレタン重合体の厚さ6mm以上の平板上試験片を作成し、JIS−K7311記載のデュロメーター硬さ試験機を用いる方法で測定する。溶液重合法で作成したポリウレタン重合体の硬度を測定する場合は以下の方法で行う。まず、平滑なガラス板上にアプリケーターを用いて厚さ0.6mmで均一にポリウレタン重合体の溶液をキャストし、これを70℃16時間で、溶媒を乾燥除去して厚さ約0.2mmのフィルム状のポリウレタン重合体を作成する。その後、このフィルム細かくハサミで裁断し、テフロン(登録商標)製容器内で180℃60分間加熱し融解させ、厚さ6mm以上の試験片を作成し硬度を測定した。
【0035】
(2)熱合着剥離応力
5cm幅でサンプリング(両端は両面テープに挟んで固定)した2本の試験糸を、図1のように中心で交絡させ、1cmの間隔を空けて金型に固定する。原糸が100%伸長となるように伸長させた状態で、湯洗を90℃10分間行った後、乾熱で190℃1分間処理する。処理後、金枠からサンプルを外し、交絡を解除して、合着部だけで2本が接する状態にする。各々の試験糸両端は重ねておく。引張試験機(オリエンテック(株)社製UTM−III−100型(商品名))を用い、各々の試験糸両端を試験機上下チャックにあわせてつかみセットする。50cm/分で引張り合着部が剥がれる際の最大応力P(cN)を測定し、ポリウレタンウレア弾性繊維サンプルの繊度(dt)で除する。
【0036】
(3)架橋量
ポリウレタン重合体5gを3,000ppmのnブチルアミン(nBA)/ジメチルホルムアミド溶液95gに浸漬し、試験瓶中で40℃×4時間処理をして試験液とする。
次いで、試験液を、ブロムフェノールブルーを指示薬として、0.1Nの塩酸/メタノール溶液で滴定を行い残余アミン量(mol)を求める。
更にポリウレタン重合体を入れないで同様にして処理したnBA/ジメチルホルムアミドを、ブロモフェノールブルーを指示薬として、0.1N塩酸/メタノールで滴定を行いアミン量(mol)を求め、これをリファレンスとする。
そして、レファレンスのアミン量と残余アミン量の差を架橋結合と反応した(架橋結合の分解に消費した)アミン量と定義し、ポリウレタン重合体の架橋量(mol/g)を計算する。
【0037】
[実施例1]
K値=2.0となるように、数平均分子量1830のポリテトラオキシメチレングリコール(PTMG)を160.00重量部、4,4’−ジフェニルメタンイソシアネート(MDI)43.77重量部、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)109.72重量部を乾燥窒素雰囲気下で、30℃において2時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマー溶液を得た。前記プレポリマーに対して1,4−ブタンジオール8.12重量部とN,N’−ジメチルアセトアミド283.79重量部を加え70℃において4時間、攪拌下で反応させて、ポリウレタン重合体がN,N’−ジメチルアセトアミドに均一に溶解した溶液を得た。前記ポリウレタン重合体の溶液に4,4’−ジフェニルメタンイソシアネート0.30重量部、N,N’−ジメチルアセトアミド0.56重量部を添加し70℃において攪拌下で反応させることで、架橋構造を持ったポリウレタン重合体の溶液PU1(濃度35%)を得た。
【0038】
PU1中のポリウレタン重合体の硬度は61Aであり、架橋量は1.8×10−5(mol/g)であった。
また別に、数平均分子量1830のポリテトラオキシメチレングリコールに対し、K値=1.6となるように4,4’−ジフェニルメタンイソシアネートを加え、乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーを得た。これを室温まで冷却した後、N,N’−ジメチルアセトアミドを加え、溶解してポリウレタンプレポリマー溶液を得た。エチレンジアミン及びジエチルアミンをN,N’−ジメチルアセトアミドに溶解した溶液を用意し、これを前記プレポリマー溶液に室温下添加して、固形分濃度30%、粘度450Pa・s(30℃)のポリウレタンウレア重合体の溶液PAを得た。
【0039】
ポリウレタンウレア重合体とポリウレタン重合体の重量比が80:20となるようにPAとPU1を混合し、さらに、その固形分に対し、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)を1重量%、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールを0.5重量%混合して、均一な溶液とした後、室温減圧下で脱泡して、これを紡糸原液とした。
この紡糸原液を紡速800m/分、熱風温度310℃で乾式紡糸し、得られたポリウレタンウレア弾性繊維をパッケージに巻き取られる前に、仕上げ剤として、ポリジメチルシロキサン80重量%、鉱物油18重量%、ステアリン酸マグネシウム2重量%からなる油剤を、ポリウレタン弾性繊維に対して4重量%付与し、紙管に巻き取ることで、33デシテックス/2フィラメントのポリウレタンウレア弾性繊維を得た。
【0040】
[実施例2]
実施例1と同様の操作により、ポリウレタンウレア重合体とポリウレタン重合体の重量比が75:25となるようにPAとPU1を混合した後、33デシテックス/2フィラメントのポリウレタンウレア弾性繊維を得た。
【0041】
[実施例3]
実施例1と同様の操作により、ポリウレタンウレア重合体とポリウレタン重合体の重量比が65:35となるようにPAとPU1を混合した後、33デシテックス/2フィラメントのポリウレタンウレア弾性繊維を得た。
【0042】
[実施例4]
K値=1.2となるように、実施例1のPU1の代わりに、数平均分子量1830のポリテトラオキシメチレングリコール160.00重量部に対して、4,4’−ジフェニルメタンイソシアネート26.26重量部、N,N’−ジメチルアセトアミド100.29重量部を加え、乾燥窒素雰囲気下、30℃において2時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマー溶液を得た。前記プレポリマーに対して1,4−ブタンジオール1.62重量部とN,N’−ジメチルアセトアミド248.63重量部を加え70℃において4時間、攪拌下で反応させて、ポリウレタン重合体がN,N’−ジメチルアセトアミドに均一に溶解した溶液を得た。前記ポリウレタン重合体の溶液に4,4’−ジフェニルメタンイソシアネート0.15重量部、N,N’−ジメチルアセトアミド0.28重量部を添加し70℃において攪拌下反応させることで、架橋構造を持ったポリウレタン重合体の溶液PU2(濃度35%)を得た。
PU2中のポリウレタン重合体の硬度は36Aであり、架橋量は0.4×10−5(mol/g)であった。
実施例1と同様の操作により、ポリウレタンウレア重合体とポリウレタン重合体の重量比が80:20となるようにPAとPU2を混合し、33デシテックス/2フィラメントのポリウレタンウレア弾性繊維を得た。
【0043】
[実施例5]
K値=2.5となるように、実施例1のPU1の代わりに、数平均分子量1830のポリテトラオキシメチレングリコール160.00重量部に対して、4,4’−ジフェニルメタンイソシアネート54.71重量部、N,N’−ジメチルアセトアミド115.61重量部を加え、乾燥窒素雰囲気下、30℃において2時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマー溶液を得た。前記プレポリマーに対して1,4−ブタンジオール12.17重量部とN,N’−ジメチルアセトアミド305.74重量部を加え70℃において4時間、攪拌下で反応させて、ポリウレタン重合体がN,N’−ジメチルアセトアミドに均一に溶解した溶液を得た。前記ポリウレタン重合体の溶液に4,4’−ジフェニルメタンイソシアネート0.4重量部、N,N’−ジメチルアセトアミド0.74重量部を添加し70℃において攪拌下反応させることで、架橋構造を持ったポリウレタン重合体の溶液PU3(濃度35%)を得た。
PU3中のポリウレタン重合体の硬度は70Aであり、架橋量は2.4×10−5(mol/g)であった。
実施例1と同様の操作により、ポリウレタンウレア重合体とポリウレタン重合体の重量比が80:20となるようにPAとPU3を混合し、33デシテックス/2フィラメントのポリウレタンウレア弾性繊維を得た。
【0044】
[比較例1]
K値=2.2となるように、実施例1のポリウレタン重合体の溶液PU1の代わりに、数平均分子量1830のポリテトラオキシメチレングリコール160.00重量部に対し、4,4’−ジフェニルメタンイソシアネート48.15重量部を加え、乾燥窒素雰囲気下、85℃において3.5時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーを得た。前記プレポリマーに対して1,4−ブタンジオール9.74重量部を添加し均一に攪拌した後、150℃において12時間加熱しポリウレタン重合体を得た。
このポリウレタン重合体の硬度は66Aであり、架橋量は2.0×10−5(mol/g)であった。
【0045】
得られたポリウレタン重合体を濃度が20重量%となるようにN,N’−ジメチルアセトアミドに添加し、70℃において8時間攪拌し溶解を試みたが、ポリウレタン重合体が攪拌羽や溶解釜壁面に固着し完全に溶解できず、均一なポリウレタン重合体の溶液PU4は得られなかった。また、完全にポリウレタン重合体を溶解するために、さらに攪拌時間を増加させると、ポリウレタン重合体の溶液PU4の色調に黄変がみられ、ポリウレタンウレア弾性繊維の原材料として不適な物となった。また、N,N’−ジメチルアセトアミドにポリウレタン重合体を短時間に溶解させるために、ポリウレタン重合体の粉砕を試みたが、硬度が低いためか粉砕機内でポリウレタン重合体の固着がみられ、工業的に許容できる効率で粉砕物を得ることが出来なかった。
結果として、上記ポリウレタン重合体を混合したポリウレタンウレア紡糸原液を得ることが出来なかった。
【0046】
[比較例2]
実施例1のポリウレタン重合体の溶液PU1の代わりに、K値=2.7となるように、数平均分子量1830のポリテトラオキシメチレングリコール160.00重量部に対し、4,4’−ジフェニルメタンイソシアネート59.09重量部を加え、乾燥窒素雰囲気下、85℃において3.5時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーを得た。前記プレポリマーに対して1,4−ブタンジオール13.80重量部を添加し均一に攪拌した後、150℃において12時間加熱しポリウレタン重合体を得た。
前記ポリウレタン重合体の硬度は85Aであり、架橋量は5.0×10−5(mol/g)であった。
【0047】
前記ポリウレタン重合体の粉砕物をN,N’−ジメチルアセトアミドに添加し、70℃において8時間攪拌し、固形分濃度が20重量%のポリウレタン重合体の溶液PU5を得た。得られたポリウレタン重合体の溶液はわずかに黄変が観られたが問題にならない程度であった。なお、前記ポリウレタン重合体の粉砕物にN,N’−ジメチルアセトアミドを添加し、固形分濃度が25重量%のポリウレタン重合体の溶液を作成しようとしたが、溶解時間が長時間かかり、またポリウレタン重合体の溶液には黄変が観られ、ポリウレタンウレア弾性繊維の原材料として不適な物となった。
実施例1と同様の操作により、ポリウレタンウレア重合体とポリウレタン重合体の重量比が80:20となるようにPAとPU5を混合し、33デシテックス/2フィラメントのポリウレタンウレア弾性繊維を得た。
【0048】
[比較例3]
実施例1のPU1の代わりに、K値=3.1となるように、数平均分子量1830のポリテトラオキシメチレングリコール160.00重量部に対して、4,4’−ジフェニルメタンイソシアネート67.84重量部、N,N’−ジメチルアセトアミド122.68重量部を加え、乾燥窒素雰囲気下、30℃において2時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマー溶液を得た。前記プレポリマーに対して1,4−ブタンジオール17.04重量部とN,N’−ジメチルアセトアミド332.10重量部を加え70℃において4時間、攪拌下で反応させて、N,N’−ジメチルアセトアミドに均一に溶解したポリウレタン重合体の溶液を得た。前記ポリウレタン重合体の溶液に4,4’−ジフェニルメタンイソシアネート0.50重量部、N,N’−ジメチルアセトアミド0.93重量部を添加し70℃において攪拌下反応させることで、架橋構造を持ったポリウレタン重合体の溶液PU6(濃度35%)を得た。
PU6中のポリウレタン重合体の硬度は90Aであり、架橋量は6.2×10−5(mol/g)であった。
実施例1と同様の操作により、ポリウレタンウレア重合体とポリウレタン重合体の重量比が80:20となるようにPAとPU6を混合し、33デシテックス/2フィラメントのポリウレタンウレア弾性繊維を得た。
【0049】
[比較例4]
実施例1と同様の操作により、ポリウレタンウレア重合体とポリウレタン重合体の重量比が50:50となるようにPAとPU1を混合し、33デシテックス/2フィラメントのポリウレタンウレア弾性繊維の紡糸を試みたが、糸切れ頻度が高く数分間しかパッケージに巻き取ることができなかった。
【0050】
[比較例5]
実施例1のPU1の代わりに、K値=2.7となるように、数平均分子量1830のポリテトラオキシメチレングリコール160.00重量部に対して、4,4’−ジフェニルメタンイソシアネート59.09重量部、N,N’−ジメチルアセトアミド117.97重量部を加え、乾燥窒素雰囲気下、30℃において2時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマー溶液を得た。前記プレポリマーに対して1,4−ブタンジオール13.80重量部とN,N’−ジメチルアセトアミド314.54重量部を加え70℃において4時間、攪拌下で反応させて、N,N’−ジメチルアセトアミドに均一に溶解したポリウレタン重合体の溶液を得た。前記ポリウレタン重合体の溶液に4,4’−ジフェニルメタンイソシアネート0.50重量部、N,N’−ジメチルアセトアミド0.93重量部を添加し70℃において攪拌下反応させることで、架橋構造を持ったポリウレタン重合体の溶液PU7(濃度35%)を得た。
PU7中のポリウレタン重合体の硬度は85Aであり、架橋量は4.5×10−5(mol/g)であった。
実施例1と同様の操作により、ポリウレタンウレア重合体とポリウレタン重合体の重量比が80:20となるようにPAとPU7を混合し、33デシテックス/2フィラメントのポリウレタンウレア弾性繊維を得た。
【0051】
[比較例6]
実施例1のPU1の代わりに、K値=1.2となるように、数平均分子量1830のポリテトラオキシメチレングリコール160.00重量部に対して、4,4’−ジフェニルメタンイソシアネート26.26重量部、N,N’−ジメチルアセトアミド100.29重量部を加え、乾燥窒素雰囲気下、30℃において2時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマー溶液を得た。前記プレポリマーに対して1,4−ブタンジオール1.62重量部とN,N’−ジメチルアセトアミド248.63重量部を加え70℃において4時間、攪拌下で反応させて、ポリウレタン重合体がN,N’−ジメチルアセトアミドに均一に溶解した溶液PU8(濃度35%)を得た。
PU8中のポリウレタン重合体の硬度は29Aであり、架橋量は0.05×10−5(mol/g)であった。
実施例1と同様の操作によって、ポリウレタンウレア重合体とポリウレタン重合体の重量比が75:25となるようにPAとPU8を混合し、33デシテックス/2フィラメントのポリウレタンウレア弾性繊維の巻き取りを試みたが、耐熱性が低いためか糸切れが頻発し、ポリウレタンウレア弾性糸を得ることが出来なかった。
【0052】
[比較例7]
実施例1のPU1の代わりに、K値=1.2となるように、数平均分子量1830のポリテトラオキシメチレングリコール160.00重量部に対して、4,4’−ジフェニルメタンイソシアネート26.26重量部、N,N’−ジメチルアセトアミド100.29重量部を加え、乾燥窒素雰囲気下、30℃において2時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマー溶液を得た。前記プレポリマーに対して1,4−ブタンジオール1.62重量部とN,N’−ジメチルアセトアミド248.63重量部を加え70℃において4時間、攪拌下で反応させて、ポリウレタン重合体がN,N’−ジメチルアセトアミドに均一に溶解した溶液を得た。前記ポリウレタン重合体の溶液に4,4’−ジフェニルメタンイソシアネート1.50重量部、N,N’−ジメチルアセトアミド2.79重量部を添加し70℃において攪拌下反応させることで、架橋構造を持ったポリウレタン重合体の溶液PU9(濃度30%)を得た。
PU9中のポリウレタン重合体の硬度は54Aであり、架橋量は51.8×10−5(mol/g)であった。
PU9は架橋量が多いためか、微小なゲル状物が多数みられ、紡糸原液の原料としては不適なものであった。結果的にPU9を混合したポリウレタンウレア弾性繊維は得られなかった。
【0053】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によって製造されるポリウレタンウレア弾性繊維を用いることにより、生地のカールやほつれが抑制され、編織設計や加工に対する条件の制約が少ない縫製加工性に優れた編地、織物などの生地を得ることが出来る。また加工時の熱により、縁始末不要とした生地を用い、ガードル、ブラジャー、インティメイト商品、肌着等の各種ストレッチファンデーションや、タイツ、パンティストッキング等において着用感に優れる好適な製品を提供できる。本発明のポリウレタンウレア弾性繊維は、その他、ウェストバンド、ボディースーツ、スパッツ、水着、スポーツウェア、ストレッチアウター、医療用ウェア、ストレッチ裏地等衣料製品の他、熱合着性能を生かしたオムツ、ベルト等の非衣料用途にも好適である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明においてポリウレタンウレア弾性繊維の熱合着剥離応力を測定する際の試験サンプル模式図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N,N’−ジメチルアセトアミド溶媒中で溶液重合法により得られる硬度80A以下30A以上であるポリウレタン重合体を、5重量%以上40重量%以下含有することを特徴とするポリウレタンウレア弾性繊維
【請求項2】
ポリウレタン重合体がポリエーテル系ポリウレタン重合体である、請求項1記載のポリウレタンウレア弾性繊維
【請求項3】
ポリウレタン重合体が架橋型ポリウレタン重合体である、請求項1または2に記載のポリウレタンウレア弾性繊維
【請求項4】
ポリウレタン重合体の架橋量が0.05×10−5mol/g以上、50×10−5mol/g以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のポリウレタンウレア弾性繊維
【請求項5】
ポリウレタン重合体のK値が1.2以上3.0以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のポリウレタンウレア弾性繊維
【請求項6】
ポリウレタン重合体の溶液と、ポリウレタンウレア重合体の溶液を混合して得られる紡糸原液から、乾式紡糸法により紡糸されることを特徴とする請求項1から5に記載のポリウレタンウレア弾性繊維

【図1】
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【公開番号】特開2010−65345(P2010−65345A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232601(P2008−232601)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】