説明

ポリウレタンエラストマーおよび成形品

【課題】優れた透明性を確保でき、耐熱性に優れるとともに、タック性を抑制することができ、また、耐黄変性にも優れ、さらには、屈折率にも優れるポリウレタンエラストマー、および、そのポリウレタンエラストマーを用いて得られる成形品を提供すること。
【解決手段】1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含有するポリイソシアネートと、高分子量ポリオールと、分岐状低分子量ジオールをその総モル数に対して5〜45モル%の割合で含有する鎖伸長剤とを、高分子量ポリオールの水酸基に対する、ポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比が2〜6となる範囲で反応させることにより、ポリウレタンエラストマーを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンエラストマー、および、そのポリウレタンエラストマーが用いられる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器においては、操作性を向上させるため、操作部に設けられる可動接点体を発光素子などにより照光するとともに、その照射される光を透過できる導光性シートにより被覆および保護することが、よく知られている。
【0003】
このような導光性シートは、従来、光透過性に優れるポリカーボネートなどにより形成されているが、ポリカーボネートは柔軟性が十分ではなく、可動接点体の操作性(クリック感触などのキー操作性)を損なう場合がある。そのため、例えば、導光性シートを柔軟性に優れるポリウレタンエラストマーにより形成することが、提案されている。
【0004】
より具体的には、例えば、押圧入力型の可動接点と、可動接点を保持する粘着層と、側方位置に備えられた光源から入射された光を導いて可動接点の上面側を照明する、柔軟性に優れるサーモプラスチックポリウレタンからなる絶縁フィルム製のベースシートと、そのベースシートと粘着層との間に介在される、ベースシートよりも屈折率の低い膜とを備える導光機能付き可動接点体が、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−164114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、特許文献1に記載の導光機能付き可動接点体において、サーモプラスチックポリウレタンからなる絶縁フィルムは、特に制限されることなく用いられているが、通常のサーモプラスチックポリウレタンは、耐熱性が十分ではなく、また、タック性が強いため、加工時における作業性および操作性に劣るという不具合がある。
【0007】
また、導光性シートとしては、意匠性の向上を図るため、透明性を確保するとともに、さらに、優れた耐黄変性を確保することが、要求されている。
【0008】
本発明の目的は、優れた透明性を確保でき、耐熱性に優れるとともに、タック性を抑制することができ、さらには、耐黄変性にも優れ、屈折率が高いポリウレタンエラストマー、および、そのポリウレタンエラストマーを用いて得られる成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のポリウレタンエラストマーは、ポリイソシアネートと、高分子量ポリオールと、鎖伸長剤とを、少なくとも反応させることにより得られるポリウレタンエラストマーであって、前記ポリイソシアネートが、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含有し、前記鎖伸長剤が、分岐状低分子量ジオールを、前記鎖伸長剤の総モル数に対して5〜45モル%の割合で含有し、前記高分子量ポリオールの水酸基に対する、前記ポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比が、2〜6であることを特徴としている。
【0010】
また、本発明のポリウレタンエラストマーでは、平行光線透過率が、90%以上であることが好適である。
【0011】
また、本発明のポリウレタンエラストマーは、軟化温度が130℃以上であることが好適である。
【0012】
また、本発明のポリウレタンエラストマーでは、前記分岐状低分子量ジオールにおいて、分岐鎖の総炭素数が、1〜5であることが好適である。
【0013】
また、本発明のポリウレタンエラストマーでは、前記分岐状低分子量ジオールが、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールおよび2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好適である。
【0014】
また、本発明のポリウレタンエラストマーは、アントラキノン系ブルーイング剤を、0.1〜5ppmの割合で含有することが好適である。
【0015】
また、本発明の成形品は、上記のポリウレタンエラストマーが用いられていることを特徴としている。
【0016】
また、本発明の成形品は、導光フィルムとして成形されていることが好適である。
【0017】
また、本発明の成形品は、導光シートとして成形されていることが好適である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のポリウレタンエラストマーによれば、優れた耐熱性を確保できるとともに、タック性を抑制することができるため、優れた作業性および操作性を確保することができる。
【0019】
また、本発明のポリウレタンエラストマーは、屈折率が高く、さらに、透明性および耐黄変性に優れるため、意匠性にも優れる。
【0020】
そのため、本発明のポリウレタンエラストマーによれば、光学特性および意匠性が要求される成形品を、作業性よく形成し、使用することができる。
【0021】
そして、本発明の成形品は、本発明のポリウレタンエラストマーが用いられているため、作業性よく形成し、使用することができ、また、優れた屈折率、透明性および意匠性を確保することができる。
【0022】
そのため、本発明の成形品は、とりわけ、導光フィルム、導光シートなどの光学シートとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のポリウレタンエラストマーは、ポリイソシアネートと、高分子量ポリオールと、鎖伸長剤とを、少なくとも反応させることにより、例えば、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱硬化性ポリウレタンエラストマー(注型ポリウレタンエラストマー)などとして、得られる。
【0024】
本発明において、ポリイソシアネートは、イソシアネート基を2つ以上有する有機化合物であって、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含有しており、例えば、イソシアネート基の総モル数に対して、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアネート基を、50モル%以上、好ましくは、70モル%以上、さらに好ましくは、80モル%以上、とりわけ好ましくは、90モル%以上の割合で含有している。最も好ましくは、100モル%含有している。
【0025】
1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンには、シス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、シス1,4体とする。)、および、トランス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、トランス1,4体とする。)の立体異性体があり、本発明では、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、トランス1,4体を、好ましくは、80モル%以上、より好ましくは、85モル%以上含有している。
【0026】
1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、例えば、特開平7−309827号公報に記載される冷熱2段法(直接法)や造塩法、あるいは、特開2004−244349号公報や特開2003−212835号公報などに記載されるノンホスゲン法などにより、製造することができる。
【0027】
また、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、変性体として調製することもできる。
【0028】
1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの変性体としては、例えば、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの多量体(ダイマー(例えば、ウレチジオン変性体など)、トリマー(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体など)など)、ビウレット変性体(例えば、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと水との反応により生成するビウレット変性体など)、アロファネート変性体(例えば、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとモノオールまたは低分子量ポリオール(後述)との反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと低分子量ポリオール(後述)または高分子量ポリオール(後述)との反応より生成するポリオール変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)などが挙げられる。
【0029】
また、ポリイソシアネートは、本発明の優れた効果を阻害しない範囲で、その他のポリイソシアネート、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを除く脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートなどを含有することができる。
【0030】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、2,2’−ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3−ブタジエン−1,4−ジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカメチレントリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアナトメチルオクタン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアネート−5−イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、1,4−ブチレングリコールジプロピルエーテル−ω、ω’−ジイソシアネート、リジンイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート、2−イソシアナトプロピル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート、ビス(4−イソシアネート−n−ブチリデン)ペンタエリスリトール、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエートなどが挙げられる。
【0031】
脂環族ポリイソシアネート(1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを除く。)としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、トランス,トランス−、トランス,シス−、およびシス,シス−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよびこれらの混合物(水添MDI)、1,3−または1,4−シクロヘキサンジイソシアネートおよびこれらの混合物、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、2,2’−ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,5−ジイソシアナトメチルビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、その異性体である2,6−ジイソシアナトメチルビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン(NBDI)、2−イソシアナトメチル2−(3−イソシアナトプロピル)−5−イソシアナトメチルビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−6−イソシアナトメチルビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナトメチル3−(3−イソシアナトプロピル)−5−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナトメチル3−(3−イソシアナトプロピル)−6−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナトメチル2−(3−イソシアナトプロピル)−5−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナトメチル2−(3−イソシアナトプロピル)−6−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタンなどが挙げられる。
【0032】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネートおよび2,6−トリレンジイソシアネート、ならびに、これらトリレンジイソシアネートの異性体混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ならびに、これらジフェニルメタンジイソシアネートの任意の異性体混合物(MDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、パラフェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)などが挙げられる。
【0033】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(XDI)、1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TMXDI)などが挙げられる。
【0034】
また、その他のポリイソシアネートは、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、変性体として調製することもできる。
【0035】
その他のポリイソシアネートの変性体としては、例えば、その他のポリイソシアネートの多量体(ダイマー、トリマーなど)、ビウレット変性体、アロファネート変性体、ポリオール変性体、オキサジアジントリオン変性体、カルボジイミド変性体などが挙げられる。
【0036】
その他のポリイソシアネートとして、好ましくは、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トランス,トランス−、トランス,シス−、およびシス,シス−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよびこれらの混合物(水添MDI)、2,5−ジイソシアナトメチルビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、その異性体である2,6−ジイソシアナトメチルビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン(NBDI)、2,4−トリレンジイソシアネートおよび2,6−トリレンジイソシアネート、ならびに、これらトリレンジイソシアネートの異性体混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ならびに、これらジフェニルメタンジイソシアネートの任意の異性体混合物(MDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(XDI)、および、これらその他のポリイソシアネートの変性体が挙げられる。
【0037】
なお、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンには、シス−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、シス1,3体とする。)、および、トランス−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、トランス1,3体とする。)の立体異性体があり、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと併用する場合には、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、トランス1,3体を、好ましくは、50モル%以上、さらに好ましくは、70モル%以上、とりわけ好ましくは、90モル%以上含有する。
【0038】
また、本発明の優れた効果を阻害しない範囲で、上記のポリイソシアネートと、モノイソシアネートとを併用することができる。
【0039】
モノイソシアネートは、イソシアネート基を1つ有する有機化合物であって、例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、n−ヘキシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、2−エチルヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネートなどが挙げられる。
【0040】
本発明において、高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有し、その数平均分子量が、例えば、400〜8000、好ましくは、800〜4000、さらに好ましくは、800〜3000の有機化合物である。
【0041】
なお、高分子量ポリオールの数平均分子量は、高分子量ポリオールの水酸基価(JIS K 1557−1(2007)から求められる。)および平均官能基数から算出することができる。
【0042】
高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオールなどが挙げられる。
【0043】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0044】
ポリオキシアルキレンポリオールは、例えば、低分子量ポリオールまたは低分子量ポリアミンを開始剤とする、アルキレンオキサイドの付加重合物である。
【0045】
アルキレンオキサイドとしては、例えば、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドなどが挙げられる。また、これらアルキレンオキサイドは、単独使用または2種類以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイドが挙げられる。
【0046】
また、ポリオキシアルキレンポリオールは、その分子末端の1級水酸基化率が、例えば、少なくとも50モル%であり、好ましくは、70モル%である。ポリオキシアルキレンポリオールの分子末端の1級水酸基化率が上記値であれば、ポリイソシアネートとの反応完結率を向上させることができる。
【0047】
ポリオキシアルキレンポリオールを調製するための触媒としては、例えば、特許第3905638号公報記載のホスファゼニウム化合物が挙げられる。このような触媒を用いてポリオキシアルキレンポリオールを調製すれば、モノオール副生量が少ないポリオキシアルキレンポリオールを得ることができる。
【0048】
なお、低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、アルカン(炭素数7〜22)ジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、キシレングリコール、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、トリオキシエチレングリコール、テトラオキシエチレングリコール、ペンタオキシエチレングリコール、ヘキサオキシエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリオキシプロピレングリコール、テトラオキシプロピレングリコール、ペンタオキシプロピレングリコール、ヘキサオキシプロピレングリコールなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノールおよびその他の脂肪族トリオール(炭素数8〜24)などの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどが挙げられる。また、低分子量ポリオールとしては、上記の1〜8価アルコールに、さらに、例えば、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加した付加重合体も含まれる。
【0049】
また、低分子量ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、例えば、トリレンジアミンなどの芳香族ジアミンなどが挙げられる。
【0050】
なお、ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量は、好ましくは、800〜4000、さらに好ましくは、800〜3000である。
【0051】
ポリテトラメチレンエーテルグリコールとしては、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物や、テトラヒドロフランの重合単位に上記した2価アルコールを共重合した非晶性(常温液状)ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0052】
なお、ポリテトラメチレンエーテルグリコールの数平均分子量は、好ましくは、800〜8000、さらに好ましくは、800〜4000、とりわけ好ましくは、800〜3000である。
【0053】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールと多塩基酸とを、公知の条件下、反応させて得られる重縮合物が挙げられる。
【0054】
多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1−ジメチル−1,3−ジカルボキシプロパン、3−メチル−3−エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバチン酸、その他の脂肪族ジカルボン酸(炭素数11〜13)、スベリン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、メチルヘキサン二酸、シトラコン酸、水添ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ダイマー酸、ヘット酸などのカルボン酸、および、それらカルボン酸から誘導される酸無水物、酸ハライド、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などが挙げられる。
【0055】
上記した低分子量ポリオールと多塩基酸との重縮合物として、具体的には、ポリ(エチレンブチレンアジペート)ポリオール、ポリ(エチレンアジペート)ポリオール、ポリ(エチレンプロピレンアジペート)ポリオール、ポリ(プロピレンアジペート)ポリオール、ポリ(ブチレンヘキサンアジペート)ポリオール、ポリ(ブチレンアジペート)ポリオールなどのアジピン酸系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0056】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、ひまし油ポリオール、あるいは、ひまし油ポリオールとポリプロピレングリコールとを反応させて得られる変性ひまし油ポリオールなどが挙げられる。
【0057】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、例えば、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類を開環重合して得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、さらには、それらに上記した2価アルコールを共重合したラクトン系ポリオールなどが挙げられる。
【0058】
なお、ポリエステルポリオールの数平均分子量は、好ましくは、800〜4000、さらに好ましくは、800〜3000である。
【0059】
また、高分子量ポリオールがポリエステルポリオールである場合、カルボジイミド基を有するカルボジイミド基含有化合物を、ポリエステルポリオールに添加することが好ましい。カルボジイミド基含有化合物を添加することにより、ポリウレタンエラストマーの耐加水分解性を向上させることができる。
【0060】
カルボジイミド基含有化合物としては、例えば、特開平9−208649号公報に記載のカルボジイミドが挙げられる。より具体的な市販品としては、例えば、カルボジライト(日清紡績株式会社製)、スタバクゾールI−LF(ラインケミー社製)、スタビライザー7000(RASCHIG GmbH製)などが挙げられる。
【0061】
また、カルボジイミド基含有化合物は、例えば、ポリエステルポリオール100質量部に対して、0.01〜2質量部添加することが好ましい。
【0062】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記した2価アルコールを開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物や、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールや1,6−ヘキサンジオールなどの2価アルコールと、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートやジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとの縮合反応により得られるポリカーボネートジオールや非晶性(常温液状)ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
【0063】
なお、ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、好ましくは、800〜4000、さらに好ましくは、800〜3000である。
【0064】
ポリウレタンポリオールは、上記の高分子量ポリオール(例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなど)を、イソシアネート基に対する水酸基の当量比(OH/NCO)が1を超過する割合で、上記ポリイソシアネートと反応させることによって、ポリエーテルポリウレタンポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリウレタンポリオール、あるいは、ポリエステルポリエーテルポリウレタンポリオールなどとして得ることができる。
【0065】
これら高分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、アジピン酸系ポリエステルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリカーボネートポリオール、さらには非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール、非晶性ポリカーボネートポリオールが挙げられる。また、これらの数平均分子量は、800〜3000が好適である。
【0066】
また、詳しくは後述するが、ポリイソシアネート、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤の反応において、これら高分子量ポリオールの水酸基に対する、上記したポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比は、2〜6、好ましくは、2.2〜5.5、さらに好ましくは、2.5〜5である。
【0067】
本発明において、鎖伸長剤としては、例えば、低分子量ジオールなどが挙げられる。
【0068】
低分子量ジオールは、水酸基を2つ有し、その数平均分子量が、例えば、40〜600、好ましくは、400未満の有機化合物であって、例えば、直鎖状低分子量ジオール、分岐状低分子量ジオールなどが挙げられる。
【0069】
直鎖状低分子量ジオールは、分岐鎖を含有しない低分子量ジオールであって、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、ジエチレングリコール、トリオキシエチレングリコール、テトラオキシエチレングリコール、ペンタオキシエチレングリコール、ヘキサオキシエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリオキシプロピレングリコール、テトラオキシプロピレングリコール、ペンタオキシプロピレングリコール、ヘキサオキシプロピレングリコールなどの直鎖状2価アルコールなどが挙げられる。
【0070】
これら直鎖状低分子量ジオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0071】
直鎖状低分子量ジオールとして、好ましくは、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールが挙げられ、より好ましくは、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールが挙げられ、さらに好ましくは、1,4−ブタンジオールが挙げられる。
【0072】
このような直鎖状低分子量ジオールを用いれば、軟化温度、タック性および反発弾性を良好とすることができる。
【0073】
分岐状低分子量ジオールは、分岐鎖を含有する低分子量ジオールであって、例えば、プロピレングリコール(分岐鎖の総炭素数:1)、1,3−ブタンジオール(分岐鎖の総炭素数:1)、1,2−ブタンジオール(分岐鎖の総炭素数:2)、2−メチル−1,3−プロパンジオール(分岐鎖の総炭素数:1)、ネオペンチルグリコール(分岐鎖の総炭素数:2)、2−メチル−1,5−ペンタンジオール(分岐鎖の総炭素数:1)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(分岐鎖の総炭素数:1)、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール(分岐鎖の総炭素数:4)、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール(分岐鎖の総炭素数:4)、2−エチル−3−プロピル−1,3−プロパンジオール(分岐鎖の総炭素数:5)、1−フェニル−1,2−エタンジオール(分岐鎖の総炭素数:6)などの分岐状2価アルコールなどが挙げられる。
【0074】
これら分岐状低分子量ジオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0075】
分岐状低分子量ジオールとして、好ましくは、分岐鎖の総炭素数が1〜5である分岐状低分子量ジオールが挙げられる。
【0076】
分岐鎖の総炭素数が1〜5である分岐状低分子量ジオールを用いれば、透明性(全光線透過率、平行光線透過率、拡散光透過率およびヘイズ)および屈折率を良好とすることができる。
【0077】
また、このような分岐状低分子量ジオールとして、好ましくは、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールが挙げられ、より好ましくは、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールが挙げられる。
【0078】
このような分岐状低分子量ジオールを用いれば、透明性に加えて、屈折率を著しく良好とすることができる。
【0079】
これら鎖伸長剤は、単独使用または2種類以上併用することができるが、本発明において、鎖伸長剤は、上記した分岐状低分子量ジオールを含有する。
【0080】
分岐状低分子量ジオールの含有割合は、鎖伸長剤の総モル数に対して、5〜45モル%、好ましくは、10〜40モル%、より好ましくは、20〜35モル%である。
【0081】
分岐状低分子量ジオールの含有割合が上記下限未満であれば、透明性および屈折率が低下する。
【0082】
一方、分岐状低分子量ジオールの含有割合が上記上限を超過すると、軟化温度、タック性および反発弾性が低下する。
【0083】
また、鎖伸長剤は、上記した分岐状低分子量ジオールの残部として、例えば、上記した直鎖状低分子量ジオールを含有する。
【0084】
直鎖状低分子量ジオールの含有割合は、鎖伸長剤の総モル数に対して、例えば、55〜95モル%、好ましくは、60〜90モル%、より好ましくは、65〜80モル%である。
【0085】
直鎖状低分子量ジオールの含有割合が上記範囲であれば、透明性、軟化温度、タック性、屈折率および反発弾性を良好とすることができる。
【0086】
また、鎖伸長剤においては、上記した直鎖状低分子量ジオールに代えて、例えば、炭素環含有低分子量ジオールを用いることができる。
【0087】
炭素環含有低分子量ジオールとしては、例えば、芳香環を含有する芳香環含有低分子量ジオール、脂環を含有する脂環含有低分子量ジオールなどが挙げられる。
【0088】
芳香環含有低分子量ジオールとしては、例えば、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、キシレングリコール、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、ビスフェノールAなどの芳香環含有2価アルコールなどが挙げられる。
【0089】
脂環含有低分子量ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールAなどの脂環含有2価アルコールなどが挙げられる。
【0090】
これら炭素環含有低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0091】
また、本発明では、ポリイソシアネート、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤とともに、架橋剤を用いることができる。
【0092】
架橋剤は、活性水素を3つ以上有する数平均分子量40〜800の有機化合物であって、例えば、水酸基を3つ以上有する低分子量ポリオール、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、脂肪族ポリアミンなどが挙げられる。
【0093】
水酸基を3つ以上有する低分子量ポリオールとしては、例えば、上記した3〜8価のアルコールなどが挙げられる。
【0094】
芳香族ポリアミンとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジフェニルメタンジアミン、エタキュアー300(商品名:アルベマール社製)、TCDAM(商品名:イハラケミカル社製)などが挙げられる。
【0095】
芳香脂肪族ポリアミンとしては、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジアミンもしくはその混合物などが挙げられる。
【0096】
脂環族ポリアミンとしては、例えば、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよびそれらの混合物、1,3−および1,4−ビス(アミノエチル)シクロヘキサンおよびそれらの混合物などが挙げられる。
【0097】
脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、1,2−ジアミノエタン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノペンタンなどが挙げられる。
【0098】
これら架橋剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0099】
架橋剤の配合割合は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0100】
そして、本発明のポリウレタンエラストマーは、上記各成分(すなわち、必須成分として、ポリイソシアネート、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤、任意成分として、モノイソシアネートおよび/または架橋剤)を、例えば、ワンショット法やプレポリマー法などの公知の方法で反応させることにより、得ることができる。
【0101】
なお、上記いずれの方法においても、予め、高分子量ポリオールを加熱減圧脱水処理し、その水分量を低下させておくことが好ましい。処理後の高分子量ポリオールの水分量は、例えば、0.05質量%以下であり、好ましくは、0.03質量%以下である。さらに好ましくは、0.02質量%以下である。
【0102】
ワンショット法では、ポリイソシアネート(さらに、必要によりモノイソシアネート)と、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤(さらに、必要により架橋剤)とを、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤(さらに、必要により架橋剤)の活性水素基に対する、ポリイソシアネート(さらに、必要によりモノイソシアネート)のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基(およびアミノ基))が、例えば、0.9〜1.2、好ましくは、0.95〜1.1、さらに好ましくは、0.98〜1.08となる割合で、同時に配合して撹拌混合する。
【0103】
この反応における、高分子量ポリオールの活性水素基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比は、2〜6、好ましくは、2.2〜5.5、さらに好ましくは、2.5〜5である。
【0104】
また、この撹拌混合は、例えば、不活性ガス(例えば、窒素)雰囲気下、反応温度40〜280℃、好ましくは、100〜260℃で、反応時間30秒〜1時間程度実施する。
【0105】
撹拌混合の方法としては、特に制限されないが、例えば、ディスパー、ディゾルバー、タービン翼のような混合槽、循環式の低圧または高圧衝突混合装置、高速撹拌ミキサー、スタティックミキサー、ニーダー、単軸または二軸回転式の押出機、ベルトコンベアー式など、公知の混合装置を用いて撹拌混合する方法が挙げられる。好ましくは、高速撹拌ミキサーでポリイソシアネート(さらに、必要によりモノイソシアネート)と、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤(さらに、必要により架橋剤)とを十分に混合し、次いで、スタティックミキサー、単軸式押出機または混練機で混合する方法や、高速撹拌ミキサーでポリイソシアネート(さらに、必要によりモノイソシアネート)と、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤(さらに、必要により架橋剤)とを十分に混合した反応混合液をベルトコンベアーに連続的に流し、反応させる方法が挙げられる。このような方法により各成分を撹拌混合すれば、得られるポリウレタンエラストマーの外観不良(例えば、ブツなど)の発生や、ゲル化を低減することができる。
【0106】
また、撹拌混合時には、必要により、アミン類や金属系化合物などの触媒や、溶媒を添加することができる。
【0107】
触媒としては、好ましくは、有機金属化合物が挙げられ、そのような有機金属化合物として、例えば、錫系触媒(例えば、酢酸錫、オクチル酸錫(オクチル酸第一スズ)、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジクロライドなど)、鉛系触媒(例えば、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛など)、例えば、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト、オクテン酸銅、ビスマス系触媒などが挙げられる。
【0108】
これら触媒は、単独使用または2種類以上併用することができ、例えば、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤(さらに、必要により架橋剤)の総量1000質量部に対して、例えば、0.001〜0.5質量部、好ましくは、0.01〜0.3質量部添加される。
【0109】
また、溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのアルキルエステル類、例えば、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N´−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなどの極性非プロトン類などが挙げられる。
【0110】
これら溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができ、反応系の粘度などにより、適宜の割合で配合される。
【0111】
プレポリマー法では、まず、ポリイソシアネート(さらに、必要によりモノイソシアネート)と、高分子量ポリオールとを反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを合成し、次いで、そのイソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤(さらに、必要により架橋剤)とを反応させる。
【0112】
上記プレポリマーの合成において、高分子量ポリオールの活性水素基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比は、2〜6、好ましくは、2.2〜5.5、さらに好ましくは、2.5〜5である。
【0113】
また、上記のプレポリマー化反応は、例えば、不活性ガス(例えば、窒素)雰囲気下、反応温度40〜150℃で、反応時間30秒〜8時間程度、ポリイソシアネート(さらに、必要によりモノイソシアネート)と、高分子量ポリオールとを攪拌混合する。また、この反応には、必要により、上記した触媒や溶媒を添加することができる。
【0114】
次いで、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤(さらに、必要により架橋剤)とを、鎖伸長剤(さらに、必要により架橋剤)の活性水素基に対するイソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基(およびアミノ基))が、例えば、0.9〜1.2、好ましくは、0.95〜1.1、さらに好ましくは、0.98〜1.08となる割合で配合し、例えば、ワンショット法で記載した攪拌混合方法により、撹拌混合する。
【0115】
この撹拌混合は、例えば、反応温度40〜280℃、好ましくは、50〜270℃、さらに好ましくは、60〜260℃で、必要により、上記した触媒や溶媒を添加し、反応時間0.5分〜30分程度実施する。
【0116】
次いで、攪拌混合した反応液を、窒素気流下で、例えば、80〜180℃に10〜30時間暴露し、アニール処理する。
【0117】
これにより、反応完結度を向上させることができ、その結果、機械物性に優れるポリウレタンエラストマーを得ることができる。
【0118】
このようなポリウレタンエラストマーの合成方法として、機械物性向上の観点から、好ましくは、プレポリマー法が挙げられる。
【0119】
また、このようなポリウレタンエラストマーは、さらに、ブルーイング剤を含有することができる。
【0120】
ブルーイング剤は、可視光領域のうち、例えば、橙色から黄色などの波長域の光を吸収し、色相を調整する添加剤(染料、顔料)であって、例えば、群青、紺青、コバルトブルーなどの無機系の染料や顔料、例えば、フタロシアニン系ブルーイング剤、縮合多環系ブルーイング剤(例えば、インジゴ系ブルーイング剤、アントラキノン系ブルーイング剤)などの有機系の染料や顔料などが挙げられる。
【0121】
ブルーイング剤として、好ましくは、縮合多環系ブルーイング剤が挙げられ、より好ましくは、アントラキノン系ブルーイング剤が挙げられる。
【0122】
アントラキノン系ブルーイング剤は、下記式(1)で示されるアントラキノン環を含有するブルーイング剤であって、特に制限されないが、例えば、下記式(2)で示される化合物などが挙げられる。
【0123】
【化1】

【0124】
【化2】

【0125】
また、このようなアントラキノン系ブルーイング剤は、市販品としても入手可能であり、そのような市販品としては、例えば、Plast Blue 8510、Plast Blue 8514、Plast Blue 8516、Plast Blue 8520、Plast Blue 8540、Plast Blue 8580、Plast Blue 8590(以上、いずれも有本化学工業社製)など、例えば、マクロレックスバイオレットB、マクロレックスバイオレット3R、マクロレックスブルーRR(以上、いずれもバイエル社製)など、例えば、ダイアレジンブルーB、ダイアレジンバイオレットD、ダイアレジンブルーJ、ダイアレジンブルーN(以上、いずれも三菱化学社製)など、例えば、スミプラストバイオレットB(住友化学工業社製)などが挙げられる。
【0126】
これらブルーイング剤として、好ましくは、Plast Blue 8510、Plast Blue 8514、Plast Blue 8516、Plast Blue 8520、Plast Blue 8540、Plast Blue 8580、Plast Blue 8590が挙げられ、より好ましくは、Plast Blue 8514が挙げられる。
【0127】
ポリウレタンエラストマーがブルーイング剤を含有する場合において、その含有割合は、ポリウレタンエラストマーの総量(ブルーイング剤を含む。)に対して、ブルーイング剤が、例えば、0.1〜5ppm、好ましくは、0.2〜3ppmである。
【0128】
なお、ポリウレタンエラストマーには、必要に応じて、他の公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、さらには、可塑剤、ブロッキング防止剤、離型剤、顔料、染料、滑剤、フィラー、加水分解防止剤、防錆剤、充填剤などを添加することができる。これら添加剤は、各成分の合成時に添加してもよく、あるいは、各成分の混合時に添加してもよい。
【0129】
酸化防止剤としては、特に制限されず、公知の酸化防止剤(例えば、BASFジャパン社製カタログに記載)が挙げられ、より具体的には、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、フォスファイト系化合物、チオエーテル系化合物などが挙げられる。
【0130】
耐熱安定剤としては、特に制限されず、公知の耐熱安定剤(例えば、BASFジャパン社製カタログに記載)が挙げられ、より具体的には、例えば、リン系加工熱安定剤、ラクトン系加工熱安定剤、イオウ系加工熱安定剤などが挙げられる。
【0131】
紫外線吸収剤としては、特に制限されず、公知の紫外線吸収剤(例えば、BASFジャパン社製カタログに記載)が挙げられ、より具体的には、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0132】
耐光安定剤としては、特に制限されず、公知の耐光安定剤(例えば、ADEKA社製カタログに記載)が挙げられ、より具体的には、例えば、ベンゾエート系光安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられる。
【0133】
これら添加剤(酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤)は、それぞれポリウレタンエラストマーに対して、例えば、0.01〜1.2質量%、好ましくは、0.1〜1質量%となる割合で、添加される。
【0134】
そして、このようにして得られるポリウレタンエラストマー(厚み200μm)の平行光線透過率は、十分な透明性を確保する観点から、例えば、90%以上、好ましくは、90.5%以上である。
【0135】
また、同様の観点から、ポリウレタンエラストマー(厚み200μm)の全光線透過率は、例えば、91%以上、好ましくは、91.5%以上であり、拡散光透過率は、例えば、2%以下、好ましくは、1.5%以下であり、ヘイズ(濁度)は、例えば、3以下、好ましくは、2以下である。
【0136】
なお、平行光線透過率(JIS K7105(光源:D65)に準拠)、全光線透過率(JIS K7361−1(光源:D65)に準拠)、拡散光透過率(JIS K7105(光源:D65)に準拠)およびヘイズ(JIS K7136(光源:D65)に準拠)は、濁度・曇り度計(例えば、Haze Meter NDH2000(日本電色工業社製)など)により測定することができる。
【0137】
また、ポリウレタンエラストマーの軟化温度は、その加工性向上の観点から、例えば、130℃以上、好ましくは、135℃以上、より好ましくは、140℃以上、通常、200℃以下である。
【0138】
また、ポリウレタンエラストマーの初期黄色度(b)は、成形品(後述)の透明性の確保、および、意匠性の観点から、例えば、0.2以下、好ましくは、0.15以下である。
【0139】
また、本発明のポリウレタンエラストマーの、耐熱試験(暴露条件:120℃、100時間)あるいは耐湿熱試験(暴露条件:70℃、95%R.H、100時間)の前後における色差(ΔE)は、例えば、0.2以下、好ましくは、0.15以下である。
【0140】
色差(ΔE)が上記範囲であると、ポリウレタンエラストマーおよび成形品(後述)の黄変性を低減でき、長期間にわたり、優れた透明性および意匠性を確保することができる。
【0141】
なお、ポリウレタンエラストマーの初期黄色度(b)、および、耐熱試験あるいは耐湿熱試験の前後における色差(ΔE)は、色彩測定器(例えば、SMカラーコンピューター SM−T(スガ試験機社製)など)により測定することができる。
【0142】
また、ポリウレタンエラストマーの屈折率は、例えば、1.500以上、好ましくは、1.510以上、より好ましくは、1.530以上である。
【0143】
屈折率が上記範囲であれば、例えば、柔軟で、屈折率が高い成形品を得ることができるため、光学特性が必要な電子・電気材料の部品として有用である。さらに、成形品の曲率を小さくすることができるため、成形品の厚みを低減することができる。
【0144】
なお、ポリウレタンエラストマーの屈折率(JIS K7105に準拠(光源:白熱灯))は、例えば、その成形品を屈折率計(例えば、アッベ屈折計1(ATAGO社製)など)により測定することにより、求めることができる。
【0145】
また、ポリウレタンエラストマーの反発弾性は、ポリウレタンエラストマーを、後述するように、導光フィルムや導光シートなどとして成形した場合において、そのクリック感触などのキー操作性を良好に保持する観点から、例えば、50%以上、好ましくは、52%以上、より好ましくは、55%以上である。
【0146】
なお、反発弾性は、JIS K−7311 ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの試験方法に準じて測定することができる。
【0147】
そして、このような本発明のポリウレタンエラストマーによれば、優れた耐熱性を確保できるとともに、タック性を抑制することができるため、優れた作業性および操作性を確保することができる。
【0148】
また、本発明のポリウレタンエラストマーは、透明性および耐黄変性に優れるため、意匠性にも優れる。
【0149】
そのため、本発明のポリウレタンエラストマーによれば、光学特性および意匠性が要求される成形品を、作業性よく形成し、使用することができる。
【0150】
そして、本発明は、上記した本発明のポリウレタンエラストマーが用いられる成形品を含んでいる。
【0151】
成形品は、例えば、上記のポリウレタンエラストマーを、公知の成形方法、例えば、特定の金型を用いた熱圧縮成形および射出成形や、シート巻き取り装置を用いた押出成形などの熱成形加工方法により、例えば、ペレット状、板状、繊維状、ストランド状、フィルム状、シート状、パイプ状、中空状、箱状などの各種形状に成形することにより、得ることができる。
【0152】
また、熱成形では、本発明の効果を損なわない範囲において、ポリウレタンエラストマーとともに、その他の樹脂を用いることができる。
【0153】
その他の樹脂としては、例えば、アイオノマー樹脂、透明性樹脂、ジエン系ブロック共重合体などが挙げられる。
【0154】
アイオノマー樹脂としては、例えば、エチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したポリマー、例えば、エチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したポリマーなどが挙げられる。
【0155】
α,β−不飽和カルボン酸としては、特に制限されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸などが挙げられる。
【0156】
これらα,β−不飽和カルボン酸は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0157】
α,β−不飽和カルボン酸として、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。
【0158】
また、α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フマル酸エステル、マレイン酸エステルなどが挙げられ、より具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸などの、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステルなどが挙げられる。
【0159】
これらα,β−不飽和カルボン酸エステルは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0160】
α,β−不飽和カルボン酸エステルとして、好ましくは、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが挙げられる。
【0161】
また、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体や、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中の、カルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンなどのアルカリ金属イオン、例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、バリウムイオン、カドミウムイオンなどの2価の金属イオン、例えば、アルミニウムイオンなどの3価の金属イオン、例えば、錫イオン、ジルコニウムイオンなどのその他のイオンなどが挙げられる。
【0162】
これら金属イオンは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0163】
金属イオンとして、反発弾性率の向上の観点から、好ましくは、ナトリウムイオン、亜鉛イオン、マグネシウムイオンが挙げられる。
【0164】
これらアイオノマー樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0165】
また、アイオノマー樹脂は、市販品としても入手可能であり、より具体的には、例えば、ハイミラン(商品名、三井デュポンポリケミカル社)、サーリン(商品名、デュポン社)などが挙げられる。
【0166】
透明性樹脂としては、特に制限されず、例えば、透明性ポリアミドエラストマー、透明性ポリエステルエラストマー、透明性ポリスチレンエラストマーなどが挙げられる。
【0167】
これら透明性樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0168】
また、透明性樹脂は、市販品としても入手可能であり、より具体的には、例えば、ペバックス(透明性ポリアミドエラストマー、商品名、アルケマ社)、ハイトレル(透明性ポリエステルエラストマー、商品名、東レ・デュポン)、ラバロン(透明性ポリスチレンエラストマー、商品名、三菱化学社)などが挙げられる。
【0169】
また、ジエン系ブロック共重合体としては、特に制限されず、公知のジエン系ブロック共重合体が挙げられる。
【0170】
これらその他の樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0171】
熱成形において、ポリウレタンエラストマーとその他の樹脂とを併用する場合には、ポリウレタンエラストマーの含有割合は、ポリウレタンエラストマーとその他の樹脂との総量に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上、より好ましくは、70質量%以上である。
【0172】
なお、このような樹脂(必須成分として、上記のポリウレタンエラストマー、任意成分として、その他の樹脂)の成形条件としては、成形温度が、例えば、150〜250℃、好ましくは、170〜240℃であり、成形圧力が、例えば、0.5〜15MPa、好ましくは、1〜10MPaである。
【0173】
成形温度および成形圧力が上記範囲であれば、透明性に優れた成形品を得ることができる。
【0174】
このようにして得られる成形品は、例えば、導光フィルム、導光シート、携帯機器のキーシート、液晶テレビやノートパソコンのバックライト用導光板、車載用の照明パネル、ヘッドランプレンズ、テールライトのランプカバー、家電用品等の光学レンズ、光ディスク、看板などの電飾、建材用途としての塗装代替フィルム、光ファイバ、雑貨および包装フィルム、合わせガラスの中間膜、航空機等の風防、家具、システムキッチンの保護フィルム、自動車等のチッピングフィルム、防犯ガラス用フィルム、大型水槽壁、透明屋根材、コンタクトレンズなど、光学特性が要求される各種分野において、好適に用いられる。
【0175】
とりわけ、成形品は、好ましくは、導光フィルムまたは導光シートとして成形され、用いられる。
【0176】
成形品が、導光フィルム、または、導光シートとして成形される場合において、その厚みは、例えば、0.5mm以下、好ましくは、0.4mm以下、より好ましくは、0.3mm以下である。なお、厚みの下限は、特に限定されないが、例えば、0.05mmである。
【0177】
そして、本発明の成形品は、本発明のポリウレタンエラストマーが用いられているため、作業性よく形成し、使用することができ、また、優れた透明性および意匠性を確保することができる。
【0178】
そのため、本発明の成形品は、とりわけ、導光フィルム、導光シートなどの光学シートとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0179】
次に、本発明を、製造例、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。また、実施例などに用いられる測定方法を、以下に示す。
(イソシアネート基末端プレポリマー溶液に含有されるイソシアネート基含量/単位:質量%)
イソシアネート基末端プレポリマー溶液のイソシアネート基含量は、電位差滴定装置を用いて、JIS K−1556に準拠したn−ジブチルアミン法により測定した。
【0180】
製造例1(1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、1,4−BIC)の製造方法)
13C−NMR測定によるトランス/シス比が85/15の1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製)を原料として、冷熱2段ホスゲン化法を加圧下で実施した。
【0181】
電磁誘導撹拌機、自動圧力調整弁、温度計、窒素導入ライン、ホスゲン導入ライン、凝縮器および原料フィードポンプを備え付けたジャケット付き加圧反応器に、オルトジクロロベンゼン2500部を仕込んだ。次いで、ホスゲン1425部をホスゲン導入ラインより加え撹拌を開始した。反応器のジャケットには冷水を通し、内温を約10℃に保った。そこへ、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン400部をオルトジクロロベンゼン2500部に溶解した溶液を、フィードポンプにて60分かけてフィードし、30℃以下、常圧下で冷ホスゲン化を実施した。フィード終了後、フラスコ内は淡褐白色スラリー状液となった。
【0182】
次いで、反応器内液を60分かけて140℃に昇温しながら、0.25MPaに加圧し、さらに反応温度140℃で2時間、熱ホスゲン化した。また、熱ホスゲン化の途中でホスゲンを480部追加した。熱ホスゲン化の過程でフラスコ内液は淡褐色澄明溶液となった。熱ホスゲン化終了後、100〜140℃で窒素ガスを100L/時で通気し、脱ガスした。
【0183】
次いで、減圧下で溶媒のオルトジクロルベンゼンを留去した後、ガラス製フラスコに、充填物(住友重機械工業株式会社製、商品名:住友/スルザーラボパッキングEX型)を4エレメント充填した蒸留管、還流比調節タイマーを装着した蒸留塔(柴田科学株式会社製、商品名:蒸留頭K型)および冷却器を装備する精留装置を用いて、138〜143℃、0.7〜1KPaの条件下、さらに還流しながら精留し、382部の1,4−BICを得た。
【0184】
得られた1,4−BICのガスクロマトグラフィー測定による純度は99.9%、APHA測定による色相は5、13C−NMR測定によるトランス/シス比は85/15であった。
【0185】
実施例1(ポリウレタンエラストマー(A)の調製)
攪拌機、温度計、還流管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、製造例1の1,4−BICを348部、数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(商品名:PTG2000SN、保土ヶ谷化学工業社製、以下、PTG2000SNと略する)を262部、数平均分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(商品名:PTG1000、保土ヶ谷化学工業社製、以下、PTG1000と略する)を258部装入した。攪拌しながら80℃に加熱し、同温度で1時間反応後、スズ系触媒液(オクチル酸第一スズ(商品名:スタノクト、APIコーポレーション社製)をジイソノニルアジペート(商品名:DINA、ジェイ・プラス社製)により4質量%に希釈)を、オクチル酸第一スズ基準で5ppm添加した。その後、イソシアネート基含量が13.5質量%になるまで同温度で反応を継続し、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーA(以下、プレポリマーAと略する)を得た。なお、この反応において、PTG2000SNおよびPTG1000の水酸基に対する、1,4−BICのイソシアネート基の当量比は、約4.6であった。
【0186】
次いで、予め、80℃に調整したプレポリマーA868部に、酸化防止剤(商品名:IRGANOX245、BASFジャパン社製)を0.3部、リン系加工熱安定剤(商品名:IRGAFOS38、BASFジャパン社製)を0.3部、紫外線吸収剤(商品名:Tinuvin234、BASFジャパン社製)を0.1部、耐光安定剤(商品名:アデカスタブLA−72、ADEKA社製)を0.1部およびアントラキノン系ブルーイング剤溶液(ブルーイング剤(商品名:Plast Blue 8514、有本化学工業社製)をDINAにより0.1質量%に希釈)をPlast Blue 8514基準で1ppm添加した混合液を、80℃に温調したステンレス容器に入れ、高速ディスパーを使用して、1000rpmの撹拌速度のもと、約3分間撹拌混合した。次いで、鎖伸長剤として、予め、1,4−ブタンジオール(三菱化学社製、1,4−BDと略する)88.5部にネオペンチルグリコール(東京化成工業社製、NPGと略する)43.9部を80℃で溶解した溶解液を添加し、80℃に温調しながら、全体が均一になるまで、さらに約10分間、十分に撹拌し、反応混合液を調製した。予め、150℃に温調したSUS製バットに反応混合液を流し込み、150℃のオーブン中で2時間、次いで100℃のオーブン中で22時間反応させ、ポリウレタンエラストマーAを合成した。その後、バットからポリウレタンエラストマーAを取り外し、室温23℃、相対湿度50%の恒温恒湿条件下にて、1日間養生した。
【0187】
得られたポリウレタンエラストマーAをベールカッターにより切断し、粉砕機にて粉砕ペレットとした。この粉砕ペレットを窒素気流下、80℃のオーブン中で一昼夜乾燥した。次いで単軸押出機(型式:SZW20−25MG、テクノベル社製)を用いて、スクリュー回転数30rpm、シリンダー温度150〜250℃の範囲でストランド成形し、ポリウレタンAのペレットを得た。得られたペレットを窒素気流下、80℃にて一昼夜乾燥した後、Tダイスを装着した単軸押出機を用いて、スクリュー回転数20rpm、シリンダー温度150〜250℃の範囲で、厚みが200μmとなるようにフィルムに成形した

【0188】
得られたフィルム(厚み200μm)を室温23℃、相対湿度50%の恒温恒湿条件下にて、7日間養生した。
【0189】
実施例2〜8および比較例1〜6
表1および表2に示す配合処方において、実施例1と同様の方法により、ポリウレタンエラストマーB〜Nを合成した。
【0190】
また、得られたポリウレタンエラストマーB〜Nを用いて、実施例1と同様の方法により、フィルム(厚み200μm)を得た。
【0191】
また、実施例3、7、比較例1、2および6で得られたポリウレタンエラストマーC、G、I、JおよびNを、窒素気流下、80℃のオーブン中で、一昼夜乾燥した後、射出成形機(型式:NEX−140,日精樹脂工業社製)を使用して、スクリュー回転数80rpm、バレル温度150〜250℃、金型温度30℃、射出時間10秒、射出速度40〜120mm/秒および冷却時間45秒の条件で、射出成形した。その後、室温23℃、相対湿度50%の恒温恒湿条件下にて、7日間養生し、ポリウレタンのシート(厚み2mm)を得た。
【0192】
なお、比較例6では、ポリイソシアネートとしてジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを用いた。ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートは、水添MDIと略する。
【0193】
また、鎖伸長剤として用いた1,3−ブタンジオール(和光純薬工業社製)、2−メチル−1,3−プロパンジオール(東京化成工業社製)および2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール(東京化成工業社製)は、それぞれ、1,3−BD、2−MPDおよび2,4−DEPDと略する。
【0194】
物性評価1
各実施例および各比較例で得られたポリウレタンエラストマーの平行光線透過率、軟化温度、黄色度およびタック性を以下の方法で測定した。その結果を表1および表2に示す。
<平行光線透過率(単位:%)>
Haze Meter(日本電色工業製、モデル:NDH 2000)を用いて、200μm厚のポリウレタンエラストマーフィルムの平行光線透過率(JIS K7105(光源:D65)に準拠)を測定した。
<軟化温度(単位:℃)>
熱機械分析計(Seiko Instruments社製、モデル:TMA/6600)を用いて、200μm厚のポリウレタンエラストマーフィルムの軟化温度をJIS K7196記載の方法で測定した。
<黄色度(b)>
SMカラーコンピューター(スガ試験機製、モデル:SM−T)を用いて、200μm厚のポリウレタンエラストマーフィルムの初期黄色度(b)を測定した。
<タック性>
フィルム成形後、室温23℃、相対湿度50%で24時間静置後、フィルム同士を重ね合わせ、1分間放置し、これを剥離する際の状態を観察して、タック性として評価した。
【0195】
なお、容易に剥離することができるものを○、粘着するが剥離することができるものを△、粘着し、剥離することができないものを×とした。
【0196】
【表1】

【0197】
【表2】

【0198】
物性評価2
実施例3、7、比較例1、2および6で得られたポリウレタンのシート(厚み2mm)の屈折率およびアッベ数を以下の方法で測定した。その結果を表3に示す。
<屈折率およびアッベ数>
射出成形により製造した10mm×20mm×2mmのポリウレタンのシートの試験片を、屈折率計(ATAGO社製、モデル:アッベ屈折計1)を用いて、屈折率およびアッベ数(JIS K7105(光源:白熱灯)に準拠)を測定した。
【0199】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートと、高分子量ポリオールと、鎖伸長剤とを、少なくとも反応させることにより得られるポリウレタンエラストマーであって、
前記ポリイソシアネートが、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含有し、
前記鎖伸長剤が、分岐状低分子量ジオールを、前記鎖伸長剤の総モル数に対して5〜45モル%の割合で含有し、
前記高分子量ポリオールの水酸基に対する、前記ポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比が、2〜6であることを特徴とする、ポリウレタンエラストマー。
【請求項2】
平行光線透過率が、90%以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項3】
軟化温度が130℃以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項4】
前記分岐状低分子量ジオールにおいて、分岐鎖の総炭素数が、1〜5であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項5】
前記分岐状低分子量ジオールが、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールおよび2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項6】
アントラキノン系ブルーイング剤を、0.1〜5ppmの割合で含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のポリウレタンエラストマーが用いられていることを特徴とする、成形品。
【請求項8】
導光フィルムとして成形されていることを特徴とする、請求項7に記載の成形品。
【請求項9】
導光シートとして成形されていることを特徴とする、請求項7に記載の成形品。


【公開番号】特開2011−236329(P2011−236329A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108905(P2010−108905)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】