説明

ポリウレタンゲル

【課題】 本発明の目的は、イオン性液体を大量にかつ液漏れなく含有させたゲルを提供することにある。
【解決手段】 オキシエチレン基の含有率が20〜90重量%であるポリウレタン樹脂(A)の成型物にイオン性液体(B)を含浸してなることを特徴とするポリウレタンゲル成型物であって、イオン性液体(B)を150〜300重量%含有する。イオン性液体(B)がイミダゾリウム塩であるポリウレタンゲル成型物が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンゲルに関する。さらに詳しくはイオン性液体を含浸したポリウレタン樹脂からなるポリウレタンゲルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イオン性液体を固体状態で安定に貯蔵してゲルを作成するためには、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体のゲル化剤を用いて固める方法等(特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−281048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の方法は時間がかかり、工程も複雑であったり、イオン性液体の含有量が少ないという問題があり、機能性の高い低分子のイオン性液体を安定かつ大量に含有させる方法とは言い難い。
本発明の目的は、イオン性液体を大量にかつ液漏れなく含有させたゲルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、オキシエチレン基の含有率が20〜90重量%であるポリウレタン樹脂(A)の成型物にイオン性液体(B)を含浸してなることを特徴とするポリウレタンゲル成型物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリウレタンゲル成型物は、下記の効果を奏する。
(1)イオン性液体を大量に含有し、液漏れがない。
(2)機械強度に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ポリウレタン樹脂(A)
(A)は、オキシエチレン基(以下OE基と記載することがある。)を20〜90重量%含有する。
(A)のオキシエチレン基の含有率(x)が20重量%未満であるとポリウレタンゲル成型物のイオン性液体の飽和体積膨張率が低下する。
(x)が90重量%を超えるとポリウレタンゲル成型物の機械強度が低下する。
(x)は30〜80重量%が好ましく、40〜70重量%がさらに好ましい。
ここでイオン性液体の飽和体積膨張率とは、下記実施例に記載されたものを言う。
【0008】
オキシエチレン基含有高分子ポリオ−ル(a)はオキシエチレン基の含有率が15〜100重量%であるものが好ましい。ここで、(a)のオキシエチレン基の含有率とは、ポリオキシエチレン(ポリエチレングリコール)のオキシエチレン基の含有率を100重量%として計算するものとする。
(a)の数平均分子量はポリウレタンゲル成型物の耐水性およびイソシアネ−ト成分(b)との反応性の観点から好ましくはMn300〜6,000、さらに好ましくはMn500〜5,000である。
(a)としては、分子側鎖に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する高分子ポリオ−ル(a1)、分子側鎖にエチレン性不飽和基を有しない高分子ポリオ−ル(a2)、(a1)および(a2)の併用が挙げられる。
【0009】
オキシエチレン基含有高分子ポリオ−ル(a)の水酸基の数は、2〜3またはそれ以上、好ましくは2〜3である。
(a1)における分子側鎖のエチレン性不飽和基の数は、少なくとも1個、後述するポリウレタンゲルの機械強度および飽和体積膨張倍率の観点から好ましくは1〜10個である。該エチレン性不飽和基としては、アリル基および/または(メタ)アクリロイル基が挙げられ、耐水性の観点から好ましいのはアリル基である。
【0010】
(a1)としては、(a11)エチレン性不飽和基含有低分子ポリオ−ル(c1)[炭素数(以下Cと略記)6〜20]のエチレンオキシド(以下EOと略記)[またはEOとアリルグリシジルエ−テル(以下AGEと略記)]付加物、(a12)2個以上の活性水素原子を含有する化合物のEO、又はAGE(またはAGEとEO)付加物、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0011】
上記エチレン性不飽和基含有低分子ポリオ−ル(c1)としては、C6〜20の、(ポリ)アリルエ−テル[グリセリン(以下GRと略記)モノアリルエ−テル、トリメチロ−ルプロパン(以下TMPと略記)モノアリルエ−テル、ペンタエリスリト−ル(以下PEと略記)モノアリルエ−テル、PEジアリルエ−テル等]、(ポリ)(メタ)アクリレ−ト[GRモノ(メタ)アクリレ−ト、TMPモノ(メタ)アクリレ−ト、PEジ(メタ)アクリレ−ト等]が挙げられる。これらのうち耐水性の観点から好ましいのはGR−およびTMPモノアリルエ−テルである。
【0012】
分子側鎖にエチレン性不飽和基を有しない高分子ポリオ−ル(a2)としては、下記(c2)エチレン性不飽和基を含有しない低分子ポリオ−ルのEO付加物が挙げられる。
【0013】
低分子ポリオ−ル(c)とは、数平均分子量(以下Mnと記載。)300未満のものを言うものとする。(c)としては以下のものが挙げられる。
(c1)エチレン性不飽和基含有低分子ポリオ−ル[炭素数(以下Cと略記)6〜20]は上記に記載の通りである。
(c2)エチレン性不飽和基を含有しない低分子ポリオ−ル[炭素数(以下Cと略記)6〜20]は以下に記載の通りである。
【0014】
(c21)非フェノ−ル性低分子ポリオ−ル
C2〜20またはそれ以上の2価アルコ−ル、例えばC2〜12の脂肪族2価アルコ−ル[(ジ)アルキレングリコ−ル、例えばエチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、1,2−、2,3−、1,3−および1,4−ブタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ルおよび3−メチルペンタンジオ−ル(以下それぞれEG、DEG、PG、DPG、BD、HD、NPGおよびMPDと略記)、ドデカンジオ−ル等]、C6〜10の脂環含有2価アルコ−ル[1,4−シクロヘキサンジオ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル等]、C8〜20の芳香脂肪族2価アルコ−ル[キシリレングリコ−ル、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等];3価〜8価またはそれ以上の多価アルコ−ル、例えば(シクロ)アルカンポリオ−ルおよびそれらの分子内もしくは分子間脱水物[GR、TMP、PE、ソルビト−ル(以下SOと略記)およびジペンタエリスリト−ル(以下DPEと略記)、1,2,6−ヘキサントリオ−ル、エリスリト−ル、シクロヘキサントリオ−ル、マンニト−ル、キシリト−ル、ソルビタン、ジGRその他のポリGR等]、糖類およびその誘導体[例えばショ糖、グルコ−ス、フラクト−ス、マンノ−ス、ラクト−ス、およびグリコシド(メチルグルコシド等)]等。
【0015】
(c22)多価フェノ−ル
C6〜18の2価フェノ−ル、例えば単環2価フェノ−ル(ハイドロキノン、カテコ−ル、レゾルシノ−ル、ウルシオ−ル等)、ビスフェノ−ル(ビスフェノ−ルA、−F、−C、−B、−ADおよび−S、ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン等)、および縮合多環2価フェノ−ル[ジヒドロキシナフタレン(1,5−ジヒドロキシナフタレン等)、ビナフト−ル等];並びに3価〜8価またはそれ以上の多価フェノ−ル、例えば単環多価フェノ−ル(ピロガロ−ル、フロログルシノ−ル、および1価もしくは2価フェノ−ル(フェノ−ル、クレゾ−ル、キシレノ−ル、レゾルシノ−ル等)のアルデヒドもしくはケトン(ホルムアルデヒド、グルタ−ルアルデヒド、グリオキザ−ル、アセトン)低縮合物(フェノ−ルもしくはクレゾ−ルノボラック樹脂、レゾ−ルの中間体、フェノ−ルとグリオキザ−ルもしくはグルタ−ルアルデヒドの縮合反応によって得られるポリフェノ−ル、およびレゾルシンとアセトンの縮合反応によって得られるポリフェノ−ル)
【0016】
オキシエチレン基含有高分子ポリオ−ル(a)を構成する高分子ポリオール分子中における該オキシエチレン基の含有形態は、ブロック状および/またはランダム状のいずれでもよいが、後述するイオン性液体の貯蔵率の観点から好ましいのはブロック状である。
【0017】
イソシアネート(b)には、以下のポリ(n=2〜3、好ましくは2)イソシアネートが含まれる。
(b1)芳香族ポリイソシアネート
C(NCO基中の炭素を除く、以下同様。)6〜20、例えばトリレンジイソシアネート(ジイソシアネートは以下においてDIと略記)(TDI)、4,4’−および/または2,4’−ジフェニルメタンDI(MDI)、ナフチレンDI(NDI);
(b2)芳香脂肪族ポリイソシアネート
C8〜15、例えばジエチルベンゼンDI、m−および/またはp−キシリレンDI(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンDI(TMXDI);
(b3)脂肪族ポリイソシアネート
C2〜18、例えばエチレンDI、テトラメチレンDI、ヘキサメチレンDI(HDI)、ドデカメチレンDI、2,2,4−トリメチルヘキサンDI、リジンDI、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート;
(b4)脂環式ポリイソシアネート
C4〜15、例えばイソホロンDI(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−DI(水添MDI)、シクロヘキサンDI、メチルシクロヘキサンDI(水添TDI)、ビス(2−イソシアネートエチル)4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート;
(b5)上記(b1)〜(b4)のポリイソシアネートの変性(カーボジイミド変性、ウレトジオン変性、ウレトイミン変性、ウレア変性、ビューレット変性、イソシアヌレート変性等)物。
これらのうち耐水性の観点から好ましいのは、(b4)、さらに好ましいのは脂環式DI、とくに好ましいのはIPDIおよび水添MDIである。
【0018】
ポリウレタン樹脂(A)におけるポリオール成分[高分子ポリオ−ル(a)及び低分子ポリオ−ル(c)]の合計重量に基づくエチレン性不飽和基濃度は、後述するポリウレタンゲル成型物の機械強度およびポリウレタンゲル成型物のイオン性液体貯蔵率の観点から好ましくは0〜1当量/1000g、さらに好ましくは0.1〜0.5当量/1000gである。
【0019】
ポリウレタン樹脂(A)はオキシエチレン基含有高分子ポリオ−ル(a)とポリイソシアネ−ト(b)を成分として、必要に応じて低分子ポリオ−ル(c)を反応して得ることができる。
(A)の製造方法としては例えば以下の方法が挙げられる。
(1)(a)と(b)、必要に応じて(c)を一括に仕込んで反応し、(A)を得る方法。
(2)(a)と(b)を反応させてイソシアネ−ト基を有するウレタンプレポリマーを製造し、(a)、(c)、又は(a)と(c)の混合物と該ウレタンプレポリマーを反応し、(A)を得る方法。
(3)(a)と(b)を反応させてイソシアネ−ト基を有するウレタンプレポリマーを製造し、該ウレタンプレポリマーを(c)で伸長反応させて、(A)を得る方法。
これらの中で(2)の方法が好ましい。
上記(2)の方法を詳述する。オキシエチレン基含有高分子ポリオ−ル(a)とポリイソシアネ−ト(b)を成分として公知の方法でプレポリマーを製造し、これを主剤成分とする。(a)、(c)、又は(a)と(c)の混合物に触媒、酸化防止剤等の添加剤を予め混合したものを硬化剤成分とする。上記主剤成分と硬化剤成分を2液混合注型機にて混合し、両成分を金型に注型して、ポリウレタンゲルの成型物を得る。主剤のイソシアネート基に対する硬化剤の活性水素含有基の当量比は、通常0.7〜1.5、好ましくは0.9〜1.3である。
ポリウレタン樹脂(A)を架橋する場合は、(a)及び/又は(c)はエチレン性不飽和基を有するものを使用し、架橋剤を硬化剤成分に配合させることが好ましい。
【0020】
ポリウレタン樹脂(A)の製造に際して、イソシアネート(b)とポリオールとの反応割合[NCO/OH当量比]は、後述するポリウレタンゲルの機械強度および水膨張性シール材製造時の押出成形性の観点から好ましくは0.8/1〜1.0/1、さらに好ましくは0.9/1〜0.98/1である。該反応割合は、最終的にポリウレタン樹脂(A)を得るためのポリオール、(b)各成分のトータルの反応割合であり、後述する製造方法(ワンショット法またはプレポリマー法)の違いで通常変わることはない。
【0021】
該(A)の製造方法としては、ポリウレタン樹脂を製造するのに通常用いられる方法(ワンショット法、プレポリマー法等)が挙げられ、これらのうち、(A)の品質のばらつきが少ない観点から好ましいのはプレポリマー法である。次にプレポリマー法による(A)、並びに(A)と(B)からなるポリウレタンゲルの製造方法を例示する。
【0022】
まず、ポリオールの一部とイソシアネート成分(b)を、好ましくは1.2/1〜10/1のNCO/OH当量比にて、70〜150℃で常法によりウレタン化反応させてNCO基両末端プレポリマーを得る。該プレポリマー中のNCO基含有量(重量%)は、ポリウレタン樹脂の分子量分布のシャープ化および高分子量化の観点から、好ましくは2〜15%、さらに好ましくは3〜10%である。
次に、連続して送液できるポンプ付きの2つの耐圧反応槽(I)、2つの反応槽(I)から送液されてきた各成分を連続的に混合するミキサー部(II)、および(II)で混合した液を吐出する吐出部(III)を備えた連続混合装置を用いて、(I)の耐圧反応槽の一方には、上記プレポリマーを仕込み、もう一方の反応槽には上記ポリオールの残部を仕込み、減圧後、さらに窒素置換した後、所望の温度に調整する。
【0023】
調整した2液はミキサー部(II)に連続的に供給し混合する。該プレポリマーとポリオールの残部との送液比[NCO/OH当量比]は、上述のとおり最終的にポリウレタン樹脂(A)を得るためのポリオール、(b)各成分のトータルの反応割合が好ましくは0.8/1〜1.0/1、さらに好ましくは0.9/1〜0.98/1となるような比率とし、送液速度はウレタン化の反応速度およびミキサー部での混合性の観点から好ましくは1〜50kg/分、さらに好ましくは5〜20kg/分で行う。
ミキサー部(II)で混合された液は連続的に吐出部(III)に供給されるため、予め吐出口に、金属製の金型を取り付け、供給されてきた混合液を受ける。受けた混合液は、密閉後、硬化炉にて、好ましくは50〜100℃、さらに好ましくは60〜90℃で、0.5〜10時間硬化させることによりポリウレタン樹脂(A)成型物が得られる。
【0024】
ポリウレタン樹脂(A)のムーニー粘度[単位:ML(1+4)100℃]は、後述の水膨張性シール材の水膨張後の機械強度および製造時の押出成形性の観点から好ましくは30〜70、さらに好ましくは35〜65である。ここにおいてムーニー粘度は、後述する試験法に準じて測定して得られる値である。
【0025】
ポリウレタン樹脂(A)の製造に際しては、必要により種々のウレタン化反応触媒を使用することができる。
該触媒としては、3級アミン[C6〜20、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチルモルホリン、ジメチルアミノメチルフェノール、N−メチル−N−ジメチルアミノエチルピペラジン、ピリジン等]およびこれらの酸ブロック化合物、カルボン酸(C2〜20)の金属塩(酢酸ナトリウム、オクチル酸鉛、オクチル酸亜鉛、オクチル酸鉄、オクチル酸ビスマス、ナフテン酸鉄、ナフテン酸コバルト、スタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート等)、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルコキシドまたはフェノキシド(C1〜12、例えばナトリウムメトキシド、ナトリウムフェノキシド)、4級アンモニウム塩(C4〜12、例えばテトラエチルヒドロキシルアンモニウム)、イミダゾール化合物(C3〜12、例えばイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール)、キレート金属塩(C5〜20、例えばアセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトン鉄)、およびスズ、アンチモン等の金属を含有する有機金属化合物(C3〜30、例えばテトラフェニルスズ、トリブチルアンチモンオキサイド)等が挙げられる。これらの触媒は、単独で、または併用して使用することができる。
ウレタン化反応触媒の使用量は、(A)の重量に基づいて通常5%以下、好ましくは0.001〜3%である。
【0026】
架橋剤としては、通常ゴムの加硫に用いられるものでよく、イオウ、塩化イオウ、有機過酸化物(C4〜24、例えばベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、ラウリルパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチルベンゼンパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオクトエート)、オキシム(C6〜20、例えばp−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム)、金属酸化物(マグネシア、リサージ等)、アルキルフェノール樹脂〔商品名「タッキロール201」[田岡化学工業(株)製]等〕、ポリチオール化合物[TMPトリチオグリコレート、TMPトリ(3−メルカプトプロピオネート)、グリコールジメルカプトプロピオネート、グリコールジメルカプトアセテート、PEテトラチオグリコレート、ジPEヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)等]、ポリアミン化合物(アルデヒド−アミン縮合物、グアニジン化合物等)、アゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリル、2−t−ブチルアゾ−2−シアノ−4−メチルペンタン、4−t−ブチルアゾ−4−シアノ−吉草酸等)等が挙げられる。 これらの架橋剤は1種または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。これらの架橋剤のうち、取り扱いの容易さ等工業上の観点から好ましいのは硫黄、硫黄と他の架橋剤との併用および過酸化物、さらに好ましいのは硫黄である。
【0027】
本発明のポリウレタン樹脂成型物は、例えばバンバリーミキサーまたはニーダーを用いて、ポリウレタン樹脂(A)に架橋剤を混練し、押出成形またはプレス成形することにより得られる。
成形温度は架橋剤の種類により設定されるが、架橋時間の短縮およびポリウレタン樹脂成型物の機械強度の観点から好ましくは140〜200℃である。
【0028】
イオン性液体(B)
本発明において用いられるイオン性液体(B)とは、100℃以下の温度で液状になる物をいうものとするが、50℃以下の温度で液状になる物が好ましい。
【0029】
イオン性液体(B)は、カチオン成分とアニオン成分とから形成されている。このイオン性液体(B)を形成するカチオン成分としては、特に制限はないが、イオン性液体の化学的安定性および導電性を高める観点から、各種4級窒素を含むカチオンを用いることが好ましい。たとえば、アンモニウムおよびその誘導体、イミダゾリウムおよびその誘導体、イミダゾリニウムおよびその誘導体、ピリジニウムおよびその誘導体、ピロリジニウムおよびその誘導体、ピロリニウムおよびその誘導体、ピラジニウムおよびその誘導体、ピリミジニウムおよびその誘導体、トリアゾニウムおよびその誘導体、トリアジニウムおよびその誘導体、トリアジン誘導体カチオン、キノリニウムおよびその誘導体、イソキノリニウムおよびその誘導体、インドリニウムおよびその誘導体、キノキサリニウムおよびその誘導体、ピペラジニウムおよびその誘導体、オキサゾリニウムおよびその誘導体、チアゾリニウムおよびその誘導体、モルフォリニウムおよびその誘導体ならびにピペラジンおよびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種類を用いることが好ましい。それ以外のカチオン成分としては、ホスホニウム(テトラアルキルホスホニウム、テトラアリールホスホニウム等)スルホニウム(トリアルキルスルホニウム、トリアリールスルホニウム等)などが挙げられる。
上記のカチオン成分のなかでイミダゾリウムおよびその誘導体がさらに好ましい。
ここで、誘導体とは、その基本形となる化合物において置換可能な水素原子のうち少なくとも1つを、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、エ−テル基、エステル基、アシル基またはアミノ基などの置換基に置換した化合物をいう。
【0030】
このイオン性液体(B)を形成するアニオン成分としては、BF4-、PF6-、PCl-、BCl-、AsF6-、SbF6-、AlF-,AlCl4-、NbF6-、HSO4-、ClO4-、CH3SO3-、FeCl-、FeBr-、CHCOO-,Ph(COOH)COO-、(CPO-,HC(NH)(R)COO-(Rは炭素数1〜6のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、芳香族基、アミド基、水素原子)、N(CN)-、N(SO-、C(CN)-、Cl-、Br-、I-、F(HF)-(当該式中、nは1以上4以下の数値を表す)、N(RfSO-、C(RfSO-、RfSO-、RfCO-、ROSO-等のアニオンを用いることができる。N(RfSO-、C(RfSO-、RfSO-、又はRfCO-で表されるアニオンに含まれるRfは炭素数1〜12のフルオロアルキル基を表し、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル及びナノフルオロブチルなどが挙げられる。ROSO-に含まれるRは炭素数1〜12のアルキル基を表す。
これらのなかで好ましいものはBF4-、PF6-、ROSO-、AlCl4-である。
【0031】
イオン性液体(B)として好ましいものを例示すると、以下のイオン性液体が挙げられる。
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレ−ト、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレ−ト、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレ−ト、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレ−ト、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスホネ−ト、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスホネ−ト、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメチルサルフェ−ト、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメチルサルフェ−ト、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムエチルサルフェ−ト、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムエチルサルフェ−ト、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラクロロアルミネ−ト、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラクロロアルミネ−ト等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、これらのうち、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレ−ト、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレ−トが特に好ましい。
【0032】
ポリウレタン樹脂成型物の重量に対して、イオン性液体(B)を100〜500重量%含有するのが好ましく、150〜300重量%含有するのがさらに好ましい。
【0033】
ポリウレタン樹脂(A)にイオン性液体(B)を含浸してポリウレタンゲルを得る方法は、(A)と(B)を接触させて(A)に(B)を含浸させる方法ならば特に限定されることはないが、例えば、ポリウレタン樹脂(A)の成型物全体又は一部をイオン性液体(B)中に浸し、浸漬させることでウレタン樹脂にイオン性液体を含浸させる方法が挙げられる。浸漬温度は好ましくは0〜50℃、より好ましくは常温(10〜40℃)である。浸漬時間は好ましくは1日〜7日、より好ましくは1日から3日間である。浸漬する雰囲気の圧力は大気圧下0.1MPaである。
【0034】
以下実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の部は重量部、%は重量%を表す。
【0035】
実施例および比較例に使用した原料の組成、記号等は次の通りである。
高分子ポリオール(a2−1) : ビスフェノールAのEO/PO(重量比30/70)ランダム付加物(Mn5,100)オキシエチレン基の含有率20%水酸基価は22mgKOH/g
高分子ポリオール(a2−2) : ビスフェノールAのEO/PO(重量比70/30)ランダム付加物(Mn4,000)オキシエチレン基の含有率60%水酸基価は28mgKOH/g
高分子ポリオール(a2−3) : ビスフェノールAのEO/PO(重量比80/20)ランダム付加物(Mn4,000)オキシエチレン基の含有率80%水酸基価は28mgKOH/g
高分子ポリオール(a2−4) : ポリエチレングリコール(Mn1,500)オキシエチレン基の含有率100%水酸基価は75mgKOH/g
ポリイソシアネート(b−1) : 3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシル=イソシアネート(イソフォロンジイソシアネート、IPDIと略記)
触媒(1) : オクチル酸鉛
架橋剤(1) : 硫黄
イオン性液体(B−1) : 1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレ−ト融点14.6℃[関東化学(株)製]
イオン性液体(B−2) : 1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメチルサルフォネート融点−10.0℃[関東化学(株)製]
イオン性液体(B−3) : トリヘキシルテトラデシルホスホニウムテトラフルオロボレート融点17.0℃[関東化学(株)製]
【0036】
製造例1
十分に乾燥した耐圧反応容器にDEG53部、水酸化カリウム2部を仕込み、密閉した後、120℃で減圧脱水を行い、水分0.05%以下であることを確認した。減圧下、容器内温度を95℃まで冷却してから、EO500部を90〜100℃の範囲で容器底部から導入し、2時間、90〜100℃で反応させた。容器内を減圧にした後、AGE114部を90〜100℃の範囲で容器底部から導入して2時間、90〜100℃で反応させた。容器内を減圧にした後、さらにPO333部を90〜100℃の範囲で容器底部から導入して2時間90〜100℃で反応させた(ブロック付加)。70℃まで冷却した後、反応容器上部から窒素を吹き込み、気相酸素濃度0%の雰囲気下、反応生成物の1%の水を加えて撹拌、混合した。次いでキョーワード600[商品名、協和化学工業(株)製。以下同じ。]5部を加えて70〜80℃で撹拌混合して水酸化カリウム触媒を吸着処理し、窒素加圧下(気相酸素濃度0%)でろ過、除去した。ろ液に2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(酸化防止剤)0.5部を添加し、気相酸素濃度0%で加熱して95〜105℃とし、その後減圧脱水した。水分が0.05%になった時点で直ちに冷却し、分子側鎖に2個のエチレン性不飽和基を有する高分子ポリオール(a1−1)を得た。(a1−1)の水酸基価は60mgKOH/g(以下、数値のみを示す。)であった。
【0037】
製造例2
十分に乾燥した耐圧反応容器にDEG53部、水酸化カリウム2部を仕込み、密閉した後、120℃で減圧脱水を行い、水分0.05%以下であることを確認した。減圧下、容器内温度を95℃まで冷却してから、予め混合したEO750部、PO83部、AGE114部の混合物を、90〜100℃の範囲で容器底部から導入し、2時間、90〜100℃で反応させた(ランダム付加)。70℃まで冷却した後は、製造例1と同様に行い、分子側鎖に2個のエチレン性不飽和基を有する高分子ポリオール(a1−2)を得た。(a1−2)の水酸基価は70であった。
【0038】
表1に示す原料(高分子ポリオール、イソシアネート)を窒素雰囲気下120℃で3時間反応させてプレポリマー成分(主剤成分)を得た。次いで表1に示す原料(高分子ポリオール、触媒、架橋剤)を混合して硬化剤成分を得た。
上記主剤成分と硬化剤成分を2液混合注型機(兵神装備社製)にて混合し、両成分を金型に注型して、ポリウレタン樹脂成型物(寸法200×200×20mm)を得た。主剤のイソシアネート基に対する硬化剤の活性水素含有基の当量比は、0.98であった。
【0039】
実施例1〜10
(イオン性液体のポリウレタン基材への含浸)
上述によって作製したウレタン樹脂成型物5をスライサー(リーダー社製)にてシート状[タテ×ヨコ×厚さ=100×100×2mm]に裁断し、ガラス容器中に保存したイオン性液体(B)1000ml中に静置し、室温(25℃)にて3日間浸漬させることでウレタン樹脂にイオン性液体を含浸させ、ポリウレタンゲル成型物とした。
【0040】
比較例1
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレ−トを、ゲル化剤としてポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体を溶解させたテトラヒドロフラン溶液を用いてゲル化させ、ゲル状組成物を得た。ゲル化条件は、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレ−ト、10mlに対するゲル化剤の質量濃度を1.2gとなるようにし、還流冷却器を取り付けた反応器中、60℃で3時間加熱し均一溶液を得た。テトラヒドロフランを蒸発させてゲル状組成物からなる成型物を得た。
【0041】
比較例2
まず、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレ−ト10mlに触媒のジブチル錫ジラウリン酸を100ppm添加した後、ポリオキシエチレングリセリン(分子量1200)を混合し、次いでモル比で1:1でとなるようにトリレンジイソシアネートを加え混合液を調製した。ポリオキシエチレングリセリンとトリレンジイソシアネートとの合計量が液に対して6wt%になるように混合した。そして、上記混合液を80℃の温度で30分間静置することにより、ゲル状成型物を得た。
評価を行った。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1の結果から、本発明のポリウレタンゲルは比較のものに比べ液漏れ性が無く、高い飽和体積膨張倍率と機械強度(A硬度)および電導度(交流インピーダンス法)を示し、優れた基材であることがわかる。
【0044】
<性能評価方法>
<1.A硬度の測定方法>
JISK6253記載の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」に従い、上記で得られた2mm厚シートを4枚重ねて、タイプAデュロメータで測定した。
【0045】
<2.電導度の測定方法>
ポリウレタンゲル成型物について[タテ×ヨコ×厚さ=100×100×2.0mm]、JIS 7204に従い、「高抵抗率計 ハイレスターUP」または「低抵抗率計 ローレスターGP」[機器名、いずれも三菱化学(株)製]を用い、「ハイレスターUP」では印加電圧500V、 1分、「ローレスターGP」では印加電圧90V、15秒の条件で測定される表面固有抵抗値で評価した。
【0046】
<3.飽和体積膨張倍率の測定方法>
ポリウレタン樹脂から20×20×2mmの試験片を採取し、この試験片を25℃のイオン性液体中に浸漬した際の体積を一定期間毎に測定し(液浸法)、次式にて体積膨張倍率を算出し、1日当たりの体積膨張倍率の増加量が0.01%以下となった時点での体積膨張倍率を試験片の飽和体積膨張倍率とした。
体積膨張倍率(倍)=イオン性液体浸漬後の体積/イオン性液体浸漬前の体積
【0047】
<4.液漏れ試験の試験方法>
イオン性液体を浸漬させたポリウレタンゲル20×20×2mmの試験片に万力を用いて圧力5MPaをかけて、圧力をかけた前後で重量の変化がないことで確認した。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のポリウレタンゲルは放熱シ−ト、電磁波シ−ルド、アクチュエ−ター用基材、衝撃吸収用素子、電池材料、導電性を必要とする各種材料分野で幅広く適用できるほか、燃料電池用等のプロトン伝導媒体にも適用でき極めて有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシエチレン基の含有率が20〜90重量%であるポリウレタン樹脂(A)の成型物にイオン性液体(B)を含浸してなることを特徴とするポリウレタンゲル成型物。
【請求項2】
イオン性液体(B)を150〜300重量%含有する請求項1に記載のポリウレタンゲル成型物。
【請求項3】
イオン性液体(B)がイミダゾリウム塩である請求項1又は2に記載のポリウレタンゲル成型物。
【請求項4】
オキシエチレン基含有高分子ポリオ−ル(a)とポリイソシアネ−ト(b)を必須成分として反応、成形して、オキシエチレン基の含有率が20〜90重量%であるポリウレタン樹脂(A)からなる成型物を製造し、該ポリウレタン樹脂(A)成型物にイオン性液体(B)を含浸してポリウレタンゲル成型物を得ることを特徴とするポリウレタンゲル成型物の製造方法。
【請求項5】
ポリオール成分がエチレン性不飽和基を有し、ポリウレタン樹脂(A)からなる成型物を製造する際に架橋反応を行う請求項4に記載のポリウレタンゲル成型物の製造方法。


【公開番号】特開2011−57919(P2011−57919A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211490(P2009−211490)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】