説明

ポリウレタンフォームローラの製造方法

【課題】内層と外層の境界部分が連続したセル構造を有し層間剥離等の問題がない二層のポリウレタンフォーム層を有するローラの提供。
【解決手段】円筒状部材1、上駒部材と下駒部材4を備えたローラ成型用金型と、発泡材料受け部5とを有する発泡成形装置を用いて、芯金2を上駒部材と下駒部材4で保持した状態で、発泡材料受け部5内に2種類のポリウレタン発泡材料をそれぞれ下層と上層に分離配置した後に該発泡材料受け部5を該下駒部材4に結合する工程、上層のポリウレタン発泡材料8をローラ成型用金型内に発泡注入させて円筒状部材1の内壁面にポリウレタンフォーム層の外層を形成する工程、次いで下層のポリウレタン発泡材料7を前記ローラ成型用金型内に発泡注入させて前記芯金2と前記外層との間にポリウレタンフォーム層の内層を形成する工程、によってポリウレタンフォームローラを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機などに用いられる、芯金とこの芯金の外周面に形成された二層のポリウレタンフォーム層を有するポリウレタンフォームローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写装置や画像記録装置、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられる現像ローラ、帯電ローラ、トナー供給ローラ、転写ローラ、クリーニングローラなどには、金属等の軸芯体の外周上に弾性・導電性・通気性など機能を持たせた種々の材料を配置した弾性ローラが使用されている。
【0003】
例えば、感光体ドラム上に形成した静電潜像を現像する現像装置においては、現像ローラに対してトナーの供給や掻き取りをして、現像ローラ上に均一にトナーを供給する機能を有するトナー供給ローラが用いられている。また、トナー供給ローラは、適切な柔軟性と良好な表面セル開口が要求されることからポリウレタンフォームローラが一般的に使用されている。
【0004】
トナー供給ローラのトナー供給性能や掻取り性能は、弾性層の表面平滑性や硬度等の特性に大きく影響し、良好な画像を得るためには、これらの特性が非常に重要である。例えば、特許文献1や特許文献2は、発泡弾性層表面の平均セル径やセル数、セル間の壁の厚み等をコントロールして、トナーの劣化や現像ローラ表面へ残存するトナーの掻き取り不足を発生させないトナー供給ローラを提案している。また発泡弾性層の密度や通気性を規制し、発泡弾性層内部へのトナーの入り込みを軽減することで、長期使用による発泡弾性層の高硬度化を防止して、適切な柔軟性を保つことができるトナー供給ローラを提案している。
【0005】
また、トナー供給ローラの発泡弾性層は、表面と内部のセル構造も重要であり、それぞれをバランスよく十分に満足させるために、内層と外層が異なったセル構造で構成された複層構造の発泡弾性層を有するトナー供給ローラが検討されている。例えば、特許文献3は、先ず、内層を与える大きさの成形キャビティを有する第一の成形型を用いて芯金の外周に内層を有するローラを形成し、次いで外層を与える大きさの成形キャビティを有する第二の成形型を用いて、この成形キャビティ内に、前記内層付きローラを配置する一方、所定のポリウレタン原料を導入して発泡成形せしめることにより、内層の周りに外層を一体的に形成する製造方法を提案している。しかしながら、内層付きローラの外周に外層を発泡成形する際に、内層内部のエアーが外層部に入り込み、ボイドやエアーだまり等の発泡欠陥を招く場合があり、さらには、内層表面に外層材料が入り込むことで、両層間の硬度が高くなり、ウレタンフォーム層としての柔軟性に欠けるという問題がある。
【0006】
また、特許文献4は、別途に作製されたスポンジブロックから内層と外層の材料をそれぞれ切り出して内層と外層を形成し、それら層間を接着剤で接合してトナー供給ローラを製造する方法を提案している。しかし、この製法には、接着剤による二層構造の形成が極めて面倒となることに加えて、長期使用による層間剥離という問題も内在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−292909号公報
【特許文献2】特開2001−290363号公報
【特許文献3】特開2000−104728号公報
【特許文献4】特開平7−036273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ポリウレタンフォーム層の内層と外層の境界部分のセルが、連続したセル構造に形成され、層間剥離等の問題がない二層のポリウレタンフォーム層を有するポリウレタンフォームローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的は以下の本発明〔1〕〜〔4〕によって達成される。
〔1〕円筒状部材と、芯金の保持部を有する上駒部材と、芯金の保持部と発泡材料の注入孔を有する下駒部材とで形成されたローラ成型用金型と、該下駒部材に着脱可能な発泡材料受け部とを有する発泡成形装置を用いて、該芯金の外周面にポリウレタンフォーム層を形成するポリウレタンフォームローラの製造方法において、芯金を上駒部材と下駒部材で保持した状態で、発泡材料受け部内に2種類のポリウレタン発泡材料をそれぞれ下層と上層に分離配置した後に該発泡材料受け部を該下駒部材に結合する工程、上層のポリウレタン発泡材料をローラ成型用金型内に発泡注入させて円筒状部材の内壁面にポリウレタンフォーム層の外層を形成する工程、次いで下層のポリウレタン発泡材料を前記ローラ成型用金型内に発泡注入させて前記芯金と前記外層との間にポリウレタンフォーム層の内層を形成する工程、によって前記内層と前記外層の境界部分のセルが、内層から外層に向けて連続したセル構造を有することを特徴とするポリウレタンフォームローラの製造方法。
〔2〕前記上層のポリウレタン発泡材料のクリームタイムAと、前記下層のポリウレタン発泡材料のクリームタイムBが、A≦Bの関係を満たすことを特徴とする前記〔1〕に記載のポリウレタンフォームローラの製造方法。
〔3〕前記上層のポリウレタン発泡材料のクリームタイムAが5〜20秒であることを特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載のポリウレタンフォームローラの製造方法。
〔4〕前記上層のポリウレタン発泡材料のクリームタイムAと、前記下層のポリウレタン発泡材料のクリームタイムBが、0<B−A≦10(秒)の関係を満たすことを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のポリウレタンフォームローラの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリウレタンフォーム層の内層と外層の境界部分のセルが、連続したセル構造に形成され、層間剥離等の問題がない二層のポリウレタンフォーム層を有するポリウレタンフォームローラを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来のローラ成型用金型の概略図である
【図2】本発明の製造手順を示す図である
【図3】本発明の材料発泡状態を説明する図である
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な一実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明は、円筒状部材と、芯金の保持部を有する上駒部材と、芯金の保持部と発泡材料の注入孔を有する下駒部材とで形成されたローラ成型用金型と、該下駒部材に着脱可能な発泡材料受け部とを有する発泡成形装置を用いて、該芯金の外周面にポリウレタンフォーム層を形成するポリウレタンフォームローラの製造方法において、芯金を上駒部材と下駒部材で保持した状態で、発泡材料受け部内に2種類のポリウレタン発泡材料をそれぞれ下層と上層に分離配置した後に該発泡材料受け部を該下駒部材に結合する工程、上層のポリウレタン発泡材料をローラ成型用金型内に発泡注入させて円筒状部材の内壁面にポリウレタンフォーム層の外層を形成する工程、次いで下層のポリウレタン発泡材料を前記ローラ成型用金型内に発泡注入させて前記芯金と前記外層との間にポリウレタンフォーム層の内層を形成する工程、によって前記内層と前記外層の境界部分のセルが、内層から外層に向けて連続したセル構造を有することを特徴とするポリウレタンフォームローラの製造方法である。
【0013】
(ローラ成形用金型)
本発明における発泡成形装置は、図1に示すように、円筒状部材1と芯金2の保持部を有する上駒部材3と下駒部材4で形成されたローラ成型用金型と、注型機より吐出された発泡材料を受ける発泡材料受け部5を下駒部材に嵌合連結させ、下駒部材の注入孔6より発泡材料を注入する構造である。
【0014】
ローラ成型用金型の各部材としては、特に限定されず、鉄などの鋼材にニッケルやクロムなどのメッキを施した金属部材、鉄、銅、アルミニウム、ステンレス鋼などの金属部材のほか、ポリカーボネート、ポリアミドなどの合成樹脂やセラミックなどを適宜使用することができる。
【0015】
円筒状部材の内径は、金型から成形品を抜き出した状態で、表面の研磨・研削を不要とする場合はより高い精度を必要とするが、後工程で表面研磨・研削をして所望精度を出す場合は高い精度を必ずしも必要としない。
【0016】
(発泡材料)
ポリウレタンフォーム層を形成するための原料は、ポリオール、ポリイソシアネート、触媒および整泡剤等を含むポリウレタン原料である。
【0017】
ポリオールとしては特に制限は無く、ポリウレタンフォームの原料として、従来公知の各種ポリオールの中から適宜選択して使用することが出来る。例えば、一般に軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられているポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール等の、公知のポリオール類の中から適宜選択して使用することができ、一種で又は二種以上を組み合せて用いることができる。
【0018】
なお、上記ポリオールのうち、ポリエーテルポリオールは、耐湿熱耐久性に優れた軟質高弾性ポリウレタンフォームを製造するのに好適である。また、あらかじめポリイソシアネートと重合させたプレポリマーをポリオールとして用いても差し支えない。
【0019】
また、ポリイソシアネートとしては特に制限は無く、ポリウレタンフォームの原料として従来公知の各種ポリイソシアネートの中から、適宜選択して使用することが出来る。例えば以下の化合物を単独で、又は二種以上を組み合せて用いることができる。2、4−および2、6−トリレンジイソシアネート(TDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、4、4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、およびカーボジイミド変成MDI、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ポリメリックポリイソシアネート等。なお、ポリイソシアネートを公知の活性水素化合物の1種または2種以上と反応させることにより得られるイソシアネート基末端プレポリマーも、ポリイソシアネートとして使用することができる。
【0020】
必要に応じて適宜使用可能なその他のポリウレタンフォーム用原料としては、以下のものが挙げられる。
【0021】
触媒としては特に制限は無く、従来公知の各種触媒の中から適宜選択して使用することが出来る。トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、ビス(ジメチルアミノ)エチルエーテル等、ポリウレタンフォーム製造の分野で従来公知の触媒が使用できる。
【0022】
整泡剤としては特に制限は無く、ポリウレタンフォーム製造の分野で従来公知の各種整泡剤の中から適宜選択して使用することが出来る。例えば、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のSRX−274C、L−5309、L−520等(いずれも商品名)のシリコーン系界面活性剤が使用できる。
【0023】
また、これらポリオール成分とポリイソシアネート成分とが配合されてなるポリウレタン原料には更に、従来と同様に架橋剤、発泡剤(水、低沸点物、ガス体等)、破泡剤等を添加することができる。このとき、目標とする発泡成形後のポリウレタンフォーム層の構造、即ち、連続気泡型若しくは独立気泡型の何れか一方を生ぜしめ易い公知の配合となるように添加されて、反応性の発泡原料とされる。また、そのような原料には必要に応じて所望の導電性を付与するための導電性付与剤や帯電防止剤等も、従来と同様に公知のものが添加される。導電付与剤は公知の物を使用することができ、例えば、カーボンブラック、グラフアイト、酸化チタン、酸化錫などの導電性の金属酸化物、Cu、Agなどの金属、これら導電性材料を粒子表面に被覆して導電化した粒子などが挙げられる。これらの導電性付与剤は単独、あるいは複数種を組み合せて用いることができる。
【0024】
特に、カーボンブラックは、比較的少量(質量比)の添加によって、所望の導電性を付与できる点で好ましい。その他添加剤として、難燃剤、減粘剤、顔料、安定剤、着色剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、酸化防止剤等を必要に応じて配合することが出来る。架橋剤としてはトリエタノールアミン、ジエタノールアミン等の従来公知のものが挙げられる。
【0025】
本発明においては、まず、ポリオール、ポリイソシアネート、触媒、及び所望により用いられる整泡剤、水、その他助剤などのポリウレタン原料を均質に混合しポリウレタン発泡材料を調製する。原料を混合する際の温度や時間については特に制限は無い。混合温度は、通常10〜90℃、好ましくは20〜60℃の範囲であり、混合時間は、通常使用される混合ユニットの構造や、回転条件等にもよるが、通常1秒〜10分間、好ましくは3秒〜5分間程度である。
【0026】
(上下層の分離配置)
調製されたポリウレタン発泡材料は注型機から吐出され、発泡材料受け部内に充填される。ポリウレタン発泡材料は外層用と内層用の2種類であり、各ポリウレタン発泡材料は、発泡材料受け部内に下層と上層の2層状態に分離して配置される。分離配置は、例えば、図2に示すように、先ず、内層用のポリウレタン発泡材料7を発泡材料液受け部5の下層に充填し、次いで、外層用のポリウレタン発泡材料8を充填することにより、各ポリウレタン発泡材料を発泡材料受け部内に上下層に分離配置することができる。
【0027】
尚、上層に配置されるポリウレタン発泡材料が下層に配置されるポリウレタン発泡材料よりも密度が大きい場合は、上層のポリウレタン発泡材料の混合時間を長くするなど、発泡材料受け部内に充填する前に発泡反応を進めて密度を小さくすることによって、上層に配置できる。下層に配置されるポリウレタン発泡材料の密度が大きい場合には、2種類のポリウレタン発泡材料を同時に発泡材料受け部内に充填しても、密度の大きいほうが、速やかに下方に配置するので、上下層の分離配置ができる。
【0028】
各層用のポリウレタン発泡材料の代表的な発泡条件は、次の通りである。上層のポリウレタン発泡材料は、先行して発泡するように調製されたものであり、下層のポリウレタン発泡材料は、その後続けて発泡するように調製された材料である。
【0029】
(外層の形成)
2種類のポリウレタン発泡材料を発泡材料受け部内で上下層に分離配置し、ローラ成型用金型の下駒部材に発泡材料受け部を結合すると、上層に配置されたポリウレタン発泡材料が先行して、注入孔からローラ成型用金型内へ発泡注入される。ここで発泡注入とは、ポリウレタン発泡材料が発泡材料受け部内で発泡を開始して、ローラ成型用金型内に発泡体が注入されることを意味するが、ローラ成型用金型内においてポリウレタン発泡材料の発泡が継続する状態も含まれる。
【0030】
ローラ成型用金型内では、図3に示すように、発泡材料受け部5の上層に配置されたポリウレタン発泡材料7が、円筒状部材1の内部に充填されてゆく。円筒状部材の内壁面近傍のポリウレタン発泡材料7は、壁面の抵抗により、流速が遅くなり、さらに金型側から加熱されて硬化反応が進むことで壁面側に停滞し、ポリウレタンフォームローラの外層を形成する。
【0031】
(内層の形成)
発泡材料受け部5の下層に配置されたポリウレタン発泡材料8は金型内に発泡注入された時点で、内壁面近傍には前記外層が形成されているので、芯金2と外層の間を発泡していき、ポリウレタンフォームローラの内層を形成する。
【0032】
上記発泡注入工程によって製造されたポリウレタンフォームローラにおいては、2種類のポリウレタン発泡材料が、発泡硬化の反応途中(ゲル状態)で内層と外層の境界部分で混ざり合うことになる。その結果、内層と外層の境界部分のセルが、内層から外層に向けて連続したセル構造を有することができる。
【0033】
(クリームタイム)
本発明におけるポリウレタンフォーム層を形成するにあたっては、発泡材料受け部内において、下層のポリウレタン発泡材料が上層のポリウレタン発泡材料よりも先に発泡反応を開始すると、以下の問題が生じる可能性がある。即ち、下層に配置されたポリウレタン発泡材料が上層に配置されたポリウレタン発泡材料を巻き込みこんでしまう場合があり、特に、導電付与剤等の材料を使用すると、所望の導電性が得られない場合がある。
【0034】
従って、各ポリウレタン発泡材料の反応速度、特に、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、及び触媒を混合してから発泡(ライズ)が開始されるまでの時間であるクリームタイムは、反応速度の指標となる。本発明においては、該上層部のポリウレタン発泡材料のクリームタイムAと、該下層部のポリウレタン発泡材料のクリームタイムBが、A≦Bの関係を満たすことが好ましい。上層に配置されたポリウレタン発泡材料が先行して円筒状部材内に発泡注入されることで、上記問題が発生することのない二層のポリウレタンフォーム層を形成することができる。
【0035】
上層のポリウレタン発泡材料のクリームタイムAは5〜20秒であることが好ましい。5秒未満であると、発泡材料受け部内にポリウレタン発泡材料を充填した後、発泡材料受け部を下駒部材に結合するまでの間に発泡反応が開始して、発泡材料受け部内からポリウレタン発泡材料がオーバーフローする恐れがある。また、20秒より長くなると、反応性が遅くなるためローラ成型用金型からの脱型時に強度不足でフォームが破壊する場合がある。
【0036】
さらには、上層のポリウレタン発泡材料のクリームタイムAと、下層のポリウレタン発泡材料のクリームタイムBが、0<B−A≦10(秒)の関係を満たすことが望ましい。10秒より長いと、円筒状部材内に先行して発泡注入された上層のポリウレタン発泡材料に対して、下層のポリウレタン発泡材料がその後続けて発泡注入されず、実質上、上層のポリウレタン発泡材料のオーバーパック率が低下し、所望の材料密度が得られない場合がある。また、場合によっては、セル荒れ等の発泡不良が発生する。クリ−ムタイムを上記の範囲に調整するには、反応温度、原料温度、撹拌条件、触媒種等を調整して行うことができる。
【0037】
(ローラの用途)
本発明の製造方法により成形されたポリウレタンフォーム層を有するポリウレタンフォームローラは、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、クリーニングローラなどの弾性を有するローラとして用いることができる。好ましくはトナー供給ローラとして使用することが最適である。トナー供給ローラは感光体ドラム上に形成した静電潜像を現像する現像装置において、現像ローラに対してトナーの供給や掻き取りをして、現像ローラ上に均一にトナーを供給する機能が求められる。このため、現像ローラに接する部分であるポリウレタンフォーム層の外表面の平均セル径、セル数等の特性が重要であり、さらには、層全体の硬度や通気度等の特性がトナー供給性や掻き取り性に影響する。よって、ポリウレタンフォーム層を二層化すると、上記の必要特性を外層と内層に分担することで、単層構造と比較した場合、ウレタンフォーム層全体の特性を、より満足させることが可能となる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。
【0039】
(実施例1〜8)
内面に離型剤が塗布された内径14.5mm、長さ260mmの鉄製の円筒状部材とステンレス製の芯金(外径5mm、長さ270mm)を上駒部材と下駒部材で保持し形成されたローラ成型用金型(図3の形状)を準備した。下駒部材には円筒状部材の内部に発泡材料を注入するための注入孔が設けられている。
【0040】
一方、外層用のポリウレタン発泡材料として表1に示す質量部のポリオール成分を配合し、5〜30分間攪拌混合したプレミックスポリオールを調製した。同様にして、表2に示す質量部のポリオール成分を用いて、内層用のプレミックスポリオールを調製し、各プレミックスポリオールとポリイソシアネートを注型機タンク内に入れた。次いで、NCOインデックスが80となるように計量された内層用のプレミックスポリオールとポリイソシアネートを注型機ヘッドにて表3に示す攪拌時間で撹拌混合して、内層用のポリウレタン発泡材料Bを調製し、発泡材料受け部内に3秒以下で充填させた。またこれとほぼ同時に、NCOインデックスが100の外層用のポリウレタン発泡材料Aを調製し、発泡材料受け部内に3秒以下で充填させ、ポリウレタン発泡材料A及びBを各3g発泡材料受け部内に下層と上層に分離配置した。また、表3に示すクリームタイムはプレミックスポリオールとポリイソシアネートの撹拌混合時間により調節した。
【0041】
発泡材料受け部を下駒部材に結合し、成形型を70℃に温度調節した。この成型用金型内で発泡材料を10分間硬化させ、ポリウレタンフォームローラを作成した。各層の肉厚は内層が2.0mm、外層が2.5mmであった。
【0042】
(画像評価)
得られたポリウレタンフォームローラについて、画像評価(ゴースト、ベタ濃度均一性)を行った。なお、画像評価は次のように行った。すなわち、トナー供給ローラを市販の複写機(キヤノン社製、LBP−2510)のトナーカートリッジに組み込み、15℃、10%RHに1日間保管後に、複写機にセットした。15℃、10%RH環境下において、4%印字画出し6000枚を行った後、通常の複写機用普通紙を用いて画出しをし、ゴースト、濃度均一性を目視により調べ、下記の基準で画像評価した。結果を表3にまとめた。
◎:ゴーストまたは濃度ムラが殆ど観察されず良好である。
○:ゴーストまたは濃度ムラがやや見られるものの使用には問題ない程度である。
△:ゴーストまたは濃度ムラがやや見られ、使用するには気になる程度である。
×:ゴーストまたは濃度ムラが観察され、使用不可である。
【0043】
表3の結果より明らかなように、いずれの実施例においても、ゴーストまたは濃度ムラについては良好な結果であり、現像ローラへのトナーの供給や掻き取りが安定して機能していた。
【0044】
実施例6については、ポリウレタンフォームの外層を形成する材料のクリームタイム(反応性)が遅くなるためローラ成型用金型からの脱型時に強度不足で部分的にフォームがちぎれている箇所がみられた。また、その部分に対応する画像領域において、若干の濃度ムラが観察された。また、実施例7については、セル荒れ現象が部分的にみられ、結果として、濃度ムラがやや見られる結果となった。
【0045】
(比較例1および2)
比較例1においては実施例1の外層用のポリウレタン発泡材料のみを使用し、比較例2においては実施例1の内層用のポリウレタン発泡材料のみを使用して、厚み4.5mmの単層構造のポリウレタンフォームローラを作成した。その他の成形条件は実施例1と同様とした。また実施例1と同様にして行った画像評価結果を表3に示した。
【0046】
比較例1については、2層構造と比較してフォーム全体の硬度が高くなり、現像ローラとの摺擦力が大きくなって、トナー劣化が促進され、濃度低下を招く結果となった。比較例2については、ウレタンフォーム層の最表面のセル径が大きいことと、フォーム全体の硬度が低いことにより、トナー掻き取り性が低下し、結果的にゴースト不良が観察された。
【0047】
(比較例3)
比較例2と同様の条件で作成したポリウレタンフォーム層を直径9mmになるように研磨した。これを比較例2と同様のローラ成形用金型内に配置し、外層を形成するポリウレタン発泡材料を発泡注入して、成形せしめることにより、内層の周りに、前記外層を一体的に形成した2層構造のポリウレタンフォームローラを作成した。実施例1と同様にして行った画像評価結果を表3に示した。
【0048】
内層付きローラ上に外層を発泡成形する際に、内層内部のエアーが外層部に入り込み、エアーだまりの発泡欠陥が確認された。また、内層表面に外層材料が入り込むことで、層間の硬度が高くなり、フォーム全体の硬度が高くなり、結果的に画像評価において、ゴーストや濃度ムラが顕著に観察された。
【0049】
(比較例4)
比較例2と同様の条件で作成したポリウレタンフォーム層を直径9mmになるように研磨した。また外層を形成するポリウレタン発泡材料を内径8.5mm、外径14mmの円筒状に切り出して、これを前記ポリウレタンフォーム層に被覆して、2層構造のポリウレタンフォームローラを作成した。実施例1と同様にして行った画像評価結果を表3に示した。
【0050】
画像評価後のウレタンフォームローラを観察すると、部分的に層間剥離がみられ、その隙間にトナーが停滞することによる部分的なフォームの硬度上昇が、濃度ムラを招く結果となった。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【符号の説明】
【0054】
1…円筒状部材
2…芯金
3…上駒部材
4…下駒部材
5…ポリウレタン発泡材料受け部
6…注入孔
7…下層のポリウレタン発泡材料
8…上層のポリウレタン発泡材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状部材と、芯金の保持部を有する上駒部材と、芯金の保持部と発泡材料の注入孔を有する下駒部材とで形成されたローラ成型用金型と、該下駒部材に着脱可能な発泡材料受け部とを有する発泡成形装置を用いて、該芯金の外周面にポリウレタンフォーム層を形成するポリウレタンフォームローラの製造方法において、
芯金を上駒部材と下駒部材で保持した状態で、発泡材料受け部内に2種類のポリウレタン発泡材料をそれぞれ下層と上層に分離配置した後に該発泡材料受け部を該下駒部材に結合する工程、上層のポリウレタン発泡材料をローラ成型用金型内に発泡注入させて円筒状部材の内壁面にポリウレタンフォーム層の外層を形成する工程、次いで下層のポリウレタン発泡材料を前記ローラ成型用金型内に発泡注入させて前記芯金と前記外層との間にポリウレタンフォーム層の内層を形成する工程、によって前記内層と前記外層の境界部分のセルが、内層から外層に向けて連続したセル構造を有することを特徴とするポリウレタンフォームローラの製造方法。
【請求項2】
前記上層のポリウレタン発泡材料のクリームタイムAと、前記下層のポリウレタン発泡材料のクリームタイムBが、A≦Bの関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンフォームローラの製造方法。
【請求項3】
前記上層のポリウレタン発泡材料のクリームタイムAが5〜20秒であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリウレタンフォームローラの製造方法。
【請求項4】
前記上層のポリウレタン発泡材料のクリームタイムAと、前記下層のポリウレタン発泡材料のクリームタイムBが、0<B−A≦10(秒)の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかの一項に記載のポリウレタンフォームローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−71450(P2012−71450A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216847(P2010−216847)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】