説明

ポリウレタンフォーム

【課題】スラブストック成形においてもブロック内部にスコーチを発生させることなく製造することが可能であり、低密度でありながら、剛性、硬度、寸法安定性、衝撃吸収性および復元性に優れたポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】ポリオール化合物、発泡剤、整泡剤、及び触媒を含有するポリオール成分と、イソシアネート成分とを反応させて得られるポリウレタンフォームであって、(A)前記ポリオール化合物は、(i)数平均分子量が4000〜6000、水酸基価が20〜60mgKOH/gのエチレンオキシド含有ポリエーテルポリオール、(ii)数平均分子量が300〜1000、水酸基価が100〜800mgKOH/gのポリエーテルポリオール、(iii)平均水酸基価が200〜600mgKOH/g、粘度が1700mPa・s以下の水発泡連通用ポリオール、(iv)多価アルコール、の4種混合ポリオールで、平均水酸基価が200〜300mgKOH/gに調製されたもの、(B)前記整泡剤は、ポリエーテル変性ポリシロキサン系整泡剤、(C)前記イソシアネート成分は、NCO含量が28〜33%のクルードMDI、であり、独立気泡率が5%以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブストック成形においてブロック内部にスコーチを発生させることなく製造が可能なポリウレタンフォームに関し、特に、低密度でありながら、十分な硬度と復元性とを併せもつポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンフォームは、一般的に、その高い断熱性を特長としている。これは、独立気泡中に閉じ込められたフロンやペンタン等の熱伝導率の低いガスによるものである。
この特長を活かし、硬質ポリウレタンフォームをスプレー法で施工した断熱材や、面材間に硬質ポリウレタンを発泡させた断熱ボード等が多く流通している。
【0003】
これに対し、硬質ポリウレタンフォームにも、梱包材や自動車内装材など、高い断熱性を必要としない用途がある。これらの用途では、コストの点から低密度であることが好ましく、加えて、剛性や硬度、寸法安定性、復元性、衝撃吸収性などが必要とされる。
しかし、低密度の独立気泡硬質フォームは、常温下で収縮しやすいので、剛性、硬度、寸法安定性、復元性などの要求をクリアすることは難しい。
【0004】
一方、独立気泡率の低いオープンセルフォームは、セル中にガスが存在しないため圧縮した際にガス圧の影響がなく、独立気泡フォームと比較すると、硬度は低下してしまう。しかも、ポリオール化合物として、軟質ポリウレタンフォームで一般的に使用される、高分子量のポリオールを使用するので、組成的にも軟らかくなりやすい。
したがって、剛性や硬度が重要視される梱包材や自動車内装材などの用途に、従来公知のオープンセルフォームを使用することは、問題が多くあった。
【0005】
ポリウレタンフォームの硬度を上げるには、α)ポリオール化合物の水酸基価を上げる、β)イソシアネート化合物のNCO含量を増やす、などの手法が知られているが、水酸基価の高いポリオール化合物とNCO含量が多いイソシアネート化合物との反応は劇的であるため、反応による発熱量が大きくなり、ウレタンフォーム中にスコーチ(焦げ)を発生させやすくなる。
また、ウレタンフォームの低密度化には、発泡剤である水の添加量を増やす方法があるが、水はイソシアネート化合物と劇的に反応するため、前記同様、得られるフォームにスコーチが発生しやすくする。この現象は、大型のブロック状のウレタンフォームを生産するスラブストック成形の場合、特に顕著であり、最悪の場合、火災の危険性すらある。
【0006】
さらに、これまでのウレタンフォームは、一般的に、硬度が高くなるにつれ、柔軟性や復元性がなくなっていき、脆性が強くなる。したがって、薄物で様々な形状に加工するような用途では、割れや座屈(潰れた状態から元の形に戻らない現象)が生じるため、使用が困難であった。
例えば、通常、厚さ2〜10mm程度に加工される自動車の天井材においては、天井に貼りつける際に、ある程度の硬さが必要とされるが、あまり硬すぎると折れやすい故ある程度の柔軟性も要求される。また、施工後の天井を押したとき、凹んだままだと見栄えが悪いという問題もあった。
【0007】
特許文献1,2には、自動車の衝撃吸収材、自動車用ヘッドライナなどに好適な、連続気泡の硬質ポリウレタンフォームが開示されている。
しかし、特許文献1に記載の硬質ポリウレタンフォームは、低温下や高温下での寸法安定性などに関しては良好な効果が得られるものの、密度の低減化や復元性については満足できるものではなかった。
また、特許文献2に記載の硬質ポリウレタンフォームは、特定の水酸基価を有するポリエステルポリオールを必須成分としており、低密度は達成できているものの、ポリオールの粘度が高く、取り扱いが困難なことに加え、高温・高湿下で劣化しやすく耐久性が劣るものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3522825号
【特許文献2】特許第3013108号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の諸点を考慮し、スラブストック成形においてもブロック内部にスコーチを発生させることなく製造することが可能であり、低密度でありながら、剛性、硬度、寸法安定性、衝撃吸収性および復元性に優れたポリウレタンフォームを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題を解決するために検討を重ねた結果、
(A)ポリオール化合物として、長鎖ポリエーテルポリオール、短鎖ポリエーテルポリオール、水発泡連通用ポリオール、多価アルコールの4種混合であって平均水酸基価を特定の値に調製したものを使用し、
さらに、(B)フォームの収縮を抑えるための特殊な整泡剤と、(C)イソシアネート成分として、クルードMDIを配合することで、
低密度でありながら、十分な硬度を有し、かつ復元性に優れたポリウレタンフォームが得られることを見出した。
【0011】
本発明は、このような知見の下でなし得たものであり、以下を要旨とする。
(1)ポリオール化合物、発泡剤、整泡剤、及び触媒を含有するポリオール成分と、イソシアネート成分とを反応させて得られるポリウレタンフォームであって、
(A)前記ポリオール化合物は、(i)数平均分子量が4000〜6000、水酸基価が20〜60mgKOH/gのエチレンオキシドとプロピレンオキシドを付加重合してなるポリエーテルポリオール、(ii)数平均分子量が300〜1000、水酸基価が100〜800mgKOH/gのポリエーテルポリオール、(iii)平均水酸基価が200〜600mgKOH/g、粘度が1700mPa・s以下の水発泡連通用ポリオール、(iv)多価アルコール、の4種混合ポリオールで、平均水酸基価が200〜300mgKOH/gに調製されたもの、
(B)前記整泡剤は、ポリエーテル変性ポリシロキサン系整泡剤、
(C)前記イソシアネート成分は、NCO含量が28〜33%のクルードMDI、
であり、独立気泡率が5%以下であることを特徴とするポリウレンタンフォーム。
(2)密度が25〜40kg/m3、アスカーゴム硬度計C2型で測定した硬度(以下、単に「C2硬度」と記載することがある)が30〜55であり、かつ、50%圧縮させたフォームの厚みが1分間後に元の厚みの90%以上に回復する復元性を有することを特徴とする前記(1)に記載のポリウレタンフォーム。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリウレタンフォームは、スラブストック成形においてもブロック内部にスコーチを発生させることなく製造することが可能であり、低密度でありながら、剛性、硬度、寸法安定性、衝撃吸収性および復元性に優れたものなので、産業上の利用価値は極めて大きい。
特に、密度が40kg/m3以下、かつC2硬度が30以上であるにも拘わらず、50%圧縮させたものがわずか1分間後に90%以上も回復する復元性を示すポリウレタンフォームは、従来存在しなかったものである。
なお、本発明のポリウレタンフォームは、モールド成形による製造でも、現場施工スプレー成形法であっても、低密度で、かつ硬度や復元性などの諸特性において優れたものが得られることはもちろんである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のポリウレタンフォームは、ポリオール化合物、発泡剤、整泡剤、及び触媒を含有するポリオール成分と、イソシアネート成分とを反応させて得られ、独立気泡率が5%以下であることを特徴とするものである。
本発明では、(A)ポリオール化合物として、(i)長鎖ポリエーテルポリオール、(ii)短鎖ポリエーテルポリオール、(iii)水発泡連通用ポリオール、(iv)多価アルコール、の4種混合ポリオールであって、平均水酸基価が200〜300mgKOH/gに調製されたものを用いる。
この4種混合ポリオールの平均水酸基価が低すぎると、得られるフォームのC2硬度が30以上のものが得られ難く、剛性が不足する虞があり、高すぎると、スラブストック成形されたブロックの内部にスコーチが発生しやすいので、好ましくは、205〜280mgKOH/gである。平均水酸基価は、各ポリオールの水酸基価を配合率に応じて平均した値である。
また、4種混合ポリオールの25℃における粘度は、3000mPa・s程度以下に調製されることが好ましく、より好ましくは2000mPa・s程度以下である。
【0014】
(A)ポリオール化合物100重量部中における、4種混合ポリオールの配合は、(i)長鎖ポリエーテルポリオールが30〜70重量部、(ii)短鎖ポリエーテルポリオールが10〜40重量部、(iii)水発泡連通用ポリオールが10〜40重量部、(iv)多価アルコールが0.5〜7重量部とすることが好ましい。
【0015】
(A)ポリオール化合物の(i)長鎖ポリエーテルポリオールとしては、数平均分子量が4000〜6000、水酸基価が20〜60mgKOH/gのエチレンオキシド(EO)とプロピレンオキシド(PO)を付加重合してなるポリエーテルポリオール(以下、「EO含有ポリエーテルポリオール」と記す場合もある)を用いる。その平均官能基数は2〜4の範囲であり、好ましい平均官能基数は3である。
EO含有が0(ゼロ)、すなわち、プロピレンオキシド(PO)のみが付加重合したポリエーテルポリオールでは、良好なフォームが得られず崩壊しやすいので、EOとPOの含有率を適宜調整することで、フォームの連通化が促進される。
数平均分子量が4000未満のEO含有ポリエーテルポリオールでは、寸法安定性や復元性を有するポリウレタンフォームが得られず、6000を超えるものでは、所望の硬度を発現できなくなるので、好ましくは5000〜6000である。
このように(i)長鎖ポリエーテルポリオールとして、数平均分子量が4000〜6000、水酸基価が20〜60mgKOH/gのエチレンオキシド(EO)含有ポリエーテルポリオールを配合することで、寸法安定性および復元性が優れたものとなる。(i)長鎖ポリエーテルポリオールの配合割合については、(A)ポリオール化合物100重量部中、30〜70重量部配合されることが好ましく、より好ましくは40〜55重量部である。30重量部未満では、所望の寸法安定性や復元性が得られにくく、70重量部を超えると、セル荒れが生じたり硬度や剛性が不十分になりやすい傾向にある。
(i)の具体例としては、旭硝子株式会社製 商品名“EXCENOL820”、“EXCENOL823”、“EXCENOL828”、“EXCENOL837”;三洋化成工業株式会社製 商品名“FA-702”、“FA-703”;ダウ・ケミカル日本株式会社製 商品名“VORANOL4701”、“VORANOL CP6001”等が挙げられる。
【0016】
(A)ポリオール化合物の(ii)短鎖ポリエーテルポリオールとしては、数平均分子量が300〜1000、水酸基価が100〜800mgKOH/gのポリエーテルポリオールを用いる。その平均官能基数は2〜4の範囲であり、好ましい平均官能基数は3である。
数平均分子量が300未満のポリエーテルポリオールでは、常温下においてフォームが収縮しやすくなるため、寸法安定性を欠くことになり、1000を超えるものでは、所望の硬度を発現できなくなるという問題があるので、好ましくは400〜1000である。
このように(ii)短鎖ポリエーテルポリオールとして、数平均分子量が300〜1000、水酸基価が100〜800mgKOH/gのポリエーテルポリオールを配合することで、硬度や剛性の向上が可能となる。(ii)短鎖ポリエーテルポリオールの配合割合については、(A)ポリオール化合物100重量部中、10〜40重量部配合されることが好ましく、より好ましくは25〜30重量部である。10重量部未満では、所望の硬度や剛性が得られにくく、40重量部を超えると、所望の寸法安定性や物性を備えたポリウレタンフォームが得られにくい。
(ii)の具体例としては、旭硝子株式会社製 商品名“EXCENOL430”、“EXCENOL1030”;三洋化成工業株式会社製 商品名“サンニックスGP-400”、“サンニックスGP-600”、“サンニックスGP-700”、“サンニックスGP-1000”;ダウ・ケミカル日本株式会社製 商品名“VORANOL2070”、“VORANOL3150”等が挙げられる。
【0017】
(A)ポリオール化合物の(iii)水発泡連通用ポリオールとしては、平均水酸基価が200〜600mgKOH/g、25℃における粘度が1700mPa・s以下の水発泡連通用ブレンドポリオールとして一般に市販されているものが用いられる。
平均水酸基価が200mgKOH/g未満では、所望の硬度を発現できなくなり、600mgKOH/gを超えると、スラブストックフォーム内部にスコーチが発生する虞がある。一方、粘度は低ければ低いほど好ましく、1700mPa・sを超えるものでは、他のポリオール化合物と混合し難くなる。
(iii)水発泡連通用ポリオールの配合割合については、(A)ポリオール化合物100重量部中、10〜40重量部配合されることが好ましく、より好ましくは15〜25重量部である。10重量部未満では、独立気泡率が高くなり、フォームが収縮する虞があり、40重量部を超えると、座屈しやすいフォームとなり、フォームの機械的強度が低くボロボロになりやすい。
(iii)の具体例としては、三井化学株式会社製 商品名“ACTOCOL NFS-24”、“ACTOCOL NF-29”、“ACTOCOL NF-04”、“ACTOCOL NF-13”等が挙げられる。
【0018】
(A)ポリオール化合物の(iv)多価アルコールとしては、2価以上のアルコールであれば特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。その官能基数は2〜4の範囲であることが好ましく、その分子量は、50〜200程度が好ましい。
このような(iv)多価アルコールは、架橋剤として作用し、本発明におけるポリウレタンフォームの高い硬度を実現する。(iv)多価アルコールの配合割合については、(A)ポリオール化合物100重量部中、0.5〜7重量部配合されることが好ましく、より好ましくは4〜6重量部である。0.5重量部未満では、架橋剤としての作用が不十分となり、セルが荒れてしまったり、十分な硬さや強度が得られず、7重量部を超えると、フォームが収縮しやすくなり、寸法安定性に乏しくなる。
このように、本発明の(A)ポリオール化合物としては、(i)〜(iv)からなる4種混合ポリオールであって、硬質ウレタンフォームを形成するのに一般的に用いられるポリエステルポリオールは含まないものである。
【0019】
ポリオール成分中、(B)整泡剤は、セルオープン効果をもつポリエーテル変性ポリシロキサン系整泡剤として一般に市販されているものを用いる。セルオープン効果とは、発泡の初期段階には整泡効果を持ち、発泡の最終段階でセルを破泡させる効果を持つものをさし、得られるウレタンフォームにおいて独立気泡率を5%以下に達成しやすくするものであり、例えば、下記の一般式で示すポリエーテル変性ポリシロキサンを含むものが好適である。
このような整泡剤としては、エボニック デグサ ジャパン株式会社製 商品名“TEGOSTAB B8871”、“TEGOSTAB B8526”などが挙げられる。
【0020】
[化1]

(CH33Si−O−〔−Si(CH32−O−〕n−〔Si(CH3)R−O−]m−Si(CH33

式中、R=−(CH23−O−(CH2−CHR’−O)y−H ≪R’は、水素またはメチル基≫。n、m、yは任意の整数。
【0021】
このような整泡剤を、前述の平均水酸基価が200〜300mgKOH/gに調製された4種混合ポリオールからなる(A)ポリオール化合物に配合することで、セルの破泡状態が最適なものとなり、この結果、独立気泡率が5%以下に抑えられ、常温下での収縮を完全に防ぐことができ、優れた諸特性(硬度や復元性など)を発現する。
該整泡剤は、(A)ポリオール化合物100重量部に対し、0.5〜4重量部が好ましく、より好ましくは、0.5〜2重量部である。0.5重量部未満だと、十分な整泡効果が得られず、フォームが崩壊する虞がある。4重量部を超えると、フォームが収縮しやすくなり、寸法安定性に乏しくなる。
【0022】
ポリオール成分中、発泡剤としては、水、メチレンクロライド、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、炭酸ガスなどのうちの少なくとも1種からなる混合物が挙げられ、特に反応による発熱を緩和させるために、水とメチレンクロライドとの併用系が望ましい。上記「水」は、特に限定されるものではなく、例えば、イオン交換水、水道水、蒸留水などを用いればよい。
発泡剤として、水を用いた場合には、(A)ポリオール化合物100重量部に対し、2.5〜4.5重量部とすることが好ましい。4.5重量部を超えると、イソシアネート成分との反応による発熱量が大きくなり、スラブストックフォーム内部にスコーチが発生する。2.5重量部未満だと、得られるフォームが高密度(40kg/m3を超える)となり、コスト面や軽量化といった点から好ましくない。
また、メチレンクロライドに代表される水以外の発泡剤は、気化熱によりスラブストックフォーム内に蓄積する反応熱を緩和させる効果があり、その効果は添加量が多いほど期待できるが、添加量としては(A)ポリオール化合物100重量部に対し、3〜15重量部が好ましい。15重量部を超えると、得られるウレタンフォームが軟化したり、セルが荒くなるといった不具合が生じる。3重量部未満だと、気化熱冷却効果が低くなり、スラブストックフォーム内部にスコーチが発生しやすい。
【0023】
ポリオール成分中、触媒は、(A)ポリオール化合物と後述する(C)イソシアネート成分とのウレタン化反応を促進するためのものである。触媒は、(A)ポリオール化合物100重量部に対し、0.1〜3重量部程度であればよい。
この触媒としては、ウレタンフォームの発泡において公知のものを使用すればよく、特に限定されないが、例えば、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリンなどのアミン系触媒が好ましい。
なお、本発明では、触媒として、上記アミン系触媒のみを用いてもよいし、用途に応じて、他の触媒を併用してもよいが、毒性等が懸念される有機金属化合物系の触媒は一切使用しない。
【0024】
(C)イソシアネート成分としては、NCO含量が28〜33%であるクルードジフェニルメタンジイソシアネート(クルードMDI)を用いることで、ブロック内部にスコーチを発生させることなく、高硬度のスラブストックフォームを製造することが可能になる。
NCO含量が28%未満のクルードMDIでは、所望の硬度が得られず、33%を超えるクルードMDIでは、ポリオール化合物との反応による発熱量が大きくなり、ウレタンフォーム中にスコーチを発生させやすい。ちなみに、TDI(トリレンジイソシアネート)のNCO含有率は、48.3%と非常に高く、反応性が高すぎてしまい、スコーチの発生が抑制できないことに加え、セル荒れが生じたり、硬度が低下するといった不具合も発生する。
(C)成分の具体例としては、日本ポリウレタン工業株式会社製 商品名“MILLIONATE MR-100”、“MILLIONATE MR-200”、“MILLIONATE MR-200S、“CORONATE 1130”;三井化学株式会社製 商品名“COSMONATE M-50”、“COSMONATE M-100”、“COSMONATE M-200”、“COSMONATE M-300”、“COSMONATE M-2000”;ダウ・ケミカル日本株式会社製 商品名“PAPI 27”、“PAPI 94”、“PAPI 2940”等が挙げられる。
本発明では、イソシアネートインデックスが、低すぎると、所望の硬度を発現できなくなり、高すぎると、ポリオール化合物との反応による発熱量が大きくなりウレタンフォーム中にスコーチを発生させやすいので、80〜140の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは100〜120である。
【0025】
このように、本発明は、無数に存在するポリオール化合物、整泡剤、イソシアネート化合物の中から、前記したような、
長鎖EO含有ポリエーテルポリオール、短鎖ポリエーテルポリオール、水発泡連通用ポリオール、多価アルコールの4種混合で平均水酸基価が200〜300mgKOH/gに調製した(A)ポリオール化合物と、
(B)セルオープン効果をもつポリエーテル変性ポリシロキサン系整泡剤と、
(C)イソシアネート成分として、NCO含量が28〜33%のクルードMDIとを
選定し、組み合わせることで、従来存在しなかった低密度でありながら、十分な硬度を有し、かつ復元性に優れた独立気泡率が5%以下のポリウレタンフォームを得るものである。
【0026】
以上のようなポリウレタンフォームの原料には、ポリオール化合物、発泡剤、整泡剤、触媒を含有するポリオール成分、イソシアネート成分の他に、必要に応じて、相溶化剤、難燃剤、減粘剤、充填剤、着色剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など、ポリウレタンフォームの製造に際して一般的に使用される添加剤を使用してもよい。
【0027】
本発明のポリウレタンフォームを製造する場合には、上記したようなポリオール化合物、発泡剤、整泡剤、及び触媒を含有するポリオール成分と、イソシアネート成分とを直接反応させるワンショット法、あるいは該ポリオール成分と該イソシアネート成分とを事前に反応させて末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを得、それにポリオール成分を反応させるプレポリマー法のいずれも採用できる。
【0028】
なお、本発明のポリウレタンフォームでは、フォーム形成時の発熱温度を、おおよそ170℃以下とすることができる。
したがって、従来、低密度かつ高硬度のポリウレタンフォームを製造するには、発泡剤である水の量を増やし、ポリオールの水酸基価を高く設定する必要があったため、スラブストック方式で製造する際には、発熱温度が高くなり、その結果、ブロック内部に蓄熱によるスコーチが発生しやすく、火災の危険性も懸念されることから製造に困難を極めたが、本発明では、発熱温度が低いため、火災の危険性を低減でき、連続スラブ発泡などのスラブストック方式による製造も安心して行うことができ、ブロック内部におけるスコーチなどの発生も効果的に防止できる。
【0029】
本発明のポリウレタンフォームは、ベックマン法(ASTM D 2856(1998))に準拠して測定される独立気泡率が5%以下である。
独立気泡率が5%を超えるものでは、セル内に閉じ込められたガスがフォーム形成時の発熱温度から温度低下にともなって体積が小さくなってしまったり、あるいはセルからガスが漏れてしまったりして、常温下で収縮しやすい。
【0030】
本発明のポリウレタンフォームは、JIS K7222に準拠して測定される密度が25〜40kg/m3、C2硬度が30〜55であることが好ましい。C2硬度が30未満の場合、剛性や硬度が重要視される梱包材や自動車内装材などの用途への使用が難しく、55を超える場合には、柔軟性や復元性が少なく座屈しやすい。
また、本発明のポリウレタンフォームでは、50%圧縮させたフォームの厚みが1分間後に元の厚みの90%以上に回復する復元性を有することが好ましい。通常の硬質ウレタンフォームの場合、同様の試験を行うと、50〜60%程度しか回復しないことから、本発明のポリウレタンフォームが復元性において非常に優れていることがわかる。
さらに、本発明のポリウレタンフォームでは、JIS K6400−5に準拠して測定される引張強さを150kPa以上、同JIS規格に準拠して測定される伸びを20%以上とすることもできる。
【実施例】
【0031】
実施例1〜7、比較例1〜14
≪使用原料≫
(A)ポリオール化合物
(i)長鎖ポリエーテルポリオール
・数平均分子量5100、平均官能基数3、水酸基価33mgKOH/gのEO含有ポリエーテルポリオール(旭硝子 (株)製 商品名“EXCENOL823”)
・数平均分子量6000、平均官能基数3、水酸基価28mgKOH/gのEO含有ポリエーテルポリオール(旭硝子 (株)製 商品名“EXCENOL837”)
(ii)短鎖ポリエーテルポリオール
・数平均分子量400、平均官能基数3、水酸基価400mgKOH/gのオールPOポリエーテルポリオール(旭硝子 (株)製 商品名“EXCENOL430”)
・数平均分子量1000、平均官能基数3、水酸基価160mgKOH/gのオールPOポリエーテルポリオール(旭硝子 (株)製 商品名“EXCENOL1030”)
(iii)水発泡連通用ポリオール
・平均水酸基235mgKOH/g、粘度800mPa・sの水発泡連通用ポリオール(三井化学(株)製 商品名“ACTOCOL NFS-24”)
・平均水酸基360mgKOH/g、粘度500mPa・sの水発泡連通用ポリオール(三井化学(株)製 商品名“ACTOCOL NF-04”)
(iv)多価アルコール
・ジプロピレングリコール
・グリセリン
(v)その他(上記(i)〜(iv)に分類されないポリオール化合物)
・数平均分子量5000、水酸基価34.2mgKOH/gのオールPOポリエーテルポリオール(三井化学(株)製 商品名“ACTCOL MN-5000”)
・数平均分子量3000、平均官能基数3、水酸基価32mgKOH/gのオールPOポリエーテルポリオールに、スチレン/アクリロニトリルをグラフト重合したポリマーポリオール(旭硝子(株)製 商品“EXCENOL941”)
・数平均分子量が3000、水酸基価56mgKOH/gのEO含有ポリエーテルポリオール(旭硝子(株)製 商品名“EXCENOL230”)
・数平均分子量が6700、水酸基価25mgKOH/gのEO含有ポリエーテルポリオール(旭硝子(株)製 商品名“EXCENOL851”)
・数平均分子量が200、水酸基価562mgKOH/gのポリエーテルポリオール(ライオン(株)製 商品名“PEG#200”)
・数平均分子量が1000、水酸基価115mgKOH/gのポリエステルポリオール(日立化成ポリマー(株)製 商品名“テスラック2464”)
【0032】
(B)整泡剤
・セルオープン効果をもつポリエーテル変性ポリシロキサン系整泡剤(エボニック デグサ ジャパン(株)製 商品名“TEGOSTAB B8871”)
・セルオープン効果をもつポリエーテル変性ポリシロキサン系整泡剤(エボニック デグサ ジャパン(株)製 商品名“TEGOSTAB B8526”)
・汎用(セルオープン効果の少ないポリエーテル変性ポリシロキサン系)整泡剤(東レ・ダウコーニング(株)製 商品名"SH-192")
【0033】
(C)イソシアネート化合物
・NCO含量が31.5%のクルードMDI(三井化学(株)製 商品名“COSMONATE M-200”)
・NCO含量が24.8%のクルードMDI(三井化学(株)製 商品名“COSMONATE MC-82”)
・NCO含量が48.3%のTDI(三井化学(株)製 商品名“COSMONATE T-80”)
【0034】
(D)発泡剤
・水(イオン交換水)
・メチレンクロライド
(E)触媒
・トリエチレンジアミンが33%のジプロピレングリコール溶液(花王(株)製 商品名“カオーライザーNo.31”)
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
表1〜4に示した実施例および比較例のポリウレタンフォームの原料を混合、攪拌し、ベルトコンベア上に吐出した。該ベルトコンベアが移動する間に原料が常温、大気圧下で自然発泡し、反応することでフォームを連続的に製造した。
その後、乾燥炉内で硬化(キュア)し、ブロック状(幅:約1000mm、高さ:約50mm)のポリウレタンフォームを得た。
【0040】
得られた各ポリウレタンフォームについて、フォーム性状、スコーチの有無、独立気泡率(%)、密度(kg/m3)、C2硬度、引張強さ(kPa)、伸び(%)、復元性、耐湿熱性を評価し、その結果を併せて表1〜4に示す。
【0041】
「フォーム性状」と「スコーチの有無」に関しては、得られたブロック状のウレタンフォームを所定長さに切り出し、フォーム表面の外観を目視により評価した。
・フォーム性状は、正常なフォームが形成され、セルの大きさが均一で整っているものを「良好」、セルの大きさが不均一でまばらなものを「セル荒れ」、切り出した後、時間経過とともに目視にてフォームの収縮現象が顕著に確認されたものを「収縮」、目視で若干フォームの収縮が見られたものを「微収縮」、反応不足により、反応中にフォームが潰れてしまったり、得られたフォームの機械的強度が低くボロボロになってしまったものを「崩壊」とした。
・スコーチの有無は、スコーチが無かったものを「○」、スコーチが発生したものを「×」とした。
【0042】
「独立気泡率(%)」、「密度」、「C2硬度」、「引張強さ」、「伸び」、「復元性」、「耐湿熱性」に関しては、縦300mm×横300mm×厚さ10mmの大きさとなるように切断したウレタンフォームについてそれぞれ、下記方法に従って測定した。
・独立気泡率(%)は、ベックマン法(ASTM D 2856(1998))に基づいて測定を行った。
・密度(kg/m3)は、JIS K7222に基づいて測定を行った。
・C2硬度は、アスカーゴム硬度計C2型で測定した。
・引張強さ(kPa)は、JIS K6400−5に基づいて測定を行った。
・伸び(%)は、JIS K6400−5に基づいて測定を行った。
・復元性は、サンプルを50%圧縮した(すなわち、厚さ5mmになるまで圧縮した)後、1分間の間に、フォームの厚みが、元の厚みの90%以上に回復する(厚さが9mm以上になる)ものを「○」、元の厚みの90%未満(厚さが9mm未満)しか回復しないものを「×」とした。
・耐湿熱性は、ウレタンフォームを温度80℃及び湿度95%の条件下で30日間の促進試験を行い、試験後のフォームが試験前のフォームの引張強さの70%以上を保持している場合を「○」、70%未満の場合を「×」とした。
【0043】
表1から、実施例1〜7のポリウレタンフォームは、いずれも、密度が33kg/m3以下、かつC2硬度が35以上であるにも拘わらず、50%圧縮させたものがわずか1分間後に90%以上も回復する復元性を示し、しかも、スラブストック成形においてブロック内部にスコーチが発生することなく製造可能であり、引張強さや伸び、耐湿熱性においても優れたものであった。
【0044】
表2から、(A)ポリオール化合物の平均水酸基価が高すぎる比較例1では、スコーチが発生し、一方、低すぎる比較例3では、C2硬度が劣るものであった。
また、比較例2は、寸法安定性に優れる水発泡連通用ポリオールと、一般に硬度発現性に優れると言われているスチレン/アクリロニトリルをグラフト重合したポリマーポリオールとの併用により、フォーム性状が良好で、かつ所望の硬度を具備したウレタンフォームの製造を可能としたが、(i)長鎖EO含有ポリオールが配合されていないので、復元性が皆無で、しかもフィラー成分を含むポリマーポリオールを使用したことにより、強度(引張強さ、伸び)が不十分なものであった。
【0045】
(i)長鎖EO含有ポリオールの代わりに、分子量が5000でEO含有がゼロのポリエーテルポリオールを用いた比較例4では、ウレタン反応によるフォームの形成がなされず、崩壊してしまった。
また、表4に示すように、(i)長鎖EO含有ポリオールの代わりに、分子量が3000のEO含有ポリエーテルポリオールを用いた比較例11では、フォームは形成されたものの、その独立気泡率は6%であり、時間経過とともに微収縮が生じ、伸びも不十分で、復元性が得られなかった。
さらに、(i)長鎖EO含有ポリオールの代わりに、分子量が6700のEO含有ポリエーテルポリオールを用いた比較例12では、硬度が不十分であった。
【0046】
(C)イソシアネート化合物として、NCO含量が48.3%のTDIを用いた比較例5では、セル荒れが生じ、硬度が低いばかりか、スコーチも発生していた(表2参照)。また、NCO含量が24.8%のクルードMDIを用いた比較例14では、良好なフォームが得られるものの硬度が不十分であった(表4参照)。
【0047】
表2に示すように、セルオープン効果の少ない汎用整泡剤を用いた比較例6では、セルの破泡が不十分で独立気泡率が高いものとなり、前述のウレタンフォームに裁断後、時間経過とともに顕著な収縮現象が確認された。なお、このようにフォームが収縮してしまうと、独立気泡率は測定できないが、本発明において、実施例7で示されるように、独立気泡率が5%以下のものでは、フォームの収縮が見られなかった。
【0048】
表3に示すように、(ii)短鎖ポリエーテルポリオールの代わりに、分子量が1000のポリエステルポリオールを使用した比較例7では、低密度かつ高硬度で復元性のあるものは得られるものの、ポリエステルポリオールは粘度が高いために他のポリオールとの混ざりが悪く、撹拌不良によるセル荒れが発生し、しかも、エステル使用に起因する耐湿熱性に劣るフォームとなり、高温・高湿下での促進試験を行った後では、フォームが軟化し、強度が低下する結果となった。
【0049】
(ii)短鎖ポリエーテルポリオールが配合されていない比較例8では、復元性が得られず、硬度や強度が不十分なものになった(表3参照)。また、(ii)短鎖ポリエーテルポリオールの代わりに、分子量200のポリエーテルポリオールを用いた比較例13では、フォームが収縮してしまった(表4参照)。
(iii)水発泡連通用ポリオールが配合されていない比較例9では、比較例6同様、セルの破泡が不十分で独立気泡率が高いものとなり、時間経過とともに得られたウレタンフォームは収縮してしまった。
(iv)多価アルコールが配合されていない比較例10では、セル荒れが生じ、十分な硬さが得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のポリウレタンフォームは、軽量(低密度)かつ高硬度であり、ある程度の柔軟性や復元性も兼ね備えているため、例えば、近年特に低コスト及び軽量化が求められる自動車用成形天井材などの成形品分野において特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物、発泡剤、整泡剤、及び触媒を含有するポリオール成分と、イソシアネート成分とを反応させて得られるポリウレタンフォームであって、
(A)前記ポリオール化合物は、(i)数平均分子量が4000〜6000、水酸基価が20〜60mgKOH/gのエチレンオキシドとプロピレンオキシドを付加重合してなるポリエーテルポリオール、(ii)数平均分子量が300〜1000、水酸基価が100〜800mgKOH/gのポリエーテルポリオール、(iii)平均水酸基価が200〜600mgKOH/g、粘度が1700mPa・s以下の水発泡連通用ポリオール、(iv)多価アルコール、の4種混合ポリオールで、平均水酸基価が200〜300mgKOH/gに調製されたもの、
(B)前記整泡剤は、ポリエーテル変性ポリシロキサン系整泡剤、
(C)前記イソシアネート成分は、NCO含量が28〜33%のクルードMDI、
であり、
独立気泡率が5%以下であることを特徴とするポリウレンタンフォーム。
【請求項2】
密度が25〜40kg/m3、アスカーゴム硬度計C2型で測定した硬度が30〜55であり、かつ、50%圧縮させたフォームの厚みが1分間後に元の厚みの90%以上に回復する復元性を有することを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンフォーム。

【公開番号】特開2012−46589(P2012−46589A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188225(P2010−188225)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】