説明

ポリウレタン分散体、そのポリウレタン分散体を生成する方法、コーティングされた物品、および物品をコーティングする方法

本発明は、ポリウレタン分散体、そのポリウレタン分散体を生成する方法、コーティングされた物品、および物品をコーティングする方法である。本発明によるポリウレタン分散体は、(a)1または複数のプレポリマーに由来する1または複数のポリウレタン単位であって、この1または複数のプレポリマーが、1または複数のイソシアネートと、1または複数の第1の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテルに溶解した混合物との反応生成物を含み、この混合物が、1または複数の天然油系ポリオール、および1または複数のアジペートポリオール、および場合によって1または複数の短いジオールを含む、ポリウレタン単位、および(b)水を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「ポリウレタン分散体、そのポリウレタン分散体を生成する方法、コーティングされた物品、および物品をコーティングする方法」という名称の2009年3月31日に出願された米国仮特許出願第61/165,024号の優先権を主張する非仮出願であり、その出願の教示は、後述全体で再生されるごとく、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ポリウレタン分散体、そのポリウレタン分散体を生成する方法、コーティングされた物品、および物品をコーティングする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
汚染抵抗、傷抵抗、および硬度特性は、木材コーティング用途、コンクリートコーティング用途、または金属コーティング用途などの表面コーティング用途のための重要な性能特性である。ポリウレタン分散体は、本来の機器製造業者または例えば日曜大工などの2次ユーザーの、例えば木材表面などをコーティングするための用途で、一般的に使用される。ほとんどの木材コーティングにとっては、様々な食物および染料と接触するので、コーヒー、オレンジジュース、ケチャップなどの日常的に使用される液体およびその他の非常に多様な食品に対する比較的高レベルの汚染抵抗が必要である。一般的に、傷抵抗は、コーティングの耐久性に直接的に相関する。したがって、十分な硬度、耐化学性、耐水性、引っかき抵抗、および傷抵抗を有するコーティングが、木製基板にとって望まれる。かかる木製基板のためにより良い特性を促進するために、いくつかの手法が使用されてきた。これらの手法は例えば、アクリル/ビニル官能性(ハイブリッドおよびブレンド)を組み込むこと、骨格への脂肪酸修飾、架橋結合、UV硬化部分を組み込むこと、ならびにポリウレタン分散体に対するフッ素化、塩素化などのより新奇な化学反応を含む。また、特性における個々の欠点を克服するために、非常に多様な分子が配合段階において添加されている。これらの手法には、結果として、所望の性能を達成するための余分な経費がかかり努力を要する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、木材コーティング、コンクリートコーティング、または金属コーティングなどの表面コーティングに適した改良された特性を有するポリウレタン分散体が依然として必要である。さらに、木材コーティング、コンクリートコーティング、または金属コーティングなどの表面コーティングに適した改良された特性を有するかかるポリウレタン分散体を生成する方法も必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポリウレタン分散体、そのポリウレタン分散体を生成する方法、コーティングされた物品、および物品をコーティングする方法である。本発明によるポリウレタン分散体は、(a)1または複数のプレポリマーに由来する1または複数のポリウレタン単位であって、この1または複数のプレポリマーが、1または複数のイソシアネートと、1または複数の第1の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテルに溶解した混合物との反応生成物を含み、この混合物が、1または複数の天然油系ポリオール、および1または複数のアジペートポリオール、および場合によって1または複数の短いジオールを含む、ポリウレタン単位、および(b)水を含む。ポリウレタン分散体を生成する方法は、(1)1または複数のプレポリマーを含む第1のストリームを提供するステップであって、この1または複数のプレポリマーが、1または複数のイソシアネートと、1または複数の第1の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテルに溶解した混合物との反応生成物を含み、この混合物が、1または複数の天然油系ポリオール、および1または複数のアジペートポリオール、および場合によって1または複数の短いジオールを含み、ならびにこの1または複数のプレポリマーが、1または複数の中和剤によって場合によって中和される、ステップ、(2)水を含む第2のストリームを提供するステップ、(3)前記第1のストリームおよび前記第2のストリームを一緒に混合するステップ、(4)それによってプレポリマー分散体を形成するステップ、(5)場合によって前記プレポリマー分散体を中和するステップ、(6)前記プレポリマーを鎖延長するステップ、(7)それによってポリウレタン分散体を形成するステップを含む。本発明によるコーティングされた物品は、基板と、基板の1つまたは複数の表面に結合された、上述の本発明のポリウレタン分散体に由来するコーティングとを含む。本発明による物品をコーティングする方法は、(1)基板を選択するステップ、(2)上述の本発明のポリウレタン分散体を含むコーティング組成物を選択するステップ、(3)基板の1または複数の表面にコーティング組成物を塗布するステップ、(4)水の少なくとも一部を除去するステップ、(5)それによってコーティングされた物品を形成するステップを含む。
【0006】
本発明を例示するために代表的である形態を図面に示すが、本発明は、示された正確な装置および手段に限定されないことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】大豆モノマーの化学反応の第1の実施形態を示す図である。
【図2】圧入深度と荷重との間の代表的な関係を示すグラフである。
【図3】引っかきの横断面を示す模式図およびMMRを算出する方法である。
【図4】表面形状測定装置を使用してスキャンした引っかき/傷の2Dビューである。
【図5】表面形状測定装置を使用してスキャンした引っかき/傷の3Dビューである。
【図6】初期硬度変化をモニターして、時間に応じたせん断応力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、ポリウレタン分散体、そのポリウレタン分散体を生成する方法、コーティングされた物品、および物品をコーティングする方法である。本発明によるポリウレタン分散体は、(a)1または複数のプレポリマーに由来する1または複数のポリウレタン単位であって、この1または複数のプレポリマーが、1または複数のイソシアネートと、1または複数の第1の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテルに溶解した混合物との反応生成物を含み、この混合物が、1または複数の天然油系ポリオール、および1または複数のアジペートポリオール、および場合によって1または複数の短いジオールを含む、単位、および(b)水を含む。ポリウレタン分散体を生成する方法は、(1)1または複数のプレポリマーを含む第1のストリームを提供するステップであって、この1または複数のプレポリマーが、1または複数のイソシアネートと、1または複数の第1の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテルに溶解した混合物との反応生成物を含み、この混合物が、1または複数の天然油系ポリオール、および1または複数のアジペートポリオール、および場合によって1または複数の短いジオールを含み、ならびにこの1または複数のプレポリマーが、1または複数の中和剤によって場合によって中和される、ステップ、(2)水を含む第2のストリームを提供するステップ、(3)前記第1のストリームおよび前記第2のストリームを一緒に混合するステップ、(4)それによってプレポリマー分散体を形成するステップ、(5)場合によって前記プレポリマー分散体を中和するステップ、(6)前記プレポリマーを鎖延長するステップ、(7)それによってポリウレタン分散体を形成するステップを含む。本発明によるコーティングされた物品は、基板と、基板の1または複数の表面に結合された、上述の本発明のポリウレタン分散体に由来するコーティングとを含む。本発明による物品をコーティングする方法は、(1)基板を選択するステップ、(2)上述の本発明のポリウレタン分散体を含むコーティング組成物を選択するステップ、(3)基板の1または複数の表面にコーティング組成物を塗布するステップ、(4)水の少なくとも一部を取り除くステップ、(5)それによってコーティングされた物品を形成するステップを含む。
【0009】
本発明によるポリウレタン分散体はさらに、1種または複数の賦形剤、1種または複数の架橋剤、1種または複数の消泡剤、1種または複数の顔料もしくは着色剤、1種または複数のレオロジー調整剤、1種または複数の接着促進剤、1種または複数の傷スリップ剤、1種または複数の湿潤剤、1種または複数の不凍剤、1種または複数の殺生物剤もしくは抗菌剤、1種または複数の界面活性剤、1種または複数のUV安定剤、1種または複数の抗酸化剤、1種または複数の流れ調整剤、およびそれらの組合せを含んでよい。
【0010】
本発明のポリウレタン分散体の固形内容物の平均粒径は、50〜1000nmの範囲にあり、例えば、平均粒径は50〜500nm、または代替として50〜500nm、または代替として50〜150nm、または代替として60〜100nm、または代替として60〜80nmの範囲にある。本発明のポリウレタン分散体は、いずれの追加の賦形剤の重量も含めることなく、20〜60重量パーセントの範囲の固形内容物を有し得て、例えば、固形内容物は30〜50重量パーセント、または代替として20〜50重量パーセント、または代替として30〜40重量パーセントの範囲である。本発明のポリウレタン分散体は、25℃で100〜3000cPs、例えば25℃で100〜1000cPs、または代替として25℃で200〜900cPs、または代替として25℃で200〜600cPsの範囲の粘度を有する。本発明のポリウレタン分散体は、0〜30、または5〜25、または5〜20、または0〜20重量パーセントの1種または複数の界面活性剤を含んでよい。
【0011】
1または複数のプレポリマーは、1または複数のイソシアネートと、1または複数の第1の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテルに溶解した混合物との反応生成物を含み、この混合物は、1または複数の天然油系ポリオール、および1または複数のアジペートポリオール、および場合によって1または複数の短いジオールを含む。
【0012】
天然油系ポリオール
天然油系ポリオールは、天然および/または遺伝子組換え植物野菜種子油および/または動物性脂肪などの再生可能原料資源に基づくまたは由来するポリオールである。かかる油および/または脂肪は一般的に、トリグリセリド類、すなわちグリセロールと結合した脂肪酸類からなる。好ましいのは、トリグリセリド中に少なくとも約70パーセントの不飽和脂肪酸を有する植物油である。天然物は、少なくとも約85重量パーセントの不飽和脂肪酸を含んでよい。好ましい植物油の例としては、限定はされないが、例えばトウゴマ、大豆、オリーブ、ピーナッツ、菜種、トウモロコシ、ゴマ、綿、キャノーラ、紅花、亜麻仁、ヤシ、ブドウ種子、ブラックキャラウェイ、カボチャ核種、ボリジ種子、木の胚芽(wood germ)、アンズ核種、ピスタチオ、アーモンド、マカデミアナッツ、アボカド、シーバックソーン、麻、へーゼルナッツ、月見草、野バラ、アザミ、胡桃、ヒマワリ、タイワンアブラギリ属(jatropha)種子油からの油、またはそれらの組合せが挙げられる。さらに、藻類などの生物から得られる油もまた使用されてよい。動物性食品の例としては、豚脂、牛脂、魚油、およびそれらの混合物が挙げられる。植物性および動物性の油/脂肪の組合せもまた使用されてよい。
【0013】
いくつかの化学反応が、天然油系ポリオールを調製するために使用できる。再生可能な資源のかかる修飾としては、限定はされないが、例えばエポキシ化、水酸化、オゾン分解、エステル化、ヒドロホルミル化、またはアルコキシル化が挙げられる。かかる修飾は、当技術分野において一般的に知られている。
【0014】
天然油の修飾によるかかるポリオールの生成の後で、修飾生成物はさらに、アルコキシル化されてよい。エチレンオキシド(EO)またはその他の酸化物とEOとの混合物を使用して、ポリオール中へ親水性部分を導入する。1つの実施形態において、修飾生成物は、十分なEOによるアルコキシル化を受けて、10重量パーセント〜60重量パーセントの間のEO、例えば20重量パーセント〜40重量パーセントの間のEOを有する天然油系ポリオールを生成する。
【0015】
別の実施形態において、天然油系ポリオールは、動物性または植物性油/脂肪がエステル転移反応を受けて、構成脂肪酸が回収される多段階処理によって得られる。このステップに続いて、構成脂肪酸中の炭素−炭素二重結合をヒドロホルミル化して、ヒドロキシメチル基を形成し、次に適切な開始化合物とヒドロキシメチル化脂肪酸との反応によって、ポリエステルまたはポリエーテル/ポリエステルを形成する。かかる多段階処理は、当技術分野において一般的に知られており、例えばPCT国際公開特許WO2004/096882および2004/096883に記載されている。多段階処理は、疎水性および親水性部分の両方を有するポリオールを結果として生成し、水および従来の石油系ポリオールの両方との混和性を結果として向上させる。
【0016】
天然油系ポリオールの生成のための多段階処理における使用のための開始剤は、従来の石油系ポリオールの生成に使用されるいずれかの開始剤であってよい。例えば、開始剤は、ネオペンチルグリコール;1,2−プロピレングリコール;トリメチロールプロパン;ペンタエリトリトール;ソルビトール;ショ糖;グリセロール;ジエタノールアミン;1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオールなどのアルカンジオール;1,4−シクロヘキサンジオール;2,5−ヘキサンジオール;エチレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール;ビス−3−アミノプロピルメチルアミン;エチレンジアミン;ジエチレントリアミン;9(1)−ヒドロキシメチルオクタデカノール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン;8,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5,2,1,02,6]デセン;ジメロールアルコール(Henkel Corporationから入手可能である36炭素ジオール);水素化ビスフェノール;9,9(10,10)−ビスヒドロキシメチルオクタデカノール;1,2,6−ヘキサントリオール、およびそれらの組合せからなる群から選択されてよい。別の方法において、開始剤は、グリセロール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ペンタエリトリトール、ジエチレントリアミン、ソルビトール、ショ糖、またはそこに存在するアルコールもしくはアミン基の少なくとも1つが、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、もしくはそれらの混合物と反応させられた上述のもののいずれか、およびそれらの組合せからなる群から選択されてよい。別の方法において、開始剤は、グリセロール、トリメチロプロパン(trimethylopropane)、ペンタエリトリトール、ショ糖、ソルビトール、および/またはそれらの混合物である。
【0017】
一実施形態において、開始剤は、エチレンオキシドまたはエチレンオキシドと少なくともその他の1つのアルキレンオキシドとの混合物でアルコキシル化されて、200〜6000の間、好ましくは500〜3000の間の分子量を有するアルコキシル化開始剤になる。
【0018】
少なくとも1つの天然油系ポリオールの官能価は、約1.5より高く、一般的に約6より高くない。一実施形態において、官能価は、約4より低い。一実施形態において、官能価は、1.5〜3の範囲にある。少なくとも1つの天然油系ポリオールの水酸基価は、約150mgKOH/gより低く、好ましくは50〜120の間、より好ましくは60〜120の間である。1つの実施形態において、水酸基価は、約100より低い。
【0019】
天然油系ポリオール中の再生可能原料のレベルは、10〜100パーセントの間、通常は10〜90パーセントの間で多様であり得る。
【0020】
天然油系ポリオールは、ポリオールブレンドの約90重量パーセントまでを構成してよい。しかし、一実施形態において、天然油系ポリオールは、ポリオールブレンドの全重量の少なくとも5重量パーセント、少なくとも10重量パーセント、少なくとも25重量パーセント、少なくとも35重量パーセント、少なくとも40重量パーセント、少なくとも50重量パーセント、または少なくとも55重量パーセントを構成してよい。天然油系ポリオールは、組み合わされたポリオールの全重量の40パーセント以上、50重量パーセント以上、60重量パーセント以上、75重量パーセント以上、85重量パーセント以上、90重量パーセント以上、または95重量パーセント以上を構成してよい。天然油系ポリオールの2種類以上の組合せもまた使用されてよい。
【0021】
天然油系ポリオールの25℃で測定された粘度は、一般的に約6000mPa.s未満であり、例えば、天然油系ポリオールの25℃で測定された粘度は、約5000mPa.s未満である。天然油系ポリオールは、500〜3000ダルトン、例えば800〜1500ダルトンの範囲の分子量を有してよい。
【0022】
NOPは、以下の
カプロラクトン系ポリエステルポリオールを含む脂肪族および芳香族ポリエステルポリオール、いずれかのポリエステル/ポリエーテルハイブリッドポリオール、PTMEG系ポリエーテルポリオール;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、およびそれらの混合物に基づくポリエーテルポリオール;ポリカーボネートポリオール;ポリアセタールポリオール、ポリアクリレートポリオール;ポリエステルアミドポリオール;ポリチオエーテルポリオール;飽和または不飽和ポリブタジエンポリオールなどのポリオレフィンポリオール
のいずれかとのブレンドであってよい。
【0023】
短鎖ジオールおよびアジペートポリオール
短鎖ポリオール、例えば短鎖ジオール成分は、二官能性開始剤をアルコキシル化する生成物であり得る。別の方法において、短鎖ポリオールは、多官能性開始剤をアルコキシル化する生成物であってよい。例えば、短鎖ジオールは、ポリオキシプロピレンジオールであってよいが、存在するのであれば、使用されるアルコキシドの少なくとも75重量パーセントが、プロピレンオキシドである限りにおいて、短鎖ジオールはまた、混合されたエチレンオキシドプロピレンオキシドポリオールであり得る。プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等などのジオールはまた、本発明の配合物で使用され得る。プレポリマー配合物の短鎖ジオール成分は、存在するのであれば、50〜500、または代替として50〜250、または代替として90〜220g/モルの分子量を有する。短鎖ジオールなどの代表的な短鎖ポリオールは、限定はされないが、少なくとも2以上の水酸基官能価および50〜500g/モルの間の分子量を有する試薬を含む。かかる短鎖ポリオールは、限定はされないが、脂肪族、芳香族、脂環式二価アルコールおよびジアルキレングリコールを含む。短鎖ポリオールの例としては、限定はされないが、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2ブタンジオール、1,3ブタンジオール、2,3ブタンジオールおよび1,4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノールの1,3/1,4異性体、1−5ペンタンジオール、1,6ヘキサンジオール、2−メチル−1,8オクタンジオール、1,9ノナンジオール、1,12ドデカンジオール、短鎖ジオールとして特公昭45−1474に記載されている環状の基を有する低分子量ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリトリトール、ソルビトール、および糖、ならびにそれらの誘導体が挙げられる。これらのポリオールは、アジピン酸およびその誘導体とともに使用されて、アジペートポリオールを形成する。
【0024】
短鎖ポリオール、例えば短鎖ジオールはさらに、1個または複数のイオン基を含んでよい。イオン基を有する、かかるポリオールの調製に使用される官能性部分は、スルホン酸ジオール、例えば3−(2,3−ジヒドロキシプロプキシ(dihydroxypropxy))−1−プロパン−スルホン酸;スルホポリカルボン酸、例えばスルホイソフタル酸、スルホコハク酸;ならびにアミノスルホン酸、例えば2−アミノエタンスルホン酸および3−アミノプロプランスルホン(propranesulfonic)酸;スルファミン酸ジオール、例えばN,N−ビス(2−ヒドロキシルアルキル)スルファミン酸(のC1〜C6のアルキル基)、またはエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドなどのそのアルキレンオキシド(AO)付加物、N,N−ビス(2−ヒドロキシ−エチル)スルファミン酸;ビス(2−ヒドロキシエチル)ホスフェート;ジアルキロールアルカン酸C6〜C24、例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸、2,2−ジメチロールオクタニック(octanic)酸;ならびにアミノ酸、例えば2−アミノエタン酸;ならびにそれらの塩、例えばトリエチルアミン、アルカノールアミン、モルホリンなどのアミンの塩および/またはナトリウム塩などのアルカリ金属塩を含む。陽イオン基を含む例としては、限定はされないが、四級アンモニウム塩基含有ジオール、三級アンモニウム基含有ジオール、およびそれらの塩が挙げられる。
【0025】
イソシアネート
ポリイソシアネート化合物の例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−および1,4−ビス(イソシアネートメチル)イソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、それらの異性体、ならびに/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0026】
第1の界面活性剤
第1の界面活性剤は、6重量パーセント未満含んでよい、例えば、第1の界面活性剤は、4〜6重量パーセント含んでよい。代表的な第1の界面活性剤としては、限定はされないが、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール植物酸、およびジアミノスルホネートが挙げられる。
【0027】
溶媒
溶媒はいずれかの溶媒であってよく、例えば、溶媒は有機溶媒であってよい。代表的な溶媒としては、限定はされないが、The Dow Chemical CompanyからPROGLYDE(登録商標)DMMの商品名で市販されているジプロピレングリコールジメチルエーテルおよびトリプロピレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。さらなる溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)を含んでよい。
【0028】
プレポリマー
プレポリマーは、1または複数のイソシアネートと、1または複数の第1の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテルに溶解した混合物との反応生成物であり、この混合物は、1または複数の天然油系ポリオール、および1または複数のアジペートポリオール、および場合によって1または複数の短いジオールを含む。
【0029】
本発明に使用されるポリウレタンプレポリマーは、任意の従来の既知の方法、例えばバッチ法または連続法による、例えば溶解法、熱溶解法、もしくはポリウレタンプレポリマー混合法によって生成されてよい。さらに、例えば、ポリウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネート化合物を、活性水素含有化合物、すなわち1または複数の天然油系ポリオール、および1または複数のアジペートポリオール、および場合によって1または複数の短いジオールを含む混合物と反応させる方法で生成されてよく、それらの例は、有機溶媒中で、ポリイソシアネート化合物を、1または複数の天然油系ポリオール、および1または複数のアジペートポリオール、および場合によって1または複数の短いジオールを含む混合物と反応させて、次に場合によって溶媒を取り除く方法を含む。1つの実施形態において、1または複数のプレポリマーは、1または複数のイソシアネートと、1または複数の第1の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテルに溶解した混合物との反応生成物を含み、この混合物は、1または複数の天然油系ポリオール、および1または複数のアジペートポリオール、および場合によって1または複数の短いジオールを含む。
【0030】
例えば、ポリイソシアネート化合物は、20℃〜150℃の範囲、または代替として30℃〜130℃の範囲の温度で、イソシアネート基の活性水素基に対する当量比、例えば、1.1:1〜3:1、または代替として1.2:1〜2:1で、有機溶媒中で1つまたは複数の天然油系ポリオール、および1つまたは複数のアジペートポリオール、および場合によって1つまたは複数の短いジオールを含む混合物と反応させてよい。別の方法において、プレポリマーは、水酸基末端ポリマーの生成をそれによって促進する、過剰量の活性水素基で調製してよい。
【0031】
有機溶媒中で1または複数の天然油系ポリオール、および1または複数のアジペートポリオール、および場合によって1または複数の短いジオールを含む混合物から得られたポリウレタンプレポリマーは、1または複数の反応性または非反応性のエチレン性不飽和モノマーの存在下で調製され得る。かかるモノマーをさらに重合して、ハイブリッドポリウレタン分散体を生成してよい。
【0032】
ポリウレタンプレポリマーはさらに、1個または複数のイオン基を含む。イオン基を有する、かかるプレポリマーの調製に使用される官能性部分は、スルホン酸ジオール、例えば3−(2,3−ジヒドロキシプロプキシ)−1−プロパン−スルホン酸;スルホポリカルボン酸、例えばスルホイソフタル酸、スルホコハク酸;ならびにアミノスルホン酸、例えば2−アミノエタンスルホン酸および3−アミノプロプランスルホン酸;スルファミン酸ジオール、例えばN,N−ビス(2−ヒドロキシルアルキル)スルファミン酸(C1〜C6のアルキル基)、またはエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドなどのそのアルキレンオキシド(AO)付加物、N,N−ビス(2−ヒドロキシ−エチル)スルファミン酸;ビス(2−ヒドロキシエチル)ホスフェート;ジアルキロールアルカン酸C6〜C24、例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸、2,2−ジメチロールオクタニック酸;ならびにアミノ酸、例えば2−アミノエタン酸;ならびにそれらの塩、例えばトリエチルアミン、アルカノールアミン、モルホリンなどのアミンの塩および/またはナトリウム塩などのアルカリ金属塩を含む。陽イオン基を含む例としては、限定はされないが、四級アンモニウム塩基含有ジオール、三級アンモニウム基含有ジオール、およびそれらの塩が挙げられる。
【0033】
ポリウレタンプレポリマーはさらに、親水基を含んでよい。本明細書に使用される用語「親水基」は、陰イオン基(例えばカルボキシル基、スルホン酸基、もしくはホスホン酸基)、または陽イオン基(例えば三級アミノ基もしくは四級アミノ基)、または非イオン性親水基(例えばエチレンオキシドの繰り返し単位からなる基もしくはエチレンオキシドの繰り返し単位および別のアルキレンオキシドの繰り返し単位からなる基)のことである。
【0034】
最終的に得られるポリウレタンの乳濁液が、その他の種類の乳濁液との優秀な適合性を有するので、親水基の中で、例えばエチレンオキシドの繰り返し単位を有する非イオン性親水基が好まれ得る。カルボキシル基および/またはスルホン酸基の導入は、粒径をより微細にするのに効果的である。
【0035】
イオン基が陰イオン基の場合、中和に使用される中和剤は、例えば水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムなどの非揮発性塩基、ならびに三級アミン(例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、およびトリエタノールアミン)などの揮発性塩基を含み、アンモニアが使用され得る。
【0036】
イオン基が陽イオン基の場合、使用可能な中和剤は、例えば塩酸、硫酸、および硝酸などの無機酸、ならびにギ酸および酢酸などの有機酸を含む。
【0037】
中和は、イオン基を有するポリウレタンプレポリマーの重合の前、間、または後に実行されてよい。ポリウレタンプレポリマーに直接中和剤を加える、またはポリウレタン分散体の生成の間に水相に加えることで、中和に影響を与えてよい。
【0038】
プレポリマーは、鎖延長剤で鎖延長してよい。ポリウレタンを調製する当業者にとって有用であることが知られている鎖延長剤を、本発明で使用できる。かかる鎖延長剤は典型的に30〜500の分子量を有し、少なくとも2個の活性水素含有基を有する。ポリアミンは、鎖延長剤の好ましいクラスである。その他の材料、特に水は、鎖の長さを延長するために機能でき、したがって本発明の目的のための鎖延長剤である。鎖延長剤が水、または水と例えばHuntsman Chemical CompanyのJeffamine D−400などのアミノ化されたポリプロピレングリコール、アミノエチルピペラジン、2−メチルピペラジン、1,5−ジアミノ−3−メチル−ペンタン、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリエチレンペンタミン、エタノールアミン、立体異性体のいずれかのリジンおよびそれらの塩、ヘキサンジアミン、ヒドラジン、ならびにピペラジンなどのアミンとの混合物であることが特に好ましい。本発明の実施において、鎖延長剤は、鎖延長剤の水溶液として使用されてよい。
【0039】
ポリウレタン分散体(PUD)の調製
本発明によるPUDは、バッチ法または連続法で生成されてよい。ポリウレタンプレポリマー、場合によって1種または複数の界面活性剤、および水を、攪拌器、例えばOAKSミキサーまたはIKAミキサーに入れ、それによってポリウレタンプレポリマーを水中に分散し、次に一級または二級アミンで鎖延長して、PUDを形成する。
【0040】
1つの実施形態において、ポリウレタン分散体を生成する方法は、(1)1または複数のプレポリマーを含む第1のストリームを提供するステップであって、この1または複数のプレポリマーが、1または複数のイソシアネートと、1または複数の第1の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテルに溶解した混合物との反応生成物を含み、この混合物が、1または複数の天然油系ポリオール、および1または複数のアジペートポリオール、および場合によって1または複数の短いジオールを含み、ならびにこの1または複数のプレポリマーが、1または複数の中和剤によって場合によって中和される、ステップ、(2)水を含む第2のストリームを提供するステップ、(3)前記第1のストリームおよび前記第2のストリームを一緒に混合するステップ、(4)それによってプレポリマー分散体を形成するステップ、(5)場合によって前記プレポリマー分散体を中和するステップ、(6)前記プレポリマーを鎖延長するステップ、(7)それによってポリウレタン分散体を形成するステップを含む。
【0041】
最終用途への応用
本発明によるコーティングされた物品は、基板と、基板の1または複数の表面に結合された、上述の本発明のポリウレタン分散体に由来するコーティングとを含む。基板の1または複数の表面は、例えば本発明のポリウレタン分散体の塗布に先立って、処理、例えば下塗りをしてよい。基板は、いずれの基板であってもよく、例えば基板は、木材、コンクリート、プラスチック、およびそれらの組合せであってよい。
【0042】
本発明による物品をコーティングする方法は、(1)基板を選択するステップ、(2)上述の本発明のポリウレタン分散体を含むコーティング組成物を選択するステップ、(3)基板の1または複数の表面にコーティング組成物を塗布するステップ、(4)水の少なくとも一部を取り除くステップ、(5)それによってコーティングされた物品を形成するステップを含む。
【0043】
本発明のポリウレタン分散体は、基板の1または複数の表面に、任意の方法で、例えば吹き付け、刷毛塗り、浸し塗り、ドローダウン(drawdown)等で塗布されてよい。
【0044】
本発明のポリウレタン分散体は、フィルム形成組成物である。本発明のポリウレタン分散体に由来するフィルムは、1μm〜2mm、または代替として1〜500μm、または代替として1〜200μm、または代替として1〜100μm、または代替として20〜50μmの範囲の厚さを有し得る。本ポリウレタン分散体に由来するフィルムは、より良いそれ、関連する比較のフィルム、改良された、少なくとも2X、または少なくとも5X、または少なくとも6Xのマイクロ傷抵抗(Micro Mar Resistance)を有する。本ポリウレタン分散体に由来するフィルムは、ASTM D−4366による、約125秒を超える、または代替として130秒を超える、または代替として135秒を超える、または代替として140秒を超える、または代替として145秒を超える範囲のケーニッヒ硬度を有する。本ポリウレタン分散体に由来するフィルムは、ASTM D−870による、膨らみまたはしみのない0から、分解する5の段階で、0の範囲の水抵抗の評価を有する。
【実施例】
【0045】
以下の実施例は、本発明を例示するが、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0046】
天然油系(NOP)ポリオールの合成
天然油ポリオール(NOP)を、大豆油に由来する脂肪酸メチルエステル(FAME)から、3つの反応ステップで調製した。図1に示すとおり、FAMEを、最初にヒドロホルミル化してアルデヒド中間体にし、次に第2のステップにおいて水素化して大豆モノマーにした。大豆モノマーの平均水酸基官能価は、およそ1.0である。NOPの目標分子量は、800〜1000g/モルの間であり、NOPの実際の分子量は、およそ845g/モルであった。水酸基価の目標は、112〜140mgKOH/gの間であった。
【0047】
次に、結果として生じるモノマーを、適切なグリコールによってエステル転移する。この方法において、ポリオール分子量は、グリコール開始剤によるモノマーの縮合およびモノマーの自己縮合の両方によって、増加する。モノマーの平均官能価およびモノマーのグリコール開始剤に対する割合を調整することによって、ポリオール分子量および平均官能価の両方は、体系的に調整できる。さらに、開始剤の構造を調節して、所望の性能特性または適合性を得ることができる。好ましいグリコール開始剤は、1,6−ヘキサンジオールおよびUNOXOL(登録商標)ジオールなどの反応性の一級水酸基を含む。UNOXOL(登録商標)ジオールは、1,3−シクロヘキサンジメタノールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールのおよそ50:50の混合物である液体脂環式ジオールであり、シスおよびトランス異性体の混合物である。この化学反応の結果として、ポリオールは一級水酸基を含み、不飽和を含まない。
【0048】
1,3/1,4(シス、トランス混合)シクロヘキサンジメタノール)アジペートポリオールの合成
アジペートポリオールを、以下の配合に基づき、以下の手順によって調製した。
【0049】
【表1】

【0050】
2000mlの三つ口丸底フラスコに、機械式攪拌器、ジエンスタートラップ(dien star trap)、コンデンサー、および窒素発泡システムを設置した。フラスコ内へ、UNOXOL(登録商標)ジオール、アジピン酸、およびジブチル錫オキシドを入れた。
【0051】
加熱する前に約15分間、系に窒素を流した。内容物をゆっくり150℃までにし、そのまま8時間維持した。水104mlを8時間後に収集した。夜間は停止した。翌朝、150℃まで再加熱した。フラスコへの窒素パージで、さらに8時間、実行した。水0mlを収集した。温度は150℃のままにして、さらに8時間、窒素を系に吹き込んだ。水0mlを収集した。夜間は停止した。翌朝、160℃まで再加熱した。フラスコへの窒素パージで、さらに8時間、実行した。メタノール0mlを収集した。翌朝、160℃まで再加熱した。フラスコへの窒素パージで、さらに8時間、実行した。メタノール0mlを収集した。温度は160℃のままにして、さらに8時間、窒素を系に吹き込んだ。メタノール0mlを収集した。
【0052】
プレポリマーの調製の手順
追加の装置、すなわち水冷コンデンサー、機械式攪拌器、温度計、および窒素の注入/排出管を設置した500mlの四つ口丸底フラスコにおいて、プレポリマーの調製を実行した。窒素パージおよび攪拌速度500rpmを反応の全行程で塗布した。油浴を、反応温度を維持するための熱源として使用した。典型的なプレポリマーの調製において、ポリエステルポリオールおよびジメチロールプロピオン酸[DMPA]を反応フラスコ内に加え、続いてイソシアネートを加えた。個別にまたはブレンドとしてのいずれかで加えたポリオールを、最初に、所望の反応温度よりも15〜20℃低い温度まで加熱した。ポリオールおよび溶媒の添加を完了したときに、反応混合物を攪拌(200rpm)して所望の温度(80〜90℃)まで加熱した。一旦、理論上のパーセントのNCOに到達したら、最終生成物を窒素雰囲気生成装置で試料容器へ移動し、分散のために使用した。プレポリマーのための適切な溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、およびジプロピレングリコールのジメチルエーテルが挙げられる。
【0053】
ポリウレタン分散体(PUD)の合成
プレポリマーに使用される酸の95〜110パーセントの化学量論量(モル)で三級アミン(例えばトリエチルアミン、TEA)を使用して、プレポリマーを中和する、小規模な(500ml)バッチ法でPUDを調製した。高いせん断力(50,000〜100,000sec−1)を発生させる特別な攪拌器を使用して、所定の量の水を勢いよく攪拌しながら、ゆっくりプレポリマーに加えた。水を連続的に加えると、分散体粘度が約3000cP(Brookfield Spindle#4、50rpm)より低く下がった。次に、分散体をアミン(例えばエチレンジアミン)で、完全に鎖延長した。最終分散体は、固形含有量約35重量パーセントおよび数平均粒径約100nmを有した。
【0054】
本発明の実施例1の調製
PROGLYDE(登録商標)DMM溶媒中の大豆−アジペートPUD。ポリオール成分は、NOPポリオール50重量パーセントならびに同じ分子量および官能価を有するUNOXOL(登録商標)アジペートポリオール50重量パーセントの混合物である。プレポリマー100gmを有するPUDを調製するための配合物の成分を表1に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
上の処方に対して前節に記載された手順を実施し、所望のPUDを得た。本PUDの特徴は、様々な基板にコーティングする前の、固体のパーセンテージおよび粒径である。ペイントブラシを使用して、予め密閉したオーク材基板に、コーティングを行った。特性のための試験をする前に、試料を周囲条件(50パーセントRHおよび23℃)で7日間乾燥した。
【0057】
比較例2の調製
NOPおよびUNOXOL(登録商標)アジペートポリオールを、同様の分子量および官能価のカプロラクトンジオールで置き換えることによって、本発明の実施例1に使用された処方を変更した。PROGLYDE(登録商標)DMMを溶媒として使用した。
【0058】
比較例3の調製
NOPおよびUNOXOL(登録商標)アジペートポリオールを、同様の分子量および官能価のポリオール、Chemturaによって提供されるFomRez PES−G24−112で置き換えることによって、本発明の実施例1に使用された処方を変更した。PROGLYDE(登録商標)DMMを溶媒として使用した。
【0059】
コーティング試料の塗装
ドローダウンバーを使用して、スチールパネルおよびスライドガラスに、コーティング試料を塗布して、乾燥した厚さ約1.5ミルを有するコーティングを得た。特性のための試験をする前に、試料を周囲条件(50パーセントRHおよび23℃)で7日間乾燥した。表2および3に関しては、各物性およびコーティング性能特性についての様々な汚染剤の効果のために、各表に示したとおり各試料を何回も測定した、そして測定された特性の結果を表2および3に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
ケーニッヒ硬度
振子式(ケーニッヒ)硬度を、ASTM D4366によって測定した。地金基板に行ったコーティングに関して、実験を実行した。使用されたコーティングの厚さは、約1.5ミルであった。試験は、振子に付いた球圧子をコーティング上に置き、振動させた後で振動が減退するのに必要とした時間を測定する。報告された結果は、3回の平均である。
【0063】
汚染抵抗:表に示された様々な汚染剤を金属基板に行われたコーティングに滴下し、時計皿で覆った。汚染剤を、24時間(マスタードを除く、マスタードは1時間、維持した)置き、その後、汚染剤を水で洗浄し乾燥した。評価を、汚染剤の痕がないことを表わす0から、最大の(完全な)汚染の5までの、0〜5で示した。
【0064】
圧入硬度および係数
圧入試験は、深度を測定しながら小さな荷重(30秒の間中5mN)をかけ、ポリマーをクリープさせ、次に荷重を取り除き、最終深度を測定することに基づいている。
【0065】
図2に関して、荷重をかけないデータを合わせることによって、コーティングの硬度、係数、および回復の側面を判定できる。
【0066】
マイクロ傷抵抗
マイクロ傷抵抗は傷に対する抵抗であり、垂直荷重を測定し、断面積でそれを割ることによって計算され、パスカルで表わされる。せん断力ばかりでなく垂直力も測定しながら、荷重を増加させて傷/引っかきをコーティングにつける。断面積を計算することによって、特定の垂直力におけるマイクロ傷抵抗を計算し、報告する。
【0067】
初期硬度変化(ASTM D−4366)
動的機械式分光法を使用して、時間に対する係数を測定することによって、硬度変化をモニターした。変更した平行平板配置を使用して、せん断モードで測定した。水性PUDを直径25mmのアルミニウムのコップに入れ、測定ロードセルに付けた板によって、押し込んで厚さ1mmのフィルムにした。振動せん断測定を、硬化の程度に基づく様々なパーセントのひずみで、1Hzで実行した。23℃および50パーセントRHで、試験を行った。データ点を、24時間の間10分ごとに収集した。アジペートポリオールで作製したPUDばかりでなく、競合するPUDと比較して、大豆ポリオールおよびPROGLYDE(登録商標)DMM溶媒の組合せを使用したとき、硬度変化はより速かった。結果を図6に示す。それらはy軸は、周波数1Hzおよび直線部のひずみ速度で、10分ごとに測定されたせん断応力を表わす。開始における差異は、PUD中の水の量に起因し得る。速度または線の勾配は、硬度変化速度を示し、PROGLYDE(登録商標)DMMを有する大豆PUDが、初期硬度変化の速い速度を示すことを、明確に理解することができる。
【0068】
本発明は、その精神および必須の特性から逸脱することなく、その他の形態で実施してよく、したがって、前述の明細書よりむしろ、本発明の範囲を示す添付の特許請求の範囲を参照すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数のプレポリマーに由来する1または複数のポリウレタン単位であって、前記1または複数のプレポリマーが、1または複数のイソシアネートと、1または複数の第1の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテルに溶解した混合物との反応生成物を含み、前記混合物が、1または複数の天然油系ポリオール、および1または複数のアジペートポリオール、および場合によって1または複数の短いジオールを含む、ポリウレタン単位、および

を含むポリウレタン分散体。
【請求項2】
ポリウレタン分散体を生成する方法であって、
1または複数のプレポリマーを含む第1のストリームを提供するステップであって、前記1または複数のプレポリマーが、1または複数のイソシアネートと、1または複数の第1の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテルに溶解した混合物との反応生成物を含み、前記混合物が、1または複数の天然油系ポリオール、および1または複数のアジペートポリオール、および場合によって1または複数の短いジオールを含み、前記1または複数のプレポリマーが1または複数の中和剤によって場合によって中和されるステップ、
水を含む第2のストリームを提供するステップ、
前記第1のストリームおよび前記第2のストリームを一緒に混合するステップ、
それによってプレポリマー分散体を形成するステップ、
場合によって前記プレポリマー分散体を中和するステップ、
前記プレポリマーを鎖延長するステップ、
それによって前記ポリウレタン分散体を形成するステップ
を含む方法。
【請求項3】
基板と、
前記基板の1または複数の表面に結合されたコーティングであって、
1または複数のプレポリマーに由来する1または複数のポリウレタン単位であって、前記1または複数のプレポリマーが、1または複数のイソシアネートと、1または複数の第1の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテルに溶解した混合物との反応生成物を含み、前記混合物が、1または複数の天然油系ポリオール、および1または複数のアジペートポリオール、および場合によって1または複数の短いジオールを含む、ポリウレタン単位、および

を含むポリウレタン分散体に由来するコーティングと
を含むコーティングされた物品。
【請求項4】
物品をコーティングする方法であって、
基板を選択するステップ、
1または複数のプレポリマーに由来する1または複数のポリウレタン単位であって、前記1または複数のプレポリマーが、1または複数のイソシアネートと、1または複数の第1の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテルに溶解した混合物との反応生成物を含み、前記混合物が、1または複数の天然油系ポリオール、および1または複数のアジペートポリオール、および場合によって1または複数の短いジオールを含む、ポリウレタン単位、および

を含むポリウレタン分散体を含むコーティング組成物を選択するステップ、
前記基板の1または複数の表面に前記コーティング組成物を塗布するステップ、
水の少なくとも一部を除去するステップ、
それによって前記コーティングされた物品を形成するステップ
を含む、物品をコーティングする方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2012−522102(P2012−522102A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503440(P2012−503440)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/023458
【国際公開番号】WO2010/114643
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】