説明

ポリウレタン分散液、その作製方法、被覆物品及び物品の被覆方法

本発明は、ポリウレタン分散液、その作製方法、被覆物品及び物品の被覆方法である。本発明によるポリウレタン分散液は、(a)1つ又はそれ以上のプレポリマー(前記1つ又はそれ以上のプレポリマーは、1つ又はそれ以上の第1の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテル中で溶解している1つ又はそれ以上の天然油系ポリオールと1つ又はそれ以上のイソシアネートとの反応生成物を含む。)から誘導される1つ又はそれ以上のポリウレタン単位と、(b)水とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年3月31日に出願され、「POLYURETHANE DISPERSION, METHOD OF PRODUCING THE SAME, COATED ARTICLES, AND METHOD FOR COATING ARTICLES」と題される米国仮特許出願第61/165,013号からの優先権を主張する非仮出願であり、その教示は以下に全体が再現される如く参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ポリウレタン分散液、その作製方法、被覆物品及び物品の被覆方法に関する。
【背景技術】
【0003】
付着性は、表面被覆用途、例えば木材被覆用途、コンクリート被覆用途、金属被覆用途又はプラスチック被覆用途のための重要な性能特性である。ポリウレタン分散液は一般に、最初の装置製造業者又は後続の個々の最終使用者によりそのような被覆用途に使用される。木材表面の性質及びポリウレタンの化学的性質に起因して、木材表面上での付着は極めて困難である。いくつかの異なるアプローチが、木材基体上でのより良好な付着を促進するために用いられている。これらのアプローチとしては、例えばポリウレタン骨格上でのシラン官能基の組み込み、アクリル/ビニル官能基、例えばハイブリッド及びブレンドの組み込み、骨格に対する脂肪酸修飾、紫外線硬化性部分の組み込み、並びにより特殊な化学反応、例えばフッ素化又は塩素化が挙げられる。付着促進剤を添加剤として使用して付着を促進することも一般的である。しかしながら、これらのアプローチは、所望の性能を達成するために余分なコスト及び労力をもたらす。
【0004】
したがって、例えば木材被覆用途、コンクリート被覆用途、金属被覆用途又はプラスチック被覆用途において改善された付着特性を提供するポリウレタン分散液が必要とされている。さらに、例えば木材被覆用途、コンクリート被覆用途、金属被覆用途又はプラスチック被覆用途における改善された付着特性を提供するポリウレタン分散液を作製する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ポリウレタン分散液、その作製方法、被覆物品及び物品の被覆方法である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態において、本発明は、(a)1つ又はそれ以上のプレポリマー(前記1つ又はそれ以上のプレポリマーは、1つ又はそれ以上の第1の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテル中で溶解している1つ又はそれ以上の天然油系ポリオールと1つ又はそれ以上のイソシアネートとの反応生成物を含む)から誘導される1つ又はそれ以上のポリウレタン単位と、(b)水とを含むポリウレタン分散液を提供する。
【0007】
別の実施形態において、本発明は、(1)1つ又はそれ以上のプレポリマー(前記1つ又はそれ以上のプレポリマーは、1つ又はそれ以上の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテル中で溶解している1つ又はそれ以上の天然油系ポリオールと1つ又はそれ以上のイソシアネートとの反応生成物を含み、前記プレポリマーを、1つ又はそれ以上の中和剤により場合により中和する)を含む第1の流れを提供する工程と;(2)水を含む第2の流れを提供する工程と;(3)前記第1の流れ及び前記第2の流れを共に合する工程と;(4)それによりプレポリマー分散液を形成する工程と;(5)前記プレポリマー分散液を場合により中和する工程と;(6)前記プレポリマーを鎖伸長する工程と;(7)それによりポリウレタン分散液を形成する工程とを含む、ポリウレタン分散液を作製する方法を提供する。
【0008】
別の実施形態において、本発明は、基体;及び前記基体の1つ又はそれ以上の表面に付随する被覆を含み、前記被覆は、(a)1つ又はそれ以上のプレポリマー(前記1つ又はそれ以上のプレポリマーは、1つ又はそれ以上の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテル中で溶解している1つ又はそれ以上の天然油系ポリオールと1つ又はそれ以上のイソシアネートとの反応生成物を含む)から誘導される1つ又はそれ以上のポリウレタン単位と、(b)水とを含むポリウレタン分散液から誘導される被覆物品を提供する。
【0009】
別の実施形態において、本発明は、(1)基体を選択する工程と;(2)(a)1つ又はそれ以上のプレポリマー(前記1つ又はそれ以上のプレポリマーは、1つ又はそれ以上の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテル中で溶解している1つ又はそれ以上の天然油系ポリオールと1つ又はそれ以上のイソシアネートとの反応生成物を含む)から誘導される1つ又はそれ以上のポリウレタン単位と、(b)水とを含むポリウレタン分散液を含む被覆組成物を選択する工程と;(3)前記被覆組成物を前記基体の1つ又はそれ以上の表面に塗布する工程と;(4)少なくとも一部の水を除去する工程と;(5)それにより被覆物品を形成する工程とを含む、被覆物品を製造する方法を提供する。
【0010】
代替的実施形態において、本発明は、1つ又はそれ以上のプレポリマーが1つ又はそれ以上の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテル及びジプロピレングリコールジメチルエーテル中で溶解している1つ又はそれ以上の天然油系ポリオールと1つ又はそれ以上のイソシアネートとの反応生成物を含むことを除外する、前述の実施形態のいずれかによるポリウレタン分散液、その作製方法、被覆物品及び物品の被覆方法を提供する。
【0011】
本発明を説明する目的のため、例示の形態が図面において示されるが、本発明は、示されている厳密な配置及び手段に限定されるものではないと解される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ダイズモノマー化学反応の第1の実施形態を説明する図である。
【図2】早期硬度発揮をモニタリングする時間の関数としての剪断応力を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ポリウレタン分散液、その作製方法、被覆物品及び物品の被覆方法である。本発明によるポリウレタン分散液は、(a)1つ又はそれ以上のプレポリマー(前記1つ又はそれ以上のプレポリマーは、1つ又はそれ以上の第1の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテル中で溶解している1つ又はそれ以上の天然油系ポリオールと1つ又はそれ以上のイソシアネートとの反応生成物を含む)から誘導される1つ又はそれ以上のポリウレタン単位と、(b)水とを含む。本発明によるポリウレタン分散液を作製する方法は、(1)1つ又はそれ以上のプレポリマー(前記1つ又はそれ以上のプレポリマーは、1つ又はそれ以上の第1の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテル中で溶解している1つ又はそれ以上の天然油系ポリオールと1つ又はそれ以上のイソシアネートとの反応生成物を含み、前記プレポリマーを、1つ又はそれ以上の中和剤により場合により中和する。)を含む第1の流れを提供する工程と;(2)水を含む第2の流れを提供する工程と;(3)前記第1の流れ及び前記第2の流れを共に合する工程と;(4)それによりプレポリマー分散液を形成する工程と;(5)前記プレポリマー分散液を場合により中和する工程と;(6)前記プレポリマーを鎖伸長する工程と;(7)それによりポリウレタン分散液を形成する工程とを含む。
【0014】
本発明によるポリウレタン分散液の固体含有物の平均粒度直径は、50から1000nmの範囲内であり、例えば、平均粒度直径は、50から500nmの範囲内であり;又は代替的に50から500nm;又は代替的に50から150nm;又は代替的に60から100nm;又は代替的に60から80nmの範囲内である。本発明によるポリウレタン分散液は、20から60重量パーセント(いかなる追加の充填剤の重量も含まない)の範囲内の固体含有率を有することができ、例えば、固体含有率は、30から50重量パーセント;又は代替的に20から50重量パーセント;又は代替的に30から40重量パーセントの範囲内である。本発明によるポリウレタン分散液は、25℃において100から3000cPの範囲内の粘度を有し、例えば、25℃において100から1000cP;又は代替的に25℃において200から900cP;又は代替的に25℃において200から600cPの範囲内である。本発明によるポリウレタン分散液は、0から30重量パーセント又は5から25重量パーセント又は5から20重量パーセント又は0から20重量パーセントの1つ又はそれ以上の溶媒を含むことができる。
【0015】
本発明によるポリウレタン分散液は、1つ又はそれ以上の充填剤、1つ又はそれ以上の架橋剤、1つ又はそれ以上の脱泡剤、1つ又はそれ以上の顔料又は着色剤、1つ又はそれ以上のレオロジー改質剤、1つ又はそれ以上の付着促進剤、1つ又はそれ以上の傷及びスリップ防止剤(mar and slip agent)、1つ又はそれ以上の湿潤剤、1つ又はそれ以上の凍結防止剤、1つ又はそれ以上の殺生物剤又は抗菌剤;1つ又はそれ以上の界面活性剤;1つ又はそれ以上のUV安定剤;1つ又はそれ以上の酸化防止剤;1つ又はそれ以上の流動制御剤及びそれらの組合せをさらに含むことができる。
【0016】
1つ又はそれ以上のプレポリマーは、1つ又はそれ以上の第1の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテル中で溶解している混合物と1つ又はそれ以上のイソシアネートの反応生成物を含み、前記混合物は、1つ又はそれ以上の天然油系ポリオール及び1つ又はそれ以上のアジペートポリオール及び場合により1つ又はそれ以上の短鎖ジオールを含む。
【0017】
天然油系ポリオール
天然油系ポリオールは、再生可能原料源、例えば天然油及び/又は遺伝子組換え植物の植物種子油及び/又は動物源脂肪を主成分とするポリオール、又はそれらから誘導されるポリオールである。そのような油及び/又は脂肪は一般に、トリグリセリド、すなわちグリセロールと共に結合している脂肪酸からなる。好ましくは、トリグリセリド中に少なくとも約70パーセントの不飽和脂肪酸を有する植物油である。天然生成物は、少なくとも約85重量パーセントの不飽和脂肪酸を含有し得る。好ましい植物油の例としては、限定されるものではないが、例えばトウゴマ、ダイズ、オリーブ、ラッカセイ、ナタネ、トウモロコシ、ゴマ、ワタ、キャノーラ、ベニバナ、アマニ、ヤシ、ブドウ種子、ブラックキャラウェイ、南瓜仁、ルリヂサ種子、ウッドジャーム(wood germ)、杏仁、ピスタチオ、アーモンド、マカダミアナッツ、アボカド、シーバックソーン、アサ、ヘーゼルナッツ、マツヨイグサ、野バラ、アザミ、クルミ、ヒマワリ、ジャトロファ種子の油に由来する植物油又はそれらの組合せが挙げられる。さらに、生物体、例えば藻類から得られる油を使用することもできる。動物生成物の例としては、豚脂、牛脂、魚油及びそれらの混合物が挙げられる。植物系及び動物系の油/脂肪の組合せを使用することもできる。
【0018】
天然油系ポリオールを調製するためにいくつかの化学反応を使用することができる。再生可能源のそのような改質としては、限定されるものではないが、例えば、エポキシ化、ヒドロキシル化、オゾン分解、エステル化、ヒドロホルミル化又はアルコキシル化が挙げられる。そのような改質は一般に当分野において公知である。
【0019】
天然油の改質によりそのようなポリオールを作製した後、その改質した生成物をさらにアルコキシル化することができる。エチレンオキシド(EO)又は他のオキシドとのEOの混合物を使用することにより、親水性部分がポリオール中に導入される。一実施形態において、改質した生成物は、10重量パーセントから60重量パーセント EO、例えば20重量パーセントから約40重量パーセント EOを有する天然油系ポリオールを作製するのに十分なEOによりアルコキシル化を受ける。
【0020】
別の実施形態において、天然油系ポリオールは、動物又は植物油/脂肪をトランスエステル化に供し、構成脂肪酸を回収する多工程法により得られる。この工程の後、構成脂肪酸中の炭素−炭素二重結合をヒドロホルミル化してヒドロキシメチル基を形成し、次いでヒドロキシメチル化脂肪酸を適切な開始剤化合物と反応させることによりポリエステル又はポリエーテル/ポリエステルを形成する。そのような多工程法は一般に当分野において公知であり、例えば、PCT国際公開番号WO2004/096882及びWO2004/096883に記載されている。多工程法は、疎水性部分と親水性部分の両方を有するポリオールの生成をもたらし、それにより水と慣用の石油系ポリオールの両方との混和性が向上する。
【0021】
天然油系ポリオールの生成のために多工程法において使用される開始剤は、慣用の石油系ポリオールの生成において使用される任意の開始剤であり得る。開始剤は、例えば、ネオペンチルグリコール;1,2−プロピレングリコール;トリメチロールプロパン;ペンタエリスリトール;ソルビトール;スクロース;グリセロール;ジエタノールアミン;アルカンジオール、例えば1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール;1,4−シクロヘキサンジオール;2,5−ヘキサンジオール;エチレングリコール;ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;ビス−3−アミノプロピルメチルアミン;エチレンジアミン;ジエチレントリアミン;9(1)−ヒドロキシメチルオクタデカノール;1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン;8,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5,2,1,02,6]デセン;Dimerolアルコール(Henkel Corporationから入手可能な36個の炭素ジオール);水素化ビスフェノール;9,9(10,10)−ビスヒドロキシメチルオクタデカノール;1,2,6−ヘキサントリオール及びそれらの組合せからなる群から選択することができる。代替的に、開始剤は、グリセロール;エチレングリコール;1,2−プロピレングリコール;トリメチロールプロパン;エチレンジアミン;ペンタエリスリトール;ジエチレントリアミン;ソルビトール;スクロース;又は本明細書中のアルコール若しくはアミン基の少なくとも1つがエチレンオキシド、プロピレンオキシド若しくはそれらの混合物と反応した上記のいずれか;及びそれらの組合せからなる群から選択することができる。さらに代替的に、開始剤は、グリセロール、トリメチロプロパン、ペンタエリスリトール、スクロース、ソルビトール及び/又はそれらの混合物である。
【0022】
一実施形態において、開始剤は、エチレンオキシド又はエチレンオキシド及び少なくとも1つの他のアルキレンオキシドの混合物によりアルコキシル化して約200から約6000、好ましくは約500から約3000の分子量を有するアルコキシル化開始剤を得る。
【0023】
少なくとも1つの天然油系ポリオールの官能価は、約1.5超であり、一般に約6以下である。一実施形態において、この官能価は、約4未満である。一実施形態において、この官能価は、1.5から3の範囲内である。少なくとも1つの天然油系ポリオールのヒドロキシル価は、約150mg KOH/g未満、好ましくは約50から約120 KOH/g、より好ましくは約60から約120mg KOH/gである。一実施形態において、このヒドロキシル価は約100未満である。
【0024】
天然油系ポリオール中の再生可能原料のレベルは、約10から約100パーセントまで、通常約10から約90パーセントまで変動し得る。
【0025】
天然油系ポリオールは、ポリオールブレンドの最大約90重量パーセントを構成することができる。しかしながら、一実施形態において、天然油系ポリオールは、ポリオールブレンドの総重量の少なくとも5重量パーセント、少なくとも10重量パーセント、少なくとも25重量パーセント、少なくとも35重量パーセント、少なくとも40重量パーセント、少なくとも50重量パーセント又は少なくとも55重量パーセントを構成することができる。天然油系ポリオールは、組合せポリオールの総重量の40パーセント以上、50重量パーセント以上、60重量パーセント以上、75重量パーセント以上、85重量パーセント以上、90重量パーセント以上又は95重量パーセント以上を構成することができる。天然油系ポリオールの2種以上の組合せを使用することもできる。
【0026】
天然油系ポリオールの25℃において計測される粘度は一般に、約6000mPa.s未満であり、例えば、天然油系ポリオールの25℃において計測される粘度は、約5000mPa.s未満である。天然油系ポリオールは、500から3000ダルトンの範囲内、例えば、800から1500ダルトンの範囲内の分子量を有することができる。
NOPは、以下のもののいずれかとブレンドすることができる:
カプロラクトン系ポリエステルポリオールを含む脂肪族及び芳香族ポリエステルポリオール、任意のポリエステル/ポリエーテルハイブリッドポリオール、PTMEG系ポリエーテルポリオール;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド及びそれらの混合物を主成分とするポリエーテルポリオール;ポリカーボネートポリオール;ポリアセタールポリオール、ポリアクリレートポリオール;ポリエステルアミドポリオール;ポリチオエーテルポリオール;ポリオレフィンポリオール、例えば飽和又は不飽和ポリブタジエンポリオール。
【0027】
イソシアネート:
ポリイソシアネート化合物の例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3及び1,4−ビス(イソシアネートメチル)イソシアネート、キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素化キシレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、それらの異性体並びに/又はそれらの組合せが挙げられる。
【0028】
第1の界面活性剤
第1の界面活性剤は、6重量パーセント未満を構成でき、例えば、第1の界面活性剤は、4から6重量パーセントを構成できる。例示の第1の界面活性剤は、限定されるものではないが、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールボタン酸及びジアミノスルホネートを含む。
【0029】
溶媒
溶媒は、任意の溶媒であり得、例えば、溶媒は、有機溶媒であり得る。例示の溶媒としては、限定されるものではないが、The Dow Chemical Companyから商品名PROGLYDE(登録商標)DMMで市販されているジプロピレングリコールジメチルエーテル及びトリプロピレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。追加の溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)を挙げることができる。
【0030】
追加の溶媒としては、限定されるものではないが、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールn−ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールn−ブチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0031】
プレポリマー:
1つ又はそれ以上のプレポリマーは、1つ又はそれ以上の第1の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテル中で溶解している1つ又はそれ以上の天然油系ポリオールと1つ又はそれ以上のイソシアネートとの反応生成物を含む。本発明において使用されるポリウレタンプレポリマーは、任意の慣用の公知の方法、例えば、溶解法、熱溶融法又はポリウレタンプレポリマー混合法により、例えば回分法又は連続法において生成することができる。さらに、ポリウレタンプレポリマーは、例えば、ポリイソシアネート化合物を活性水素含有化合物、すなわち1つ又はそれ以上の天然油系ポリオールと反応させる方法を介して生成することができ、この例としては、ポリイソシアネート化合物を1つ又はそれ以上の天然油系ポリオールと有機溶媒中で反応させ、次いで場合により溶媒を除去する方法が挙げられる。一実施形態において、1つ又はそれ以上のプレポリマーは、1つ又はそれ以上の第1の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテル中で溶解している1つ又はそれ以上の天然油系ポリオールと1つ又はそれ以上のイソシアネートとの反応生成物を含む。一実施形態において、プレポリマーは、N−メチルピロリドン(NMP)を含まない。
【0032】
例えば、ポリイソシアネート化合物を、有機溶媒中で溶解している1つ又はそれ以上の天然油系ポリオールと、約20℃から約150℃の範囲内;又は代替的に30℃から130℃の範囲内の温度において、イソシアネート基と活性水素基との当量比を例えば1.1:1から3:1又は代替的に1.2:1から2:1として反応させることができる。代替的に、プレポリマーは、過剰量の活性水素基を用い、それによりヒドロキシル末端ポリマーの生成を容易にして調製することができる。
【0033】
有機溶媒中の1つ又はそれ以上の天然油系ポリオールから誘導されるポリウレタンプレポリマーは、1つ又はそれ以上の反応性又は非反応性エチレン性不飽和モノマーの存在下で調製することができる。そのようなモノマーはさらに重合させてハイブリッドポリウレタン分散液を生成させることができる。
【0034】
ポリウレタンプレポリマーは、1つ又はそれ以上のイオン基をさらに含むことができる。そのようなイオン基を有するプレポリマーの調製において使用される官能性部分としては、スルホン酸ジオール、例えば3−(2,3−ジヒドロキシプロプキシ)−1−プロパン−スルホン酸;スルホポリカルボン酸、例えばスルホイソフタル酸、スルホコハク酸;並びにアミノスルホン酸、例えば2−アミノエタンスルホン酸及び3−アミノプロパンスルホン酸;スルファミン酸ジオール、例えばN,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)スルファミン酸(C1からC6のアルキル基)又はそのアルキレンオキシド(AO)アダクト、例えばエチレンオキシド及びプロピレンオキシドアダクト、N,N−ビス(2−ヒドロキシ−エチル)スルファミン酸;ビス(2−ヒドロキシエチル)ホスフェート;C6からC24のジアルキロールアルカン酸、例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸;並びにアミノ酸、例えば2−アミノエタン酸;並びにそれらの塩、例えばアミン(例えばトリエチルアミン、アルカノールアミン、モルホリン)の塩及び/又はアルカリ金属塩、例えばナトリウム塩が挙げられる。カチオン基を含有する例としては、限定されるものではないが、第4級アンモニウム塩基含有ジオール、第3級アンモニウム基含有ジオール及びそれらの塩が挙げられる。
【0035】
ポリウレタンプレポリマーは、親水基をさらに含むことができる。本明細書において使用される用語「親水基」は、アニオン基(例えばカルボキシル基、スルホン酸基又はリン酸基)又はカチオン基(例えば第3級アミノ基又は第4級アミノ基)又は非イオン親水基(例えばエチレンオキシドの繰り返し単位から構成される基又はエチレンオキシドの繰り返し単位及び別のアルキレンオキシドの繰り返し単位から構成される基)を指す。
【0036】
親水基のうち、例えばエチレンオキシドの繰り返し単位を有する非イオン親水基が好ましいものであり得る。それというのも、最終的に得られるポリウレタンエマルションが他の種類のエマルションとの優れた適合性を有するからである。カルボキシル基及び/又はスルホン酸基の導入は、粒度をより微細にするのに有効である。
【0037】
イオン基がアニオン基である場合、中和に使用される中和剤としては、例えば、不揮発性塩基、例えば水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム;並びに揮発性塩基、例えば第3級アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン及びトリエタノールアミン)並びにアンモニアが挙げられ、それらを使用することができる。
【0038】
イオン基がカチオン基である場合、使用可能な中和剤としては、例えば無機酸、例えば塩酸、硫酸及び硝酸;並びに有機酸、例えばギ酸及び酢酸が挙げられる。
【0039】
中和は、イオン基を有するポリウレタンプレポリマーの重合前、重合の間又は重合後に実施することができる。中和は、中和剤をポリウレタンプレポリマーに直接添加することにより、又はポリウレタン分散液の生成の間に水相に添加することにより行うことができる。
【0040】
ポリウレタンプレポリマーは鎖伸長剤を介してさらに鎖伸長することができる。ポリウレタンを調製する当業者に有用であることが公知の任意の鎖伸長剤を本発明により使用することができる。そのような鎖伸長剤は典型的には、約30から約500の分子量を有し、少なくとも2個の活性水素含有基を有する。ポリアミンが、好ましいクラスの鎖伸長剤である。他の物質、特に水が鎖長を伸長するように機能することができ、したがって本発明の目的のための鎖伸長剤である。鎖伸長剤が水又は水及びアミン、例えばアミノ化ポリプロピレングリコール、例えばHuntsman Chemical Company製のJeffamine D−400、アミノエチルピペラジン、2−メチルピペラジン、1,5−ジアミノ−3−メチル−ペンタン、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリエチレンペンタミン、エタノールアミン、立体異性体形態のいずれかのリシン及びその塩、ヘキサンジアミン、ヒドラジン及びピペラジンの混合物であることが特に好ましい。本発明の実施において、鎖伸長剤は、鎖伸長剤の水中溶液として使用することができる。
【0041】
ポリウレタン分散液(PUD)調製
本発明によるPUDは、回分法又は連続法を介して作製できる。ポリウレタンプレポリマー、場合により1つ又はそれ以上の界面活性剤及び水を混合機、例えばOAKS混合機又はIKA混合機中に供給し、それによりポリウレタンプレポリマーを水中で分散させ、次いでこれを第1級又は第2級アミンにより鎖伸長してPUDを形成する。一実施形態において、PUDは、N−メチルピロリドン(NMP)を含まない。
【0042】
一実施形態において、本発明によるポリウレタン分散液を作製する方法は、(1)1つ又はそれ以上のプレポリマーを含む第1の流れを提供する工程(前記1つ又はそれ以上のプレポリマーは、1つ又はそれ以上の第1の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテル中で溶解している1つ又はそれ以上の天然油系ポリオールと1つ又はそれ以上のイソシアネートとの反応生成物を含み、前記プレポリマーを、1つ又はそれ以上の中和剤により場合により中和する);(2)水を含む第2の流れを提供する工程と;(3)前記第1の流れ及び前記第2の流れを共に合する工程と;(4)それによりプレポリマー分散液を形成する工程と;(5)前記プレポリマー分散液を場合により中和する工程と;(6)前記プレポリマーを鎖伸長する工程と;(7)それによりポリウレタン分散液を形成する工程とを含む。
【0043】
最終使用用途
本発明による被覆物品は、基体;及び前記基体の1つ又はそれ以上の表面に付随する被覆を含み、前記被覆は、上記の本発明によるポリウレタン分散液から誘導される。基体の1つ又はそれ以上の表面は、本発明によるポリウレタン分散液の塗布前に処理、例えば下塗りすることができる。基体は、任意の基体であり得、例えば、基体は木材、コンクリート、プラスチック、金属及びそれらの組合せを含むことができる。
【0044】
一実施形態において、被覆物品は、基体;及び前記基体の1つ又はそれ以上の表面に付随する被覆を含み、前記被覆は、(a)1つ又はそれ以上のプレポリマー(前記1つ又はそれ以上のプレポリマーは、1つ又はそれ以上の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテル中で溶解している1つ又はそれ以上の天然油系ポリオールと1つ又はそれ以上のイソシアネートとの反応生成物を含む)から誘導される1つ又はそれ以上のポリウレタン単位と、(b)水とを含むポリウレタン分散液から誘導される。
【0045】
別の実施形態において、被覆物品を製造する方法は、(1)基体を選択する工程と;(2)(a)1つ又はそれ以上のプレポリマー(前記1つ又はそれ以上のプレポリマーは、1つ又はそれ以上の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテル中で溶解している1つ又はそれ以上の天然油系ポリオールと1つ又はそれ以上のイソシアネートとの反応生成物を含む)から誘導される1つ又はそれ以上のポリウレタン単位と、(b)水とを含むポリウレタン分散液を含む被覆組成物を選択する工程と;(3)前記被覆組成物を前記基体の1つ又はそれ以上の表面に塗布する工程と;(4)少なくとも一部の水を除去する工程と;(5)それにより被覆物品を形成する工程とを含む。
【0046】
本発明によるポリウレタン分散液は、任意の方法、例えば噴霧、はけ塗、浸漬、ドローダウン等を介して基体の1つ又はそれ以上の表面に塗布することができる。
【0047】
本発明のポリウレタン分散液は、塗膜形成組成物である。本発明によるポリウレタン分散液から誘導される塗膜は、1μmから2mm;又は代替的に1から500μm;又は代替的に1から200μm;又は代替的に1から100μm;又は代替的に20μmから50μmの範囲内の厚さを有する。本発明によるポリウレタン分散液から誘導される塗膜は、ASTM D−3359により計測して30超の残留パーセント;代替的に40超の残留パーセント;代替的に50超の残留パーセント;代替的に60超の残留パーセントの範囲内の付着性を有することができる。本発明によるポリウレタン分散液は、0.002MPa/分以上の範囲内;又は代替的に0.003MPa/分以上の範囲内;又は代替的に0.004MPa/分以上の範囲内;又は代替的に0.005MPa/分以上の範囲内の硬度発揮速度を有することができる。
【0048】
追加の溶媒を、本発明のポリウレタン分散液にそのような分散液を調製した後に添加することができる。そのような溶媒としては、限定されるものではないが、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリ−プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、トリ−プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−フェニルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテルの混合物及びそれらの溶媒の混合物が挙げられる。
【0049】
最終使用用途は、限定されるものではないが、任意の基体、例えば木材、コンクリート、プラスチック、金属及びそれらの組合せ上での工業及び建築被覆である。そのような最終使用用途としては、限定されるものではないが、家具、床、調理場戸棚などが挙げられる。
【実施例】
【0050】
以下の実施例は、本発明を説明するものであるが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0051】
NOPポリオールの合成
天然油ポリオール(NOP)を、ダイズ油から誘導された脂肪酸メチルエステル(FAMES)から3反応工程において調製した。FAMESを最初にヒドロホルミル化してアルデヒド中間体とし、次いで第2の工程において水素化して図1に示されるダイズモノマーとする。ダイズモノマーの平均ヒドロキシル官能価は、約1.0である。
【0052】
次いで、得られたモノマーを好適なグリコールによりトランスエステル化する。この工程において、ポリオール分子量は、モノマーとグリコール開始剤との縮合及びモノマーの自己縮合の両方により増大する。モノマーの平均官能価及びそれらのグリコール開始剤との比を制御することにより、ポリオール分子量と平均官能価の両方を体系的に制御することができる。さらに、開始剤の構造を調整して所望の性能特性又は適合性を達成することができる。好ましいグリコール開始剤は、反応性第1級ヒドロキシル基を含有し、例えば1,6−ヘキサンジオール及びUNOXOL(商標)ジオールである。UNOXOL(商標)ジオールは、1,3−シクロヘキサンジメタノール及び1,4−シクロヘキサンジメタノール(これはシス及びトランス異性体の混合物である)の約50:50混合物である液体脂環式ジオールである。
【0053】
プレポリマー調製手順
プレポリマーの調製は、追加の機器、水冷式コンデンサ、機械的撹拌器、温度計及び窒素送込/排出管を備える500mLの4口丸底フラスコ中で実施した。窒素パージ及び500rpmの撹拌速度を反応過程にわたり適用した。油浴を加熱源として使用して反応温度を維持した。典型的なプレポリマー調製において、ポリエステルポリオール及びジメチロールプロピオン酸[DMPA]を反応フラスコ中に添加し、次いでイソシアネートを添加した。個々に又はブレンドとして添加されたポリオールを最初に所望の反応温度から15〜20℃低い温度に加熱した。ポリオール及び溶媒の添加が完了したら、反応混合物を撹拌しながら(200rpm)所望温度(80〜90℃)に加熱した。理論NCO%に達したら、最終生成物を窒素ブランケット付試料容器に移し、分散に使用した。プレポリマーに好適な溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン及びジプロピレングリコールのジメチルエーテルを含む。
【0054】
ポリウレタン分散液(PUD)合成
PUDを、スモールスケール(500ml)回分法において調製し、前記方法において、プレポリマーを、プレポリマー中で使用される酸の95〜110%の化学量論量(モル)において第3級アミン(例えば、トリエチルアミン、TEA)を使用して中和した。高剪断(50000〜100000秒−1)を発生させる特殊な混合機を使用してこれを激しく撹拌しながら、所定量の水をプレポリマーにゆっくり添加した。水を連続的に添加すると分散液粘度が約3000cP(Brookfield Spindle #4、50rpm)未満に降下した。次いで、分散液をアミン(例えば、エチレンジアミン)により十分に鎖伸長した。最終分散液は、約35重量%の固体含有率及び約100nmの数平均粒度を有した。
【0055】
本発明実施例1:
PROGLYDE(登録商標)DMM溶媒中のNOP。表1に示される配合物の成分を使用して100グラムのプレポリマーを含有する本発明による実施例1のPUDを調製した。
【表1】

【0056】
前セクションに記載の手順に続いて上記配合表を用いて所望のPUDを得た。PUDを、固体割合及び粒度について特性決定してから、種々の基体上に被覆した。被覆は、事前に目止めされたオークウッド基体上で塗装用はけを使用して調製した。試料を周囲条件(50% RH及び23℃)下で7日間乾燥させてから特性について試験した。
【0057】
比較実施例2の調製
実施例1において使用した配合表を、PROGLYDE(登録商標)DMMに代えてN−メチルピロリドン[NMP]を溶媒として用いることにより改変した。
【0058】
比較実施例3の調製
実施例1において使用した配合表を、NOPポリオールに代えて同様の分子量及び官能価のカプロラクトンジオールを用いることにより改変した。PROGLYDE(登録商標)DMMを溶媒として使用した。
【0059】
比較実施例4の調製
実施例1において使用した配合表を、NOPポリオールに代えてChemtruaにより提供された同様の分子量及び官能価のFomRez PES−G24−112ポリオールを用いることにより改変した。PROGLYDE(登録商標)DMMを溶媒として使用した。
【0060】
被覆試料の調製
被覆を、事前に目止めされたオークウッド基体上で塗装用はけを使用して調製した。試料を周囲条件(50% RH及び23℃)下で7日間乾燥させてから特性について試験した。
【0061】
付着性計測は、ASTM D−3359により行った。被覆をオークウッド上で作製し、周囲条件下で7日間乾燥させてから試験した。クロスハッチ工具を使用して1mm辺寸法の100個の正方形を残す掻き傷の格子を作製して付着性を試験した。60N/mの剥離強度を有する3M製のScotchテープを使用して付着性を試験した。テープの一片を切取り、クロスハッチの頂部上に置き、イレーザーにより加圧して均等に接触させた。テープを粘着してから90秒以内にテープを180度において引張った。被覆が損傷を受け、又は除去された正方形の数を記録し、残留%をパラメーターとして使用して付着性を計測した。表2は結果をまとめる。
【表2】

この速度は、水を蒸発させるための4時間を差し引いた後に算出した。これらの結果は記載の試験方法に基づくものであり、野外乾燥に対して推定できるものではない。

【0062】
早期硬度発揮:
硬度発揮は、動的機械的分光法を使用してモジュラスを経時的に計測することにより追跡した。計測は、改変平行平板形状を使用する剪断モードにおいて行った。水性PUDを、直径25mmのアルミニウムカップ中に装入し、計測ロードセルに取り付けられているプレートにより絞り出して厚さ1mmの塗膜とした。振動剪断計測を1Hzにおいて実施し、歪%は硬化度に基づき変動した。試験を23℃及び50% RHにおいて行った。データ点を24時間の時間にわたり10分毎に収集した。硬度発現は、競合相手PUD及びアジペートポリオールを用いて作製されたPUDと比較して、ダイズポリオール及びPROGLYDE(登録商標)DMM溶媒の組合せを使用した場合に早かった。結果を図2に示す。y軸は、1Hzの周波数及び線形領域内の歪速度を用いて10分毎に計測された剪断応力を表す。発生の変動は、PUD中の水の量に起因し得る。速度又は線の傾きは、硬度発現速度を付与し、PROGLYDE DMMを有するダイズPUDが速度の速い早期硬度発揮を示すことが明確に理解することができる。
【0063】
追加の実施例
試料A
48.5g(800MW、0.12当量) 天然油ポリエステルポリオール(NOP)、4g(144MW、0.06当量) UNOXOLジオール、1,3シクロヘキサンジメタノールと1,4シクロヘキサン−ジメタノール異性体との50/50混合物、5g(134MW、0.07当量) ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、25g PROGLYDE(登録商標)DMM溶媒(ジプロピレングリコールジメチルエーテル)、0.01g ジブチルスズジラウレート(DBDTL)触媒を含有する混合物を、撹拌器、加熱器、熱電対及び凝縮器を備えるジャケット型反応容器に添加し、窒素ヘッド下で撹拌しながら80℃に加熱した。42.5g(222MW、0.38当量)のイソホロンジイソシアネート(IPDI)を反応混合物に添加し(ヒドロキシルに対する初期イソシアネート含有量:1.5当量/当量)、80℃において4時間保持して5.5重量%のNCO含有率を有するウレタンプレポリマーを形成した。反応混合物を60℃に冷却し、3.8g(101MW、0.04当量)のトリエチルアミン(TEA)を撹拌しながら添加してDMPAのCOOH基(0.04当量)を中和した(アミンに対するカルボキシル含有量:1当量/当量)。140gの水を混合しながら添加してアニオン的に安定化しているプレポリマーの水中分散液を形成した。41gのエチレンジアミン(EDA、60MW、0.14当量)の水中冷蔵10%溶液を、鎖伸長工程のために撹拌しながら添加して残留NCO基との尿素結合を形成した(アミンに対するイソシアネート含有量:0.96当量/当量)。ポリウレタン分散液(PUD)を室温に冷却し、以下の特性が測定された:
・外観:半透明分散液、澄明な塗膜に乾燥する
・pH:8〜10
・密度:25℃において1.1g/cc
・粘度:25℃において500cP
・平均粒度:120nm
・固体:34重量%
・最低塗膜形成温度:<0℃
【0064】
試料B
試料Bは、試料Aと同一の配合物及び手順を使用して調製し、変更点は、中和(TEAによる)、鎖伸長(EDAによる)及び分散工程を、回分式混合機中でなくローターステータ機械的分散機中で実施したことのみであった。試料Bの特性は、試料Aと本質的に同様である。
【0065】
試料C
試料Cは、試料Aと同一の手順を使用して調製し、変更点は、以下のポリオール組成であった。48.5g(800MW、0.12当量) 天然油ポリエステルポリオール及び4g(144MW、0.06当量) UNOXOLジオールに代えて、22g(0.06当量) 天然油ポリエステルポリオール、6g(0.08当量) UNOXOLジオール及び22g UNOXOLアジペート(884MW、0.05当量)を用いる。反応前のNCO/OH比は、1.5において不変である。試料CのPUD物理特性は、試料Aと本質的に同様である。試料Cからの塗膜は、試料Aからの塗膜と比較してより硬く、より良好な耐摩耗性を有する。なぜなら、より高いレベルの短鎖ジオール及びより高いTgのポリエステルポリオールがポリマーの硬質セグメント含有量に寄与するからである。
【0066】
試料D
試料Dは、試料Aと同一の配合物及び手順を使用して調製し、溶媒のタイプを以下の通り変更した:25gのn−メチルピロリドンを25g PROGLYDE DMMに代えて用いた。試料Dの特性は、試料Aと本質的に同様である。
【0067】
試料E
試料Eは、煉瓦タイプの基体用のシーラー又はトップコートとして使用される9% NMP溶媒を含有するEssential Industries製の市販の高固体脂肪族PUD(R−4188)である。PUD特性は、
・外観:半透明
・pH:7.6
・固体:38重量%
・粘度:25℃において50cP
・密度:25℃において1.05g/cc
である。
【0068】
試料F
試料Fは、コンクリートトップコート用途のためのEssential Industries製の市販の溶媒不含脂肪族ウレタンアクリルハイブリッド(R−4388)である。特性は、
・外観:半透明
・pH:7.7
・固体:41重量%
・粘度:25℃において<300cP
・密度:25℃において1.05g/cc
である。
【0069】
PUD塗膜性能試験:
塗膜性能試験を、全てのPUD試料を30重量%の固体に希釈して同一の塗膜厚を達成することにより実施した。試料A、B、C、Dは全て、共溶媒を必要とすることなく良好で均等な欠陥不含の塗膜を形成した一方、試料E(9% NMP)及び試料F(0% NMP)は、良好な質の欠陥不含の塗膜を形成するのに追加の5% NMPを要した。
【0070】
付着性試験
付着性試験は、ASTM D3359により実施した。この試験は、塗膜内に1/8’’クロスハッチの描線を含む格子パターンカットを作製し、描線の領域上に粘着テープを貼ることにより、無処理及び下塗りされた基体に対する被覆塗膜の付着性を評価する。粘着テープを剥離し、持ち上げられ、又は除去された被覆の量を、残留するクロスハッチ正方形を計数することにより決定する。マルチコート系においては、付着不良がコート間であるか被覆と基体との間であるかどうかを決定することが重要である。プライマー又は基体に対して良好な付着性を有する被覆は、>80%の被覆残留%についてのテープ引張試験についての値、好ましくは>90%の値、よりいっそう好ましくは>95%の値を示す。
【0071】
コンクリート試験ブロック
ASTM規格により作製されたコンクリート試験ブロック(Patio Concrete Products Inc.)を、アクリルエポキシエマルション(Quikrete 02−51730ガレージ床シーラー)により被覆し、室温において1週間空気乾燥させた。次いで、下塗りされたコンクリートブロックを試料AからFにより被覆した。種々の試料についての実験試験結果を表1Aに提示し、この結果は以下のことを示す。
・PROGLYDE DMM溶媒を含有する本発明のNOP PUD試料A及びBは、無処理(そのまま)と低レベルの外部架橋剤(アジリジン)を用いたものの両方において極めて良好な付着性を示す。対照的に、同一の配合物を用いて作製され、NMPを含有するNOP PUD比較試料Dは、無処理と低レベルの外部架橋剤(アジリジン)の両方において極めて不十分で許容されない付着性を示す。この比較試料は、この欠陥を克服するために配合物中の付着促進剤又は塗布の間のタイレイヤーを要する;
・PROGLYDE DMM溶媒を含有する本発明のNOP PUD試料Cは、無処理と低レベルの外部架橋剤(アジリジン)の両方において、同一レベルのNMP溶媒を用いて作製されたNOP PUD比較試料Dと比較して極めて良好な付着性を示す。これらの配合物は、ポリエステルポリオール(NOP、UNOXOLアジペート)及び短鎖ジオール(UNOXOL)のレベルを除いて比較可能である;
・9%及び0% NMPを用いて作製され、良好な塗膜形成のための追加の5% NMP溶媒を用いて配合された市販のPUD及びWBウレタンアクリル対照試料E及びFは、無処理形態において極めて不十分で許容されない付着性を示す。さらに、低レベルの外部架橋剤(アジリジン)を用いて試験された試料Fは、極めて不十分で許容されない付着性を示す。これらの対照試料は、付着の欠陥を克服するために配合物中の付着促進剤又は塗布の間のタイレイヤーを要する。
【表3】

【0072】
ダートピックアップ耐性試験
ダートピックアップ耐性は、China National Standard Methodにより計測した。被覆を白色プラスチックパネル上に塗布し、室温において7日間乾燥させ、BYK Gardner Colorimeter Model 6805を使用して初期Y反射率を3つの位置において求める。代表的なダート媒体として使用される炭がらを水と混合し(1:1)、0.7gをペーストとしてソフトブラシにより白色被覆プラスチックパネル上に均一に塗布し、23℃、50% RHにおいて2時間乾燥させる。パネルを水フラッシング装置の試料台上に置き、にわか雨を模擬する水栓に接続されているスプリンクラーにより1分間すすぐ。全ての位置が流水によりすすがれることを確保するようにパネルを移動させる。パネルを23℃50% RHにおいて24時間乾燥させ、上記サイクルを合計5サイクル繰り返す。パネルの最終Y反射率を同一の位置において求め、反射率の平均変化(ΔY)を計算する。
・Y反射率の変化=ΔY=100(初期Y反射率−最終Y反射率)/初期Y反射率
良好なダートピックアップ耐性を有する被覆は、15以下、好ましくは、10以下、よりいっそう好ましくは、5以下の炭がら曝露及び清浄の5サイクル後の反射率値の変化(ΔY)を示す。
【0073】
試料についての実際の実験試験結果を表2Aに提示し、この結果は以下のことを示す:
・PROGLYDE DMM溶媒を用いて作製された本発明のNOP PUD試料(試料A、B及びC)は、DPR試験について無処理で試験した場合に極めて低いΔY値を示し、アジリジン架橋剤を用いて試験した場合には低いΔY値を示す。DPR試験の5サイクル後の被覆試料の白色度変化は可視的に最小である;
・試料A、B及びCと同一のレベルにおけるNMP溶媒を用いて作製され、試料A及びBと同一の配合物を用いて作製された比較NOP PUD試料(試料D)は、無処理で試験した場合に低いΔY値を示すが、アジリジン架橋剤を用いて試験した場合には高いΔY値を示す。後者の試料について、DPR試験の5サイクル後の被覆試料の白色度変化は、被覆上の黒色残留物に起因して明白になる;
・9及び0% NMP溶媒を用いて作製され、欠陥不含塗膜のための追加の5% NMP溶媒を用いて配合された市販の対照試料E及びFは、無処理で試験した場合に高いΔY値を示し、アジリジン架橋剤を用いて試験した場合によりいっそう高いΔY値を示す。両試料及び両方の場合について、DPR試験の5サイクル後の被覆試料の白色度変化は、被覆上で保持されている黒色残留物に起因して極めて顕著であり;
・9及び0% NMP溶媒を用いて作製され、欠陥不含塗膜のための追加の5% NMP溶媒を用いて配合された市販の対照試料E及びFは、無処理で試験した場合に高いΔY値を示し、アジリジン架橋剤を用いて試験した場合によりいっそう高いΔY値を示す。両試料及び両方の場合について、DPR試験の5サイクル後の被覆試料の白色度変化は、被覆上で保持されている黒色残留物に起因して極めて顕著である。
【表4】

【0074】
NMPからPROGLYDE(登録商標)DMMの溶媒タイプの変化が、天然油ポリオールにより提供されるPUD被覆特性、例えば疎水性に対していかなる悪影響も有しないことを確認することが重要である。耐水性試験をASTM D870により、水滴(蒸発を防止するため時計皿に覆われている)を被覆試料上に一定時間置き、水滴を表面から乾燥させ、任意の欠陥、例えば白色化、かぶり、膨潤、ふくれ又は離層について被覆を試験することにより行った。被覆を室温において7日間乾燥させてから試験し、水に2時間接触させる。表3Aに示される4種のNOP PUD試料についての試験結果は、水が被覆に対して極めて小さい影響を有したことを示す。この結果により、天然油ポリオールの被覆性能属性、例えば耐水性に対する寄与がPUD被覆において保存され、溶媒選択とは無関係であることが証明される。
【表5】

【0075】
より低沸点の溶媒、例えばPROGLYDE(登録商標)DMM(蒸発速度:0.13対nBuAc=100)を使用してより高沸点の溶媒、例えばNMP(蒸発速度:0.03対nBuAc=100)に代えて用いることは、被覆からの溶媒のより早い揮発に起因して硬化の間の特性発揮(例えば、早期の耐水性、硬度発現など)を改善することが見込まれる。しかしながら、溶媒の選択は、硬化被覆の最終性能属性、例えば付着性及びダートピックアップ耐性に影響を与えると見込まれない。より良質な溶媒の使用による性能特性の改善は予期されず、このことは本発明の基礎を形成する。
【0076】
本発明は、本発明の趣旨及びその本質的な属性から逸脱することなく他の形態で実施することができ、したがって、本発明の範囲を示すものとして上記明細書ではなく添付の特許請求の範囲を参照されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又はそれ以上のプレポリマー(前記1つ又はそれ以上のプレポリマーは、1つ又はそれ以上の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテル中で溶解している1つ又はそれ以上の天然油系ポリオールと1つ又はそれ以上のイソシアネートとの反応生成物を含む)から誘導される1つ又はそれ以上のポリウレタン単位と、
水と
を含むポリウレタン分散液。
【請求項2】
1つ又はそれ以上のプレポリマー(前記1つ又はそれ以上のプレポリマーは、1つ又はそれ以上の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテル中で溶解している1つ又はそれ以上の天然油系ポリオールと1つ又はそれ以上のイソシアネートとの反応生成物を含み、前記プレポリマーを、1つ又はそれ以上の中和剤により場合により中和する)を含む第1の流れを提供する工程と、
水を含む第2の流れを提供する工程と、
前記第1の流れ及び前記第2の流れを共に合する工程と、
それによりプレポリマー分散液を形成する工程と、
前記プレポリマー分散液を場合により中和する工程と、
前記プレポリマーを鎖伸長する工程と、
それによりポリウレタン分散液を形成する工程と
を含む、ポリウレタン分散液を作製する方法。
【請求項3】
基体と、
前記基体の1つ又はそれ以上の表面に付随する被覆であって、前記被覆は、
1つ又はそれ以上のプレポリマー(前記1つ又はそれ以上のプレポリマーは、1つ又はそれ以上の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテル中で溶解している1つ又はそれ以上の天然油系ポリオールと1つ又はそれ以上のイソシアネートとの反応生成物を含む)から誘導される1つ又はそれ以上のポリウレタン単位、及び
水を含むポリウレタン分散液から誘導される被覆と
を含む被覆物品。
【請求項4】
基体を選択する工程と、
1つ又はそれ以上のプレポリマー(前記1つ又はそれ以上のプレポリマーは、1つ又はそれ以上の界面活性剤の存在下でジプロピレングリコールジメチルエーテル中で溶解している1つ又はそれ以上の天然油系ポリオールと1つ又はそれ以上のイソシアネートとの反応生成物を含む)から誘導される1つ又はそれ以上のポリウレタン単位、及び
水を含むポリウレタン分散液を含む被覆組成物を選択する工程と、
前記被覆組成物を前記基体の1つ又はそれ以上の表面に塗布する工程と、
少なくとも一部の水を除去する工程と、
それにより被覆物品を形成する工程と
を含む、被覆物品を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−522874(P2012−522874A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503644(P2012−503644)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2010/029325
【国際公開番号】WO2010/117838
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】