説明

ポリウレタン及びポリウレア、並びにその製造法

【課題】ウレタン及びウレア、並びにその製造法を提供する。
【解決手段】下記式(I):


[式中、
Xは、−O−又は−NH−を示し;
nは、0又は1を示し;
mは、1〜40の整数を示し;及び
Yは、−[(CH−O]−(aは2〜12の整数を示す)、又は−(CH−(aは2〜12の整数を示す)を示す。但し、(a+1)×mは3〜45の整数を示す。]
で表される繰り返し単位を有するポリマー;及びその製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン及びポリウレア、並びにその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、植物由来の原料や微生物による代謝を介して得られる植物由来のポリマーが注目されている。なぜなら、これらのポリマーは、石油を原料としない環境循環型の素材であり、植物に固定された二酸化炭素を大気中に戻すことになるという意味で、焼却しても大気中の二酸化炭素を増加させない。また、焼却せずに埋立て処分しても、土壌中の微生物により分解されるため、環境破壊を招く虞がない。かかる植物由来のポリマーとして、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸等が挙げられ、将来性のある生物分解性である環境循環型の素材として、各種成形品への用途開発が進められている。しかしながら、かかる植物由来のポリマーは、澱粉等を含む穀物である食物を原料とする場合には、供給において食物と競合するという問題がある。これは、人類に対する食料の安定供給の観点から問題である。
【0003】
ところで、植物由来の芳香族高分子化合物であるリグニンは、植物細胞壁に普遍的に含まれているバイオマス資源であるが、その化学構造が多様な成分で構成されていることや複雑な高分子構造であるため、未だ有効な利用技術が開発されていない。そのため、例えば、製紙産業において大量に副生するリグニンは有効利用されずに、重油の代替燃料として焼却処分されている。
【0004】
近年、リグニン等の植物由来芳香族成分が、加水分解、酸化分解、加溶媒分解等の化学的分解法、又は超臨界水や超臨界有機溶媒による物理化学的分解法により、数種の低分子化合物の混合物に変換されて単一の化合物である2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を製造する方法が開発されてきた(例えば、特許文献1)。
【0005】
このようにして得られた単一の化合物である2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を、生物分解性のプラスチックや各種化学製品の原料として使用することができれば、供給において、食物と競合しない、リグニン含有植物原料(バイオマス)を有効利用することができることになる。
【0006】
しかしながら、現在、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を繰り返し単位とする生分解性ポリマーとしては、数種類のポリエステル(例えば、特許文献2、3)が知られている他、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸をジイソシアネート類と反応させることによって得られるポリウレタンが報告されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−278549号公報
【0008】
【特許文献2】国際公開第99/54376号パンフレット
【0009】
【特許文献3】国際公開第07/148471号パンフレット
【0010】
【特許文献4】国際公開第09/038007号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸から誘導される生分解性のポリウレタン及びポリウレア、並びにその製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、斯かる現状に鑑み鋭意検討した結果、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を対応するジアジド又はジイソシアナートに導き、これとジオール又はジアミンとを重付加反応させることにより、ポリウレタン又はポリウレアが収率良く得られることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、(1)本発明は、下記式(I):
【0014】
【化1】

【0015】
[式中、
Xは、−O−又は−NH−を示し;
nは、0又は1を示し;
mは、1〜40の整数を示し;及び
Yは、−[(CH−O]−(aは2〜12の整数を示す)、又は−(CH−(aは2〜12の整数を示す)を示す。但し、(a+1)×mは3〜45の整数を示す。]
で表される繰り返し単位を有するポリマーを提供する。
(2)本発明は、下記式(II):
【0016】
【化2】

【0017】
[式中、Yは、−[(CH−O]−(aは2〜12の整数を示す)を示し、かつmは1〜40の整数を示す。但し、(a+1)×mは3〜45の整数を示す。]
で表される繰り返し単位を有する、(1)記載のポリマーを提供する。
(3)本発明は、下記式(III):
【0018】
【化3】

【0019】
[式中、Yは、−(CH−(aは2〜12の整数を示す)を示し、かつmは1〜40の整数を示す。但し、(a+1)×mは3〜45の整数を示す。]
で表される繰り返し単位を有する、(1)記載のポリマーを提供する。
(4)本発明は、式:
【0020】
【化4】

【0021】
で表わされる2−ピラン−2−オン−4,6−ジカルボニルアジド、又は式:
【0022】
【化5】

【0023】
で表わされる2−ピラン−2−オン−4,6−ジイソシアナートに、式:HO−[(CH−O]−H(aは2〜12の整数を示し、かつmは1〜40の整数を示す。但し、(a+1)×mは3〜45の整数を示す。)で表わされるジオール、又は式:HN−(CH−NH(aは2〜12の整数を示す)で表わされるジアミンを重付加反応させることを特徴とする、下記式(I):
【0024】
【化6】

【0025】
[式中、
Xは、−O−又は−NH−を示し;
nは、0又は1を示し;
mは、1〜40の整数を示し;及び
Yは、−[(CH−O]−(aは2〜12の整数を示す)、又は−(CH−(aは2〜12の整数を示す)を示す。但し、(a+1)×mは3〜45の整数を示す。]
で表される繰り返し単位を有するポリマーの製造法を提供する。
(5)本発明は、触媒の非存在下で重付加反応させる、(4)記載の製造法を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸から誘導される2−ピラン−2−オン−4,6−ジカルボニルアジド又は2−ピラン−2−オン−4,6−ジイソシアナートから、生分解性のポリウレタン及びポリウレアを収率好くかつ簡便に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のポリマーは前記式(I)で表わされるが、式(I)において、Xが−O−を示す時、nは0であり、Yは、−[(CH−O]−(aは2〜12の整数を示す)を示し;Xが−NH−を示す時、nは1であり、Yは、−(CH−(aは2〜12の整数を示す)を示す。具体的には、式(I)で表わされるポリマーは、
(i)下記式(II):
【0028】
【化7】

【0029】
[式中、Yは、−[(CH−O]−(aは2〜12の整数を示す)を示し、かつmは1〜40の整数を示す。但し、(a+1)×mは3〜45の整数を示す。]
で表わされるポリウレタン;あるいは
(ii)下記式(III):
【0030】
【化8】

【0031】
[式中、Yは、−(CH−(aは2〜12の整数を示す)を示し、かつmは1〜40の整数を示す。但し、(a+1)×mは3〜45の整数を示す。]
で表わされるポリウレアである。
【0032】
上記式(I)で表わされるポリマーの製造法を下記式に従って説明する。
【0033】
【化9】

【0034】
すなわち、式(IV):
【0035】
【化10】

【0036】
で表わされる2−ピラン−2−オン−4,6−ジカルボニルアジド(以下、「PDCアジド」と称する)、又は式(V):
【0037】
【化11】

【0038】
で表わされる2−ピラン−2−オン−4,6−ジイソシアナート(以下、「PDCイソシアナート」と称する)に、式:HO−[(CH−O]−H(aは2〜12の整数を示し、mは1〜40の整数を示す。但し、(a+1)×mは3〜45の整数を示す。)で表わされるジオール、又は式:HN−(CH−NH(aは2〜12の整数を示す)で表わされるジアミンを反応させることによって製造できる。
【0039】
PDCアジド(IV)は、新規化合物であり、2−ピラン−2−オン−4,6−ジカルボニルハライド(VI)(以下、PDCハライド」と称する)にアジド化試薬を加えることにより、置換反応によって容易に製造できる。
【0040】
【化12】

【0041】
(式中、Xは、F、Cl、Br又はI原子を示す。)
【0042】
PDCハライド(VI)としては、PDCの塩素化物、臭素化物、フッ化素物、ヨウ素化物等が挙げられるが、その中で、PDCの塩化物又は臭化物が好ましく、PDCの塩化物がより好ましい。PDCハライドは、例えば、WO99/54384に記載の方法によって合成できる。PDCハライドの他に、2−ピラン−2−オン−4,6−ジカルボニル−O−R(Rは、C〜Cアルキル、フェニル、ベンジル、C〜Cアルキルカルボニル、C〜Cアルコキシカルボニル、フェノキシカルボニル又はベンゾイルを示す)も使用できる。
【0043】
アジド化試薬としては、アジド化に最もよく使用されているアジ化ナトリウム、アジ化カリウム、アジ化カルシウム等の他に、アジ化水素、アジ化鉛、ジフェニルリン酸アジド等が使用できる。PDCハライド(VI)とアジド化試薬との混合比は特に限定されないが、モル比で、約1:2〜約1:6が好ましく、約1:5〜約1:6がより好ましい。
【0044】
また、アジド化には、求核反応を促進するために少量の相関移動触媒を添加してもよい。相関移動触媒の添加量は、PDCハライド(VI)1モルに対して、通常、約0.01〜約0.2モルである。
【0045】
反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、シクロヘキサノン等の脂環式炭化水素系溶媒;酢酸エステル等のエステル系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は2種以上を組み合わせて使用することもできる。溶媒の使用量は、PDCハライド(VI)100重量部に対して、通常20〜1,000重量部の量である。反応は、通常、0℃〜室温の反応温度で、場合により加熱して、約1時間〜約数時間行えばよい。
【0046】
PDCイソシアナート(V)は、PDCアジト(IV)を加熱処理することによって起こるクルチウス転位を介して得られる。
【0047】
【化13】

【0048】
加熱温度は使用する溶媒によって異なるが、通常、80℃から溶媒の沸点の温度であり、80〜140℃の範囲が好ましく、100〜140℃の範囲がより好ましい。反応溶媒は特に制限されないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒などが使用できる。反応時間は、約1時間〜数時間程度である。
【0049】
PDCイソシアナート(V)は、PDCアジド(IV)が非常に安定なため、上記のように、PDCハライド(VI)からPDCアジド(IV)を単離し、次いでこれを加熱処理して得てもよいが、PDCアジド(IV)を単離することなく、PDCハライド(VI)からインサイチューで得てもよい。
【0050】
式(VII):HO−[(CH−O]−H(式中、aは2〜12の整数であり;mは1〜40である)で表されるジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のアルキレンジオール;アルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなど)及び/又は環状エーテル(テトラヒドロフランなど)を開環重合又は開環共重合して得られるオリゴエーテルジオールなどが挙げられる。オリゴエーテルジオールは、例えば、末端ジオール型のオリゴエチレンオキシド、オリゴプロピレンオキシド、オリゴ(エチレンオキシド−テトラヒドロフラン)(ブロック又はランダム共重合体)、オリゴテトラヒドロフラン等である。また、上述したアルキレンジオールを重縮合して得られるオリゴエチレングリコール(オリゴエチレンオキシドと同義)、オリゴトリメチレングリコール、オリゴテトラメチレングリコール、オリゴヘキサメチレングリコール等も同様に用いることができる。
【0051】
上記ジオールがオリゴエーテルジオールである場合には、mはアルキレン基の繰返し数であり、オリゴエーテルジオールの分子量に分布がある場合は、数平均重合度を意味する。mは、1〜40の整数である。
【0052】
式(VIII):HN−(CH−NHで表されるジアミンは、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
【0053】
上記オリゴエーテルジオールは、低分子量のアルキレンオキシドを酸触媒存在下に開環重縮合することにより調製できる。触媒としては、硫酸、塩酸、有機スルホン酸(例えばベンゼン、トルエン又はナフタレンスルホン酸、メチオン酸等)、更にはリン酸、過塩素酸、三フッ化ホウ素を別個に又は芳香族スルホン酸と組み合わせて使用できる。酸は、使用するアルキレンオキシドに対して0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%で使用すればよい。重合温度は、−70〜60℃であり、好ましくは−30〜30℃である。また、オリゴエーテルジオールは前記アルキレンジオールの酸触媒存在下での重縮合によっても得られる。触媒としては、硫酸、塩酸、有機スルホン酸(例えばベンゼン、トルエン又はナフタレンスルホン酸、メチオン酸等)、更にはリン酸、過塩素酸、三フッ化ホウ素を別個に又は芳香族スルホン酸と組み合わせて使用できる。酸は、使用するアルキレンオキシドに対して0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%で使用すればよい。重合温度は120〜250℃であり、好ましくは150〜220℃である。
【0054】
PDCアジド(IV)又はPDCイソシアナート(V)と、ジオール又はジアミンとの混合比は特に限定されないが、モル比で、約1:1.3〜約1.3:1が好ましい。
【0055】
反応溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、シクロヘキサノン等の脂環式炭化水素系溶媒;酢酸エステル等のエステル系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は2種以上を組み合わせて使用することもできる。溶媒の使用量は、原料モノマーの総量100重量部に対して、通常20〜1,000重量部の量で用いられる。
【0056】
反応は、通常、室温〜溶媒の沸点温度、好ましくは溶媒の沸点温度で、約1時間〜約24時間行えばよい。
【0057】
本発明の製造法では、2−ピラン−2−オン−4,6−ジイソシアナートは、擬芳香族であるピロン環に直接、イソシアナート基が結合されたものであるため、反応性が非常高く、触媒の非存在下であっても重付加が効率よく進行する。国際公開第09/038007号パンフレットに記載の方法を含む従来のポリウレタンの製造法では、触媒が生成したポリマー中に半永久的存在し、時間に経過と共に解重合によるポリマー機能の劣化、悪臭の原因となることがあったが、触媒を存在させないことにより、これらの問題点が改善できる。
【0058】
必要に応じて少量の触媒を添加する場合には、触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、N−メチル−N’−ジメチルアミノエチルピペラジン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、1,2−ジメチルイミダゾール等の第3級アミン類;ナトリウムフェノラートなどのアルカリ金属フェノラート;ナトリウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド;酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、2−エチルヘキサン酸カリウムなどのカルボン酸のアルカリ金属塩;トリエチルホスフィンなどのホスフィン類;スタナスアセテート、スタナスオクトエート(スタナス2−エチルヘキソエート)等の有機スズ(II)化合物;ジブチルチンオキシド、ジブチルチンジクロライド、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンマレエート、ジオクチルチンジアセテートなどの有機スズ(IV)化合物;ジアルキルチタネート等の有機金属化合物を挙げることができる。触媒は、反応混合物中で、好ましくは約0.001〜1重量%、より好ましくは約0.001〜0.1重量%使用すればよい。
【0059】
本発明の式(I)で表わされるポリマーの分子量は、用途により異なるが、通常、重量平均分子量で約1万〜約20万である。溶液の調製し易さ、成形加工性、機械的強度等の物性の点から、約2万〜約10万が好ましい。
【0060】
本発明の(I)で表わされるポリマーには、使用にあたって、従来のポリウレタンやポリウレアに使用される各種添加剤、例えばリン系化合物、ハロゲン含有化合物等の難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、可塑剤、界面活性剤などを添加することができる。ポリウレタンを製造する際に発泡剤を加えて発泡ポリウレタンとしてもよい。
【0061】
本発明の(I)で表わされるポリマーの中で、オリゴエーテルジオールとの重付加による本発明のポリウレタンは、特にガラス転移温度の低い熱可塑性ポリウレタンを製造するのに特に適している。また、ジアミンとの重付加による本発明のポリウレアは、耐熱性に優れている。これらのポリマーは、例えば、発泡させてウレタンフォームなどの衝撃吸収材や金属等の接着剤としての用途が期待できる。
【実施例】
【0062】
次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0063】
次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、得られた重合体の物性は、以下の方法により測定した。
(1)ガラス転移温度:示差走査熱量法(DSC法)にて昇温速度10℃/分で昇温し、測定した。
(2)熱重量:熱重量分析(TGA)計(TG50;メトラートレド製)により、窒素雰囲気下、50℃から昇温速度10℃/分で昇温した時の初期重量から減少した重量の温度を測定することにより行った。
(3)数平均分子量(M)、重量平均分子量(M):ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で分子量測定を行った。なお、標準ポリスチレンを用いて校正を行い、ポリスチレン換算で数平均分子量、重量平均分子量を求めた。
【0064】
参考例1:2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボニルアジドの合成
【0065】
【化14】

【0066】
氷浴下でNaN3 1.78 g(27.4 mmol, 6.00 eq.)、H2O(20 ml)、BnMe3NCl(0.170 g,0.914 mmol, 0.200 eq.)、及びCH2Cl2(20 ml)から成る二相系を穏やかに氷冷下で攪拌した。20 mlのCH2Cl2に溶解した2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボニルクロリド(1.00 g,4.57 mmol, 1.00 eq.)を加え、同温で1時間激しく攪拌した。次いで、有機層を分離し、水相を20 mlのCH2Cl2で抽出した。この抽出層を分離した有機相に加え、20 mlのH2Oによって洗浄した。洗浄後の有機層を硫酸マグネシウムで30分間乾燥した後に濾去し、溶媒を留去して標題化合物(0.984 g,4.20 mmol)を得た。収率92%、薄茶色固体。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ(ppm):7.53 (1H, d, J=4.00, =CH−C=O), 7.19 (1H, d, J4.00, −CH=-O)。13C-NMR (400 MHz, CDCl3) δ(ppm):168.51, 164.37, 158.44, 149.80, 142.68, 123.38, 107.79。
FT-IR(ν,cm-1):3093, 2157, 1749, 1697, 1636, 1558, 1407, 1327, 1243, 1214, 1137,1061, 871, 738。
【0067】
参考例2:2-ピラン-2-オン-4,6-ジイソシアナートの合成
【0068】
【化15】

【0069】
製造例1で得た2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボニルアジド(1.00 g,4.27 mmol)をトルエン(100 ml)に溶解し、90℃で1時間攪拌した。溶媒を減圧留去して標題化合物(0.730 g,4.10 mmol)を得た。収率96%、淡黄色固体。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ(ppm):5.85 (1H, d, J=4.00, =CH−C=O), 5.66 (1H, d, J=4.00, −CH=-O)。13C-NMR (400 MHz, CDCl3) δ(ppm):168.51, 164.37, 158.44, 149.80, 142.68, 123.38, 107.79。
FT-IR(ν,cm-1):2259, 1695, 1214。
【0070】
製造例1:ポリウレタンの合成(1)
【0071】
【化16】

【0072】
2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボニルアジド(PDC-Az)(1.00 g, 4.27 mmol, 1 eq)と数平均分子量650の東京化成製ポリテトラメチレングリコール(PTMG650)(2.77 g, 4.27 mmol, 1 eq)(東京化成製)を100 mlのトルエンに溶解し、90 ℃で5時間反応させた。最初の30分ほどで溶液は濁り始め、1時間後には極めて粘調な液体として分離してガラス壁に付着し、6時間後には固体膜状物となった。溶液を室温に戻し、上澄み液を取り除き、残留物を20 mlのTHFに溶解し、攪拌しながら500 mlのメタノールに再沈澱精製して、対応するポリウレタン 3.34 g(収率97%)を淡黄色粉末として得た。
GPC (THF):Mn=1.81×104 g/mol, Mw=3.19×104 g/mol, Mw/Mn=1.77。
1H-NMR (400 MHz, THF-d8) δ(ppm):9.91 (1H, ピロン6位C-NH-COO-), 9.18 (1H, ピロン4位C-NH-COO-), 6.46 (1H, ピロン5位=CH-), 6.26 (1H, ピロン3位-CH=), 4.09 (4H, -NH-COO-CH2-), 3.31 (-O-CH2-C-C-CH2-O-), 1.53 (-O-C-CH2-CH2-C-O-)。
13C-NMR (400 MHz, THF-d8) δ(ppm):δ:159.91 (ピロン6位C-NH-COO-), 154.32(ピロン4位C-NH-COO-), 154.04 (ピロン2位C), 152.71 (ピロン6位C), 151.84 (ピロン4位C), 87.59 (ピロン3位C), 82.41 (ピロン5位C), 70.50 (-NH-COO-C), 70.41 (-NH-COO-C-C-C-C-O-), 65.38 (-O-C-C-C-C-O-), 26.73 (-NH-COO-C-C-C-C-O-), 26.24 (-NH-COO-C-C-C-C-O-), 25.88 (-O-C-C-C-C-O-)。
FT-IR (ν):3196, 2943, 2857, 2795, 1752, 1710, 1214, 1110 cm-1;(δ):1537, 829, 768 cm-1
TG-DTA:Td=244.0 ℃, Td5=233.6 ℃。
DSC:Tg=-29.0 ℃。
【0073】
製造例2:ポリウレタンの合成(2)
【0074】
PDC-Az(1.00 g,4.27 mmol, 1 eq)を50mlのトルエンに溶解し、90 ℃で1時間加熱した。この時点で一旦室温に戻し、溶液を0.1 ml採取して減圧留去し、残渣のNMRスペクトル及びIRスペクトルを分析したところ、以下の結果が得られた:
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ(ppm): 5.85 (1H, d, J=4.00, =CH−C=O), 5.66 (1H, d, J=4.00, −CH=−O);FT-IR (ν):2259, 1695, 1214 cm-1
よって、PDC-Azは全て対応するジイソシアネート(PDC-DI)に変換されたことがわかった。このPDC-DI溶液に、PTMG650(2.77 g,4.27 mmol, 1 eq)を50 mlのトルエンに溶解した溶液を加え、90 ℃で3時間反応させた。最初の5分ほどで溶液は濁り始め、20分後には極めて粘調な液体として分離してガラス壁に付着し、6時間後には固体膜状物となった。溶液を室温に戻し、上澄み液を取り除き、残留物を20 mlのTHFに溶解し、攪拌しながら500 mlのメタノールに再沈澱精製して、相当するポリウレタン 3.31 g(収率96%)を淡黄色粉末として得た。
GPC (THF):Mn=1.84×104 g/mol, Mw=3.34×104 g/mol, Mw/Mn=1.82。
その他のスペクトルデータは実施例1のデータとよく一致した。
【0075】
実施例3:ポリウレタンの合成(3)
【0076】
【化17】

【0077】
PDC-Az(1.00 g,4.27 mmol, 1 eq)と数平均分子量350のポリエチレングリコール(1.29 g,4.27 mmol, 1 eq)(東京化成製)を100 mlのトルエンに溶解し、90 ℃で5時間反応させた。最初の30分ほどで溶液は濁り始め、1時間後には極めて粘調な液体として分離してガラス壁に付着し、6時間後には固体膜状物となった。溶液を室温に戻し、上澄み液を取り除き、残留物を20 mlのTHFに溶解し、攪拌しながら500 mlのメタノールに再沈澱することによって精製して相当するポリウレタン 2.00 g(収率98%)を淡黄色粉末として得た。
GPC (THF):Mn=2.25×104 g/mol, Mw=4.06×104 g/mol, Mw/Mn=1.80。
1H-NMR (400 MHz, THF-d8) δ(ppm):9.91 (1H, ピロン6位C-NH-COO-), 9.18 (1H, ピロン4位C-NH-COO-), 6.46 (1H, ピロン5位=CH-), 6.26 (1H, ピロン3位-CH=), 4.09 (4H, -NH-COO-CH2-), 3.34 (-O-CH2CH2-O-)。
13C-NMR (400 MHz, THF-d8) δ(ppm):159.91 (ピロン6位C-NH-COO-), 154.32 (ピロン4位C-NH-COO-), 154.04 (ピロン2位C), 152.71 (ピロン6位C), 151.84 (ピロン4位C), 87.59 (ピロン3位C), 82.41 (ピロン5位C), 70.50 (-NH-COO-C), 70.45 (-NH-COO-C-C-O-), 65.45 (-O-C-C-O-)。
FT-IR (ν):3194, 2944, 2858, 2795, 1752, 1711, 1214, 1110 cm-1;(δ):1537, 830, 768 cm-1
【0078】
実施例4:ポリウレタンの合成(4)
【0079】
【化18】

【0080】
PDC-Az(1.00 g, 4.27 mmol, 1 eq)と数平均分子量450のポリプロピレングリコール(1.92 g,4.27 mmol, 1 eq)(Aldrich製)を100 mlのトルエンに溶解し、90 ℃で5時間反応させた。最初の30分ほどで溶液は濁り始め、1時間後には極めて粘調な液体として分離してガラス壁に付着し、6時間後には固体膜状物となった。溶液を室温に戻し、上澄み液を取り除き、残留物を20 mlのTHFに溶解し、攪拌しながら500 mlのメタノールに再沈澱精製して相当するポリウレタン 2.60 g(収率97%)を淡黄色粉末として得た。
GPC (THF):Mn=1.80×104 g/mol, Mw=3.33×104 g/mol, Mw/Mn=1.85。
1H-NMR (400 MHz, THF-d8) δ(ppm):9.93〜9.89 (1H, ピロン6位C-NH-COO-), 9.18〜9.11 (1H, ピロン4位C-NH-COO-), 6.48〜6.37 (1H, ピロン5位=CH-), 6.29〜6.17 (1H, ピロン3位-CH=), 5.38〜5.12 [-NH-COO-CH(CH3)-], 4.33〜4.20 [-O-CH2CH(CH3)-O-], 4.15〜4.07 (-NH-COO-CH2-), 3.34〜3.10 [-O-CH2CH(CH3)-O-], 1.58〜1.46 (CH3)。
13C-NMR (400 MHz, THF-d8) δ(ppm):159.5〜160.2 (ピロン6位C-NH-COO-), 154.2〜154.9 (ピロン4位C-NH-COO-), 153.92〜154.11 (ピロン2位C), 152.45〜153.22(ピロン6位C), 151.66〜152.24 (ピロン4位C), 87.40〜87.59 (ピロン3位C), 82.31〜83.60 (ピロン5位C), 76.45 [-NH-COO-CH(CH3)-], 70.50 (-NH-COO-CH2-), 68.22 [-O-CH2CH(CH3)-O-], 65.45 [-O-CH2CH(CH3)-O-], 24.55 (CH3)。
FT-IR (ν):3195, 2944, 2855, 2794, 1752, 1710, 1213, 1110 cm-1;(δ):1536, 831, 767 cm-1
【0081】
実施例5:ポリウレタンの合成(5)
【0082】
【化19】

【0083】
PDC-Az(1.00 g,4.27 mmol, 1 eq)と1,12-ドデカンジオール(0.862 g,4.27 mmol, 1 eq)を100 mlのトルエンに溶解し、90 ℃で5時間反応させた。最初の30分ほどで溶液は濁り始め、1時間後には極めて粘調な液体として分離してガラス壁に付着し、6時間後には固体膜状物となった。溶液を室温に戻し、上澄み液を取り除き、残留物を20 mlのTHFに溶解し、攪拌しながら500 mlのメタノールに再沈澱精製して相当するポリウレタン 1.59 g(収率98%)を淡黄色粉末として得た。
GPC (THF):Mn=2.40×104 g/mol, Mw=4.51×104 g/mol, Mw/Mn=1.88。
1H-NMR (400 MHz, THF-d8) δ(ppm):9.91 (1H, ピロン6位C-NH-COO-), 9.18 (1H, ピロン4位C-NH-COO-), 6.46 (1H, ピロン5位=CH-), 6.26 (1H, ピロン3位-CH=), 4.09 (4H, -NH-COO-CH2-), 3.25 (-NH-COO-CH2CH2-), 2.82〜2.04 (左記以外の-CH2-)。
13C-NMR (400 MHz, THF-d8):δ:159.88 (ピロン6位C-NH-COO-), 154.30 (ピロン4位C-NH-COO-), 154.01 (ピロン2位C), 152.67 (ピロン6位C), 151.80 (ピロン4位C), 87.55 (ピロン3位C), 82.38 (ピロン5位C), 70.51 (-NH-COO-CH2), 26.70 (-NH-COO-CH2-CH2-), 26.25〜25.85 (左記以外の-CH2-)。
FT-IR (ν):3195, 2944, 2855, 2794, 1753, 1710, 1214, 1111 cm-1;(δ):1535, 830, 766 cm-1
【0084】
実施例6:ポリウレアの合成
【0085】
【化20】

【0086】
PDC-Az(1.00 g,4.27 mmol, 1 eq)と1,12-ジアミノドデカン(0.854 g,4.27 mmol, 1 eq)を100 mlのトルエンに溶解し、90 ℃で5時間反応させた。最初の15分ほどで溶液は濁り始め、30分後には極めて粘調な液体として分離してガラス壁に付着し、3時間後には固体膜状物となった。溶液を室温に戻し、上澄み液を取り除き、残留物を20 mlのTHFに溶解し、攪拌しながら500 mlのメタノールに再沈澱精製して相当するポリウレア 1.82 g(収率98%)を淡黄色粉末として得た。
GPC (THF):Mn=3.10×104 g/mol, Mw=5.77×104 g/mol, Mw/Mn=1.86。
1H-NMR (400 MHz, THF-d8) δ(ppm): 8.31 (1H, ピロン6位C-NH-CONH-), 8.18 (1H, ピロン4位C-NH-CONH-), 7.32 (1H, ピロン5位-CH=), 7.25 (1H, ピロン環4位-NHCO-NH-), 6.32 (1H, ピロン3位-CH=), 6.33 (1H, ピロン環6位-NHCO-NH-), 3.58 (4H, -NHCONH-CH2-), 2.85(4H, -NHCONHCH2-CH2-), 2.65〜2.05 (16H, その他のCH2)。
FT-IR (ν):3394, 3194, 3065, 3033, 3015, 2904, 2822, 1725, 1686, 1655, 1637, 1478, 1450, 1390, 1286, 1190, 1122, 1214, 1110 cm-1;(δ): 1532, 830, 768 cm-1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】

[式中、
Xは、−O−又は−NH−を示し;
nは、0又は1を示し;
mは、1〜40の整数を示し;及び
Yは、−[(CH−O]−(aは2〜12の整数を示す)、又は−(CH−(aは2〜12の整数を示す)を示す。但し、(a+1)×mは3〜45の整数を示す。]
で表される繰り返し単位を有するポリマー。
【請求項2】
下記式(II):
【化2】

[式中、Yは、−[(CH−O]−(aは2〜12の整数を示す)を示し、かつmは1〜40の整数を示す。但し、(a+1)×mは3〜45の整数を示す。]
で表される繰り返し単位を有する、請求項1記載のポリマー。
【請求項3】
下記式(III):
【化3】

[式中、Yは、−(CH−(aは2〜12の整数を示す)を示し、かつmは1〜40の整数を示す。但し、(a+1)×mは3〜45の整数を示す。]
で表される繰り返し単位を有する、請求項1記載のポリマー。
【請求項4】
式:
【化4】

で表わされる2−ピラン−2−オン−4,6−ジカルボニルアジド、又は式:
【化5】

で表わされる2−ピラン−2−オン−4,6−ジイソシアナートに、式:HO−[(CH−O]−H(aは2〜12の整数を示し、かつmは1〜40の整数を示す。但し、(a+1)×mは3〜45の整数を示す。)で表わされるジオール、又は式:HN−(CH−NH(aは2〜12の整数を示す)で表わされるジアミンを重付加反応させることを特徴とする、下記式(I):
【化6】

[式中、
Xは、−O−又は−NH−を示し;
nは、0又は1を示し;
mは、1〜40の整数を示し;及び
Yは、−[(CH−O]−(aは2〜12の整数を示す)、又は−(CH−(aは2〜12の整数を示す)を示す。但し、(a+1)×mは3〜45の整数を示す。]
で表わされる繰り返し単位を有するポリマーの製造法。
【請求項5】
触媒の非存在下で重付加反応させる、請求項4記載の製造法。

【公開番号】特開2010−270286(P2010−270286A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125785(P2009−125785)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度、農林水産省、「バイオマス・マテリアル製造技術の開発」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【出願人】(304021288)国立大学法人長岡技術科学大学 (458)
【出願人】(501186173)独立行政法人森林総合研究所 (91)
【Fターム(参考)】