説明

ポリウレタン弾性糸を含む布

布を含んでなる製品であって、該布がカチオン染色可能ポリウレタン弾性糸および酸性染色可能糸を含んでなる製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
カチオン染色可能機能を有するポリウレタン弾性糸および酸性染色可能糸から製造される布が包含される。布は別個の染料系を用いて製造される時に均一な色を有することができる。
【背景技術】
【0002】
関連技術の記述
エラスタン(スパンデックスとも称するセグメント化されたポリウレタン)を含有する布は快適性、適合性、および形状保持性の認識された利点を有する。さらに、均一な色保有を包含しうる専門的な見栄え外観を有する布を消費者が重んじることは明らかである。布産業が処理に失敗した1つの問題はエラスタンの利点と均一な色との組み合わせにあり、具体的には、エラスタンを例えばポリアミド(ナイロン)の如き相手繊維と同様な深さの色調に染色する能力にある。布におけるそして延伸状態に成型されたものを包含する編み布におけるエラスタン含有量の増加につれて、この問題は増加する。編み布に関する両方の場合ともに、編み構造における固有の伸びがより大きい布の延伸およびスパンデックスを露呈するより大きい糸の移動を可能にする。商業界では、延伸布の断面において望ましくない方法で可視化され始めるというエラスタンの問題は一般的に「グリン・スルー(grin through)」と称する。
【0003】
エラスタンを相手糸、特にポリアミド、と共通の色調に染色できないことは、同種の染料で染色するいずれか2種の化学的に別個な繊維の色調合わせに共通する数種の因子に関連する。一例として、酸性染料はポリアミド、絹、および羊毛を染色するために使用され、そしてさらにそれらはエラスタンを着色することも可能であるため、両方の繊維は「一緒に」染まる。染料分子間の親和力および化学反応速度における差異並びに2種もしくはそれ以上の別個の繊維タイプの他に、色調の深さは糸の性質、例えばデシテックス、糸束内のフィラメント当たりのデシテックス、および染色処理状態における繊維の熱性能、によっても影響を受けることは広く認識されている。
【0004】
エラスタン機能の利点を均一な着色性と組み合わせるためのこれまでの試みは例えばSelle他による特許文献1の如くポリアミドと共に普遍的に使用されている酸性染料タイプとの親和力およびエラスタンの色調の深さを改良するために試みられてきた。これらの試みは、エラスタンと相手糸との間の物理的および染料吸収差異から生ずる色調適合性と同じ欠点により影響を受ける(例えば、非特許文献1を参照のこと)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開番号2005/0165200A1
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“Dyeing and Chemical Technology of Textile Fibers”5th ed.By E.R.Trotman
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、より均一な色を有するエラスタン糸並びにポリアミド糸および/または蛋白質糸を含む改良された延伸布に関する要望が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
ある種の態様には、布がカチオン染色可能ポリウレタン弾性糸および酸性染色可能糸を含むような布を含む製品がある。カチオン染色可能糸は引用することにより本発明の内容となる日本のオペロンテックス・カンパニー・リミテッド(OPELONTEX CO.,LTD)の国際公開第2008/075605号パンフレットに開示されているものから選択される。
【0009】
ある種の態様には、均一な色を有する製品がある。布はカチオン染色可能ポリウレタン弾性糸、酸性染色可能糸、カチオン染料、および酸性染料を含み、酸性染色可能糸はポリアミド、蛋白質、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される。
【0010】
他の態様には、
(a)カチオン染色可能ポリウレタン糸および酸性染色可能糸を含む布を準備し、
(b)布をカチオン染料と接触させ、そして
(c)布を酸性染料と接触させる
ことを含んでなる布の製造方法であって布が均一な色を有する方法がある。
【0011】
発明の詳細な記述
驚くべきことに、国際公開第2008/075605号パンフレットに開示されているようなカチオン染色可能機能を有するポリウレタン弾性糸と酸性染色機能を有する相手糸との独特な組み合わせを含む布を製造することにより、エラスタン糸および酸性染色可能糸を有する延伸布の欠点を克服しうることが見出された。
【0012】
ここで使用される際には、スパンデックス、エラスタン、およびポリウレタン弾性糸の用語は互換的に使用されておりそしてセグメント化されたポリウレタン弾性糸をさす。
【0013】
カチオン染色可能ポリウレタン弾性糸および酸性染色可能相手糸は同一糸の中でまたは別個に組み合わせて布の中に組み込むことができる。布は丸編み、ワープニット、および織物を包含するいずれかの適当な構造に製造することができる。布が製造された後に、布はカチオン染料および酸性染料で別個に処理される。布の所望する性質によって、カチオン染料または酸性染料のいずれかを最初に適用できる。カチオン染色可能エラスタンを布の中でいずれかの適量で使用して布に対して所望する延伸−回復性質を与えることができる。例えば、布は0より多い量ないし約60重量%までのカチオン染色可能エラスタンを含むことができる。
【0014】
均一に着色された布を得るための他の適当な方法は、カチオン染色可能エラスタンおよび酸性染色可能相手糸を有する編物または織物布を製造することである。布を最初に酸性染料と接触させて、カチオン染色可能エラスタンを全く染色しないかもしくはわずかだけ染色するかまたは着色しない染料を使用して相手糸に所望する色調を得る。次に布をカチオン染料と接触させてエラスタンを染色する。布のエラスタン糸の染色は別個の段階でまたは酸性染色可能相手糸が染色されるのと同じ染料浴において行うことができる。1つの染料浴が使用される時には、酸性染料浴を相手糸の色調の合わせるようにエラスタンに固有の化学性および繊維直径に関して特別に調節された代替染料処方(例えばカチオン染料)と組み合わせる。
【0015】
さらに、エラスタン糸が500%まで延伸しそして色調外観が繊維直径に依存する場合
には、エラスタンの色深さを最適化して布の中での弛緩状態においてまたは延伸の具体的な目標水準において相手糸に適合させることができる。
【0016】
相手糸はいずれかの酸性染色可能糸を包含しうる。酸性染料で染色可能である繊維の例はポリアミド類および蛋白質繊維を包含する。ポリアミド重合体は当該技術で既知である。それらは一般的にジカルボン酸およびジアミンの縮合重合または通常は内部ラクタムから誘導されるモノアミノモノカルボン酸の縮合により製造される。そのようなポリアミド類の例は、それぞれヘキサメチレンジアミン−アジピン酸混合物およびε−カプロラクタムから製造されるナイロン6,6またはナイロン−6である。他の繊維−形成性ポリアミド類の例はナイロン−6/6,6共重合体、ナイロン−11、ナイロン−12である。蛋白質繊維の例は絹、羊毛、モヘア、アンゴラ、およびアルパカを包含する。これらの繊維の組み合わせを同一糸の中で使用することができまたは単一成分糸を布の中に組み込むこともできる。
【0017】
有用な酸性染料の例は色指数(C.I.)染料:アシッドイエロー24、40、59、159、184、204および246、アシッドオレンジ142および156、アシッドレッド50、51、52、138、151、299、361、362、アシッドグリーン104および108、アシッドブルー113、171、185、193、277および324、アシッドバイオレット90、アシッドブラウン298、アシッドブラック52、131:1、132:1、172、187および194を包含する。有用な非−色指数染料はラナセットブルー2R、ラナセットネイビーR、ラナセットレッドG、ラナセットレッド2GA、ラナセットバイオレットB、ラナセットブラウンB、ブルコニルブリックレッドAF−3b、ブルコニルルビンAF−GR、ブルコニルオレンジAF−3R、ブルコニルグリーンAF−B、ブルコニルブリリアントブルーAF−R、ブルコニルロイヤルブルーAF−R、ブルコニルブリリアントイエローAF−4G、エリオニルレッドA−3G、エリオニルブルーRL200、およびニランスレンブリリアントブルー2RFFを包含する。
【0018】
カチオン染料を包含する他の有用な染料は当該技術で既知でありそして国際公開第2008/075605号パンフレットに開示されている。
【0019】
色測定は布上でデータカラー・スペクトラフラッシュ(Datacolor Spectraflash)モデルSF−300比色計(ニュージャージー州、ローレンスビルのデータカラー・インターナショナル(Datacolor International))を用いてD65/10度光源を使用して行われる。測定はCIELABのL色空間の基準色座標を使用する“Commission Internationale de L’Eclairage”(パリ、フランス)(照明に関する国際協会(International Society for Illumination/Lighting))(“CIE”)により公表された国際基準色測定方法を使用して報告され、「L」は明度座標を示し、「a」は赤色/緑色座標を示し(+aは赤色を示しそして−aは緑色を示し)、そして「b」は黄色/青色座標を示す(+bは黄色を示しそして−bは青色を示す)。L、a、およびb座標の間の差異を用いることにより、2つの試料間の合計色差異である△Eが得られる。布の均一な色は、a−色、b−色、およびL−値により測定される布の色がカチオン染色可能弾性糸を布から除去することにより得られる値の10%以内にある場合を包含する。
【0020】
・一般的処理条件
・製造
・85−115Cの範囲にあるオートクレーブ温度において予備−水蒸気処理されたズボンまたは肌着を使用して肌着寸法を安定化させそしてその後の湿潤処理における折り目を
最少化することができる。
・特にLYCRA(R)繊維配合物に関する開放幅布安定化は160−200Cの乾燥熱ステンター設定において60−45秒間にわたり行うことができる。布品質によって、パッド中で酸化防止剤保護を使用して予備設定中のポリアミドのアミン端部基/染料部位を保護することができる。
(商業例2−3%のスパンスクール・スパーク・タナテックス(Spanscour Spark Tanatex))
・精錬
・1−2g/lの非イオン性洗剤
・20分間にわたる70−80Cの1−2g/lのソーダ
【0021】
・単一浴2段階方法
・一様な色調の色効果はアニオンおよびカチオン染料の組み合わせに基づくため、単一浴染色を変更して2種の染料タイプの別個の枯渇を容易にすることが重要である。
・カチオン染料はアニオン染料より速く染み込みそして染料浴に対して最初に可能最低温度においてカチオン均染剤と共に適用されるべきである。40−70Cにおける10−30分間にわたるその後の処理が実質的な枯渇を達成するであろう。40Cに逆に冷却した後に、酸性染料の適用が次に上昇で30−60分にわたる1c/分〜98cの染料でより安全委管理される上昇でありうる。
【0022】
・二浴方法。
単一浴方法で記述された通りにしてカチオン染料をスパンデックスに適用し、逆に冷却しそしてすすぎ、次に酸性染料を第二浴の中でポリアミドに適用し、これは非常に濃い色調には好ましく、そこでは染料沈殿、すなわち酸性染料が加えられる時に染料の沈殿を生ずる染料浴中に残存する繊維上で枯渇されないカチオン染料、の危険性がありうる。
【0023】
染色工程管理
・一定のpHによる染色は色調および色再現性における最良の均衡を確実にするであろうが、酸ドナーを使用することができる。
・一定のpH6.5−7.0が最適であろうが、時には染料枯渇を達成するためにpH4.5−5.5への下方調整が必要となろう。残存精錬アルカリからのスパンデックスへの急速な染み込みを回避するためにカチオン染料の添加前にpHを設定することが重要である。
・スパンデックス上のカチオン染料の改良された均染性および泳動は0.1%のTinegal MR(ハンツマン(Huntsman))の染浴への同時添加により達成できる。この製品はさらに容易に発泡する可能性がありそしてそのために1リットル当たり0.5mlのAphrogene NS(ユニクエマ(Uniqema)からの非シリコーン発泡防止剤)の追加適用が役立ちうる。
・グラウバー塩はスパンデックス上のカチオン染料を妨害しそして均染性も改良する。
・0.25%レベルにおける非イオン性抗沈殿剤であるUniperol KA(バスフ(BASF))は単一浴染色適用における沈殿の危険性を減じうる。発泡が問題である場合には、両性剤であるAlbegal A(ハンツマン)を使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布を含んでなる製品であって、該布がカチオン染色可能ポリウレタン弾性糸および酸性染色可能糸を含んでなる製品。
【請求項2】
該布が丸編み、ワープニット、および織物から選択される構造を含む、請求項1の製品。
【請求項3】
該酸性染色可能糸がポリアミド、絹、羊毛、モヘア、アンゴラ、アルパカおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項1の製品。
【請求項4】
a−色、b−色、およびL−値により測定される布の色がカチオン染色可能弾性糸を布から除去することにより得られる値の10%以内にある、請求項1の製品。
【請求項5】
布がカチオン染色可能機能を有するポリウレタン弾性糸を布の60重量%より少ない量で含む請求項4の製品。
【請求項6】
布が均一な色を有しそしてカチオン染色可能ポリウレタン弾性糸、酸性染色可能糸、カチオン染料、および酸性染料を含んでなるような布を含んでなる製品であって、該酸性染色可能糸がポリアミド、蛋白質、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される製品。
【請求項7】
(a)カチオン染色可能ポリウレタン糸および酸性染色可能糸を含んでなる布を準備し、
(b)該布をカチオン染料と接触させ、そして
(c)該布を酸性染料と接触させる
ことを含んでなる布の製造方法であって、該布が均一な色を有する方法。

【公表番号】特表2012−505323(P2012−505323A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531205(P2011−531205)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/060143
【国際公開番号】WO2010/045113
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(309028329)インビスタ テクノロジーズ エス エイ アール エル (80)
【Fターム(参考)】