説明

ポリウレタン弾性繊維およびその製造方法

【課題】 ストレッチ性と機能性化合物の単位化合物あたりの機能発現率の優れたポリウレタン弾性繊維およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンを含むポリウレタン弾性繊維であって、ポリウレタンのウレタン基濃度がポリウレタン1kgに対して0.2mol/kg以上3.5mol/kg以下であり、繊維表面には下記一般式(1)に表されるビニルモノマーが重合されてなる被膜重合体を有し、かつ、該被膜重合体の厚みの平均が1ナノメートル以上5マイクロメートル以下であるポリウレタン弾性繊維とする。
【化1】


(式中、R、R’、R”は互いに独立に、水素原子又は任意の置換基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリウレタン弾性繊維およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、ポリウレタンを含む紡糸原液を紡糸して繊維とし、該繊維表面を機能性化合物で被膜することにより、ストレッチ性と単位化合物あたりの機能発現率の優れたポリウレタン弾性繊維およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマージオール、ジイソシアネートおよび低分子量の多官能性活性水素化合物から製造されるポリウレタンは、優れた機械的性質、成型加工性を有する等の理由から、繊維、エラストマー、フォーム、合成皮革、塗料等の用途に用いられている。ポリウレタンの中でもポリウレタン弾性繊維は、その優れた伸縮特性からレッグウエア、インナーウエア、スポーツウエアなどの伸縮性衣料用途、紙おむつや生理用ナプキンなどのサニタリー用途(衛材用途)、医療用途、産業資材用途に幅広く用いられている。かかるポリウレタン弾性繊維には、紡糸性の安定化と製造コスト削減の面から、必要最低限の機能剤を添加することによって機能を発現することが求められている。
【0003】
例えば、着用性、脱着性、フィット性、吸放湿性等の機能に優れたポリウレタン弾性繊維を得るための試みとして、特許文献1に開示の方法が知られている。しかしながら、この方法では効果を上方修正するためには紡糸原液に添加するポリアクリル酸および/またはポリアクリルアミドの添加量を増やす必要があり、それに伴って安定な紡糸が困難となり易く、機械的性質の低下とコストアップが生じ易い。
【0004】
また、グラフト重合によって繊維を機能剤で処理する方法として、特許文献2、特許文献3に開示の方法が知られている。しかし、これら方法をポリウレタン弾性繊維に適用した場合は、どちらの方法においても、機能発現率は優れるものの、強度・伸度に低下によるポリウレタン弾性繊維特有のストレッチ性能が損なわれることになり易い。ストレッチ性が損なわれる原因としては、以下のとおり推定する。特許文献2に開示の方法では、繊維の種類、加えてポリウレタンのウレタン基濃度に関係なく、機能剤であるビニルモノマーの濃度が一定範囲の溶液を繊維に接触させグラフト重合する。そのため、該工程で繊維表面にヘタリが生じ易く、表面構造が乱れ、それによって被膜重合体の厚みを制御できず、強度・伸度が低下しストレッチ性能が損なわれると考えられる。また、特許文献3に開示の方法では、ポリウレタンに二重結合が導入されていることで、二重結合を持たないポリウレタンよりも機能剤との反応性が高くなり、機能剤は効率的に繊維中に含有されるが、二重結合を持つことによる影響でポリウレタン弾性繊維中の結晶構造に変化が生じると予想され、結果的に強度・伸度共が低下してストレッチ性能が損なわれると考えられる。このような理由から、特許文献2、3に開示される方法では、結局ポリウレタン弾性繊維特有のストレッチ性能を発揮することができず、衣料素材への適用が限定されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−249930号公報
【特許文献2】特開2004−292956号公報
【特許文献3】特開2000−192329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の欠点を改良し、ポリウレタン弾性繊維のストレッチ性に重要な強度・伸度を維持しつつ、機能性化合物の単位化合物あたりの機能発現率の優れたポリウレタン弾性繊維を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記の課題を解決するため、以下のいずれかの手段を採用する。
(1) ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンを含むポリウレタン弾性繊維であって、ポリウレタンのウレタン基濃度がポリウレタン1kgに対して0.2mol/kg以上3.5mol/kg以下であり、繊維表面には下記一般式(1)に表されるビニルモノマーが重合されてなる被膜重合体を有し、かつ、該被膜重合体の厚みの平均が1ナノメートル以上5マイクロメートル以下であることを特徴とするポリウレタン弾性繊維。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R、R’、R”は互いに独立に、水素原子又は任意の置換基を表す。)
(2) 重量比換算から求めた前記ポリウレタン弾性繊維における前記被膜重合体の含有率が0.1%以上40%以下であることを特徴とする、前記(1)に記載のポリウレタン弾性繊維。
(3) 前記被膜重合体が、カルボキシル基、ホスホリルコリン基、およびベンゾトリアゾール構造の内の少なくとも1種を分子中に有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載のポリウレタン弾性繊維。
(4) 前記ビニルモノマーが、(メタ)アクリル酸、または、下記一般式(2)もしくは(3)で表される化合物であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
【0010】
【化2】

【0011】
【化3】

【0012】
(5) 前記被膜重合体がグラフト重合により前記ポリウレタンに直接結合していることを特徴とする、前記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
(6) ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンを含む紡糸原液を口金から紡出して、ポリウレタンのウレタン基濃度がポリウレタン1kgに対して0.2mol/kg以上3.5mol/kg以下である繊維を得た後、該繊維の表面に、下記一般式(1)に表されるビニルモノマーまたは前記ビニルモノマーからなるオリゴマーを重合または前記ビニルモノマーからなるポリマーを固着させ、厚みの平均が1ナノメートル以上5マイクロメートル以下である被膜重合体を形成することを特徴とするポリウレタン弾性繊維の製造方法。
【0013】
【化4】

【0014】
(式中、R、R’、R”は互いに独立に、水素原子又は任意の置換基を表す。)
(7) 前記被膜重合体の形成時、前記ビニルモノマーもしくは前記ビニルモノマーからなるオリゴマーの濃度または前記ビニルモノマーからなるポリマーの濃度が0.1重量%以上40重量%以下である溶液に前記繊維を接触させて該ビニルモノマーもしくは該ビニルモノマーからなるオリゴマーを重合または該ビニルモノマーからなるポリマーを固着させることを特徴とする前記(6)に記載のポリウレタン弾性繊維の製造方法。
(8) 前記ポリウレタン弾性繊維において重量比換算から求めた前記被膜重合体の含有率が0.1%以上40%以下となるように重合させることを特徴とする、前記(6)または(7)に記載のポリウレタン弾性繊維の製造方法。
(9) 前記被膜重合体が、カルボキシル基、ホスホリルコリン基、ベンゾトリアゾール構造の内の少なくとも1種を分子中に有することを特徴とする前記(6)〜(8)のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維の製造方法。
(10) 前記ビニルモノマーが、(メタ)アクリル酸、または、下記一般式(2)もしくは(3)で表される化合物であることを特徴とする前記(6)〜(9)のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維の製造方法。
【0015】
【化5】

【0016】
【化6】

【0017】
(11) 前記被膜重合体をグラフト重合により前記ポリウレタンに直接結合させることを特徴とする、前記(6)〜(10)のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維の製造方法。
(12) 紡糸方法が乾式であることを特徴とする、前記(6)〜(11)のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、主構成成分がポリマージオールおよびジイソシアネートであるポリウレタンを含む弾性繊維の表面が、一般式(1)で表されるビニルモノマーを重合してなる、厚さ平均1ナノメートル以上5マイクロメートル以下の範囲の被膜重合体(機能性化合物)で被膜されるので、ストレッチ性と単位化合物あたりの機能発現率の優れたポリウレタン弾性繊維となる。その結果、このポリウレタン弾性繊維、さらにはそれを使用した衣服などの織編物は、軽量感、耐久性、風合い、外観品位に優れたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明について、さらに詳細を述べる。
【0020】
まず本発明で使用するポリウレタンについて述べる。
【0021】
本発明に使用されるポリウレタンは、ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするものであれば任意のものでよく、特に限定されるものではない。また。その合成法も特に限定されるものではない。すなわち、例えば、ポリマージオールとジイソシアネートと低分子量ジアミンからとなるポリウレタンウレアであってもよく、また、ポリマージオールとジイソシアネートと低分子量ジオールとからなるポリウレタンウレタンであってもよい。さらに、鎖伸長剤として水酸基とアミノ基を分子内に有する化合物を使用したポリウレタンウレアであってもよい。本発明の効果を妨げない範囲で3官能性以上の多官能性のグライコールやイソシアネート等が使用されることも好ましい。
【0022】
ポリマージオールはポリエーテル系、ポリエステル系ジオール、ポリカーボネートジオール等が好ましい。そして、特に柔軟性、伸度を糸に付与する観点からポリエーテル系ジオールが使用されることが好ましい。
【0023】
ポリエーテル系ジオールとしては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールの誘導体、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと略す)、テトラヒドロフラン(THF)および3−メチルテトラヒドロフランの共重合体である変性PTMG(以下、3M−PTMGと略する)、THFおよび2,3−ジメチルTHFの共重合体である変性PTMG、特許第2615131号公報などに開示される側鎖を両側に有するポリオール、THFとエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドが不規則に配列したランダム共重合体等が好ましく使用される。これらポリエーテル系ジオールを1種または2種以上混合もしくは共重合して使用してもよい。
【0024】
また、耐摩耗性や耐光性を得る観点からは、ブチレンアジペート、ポリカプロラクトンジオール、特開昭61−26612号公報などに開示されている側鎖を有するポリエステルポリオールなどのポリエステル系ジオールや、特公平2−289516号公報などに開示されているポリカーボネートジオール等が好ましく使用される。
【0025】
また、こうしたポリマージオールは単独で使用してもよいし、2種以上混合もしくは共重合して使用してもよい。
【0026】
ポリマージオールの分子量は、糸にした際の伸度、強度、耐熱性などを得る観点から、数平均分子量が1000以上8000以下のものが好ましく、1800以上6000以下がより好ましい。この範囲の分子量のポリオールが使用されることにより、伸度、強度、弾性回復力、耐熱性に優れた弾性繊維を容易に得ることができる。
【0027】
次にジイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)、トリレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートベンゼン、キシリレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが、特に耐熱性や強度の高いポリウレタンを合成するのに好適である。さらに脂環族ジイソシアネートとして、例えば、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(以下、H12MDIと称する。)、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,6−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロキシリレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート、オクタヒドロ1,5−ナフタレンジイソシアネートなどが好ましい。脂肪族ジイソシアネートは、特にポリウレタン弾性繊維の黄変を抑制する際に有効に使用できる。そして、これらのジイソシアネートは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
次に、上記したようなポリマージオールとジイソシアネートからポリウレタンを合成するにあたって用いられる鎖伸長剤としては、低分子量ジアミンおよび低分子量ジオールのうちの少なくとも1種を使用するのが好ましい。なお、エタノールアミンのような水酸基とアミノ基を分子中に有するものであってもよい。
【0029】
好ましい低分子量ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p,p’−メチレンジアニリン、1,3−シクロヘキシルジアミン、ヘキサヒドロメタフェニレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)フォスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらの中から1種または2種以上が使用されることが好ましい。特に好ましくはエチレンジアミンである。エチレンジアミンを用いることにより伸度および弾性回復性、さらに耐熱性に優れた糸を容易に得ることができる。これらの鎖伸長剤に架橋構造を形成することのできるトリアミン化合物、例えば、ジエチレントリアミン等を効果が失わない程度に加えてもよい。
【0030】
また、低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、1−メチル−1,2−エタンジオールなどが代表的なものである。これらの中から1種または2種以上が使用されることが好ましい。特に好ましくはエチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオールである。これらを用いると、ジオール伸長のポリウレタンとしては耐熱性がより高くなり、また、より強度の高い糸を得ることができるのである。
【0031】
また、本発明に用いられるポリウレタンの分子量は、耐久性や強度の高い繊維を得る観点から、数平均分子量として30000以上150000以下の範囲であることが好ましい。なお、分子量はGPCで測定し、ポリスチレンにより換算する。
【0032】
さらに、ポリウレタンには、末端封鎖剤が1種または2種以上混合使用されることも好ましい。末端封鎖剤としては、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、イソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルメチルアミン、イソブチルメチルアミン、イソペンチルメチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミンなどのモノアミン、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、アリルアルコール、シクロペンタノールなどのモノオール、フェニルイソシアネートなどのモノイソシアネートなどが好ましい。
【0033】
また、本発明におけるポリウレタン弾性繊維を構成するポリウレタンのウレタン基濃度は、ポリウレタン1kgに対して0.2mol/kg以上3.5mol/kg以下である。ウレタン基濃度が0.2mol/kg未満だと、伸度の低下と強度の顕著な低下を引き起こすため好ましくない。一方、ウレタン基濃度が3.5mol/kgを越えると、強度の低下と伸度の顕著な低下を引き起こすため好ましくない。良好な伸度と強度をよりよく両立させるという観点からは0.4mol/kg以上1.0mol/kg以下であることが好ましい。
【0034】
本発明においては、以上のような基本構成を有するポリウレタンを含むポリウレタン弾性繊維の表面に、消臭性、防汚性、吸湿性、生体適合性などの機能を発現する式(1)で表されるビニルモノマーもしくは前記ビニルモノマーからなるオリゴマーを重合させ、または前記ビニルモノマーからなるポリマーを固着させ、厚み平均が1ナノメートル以上5マイクロメートル以下の範囲の被膜重合体を設けることにより、ストレッチ性を維持しながら式(1)で表されるビニルモノマーからなる重合体の重量あたりの機能発現率を向上させることが可能となる。
【0035】
本発明において、該被膜重合体を構成するビニルモノマーは、式(1)を満たす構造を有するものであれば任意のものでよく、特に限定されるものではない。しかしながら、ポリウレタン弾性繊維に加齢臭消臭機能を付与するにあたって特に好適に使用される式(1)のビニルモノマーの構造としては、下記一般式(4)、(5)のようなものが挙げられる。
【0036】
【化7】

【0037】
式中、R1,R2は互いに独立にHまたは炭素数1から10の飽和炭化水素/不飽和炭化水素を示す。R3はカルボン酸、スルホン酸、(亜)リン酸、下記R6、R7、R8、R9のいずれかを示す。R4はH、OH、CN、炭素数1から50の飽和炭化水素/不飽和炭化水素/オキシ炭化水素、アルデヒド、カルボン酸、スルホン酸、(亜)リン酸、ハロゲン、下記R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12のいずれかを示す。
【0038】
【化8】

【0039】
式中、R13、R14は互いに独立に炭素数1から20の飽和炭化水素/不飽和炭化水素/オキシ炭化水素を示す。XはH、OH、炭素数1から20の飽和炭化水素/不飽和炭化水素/オキシ炭化水素、カルボン酸、スルホン酸、(亜)リン酸、ハロゲンのいずれかを示す。
【0040】
式(4)、(5)で示される構造単位を含有するビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリル酸、10−ウンデセン酸、1−フェニルエテニルホスホン酸、1−亜リン酸ビニル、4−ビニル安息香酸、アラキドン酸、アリルスルホン酸、イタコン酸、エレオステアリン酸、オレイン酸、クロトン酸、桂皮酸、ジアリル酢酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンホスホン酸、ソルビン酸、パリナリン酸、ビス・メタクリロキシエチルフォスフェート、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸アルキル、ピバル酸ビニル、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リン酸ビニル、リン酸2−(メタクリロイルオキシ)エチルなどが挙げられる。中でも、特に(メタ)アクリル酸であることが好ましい。
【0041】
また、ポリウレタン弾性繊維に防汚機能を付与するにあたって特に好適に使用される式(1)のビニルモノマーの構造としては、下記一般式(13)、(14)のようなものが挙げられる。
【0042】
【化9】

【0043】
式中、R1,R2は互いに独立にHまたは炭素数1から10の飽和炭化水素/不飽和炭化水素を示す。R5はH、CN、炭素数1から50の飽和炭化水素/不飽和炭化水素/オキシ炭化水素、アルデヒド、ハロゲン、下記R15、R16、R17、R18、R19、R20のいずれかを示す。
【0044】
【化10】

【0045】
式中、R22、R23は互いに独立に炭素数1から50の飽和炭化水素/不飽和炭化水素/オキシ炭化水素、炭素数1から20のハロゲン化炭化水素、ケイ素数2から200の水素化ケイ素/アルキルケイ素/オキシアルキルケイ素のいずれかを示す。nは1から20の自然数を示す。YはH、CN、炭素数1から50の飽和炭化水素/不飽和炭化水素/オキシ炭化水素、アルデヒド、ハロゲン、3から10員環のヘテロ環のいずれかを示す。
【0046】
式(13)、(14)で示される構造単位を含有するビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリロニトリル、3−フェニル−1−モルホリノ−2−プロペン−1−オン、4−ビニル安息香酸オキシラニルメチル、4−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(トリメチルシリルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸3−(1,1,3,3,3,−ペンタメチルプロパンジシロキサン−1−イル)プロピル、(メタ)アクリル酸3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル、(メタ)アクリル酸3−[トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル]プロピル、p−トルエンスルホン酸アリル、アクロレイン、エチレン、塩化ビニル、クロロ酢酸ビニル、酢酸アリル、酢酸ビニル、ジクロロ酢酸ビニル、スチレン、トリアセトキシ(ビニル)シラン、トリフルオロ酢酸ビニル、ブタジエン、フッ化ビニル、プロピレン、メタンスルホン酸アリルなどが挙げられる。
【0047】
さらに、ポリウレタン弾性繊維に生体適合機能を付与するにあたって特に好適に使用される式(1)のビニルモノマーの構造としては、下記一般式(21)のようなものが挙げられる。
【0048】
【化11】

【0049】
式中、R1,R2は互いに独立にHまたは炭素数1から10の飽和炭化水素/不飽和炭化水素を示す。R21はOH、3から10員環のヘテロ環、下記R24、R25のいずれかを示す。
【0050】
【化12】

【0051】
式中、R26、R27は互いに独立に炭素数1から10の飽和炭化水素/不飽和炭化水素/オキシ炭化水素のいずれかを示す。nは1から20の自然数を示す。ZはH、OH、アミン、アンモニウム塩、ホスホリルコリンのいずれかを示す。
【0052】
式(21)で示される構造単位を含有するビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、ビニルアルコール、などが挙げられる。
【0053】
特に下記に示す一般式(3)の化合物であることが好ましい。
【0054】
【化13】

【0055】
そして、ポリウレタン弾性繊維に吸湿機能を付与するにあたって特に好適に使用される式(1)のビニルモノマーの構造としては、下記一般式(24)、(25)のようなものが挙げられる。
【0056】
【化14】

【0057】
式中、R1、R2は互いに独立にHまたは炭素数1から10の飽和炭化水素/不飽和炭化水素を示す。R28はOH、カルボン酸、スルホン酸、(亜)リン酸、下記R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36のいずれかを示す。R29はH、OH、CN、炭素数1から50の飽和炭化水素/不飽和炭化水素/オキシ炭化水素、アルデヒド、カルボン酸、スルホン酸、(亜)リン酸、ハロゲン、下記R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36のいずれかを示す。
【0058】
【化15】

【0059】
式中、R37、R38は互いに独立に炭素数1から20の飽和炭化水素/不飽和炭化水素/オキシ炭化水素、炭素数1から20のハロゲン化炭化水素のいずれかを示す。WはH、OH、炭素数1から50の飽和炭化水素/不飽和炭化水素/オキシ炭化水素、アルデヒド、カルボン酸、スルホン酸、(亜)リン酸、ハロゲン、アミン、アンモニウム塩、ホスホリルコリン、3から10員環のヘテロ環のいずれかを示す。
【0060】
式(24)、(25)で示される構造単位を含有するビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−トリメチルアンモニオエチルクロリド、(メタ)アクリル酸エトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸エトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコール、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド塩化メチル4級塩、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリル酸、10−ウンデセン酸、1−フェニルエテニルホスホン酸、1−亜リン酸ビニル、4−ビニル安息香酸、アラキドン酸、アリルスルホン酸、イタコン酸、エレオステアリン酸、オレイン酸、クロトン酸、桂皮酸、ジアリル酢酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンホスホン酸、ソルビン酸、パリナリン酸、ビス・メタクリロキシエチルフォスフェート、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸アルキル、ピバル酸ビニル、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リン酸ビニル、リン酸2−(メタクリロイルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、ビニルアルコールなどが挙げられる。
【0061】
さらに上記した以外の機能として抗菌性、耐光性なども挙げることができ、これらの機能についても、上記と同様に、該機能を発現する式(1)で表されるビニルモノマーもしくは前記ビニルモノマーからなるオリゴマーを重合させ、または前記ビニルモノマーからなるポリマーを固着させ、厚み平均が1ナノメートル以上5マイクロメートル以下の範囲の被膜重合体を設けることにより、ストレッチ性を維持しながら式(1)で表されるビニルモノマーからなる重合体の重量あたりの機能発現率を向上させることが可能となる。
【0062】
ポリウレタン弾性繊維に耐光性を付与するにあたって用いられる、式(1)で表されるビニルモノマーの構造としては、下記する一般式(2)の化合物であることが好ましい。
【0063】
【化16】

【0064】
また、ポリウレタン弾性繊維に抗菌性を付与するにあたって用いられる、式(1)で表されるビニルモノマーの構造としては下記する一般式(33)の化合物であることが好ましい。
【0065】
【化17】

【0066】
式中、R1,R2は互いに独立にHまたは炭素数1から10の飽和炭化水素/不飽和炭化水素を示す。R39はアンモニウム塩、ホスホニウム塩のいずれかを示す。
【0067】
式(33)で示される構造単位を含有するビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−トリメチルアンモニオエチルクロリド、(メタ)アクリルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、トリブチル−4−ビニルベンジルホスホニウムクロライドなどが挙げられる。
【0068】
以上のような式(1)の構造を有する機能剤を重合させて成る被膜重合体の厚みは、平均1ナノメートル以上5マイクロメートル以下である。該被膜重合体の厚みが平均1ナノメートル未満だと、ポリウレタン弾性繊維表面に露出している機能剤の濃度が低いために、該機能剤の効果が十分でなく好ましくない。一方、該被膜重合体の厚みが平均5マイクロメートルを越えると、ポリウレタン弾性繊維が嵩高くなり、生地とした場合に風合いが損なわれるため好ましくない。良好な機能発現性と風合いをよりよく両立させるという観点からは平均5ナノメートル以上2マイクロメートル以下の範囲が好ましい。
【0069】
なお、被膜重合体の厚み平均は、透過型電子顕微鏡(TEM)を100000倍の倍率として用いて観察することができる。観察方法としては、繊維構造物の単糸をOsO4染色超薄切片法により観察する。繊維表面に観察されるOsO4濃染の層の厚みを任意の4点以上において測定し、それらの平均値を本発明における被膜重合体の厚み平均とする。
【0070】
また、本発明においては、式(1)の構造を有する機能剤を重合させて成る被膜重合体のポリウレタン弾性繊維における含有率が0.1重量%以上40重量%以下の範囲であることが好ましい。該被膜重合体の含有率が0.1重量%以上であれば、ポリウレタン弾性繊維表面に機能剤がより十分な濃度で露出することになり、機能剤の効果を効率的に発現することができる。好ましくは0.3重量%以上である。一方、該被膜重合体の含有率が40重量%以下であれば、ポリウレタンに依存する強度や伸度をより確実に維持し、ストレッチ性に優れ、生地とした場合にも風合いに優れたものとなりやすい。好ましくは20重量%以下である。より良好な風合いとストレッチ性の維持を両立させるという観点からは0.3重量%以上20重量%以下の範囲が好ましい。
【0071】
なお、被膜重合体の含有率は、ポリウレタン弾性繊維全体と該ポリウレタン弾性繊維を加水分解して単離した被膜重合体とについて、GPC測定を行い、得られたそれぞれの分子量から求めることが出来る。
【0072】
また、ポリウレタン弾性繊維の帯電性を低減させるという観点から、被膜重合体が金属と塩または錯体を形成していることも好ましい。金属については塩または錯体を形成するものであれば任意のものでよく、特に限定されるものではない。例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、マンガン、アルミニウム、銀、ジルコニウムなどが挙げられる。また、該被膜重合体との塩または錯体の合成法も特に限定されるものではない。例えば、ポリウレタン弾性繊維に金属含有化合物を含む水溶液を用いて金属塩または錯体を形成してもよい。
【0073】
本発明のポリウレタン弾性繊維には、各種安定剤や顔料などが含有されていてもよい。例えば、耐光剤、酸化防止剤などにBHTや住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)GA−80などのヒンダードフェノール系薬剤、各種のチバガイギー社製“チヌビン”(登録商標)などのベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系薬剤、住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)P−16などのリン系薬剤、各種のヒンダードアミン系薬剤、酸化鉄、酸化チタンなどの各種顔料、ハイドロタルサイト類化合物、フンタイト、ハイドロマグネサイト、トルマリンなどの鉱物、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カーボンブラックなどの無機物、フッ素系またはシリコーン系樹脂粉体、ステアリン酸マグネシウムなどの金属石鹸、また、銀や亜鉛やこれらの化合物などを含む殺菌剤、消臭剤、またシリコーン、鉱物油などの滑剤、酸化セリウム、ベタインやリン酸系などの各種の帯電防止剤などが含まれることも好ましく、またこれらがポリマーと反応させられることも好ましい。そして、特に光や各種の酸化窒素などへの耐久性をさらに高めるには、例えば、日本ヒドラジン株式会社製のHN−150などの酸化窒素補足剤、住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)GA−80などの熱酸化安定剤、住友化学工業株式会社製の“スミソーブ”(登録商標)300♯622などの光安定剤が使用されることも好ましい。また、これら各種安定剤や顔料を配合する場合には、その糸中への分散性を向上させ、紡糸を安定化させる等の目的で、例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、ポリオール系有機物等の有機物、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤またはこれらの混合物で表面処理された無機薬品を用いることも好ましい。
【0074】
次に本発明のポリウレタン弾性繊維の製造方法について詳細に説明する。
【0075】
本発明においては、出発物質としてポリマージオールおよびジイソシアネートを用い、それらから得られるポリウレタンを含む紡糸原液を口金から紡出して繊維とした後、該繊維の表面に、式(1)に表されるビニルモノマーまたは前記ビニルモノマーからなるオリゴマーを重合するか、式(1)に表されるビニルモノマーからなるポリマーを固着させ、被膜重合体を形成させる。なお、固着するポリマーは、広義のポリマーを意味し、オリゴマーも含まれる。
【0076】
ポリウレタン溶液の製法、また、溶液の溶質であるポリウレタンの製法は、溶融重合法でも溶液重合法のいずれであってもよく、他の方法であってもよい。しかし、より好ましいのは溶液重合法である。溶液重合法の場合には、ポリウレタンにゲルなどの異物の発生が少なく、紡糸しやすく、低繊度のポリウレタン弾性繊維を得やすい。また、当然のことであるが、溶液重合の場合、溶液にする操作が省けるという利点がある。
【0077】
そして本発明に特に好適なポリウレタンとしては、ポリマージオールとして分子量が1800以上6000以下のPTMG、ジイソシアネートとしてMDI、鎖伸長剤としてエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミンのうちの少なくとも1種を使用して合成されたものが挙げられる。
【0078】
ポリウレタンは、例えば、DMAc、DMF、DMSO、NMPなどやこれらを主成分とする溶剤の中で、上記の原料を用い合成することにより得られる。例えば、こうした溶剤中に、各原料を投入、溶解させ、適度な温度に加熱し反応させてポリウレタンとする、いわゆるワンショット法、また、ポリマージオールとジイソシアネートを、まず溶融反応させ、しかる後に、反応物を溶剤に溶解し、前述の鎖伸長剤と反応させてポリウレタンとする方法などが、特に好適な方法として採用され得る。
【0079】
鎖伸長剤にジオールを用いる場合、耐熱性に優れたものを得るという観点から、ポリウレタンの高温側の融点を200℃以上260℃以下の範囲に調節することが好ましい。代表的な方法は、ポリマージオール、MDI、ジオールの種類と比率をコントロールすることにより達成され得る。ポリマージオールの分子量が低い場合には、MDIの割合を相対的に多くすることにより、高温の融点が高いポリウレタンを得ることができ、同様にジオールの分子量が低いときはポリマージオールの割合を相対的に少なくすることにより、高温の融点が高いポリウレタンを得ることができる。
【0080】
ポリマージオールの分子量が1800以上の場合、高温側の融点を200℃以上にするには、(MDIのモル数)/(ポリマージオールのモル数)=1.5以上の割合で、重合を進めることが好ましい。
【0081】
なお、かかるポリウレタンの合成に際し、アミン系触媒や有機金属触媒等の触媒が1種もしくは2種以上混合して使用されることも好ましい。
【0082】
アミン系触媒としては、例えば、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、ビス−2−ジメチルアミノエチルエーテル、N,N,N’,N’,N’−ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルグアニジン、トリエチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチル−N’−ジメチルアミノエチル−ピペラジン、N−(2−ジメチルアミノエチル)モルホリン、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルアミノヘキサノール、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0083】
また、有機金属触媒としては、オクタン酸スズ、二ラウリン酸ジブチルスズ、オクタン酸鉛ジブチル等が挙げられる。
【0084】
こうして得られるポリウレタン溶液におけるポリウレタンの濃度は、通常、30重量%以上80重量%以下の範囲が好ましい。
【0085】
なお、紡糸条件に応じ、ポリウレタン溶液の紡糸に適した粘度に制御する観点から、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、イソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルメチルアミン、イソブチルメチルアミン、イソペンチルメチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミンなどのモノアミン、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、アリルアルコール、シクロペンタノールなどのモノオール、フェニルイソシアネートなどのモノイソシアネートなどの末端封鎖剤が1種または2種以上混合して使用されることも好ましく行われる。
【0086】
以上のように構成した紡糸原液を、たとえば乾式紡糸、湿式紡糸、もしくは溶融紡糸し、巻き取ることで、本発明における基本的な繊維を得ることができる。中でも、細物から太物まであらゆる繊度において安定に紡糸できるという観点から、乾式紡糸が好ましい。
【0087】
本発明のポリウレタン弾性繊維および混用される任意の繊維の繊度、断面形状などは特に限定されるものではない。例えば、糸の断面形状は円形であってもよく、また扁平であってもよい。
【0088】
そして、乾式紡糸方式についても特に限定されるものではなく、所望する特性や紡糸設備に見合った紡糸条件等を適宜選択して紡糸すればよい。
【0089】
たとえば、本発明のポリウレタン弾性繊維の永久歪率と応力緩和は、特にゴデローラーと巻取機の速度比の影響を受けやすいので、糸の使用目的に応じて適宜決定されるのが好ましい。すなわち、所望の永久歪率と応力緩和を有するポリウレタン弾性繊維を得る観点から、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.10以上1.65以下の範囲として巻き取ることが好ましい。また、紡糸速度は、得られるポリウレタン弾性繊維の強度を向上させる観点から、250m/分以上であることが好ましい。
【0090】
本発明においては、以上のようにしてポリウレタン溶液を口金から紡出して繊維とした後に、該繊維の表面に、例えば、上記した式(1)に表されるビニルモノマーまたは前記ビニルモノマーからなるオリゴマーを重合するか、または前記式(1)に表されるビニルモノマーからなるポリマーを固着させることで、被膜重合体を形成する。
【0091】
繊維表面に重合により被膜重合体を設ける場合には、ビニルモノマーまたはビニルモノマーからなるオリゴマーの繊維分子へのグラフト重合法等、任意の方法が採用できる。
【0092】
一方、繊維表面への樹脂固着法としては、式(1)に表されるビニルモノマーからなるポリマーの層をバインダー樹脂により繊維表面に固着する方法や、該ビニルモノマーからなるポリマーを含む溶液に繊維を浸漬して繊維表面を該ポリマーで覆う方法などが挙げられる。バインダー樹脂については、特に制限がなくいずれでも適用可能であり、アクリル酸エステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、ポリプロピレン樹脂、若しくはそのプレポリマーなどの樹脂が適用できる。
【0093】
しかしながら、グラフト重合は、繊維を構成するポリウレタンに被膜重合体を直接結合させることができ、繊維の後加工などにおいて被膜重合体が繊維表面から脱落するのを抑制できるので、好ましい。
【0094】
ビニルモノマーまたはビニルモノマーからなるオリゴマーの繊維分子へのグラフト重合法としては種々の方法が適用可能である。その一例を以下に説明する。
【0095】
被膜重合体を形成する上記式(1)で表されるビニルモノマーまたは前記ビニルモノマーからなるオリゴマー、アゾ系開始剤としてAIBN、有機過酸化物系開始剤としてBPOなどで知られる一般公知のグラフト重合開始剤、および界面活性剤を含む水系混合液に被処理繊維を浸漬した後、ニップなどにより所望の付与液量を調整する。上記水系混合液の付与方法としては、ニップ法の他に、パッドバキューム法、スプレー法、遠心脱水法あるいはコーティング法等が利用できる。なお、被処理繊維は既に布帛を構成していてもよく、上記水系混合液の付与方法は、被処理繊維または布帛の形態や付与液量などにより適宜選択して使用することができる。
【0096】
次に、上記混合液を付与された被処理繊維を加熱することで、グラフト重合を行う。加熱手段は通常の加熱機構が適用可能であるが、グラフト重合効率等の面からは、マイクロ波あるいはマイクロ波スチーム併用による加熱が好ましい。処理温度はビニルモノマーまたはビニルモノマーからなるオリゴマーや開始剤の種類により多少異なるが、通常50〜200℃、より好ましくは80〜180℃の温度条件を採用することができる。
【0097】
加熱処理によりグラフト化が完了した被処理繊維は、残存物除去のためオープンリーバー等で湯洗した後、乾熱処理する。乾熱処理後の重量を測定し、重量増加率からグラフト率を求めることができる。
【0098】
また、上記したグラフト重合法の他に、重合開始剤を用いない方法として、放射線あるいはプラズマを用いたグラフト重合方法も利用できる。放射線にはアルファ線、ベータ線、ガンマ線、陽子線、中性子線、電子線、エックス線、紫外線などが挙げられるが、好ましくは電子線、ガンマ線、紫外線を採用することができる。
【0099】
電子線を照射することによりグラフト重合する方法として、例えば、予め被処理繊維に電子線を照射し、次いでビニルモノマーまたはビニルモノマーからなるオリゴマーを含有した溶液に浸漬させることによって、被膜重合体を形成させる前照射重合法、もしくは被処理繊維を、ビニルモノマーまたはビニルモノマーからなるオリゴマーを含有した溶液に浸漬させた後に電子線を照射して被膜重合体を形成させる同時照射重合法が採用できる。
【0100】
本発明において、被膜重合体の厚み平均を1ナノメートル以上5マイクロメートル以下にするためには、例えば、ポリウレタンのウレタン基濃度がポリウレタン1kgに対して0.2mol/kg以上3.5mol/kgである繊維を、式(1)に表されるビニルモノマーまたは該ビニルモノマーからなるオリゴマーの濃度が0.1重量%以上40重量%以下の溶液に接触させ、該ビニルモノマーまたは該ビニルモノマーからなるオリゴマーを繊維表面に重合させることが好ましい。こうすることで、被膜重合体の厚みの平均が1ナノメートル以上5マイクロメートル以下に制御されたポリウレタン弾性繊維を容易に得ることができる。なお、ウレタン基濃度と式(1)に表されるビニルモノマーまたは該ビニルモノマーからなるオリゴマーの溶液濃度が上記範囲内であれば、被膜重合体の形成方法は上記したいずれの方法でもよく、好ましくは重合開始剤、電子線、ガンマ線、紫外線による方法が採用できる。
【0101】
重合は、重量比換算から求めた被膜重合体の含有率が0.1%以上40%以下となるように反応させることが好ましい。上記含有率の範囲に重合する方法としては、式(1)に表されるビニルモノマーまたは前記ビニルモノマーからなるオリゴマーの濃度が0.1重量%以上40重量%以下の範囲の溶液濃度で重合することが好ましく、さらには80℃以上180℃以下の範囲の反応温度で重合することが好ましい。
【実施例】
【0102】
本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明する。
【0103】
[繊維の紡糸性]
紡糸を連続して24時間行い、その時の糸切れ回数にて判定した。回数の少ない方が紡糸性に優れていることを示す。
【0104】
[被膜重合体の膜厚]
ポリウレタン弾性繊維表面の被膜重合体の厚みを、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて100000倍の倍率で観察した。なお、繊維構造物の単糸をOsO4染色超薄切片法により観察し、膜厚を繊維表面に観察されるOsO4濃染の層の厚みとした。測定はn=4とし、それらn個のデータの平均値を得た。また、濃染層と淡染層の境界が見られず、均一な濃度の層であった場合は、膜厚「無」と判定した。
【0105】
[ポリウレタンにおけるウレタン基の濃度]
ポリウレタンにおけるウレタン基濃度は、下記式に基づいて求めた。なお、ポリウレタン弾性繊維に含有されるポリマージオールのモル数は、13C−NMR法によりポリマージオールのオキシメチレンピーク強度を求め、さらに既知のポリマージオール濃度含有ポリウレタン弾性繊維を用いた検量線により算出した。
【0106】
【数1】

【0107】
[機能発現率]
ポリウレタン弾性繊維中に含まれる式(1)で表されるビニルモノマーからなる重合体の重量あたりの機能の発現度合いを示す指標として、加齢臭消臭性、防汚性、生体適合性、吸湿性、抗菌性、耐光性のそれぞれの機能発現率F1、F2、F3、F4、F5、F6を以下のように評価した。
【0108】
[加齢臭消臭性F1]
加齢臭消臭試験は、消臭加工繊維製品認証基準(制定者は社団法人繊維評価技術協議会 製品認証部が制定日は平成14年9月1日)に準拠し、機器試験(検知管法またはGC法)により臭気成分の消臭性評価を行なった。
【0109】
(試験方法)
1.サンプルを所定のサイズに調製した。
2.容器にサンプル、臭気成分および希釈ガスを入れ、2時間後の残存ガス濃度(ppm)を成分対応検知管(ガステック社製)またはガスクロマトグラフィーで測定した。尚ガス充填量は3L、希釈ガスは乾燥空気または窒素ガスとした。
3.サンプルを用いずに同様の評価を行い、空試験とした。
4.全ての評価は表1に従い、さらに検知管法では数2、GC法では数3に従って、残存ガス濃度の減少率を算出した。
【0110】
【表1】

【0111】
【数2】

【0112】
【数3】

【0113】
なお、測定はn=3とし、それらn個のデータの平均値を減少率とした。
5.上記機器試験において、社団法人繊維評価技術協議会では、各臭気成分について減少率が70%以上の時消臭効果有りと認めるレベルである。また、臭気成分であるアンモニア、酢酸、イソ吉草酸、ノネナールに対する減少率が、それぞれ70%以上、80%以上、85%以上、75%以上である場合を加齢臭消臭性があると定義されている。そこで、実施例・比較例では、ポリウレタン弾性繊維中に含まれる式(1)で表されるビニルモノマーからなる重合体の重量あたりの機能の発現度合いを示す指標である、加齢臭消臭性に関する機能発現率F1(%)を、以下のとおりとして表記した。
【0114】
【数4】

【0115】
ただし、一つでも臭気成分に対する消臭性を示さなかった場合、0とした。
[防汚性F2]
防汚性試験は、以下の通り行った。
1.10cm×10cmのサンプルを調製した。
2.そのサンプルを10cm×10cmのガラス板上に置き、B重油を試験片の中央部に0.05cc滴下し、その上に厚さ1mmの5cm×5cmのガラス板を置き、そのガラス板の上に200gの荷重を乗せて1分間放置した。
3.荷重とガラス板を取り除いて、サンプルを濾紙の上に移してティッシュペーパーをかぶせ、その上からローラー掛けして汚れを拭き取り、水平状態で24時間放置して自然乾燥させた。
4.汚染後のサンプルを、自動反転渦巻き電気洗濯機に、JIS K 337(1972年制定、1994改定)に規定される弱アルカリ性合成洗剤を0.1容量%の濃度になるように溶解した液25Lで、浴比1:50で40±2℃の温度で、強条件で5分間洗濯し、次いで排水し、水洗を5分行った。
5.洗濯後のサンプルを絞らずに取り出し、濾紙で軽く押さえて水を切り、水平状態で自然乾燥させた。
6.乾燥したサンプルの汚染性を、JIS L 0805(1965年制定、2005年改正)の汚染用グレースケールにより1級から5級で等級判定した。1級から5級になるに従って防汚性が良好であることを示す。
【0116】
なお、測定はn=3とし、それらn個の等級データの平均値を、防汚性に関する機能発現率F2とした。
【0117】
[生体適合性F3]
本発明における生体適合性とは、血液中で異物として認識されない、もしくはされにくい性質のことを指し、本性質が高いほど血液中で血栓を形成しにくいことを意味する。生体適合性の評価方法は以下の通りである。
1.ケタミン(ケタラール(登録商標)、三共株式会社)0.8mL/kgおよびキシラジン(セラクタール(登録商標)、バイエル株式会社)0.8mL/kgをそれぞれラットに筋肉内投与して麻酔し、背位に固定した後、右頸動脈および左頸静脈を剥離する。
2.長さ5cmのポリエチレンチューブ(PE240:内径1.67mm)内に長さ3cm、幅1.5mmにカットしたサンプルを挿入し、そのポリエチレンチューブの両端に長さ1cmのポリエチレンチューブ(PE160:内径1.14mm)を用いて、2本のポリエチレンチューブ(PE90:内径0.86mm、長さ13cm)を接続した。
3.接続されたポリエチレンチューブ内を生理食塩液で満たした後、ポリエチレンチューブ(PE90)の一方の端を左頸静脈内に挿入し、もう一方の端を右頸動脈内に挿入した。
4.20分間ポリエチレンチューブ内に血液を循環させた後、中央部のポリエチレンチューブ内のサンプルを取り出し、湿重量を測定した。
5.得られた湿重量から、あらかじめ測定しておいたサンプルの重量を引いた値を血栓湿重量とした。
6.式(1)で表されるビニルモノマーからなる重合体を含有しないポリウレタン弾性繊維(実施例1に記載のE1)から構成した布帛を用いた場合の血栓湿重量の値をY0、各実施例・比較例で最終的に得られたポリウレタン弾性繊維から構成した布帛を用いた場合の血栓湿重量の値をY1とした時、以下の式より血栓形成阻害率を求めた。血栓形成阻害率が高いほど、生体適合性が良好であることを示す。
【0118】
【数5】

【0119】
なお、測定はn=3とし、それらn個のデータの平均値を、生体適合性に関する機能発現率F3(%)として示した。
【0120】
[吸湿性F4]
吸湿性試験は以下の通りである。
1.サンプル1gを準備し、その絶乾時の重量(W0)を測定した。
2.上記サンプルを20℃・65%RHの状態に調湿された恒温恒湿器(タバイ製PR−2G)中に24時間放置し、平衡状態となった試料の重量(W20)を測定し、吸湿率を下記式により求めた。吸湿率が高いほど、吸湿性が良好であることを示す。また、該吸湿率を、吸湿性に関する機能発現率F4(%)として示した。
【0121】
【数6】

【0122】
なお、測定はn=3とし、それらn個のデータの平均値を表記した。
【0123】
[抗菌性F5]
抗菌試験は社団法人繊維製品新機能評価評議会が指定した抗菌性試験手順(JIS L1902:2008、菌液吸収法)に準拠して実施した。抗菌性は下記式による静菌活性値で評価した。静菌活性値の高いものほど抗菌性に優れている。なお、試験菌として、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus:ATCC 6538P)を使用した。
【0124】
【数7】

【0125】
但し、試験成立条件:Log(B)−Log(A)>1.5を満たすこと
A:未加工品の接種直後に回収した菌数の平均値
B:未加工品の18時間培養回収した菌数の平均値
C:加工品(抗菌処理をした試料)の18時間培養回収した菌数の平均値
一定重量に調製した洗濯10回実施後のサンプルを用い、測定はいずれもn=3で行い、それらn個の数値の平均を表記した。また、該静菌活性値を抗菌性に関する機能発現率F5とした。
【0126】
[耐光性F6]
耐光性はUV暴露処理による耐久性で評価した。方法は以下の通りである。
1.ポリウレタン弾性繊維を100%伸長状態で固定した。
2.スガ試験機(株)製カーボンアーク型フェードメーターを用い、63℃、60%RHの温湿度でUV暴露処理を実施した。
3.上記2.の暴露処理を合計2回実施した後、ポリウレタン弾性繊維をフリーで24時間、室温で放置し、下記[ポリウレタン弾性繊維の強度、伸度]の項に記載した方法で破断強度(Z1)を測定した。未処理糸の破断強度(Z0)に対する処理後の破断強度(Z1)の割合(保持率)を耐光性とした。これらは下記により定義される。
【0127】
【数8】

【0128】
なお、測定回数はn=3とし、それらの平均値を、耐光性に関する機能発現率F6(%)とした。
【0129】
[ポリウレタン弾性繊維の強度、伸度]
強度、伸度は、試料糸をインストロン4502型引張試験機にて、引張テストをすることにより測定した。測定回数はn=3で測定し、それらの平均値を採用した。これらは下記により定義される。
【0130】
すなわち、5cm(L1)の試料を50cm/分の引張速度で試料糸が切断するまで伸長した。この破断時の応力を(G1)、破断時の試料糸の長さを(L2)とした。以下、前記特性は下記式により与えられる。
【0131】
【数9】

【0132】
[実施例1]
分子量2900のPTMG、MDI、エチレンジアミンおよび末端封鎖剤としてジエチルアミンからなるポリウレタンウレア重合体(ウレタン基濃度=0.7mol/kg)のDMAc溶液(35重量%)を常法により調製し、ポリマー溶液A1とした。次に、酸化防止剤として、t−ブチルジエタノールアミンとメチレン−ビス−(4−シクロヘキシルイソシアネ−ト)の反応によって生成せしめたポリウレタン溶液(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2462)と、p−クレゾ−ルおよびジビニルベンゼンの縮合重合体(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2390)とを2対1(重量比)で混合し、酸化防止剤DMAc溶液(濃度35重量%)を調整し、これをその他添加剤溶液B1(35重量%)とした。
【0133】
A1、B1をそれぞれ98重量%、2重量%で均一に混合し、ポリウレタン紡糸溶液D1とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻き取り、20dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維E1(ウレタン基濃度=0.7mol/kg)の500g巻糸体を得た。
【0134】
さらに、開始剤としてAIBN、ビニルモノマーとしてメタクリル酸(式4に相当)を水とイソプロパノールが5対1(重量比)の混合溶媒に溶解させて反応溶液M1(メタクリル酸0.3重量%)とした。
【0135】
E1とM1を用いてグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、メタクリル酸からなる重合体成分(f1)が0.50重量%であるポリウレタン弾性繊維G1を得た。さらにG1のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0136】
G1の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2に示す。
【0137】
[実施例2]
実施例1に記載のポリウレタン弾性繊維E1を調製した。
【0138】
さらに、開始剤としてAIBN、ビニルモノマーとしてメタクリル酸を水とイソプロパノールが5対1(重量比)の混合溶媒に溶解させて反応溶液M2(メタクリル酸2.0重量%)とした。E1とM2を用いてグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、f1が31.30重量%であるポリウレタン弾性繊維G2を得た。
【0139】
さらにG2のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0140】
G2の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2に示す。
【0141】
[実施例3]
実施例1に記載のポリウレタン弾性繊維E1を調製した。
【0142】
さらに、開始剤としてAIBN、ビニルモノマーとしてメタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(式13に相当)を水とイソプロパノールが5対1(重量比)の混合溶媒に溶解させて反応溶液M3(メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル0.1重量%)とした。
【0143】
E1とM3を用いてグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチルからなる重合体成分(f2)が0.08重量%であるポリウレタン弾性繊維G3を得た。さらにG3のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0144】
G3の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2に示す。
【0145】
[実施例4]
実施例1に記載のポリウレタン弾性繊維E1を調製した。
【0146】
さらに、開始剤としてAIBN、ビニルモノマーとしてメタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチルを水とイソプロパノールが5対1(重量比)の混合溶媒に溶解させて反応溶液M4(メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル0.4重量%)とした。
【0147】
E1とM4を用いてグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、f2が0.30重量%であるポリウレタン弾性繊維G4を得た。さらにG4のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0148】
G4の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2に示す。
【0149】
[実施例5]
実施例1に記載のポリウレタン弾性繊維E1を調製した。
【0150】
さらに、開始剤としてAIBN、ビニルモノマーとしてメタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチルを水とイソプロパノールが5対1(重量比)の混合溶媒に溶解させて反応溶液M5(メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル10.0重量%)とした。
【0151】
E1とM5を用いてグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、f2が29.70重量%であるポリウレタン弾性繊維G5を得た。さらにG5のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0152】
G5の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2に示す。
【0153】
[実施例6]
実施例1に記載のポリウレタン弾性繊維E1を調製した。
【0154】
さらに、開始剤としてAIBN、ビニルモノマーとして2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(式3に相当)を水とイソプロパノールが5対1(重量比)の混合溶媒に溶解させて反応溶液M6(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン4.0重量%)とした。
【0155】
E1とM6を用いてグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンからなる重合体成分(f3)が1.20重量%であるポリウレタン弾性繊維G6を得た。さらにG6のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0156】
G6の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2に示す。
【0157】
[実施例7]
実施例1に記載のポリウレタン弾性繊維E1を調製した。
【0158】
さらに、開始剤としてAIBN、ビニルモノマーとして2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを水とイソプロパノールが5対1(重量比)の混合溶媒に溶解させて反応溶液M7(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン30.0重量%)とした。
【0159】
E1とM7を用いてグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、f3が16.80重量%であるポリウレタン弾性繊維G7を得た。さらにG7のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0160】
G7の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2に示す。
【0161】
[実施例8]
実施例1に記載のポリウレタン弾性繊維E1を調製した。
【0162】
さらに、開始剤としてAIBN、ビニルモノマーとして2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを水とイソプロパノールが5対1(重量比)の混合溶媒に溶解させて反応溶液M8(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン35.0重量%)とした。
【0163】
E1とM8を用いてグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、f3が45.02重量%であるポリウレタン弾性繊維G8を得た。さらにG8のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0164】
G8の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2に示す。
【0165】
[実施例9]
実施例1に記載のポリウレタン弾性繊維E1を調製した。
【0166】
さらに、開始剤としてAIBN、ビニルモノマーとしてメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(式21、24に相当)を水とイソプロパノールが5対1(重量比)の混合溶媒に溶解させて反応溶液M9(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル0.2重量%)とした。
【0167】
E1とM9を用いてグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルからなる重合体成分(f4)が0.19重量%であるポリウレタン弾性繊維G9を得た。さらにG9のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0168】
G9の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2に示す。
[実施例10]
実施例1に記載のポリウレタン弾性繊維E1を調製した。
【0169】
さらに、開始剤としてAIBN、ビニルモノマーとしてメタクリル酸2−ヒドロキシエチルを水とイソプロパノールが5対1(重量比)の混合溶媒に溶解させて反応溶液M10(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル3.0重量%)とした。
【0170】
E1とM10を用いてグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、f4が8.00重量%であるポリウレタン弾性繊維G10を得た。さらにG10のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0171】
G10の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2に示す。
【0172】
[実施例11]
実施例1に記載のポリウレタン弾性繊維E1を調製した。
【0173】
さらに、開始剤としてAIBN、ビニルモノマーとしてメタクリル酸2−ヒドロキシエチルを水とイソプロパノールが5対1(重量比)の混合溶媒に溶解させて反応溶液M11(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル20.0重量%)とした。
【0174】
E1とM11を用いてグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、f4が28.10重量%であるポリウレタン弾性繊維G11を得た。さらにG11のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0175】
G11の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2に示す。
【0176】
[実施例12]
実施例1に記載のポリウレタン弾性繊維E1を調製した。
【0177】
さらに、実施例2に記載のM2を用いて溶液重合反応を常法により実施し、得られた重合体をヘキサンで抽出した後、乾燥させることによってf1であるポリメタクリル酸を得た。これを水とイソプロパノールが5対1(重量比)の混合溶媒に溶解させ、そこへAIBNを加え反応溶液M12(ポリメタクリル酸0.3重量%)とした。
【0178】
M12にE1を含浸し、80℃、2時間の条件でE1表面にポリメタクリル酸を固着させ、f1が0.50重量%固着したポリウレタン弾性繊維G12を得た。さらにG12のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0179】
G12の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2に示す。
【0180】
[実施例13]
分子量1800のPTMG、MDI、エチレングリコールおよび末端封鎖剤としてブタノールからなるポリウレタンウレタン重合体(ウレタン基濃度=1.4mol/kg)のDMAc溶液(35重量%)を常法により調製し、ポリマー溶液A5とした。
【0181】
A5、B1をそれぞれ98重量%、2重量%で均一に混合し、ポリウレタン紡糸溶液D9とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.4として540m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻き取り、20dtex、モノフィラメントのポリウレタン弾性繊維E4(ウレタン基濃度=1.4mol/kg)の200g巻糸体を得た。
【0182】
E4と実施例1に記載のM1を用いてグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、f1が0.50重量%であるポリウレタン弾性繊維G13を得た。さらにG13のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得た。これを評価用の布帛とした。
【0183】
G13の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2に示す。
【0184】
[実施例14]
実施例13に記載のE4と実施例4に記載のM4を用いてグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、f2が0.30重量%であるポリウレタン弾性繊維G14を得た。さらにG14のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得た。これを評価用の布帛とした。
【0185】
G14の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2に示す。
【0186】
[実施例15]
実施例13に記載のE4と実施例7に記載のM7を用いてグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、f3が16.80重量%であるポリウレタン弾性繊維G15を得た。さらにG15のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得た。これを評価用の布帛とした。
【0187】
G15の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2に示す。
【0188】
[実施例16]
実施例13に記載のE4と実施例10に記載のM10を用いてグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、f4が8.00重量%であるポリウレタン弾性繊維G16を得た。さらにG16のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得た。これを評価用の布帛とした。
【0189】
G16の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2に示す。
【0190】
[実施例17]
実施例1に記載のポリウレタン弾性繊維E1を調製した。
【0191】
さらに、開始剤としてAIBN、ビニルモノマーとして大塚化学(株)製“RUVA−93”(6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メタクリロイルオキシエチル)−2−[3’−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル]メチルフェノール)(式2に相当)を水とイソプロパノールが5対1(重量比)の混合溶媒に溶解させて反応溶液M17(RUVA−93 0.5重量%)とした。
【0192】
E1とM17を用いてグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、RUVA−93からなる重合体成分(f5)が0.50重量%であるポリウレタン弾性繊維G17を得た。さらにG17のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0193】
G17の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表3に示す。
【0194】
[実施例18]
実施例1に記載のポリウレタン弾性繊維E1を調製した。
【0195】
さらに、開始剤としてAIBN、ビニルモノマーとしてビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(式33に相当)を水とイソプロパノールが5対1(重量比)の混合溶媒に溶解させて反応溶液M18(ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド0.5重量%)とした。
【0196】
E1とM18を用いてグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドからなる重合体成分(f6)が0.50重量%であるポリウレタン弾性繊維G18を得た。さらにG18のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0197】
G18の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表3に示す。
【0198】
[実施例19]
実施例1に記載のポリウレタン弾性繊維E1を調製した。
【0199】
さらに、開始剤としてAIBN、ビニルモノマーとして3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(式13)を水とイソプロパノールが5対1(重量比)の混合溶媒に溶解させて反応溶液M19(3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン0.5重量%)とした。
【0200】
E1とM19を用いてグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランからなる重合体成分(f7)が0.50重量%であるポリウレタン弾性繊維G19を得た。さらにG19のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0201】
G19の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表3に示す。
【0202】
[実施例20]
実施例1に記載のポリウレタン弾性繊維E1を調製した。
【0203】
さらに、開始剤としてAIBN、ビニルモノマーとしてスチレン(式13に相当)および無水マレイン酸(式4に相当)を水とイソプロパノールが5対1(重量比)の混合溶媒に溶解させて反応溶液M20(スチレン0.5重量%、無水マレイン酸0.47重量%)とした。
【0204】
E1とM20を用いてグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、スチレンと無水マレイン酸からなる重合体成分(f8)が0.50重量%であるポリウレタン弾性繊維G20を得た。さらにG20のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0205】
G20の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表3に示す。
【0206】
[比較例1]
実施例1に記載のポリウレタン弾性繊維E1を調製した。
【0207】
さらに、水とイソプロパノールが5対1(重量比)の混合溶媒を調製し、これにE1を含浸させ、80℃、2時間の条件で処理し、処理後のポリウレタン弾性糸をE11とした。E11
のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0208】
E11の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2および表3に示す。
【0209】
[比較例2]
実施例1に記載のポリウレタン弾性繊維E1を調製した。
【0210】
さらに、開始剤としてAIBN、ビニルモノマーとして2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを水とイソプロパノールが5対1(重量比)の混合溶媒に溶解させて反応溶液M13(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン0.03重量%)とした。
【0211】
E1とM13を用いてグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、f3が0.01重量%であるポリウレタン弾性繊維H1を得た。さらにH1のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0212】
H1の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2に示す。
【0213】
[比較例3]
実施例1に記載のポリウレタン弾性繊維E1を調製した。
【0214】
さらに、開始剤としてAIBN、ビニルモノマーとしてメタクリル酸を水とイソプロパノールが5対1(重量比)の混合溶媒に溶解させて反応溶液M14(メタクリル酸0.03重量%)とした。
【0215】
E1とM14を用いてグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、f1が0.05重量%であるポリウレタン弾性繊維H2を得た。さらにH2のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0216】
H2の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2に示す。
【0217】
[比較例4]
実施例1に記載のポリウレタン弾性繊維E1を調製した。
【0218】
さらに、開始剤としてAIBN、ビニルモノマーとしてメタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチルを水とイソプロパノールが5対1(重量比)の混合溶媒に溶解させて反応溶液M15(メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル50.0重量%)とした。
【0219】
E1とR15を用いてグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、f2が48.20重量%であるポリウレタン弾性繊維H3を得た。さらにH3のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0220】
H3の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2に示す。
【0221】
[比較例5]
実施例1に記載のポリウレタン弾性繊維E1を調製した。
【0222】
さらに、開始剤としてAIBN、ビニルモノマーとしてメタクリル酸2−ヒドロキシエチルを水とイソプロパノールが5対1(重量比)の混合溶媒に溶解させて反応溶液M16(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル50.0重量%)とした。
【0223】
E1とM16を用いてグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、f4が45.10重量%であるポリウレタン弾性繊維H4を得た。さらにH4のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0224】
H4の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2に示す。
【0225】
[比較例6]
実施例2に記載のM2を用いて溶液重合反応を常法により実施し、得られた重合体をヘキサンで抽出した後、乾燥させることによってf1であるポリメタクリル酸を得た。これを用い、f1が35重量%含有したDMAc分散溶液P1を調製した。
【0226】
実施例1に記載のD1とP1をそれぞれ99.5重量%、0.5重量%で均一に混合し、ポリウレタン紡糸溶液D2とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻き取り、20dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維H5(ウレタン基濃度=0.7mol/kg)の200g巻糸体を得た。さらにH5のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0227】
H5の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2に示す。
【0228】
[比較例7]
実施例5に記載のM5を用いて溶液重合反応を常法により実施し、得られた重合体をヘキサンで抽出した後、乾燥させることによってf2であるポリメタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチルを得た。これを用い、f2が35重量%含有したDMAc分散溶液P2を調製した。
【0229】
実施例1に記載のD1とP2をそれぞれ81.6重量%、18.4重量%で均一に混合し、ポリウレタン紡糸溶液D3とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻き取り、20dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維H6(ウレタン基濃度=0.7mol/kg)の500g巻糸体を得た。さらにH6のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0230】
H6の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2に示す。
【0231】
[比較例8]
実施例8に記載のM8を用いて溶液重合反応を常法により実施し、得られた重合体をヘキサンで抽出した後、乾燥させることによってf3であるポリ(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)を得た。これを用い、f3が35重量%含有したDMAc分散溶液P3を調製した。
【0232】
実施例1に記載のD1とP3をそれぞれ64.6重量%、35.4重量%で均一に混合し、ポリウレタン紡糸溶液D4とした。これの乾式紡糸を試みたが、紡糸溶液における重合体成分が多すぎたため糸切れが多発し、紡糸が不可能で糸を得ることができなかった。
【0233】
[比較例9]
実施例11に記載のM11を用いて溶液重合反応を常法により実施し、得られた重合体をヘキサンで抽出した後、乾燥させることによってf4であるポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチルを得た。これを用い、f4が35重量%含有したDMAc分散溶液P4を調製した。
【0234】
実施例1に記載のD1とP4をそれぞれ70.5重量%、29.5重量%で均一に混合し、ポリウレタン紡糸溶液D5とした。これの乾式紡糸を試みたが、紡糸溶液における重合体成分が多すぎたため糸切れが多発し、紡糸が不可能で糸を得ることができなかった。
【0235】
[比較例10]
特許文献3に記載のPBD(日本曹達株式会社製)、HPBD(日本曹達株式会社製)、MDIおよび1,4−ブタンジオールからなるポリウレタンウレタン重合体(ウレタン基濃度=0.7mol/kg)を得た。さらにこのポリウレタンウレタン重合体のジオキサン溶液(12重量%)を調製し、そこへ2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンのメタノール溶液(30重量%)をポリウレタンウレタン重合体:2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン=2.5:1(重量比)となるよう混合した。この混合溶液にAIBNを加えグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、得られた重合体をメタノールとヘキサンで抽出した後、乾燥させることによってf3が16.80%であるグラフト化ポリウレタン重合体を得た。
【0236】
前記グラフト化ポリウレタン重合体のDMAc溶液(35重量%)を常法により調製し、ポリマー溶液A2とした。
【0237】
A2、B1をそれぞれ98重量%、2重量%で均一に混合し、ポリウレタン紡糸溶液D6とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.4として540m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻き取り、24時間の紡糸中に35回糸切れしたが、20dtex、モノフィラメントのポリウレタン弾性繊維H9(ウレタン基濃度=0.7mol/kg)の50g巻糸体を得た。さらに、H9のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0238】
H9の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2に示す。
【0239】
[比較例11]
分子量2900のPTMG、MDI、エチレンジアミンおよび末端封鎖剤としてジエチルアミンからなるポリウレタンウレア重合体(ウレタン基濃度=0.1mol/kg)のDMAc溶液(35重量%)を常法により調製し、ポリマー溶液A3とした。
【0240】
A3、B1をそれぞれ98重量%、2重量%で均一に混合し、ポリウレタン紡糸溶液D7とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻き取り、24時間の紡糸中に23回糸切れしたが、20dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維E2の50g巻糸体を得た。
【0241】
E2と実施例1に記載のM1を用いてグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、f1が0.51重量%であるポリウレタン弾性繊維H7(ウレタン基濃度=0.1mol/kg)を得た。さらにH7のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0242】
H7の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2に示す。
【0243】
[比較例12]
分子量2900のPTMG、MDI、エチレンジアミンおよび末端封鎖剤としてジエチルアミンからなるポリウレタンウレア重合体(ウレタン基濃度=3.8mol/kg)のDMAc溶液(35重量%)を常法により調製し、ポリマー溶液A4とした。
【0244】
A4、B1をそれぞれ98重量%、2重量%で均一に混合し、ポリウレタン紡糸溶液D8とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻き取り、24時間の紡糸中に27回糸切れしたが、20dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維E3(ウレタン基濃度=3.8mol/kg)の40g巻糸体を得た。
【0245】
E3と実施例1に記載のM1を用いてグラフト重合処理を80℃、2時間の条件で実施し、f1が0.49重量%であるポリウレタン弾性繊維H8を得た。さらにH8のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0246】
H8の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表2に示す。
【0247】
[比較例13]
実施例17に記載のM17を用いて溶液重合反応を常法により実施し、得られた重合体をヘキサンで抽出した後、乾燥させることによってf5からなる重合体成分を得た。これを用い、f5が35重量%含有したDMAc分散溶液P5を調製した。
【0248】
実施例1に記載のD1とP5をそれぞれ99.5重量%、0.50重量%で均一に混合し、ポリウレタン紡糸溶液D10とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸したところ、24時間の紡糸中に3回糸切れしたが、20dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維H10(ウレタン基濃度=0.7mol/kg)の300g巻糸体を得た。
【0249】
さらにH10のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0250】
H10の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表3に示す。
【0251】
[比較例14]
実施例18に記載のM18を用いて溶液重合反応を常法により実施し、得られた重合体をヘキサンで抽出した後、乾燥させることによってf6からなる重合体成分を得た。これを用い、f6が35重量%含有したDMAc分散溶液P6を調製した。
【0252】
実施例1に記載のD1とP6をそれぞれ99.5重量%、0.50重量%で均一に混合し、ポリウレタン紡糸溶液D11とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸したところ、24時間の紡糸中に21回糸切れしたが、20dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維H11(ウレタン基濃度=0.7mol/kg)の150g巻糸体を得た。
【0253】
さらにH11のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0254】
H11の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表3に示す。
【0255】
[比較例15]
実施例19に記載のM19を用いて溶液重合反応を常法により実施し、得られた重合体をヘキサンで抽出した後、乾燥させることによってf7からなる重合体成分を得た。これを用い、f7が35重量%含有したDMAc分散溶液P7を調製した。
【0256】
実施例1に記載のD1とP7をそれぞれ99.5重量%、0.50重量%で均一に混合し、ポリウレタン紡糸溶液D12とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸したところ、24時間の紡糸中に8回糸切れしたが、20dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維H12(ウレタン基濃度=0.7mol/kg)の250g巻糸体を得た。
【0257】
さらにH12のみを用いて、320針の1口筒編み機にて編成し、120℃1分間のスチームセットを行い、直径約7cm、長さ50cmの筒編み地を得たのでこれを評価用の布帛とした。
【0258】
H12の組成および各種特性ならびに布帛における機能発現率を表3に示す。
【0259】
[比較例16]
実施例20に記載のM20を用いて溶液重合反応を常法により実施し、得られた重合体をヘキサンで抽出した後、乾燥させることによってf8からなる重合体成分を得た。これを用い、f8が35重量%含有したDMAc分散溶液P8を調製した。
【0260】
実施例1に記載のD1とP8をそれぞれ99.5重量%、0.50重量%で均一に混合し、ポリウレタン紡糸溶液D13とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸を試みたが、糸切れが多発し紡糸が不可能で糸を得ることができなかった。
【0261】
【表2】

【0262】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0263】
本発明のポリウレタン弾性繊維は、ストレッチ性に加え、機能性分子の単位化合物あたりの優れた機能発現率を有するものである。優れた機能発現率を有することから、低濃度の機能剤で繊維の機能化が可能となり、それによりポリウレタン弾性繊維のストレッチ性を損なうことなく軽量感、耐久性、風合い、外観品位に優れたものとなる。
【0264】
また本発明によれば、ポリウレタン弾性繊維はこれらの優れた特性を有することから、単独での使用はもとより、各種繊維との組み合わせにより、優れたストレッチ布帛を得ることが可能で、編成、織成、紐加工に好適である。その使用可能な具体的用途としては、ソックス、ストッキング、丸編、トリコット、水着、スキーズボン、作業服、煙火服、ゴルフズボン、ウエットスーツ、ブラジャー、ガードル、手袋等の各種繊維製品、締め付け材料、さらには、紙おしめなどサニタリー品の漏れ防止用締め付け材料、防水資材の締め付け材料、似せ餌、造花、電気絶縁材、ワイピングクロス、コピークリーナー、ガスケットなどが挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンを含むポリウレタン弾性繊維であって、ポリウレタンのウレタン基濃度がポリウレタン1kgに対して0.2mol/kg以上3.5mol/kg以下であり、繊維表面には下記一般式(1)に表されるビニルモノマーが重合されてなる被膜重合体を有し、かつ、該被膜重合体の厚みの平均が1ナノメートル以上5マイクロメートル以下であることを特徴とするポリウレタン弾性繊維。
【化1】

(式中、R、R’、R”は互いに独立に、水素原子又は任意の置換基を表す。)
【請求項2】
重量比換算から求めた前記ポリウレタン弾性繊維における前記被膜重合体の含有率が0.1%以上40%以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項3】
前記被膜重合体が、カルボキシル基、ホスホリルコリン基、およびベンゾトリアゾール構造の内の少なくとも1種を分子中に有することを特徴とする請求項1または2に記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項4】
前記ビニルモノマーが、(メタ)アクリル酸、または、下記一般式(2)もしくは(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
【化2】

【化3】

【請求項5】
前記被膜重合体がグラフト重合により前記ポリウレタンに直接結合していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項6】
ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンを含む紡糸原液を口金から紡出して、ポリウレタンのウレタン基濃度がポリウレタン1kgに対して0.2mol/kg以上3.5mol/kg以下である繊維を得た後、該繊維の表面に、下記一般式(1)に表されるビニルモノマーまたは前記ビニルモノマーからなるオリゴマーを重合または前記ビニルモノマーからなるポリマーを固着させ、厚みの平均が1ナノメートル以上5マイクロメートル以下である被膜重合体を形成することを特徴とするポリウレタン弾性繊維の製造方法。
【化4】

(式中、R、R’、R”は互いに独立に、水素原子又は任意の置換基を表す。)
【請求項7】
前記被膜重合体の形成時、前記ビニルモノマーもしくは前記ビニルモノマーからなるオリゴマーの濃度または前記ビニルモノマーからなるポリマーの濃度が0.1重量%以上40重量%以下である溶液に前記繊維を接触させて該ビニルモノマーもしくは該ビニルモノマーからなるオリゴマーを重合または該ビニルモノマーからなるポリマーを固着させることを特徴とする請求項6に記載のポリウレタン弾性繊維の製造方法。
【請求項8】
前記ポリウレタン弾性繊維において重量比換算から求めた前記被膜重合体の含有率が0.1%以上40%以下となるように重合させることを特徴とする請求項6または7に記載のポリウレタン弾性繊維の製造方法。
【請求項9】
前記被膜重合体が、カルボキシル基、ホスホリルコリン基、およびベンゾトリアゾール構造の内の少なくとも1種を分子中に有することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維の製造方法。
【請求項10】
前記ビニルモノマーが、(メタ)アクリル酸、または、下記一般式(2)もしくは(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維の製造方法。
【化5】

【化6】

【請求項11】
前記被膜重合体をグラフト重合により前記ポリウレタンに直接結合させることを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維の製造方法。
【請求項12】
紡糸方法が乾式であることを特徴とする請求項6〜11のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維の製造方法。

【公開番号】特開2012−122181(P2012−122181A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248568(P2011−248568)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(502179282)東レ・オペロンテックス株式会社 (100)
【Fターム(参考)】