説明

ポリウレタン弾性繊維及びその製造方法

平均粒径が0.5〜5μm、屈折率が1.4〜1.6の無機化合物粒子を含有し、繊維軸方向の長さ120μmあたりの繊維表面に最大幅が0.5〜5μmの大きさの凸部を少なくとも1個有することを特徴とするポリウレタン弾性繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工安定性に優れたポリウレタン弾性繊維及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン弾性繊維は、弾性機能に優れた伸縮性繊維であり、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、綿などと交編織され、ファンデーション、ソックス、パンティストッキング、水着、スポーツウエア、レオタード等の衣料分野をはじめ、オムツ、包帯、サポーター、マスク、自動車内装材、ネット、テープ等の非衣料分野にも広く使用されている。
【0003】
ポリウレタン弾性繊維は、衣料分野に使用される場合、通常、整経やカバリングされて交編織され、染色工程や熱セット工程を経由して布帛製品となる。ポリウレタン弾性繊維を整経やカバリングする際には、筬やガイドとの摩擦が生じ、また、交編織する際にもガイドや編み針との摩擦が生じる。このような工程において、ポリウレタン弾性繊維の摩擦抵抗が常に一定であれば、糸切れが少なく、斑も少ない高品位の布帛が製造できる。しかし実際には、摩擦抵抗の変動が原因で糸切れが発生したり、また、筋のような斑が布帛に多く発生して、加工安定性が妨げられる。
【0004】
このような加工安定性を改善するために、ポリウレタン弾性繊維に油剤などの繊維処理剤を付与することが一般的に行われている。油剤を多く付与すればある程度加工安定性の改善効果は見られるが、十分ではない。むしろ、油剤の付着量が多いことによって、設備の汚染が激しくなるという問題が生じ、また経済的とは言えない。
【0005】
油剤の組成や付着量についても種々の検討がなされており、油剤に金属石けん、シリカ、シリカ誘導体などの滑剤を含有させる方法が開示されている(例えば、特公昭40−5557号公報、特開昭60−239519号公報、特公平5−41747号公報など参照)。しかし、油剤中の不溶物が繊維表面付着していると、加工時に糸表面から脱落してカスが発生するという問題が生じる。
【0006】
例えば、特公昭58−44767号公報には、ポリウレタン弾性繊維の製造工程で、ポリウレタン溶液に粉末状の金属石けんを含有させることにより、ポリウレタン弾性繊維の粘着性を低下させる方法が開示されている。しかし、金属石けんは、ポリウレタン溶液中に分散した状態であるため、フィルターやノズルに詰まり、工程中の圧力上昇が大きく、工程安定性に問題を生じる。
【0007】
また、繊維表面を改質することによって加工安定性を向上させる検討もなされており、脂肪族飽和ジカルボン酸を添加することにより繊維表面に多数の凹凸を含有させる方法(特公平5−45684号公報参照)、ポリウレタンに特定の等電点を有する硫酸バリウムを添加し、潤滑仕上げ剤を併用することにより表面を粗面化して、潤滑性を保持し、粘着性を低下させる方法(特許第3279569号公報参照)なども提案されている。しかしながら、これらの方法によっても十分な加工安定性を得ることはできなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、加工安定性に優れたポリウレタン弾性繊維を提供することを目的とするものである。さらに詳しくは、整経、交編織時において糸切れが少なく、斑の少ない高品位な布帛を提供し得るポリウレタン弾性繊維であって、油剤などの繊維処理剤の付着量が少なくてすむ経済的なポリウレタン弾性繊維及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の無機化合物粒子を含有し、表面に特定の凸部を有し、特定の摩擦特性を有するポリウレタン弾性繊維が、優れた加工安定性を有することを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
【0011】
(1)平均粒径が0.5〜5μm、屈折率が1.4〜1.6の無機化合物粒子を含有し、繊維軸方向の長さ120μmあたりの繊維表面に最大幅が0.5〜5μmの大きさの凸部を少なくとも1個有することを特徴とするポリウレタン弾性繊維。
【0012】
(2)無機化合物粒子を0.05〜10wt%含有することを特徴とする上記1記載のポリウレタン弾性繊維。
【0013】
(3)無機化合物粒子が100〜800m/gの比表面積を有する多孔質性のシリカであることを特徴とする上記1または2記載のポリウレタン弾性繊維。
【0014】
(4)編み針に対する動摩擦係数が0.2〜0.6であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
【0015】
(5)ポリウレタン弾性繊維に対する静摩擦係数が0.3〜0.6であることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
【0016】
(6)ナイロン糸に対する静摩擦係数の経時変化(70℃で16時間放置したとき)が0.1以下であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
【0017】
(7)平均粒径が0.5〜5μm、屈折率が1.4〜1.6の無機化合物粒子をアミド系極性溶媒中で微分散し、ポリウレタンに対し0.05〜10wt%含有させたポリウレタン紡糸原液を乾式紡糸することを特徴とするポリウレタン弾性繊維の製造方法。
以下、本願発明について詳細に説明する。
【0018】
本発明のポリウレタン弾性繊維は、繊維軸方向の長さ120μmあたりの繊維表面に、最大幅が0.5〜5μmの比較的大きな凸部を少なくとも1個有する。凸部の最大幅が0.5μm未満では加工安定性が不十分であり、5μmを越えると凸部が欠点となって繊維としての物性が不良となる。凸部の数は、繊維軸方向の長さ120μmあたりの繊維表面に少なくとも1個は必要であり、これより少ない場合は優れた加工安定性が得られない。
【0019】
ここで言う凸部とは、繊維表面の平均面に対し、突起状に高く盛り上がっている部分を言うが、最大幅が0.5〜5μmの大きさであればその形状は問わない。この凸部は、繊維表面からの最大高さが0.05〜2μmであることが好ましい。
【0020】
本発明のポリウレタン弾性繊維は、平均粒径が0.5〜5μm、屈折率が1.4〜1.6の無機化合物粒子を含有する。このような無機化合物粒子を含有することにより、上記繊維表面の形態特性を有し、優れた物性を得ることができる。
【0021】
平均粒径が0.5μm未満の場合は、繊維表面に十分な大きさの凸部を形成させることができないため、優れた加工安定性を得ることができない。また、5μmを超えると、ポリウレタン弾性繊維の生産工程でフィルターに詰まりやすくなったり、無機化合物粒子が欠点となってポリウレタン弾性繊維としての物性が不良となり、加工時等に糸切れが起こりやすくなる。
【0022】
また、屈折率が1.4〜1.6の範囲外であると、基質のポリウレタンポリマーとの屈折率の差が大きくなるため、ポリウレタン弾性繊維の透明性が低下し、色相が変化する。特にクリヤータイプ糸の場合は、繊維軸方向の糸のわずかな繊度斑が強調され、生地や布帛製品の外観品位が低下する。
【0023】
本発明のポリウレタン弾性繊維は、上記の平均粒径が0.5〜5μm、屈折率が1.4〜1.6の無機化合物粒子を、ポリウレタン弾性繊維に対して0.05〜10wt%含有することが好ましく、より好ましくは0.1〜10wt%であり、さらに好ましくは0.1〜4wt%である。無機化合物粒子の含有量が上記の範囲であると、優れた加工安定性が得られ、また、ポリウレタン弾性繊維の生産時に優れた紡糸安定性が得られ、繊維の物理的性質も優れたものとなる。
【0024】
無機化合物粒子としては、得られるポリウレタン弾性繊維の繊維軸方向の長さ120μmあたりの繊維表面に、最大幅0.5〜5μmの大きさの凸部を少なくとも1個有するという要件を満たすことができるものであればよい。
【0025】
本発明において、無機化合物粒子としては、例えば、アルミナ、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、カオリン、マイカ、シリカ等が挙げられる。なかでも、非結晶性の合成シリカが好ましく、さらに好ましくは100〜800m/gの比表面積を有する多孔質性の合成シリカである。合成シリカは、製造方法によって物理的な性質をコントロールすることができる。代表的な製造方法としては、ケイ酸ナトリウムと硫酸を混合してケイ酸ゾルを生成させ、これを重合させることにより一次粒子を形成させ、さらに反応条件によって凝集体の大きさを制御することにより得られる湿式法シリカ、四塩化ケイ素を気相中で燃焼加水分解する乾式法シリカがある。
【0026】
本発明においては、前者の湿式法で、反応条件によって一次粒子から三次元的な凝集体を形成させてゲル化して得られる多孔質性のシリカが好適である。多孔質性のシリカは一次粒子の生成条件を変えることにより、内部比表面積や細孔径等、物性の異なるものを得ることができるが、本発明においては100〜800m/gの比表面積を有するものが好ましく、より好ましくは200〜800m/gである。
【0027】
通常、繊維で従来より用いられるチタンなどの堅い無機物を繊維中に添加した場合、繊維の製造時や加工時にガイドや編針の接触面の摩耗が加速される。一般に、シリカはチタンと同様に堅いものであるが、多孔質性のシリカは構造的に脆いため、多孔質性のシリカを用いることによりポリウレタン弾性繊維の製造時および加工時にガイドや針の摩耗を大幅に軽減できる。
【0028】
乾式法で得られる内部比表面積を持たないシリカや、湿式法でも凝集体の成長を止める反応条件で得られる内部比表面積の小さいかまたは持たないシリカ(ホワイトカーボン)は、0.1μm以下の非常に微細な粒子であるため、多孔質シリカと同様の比表面積を有することがある。これらのシリカは溶液中または糸中で凝集しやすいために、フィルター詰まり性が大きい上、凝集体が密であるため、ガイドや針の摩耗は大きい。
【0029】
前述の方法によって工業的に得られる多孔質性シリカの表面は通常水酸基で覆われており親水性を有するが、表面処理によりこの表面水酸基をマスクして疎水性としたものでもよい。疎水化の方法は、例えば、シリカ表面のシラノール基に、トリメチルシランクロリドやビス(オクタデシル)シランジクロリド等の有機ケイ素化合物を化学的に反応させる方法や、オルトケイ酸アルキルを溶剤中で加水分解させて直接疎水性のシリカを得る方法などがあるが、上記の粒子の特性の要件を満たすことができれば、どの製造方法で得られたものを使用しても良い。
【0030】
親水性の多孔質シリカは経済的に優れ、疎水性の多孔質シリカは、有機溶剤との親和性が高く、ポリウレタン溶液中での分散性が優れるため、ポリウレタン弾性繊維の製造工程安定性が向上する。シリカ表面の疎水化度の目安としては、水酸基に吸着されるジ−n−ブチルアミンの吸着量(DBA値)が用いられるが、疎水性の多孔質シリカとしては、DBA値が0〜300meq/kgであるものが分散性に優れるため好ましい。
【0031】
本発明のポリウレタン弾性繊維は、編み針に対する動摩擦係数が0.2〜0.6であることが好ましい。編み針に対する動摩擦係数がこの範囲であれば、加工時のガイドや筬などとの摩擦が適切となるため、糸の走行安定性に優れ、生地へのポリウレタン弾性繊維の挿入張力変動が抑制され、布帛品位が向上する。
【0032】
また、本発明のポリウレタン弾性繊維は、編み針に対する動摩擦の変化による張力変動が少ない。編み針に対する動摩擦係数測定において、20分走行させた時の編み針による摩擦抵抗を受けた入力側の張力(T)の変化が1.0cN以下であれば、加工時の編み針、筬等による張力変動が抑制され、布帛品位が向上する。
【0033】
本発明のポリウレタン弾性繊維は、ポリウタレン弾性繊維に対する静摩擦係数が0.3〜0.6である摩擦特性を有することが好ましい。ポリウレタン弾性繊維に対する静摩擦係数がこの範囲であれば、紙管に巻き取られたポリウレタン弾性繊維の形態安定性に優れ、加工時の綾落ちによる糸切れや、ポリウレタン弾性繊維同士の膠着による糸切れを抑制することができる。なお、ポリウレタン弾性繊維に対する静摩擦係数とは、測定対象のポリウレタン弾性繊維同士を用いて静摩擦係数を測定したときの値である。
【0034】
本発明のポリウレタン弾性繊維は、ナイロン糸に対する静摩擦係数の経時変化(70℃で16時間放置したとき)が0.1以下であることが好ましい。70℃、16時間という放置条件は、室温での経時変化を想定した加速評価の条件であり、この条件での静摩擦係数の経時変化が0.1以下のポリウレタン弾性繊維は、経時による摩擦特性の変化が小さく、優れた加工安定性を長期間維持することができる。
【0035】
本発明においては、編み針に対する動摩擦係数、ポリウレタン弾性繊維に対する静摩擦係数が前記した特定の要件を満足し、さらに解じょ性が長期間良好に保持されるポリウレタン弾性繊維であることが好ましい。
【0036】
本発明のポリウレタン弾性繊維の基質ポリマーは、例えば、高分子ポリオール、ジイソシアネート、多官能性活性水素原子を有する鎖延長剤、および単官能性活性水素原子を有する末端停止剤を反応させて得ることができる。
【0037】
高分子ポリオールとしては、実質的に線状のホモ又は共重合体からなる各種ジオール、例えば、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルアミドジオール、ポリアクリルジオール、ポリチオエステルジオール、ポリチオエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、又はこれらの混合物、又はこれらの共重合物等が挙げられる。好ましくは、ポリアルキレンエーテルグリコールであり、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリオキシペンタメチレングリコール、テトラメチレン基と2,2−ジメチルプロピレン基から成る共重合ポリエーテルグリコール、テトラメチレン基と3−メチルテトラメチレン基から成る共重合ポリエーテルグリコール、又はこれらの混合物等である。中でも、優れた弾性機能を示すという観点から、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラメチレン基と2,2−ジメチルプロピレン基から成る共重合ポリエーテルグリコールが好適である。
【0038】
数平均分子量は500〜5000が好ましく、より好ましくは1000〜3000である。
【0039】
ジイソシアネートとしては、脂肪族、脂環族、芳香族のジイソシアネート等が挙げられる。例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、m−又はp−キシリレンジイシシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート、1,3−又は1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、3−(α−イソシアナートエチル)フェニルイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、又はこれらの混合物、又はこれらの共重合物等が挙げられる。好ましくは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートである。
【0040】
多官能性活性水素原子を有する鎖延長剤としては、例えば、ヒドラジン、ポリヒドラジン、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、フェニルジエタノールアミン等の低分子ジオールや、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、トリエチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ピペラジン、o−、m−又はp−フェニレンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、N,N’−(メチレンジ−4,1−フェニレン)ビス[2−(エチルアミノ)−ウレア]等の2官能性アミンが挙げられる。
【0041】
これらは単独で、又は混合して用いることができる。低分子ジオールより2官能性アミンが好ましく、エチレンジアミン単独、又は、1,2−プロピレンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、2−メチル−1,5−ペンタジアミンの群から選ばれる少なくとも1種が5〜40モル%含まれるエチレンジアミン混合物が好ましいものとして挙げられる。より好ましくは、エチレンジアミン単独である。
【0042】
単官能性活性水素原子を有する末端停止剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3−メチル−1−ブタノール等のモノアルコールや、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、t−ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン等のモノアルキルアミンや、ジエチルアミン、ジメチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン等のジアルキルアミンが挙げられる。これらは単独で、又は混合して用いることができる。モノアルコールより、1官能性アミンであるモノアルキルアミンまたはジアルキルアミンが好ましい。
【0043】
本発明のポリウレタン弾性繊維の原料ポリマーを製造する方法に関しては、公知のポリウレタン化反応の技術を用いることができる。例えば、ポリアルキレンエーテルグリコールとジイソシアネートをジイソシアネート過剰の条件下で反応させ、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成し、次いで、このウレタンプレポリマーを2官能性アミン等の活性水素含有化合物で鎖伸張反応を行い、ポリウレタン重合体を得ることができる。
【0044】
本発明のポリウレタン弾性繊維の好ましいポリマー基質としては、数平均分子量500〜5000のポリアルキレンエーテルグリコールに過剰等量のジイソシアナートを反応させて、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを合成し、次いで、プレポリマーに2官能性アミンと1官能性アミンとを反応させて得られるポリウレタンウレア重合体である。
【0045】
ポリウレタン化反応の操作に関しては、ウレタンプレポリマー合成時やウレタンプレポリマーと活性水素含有化合物との反応時に、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド等のアミド系極性溶媒を用いることができる。好ましくはジメチルアセトアミドである。
【0046】
本発明において、無機化合物粒子をポリウレタン弾性繊維中に添加する方法としては、ポリウレタン溶液中に添加するのが一般的であるが、ポリウレタンの原料中にあらかじめ添加したり、または、ウレタンプレポリマー反応中や鎖延長反応中に添加することも可能である。また、無機化合物粒子は、ポリウレタン溶液中に均一に分散させた状態で添加することが好ましい。ポリウレタン紡糸原液中に大きな二次凝集による粗大粒子が存在すると、ポリウレタン弾性繊維の製造時に、フィルター詰まりや紡糸時の糸切れが起こりやすくなる。また、得られたポリウレタン弾性繊維中で大きな凸部を形成し、該弾性繊維の欠点となり、破断強度や破断伸度等の物理的性能が低下する。好ましい方法としては、無機化合物粒子をアミド系極性溶媒中で微分散した後に、ポリウレタン重合体に添加し、ポリウレタン紡糸原液を得る方法である。
【0047】
このポリウレタン紡糸原液に、前記の無機化合物粒子以外に、ポリウレタン弾性繊維に通常用いられる他の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、耐ガス着色防止剤、耐塩素剤、着色剤、艶消し剤、滑剤、充填剤等を添加してもよい。他の無機系添加剤を添加する場合は、無機化合物粒子の過剰添加による紡糸安定性や物理的性質の低下を防ぐため、無機系添加剤の総量がポリウレタン弾性繊維中で10wt%以下となるようにすることが好ましい。
【0048】
本発明のポリウレタン弾性繊維は、ポリウレタン重合体をアミド系極性溶媒に溶解して得られたポリウレタン紡糸原液を乾式紡糸して製造することが好ましい。乾式紡糸は、溶融紡糸や湿式紡糸に比べて、ハードセグメント間の水素結合による物理架橋を最も強固に形成させることが出来る。
【0049】
本発明において、ポリウレタン紡糸原液は、ポリマー濃度が30〜40wt%で、紡糸ドープの粘度が30℃において100〜800Pa・sであることが好ましい。この範囲であると、紡糸原液製造工程や紡糸工程が円滑に行われ、工業生産が容易である。例えば、紡糸原液粘度が高すぎると、紡糸工程までの輸送が難しく、また、紡糸原液が輸送中にゲル化を起こしやすい。紡糸原液粘度が低すぎると、紡糸時に糸切れが多く発生し、収率の低下を招きやすい。紡糸原液濃度が低すぎると、溶媒飛散のエネルギーコストが大きく、また、高すぎると、紡糸原液粘度が高くなりすぎて前述の如く輸送上の問題が生じる。
【0050】
紡糸して得られたポリウレタン弾性繊維に付与する油剤としては、ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、鉱物油、シリコンレジン、タルク、コロイダルアルミナ等の鉱物性微粒子、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩粉末、高級脂肪族カルボン酸、高級脂肪族アルコール、パラフィン、ポリエチレン等の常温で固体のワックス等を用いることができる。これらは、単独、または必要に応じて任意に組み合わせて用いても良い。
【0051】
ポリウレタン弾性繊維へ油剤を含有させる方法は、紡糸後にポリウレン弾性繊維に付与してもよく、また、油剤を紡糸原液に予め含有させて紡糸してもよく、そのいずれの方法でも良い。紡糸後の繊維に油剤を付与する場合、繊維が形成された後の段階であれば特に限定されないが、巻き取り機に巻き取られる直前が好ましい。繊維を巻き取った後で油剤を付与することは、巻き取りパッケージから繊維を解舒することが困難であるためむずかしい。
【0052】
油剤の付与方法は、油剤バス中で回転する金属円筒の表面上に形成された油膜に紡糸直後の糸を接触させる方法、ガイド付きのノズル先端から油剤を定量吐出させて糸へ付着させる方法など、公知の方法を用いることが出来る。また、油剤を紡糸原液へ含有させる場合は、紡糸原液を製造する任意の時点で添加することができ、油剤は紡糸原液に溶解又は分散させる。
【0053】
本発明のポリウレタン弾性繊維は、綿、絹、羊毛等の天然繊維、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、カチオン可染ポリエステル繊維、銅アンモニア再生レーヨン、ビスコースレーヨン、アセテートレーヨン等と交編織したり、又は、これらの繊維を用いて被覆、交絡、合撚等により加工糸とした後、交編織することによって斑のない高品位な布帛を得ることが出来る。
【0054】
本発明のポリウタレン弾性繊維は、特にポリウレタン弾性繊維を用いた布帛では生産量が多く、ベア糸で供給されるため、原糸の品位の影響が大きい経編物に好適である。経編生地には、パワーネット、サテンネット、ラッセルレース、ツーウェイトリコットなどがあるが、本発明のポリウレタン弾性繊維を用いることにより、経方向の筋の少ない高品位な布帛を得ることができる。
【0055】
本発明のポリウレタン弾性繊維を用いた布帛は、水着、ガードル、ブラジャー、インティメイト商品、肌着等の各種ストレッチファンデーション、タイツ、パンティストッキング、ウェストバンド、ボディースーツ、スパッツ、ストレッチスポーツウェアー、ストレッチアウター、医療用ウェア、ストレッチ裏地等の用途に用いることが出来る。
【発明の効果】
【0056】
本発明のポリウレタン弾性繊維は、加工安定性に優れており、紡糸時及び加工時の糸切れが少なく、斑の少ない高品位な布帛を製造できる。また、従来技術のように繊維処理剤の付着量を多くする必要がないので、設備の汚染も少なく経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】ポリウレタン弾性繊維の編み針に対する動摩擦係数および走行糸張力変動の測定方法を概略的に示す図である。
【図2】ポリウレタン弾性繊維に対する静摩擦係数(μss)およびナイロン糸に対する静摩擦係数(μsn)の測定方法を概略的に示す図である。
【図3】実施例1のポリウレタン弾性繊維表面の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、測定法、評価法等は下記の通りである。
【0059】
(1)無機化合物粒子の平均粒径
水/エタノール=1/1溶媒に分散させて、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置(島津製作所製:SALD−2000)で測定する。
【0060】
(2)無機化合物粒子の比表面積
測定サンプルは、160℃で2時間減圧して試料の脱ガス前処理を行い、BET法で測定を行う。
【0061】
(3)無機化合物粒子の屈折率
屈折率の異なる溶媒を調整し、それぞれに無機化合物粒子を一定量投入し、各溶液の透過度を測定する。そこで、透過度が最大となった溶媒の屈折率を、その無機化合物粒子の屈折率とする。
【0062】
(4)繊維表面の凸部の測定
走査電子顕微鏡(日本電子(株)製:JSM−5510LV型)を用いて、1000倍の倍率で繊維軸方向の長さ120μmの繊維表面をランダムに3点撮影する。撮影された画像から、平滑な繊維表面に対し、側面から盛り上がりが観察できる部分、または盛り上がりによる影が確認できる部分を凸部とする。この各凸部の大きさを画像処理ソフトにて簡易測長し、繊維表面の0.5〜5μmの大きさの凸部の個数を数えて、その平均の個数を求める。
【0063】
(5)破断強度、破断伸度
引張試験機(オリエンテック(株)社製:UTM(登録商標)−III−100型)を用いて、20℃、65%RH雰囲気下で、試料長5cmの繊維を1000%/分の速度で破断するまで引張り、破断時の強度(cN)および伸度(%)を測定する。
【0064】
(6)編み針に対する動摩擦係数および走行糸張力変動
編み針((株)小池機械製作所製:18Ga200−DX型)を経由して走行している糸の編み針の前後の糸張力の比から動摩擦係数(μd)を求める。即ち、パッケージからの送り出し速度を100m/分、巻取り速度を200m/分で糸を走行させている時に、図1に示すように、糸の走行経路に、編み針(N)を摩擦角152°(0.84π(rad))で挿入した際の、入力側の糸張力(T)、出力側の糸張力(T)を測定する。動摩擦係数(μd)は、下記式(1)から算出される。
【0065】
【数1】

【0066】
この際、編み針に対する糸の摩擦特性の斑により、出力側の糸張力が変動するが、その糸張力の最大値と最小値の差(ΔT)を求める。ΔTが小さいほど、走行時の糸張力斑が小さく、加工安定性が良いことを示す。
【0067】
(7)ポリウレタン弾性繊維に対する静摩擦係数
ポリウレタン弾性繊維に対する静摩擦係数(μss)は、ジョリーバランス計(興亜商会(株)製)を用い、以下の条件で測定した。同一の方法によって得られた2本のポリウレタン弾性繊維同士の静摩擦係数を測定する。
【0068】
即ち、図2に示すように、ポリウレタン弾性繊維(S)に10g(W)の荷重を付け摩擦体とする。これと直角にポリウレタン弾性繊維(S)をバネ(B)の下部に取り付けた滑車を介し、一端に1gの荷重(W)を付け、30cm/分の速度でポリウレタン弾性繊維(S)を走行させる。この時、バネ(B)に加わる最大荷重(T)を測定する。静摩擦係数(μs)は、下記式(2)から算出される。
【0069】
【数2】

【0070】
(8)ナイロン糸に対する静摩擦係数の経時変化
ナイロン糸に対する静摩擦係数(μsn)は、摩擦体としてナイロン糸を用いる以外は、ポリウレタン弾性繊維に対する静摩擦係数の測定と同様に行う。
【0071】
即ち、図2において、(S)に未処理のナイロン糸(旭化成せんい(株)製:レオナ10/7B)を張り、20g(W)の荷重を付け摩擦体とする。これと直角にポリウレタン弾性繊維(S)をバネ(B)の下部に取り付けた滑車を介し、一端に2gの荷重(W)を付け、30cm/分の速度でポリウレタン弾性繊維(S)を走行させる。この時、バネ(B)に加わる最大荷重(T)を測定する。静摩擦係数(μs)は、上記(4)と同様に、上記式(2)から算出される。
【0072】
経時変化は、製造後、1週間経過後のポリウレタン弾性繊維の静摩擦係数と、それを70℃の雰囲気下で16時間放置した後の静摩擦係数を測定し、放置前後の静摩擦係数の差(Δμsn)を求める。
【0073】
(9)金属摩耗性
試験糸を、送り出し速度43m/分、巻き取り速度150m/分で、張力をかけて走行させ、その走行経路上の糸に固定したステンレス製の編み針((株)小池機械製作所製:18Ga200−DX型)のフック部を引っ掛けて12時間走行させる。
【0074】
フック部の糸が走行した跡を電子顕微鏡で観察し、削れ状態を下記の基準で判定した。
G:走行跡に削れが見られない、又は、削れが極めて軽微である。
M:走行跡に削れが見られるが、編み針の強度に影響するものではない。
B:測定中に編み針が折れる、又は、編み針の強度が大幅に低下する程度に走行跡が削れている。
【0075】
(10)多孔質性シリカのDBA値(ジ−n−ブチルアミンの吸着量)
ジ−n−ブチルアミン(DBA)はシリカ表面のシラノール基(水酸基)に吸着されることから、その吸着量を疎水化度の目安とする。DBA値が低いほど疎水化度は高い。
トルエンとDBAを規定量混合し、DBA溶液を調整する。この溶液にシリカを添加して攪拌する。このときシリカ表面のシラノール基にDBAが吸着し、溶液中に残留した過剰なDBAを酸で中和滴定し、残留するDBA量から、シリカに吸着したDBA値(meq/kg)を求める。
【0076】
[実施例1]
数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール400wt部と、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート80.1wt部とを、乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーを得た。これを室温まで冷却した後、ジメチルアセトアミドを加え、溶解してポリウレタンプレポリマー溶液とした。
【0077】
一方、エチレンジアミン6.55wt部およびジエチルアミン1.02wt部を、乾燥ジメチルアセトアミドに溶解した溶液を用意し、これを前記プレポリマー溶液に室温下で添加して、ポリウレタン固形分濃度30wt%、粘度450Pa・s(30℃)のポリウレタン溶液を得た。
【0078】
ポリウレタン固形分に対し、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)を1wt%、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールを0.5wt%、および、平均粒径が2.7μm、屈折率が1.46、比表面積500m/g、DBA値800meq/kgの多孔質性シリカ1wt%をジメチルアセトアミドに加え、ホモミキサーで分散させ、15wt%の分散液を作成し、ポリウレタン溶液と混合して、均一な溶液とした後、室温、減圧下で脱泡し、これを紡糸原液とした。
【0079】
この紡糸原液を、紡糸速度800m/分、熱風温度310℃で乾式紡糸し、得られたポリウレタン弾性繊維がパッケージに巻き取られる前に、仕上げ剤をポリウレタン弾性繊維に対して6wt%付与し、紙製の紙管に巻き取って、44デシテックス/4フィラメントのポリウレタン弾性繊維の巻き取りパッケージを得た。なお、仕上げ剤としては、ポリジメチルシロキサン57wt%、鉱物油30wt%、アミノ変性シリコーン1.5wt%、ステアリン酸マグネシウム1.5wt%からなる油剤を用いた。
【0080】
実施例1で得られたポリウレタン弾性繊維の走査電子顕微鏡写真を図3に示す。
【0081】
[実施例2]
実施例1において、多孔質性シリカの添加量を0.2wt%とした以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン弾性繊維を得た。
【0082】
[実施例3]
実施例1において、多孔質性シリカの添加量を4.0wt%とした以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン弾性繊維を得た。
【0083】
[実施例4]
実施例1において、多孔質性シリカに代えて、平均粒径が3.9μm、屈折率が1.46、比表面積500m/g、DBA値800meq/kgの多孔質性シリカ1wt%を添加した以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン弾性繊維を得た。
【0084】
[実施例5]
実施例1において、多孔質性シリカに代えて、平均粒径が3.1μm、屈折率が1.46、比表面積300m/g、DBA値500meq/kgの多孔質性シリカ1wt%を添加した以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン弾性繊維を得た。
【0085】
[実施例6]
実施例1において、多孔質性シリカに代えて、平均粒径が2.7μm、屈折率が1.47、比表面積230m/g、DBA値50meq/kgの多孔質性シリカ0.2wt%を添加した以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン弾性繊維を得た。
【0086】
[実施例7]
実施例1において、多孔質性シリカに代えて、平均粒径が2.7μm、屈折率が1.47、比表面積420m/g、DBA値175meq/kgの多孔質性シリカ1wt%を添加した以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン弾性繊維を得た。
【0087】
[実施例8]
実施例1において、数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコールに代えて、高分子ポリオールとして数平均分子量2000のテトラメチレン基と2,2−ジメチルプロピレン基から成る共重合ポリエーテルグリコール(2,2−ジメチルプロピレン基の共重合率10モル%)400wt部を用いて、ポリウレタン重合体を得た以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン弾性繊維を得た。
【0088】
[実施例9]
実施例1において、多孔質性シリカに代えて、平均粒径が2.3μm、屈折率1.55の合成ケイ酸マグネシウムを1wt%添加した以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン弾性繊維を得た。
【0089】
[実施例10]
実施例1において、多孔質性シリカに代えて、平均粒径が4.5μm、屈折率1.49のマイカを1wt%添加した以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン弾性繊維を得た。
【0090】
[実施例11]
実施例1において、多孔質性シリカの添加量を12wt%とした以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン弾性繊維を得た。
【0091】
[実施例12]
実施例1において、多孔質性シリカに代えて、平均粒径が2.8μm、屈折率が1.46、比表面積150m/gの内部表面積を持たない湿式シリカを1wt%添加した以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン弾性繊維を得た。
【0092】
[実施例13]
実施例1において、多孔質性シリカに代えて、平均粒径が1.9μm(電子顕微鏡による粒径測定では16nm)、屈折率が1.46、比表面積170m/gの乾式法シリカ1wt%を添加した以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン弾性繊維を得た。
【0093】
[比較例1]
実施例1において、多孔質性シリカを添加しない以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン弾性繊維を得た。
【0094】
[比較例2]
実施例1において、多孔質性シリカに代えて、平均粒径が6.2μm、屈折率が1.46、比表面積300m/g、DBA値500meq/kgの多孔質性シリカを1wt%添加して、実施例1と同様にして紡糸原液を得た。得られた紡糸原液を、実施例1と同様に乾式紡糸しようとしたが、糸切れが多発し、さらにフィルターの圧損が大きくなったため、ポリウレタン弾性繊維を得ることができなかった。
【0095】
以上の各実施例および比較例における組成を表1に、得られたポリウレタン弾性繊維の物性を表2に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のポリウレタン弾性繊維は加工安定性に優れるため、糸切れが少なく、斑の少ない高品位な布帛を製造することができる。
本発明のポリウレタン弾性繊維を用いた布帛は、水着、ガードル、ブラジャー、インティメイト商品、肌着等の各種ストレッチファンデーション、タイツ、パンティストッキング、ウェストバンド、ボディースーツ、スパッツ、ストレッチスポーツウェアー、ストレッチアウター等の用途に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が0.5〜5μm、屈折率が1.4〜1.6の無機化合物粒子を含有し、繊維軸方向の長さ120μmあたりの繊維表面に最大幅が0.5〜5μmの大きさの凸部を少なくとも1個有することを特徴とするポリウレタン弾性繊維。
【請求項2】
無機化合物粒子を0.05〜10wt%含有することを特徴とする請求項1記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項3】
無機化合物粒子が100〜800m/gの比表面積を有する多孔質性のシリカであることを特徴とする請求項1または2記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項4】
編み針に対する動摩擦係数が0.2〜0.6であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項5】
ポリウレタン弾性繊維に対する静摩擦係数が0.3〜0.6であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項6】
ナイロン糸に対する静摩擦係数の経時変化(70℃で16時間放置したとき)が0.1以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項7】
平均粒径が0.5〜5μm、屈折率が1.4〜1.6の無機化合物粒子をアミド系極性溶媒中で微分散し、ポリウレタンに対し0.05〜10wt%含有させたポリウレタン紡糸原液を乾式紡糸することを特徴とするポリウレタン弾性繊維の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【国際公開番号】WO2005/083163
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【発行日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510507(P2006−510507)
【国際出願番号】PCT/JP2005/003334
【国際出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】