説明

ポリウレタン成形体の製造方法

【課題】 接着界面がなく、単一の組成であっても、ポリウレタン成形体の物性が連続的に変化している機能傾斜ポリウレタン成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】 機能傾斜ポリウレタン成形体の製造方法はポリウレタンの物性が一方向に連続的に変化した機能傾斜ポリウレタン成形体の製造方法であって、未硬化のポリウレタン材料中のポリオール成分の結晶状態について一方向に勾配をつけて硬化反応を行うことを特徴とする。未硬化のポリウレタン材料を注型し、冷却又は加圧により、該ポリウレタン材料中のポリオール成分を結晶化させた後、成型面の少なくとも一方の側を前記ポリオール成分の非結晶化温度以上の温度とし、且つ厚み方向に温度勾配を与えることにより、未硬化のポリウレタン材料中のポリオール成分の結晶化の程度に勾配をつけて硬化反応を行ってもよい。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、機能が傾斜したポリウレタン成形体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、異種組成のポリウレタンを、積層や注型する際には、異種組成のフィルムやシートなどの形状のポリウレタンを複数積層する方法、半硬化状態で異種組成のポリウレタンを順次型枠内に注入する方法などが利用されている。
【0003】異種組成のフィルムやシートなどのポリウレタンを積層する方法では、接着界面が生じるため、界面破壊が懸念される。また、多数の異種組成のポリウレタンを準備する必要もあり、煩雑である。
【0004】また、異種組成のポリウレタンを半硬化状態で型枠内に注入する方法では、工程が多段になり、半硬化に要する時間的ロスがある。しかも、組成変化が段階的であり、非連続である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、接着界面がなく、物性が連続的に変化している機能傾斜ポリウレタン成形体を容易に製造することができる方法を提供することにある。本発明の他の目的は、ポリウレタンの組成を変化させなくても、物性が連続的に傾斜している機能傾斜ポリウレタン成形体を容易に製造することができる方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ポリウレタン成形体を作製する際の成型面を、未硬化状態で、一方の側と他方の側とで異なる特定の温度にして、硬化反応を行うと、容易に機能が傾斜したポリウレタン成形体を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】本発明は、ポリウレタンの物性が一方向に連続的に変化した機能傾斜ポリウレタン成形体の製造方法であって、未硬化のポリウレタン材料中のポリオール成分の結晶状態について一方向に勾配をつけて硬化反応を行うことを特徴とする機能傾斜ポリウレタン成形体の製造方法である。
【0008】本発明では、未硬化のポリウレタン材料を注型し、冷却又は加圧により、該ポリウレタン材料中のポリオール成分を結晶化させた後、成型面の少なくとも一方の側を前記ポリオール成分の非結晶化温度以上の温度とし、且つ厚み方向に温度勾配を与えることにより、未硬化のポリウレタン材料中のポリオール成分の結晶化の程度に勾配をつけて硬化反応を行ってもよい。また、未硬化のポリウレタン材料を注型し、成型面の一方の側を前記ポリオール成分の結晶化温度以下の温度とし、成型面の他方の側を前記ポリオール成分の非結晶化温度以上の温度とすることにより、未硬化のポリウレタン材料中のポリオール成分の結晶化の程度に勾配をつけて硬化反応を行ってもよい。
【0009】本発明では、成型面の少なくとも一方の側を前記ポリオール成分の非結晶化温度以上の温度とし、且つ厚み方向に温度勾配を与えて、一次硬化を行った後、脱型して、前記非結晶化温度以上の温度で二次硬化を行うことが好適である。
【0010】また、本発明では、ポリオール成分がエステル型ポリオールであることが好ましい。
【0011】なお、本発明において、未硬化のポリウレタン材料中のポリオール成分とは、ウレタンプレポリマーにおけるポリオール残基部位(いわゆる、ソフトセグメント)、およびモノマーとしてのポリオールの両者を意味する。
【0012】
【発明の実施の形態】(機能傾斜ポリウレタン成形体の製造方法)本発明の機能傾斜ポリウレタン成形体の製造方法では、未硬化のポリウレタン材料中のポリオール成分の結晶状態に一方向に勾配をつけて硬化反応を行っている。前記未硬化のポリウレタン材料(以下、単に「未硬化ウレタン材料」と称する場合がある)は、ポリウレタン成形体を作製するための硬化反応前の材料を意味している。具体的には、(1)ポリオールとポリイソシアネートとの反応により得られたウレタンプレポリマー、および必要に応じて鎖延長剤(以下、「ウレタン材料(1)」と称する場合がある)、(2)ポリオール、ポリイソシアネート、および必要に応じて鎖延長剤(以下、「ウレタン材料(2)」と称する場合がある)、(3)前記ウレタンプレポリマー、ポリオール、ポリイソシアネート、および必要に応じて鎖延長剤(以下、「ウレタン材料(3)」と称する場合がある)などが挙げられる。未硬化ウレタン材料は単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0013】未硬化ウレタン材料中のポリオール成分には、ウレタン材料(1)やウレタン材料(3)に係るウレタンプレポリマーにおけるポリオール残基部位(いわゆる、ソフトセグメント)、ウレタン材料(2)やウレタン材料(3)に係るモノマーとしてのポリオールが含まれる。ポリオール成分は単独で又は2種以上混合して使用することができる。好ましいポリオール成分(すなわち、結晶状態に勾配がつけられているポリオール成分)としては、ウレタンプレポリマーにおけるポリオール残基部位が挙げられる。なお、ポリオール成分にウレタンプレポリマー中のポリオール残基部位が含まれていると、ウレタンプレポリマー中のポリオール残基部位が結晶化するため、ウレタンプレポリマーは分子全体が結晶化するのではなく、部分的に結晶化することになる。
【0014】このような未硬化ウレタン材料を用いて、ポリオール成分の結晶状態に一方向に勾配をつけて、硬化反応を行うことにより、機能傾斜ポリウレタン成形体を作製することができる。該ポリオール成分の結晶状態の勾配は、例えば、ポリウレタン成形体を作製する際の金型内で行うことができる。このようなポリウレタン成形体を作製する際の金型の形状としては、特に制限されない。ポリウレタン成形体の形状に応じて適宜選択することができる。また、金型の材質としては、金属の他、プラスチック、セラミックス、ガラスなどであってもよい。
【0015】機能傾斜ポリウレタン成形体の作製方法として、具体的には、(a)成形体の作製用金型に未硬化ウレタン材料を注型し、冷却又は加圧により、前記ポリオール成分を結晶化させた後、成型面の少なくとも一方の側を前記ポリオール成分の非結晶化温度以上の温度とし、且つ厚み方向に温度勾配を与えて、硬化反応を行う方法、(b)成形体の作製用金型に未硬化ウレタン材料を注型し、成型面の一方の側を前記ポリオール成分の結晶化温度以下の温度とし、成型面の他方の側を前記ポリオール成分の非結晶化温度以上の温度として、硬化反応を行う方法などが挙げられる。
【0016】前記作製方法(a)では、未硬化ウレタン材料中のポリオール成分を冷却又は加圧により結晶化させ、その後、少なくとも一方の側から前記ポリオール成分の結晶を緩和させることにより、ポリオール成分の結晶状態につき一方向に勾配を持たせている。従って、未硬化ウレタン材料中のポリオール成分が全体的に一旦結晶化しているので、成型面の少なくともいずれかの側の温度をポリオール成分の非結晶化温度以上の温度にすると、結晶化したポリオール成分が、非結晶化温度の面から徐々に結晶が緩和され、一方向に、徐々に結晶化している割合(または結晶が緩和された割合)が増大又は減少する形態に容易にすることができる。そのため、容易に、ポリオール成分の結晶状態について一方向に勾配を持たせることができ、機能が傾斜したポリウレタン成形体を容易に且つ効率よく調製することができる。該作製方法(a)において、結晶化させる際の冷却の温度は、未硬化ウレタン材料中のポリオール成分の結晶化温度以下の温度であればよい。また、結晶化させる際の加圧の圧力は、未硬化ウレタン材料中のポリオール成分の結晶化圧力以上の圧力であればよい。
【0017】なお、ポリオール成分の結晶化温度又は結晶化圧力は、ポリオール成分がウレタンプレポリマー中のポリオール残基部位であれば、ウレタンプレポリマー中のポリオール残基部位の結晶化温度(凝固点)又は結晶化圧力のことを意味している。該ウレタンプレポリマー中のポリオール残基部位の結晶化温度又は結晶化圧力は、通常、モノマー成分としてのポリオールの結晶化温度又は結晶化圧力と同等又はほぼ同等である。
【0018】また、作製方法(b)では、成型面の一方の側のみをポリオール成分の結晶化温度以下の温度と、他方の側はポリオール成分の非結晶化温度以上の温度としており、厚み方向に温度勾配が生じている。該方法では、一旦ポリオール成分をすべて結晶化させているのではなく、ポリオール成分の結晶化状態について一方向に勾配が生じるように結晶化させている。そのため、該方法であっても、容易に、ポリオール成分の結晶状態に関して一方向に勾配を持たせることができる。
【0019】これらの作製方法(a)、(b)では、高温側から硬化反応を進行させることができる。
【0020】本発明では、作製方法(a)、すなわち、冷却又は加圧により、一旦ポリオール成分を結晶化させた後、成型面の少なくとも一方の側をポリオール成分の非結晶化温度以上の温度とし、且つ厚み方向に温度勾配を与えることにより、ポリオール成分の結晶状態について一方向に勾配を持たせて硬化反応を行う方法を好適に用いることができる。
【0021】作製方法(a)では、ポリオール成分の非結晶化温度以上の温度にする成型面としては、少なくとも一方の側の面であればよい。例えば、成型面の一方の側をポリオール成分の非結晶化温度以上の温度とし、成型面の他方の側をポリオール成分の結晶化温度以下の温度としてもよい。この場合、一方の側の成型面から他方の側の成型面にかけて厚み方向に温度勾配が生じている。そのため、ポリオール成分は、その結晶化の程度が厚み方向に勾配又は傾斜が生じている。
【0022】また、成型面の両側をポリオール成分の非結晶化温度以上の温度としてもよい。この場合、金型の両側の成型面から内部に向かって厚み方向に温度勾配が生じている。そのため、ポリオール成分の結晶化の程度について厚み方向に勾配又は傾斜が生じている。なお、成型面の両側をポリオール成分の非結晶化温度以上の温度とする場合、両側の温度は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0023】本発明では、作製方法(a)としては、成型面の一方の側をポリオール成分の非結晶化温度以上の温度とし、成型面の他方の側をポリオール成分の結晶化温度以下の温度として、厚み方向に温度勾配を生じさせる方法が好適である。
【0024】本発明の機能傾斜ポリウレタン成形体の製造方法において、前記結晶化温度以下の温度(以下、「低温側温度」と称する場合がある)としては、ポリオール成分の結晶化温度以下の温度であれば特に制限されず、例えば、ポリオール成分の結晶化温度より、5℃以上(好ましくは20℃以上)低い温度が好適である。
【0025】また、前記非結晶化温度以上の温度(以下、「高温側温度」と称する場合がある)としては、ポリオール成分の非結晶化温度以上の温度であれば特に制限されず、例えば、ポリオール成分の非結晶化温度より、5℃以上(好ましくは10℃以上)高い温度が好適である。
【0026】なお、高温側温度は、硬化反応を進行させるのに必要な高温であってもよい。高温側温度は、未硬化ウレタン材料中の成分、例えば、ウレタンプレポリマー、モノマー成分(ポリイソシアネート、ポリオールなど)の他、鎖延長剤などに応じて適宜選択することもできる。
【0027】このように、本発明では、温度や圧力などを調整することにより、未硬化ウレタン材料中のポリオール成分を結晶化、または非結晶化(又は溶融化)させている。
【0028】本発明では、成型面の一方の側を未硬化ウレタン材料中のポリオール成分の結晶化温度以下の温度とし、且つ厚み方向に温度勾配を与えて、一次硬化を行った後、脱型して、二次硬化を行う方法(特に、前記非結晶化温度以上の温度で二次硬化を行う方法)が最適である。該方法では、一次硬化において、脱型しても少なくとも金型に対応した形状又は構造を保持することができるように硬化させ、次の二次硬化において、残部の未硬化部分をさらに高温で硬化させているので、機能傾斜ポリウレタン成形体をより一層迅速に且つ効率よく調製することができる。
【0029】なお、本発明において、ポリオール成分の結晶化温度は、その圧力下において、ポリオール成分が結晶化し始める温度(非結晶状態から結晶状態に移行し始める温度)のことを意味している。本発明では、圧力の条件なしに単に結晶化温度と称した場合は、成型面又は金型にかけられている圧力(通常は常圧である)下において、結晶化し始める温度のことを意味する。
【0030】また、ポリオール成分の結晶化圧力は、その温度下において、ポリオール成分が結晶化し始める圧力(非結晶状態から結晶状態に移行し始める圧力)のことを意味している。本発明では、温度の条件なしに単に結晶化圧力と称した場合は、成型面又は金型にかけられている温度(通常は常温である)下において、結晶化し始める圧力のことを意味する。
【0031】本発明では、非結晶化温度とは、結晶状態から非結晶状態に移行し始める温度のことを意味しており、結晶が溶融し始める温度(溶融化温度;結晶緩和温度)と同等である。なお、非結晶化温度と結晶化温度とは同温度であってもよい。また、結晶化圧力は、結晶状態から非結晶状態に移行し始める圧力(非結晶化圧力)又は結晶が溶融し始める圧力(溶融化圧力)と同圧力であってもよい。
【0032】(ポリウレタンの組成)本発明に係る機能傾斜ポリウレタン成形体において、ポリウレタンの組成は特に制限されない。ポリウレタン成形体は、未硬化ウレタン材料を硬化させて調製することができる。未硬化ウレタン材料としては、少なくともウレタンプレポリマーを含んでいることが好ましく、例えば、ウレタン材料(1)を好適に用いることができる。ウレタンプレポリマーにおいて、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との割合は特に制限されない。ウレタンプレポリマーは、ポリオール成分の結晶性を発現することができるような組成又は構成であればよい。
【0033】未硬化ウレタン材料又はウレタンプレポリマーにおいて、ポリイソシアネート成分としては、特に制限されず、公知のポリイソシアネート成分を用いることができる。ポリイソシアネート成分としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。ポリイソシアネート成分は単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0034】ポリオール成分としては、例えば、エステル型ポリオール(ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなど)、エーテル型ポリオール(ポリエーテルポリオールなど)、多価アルコール、ヒマシ油などが挙げられる。ポリオール成分は単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0035】エステル型ポリオールには、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが含まれる。
【0036】ポリエステルポリオールは、(1)多価アルコールと多価カルボン酸とによる縮合重合、(2)環状エステル(ラクトン)の開環重合、(3)多価アルコール、多価カルボン酸及び環状エステルの3種類の成分による反応などにより得ることができる。
【0037】ポリエステルポリオールにおける縮合重合(1)において、多価アルコールとしては、特に制限されず、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−テトラメチレンジオール、1,5−ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。多価アルコールは単独で又は2以上組み合わせて用いられる。
【0038】また、多価カルボン酸としては、特に制限されず、例えば、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。多価カルボン酸は単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0039】また、ポリエステルポリオールにおける開環重合(2)において、環状エステルとしては、特に制限されず、例えば、プロピオラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。環状エステルは単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0040】ポリエステルポリオールにおける3種類の成分による反応(3)において、多価アルコール、多価カルボン酸、環状エステルとしては、前記例示のものなどを単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0041】ポリカーボネートポリオールは、(1)多価アルコールとホスゲンとによる反応、(2)環状炭酸エステル(アルキレンカーボネートなど)による開環重合などにより得ることができる。
【0042】ポリカーボネートポリオールにおけるホスゲンとの反応(1)において、多価アルコールとしては、特に制限されず、前記エステル型ポリオールで例示の多価アルコールを単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0043】また、ポリカーボネートポリオールにおける開環重合(2)において、アルキレンカーボネートとしては、特に制限されず、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネートなどが挙げられる。アルキレンカーボネートは単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0044】また、ポリオール成分において、エーテル型ポリオールのポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコールの他、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体などのモノマー成分として複数のアルキレンオキシドを含む(アルキレンオキサイド−他のアルキレンオキサイド)共重合体などが挙げられる。ポリオール成分の多価アルコールとしては、前記エステル型ポリオールで例示の多価アルコールが挙げられる。
【0045】本発明では、ポリオール成分としては、結晶性の高いポリオール成分が好ましい。ポリオール成分としては、エステル型ポリオールが好適に用いられる。ポリオール成分としてのエステル型ポリオールは、エーテル型ポリオールよりも結晶性が高いものが多い。
【0046】なお、本発明では、未硬化ウレタン材料又はウレタンプレポリマーにおいて、モノマー成分として、イソシアネート基と反応することができる活性水素を複数有するモノマー成分(ポリアミン化合物など)が含まれていてもよい。
【0047】ウレタンプレポリマーは、モノマー成分としてのポリイソシアネート成分とポリオール成分とにより調製することができる。該調製方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
【0048】本発明では、ウレタンプレポリマーを用いた場合などにおいて、鎖延長剤を用いることができる。鎖延長剤としては、ポリウレタン系ポリマー用として慣用的に用いられている鎖延長剤を用いることができ、例えば、3,3´−ジクロロ−4,4´−ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0049】また、架橋剤として多官能イソシアネート化合物を用いることができる。該多官能イソシアネート化合物としては、2以上のイソシアネート基を有する化合物(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族または脂環式ジイソシアネートなど)であればよい。
【0050】なお、本発明では、ウレタンプレポリマーや各モノマー成分の混合や硬化(重合)などにおいて、溶媒を用いてもよい。本発明の機能傾斜ポリウレタン成形体には、用途などに応じて、各種の添加剤が含まれていてもよい。
【0051】前述のように、本発明では、未硬化ウレタン材料(ウレタンプレポリマーなど)におけるポリオール成分(ソフトセグメント)の結晶性を利用している。従って、本発明の機能傾斜ポリウレタン成形体の製造方法は、ハードセグメントによる結晶核を利用して機能傾斜ポリウレタン成形体を調製する方法とは、その調製方法が本質的に全く異なっている。また、これらの調製方法によるウレタン成形体は、その構造(分子ネットワーク構造など)が異なっている場合もあると思われる。
【0052】本発明における機能傾斜ポリウレタン成形体において、ポリウレタン成形体の連続的に変化する物性(機能)としては、例えば、弾性、強靱性、引き裂き強度、引っ張り強度、伸び、硬さ(硬度)、耐摩耗性、耐溶剤性、耐老化性、低温特性などの物性が挙げられる。なお、ポリウレタンの機能が一方向に連続的に変化していれば、その変化は増加していてもよく、減少していてもよい。
【0053】本発明において、連続的な変化とは、局所的に連続して傾斜していることを含む。従って、全体として連続的に傾斜していなくても、局所的には傾斜している変化であれば、本発明でいう連続的な変化に含まれる。
【0054】本発明では、金型の内部形状に対応した形状の成形体を形成することができるので、金型の内部形状を変えることにより種々の形状(例えば、方形状、球形状、棒状、円柱状、異形等)の機能傾斜ポリウレタン成形体を簡易に製造することができる。
【0055】本発明における機能傾斜ポリウレタン成形体は、物性(機能)が連続的に変化したポリウレタン成形体であるが、接着界面がない。すなわち、単純な層構造を有していない。
【0056】なお、本発明における機能傾斜ポリウレタン成形体には、必要に応じて、使用目的に応じた部品又は部材を取り付けることができる。本発明における機能傾斜ポリウレタン成形体は、例えば、機能の傾斜を活かした方形状、球形状、棒状、円柱状、異形などの材料又は部材などとして利用できる。
【0057】本発明では、煩雑な工程を経ることなく簡易に製造でき、しかも物性(機能)が一方向に連続的に傾斜した機能傾斜ポリウレタン成形体を調製することができる。また、多種多様の形状を持つ機能傾斜ポリウレタン成形体を製造することも可能である。
【0058】
【発明の効果】本発明の機能傾斜ポリウレタン成形体の製造方法では、接着界面がなく、単一の組成であるにもかかわらず、物性が一方向に連続的に変化した機能傾斜ポリウレタン成形体を容易に調製することができる。特に、本発明によれば、モノマー成分の組み合わせ等を適宜選択することにより、極めて広範囲の特性についての傾斜が実現可能である。
【0059】
【実施例】以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0060】(原料)
[ポリイソシアネート成分]
(1)2,4−トリレンジイソシアネート:商品名「TDI−100」、日本ポリウレタン工業株式会社製(以下、「TDI」と称する場合がある)
(2)パラフェニレンジイソシアネート:商品名「Hylene PPDI」、Du Pont社製(以下、「PPDI」と称する場合がある)
[ポリオール成分]
(1)ポリカプロラクトングリコール(数平均分子量:1970):商品名「PLACCEL 220N」、ダイセル化学工業株式会社製(以下、「PCL2000」と称する場合がある)
[鎖延長剤]
(1)3,3´−ジクロロ−4,4´−ジアミノジフェニルメタン:商品名「イハラキュアミン」、イハラケミカル工業株式会社製(以下、「MOCA」と称する場合がある)
(2)1,4−ブタンジオール:試薬、関東化学(株)社製(以下、「BD」と称する場合がある)
【0061】(ウレタンプレポリマーの調製例)前記原料のポリイソシアネート成分と、ポリオール成分とを、表1に示す組み合わせで混合して、85℃で2時間かけて反応を行い、ウレタンプレポリマーを調製した。なお、ポリオール成分の脱水反応は、減圧下、110℃で2時間行った。
【0062】
【表1】


【0063】表1において、使用したポリイソシアネート成分とポリオール成分との配合割合は、イソシアネート基(−NCO)とヒドロキシル基(−OH)とのモル比で表しており、「−NCO/−OH」の欄に示している。また、ウレタンプレポリマーにおけるイソシアネート基の重量割合を「NCO%」の欄に示している。さらに、80℃でのウレタンプレポリマーの粘度(cP)を「η(cP)」の欄に示している。
【0064】なお、原料のポリイソシアネート成分及びポリオール成分は、イソシアネート基(−NCO)とヒドロキシル基(−OH)との割合(−NCO/−OH)がすべて2.0(モル比)となるように用いられているので、調製したウレタンプレポリマーは、すべて又はほとんど両末端がイソシアネート基となっている。
【0065】(実施例1)予め80℃に加熱し且つ脱泡しておいたウレタンプレポリマー「TDI/PCL2000」100重量部に対して、鎖延長剤として120℃に加熱したMOCAを10.4重量部の割合で添加し、アジテーターを用いて90秒間攪拌混合した後、金型(内部空間の形状:φ10mm×厚み5mm)に注型した。該金型の両側の温度を0℃とし、0.5〜1.0時間かけてポリオール成分の結晶化を行った。その後、金型の一方の側は温度25℃(室温)とし、他方の側は温度60℃として、12時間〜24時間かけて一次硬化を行った後、脱型し、さらに110℃のオーブン中で12時間かけて二次硬化を行って、ポリウレタン成形体を得た。該ポリウレタン成形体は、一次硬化時における温度が、高温(60℃)である表面(以下、「高温表面」と称する場合がある)側は淡黄色半透明であり、低温(25℃)である表面(以下、「低温表面」と称する場合がある)側は白色不透明であった。
【0066】(実施例2)ウレタンプレポリマーとして「PPDI/PCL2000」を用いるとともに、鎖延長剤としてBDを3.5重量部用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリウレタン成形体を得た。該ポリウレタン成形体は、一次硬化時における温度が、高温表面側は淡黄色半透明であり、低温表面側は白色不透明であった。
【0067】(評価)実施例1、2に係るポリウレタン成形体(厚み5mm)について、低温表面から高温表面にかけて各部分の硬度を、マイクロ硬度測定装置(高分子計器社製)を用いて測定したところ、図1又は2に示す結果が得られた。(図1は実施例1に係るポリウレタン成形体において、厚み方向の各部における硬度を示すグラフに係る図である。図2は実施例2に係るポリウレタン成形体において、厚み方向の各部における硬度を示すグラフに係る図である。)図1又は2で示されているグラフにおいて、縦軸は硬度(Microhardness)であり、横軸はポリウレタン成形体の厚み方向における低温表面からの距離(Thickness)(mm)である。
【0068】図1、2で示されているグラフ(厚み方向の各部と該各部の硬度との関係のグラフ)より、実施例1、2に係るポリウレタン成形体は、低温表面から高温表面にかけて、硬度が連続的に変化していることが確認された。従って、物性(機能)が一方向に傾斜しているポリウレタン成形体が得られた。
【0069】また、機能傾斜ポリウレタン成形体において、原料としては一種類のウレタンプレポリマーを用いている。従って、機能傾斜ポリウレタン成形体は、単一の組成である。
【0070】特に、実施例1の機能傾斜ポリウレタン成形体は、その硬度が、低温表面側(硬度:約75)と高温表面側(硬度:約55)とで約20も異なっており、低温表面側から求めると約25%も異なっていることになる。従って、実施例に係るポリウレタン成形体は、単一組成であるにもかかわらず、物性が一方向に大きく傾斜している。
【0071】なお、機能傾斜ポリウレタン成形体は、金型の両面にかける温度をそれぞれポリオール成分の結晶化温度以下の温度と該ポリオール成分の非結晶化温度以上の温度として、未硬化のポリウレタン材料中のポリオール成分の結晶性を利用することにより、調製されている。そのため、一次硬化時における温度が、高温側であっても、さほど高くなくてもよい。従って、機能傾斜ポリウレタン成形体を、マイルドな条件で容易に調製することができる。
【0072】以上の結果より、実施例1、2で得られた機能傾斜ポリウレタン成形体は一方向に物性(機能)が傾斜していることが分かる。また、該能傾斜ポリウレタン成形体は、(構成材料)が単一である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1に係るポリウレタン成形体において、厚み方向の各部における硬度を示すグラフに係る図である。
【図2】実施例2に係るポリウレタン成形体において、厚み方向の各部における硬度を示すグラフに係る図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリウレタンの物性が一方向に連続的に変化した機能傾斜ポリウレタン成形体の製造方法であって、未硬化のポリウレタン材料中のポリオール成分の結晶状態について一方向に勾配をつけて硬化反応を行うことを特徴とする機能傾斜ポリウレタン成形体の製造方法。
【請求項2】 未硬化のポリウレタン材料を注型し、冷却又は加圧により、該ポリウレタン材料中のポリオール成分を結晶化させた後、成型面の少なくとも一方の側を前記ポリオール成分の非結晶化温度以上の温度とし、且つ厚み方向に温度勾配を与えることにより、未硬化のポリウレタン材料中のポリオール成分の結晶化の程度に勾配をつけて硬化反応を行う請求項1記載の機能傾斜ポリウレタン成形体の製造方法。
【請求項3】 未硬化のポリウレタン材料を注型し、成型面の一方の側を前記ポリオール成分の結晶化温度以下の温度とし、成型面の他方の側を前記ポリオール成分の非結晶化温度以上の温度とすることにより、未硬化のポリウレタン材料中のポリオール成分の結晶化の程度に勾配をつけて硬化反応を行う請求項1記載の機能傾斜ポリウレタン成形体の製造方法。
【請求項4】 成型面の少なくとも一方の側を前記ポリオール成分の非結晶化温度以上の温度とし、且つ厚み方向に温度勾配を与えて、一次硬化を行った後、脱型して、前記非結晶化温度以上の温度で二次硬化を行う請求項1〜3のいずれかの項に記載の機能傾斜ポリウレタン成形体の製造方法。
【請求項5】 ポリオール成分がエステル型ポリオールである請求項1〜4のいずれかの項に記載の機能傾斜ポリウレタン成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2003−136546(P2003−136546A)
【公開日】平成15年5月14日(2003.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−340123(P2001−340123)
【出願日】平成13年11月6日(2001.11.6)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】