説明

ポリウレタン成形体

【課題】剥離性に優れており、弾性繊維やフィルム及び衣料等の用途に極めて有用なポリウレタン成形体を提供する。
【解決手段】オルガノポリシロキサン(a)、ポリエーテルポリオール(b)、ポリイソシアネート化合物(c)および鎖延長剤(d)から得られるポリウレタン成形体であって、ポリウレタン成形体表面に存在する炭素原子に対するケイ素原子の相対存在比であるSi/Cが0.03〜0.5であるポリウレタン成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリウレタン成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン及びポリウレタンウレアは様々な分野で応用されており、その中でも、弾性繊維等の用途に用いられることが多い。特に、ポリウレタンウレア構造を持つ繊維は、一般に、ソフトセグメント成分としてポリエーテルポリオールを使用し、ハードセグメントとして凝集力の高いポリアミン化合物を使用しているため、弾性特性、伸長回復性に優れた性質を有している。
【0003】
しかし、これらポリウレタンやポリウレタンウレア等のポリウレタン系弾性繊維は繊維同士の粘着性が高いために紡出時の解舒性が悪い。又、摩擦抵抗が大きいために糸が接触する紡糸機、整経機、編み機やガイド等の加工工程にある機器で糸切れを起こす等の問題が発生し易い。そこで、加工工程の機器と糸との摩擦抵抗を低下させて、このような問題を解決する従来技術として、固体の金属石鹸や油溶性高分子、高級脂肪酸、アミノ変性シリコーン等を油剤としてポリウレタン系弾性繊維に添加する方法や、平滑剤としてタルク、シリカ、コロイダルアルミナや酸化チタン等をポリウレタン系弾性繊維に分散させる方法、更にはシリコンジオールやシリコンジアミンをポリウレタン主鎖の一部に導入する方法等が検討されてきた(例えば、特許文献1)。しかし、これらの方法でも、十分な粘着防止効果が得られなかったり、平滑剤が紡糸機、整経機、編み機やガイド等に重大な磨耗を生じさせたりするといった問題があった。又、整経、編みたて工程に油剤成分によって抽出された糸中のオリゴマーや、油剤中の固体或いは高粘度成分が固体或いはペースト状になって分離したものが多量に付着するため、製品汚損や機械や器具の目詰まり等の問題があり、課題の解決に至っていない。このため、このような油剤や平滑剤を使わずとも、粘着性を低下させ、紡出時の解舒性が高いポリウレタン、即ち、剥離性が高いポリウレタンの製造方法が求められてきた。
【0004】
一方、ポリウレタンの原料にオルガノポリシロキサンを用いる例がこれまでに数多く報告されている。例えば、ポリエーテル鎖の短いエーテル変性シリコーンを使用した、弾性繊維製造工程の解舒性や走行平滑性を改善したポリウレタン樹脂(特許文献2)、エーテル変性シリコーンを使用した、ソフトで良好な着用感を有するポリウレタン弾性繊維(特許文献3)等が挙げられる。しかしながら、前者はエーテル変性シリコーンのポリエーテル鎖が短いため、ポリエーテルポリオールとの相溶性が悪く、均質なポリウレタンが生成しにくいという問題があった。また、後者は、ポリウレタンを製造した後にエーテル変性シリコーンを添加してポリウレタン弾性繊維を製造するため、エーテル変性シリコーンが繊維表面から脱落し易いという問題があり、更に、ポリウレタンを製造する際に前記エーテル変性シリコーンを反応させようとしても、他のポリオールとの相溶性が不十分であり、均質なポリウレタンが生成しにくいといった問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−259577号公報
【特許文献2】特開平7−165868号公報
【特許文献3】特開2004−332126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、均質性に優れ、剥離性が高い弾性繊維やフィルム及び衣料等の用途に極めて有用なポリウレタン成形体であり、ポリウレタン成形体表面に存在する炭素原子に対するケイ素原子の相対存在比が特定の範囲であるポリウレタン成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリウレタン成形体の表面に存在する炭素原子に対するケイ素原子の相対存在比であるSi/Cが特定の範囲である場合に、ポリウレタン成形体として高い剥離性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は、オルガノポリシロキサン(a)、ポリエーテルポリオール(b)、ポリイソシアネート化合物(c)および鎖延長剤(d)から得られるポリウレタン成形体であって、ポリウレタン成形体表面に存在する炭素原子に対するケイ素原子の相対存在比であるSi/Cが0.03〜0.5であるポリウレタン成形体に存する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリウレタン成形体は、ポリウレタン成形体の表面に存在する炭素原子に対するケイ素原子の相対存在比であるSi/Cが特定の範囲であるため、弾性繊維やフィルム及び衣料等の用途に極めて有用な剥離性が高いポリウレタン成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明を実施するための代表的な態様を具体的に記載するが、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下に記載の態様に限定されない。
本発明のポリウレタン成形体は、オルガノポリシロキサン(a)、ポリエーテルポリオール(b)、ポリイソシアネート化合物(c)および鎖延長剤(d)を原料とするポリウレタンから構成される成形体である。ここで「成形体」とは、固体表面をもつ状態であれば該当し、その形状は特に限定されない。換言すれば、「ポリウレタン成形体」とは固体状態のポリウレタンを意味する。従って、特定の成形方法によって成形された成形体に限定されるものではない。また、成形体の成形方法も特に限定されず、用途に応じて公知の成形方法を選択すればよい。
【0010】
先ず、本発明のポリウレタン成形体を構成するポリウレタンについて説明する。
1.ポリウレタンの製造
1−1.ポリウレタンの製造原料
本発明が対象とするポリウレタン(以下、本発明のポリウレタンという場合がある)は、オルガノポリシロキサン(a)、ポリエーテルポリオール(b)、ポリイソシアネート化合物(c)、及び鎖延長剤(d)を原料として得られるものである。
【0011】
尚、本発明において、ポリウレタンとは、特に限定がない限り、類似の物性を有することが従来から知られているポリウレタンとポリウレタンウレアの両者を言う。ここで、両者の構造的特徴の違いとしては、ポリウレタンは、主としてウレタン結合によって連鎖構造を形成するポリマーであり、ポリウレタンウレアは、主としてウレタン結合及びウレア結合によって連鎖構造を形成するポリマーである。原料面からの違いとしては、ポリウレタンは、鎖延長剤として短鎖ポリオールを使用し製造されるものであり、ポリウレタンウレアは、鎖延長剤としてポリアミン化合物を使用し製造されるものである。
【0012】
各原料の組成割合は、通常、オルガノポリシロキサン(a)とポリエーテルポリオール(b)の水酸基の合計のモル数をA、ポリイソシアネート化合物(c)のイソシアネート
基のモル数をB、鎖延長剤(d)の活性水素置換基(水酸基又は/及びアミノ基)のモル数をCとした場合、A:Bが、通常1:10〜1:1、好ましくは1:5〜1:1.05、より好ましくは1:3〜1:1.1、更に好ましくは1:2.5〜1:1.2、特に好ましくは1:2〜1:1.2の範囲であり、且つ、(B−A):Cが、通常1:0.1〜1:5、好ましくは1:0.8〜1:2、より好ましくは1:0.9〜1:1.5、更に好ましくは1:0.95〜1:1.2、特に好ましくは1:0.98〜1:1.1の範囲である。
【0013】
1−1−1.オルガノポリシロキサン(a)
本発明において用いられるオルガノポリシロキサン(a)はポリシロキサン部位に有機基が導入された化合物であり、公知のものが使用できる。ポリシロキサン部位に有機基が導入されていればその構造は限定されず、有機基をポリシロキサン部位の側鎖に導入したもの、ポリシロキサン部位の両末端に導入したもの、ポリシロキサン部位の片末端にのみ導入したもの、ポリシロキサン部位の両末端と側鎖に導入したものなどが挙げられる。その中でも、下記構造式(2)で表される、有機基(構造式(2)中の−R1-X)をポリシロキサン部位の両末端に導入したオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0014】
【化1】

【0015】
構造式(2)のR1は2価の有機基、R2はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、ビニル基、アリル基などのアルケニル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基あるいはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換した基から選択される。R2はアルキル基であることが好ましく、その中でもメチル基が特に好ましい。X
は水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、フェノール基、ポリエーテル基、ポリエーテル鎖が導入されたエステル基、メルカプト基、アラルキル基、メタクリル基等から選択される有機基である。また、mは5以上の整数である。
【0016】
オルガノポリシロキサン(a)の分子構造は、ポリシロキサン部位に有機基が導入されていれば特に定めないが、後述する他の原料、すなわち、ポリエーテルポリオール(b)、ポリイソシアネート化合物(c)および鎖延長剤(d)と反応させてポリウレタンとした際に、ポリウレタン分子内に導入されるような分子構造であることが好ましい。これは、ポリウレタン成形時のオルガノポリシロキサンのブリードアウトを抑制するためである。このため、オルガノポリシロキサン(a)は、ポリエーテルポリオール(b)、ポリイソシアネート化合物(c)、鎖延長剤(d)の少なくとも何れかと反応し得る官能基を有することが望ましい。
【0017】
有機基の具体例は前述した通りであるが、その中でも水酸基を分子内に含有するオルガノポリシロキサン、つまり、ポリシロキサンポリオールが好ましい。これは、ポリエーテルポリオール(b)と同じ水酸基を有しているため、ポリイソシアネート化合物(c)と反応しやすく、ポリウレタン構造中にポリシロキサンポリオールが導入されるだけでなく、ポリウレタン化において望ましくない副反応を引き起こす可能性が低いためである。また、ブロック共重合体のポリウレタンを得るためには、ヒドロキシル基をポリシロキサンの両末端に導入したポリシロキサンポリオールが特に好ましい。
【0018】
本発明において用いられるオルガノポリシロキサン(a)は、ポリウレタン成形体表面
の炭素原子に対するケイ素原子の相対存在比であるSi/C(以下、「相対存在比」と略記することがある)が0.03〜0.5となれば、その種類は特に限定されるものではない。オルガノポリシロキサン(a)は、公知の製造方法(例えば、特公平5−29706に記載の方法)により得られるものや、市販のオルガノポリシロキサンをそのまま使用することができる。
【0019】
前記オルガノポリシロキサン(a)の数平均分子量は特に限定されるものではないが、下限は、通常500以上、好ましくは700以上、より好ましくは1000以上であり、上限は、通常5000以下、好ましくは4500以下、より好ましくは4000以下である。数平均分子量が前記上限超過では、ポリウレタン製造時に使用するポリエーテルポリオール(b)や溶媒との相溶性が悪く均質なポリウレタンの製造が難しくなる傾向や、オルガノポリシロキサンとポリエーテルポリオール(b)の混合物(以下、ポリオール混合物ということがある)やプレポリマー、プレポリマー溶液を形成した際に、それらの粘度が高くなりすぎて操作性や生産性が悪くなる傾向がある。前記下限未満では、得られるポリウレタン重合体の剥離性が十分発現しない傾向がある。
【0020】
本発明において用いられるオルガノポリシロキサン(a)の性状は特に限定されるものではないが、常温で液状又はワックス状のものであり、オルガノポリシロキサンの性状や形態は、用途に応じて種々選択すれば良い。
ポリウレタン製造時のポリエーテルポリオール(b)や溶媒との相溶性向上やそれに伴うポリウレタンフィルムの透明性の向上、高い剥離性を達成するためには、前記オルガノポリシロキサン(a)のうち、エーテル変性シリコーンが好ましく使用される。これは、ポリウレタンの物性において、透明性向上に寄与するポリエーテル部位、剥離性向上に寄与するポリシロキサン部位を分子内に有しているためである。
特に好ましいのは下記に示した構造式(1)で表されるエーテル変性シリコーンであり、求めるポリウレタンの物性に応じて、ポリシロキサン部位(下記構造式(1)のn)やポリエーテル部位の長さ(下記構造式(1)のy)が異なるエーテル変性シリコーンを使用すれば良い。
【0021】
【化2】

【0022】
(式中、2つのRは独立して炭素数1〜15のアルキレン基、2つのRは独立して、炭素数2〜6のアルキレン基、xは0か1の整数、2つのyは独立して5〜50の整数、
nは1〜100の整数である。)
以下、オルガノポリシロキサン(a)の好ましい態様であるエーテル変性シリコーンについて、特に好ましい態様である構造式(1)で表されるエーテル変性シリコーンを例に詳述する。
【0023】
前記構造式(1)におけるxは0か1の整数であり、エーテル変性シリコーンの製造法によって、これらの数値が決定される。構造式(1)におけるyは5〜50であり、下限は、通常5以上、好ましくは7以上、特に好ましくは10以上であり、上限は、通常50以下、好ましくは40以下、特に好ましくは、30以下である。nの値が一定の場合には、yの値が大きくなるほどポリエーテルポリオール(b)との相溶性が高くなり、均質なポリウレタンを製造しやすくなるが、上限超過ではエーテル変性シリコーンの分子量が大きくなりすぎて粘度が高くなり、ポリウレタン製造時の操作性や生産性が悪くなる。一方、nの値が一定ならば、yの値が小さくなるほどエーテル変性シリコーン中のポリシロキサ
ン骨格含有量が増加するので、得られるポリウレタン重合体の剥離性が向上する。また、構造式(1)におけるRの炭素数は2〜6であり、ポリウレタンの物性への影響や汎用性の高さから2〜4が好ましい。ポリオキシアルキレン部位は、単一のオキシアルキレン基から形成されても良いし、炭素数の異なる複数のオキシアルキレン基から形成されても良い。
【0024】
また、前記構造式(1)における、ジメチルシロキサン骨格の繰り返し数nは1〜100の整数であり、yの値が一定の場合には、この数値が大きくなるほど、得られるポリウレタン重合体の剥離性が向上する傾向となる。一方、nの値が小さくなるほど、ポリエーテルポリオールとの相溶性が高くなり、均質なポリウレタンを製造しやすい傾向となる。尚、一般に、シリコーン系化合物の添加はポリウレタンの剥離性を向上させるために効果的であるが、シリコーン系化合物は、ポリウレタンの製造において、他の主原料であるポリエーテルポリオール(b)や溶媒との相溶性が悪い。このため、生成するポリウレタンが白濁し、均質なフィルムや繊維が製造しにくいといった問題があった。これに対して、オルガノポリシロキサン(a)として、繰り返し単位が5以上のオキシアルキレン基から成るポリエーテル部位を有する前記構造式(1)のエーテル変性シリコーンを用いる場合には、ポリウレタンの製造において、オルガノポリシロキサン(a)とポリエーテルポリオール(b)の混合物を作製する際の両者の相溶性が向上し、均質で透明なフィルムや繊維を製造しやすくなる。
【0025】
前記構造式(1)で表されるエーテル変性シリコーン中の、ポリシロキサン部位の割合は特に限定されるものではないが、下限は、通常、5重量%以上であり、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、更に好ましくは20重量%以上、特に好ましくは25重量%以上である。前記下限の数値が大きくなるほど、得られるポリウレタンの剥離性が向上する傾向となる。一方、上限は、通常90重量%以下であり、好ましくは80重量%以下であり、より好ましくは70重量%以下、更に好ましくは、60重量%以下、特に好ましくは55重量%以下である。前記上限の数値が小さくなるほどポリエーテルポリオールとの相溶性が向上して得られるポリウレタンの透明性や均質性が高くなる傾向となる。なお、エーテル変性シリコーン中の、ポリシロキサン部位の割合は、例えば、NMRを測定することにより、容易に算出することができる。
【0026】
前記構造式(1)で表されるエーテル変性シリコーンは、xが0、すなわち、ポリシロキサン部位に結合しているアルキレン基と複数のオキシアルキレン基が、エーテル結合で連結している場合、エーテル変性シリコーンは市販されているもの、または、公知の方法(例えば、特公平5−29706に記載の方法)により得られたものが使用できる。また、前記構造式(1)で表されるエーテル変性シリコーンにおいて、xが1、すなわち、ポリシロキサン骨格に結合しているアルキレン基と複数のオキシアルキレン基がエステル結合で連結している場合のエーテル変性シリコーンは、珪素原子に結合する水素原子を少なくとも一つ有するオルガノ(ポリ)シロキサンに末端不飽和エステルを反応させる公知の方法(特開平9−278891号公報)だけでなく、例えば次の製造方法により得られたものが使用できる。
前記構造式(1)においてxが1の場合のエーテル変性シリコーンは、ポリシロキサン骨格を有し、複数のカルボキシル基を有するポリカルボン酸(1)〔以降、「ポリシロキサン骨格を有するポリカルボン酸(1)」と略記することがある。〕とポリエーテルポリオール(2)とを、前者(1)のカルボキシル基と後者(2)のヒドロキシル基とでエステル化反応させて得ることもできる。
【0027】
(1)ポリシロキサン骨格を有するポリカルボン酸
ポリシロキサン骨格を有するポリカルボン酸(1)は、複数のシロキサン部位及び複数のカルボキシル基を有する化合物である。そのポリシロキサン骨格としては、シロキサン
骨格を複数有する限り特に限定されるものではなく、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン等のポリアルキルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、及びポリジフェニルシロキサン等が挙げられる。これらの中で、ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。
【0028】
又、カルボキシル基は複数個を有していてよいが、2個であるのが好ましい。ポリシロキサン骨格を有するポリカルボン酸中のカルボキシル基の位置は特に限定されず、カルボキシル基を分子側鎖に有するもの、分子の両末端に有するもの、分子の片末端と側鎖に有するもの、分子の片末端のみに有するもの等が挙げられる。その中でも、柔軟性や弾性回復性等に優れたポリウレタンを得るためには、カルボキシル基をポリシロキサン骨格の両末端に有するジカルボン酸が特に好ましい。尚、このポリシロキサン骨格を有するポリカルボン酸(1)は市販されており、それら公知のものが使用できる。
【0029】
尚、ポリシロキサン骨格を有するポリカルボン酸(1)は、珪素原子が連結基を介してカルボキシル基を有するものであるが、その連結基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ペンタデカメチレン基等のアルキレン基、ビニレン基、プロペニレン基等のアルケニレン基、フェニレン基等のアリーレン基等が挙げられる。これらの中でもアルキレン基が好ましく、炭素数4〜12の直鎖アルキレン基が特に好ましい。
【0030】
ポリシロキサン骨格を有するポリカルボン酸(1)としては、その分子量が数平均分子量で、600以上、更には800以上、特には1,000以上であり、5,000以下、更には4,000以下、特には3,000以下であるものが好ましい。数平均分子量が前記上限超過では、ポリエーテルポリオール(2)との反応により生成するエーテル変性シリコーンの分子量が大きくなりすぎて、後述するポリウレタンを製造する際に、このエーテル変性シリコーンと後述するポリエーテルポリオール(b)の混合物を作製する際の該混合物、及びそれを用いて製造したプレポリマー、プレポリマー溶液を作製した際に、それらの粘度が高くなりすぎて操作性や生産性が悪くなる傾向や、得られるポリウレタンの透明性が悪くなる傾向がある。一方、前記下限未満では、得られるポリウレタンの剥離性が不十分となる傾向がある。
【0031】
尚、ポリシロキサン骨格を有するポリカルボン酸(1)の性状は、特に限定されるものではなく、常温で液状のものもワックス状のものも使用可能である。ハンドリング性が良いことから、液状のものが好ましい。
【0032】
(2)ポリエーテルポリオール
前記構造式(1)で表されるエーテル変性シリコーンを製造する際に用いられるポリエーテルポリオール(2)は、分子内の主骨格中に1つ以上のエーテル結合を有するヒドロキシ化合物である。主骨格中の繰り返し単位としては、飽和炭化水素又は不飽和炭化水素のどちらでもよく、又、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよく、例えば、1, 2- エチレングリコール単位、1,2−プロピレングリコール単位、1,3−プロパンジオール(トリメチレングリコール)単位、2−メチル−1,3−プロパンジオール単位、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール単位、1,4−ブタンジオール(テトラメチルングリコール)単位、2−メチル−1,4−ブタンジオール単位、3−メチル−1,4−ブタンジオール単位、3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位、ネオペンチルグリコール単位、1,6−ヘキサンジオール単位、1,7−ヘプタンジオール単位、1,8−オクタンジオール単位、1,9−ノナンジオール単位、1,10−デカンジオール単位、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位等が挙げられる。
【0033】
これらの繰り返し単位のポリエーテルポリオールのうち、ポリテトラメチレンエーテルグリコールや、ポリトリメチレンエーテルグリコール、1〜20モル%の3−メチルテトラヒドロフランとテトラヒドロフランの反応により得られる共重合ポリエーテルポリオール(例えば、保土ヶ谷化学社製「PTG−L1000」、「PTG−L2000」、「PTG−L3500」等)、或いはネオペンチルグリコールとテトラヒドロフランの反応により得られる共重合ポリエーテルグリコール等が好ましい。又、これらのポリエーテルポリオールは、単独で用いても二種以上を混合して使用することもでき、求めるポリウレタンの物性に応じて種々選択すればよい。均質なポリウレタンを得るためには、ポリウレタン製造時に使用するポリエーテルポリオール(b)と同一のポリエーテルポリオールを使用することが好ましい。
【0034】
ポリエーテルポリオール(2)としては、その分子量が数平均分子量で、200以上、更には300以上、特には500以上であり、3,000以下、更には2,500以下、特には2,000以下であるものが好ましい。数平均分子量が前記上限超過では、後述するポリウレタンの製造において、前記構造式(1)で表されるエーテル変性シリコーンと後述するポリエーテルポリオール(b)の混合物を作製する際の該混合物、及びそれを用いて製造したプレポリマー、プレポリマー溶液を形成した際に、それらの粘度が高くなりすぎて操作性や生産性が悪くなる傾向や、得られるポリウレタンの低温における物性が悪くなる傾向となる。一方、前記下限未満では、得られるポリウレタンが硬くなり十分な柔軟性が得られなかったり、強度や伸度等の弾性性能が十分でない場合が生じる。尚、ここで、数平均分子量は、JIS K1557−1:2007に準拠したアセチル化法による水酸基価(KOH(mg)/g)前記測定方法により求めたものである。
【0035】
(3)触媒
前記構造式(1)で表されるエーテル変性シリコーンを、前記ポリシロキサン骨格を有するポリカルボン酸(1)と前記ポリエーテルポリオール(2)とをエステル化反応させて得る場合、触媒の存在しない系でエステル化反応を行うことも可能ではあるが、通常は、エステル化反応を円滑に進行させるために、無機酸或いは有機酸類;Li、Na、K、Rb、Ca、Mg、Sr、Zn、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Pb、Sn、Sb、及びPb等の金属の塩化物、酸化物、水酸化物、或いは酢酸、シュウ酸、オクチル酸、ラウリル酸、及びナフテン酸等の脂肪酸塩類;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキサイド、エチルチタネート、イソプロピルチタネート、及びn−ブチルチタネート等のアルコール類;ナトリウムフェノラート等のフェノール類;Al、Ti、Zn、Sn、Zr、及びPb等の金属のその他の有機金属化合物、等の如き通常のエステル化反応及びエステル交換反応に使用されているいずれの触媒を用いて行うことができる。入手が容易で毒性も低く、エステル化反応に幅広く使用されていることから、エチルチタネート、イソプロピルチタネート、及びn−ブチルチタネート等のチタン系触媒が最も好ましい。その際の触媒の使用量は、エーテル変性シリコーン調製用原料総量に対して0.00001〜0.5重量%が好ましく、0.0001〜0.1重量%が更に好ましく、0.0005〜0.02重量%が最も好ましい。この量が少なすぎるとエーテル変性シリコーンの形成に極めて長い時間を要するようになり、生成物が着色しやすくなる。一方、多すぎるとポリウレタン化反応に対する過剰な反応促進作用を示す場合がある。
【0036】
エーテル変性シリコーンの製造方法としては、従来公知のエステル化技術を採用することができる。例えば、前記ポリシロキサン骨格を有するポリカルボン酸(1)と前記ポリエーテルポリオール(2)とを、常圧下に反応させる方法、減圧下で反応させる方法、トルエンのような不活性溶剤存在下に反応を行った後に縮合水又は縮合アルコールと溶剤とを共沸させて反応系外に除去する方法等がある。
【0037】
エステル化反応の反応温度は、通常100〜250℃の範囲であり、好ましくは120〜240℃、更に好ましくは140〜230℃、特に好ましくは160〜220℃の範囲である。反応温度が低すぎるとエステル化反応が十分進行せず、反応を押切るのに長い時間がかかったり、未反応原料が一部残存してポリウレタン化反応の阻害物質となったりする傾向があり、高すぎると副反応が起こったり、生成物の着色が大きくなる場合がある。又、反応は窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。反応圧力は任意であり、目的に応じて常圧又は減圧下で実施することができる。反応中に生成する水やアルコールを反応系から除去するために、反応系に不活性ガスを流通させてもよい。又、エステル化反応の反応時間は、触媒の使用量、反応温度、反応させる基質、生成するエーテル変性シリコーンに所望の物性等により異なるが、下限は通常0.5時間、好ましくは1時間、上限は通常30時間、好ましくは20時間である。
【0038】
エーテル変性シリコーン生成物からのチタン系触媒等の除去には通常繁雑な工程を伴うので、生成したエーテル変性シリコーンは、一般にチタン系触媒を分離することなく、そのままポリウレタンの製造に使用することが多い。しかし、触媒の含有量が多い場合やポリウレタンの用途によってはエーテル変性シリコーン中のチタン触媒を失活させておくことが好ましい。エーテル変性シリコーン中のチタン系触媒の失活方法としては、例えば、エーテル変性シリコーンを加熱下に水と接触させる方法、エーテル変性シリコーンを燐酸、燐酸エステル、亜燐酸、亜燐酸エステル等の燐化合物で処理する方法等を挙げることができる。そして、水と接触させる前者方法による場合は、例えば、エーテル変性シリコーンに水を1重量%以上添加して、70〜150℃、好ましくは90〜130℃の温度で1〜3時間程度加熱すればよい。その際の加熱による失活処理は常圧下で行っても加圧下で行ってもよく、失活処理後に系を減圧にすると、失活に用いた水分をエーテル変性シリコーンから円滑に除去することができる。
【0039】
前記構造式(1)で表されるエーテル変性シリコーンの製造は、前記ポリシロキサン骨格を有するポリカルボン酸(1)、前記ポリエーテルポリオール(2)、及び前記チタン系触媒(3)等、を仕込み、160〜220℃の反応温度で常圧下に反応させる方法により行うのが好ましい。未反応のポリカルボン酸を残存させないためにはポリエーテルポリオールを小過剰量反応させれば良く、その場合、本方法で製造したエーテル変性シリコーンと未反応のポリエーテルポリオール(2)をそのまま、ポリエーテルポリオール(b)との混合に用いることができる。
【0040】
エーテル変性シリコーンは、ポリカルボン酸およびポリエーテルポリオールのエステル化反応により生成し、ポリカルボン酸の両末端にポリエーテルポリオールが結合した前記構造式(1)のような構造体を主成分に含むが、ポリシロキサンユニットとポリエーテルユニットの交互構造を複数有するポリエステル型のポリオールも一部生成することが予想される。しかしながら、そのような構造のエーテル変性シリコーンが一部生成しても、ポリオール混合物の調製やポリウレタン化において問題となる可能性は低く、本発明に包含される。
【0041】
1−1−2.ポリエーテルポリオール(b)
本発明において用いられるポリエーテルポリオール(b)は、分子内の主骨格中に1つ以上のエーテル結合を有するヒドロキシ化合物であり、前記オルガノポリシロキサン(a)に包含されるものを除くものとする。主骨格中の繰り返し単位としては、飽和炭化水素又は不飽和炭化水素のどちらでもよく、又、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよく、例えば、1, 2- エチレングリコール単位、1,2−プロピレングリコール単位、1,3−プロパンジオール(トリメチレングリコール)単位、2−メチル−1,3−プロパンジオール単位、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール単位、1,4−ブタンジオー
ル(テトラメチルングリコール)単位、2−メチル−1,4−ブタンジオール単位、3−メチル−1,4−ブタンジオール単位、3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位、ネオペンチルグリコール単位、1,6−ヘキサンジオール単位、1,7−ヘプタンジオール単位、1,8−オクタンジオール単位、1,9−ノナンジオール単位、1,10−デカンジオール単位、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位等が挙げられる。
【0042】
これらの繰り返し単位のポリエーテルポリオールのうち、ポリテトラメチレンエーテルグリコールや、ポリトリメチレンエーテルグリコール、1〜20モル%の3−メチルテトラヒドロフランとテトラヒドロフランの反応により得られる共重合ポリエーテルポリオール(例えば、保土ヶ谷化学社製「PTG−L1000」、「PTG−L2000」、「PTG−L3500」等)、或いはネオペンチルグリコールとテトラヒドロフランの反応により得られる共重合ポリエーテルグリコール等が好ましい。又、これらのポリエーテルポリオールは、単独で用いても二種以上を混合して使用することもでき、求めるポリウレタンの物性に応じて種々選択すればよい。
【0043】
本発明において用いられるポリエーテルポリオール(b)としては、その分子量が数平均分子量で、下限としては、通常500以上、更には800以上、特には1000以上であり、上限としては、通常4000以下、更には3700以下、特には3500以下であるものが好ましい。数平均分子量が前記上限超過では、後述するポリウレタンの製造において、前述したオルガノポリシロキサン(a)とこのポリエーテルポリオール(b)の混合物を作製する際の該混合物、及びそれを用いて製造したプレポリマー、プレポリマー溶液を形成した際に、それらの粘度が高くなりすぎて操作性や生産性が悪くなる傾向や、得られるポリウレタンの低温における物性が悪くなる傾向となる。一方、前記下限未満では、得られるポリウレタンが硬くなり十分な柔軟性が得られない場合や、強度や伸度等の弾性性能が十分でない場合が生じる。尚、ここで、数平均分子量は、JIS K1557−1:2007に準拠したアセチル化法による水酸基価(KOH(mg)/g)測定方法により求めたものである。
【0044】
オルガノポリシロキサン(a)とポリエーテルポリオール(b)の使用量は特に限定されるものではないが、オルガノポリシロキサン(a)とポリエーテルポリオール(b)の合計重量に対するオルガノポリシロキサンの使用量として、下限は通常0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.07重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上であり、上限は通常10重量%以下、好ましくは8重量%以下、より好ましくは7重量%以下、更に好ましくは6重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。オルガノポリシロキサンの使用量が多くなるほど、得られるポリウレタン成形体の剥離性が向上する傾向となる。使用量が少なくなるほど、得られるポリウレタン成形体の剥離性は悪化するものの、弾性特性や伸張回復性や均質性が向上する傾向となる。
【0045】
1−1−3.ポリイソシアネート化合物(c)
本発明において用いられるポリイソシアネート化合物(c)は、2個以上のイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されるものではないが、例えば、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4’−MDI、パラフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネー
ト(水添TDI)、1−イソシアネート−3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4′−ジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が例示される。これらは単独使用でも2種以上の併用でもよい。本発明においては、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、中でも特に反応性の高い芳香族ジイソシアネートが好ましく、特にトリレンジイソシアネート(TDI) 、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が好ましい。又、イソシアネート化合物のNCO基の一部をウレタン、ウレア、ビュレット、アロファネート、カルボジイミド、オキサゾリドン、アミド、イミド等に変成したものであってもよく、更に多核体には前記以外の異性体を含有しているものも含まれる。
【0046】
これらのポリイソシアネート化合物(c)の使用量は、オルガノポリシロキサン(a)とポリエーテルポリオール(b)の水酸基の合計、並びに鎖延長剤(d)の水酸基及びアミノ基を合計した1当量に対し、通常、0.1当量〜5当量、好ましくは0.8当量〜2当量、より好ましくは0.9当量〜1.5当量、更に好ましくは0.95当量〜1.2当量、最も好ましくは0.98当量〜1.1当量である。ポリイソシアネート化合物の使用量が多すぎると、未反応のイソシアネート基が好ましくない反応を起こし、所望の物性が得られにくくなる傾向となり、少なすぎると、ポリウレタン及びポリウレタンウレアの分子量が十分に大きくならず、所望の性能が発現されない傾向となる。ここで、オルガノポリシロキサン(a)が水酸基を有さずに、ポリイソシアネート化合物(c)と反応し得る他の官能基を有する場合、或いは、オルガノポリシロキサン(a)が水酸基とともにポリイソシアネート化合物(c)と反応し得る他の官能基を併せて有する場合は、そのような他の官能基も水酸基と同様に取り扱うものとする。
【0047】
1−1−4.鎖延長剤(d)
本発明において用いられる鎖延長剤(d)は、主として、2個以上のヒドロキシル基を有する化合物、2個以上のアミノ基を有する化合物、水に分類される。この中でも、ポリウレタン製造には短鎖ポリオール、具体的には2個以上のヒドロキシル基を有する化合物を、ポリウレタンウレア製造には、ポリアミン化合物、具体的には2個以上のアミノ基を有する化合物が好ましい。鎖延長剤(d)の中で水については反応を安定に行うために、できるだけ低減することが好ましい。又、本発明のポリウレタンは、鎖延長剤(d)として、分子量(数平均分子量)が500以下の化合物を併用すると、ポリウレタンエラストマーのゴム弾性が向上するために、物性上更に好ましい。尚、これらの鎖延長剤(d)は単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0048】
ここで、2個以上のヒドロキシル基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族グリコール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン等の脂環族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香環を有するグリコール等が挙げられる。
【0049】
又、2個以上のアミノ基を有する化合物としては、例えば、2,4−又は2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4′−ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,3−ペンタンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン(水添MDA)、イソプロピリデンシクロヘキシル−4,4′−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。これらの中でも本発明において好ましいのは、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3−ペンタンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミンである。
【0050】
これらの鎖延長剤(d)の使用量は、ポリイソシアネート化合物(c)の当量からオルガノポリシロキサン(a)とポリエーテルポリオール(b)の合計の水酸基当量を引いた当量を1とした場合、通常0.1当量〜5.0当量、好ましくは0.8当量〜2.0当量、更に好ましくは0.9当量〜1.5当量である。鎖延長剤(d)の使用量が多すぎると、得られるポリウレタン及びポリウレタンウレアが硬くなりすぎて所望の特性が得られなかったり、溶媒に溶けにくく加工が困難になる傾向となり、少なすぎると、軟らかすぎて十分な強度や弾性回復性能や弾性保持性能が得られなかったり、高温特性が悪くなる傾向となる。ここで、オルガノポリシロキサン(a)が水酸基を有さずに、鎖延長剤(d)と反応し得る他の官能基を有する場合、或いは、オルガノポリシロキサン(a)が水酸基とともに鎖延長剤(d)と反応し得る他の官能基を併せて有する場合は、そのような他の官能基も水酸基と同様に取り扱うものとする。
【0051】
1−1−5.その他の添加剤等(e)
本発明において、ポリウレタンの製造には、以上の(a)〜(d)の他に、ポリウレタンの分子量を制御する目的で、必要に応じて1個の活性水素基を持つ鎖停止剤等を使用することができる。これらの鎖停止剤としては、水酸基を有するエタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族モノオール、アミノ基を有するジエチルアミン、ジブチルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の脂肪族モノアミン等が例示される。これらは単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0052】
又、ポリウレタン製造時に、必要に応じて他の添加剤を加えてもよい。これらの添加剤としては、「CYANOX1790」(CYANAMID社製)、「IRGANOX245」、「IRGANOX1010」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、「Sumilizer GA−80」(住友化学社製)、及び2,6−ジブチル−4−メチルフェノール(BHT)等の酸化防止剤、「TINUVIN622LD」、「TINUVIN765」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、「SANOLLS−2626」、「SANOL LS−765」(以上、三共社製)等の光安定剤、「TINUVIN328」、「TINUVIN234」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)等の紫外線吸収剤、ジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体等のシリコン化合物、赤燐、有機燐化合物、燐及びハロゲン含有有機化合物、臭素或いは塩素含有有機化合物、ポリ燐酸アンンモニウム、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン等の添加及び反応型難燃剤;二酸化チタン等の顔料、染料、カーボンブラック等の着色剤、カルボジイミド化合物等の加水分解防止剤、ガラス短繊維、カーボンファイバー、アルミナ、タルク、グラファイト、メラミン、白土等のフィラー、滑剤、油剤、界面活性剤、その他の無機増量剤、有機溶媒等が挙げられる。
【0053】
1−2.ポリウレタンの製造
本発明において、ポリウレタンを製造するには、オルガノポリシロキサン(a)、ポリエーテルポリオール(b)、ポリイソシアネート化合物(c)、及び鎖延長剤(d)を主製造用原料として、上記記載の各使用量で用い、一般的に実験/工業的に用いられる全ての製造方法により、無溶媒或いは溶媒共存下で実施することができる。その際使用する溶媒としては、特に限定されるものではないが、汎用性や溶解性等の観点から、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、及びそれらの2種以上の混合物等のアミド系溶媒、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、及びジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる溶媒が好ましく用いられ、これらの中でN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
【0054】
製造方法の一例としては、前記(a)、前記(b)、前記(c)及び前記(d)を一緒に反応させる方法(以下、一段法という)や、まず前記(a)と前記(b)を混合して予めポリオール混合物を調整し、さらにその混合物と前記(c)を反応させて両末端がイソシアネート基のプレポリマーを調製した後に、そのプレポリマーと前記(d)を反応させる方法(以下、二段法という)、前記(b)と前記(c)を反応させた後に前記(a)を混合し、前記(d)と反応させる方法、前記(b)、前記(c)、前記(d)を反応させた後に前記(a)を混合する方法が挙げられる。これらの中でも二段法は、オルガノポリシロキサン(a)とポリエーテルポリオール(b)の混合物を予め1当量以上のポリイソシアネート化合物(c)と反応させることにより、ポリウレタンのソフトセグメントに相当する両末端イソシアネートで封止された中間体を調製する工程を経るものであり、プレポリマーをいったん調製した後に鎖延長剤(d)と反応させるため、ソフトセグメント部分の分子量の調整が行いやすい。このため、ソフトセグメントとハードセグメントの相分離がしっかりとなされやすく、エラストマーとしての性能を出しやすい特徴がある。特に鎖延長剤(d)がジアミンの場合には、イソシアネート基との反応速度がオルガノポリシロキサンやポリエーテルポリオールの水酸基とは大きく異なるため、ポリウレタンウレアの製造において好ましい製造方法である。
【0055】
また、前記(a)と前記(b)の混合物と前記(c)を反応させて両末端がイソシアネート基のプレポリマーを調製した後に、そのプレポリマーと前記(d)を反応させるポリウレタン製造方法は、オルガノポリシロキサンがポリウレタンの分子構造に組みこまれるのでポリウレタン成形工程においてオルガノポリシロキサンがブリードアウト(分離、析出)しにくく、生成するポリウレタン成形体の剥離性が損なわれない最も好ましい方法であると言える。一方、別のポリウレタン製造方法として、例えば、前記(b)、前記(c)、前記(d)を反応させた後に前記(a)を混合する方法があるが、同方法ではオルガノポリシロキサンがポリウレタン分子構造に組み込まれないため、ポリウレタン成形工程においてブリードアウトしやすく、生成するポリウレタン成形体が所望の剥離性を示さない傾向や、十分な剥離性を得るためには大量のオルガノポリシロキサンが必要となるのでコストが高くなる傾向となり、好ましくない。
【0056】
予め、オルガノポリシロキサン(a)とポリエーテルポリオール(b)でポリオール混合物を調整する方法は、特に限定されないが、オルガノポリシロキサン(a)とポリエーテルポリオール(b)の何れも液状である場合は、これを攪拌して混合することが好ましい。また、一方または双方が固体または高粘度の液体である場合は、加温して粘度の低い液状として混合することもできる。混合する際の温度は限定されないが、10〜110℃で混合することが好ましい。高温にしすぎると、ポリオール混合物が着色してしまう可能性があり、低温にしすぎるとポリオールが一部固化して作業効率が低下する可能性や、不均一に混合されて剥離性や均質性に優れたポリウレタンが安定的に生産できない傾向がある。ポリオール混合物を予め調整しておくと、オルガノポリシロキサン(a)とポリエーテルポリオール(b)の相溶性が良好であるので、このように混合した状態で長期に保存
した場合であっても、相分離を起こすことがないという特徴をもつ。
【0057】
また、ポリオール混合物は、後述する本発明のポリウレタンを製造する際に、オルガノポリシロキサン(a)とポリエーテルポリオール(b)を別々のラインから導入させ、混合または分散させてポリオール混合物とすることも好ましい。それぞれを別のラインからフィードする場合、通常のポリウレタン製造設備に本発明のオルガノポリシロキサン用のタンクとフィードラインを増やすだけで、剥離性に優れる特殊グレードのポリウレタンが製造可能となる。ポリオール混合物を調整した後に通常のポリウレタン製造設備のポリエーテルポリオールの保管タンクに導入すると、通常グレードのポリウレタンを製造する場合にオルガノポリシロキサンが混在してしまい、ポリウレタンの均質性が損なわれる可能性が考えられる。通常グレードと特殊グレードのポリウレタンを所望の物性が得られるように効率よく製造するためには、このようにオルガノポリシロキサン(a)とポリエーテルポリオール(b)を別々のラインから導入させることが好ましい。
【0058】
1−2−1.一段法
一段法とは、ワンショット法とも呼ばれ、前記(a)、前記(b)、前記(c)、及び前記(d)を一緒に仕込むことで反応を行う方法である。反応は通常、各成分を0〜250℃で反応させるが、この温度は溶剤の量、使用原料の反応性、反応設備等により異なる。温度が低すぎると反応の進行が遅すぎたり、原料や重合物の溶解性が低くなるために生産性が悪く、又、高すぎると副反応やポリウレタンの分解が起こるので好ましくない。反応は、減圧下脱泡しながら行ってもよい。又、反応は必要に応じて、触媒、安定剤等を添加することもできる。その際の触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチル錫ジラウレ−ト、オクチル酸第一錫、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸、スルホン酸等があり、安定剤としては、例えば、2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネ−ト、ジ−β−ナフチルフェニレンジアミン、トリ(ジノニルフェニル)フォスファイト等が挙げられる。
【0059】
1−2−2.二段法
二段法は、プレポリマー法ともよばれ、まずオルガノポリシロキサン(a)とポリエーテルポリオール(b)を混合し、ポリイソシアネート化合物(c)とその混合物とを反応させたプレポリマーを製造し、次いでこれにポリイソシアネート化合物(c)又は多価アルコール、アミン化合物等の活性水素化合物成分を加えることにより二段階反応させることもできる。特にポリオール混合物に対して当量以上のポリイソシアネート化合物(c)を反応させて両末端NCOプレポリマーをつくり、続いて鎖延長剤である短鎖ジオールやジアミンを作用させてポリウレタンを得る方法が有用である。ポリウレタン成形体の製造工程でオルガノポリシロキサンがブリードアウトしにくいので、ポリウレタン成形体として十分な物性を得るためには、上記方法でポリウレタンを製造することが最も好ましい。
【0060】
二段法は無溶媒でも溶媒共存下でも実施することができる。溶媒共存下で実施する場合、汎用性や溶解性等の観点から、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、及びそれらの2種以上の混合物等のアミド系溶媒、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、及びジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる溶媒が好ましく用いられ、これらの中でN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
【0061】
プレポリマーを合成する場合、<1>まず溶媒を用いないで直接ポリイソシアネート化合物(c)とポリオール混合物を反応させてプレポリマーを合成しそのまま使用してもよいし、<2><1>の方法でプレポリマーを合成しその後に溶媒に溶かして使用してもよいし、<3>初めから溶媒を用いてポリイソシアネート化合物(c)とポリオール混合物を反応させてもよい。<1>の場合には、本発明では、鎖延長剤(d)と作用させるにあ
たり、鎖延長剤(d)を溶媒に溶かしたり、溶媒に同時にプレポリマー及び鎖延長剤(d)を導入する等の方法により、ポリウレタンを溶媒と共存する形で得ることが重要である。
【0062】
NCO/活性水素基(ポリオール混合物)の反応当量比は、下限が、通常1、好ましくは1.05であり、上限が、通常10、好ましくは5、より好ましくは3の範囲である。この比が大きすぎると、過剰のイソシアネート基が副反応を起こしてポリウレタンの物性に好ましくない影響を与える傾向があり、小さすぎると、得られるポリウレタンの分子量が十分に上がらず、強度や熱安定性に問題を生じる傾向がある。又、鎖延長剤(d)の使用量については特に限定されないが、プレポリマーに含まれるNCO基の当量に対して、下限が、通常0.1、好ましくは0.8であり、上限が、通常5.0、好ましくは2.0の範囲である。
【0063】
鎖延長反応は、通常、各成分を0〜250℃で反応させるが、この温度は溶剤の量、使用原料の反応性、反応設備等により異なる。温度が低すぎると反応の進行が遅すぎたり、原料や重合物の溶解性が低いために生産性が悪く、又、高すぎると副反応やポリウレタンの分解が起こるので好ましくない。反応は、減圧下脱泡しながら行ってもよい。
又、反応は必要に応じて、触媒、安定剤等を添加することもできる。その際の触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチル錫ジラウレ−ト、オクチル酸第一錫、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸、スルホン酸等があり、安定剤としては、例えば、2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネ−ト、ジ−β−ナフチルフェニレンジアミン、トリ(ジノニルフェニル)フォスファイト等が挙げられる。しかしながら、鎖延長剤が短鎖脂肪族アミン等の反応性の高いものの場合は、触媒を添加せずに実施することが好ましい。又、反応時に一官能性の有機アミンやアルコールを共存させてもよい。
【0064】
2.ポリウレタンの物性
上記の製造方法で得られるポリウレタンは、通常は溶媒存在下で反応を行っているため、溶液に溶解した状態で得られるのが一般的であるが、溶液状態でも固体状態でも制限されない。
本発明において、ポリウレタンのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)は、用途により異なるが、通常1万〜100万、好ましくは5万〜50万、より好ましくは10万〜40万、特に好ましくは15万〜30万である。又、分子量分布の目安としての、その重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)は、好ましくは1.5〜3.5、より好ましくは1.7〜3.0、特に好ましくは1.8〜3.0である。また、本発明におけるポリウレタンのフィルム成形時における剥離強度は小さいほど好ましい。剥離強度の上限値は、通常30g/cm以下、好ましくは20g/cm以下、より好ましくは10g/cm以下である。上限超過ではポリウレタン重合体の剥離性が不十分である。
【0065】
又、上記の製造方法で得られるポリウレタンは、ハードセグメントの量を、ポリウレタンの全重量に対して1〜20重量%含有することが好ましく、より好ましくは3〜15重量%であり、更に好ましくは4〜12重量%であり、特に好ましくは5〜10重量%である。このハードセグメント量が多すぎると、得られるポリウレタンが十分な柔軟性や弾性性能を示さなくなったり、溶媒を使用する場合は溶けにくくなり加工が難しくなったりする傾向となる。一方、ハードセグメント量が少なすぎると、ポリウレタンが柔らかすぎて加工が難しくなったり、十分な強度や弾性性能が得られなくなる傾向となる。
【0066】
尚、本発明でいう、ハードセグメントとは、P.J.Flory,Journal of American Chemical Society,58,1877〜1885
(1936)をもとに、全体重量に対する、イソシアネートと鎖延長剤結合部の重量を、下記式で算出したものである。
ハードセグメント(%)=[(R−1)(Mdi+Mda) /{Mp +R・Mdi+(R−1)・Mda}]×100
ここで、
R=イソシアネートのモル数/(ポリエーテルポリオールの水酸基のモル数+オルガノポリシロキサンの水酸基のモル数)
Mdi=ポリイソシアネート化合物の数平均分子量
Mda=鎖延長剤の数平均分子量
Mp =オルガノポリシロキサンとポリエーテルポリオールから成るポリオール混合物の数平均分子量
【0067】
本発明で得られるポリウレタン溶液は、ゲル化が進行しにくく、粘度の経時変化が小さい等保存安定性がよく、又、チクソトロピー性も小さいため、フィルム、繊維等に加工するためにも都合がよい。ポリウレタン溶液のポリウレタン濃度は、溶媒に溶解した溶液の全重量に対して、通常1〜99重量%、好ましくは5〜90重量%、より好ましくは10〜70重量%、特に好ましくは15〜50重量%である。ポリウレタンの量が少なすぎると、大量の溶媒を除去することが必要になり生産性が低くなる傾向となり、一方、多すぎると、溶液の粘度が高すぎて操作性や加工性が悪くなる傾向となる。尚、ポリウレタン溶液は、長期にわたり保存する場合は、常温、又はそれ以下の温度で窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で保存することが好ましい。
【0068】
3.ポリウレタン成形体
本発明のポリウレタン成形体は、前記のポリウレタンから構成される成形体である。前記の通り、本発明においてポリウレタン成形体とは、固体状態のポリウレタンを意味するので、前記で例示した製造方法で得られた固体状のポリウレタン自体も本発明のポリウレタン成形体に該当する。さらには該ポリウレタンを公知の方法で成形することによって得られる成形体も該当する。その成形方法も形態も特に限定されないが、押出成形や射出成形等の成形方法により、シート、フィルム、繊維等の形態に成形されたものを包含する。
【0069】
本発明のポリウレタン成形体は、成形体表面の原子組成が特定のものであることを特徴とする。すなわち、成形体表面に存在する炭素原子に対するケイ素原子の相対存在比であるSi/Cは、下限が通常0.03以上であり、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.06以上、更に好ましくは、0.07以上、特に好ましくは0.08以上である。前記下限値未満であると、ポリウレタン成形体の剥離性が不十分となるため好ましくない。一方、上限は、通常0.5以下であり、好ましくは0.4以下であり、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは、0.2以下、特に好ましくは0.15以下である。前記上限値を超えると、得られる成形体の柔軟性や透明性が低くなる傾向にあるため、好ましくない。
【0070】
本発明において、成形体表面に存在する炭素原子に対するケイ素原子の相対存在比は、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)またはXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)により測定するものとする。また、成形体表面の相対存在比は、オルガノポリシロキサン(a)やポリエーテルポリオール(b)の添加量を変えたり、オルガノ
ポリシロキサンの添加順序を変えたり、分子構造が異なるオルガノポリシロキサンの使用等により調整することができる。
【0071】
4.ポリウレタンの用途
本発明で製造されるポリウレタン、及びそのウレタンプレポリマー溶液は、多様な特性
を発現させることができ、例えば、樹脂状、ゴム状、熱可塑性エラストマー状等の材質で、又、各種形状に成形された固体状或いはフォーム状、及び液体状等の性状で、繊維、フィルム、塗料、接着剤、機能部品等として、衣料、衛生用品、包装、土木、建築、医療、自動車、家電、その他工業部品等の広範な分野で用いられる。特に、繊維やフィルムとして用いられるのが本発明で製造されるポリウレタンの弾性性能や透湿性の特徴を生かす上で好ましく、これらの具体的用途としては、衣料用の弾性繊維、医療、衛生用品、人工皮革等に用いられるのが好ましい。
【0072】
4−1.ポリウレタンフィルム
本発明のポリウレタンを用いたフィルムは、その厚さとしては特に限定されるものではないが、通常10〜1000μm、好ましくは10〜500μm、更に好ましくは10〜100μmである。フィルムの厚さが厚すぎると、十分な透湿性が得られない傾向となり、又、薄すぎると、ピンホールが形成されやすかったり、フィルムがブロッキングしやすく取り扱いにくくなる傾向となる。又、このフィルムは、医療用粘着フィルムや衛生材料、包装材、装飾用フィルム、その他透湿性素材等に好ましく用いることができる。尚、フィルムは布や不織布等の支持体に塗布して形成されたものでもよく、その場合は10μmよりも更に薄くてもかまわない。又、引張特性として、破断強度は、通常5MPa以上、好ましくは10MPa以上、より好ましくは20MPa以上、更に好ましくは30MPa以上であり、破断伸度は、通常100%以上、好ましくは200%以上、より好ましくは300%以上、更に好ましくは500%以上である。
【0073】
本発明のポリウレタンを用いたフィルムの製造方法は、特に限定はなく、従来公知の方法が使用できる。例えば、支持体や離型材にポリウレタン溶液を塗布、又は流延し、凝固浴中で溶媒その他の可溶性物質を抽出する湿式製膜法と、支持体や離型材にポリウレタン溶液を塗布、又は流延し、加熱或いは減圧等により溶媒を除去する乾式製膜法等が挙げられる。製膜する際に用いる支持体は特に限定されないが、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム、ガラス、金属、剥離剤を塗布した紙や布等が用いられる。塗布の方式は特に限定されないが、ナイフコーター、ロールコーター、スピンコーター、グラビアコーター等の公知のいずれでもよい。乾燥温度は、溶媒の種類や乾燥機の能力等によって任意に設定できるが、乾燥不十分、或いは急激な脱溶媒が起こらない温度範囲を選ぶことが必要であり、好ましくは室温〜300℃、より好ましくは60℃〜200℃の範囲である。
【0074】
4−2.ポリウレタン繊維
ポリウレタンフィルムと繊維の物性は非常によい相関があり、フィルム試験等で得られた物性値は繊維においても同様の傾向を示す。本発明のポリウレタンを用いた繊維は、伸長回復性、弾性、耐加水分解性、耐光性、耐酸化性、耐油性、加工性等に優れ、例えば、レッグ、パンティー・ストッキング、おむつカバー、紙おむつ、スポーツ用衣類、下着、靴下、ファッション性に優れたストレッチ性の衣類、水着、レオタード等の用途に好ましく用いられる。本発明のポリウレタンを用いた弾性繊維の優れた透湿性は、衣類に使用される際に蒸れにくく、付け心地がよいという特徴を持つ。又、応力の変動率或いはモジュラスが小さいという特性は、例えば、衣類として体につける際に小さな力でそでを通したりすることができ、小さな子供やお年寄りにとっても非常に着脱しやすいという特徴を持つ。又、フィット感及び運動追従性がよいことより、スポーツ用衣類やよりファッション性の高い衣類の用途で使用することができる。又、繰り返しの伸張試験での弾性保持率が高いことより、繰り返しの使用に対してもその弾性性能が損なわれにくいという特徴もある。
【実施例】
【0075】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限
り、これらの実施例によって限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例における分析、測定は、以下の方法によった。
【0076】
<ポリシロキサンポリオールの数平均分子量>
ポリエーテルポリオール(2)がポリシロキサン骨格を有するポリカルボン酸(1)に対して2当量以上存在する場合、オルガノポリシロキサン(a)としてのポリシロキサンポリオールの数平均分子量は、原料の分子量から以下の〔式1〕に従って算出することができる。実施例に用いたポリシロキサンポリオール1、2の数平均分子量は、〔式1〕によって算出した。また、ポリシロキサンポリオール4,5の数平均分子量は、原料のカルビノール変性シリコーンおよびε-カプロラクトンの仕込み重量を用いて、[式2]によ
って算出することができる。ポリシロキサンポリオール4、5の数平均分子量は、〔式2〕によって算出した。ただし、実施例に用いたポリシロキサンポリオール3、6は市販品であるため、数平均分子量は、メーカーのカタログ値を記載した。
【0077】
〔式1〕
ポリシロキサンポリオール1,2の数平均分子量=(ポリシロキサン骨格を有するポリカルボン酸(1)の分子量)+(ポリエーテルポリオール(2)の分子量)×2−(水の分子量)×2
【0078】
〔式2〕
ポリシロキサンポリオール4,5の数平均分子量=カルビノール変性シリコーンの分子量+{(ε-カプロラクトンの仕込み重量)/(ε-カプロラクトンの分子量)}/{(カルビノール変性シリコーンの仕込み重量)/(カルビノール変性シリコーンの分子量)}×(ε-カプロラクトンの分子量)
<ポリエーテルポリオール(b)の数平均分子量>
JIS K1557−1:2007に準拠したアセチル化法による水酸基価(KOH(mg)/g)測定方法より数平均分子量を求めた。
【0079】
<ポリウレタン及びポリウレタンウレアの分子量>
得られたポリウレタン又はポリウレタンウレアの分子量は、ポリウレタン又はポリウレタンウレアのジメチルアセトアミド溶液を調製し、GPC装置〔東ソー社製、製品名「HLC−8220」 (カラム:TskgelGMH−XL(2本)〕を用い、標準ポリスチレン換算での数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0080】
<剥離試験方法>
成形したフィルム2枚を重ね合わせ、長さ4cm、幅1cmの試験片を打ち抜き、その長さ方向一端から2.5cmの重ね合わせ部分を、温度25℃、相対湿度50%の条件下、200g/cmの圧力を10分間印加した試験片について、引張試験機(FUDOH製「レオメーターNRM−2003J」)を用い、引張速度300mm/分で圧着部分をT型剥離したときの剥離強度を測定した。
【0081】
<フィルム物性>
ポリウレタン又はポリウレタンウレア試験片は幅10mm、長さ100mm、厚み約50μmの短冊状とし、JIS K6301に準じ、引張試験機〔オリエンテック社製、製
品名「テンシロンUTM−III −100」〕を用いて、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分にて、温度23℃(相対湿度55%)での引張破断強度、引張破断伸度、100%伸長時と300%伸長時の強度を測定した。
【0082】
<相対存在比(表面原子組成)>
ポリウレタン成形体表面に存在する炭素原子に対するケイ素原子の相対存在比、すなわち
、表面原子組成は、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)測定により求めた。測定は、アルバック−ファイ株式会社ESCA装置「ESCA−5800」を用いて実施した。測定条件は、以下の通りである。
・励起X線:単色AlKα線(1486.7eV)
・X線出力:14kV、350W(帯電防止の為中和銃使用)
・分析モード(LENS MODE):5(最小領域モード)
・アパーチャー番号:5
・検出角度(試料法線から検出器の角度):45度
・PassEnergy:23.5eV
・チャージシフト補正:炭素のC1sピークの結合エネルギーを235.0eVに合わせ
るように行った。
【0083】
酸素原子の炭素原子に対する相対存在比については、以下の式で算出した。
相対存在比=(酸素O1sのピーク面積/ピーク補正相対感度係数)/(炭素C1sのピーク面積/ピーク補正相対感度係数)
尚、各ピークの面積は装置付属のMultiPak Ver.8.2Cソフトを使用しSavitzky−Golayアルゴリズムを用いたスムージング処理(9ポイント)を行いshirleyのバックグラウンド補正を使って求めた。相対存在比算出に用いた酸素原子ピークと炭素原子ピークの結合エネルギー及びMultiPak Ver.8.2Cソフトで用いられている補正感度係数は次の通りである。
・O1s:結合エネルギー=532.5eV付近、
・補正相対感度係数=13.118
・C1s:結合エネルギー=285.0eV付近、
・補正相対感度係数=5.220
炭素C1sのピーク面積については、280eV及び290.5eV付近の極小値をshirleyで結んで得られる面積と、290.5eV及び293eV付近の極小値をshirleyで結んで得られるベンゼン環のshake up由来のピーク(291〜293eV付近〉の面積を足したものを用いた。
【0084】
実施例1
<ポリシロキサンポリオール1の製造>
撹拌子を備えた100mL四つ口丸底フラスコに、テトラエチルオルトチタネート(東京化成社製)4.4mg、カルボン酸変性シリコーン(東レ・ダウコーニング社製、「BY16−750」、数平均分子量1,500)30.0g(20.0mmol)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量650、三菱化学社製)27.4g(42.2mmol)を測り取った。留出管及び窒素導入管を取り付け、留出部はテープヒーターにより120℃に保温した。反応容器をオイルバスに浸して30分で200℃まで昇温し、200℃で7時間反応させてポリシロキサンポリオール1(数平均分子量2764、ポリジメチルシロキサン含有量40wt%)を得た。
【0085】
<ポリウレタンウレア1の製造>
容量が1Lのフラスコに、ポリエーテルポリオール(b)として予め40℃に加温したポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、「PTMG」と略記することがある。)(数平均分子量1972、三菱化学社製)109重量部と、オルガノポリシロキサン(a)として前記で合成したポリシロキサンポリオール1を0.55重量部加えて混合し、この混合物をポリウレタン製造用の原料とした。この混合物に対するポリエステルポリオール1の割合は0.5重量%であった。その後、ポリイソシアネート化合物(c)として予め40℃に加温した4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略記することがある。)22.3重量部を加えた。このときの、NCO/活性水素基(ポ
リエーテルポリオールと鎖延長剤)の反応当量比は1.6であった。そして、このフラスコを45℃のオイルバスにセットし、窒素雰囲気下にて碇型攪拌翼で攪拌しつつ、1 時間かけてオイルバスの温度を70℃まで昇温し、その後70℃にて3時間保持した。残存NCO基を過剰量のジブチルアミンと反応させ、その後残存ジブチルアミンを塩酸により逆滴定することによりNCOの反応率が99%を越えていることを確認した後に、オイルバスを取り去り、フラスコにN,N−ジメチルアセトアミド(以下、「DMAC」と略記することがある。関東化学社製)198重量部を加え、室温にて攪拌し溶解させることでポリウレタンプレポリマー溶液を調製した。上記ポリウレタンプレポリマー溶液を10℃に冷却し保持しておき、一方で、鎖延長剤(d)として、エチレンジアミン(EDA)/ジエチルアミン(DEA)=89/11(モル比)の0.6%DMAC溶液を調製した。この0.6%DMAC溶液に10℃に冷却し保持した上記ポリウレタンプレポリマー溶液を高速に攪拌しながら添加してポリマー濃度20%の透明性良好なポリウレタンウレア1のDMAC溶液を得た。
【0086】
この溶液を25℃にて一晩熟成した後に、得られたポリウレタンウレア1につき、GPCで重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布の目安としてその重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)を算出したところ、Mwは21.6万、Mw/Mnは2.5であった。又、得られたポリウレタンウレア1のハードセグメントの割合は、7.7重量%であった。又、こうして得られたポリウレタンウレア溶液をガラス板上にキャストし、60℃にて乾燥させて厚さ約50μmの無色透明なフィルムを得た。このフィルムの剥離試験を行ったところ、剥離強度は1.0g/cmであり、剥離性は良好であった。また、得られたフィルムは表1に示す通りの物性であり、表面原子組成のSi/Cは0.120であった。
【0087】
実施例2
<ポリシロキサンポリオール2の製造>
ポリエーテルポリオール(2)としてのポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量650、三菱化学社製)の代わりにポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量1,009、三菱化学社製)33.8g(33.8mmol)を用い、テトラエチルオルトチタネートの量を5.2mgとし、ポリシロキサン骨格を有するポリカルボン酸(1)としてのカルボン酸変性シリコーン(東レ・ダウコーニング社製、「BY16−750」)の量を24.1g(16.1mmol)とした以外は、実施例1と同様にしてポリシロキサンポリオール2(数平均分子量3482、ポリジメチルシロキサン含有量32wt%)を製造した。
【0088】
<ポリウレタンウレア2の製造>
オルガノポリシロキサン(a)として前記で合成したポリシロキサンポリオール2を0.67g使用した以外は、表1の組成で実施例1と同様にしてポリウレタンウレア2溶液
を製造した。
この溶液を25℃にて一晩熟成した後に、得られたポリウレタンウレア2につき、GPCで測定したMwは23.1万、Mw/Mnは2.4であった。又、得られたポリウレタンウレア2のハードセグメントの割合は、7.8重量%であった。こうして得られたポリウレタンウレア溶液から実施例1と同様にしてフィルムを成形し、剥離試験を行ったところ、剥離強度は1.1g/cmであり、剥離性は良好であった。また、得られたフィルムは表1に示す通りの物性であり、表面原子組成のSi/Cは0.127であった。
【0089】
実施例3
<ポリウレタンウレア3の製造>
オルガノポリシロキサン(a)として、エーテル変性シリコーン(東レ・ダウコーニング社製、SF8427、数平均分子量1860)を0.65重量部使用した以外は、表1
の組成で実施例1と同様にしてポリウレタンウレア3溶液を製造した。
【0090】
この溶液を25℃にて一晩熟成した後に、得られたポリウレタンウレア3につき、GPCで測定したMwは27.9万、Mw/Mnは2.5であった。又、得られたポリウレタンウレア3のハードセグメントの割合は、7.8重量%であった。又、こうして得られたポリウレタンウレア溶液から実施例1と同様にしてフィルムを成形し、剥離試験を行ったところ、剥離強度は2.8g/cmであり、剥離性は良好であった。また、得られたフィルムは表1に示す通りの物性であり、表面原子組成のSi/Cは0.09であった。
【0091】
実施例4
<ポリシロキサンポリオール4の製造>
撹拌子を備えた100mL四つ口丸底フラスコに4.2mgのテトラブチルオルトチタネート(東京化成社)、62.5g(34.5mmol)のカルビノール変性シリコーン(信越化学社製KF−6001、水酸基価62)、10g(87.6mmol)のε-カプロラクトン (Across社)を測り取った。還流管および窒素導入管を取り付け、反応容器をオイルバスに浸して30分で190℃まで昇温し、190℃で7h反応させてポリシロキサンポリオール4(数平均分子量2100、ポリジメチルシロキサン含有量77.9wt%)とした。
【0092】
<ポリウレタンウレア4の製造>
オルガノポリシロキサン(a)として前記で合成したポリシロキサンポリオール4を5.14重量部使用した以外は、表1の組成で実施例1と同様にしてポリウレタンウレア4溶液を製造した。
【0093】
この溶液を25℃にて一晩熟成した後に、得られたポリウレタンウレア4につき、GPCで測定したMwは19.4万、Mw/Mnは2.5であった。又、得られたポリウレタンウレア4のハードセグメントの割合は、7.8重量%であった。又、こうして得られたポリウレタンウレア溶液から実施例1と同様にしてフィルムを成形し、剥離試験を行ったところ、剥離強度は0.6g/cmであり、剥離性は良好であった。また、得られたフィルムは表1に示す通りの物性であり、表面原子組成のSi/Cは0.182であった。
【0094】
実施例5
<ポリシロキサンポリオール5の製造>
テトラブチルオルトチタネートの使用量を4.2mg、カルビノール変性シリコーンの使用量を45.0g(24.9mmol)、ε-カプロラクトンの使用量を29.6g(
259mmol)にした以外は、実施例4と同様にしてポリシロキサンポリオール5を製造した。(数平均分子量3001、ポリジメチルシロキサン含有量54.5wt%)
【0095】
<ポリウレタンウレア5の製造>
オルガノポリシロキサン(a)として前記で合成したポリシロキサンポリオール5を5.40重量部使用した以外は、表1の組成で実施例1と同様にしてポリウレタンウレア5溶液を製造した。
【0096】
この溶液を25℃にて一晩熟成した後に、得られたポリウレタンウレア5につき、GPCで測定したMwは21.9万、Mw/Mnは2.9であった。又、得られたポリウレタンウレア5のハードセグメントの割合は、7.7重量%であった。又、こうして得られたポリウレタンウレア溶液から実施例1と同様にしてフィルムを成形し、剥離試験を行ったところ、剥離強度は1.2g/cmであり、剥離性は良好であった。また、得られたフィルムは表1に示す通りの物性であり、表面原子組成のSi/Cは0.174であった。
【0097】
実施例6
<ポリウレタンウレア6の製造>
オルガノポリシロキサン(a)として、カルビノール変性シリコーン(信越化学社製、KF−6001、数平均分子量1820)を5.53重量部使用した以外は、表1の組成で実施例1と同様にしてポリウレタンウレア6溶液を製造した。
【0098】
この溶液を25℃にて一晩熟成した後に、得られたポリウレタンウレア6につき、GPCで測定したMwは18.8万、Mw/Mnは2.2であった。又、得られたポリウレタンウレア6のハードセグメントの割合は、7.8重量%であった。又、こうして得られたポリウレタンウレア溶液から実施例1と同様にしてフィルムを成形し、剥離試験を行ったところ、剥離強度は1.9g/cmであり、剥離性は良好であった。また、得られたフィルムは表1に示す通りの物性であり、表面原子組成のSi/Cは0.191であった。
【0099】
実施例7
<ポリウレタンウレア7の製造>
オルガノポリシロキサン(a)として、カルビノール変性シリコーン(信越化学社製、KF−6001)を0.10重量部使用した以外は、表1の組成で実施例1と同様にしてポリウレタンウレア7溶液を製造した。
【0100】
この溶液を25℃にて一晩熟成した後に、得られたポリウレタンウレア7につき、GPCで測定したMwは21.4万、Mw/Mnは2.6であった。又、得られたポリウレタンウレア7のハードセグメントの割合は、7.8重量%であった。又、こうして得られたポリウレタンウレア溶液から、表1の組成で実施例1と同様にしてフィルムを作製した。フィルムの物性は表1に示す通りであり、表面原子組成のSi/Cは0.071であった。
【0101】
比較例1
<ポリウレタンウレア8の製造>
オルガノポリシロキサン(a)を使用せず、表1の組成で実施例1と同様にしてポリウレタンウレア8溶液を製造した。
【0102】
この溶液を25℃にて一晩熟成した後に、得られたポリウレタンウレア8につき、GPCで測定したMwは21.7万、Mw/Mnは2.5であった。又、得られたポリウレタンウレア3のハードセグメントの割合は、7.8重量%であった。こうして得られたポリウレタンウレア溶液から、実施例1と同様にしてフィルムを成形し、剥離試験を行ったところ、剥離強度は46.0g/cmであり、剥離性は悪かった。また、得られたフィルムは表1に示す通りの物性であり、オルガノポリシロキサン(a)を添加していないので表面原子組成のSi/Cは0である。
【0103】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明によれば、剥離性が高く、弾性繊維やフィルム及び衣料等の用途に極めて有用なポリウレタン成形体を製造することができる。そして、得られるポリウレタン成形体を弾性繊維として使用する場合、油剤や平滑剤等の使用量の削減によるコストの削減、製品汚損や機械や器具の目詰まり頻度低減による操業安定性の向上、摩擦抵抗の低減による駆動電力の削減等が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルガノポリシロキサン(a)、ポリエーテルポリオール(b)、ポリイソシアネート化合物(c)および鎖延長剤(d)から得られるポリウレタン成形体であって、ポリウレタン成形体表面に存在する炭素原子に対するケイ素原子の相対存在比であるSi/Cが0.03〜0.5であるポリウレタン成形体。
【請求項2】
オルガノポリシロキサン(a)がポリシロキサンポリオールである請求項1に記載のポリウレタン成形体。
【請求項3】
剥離強度が30g/cm以下である請求項1または2に記載のポリウレタン成形体。
【請求項4】
ポリシロキサンポリオールが、エーテル変性シリコーンである請求項2または3に記載のポリウレタン成形体。
【請求項5】
エーテル変性シリコーンが、下記構造式(1)で表されるポリシロキサンポリオールである請求項4に記載のポリウレタン成形体。
【化1】

(式中、2つのRは独立して炭素数1〜15のアルキレン基、2つのRは独立して、炭素数2〜6のアルキレン基、xは0か1の整数、2つのyは独立して5〜50の整数、
nは1〜100の整数である。)
【請求項6】
ポリエーテルポリオール(b)がポリテトラメチレンエーテルグリコールである請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリウレタン成形体。
【請求項7】
オルガノポリシロキサン(a)の数平均分子量が500〜5000である請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリウレタン成形体。
【請求項8】
ポリイソシアネート化合物(c)が芳香族ポリイソシアネートである請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリウレタン成形体。
【請求項9】
鎖延長剤(d)がポリアミン化合物である請求項1〜8のいずれかに記載のポリウレタン成形体。
【請求項10】
請求項1〜9に記載の成形体がポリウレタンフィルムであるポリウレタン成形体。
【請求項11】
請求項1〜9に記載の成形体がポリウレタン繊維であるポリウレタン成形体。
【請求項12】
オルガノポリシロキサン(a)、ポリエーテルポリオール(b)を混合してポリオール混合物を得た後に、該混合物とポリイソシアネート化合物(c)および鎖延長剤(d)とを反応させて得たポリウレタンを用いることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載のポリウレタン成形体。
【請求項13】
オルガノポリシロキサン(a)とポリエーテルポリオール(b)を別々のラインから導入することにより、混合または分散させたポリオール混合物を使用して得られたポリウレ
タンを用いることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載のポリウレタン成形体。

【公開番号】特開2011−173936(P2011−173936A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33942(P2010−33942)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】