説明

ポリウレタン接着剤を剥離するためのカルボン酸ヒドラジドの使用

本発明は、ポリウレタン接着剤を剥離するための、石炭酸水素化物の使用に関する。石炭酸水素化物は、固体としてポリウレタン接着剤中に存在し、したがってポリマーと一体化していない。接着剤を少なくとも80℃の温度に加熱すると、ポリマーは熱により崩壊する。そのような接着剤には、それによって接着された構成要素を簡単な方法で取り外すことができ、構成要素の修理、再利用、またはリサイクルがより容易になるという利点がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン接着剤の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
かなり以前から、接着剤化合物の慎重な脱離、いわゆる剥離は、接着剤の技術において特殊な難題を投げかけてきた。したがって、接着剤化合物の素早い剥離に関する数多くの手法について、記述されてきた。特に、接着剤で付けられた構成要素を修理し、使用し、またはリサイクルする場合、接着剤化合物を素早く剥離できることは、重要な課題である。この場合、典型的にはポリウレタン接着剤からなる弾性接着剤化合物の剥離に関し、特別な関心が持たれている。
【0003】
従来技術には、ポリウレタン接着剤を剥離するための種々の手法がある。一方では、熱で膨張しかつその大きな膨張圧力によって接着剤結合を弱めまたは破壊する熱の作用によって剥離することができる材料を含有する、接着剤組成物がある。熱膨張材料として、例えば、膨張性黒鉛やバーミキュライトなどの無機物質、もしくは有機中空糸およびマイクロカプセルが使用され、または、国際公開第2005/028583号に記載されているように、加熱中に気状成分に分解し、したがって膨張圧力によって接着剤結合も弱めまたは破壊する、スルホヒドラジドまたはスルホニルヒドラジドの形をとる熱不安定性ヒドラジドが使用される。
【0004】
さらに、例えば、ジスルフィド基、オキシム−ウレタン基、もしくはアリール−ケト基などの容易に切断可能な結合を有する官能基の組込みによって、または、固体ジカルボン酸もしくは固体ジアルコールの複合もしくはマイクロカプセル化アミンの導入によって、または、微細に分散された小さな粒子、例えば鉄合金もしくはフェライトであって、交流電磁場の形で接着剤結合にエネルギーを導入し、したがって後者を局所的に強力に加熱し、それ自体で、また特に切断試薬、推進剤、もしくはポリマー中に存在する容易に切断可能な結合と一緒になって、素早い剥離をもたらすという特殊な磁気もしくは電気特性を有するものの導入によって、硬化したポリウレタンポリマーを熱劣化させる試みが知られている。
【0005】
従来技術で記述される熱剥離のための方法が一般に有するものとは、ポリウレタン、特に単一成分の水分硬化ポリウレタン接着剤で使用する場合、前記方法が、商品での実施を困難にしまたは不可能にするという実用上の著しい欠点を有することである。したがって、アミン、アルコール、またはスルホヒドラジドなどの上述の添加剤の多くと、イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーとの適合性は不十分であり、すなわちこれらの添加剤は、イソシアネート基に対して時期尚早の架橋反応を引き起こし、その結果、接着剤の保存期間の大幅な短縮をもたらす。さらに、いくつかの添加剤、例えば膨張材料は、硬化状態にあるポリウレタンポリマーをしばしば弱め、接着剤の使用時間中のその機械的強度および永続性がかなり低減するようになる。これと同じことが、容易に切断可能な結合の形の組み込まれた弱点を有する系にも当てはまる。最後に、記述される系に関する剥離速度および温度はしばしば不適切な範囲にあり、したがって、容易な剥離に必要とされる接着剤の適切な脆弱化が設定されるように、または逆に言えば、この脆弱化が非常に低い温度で開始され、したがって接着剤がその使用時間中に既に損傷を受けかつその極端な場合にその機能を完全に失うように、加熱を非常に長い時間にわたってまたは非常に強力に行わなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/028583号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明の目的は、適切な温度範囲でのポリウレタン接着剤の簡単な剥離を可能にし、特に単一成分の水分硬化ポリウレタン接着剤で使用することもできる系を提供することである。
【0008】
驚くべきことに、この目的は、請求項1に記載のカルボン酸ヒドラジドを使用して達成することができる。一般に、室温では、カルボン酸ヒドラジドは、ポリウレタン接着剤への溶解度が低い固体の結晶性物質である。驚くべきことに、カルボン酸ヒドラジドは、接着剤化合物の生成において硬化ポリウレタン組成物の構成成分として使用することが可能であり、この場合、組成物の硬化中にポリウレタンポリマー中に組み込む必要はなく、但しこの硬化は十分低い温度で実施されることを条件とする。驚くべきことに、ポリウレタン接着剤を含有するカルボン酸ヒドラジドは、適切な温度範囲で熱劣化する可能性があり、したがって崩れる可能性があり、この状態は、特に好ましいカルボン酸ヒドラジドを使用した場合、そのような接着剤の実際の使用に適した使用温度で引き起こされる。特に好ましいポリカルボン酸ヒドラジドを用いると、特に、良好な保存寿命を有する単一成分の水分硬化ポリウレタン接着剤を生成することもできる。
【0009】
本発明のその他の態様は、追加の独立請求項の対象である。本発明の特に好ましい実施形態は、従属請求項の対象である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの対象は、カルボン酸ヒドラジドを含有する硬化ポリウレタン接着剤を含む接着剤化合物を剥離するための、カルボン酸ヒドラジドの使用である。
【0011】
本明細書では、「カルボン酸ヒドラジド」という用語は、カルボン酸およびヒドラジンからなる縮合生成物を指す。
【0012】
本明細書では、接着剤と共に同じまたは異なる材料からなる少なくとも2種の基材の固体化合物を、「接着剤化合物」と呼ぶ。
【0013】
本明細書では、接着剤の、その強度に関連した特定の脆弱化を、接着剤化合物の「剥離」と呼ぶ。その結果、基材の機械的分離は比較的少ない労力で可能になり、すなわち接着剤化合物は、容易に溶解することができる。分離は、接着剤と基材表面との間の接着剤の作用で、または接着剤の粘着の作用で実施することができる。
【0014】
本明細書では、化学架橋反応が本質的に終了し、したがってイソシアネート基を本質的に含まないポリウレタン接着剤を、「硬化した」と呼ぶ。
【0015】
本明細書では、「ポリウレタン接着剤」という用語は、硬化状態でポリウレタンポリマーを含有する接着剤を指す。
【0016】
「ポリウレタンポリマー」という用語は、いわゆるジイソシアネート−重付加法により生成される全てのポリマーを包含する。ウレタンまたはチオウレタン基に加え、そのようなポリウレタンポリマーは、特に尿素基を有することもできる。
【0017】
本明細書では一方で、「ポリマー」という用語は、化学的に均一であるが重合度、分子量、および鎖長が異なる高分子の集団を包含し、前記集団は、ポリ反応(重合、重付加、重縮合)によって生成された。他方、この用語は、ポリ反応から得られた高分子のそのような集団の誘導体も包含し、すなわち、例えば特定の高分子の官能基の付加または置換などの反応によって得られた化合物、および化学的に均一なまたは化学的に一貫していないものにすることができる化合物も包含する。さらにこの用語は、いわゆるプレポリマーも包含し、すなわち、その官能基が高分子の生成に関与する反応性オリゴマープレポリマーも包含する。
【0018】
本明細書では、「ポリイソシアネート」という用語は、モノマージイソシアネート、オリゴマーポリイソシアネート、またはイソシアネート基を有する比較的高い分子量のポリマーであるか否かに関わらず、2個以上のイソシアネート基を有する化合物を包含する。
【0019】
そのアミノまたはイソシアネート基がそれぞれの場合に脂肪族、脂環式、またはアリール−脂肪族基にのみ結合しているアミンまたはイソシアネートを、「脂肪族」と呼び;したがってこれらの基を、脂肪族アミノまたはイソシアネート基と呼ぶ。
【0020】
そのアミノまたはイソシアネート基がそれぞれの場合に芳香族基に結合しているアミンまたはイソシアネートを、「芳香族」と呼び;したがってこれらの基を、芳香族アミノまたはイソシアネート基と呼ぶ。
【0021】
本明細書では、20℃から25℃の範囲の温度を「室温」と呼ぶ。
【0022】
本明細書では、HY、P、PI、PUP、K1、K2、S1、またはS2などの太字で標識された符号は、より良い読解および識別のためにのみ使用される。
【0023】
カルボン酸ヒドラジドは、室温で固体でありかつ例えばカルボン酸とヒドラジンまたはヒドラジン水和物との縮合によって得ることができる、比較的溶解度の低い、典型的には毒性の少ない結晶性物質である。
【0024】
第1の実施形態では、適切なカルボン酸ヒドラジドは、一方で、特にラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、シアノ酢酸、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、4−ニトロフェノキシ酢酸、および1−ナフチル酢酸などの脂肪族およびアリール−脂肪族酸のモノカルボン酸のヒドラジド;および他方では、特に安息香酸、2−、3−、および4−クロロ安息香酸、2−、3−、および4−ブロモ安息香酸、2−および4−トルイル酸、2−、3−、および4−ニトロ安息香酸、サリチル酸、4−tert−ブチル−安息香酸、4−メトキシ安息香酸、4−エトキシ安息香酸、4−トリフルオロ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸、異性体ジクロロ安息香酸、ジメトキシ安息香酸、およびトリメトキシ安息香酸、テレフタル酸モノメチルエステル、1−ナフチルカルボン酸、3−ヒドロキシ−2−ナフチルカルボン酸、4−ビフェニルカルボン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、2−チオフェンカルボン酸、4−イミダゾールカルボン酸、および3−ピラゾールカルボン酸などの芳香族および複素芳香族モノカルボン酸のヒドラジドである。
【0025】
別の実施形態では、適切なカルボン酸ヒドラジドはポリカルボン酸のヒドラジドであり、例えば、具体的には、グルタル酸、ピメリン酸、およびテレフタル酸などのジカルボン酸のモノヒドラジドおよびジヒドラジド;ベンゼントリカルボン酸などのトリカルボン酸のモノ、ジ、およびトリヒドラジド;ならびに、特に好ましくは、以下に記述されるポリカルボン酸ヒドラジドHYである。
【0026】
カルボン酸ヒドラジドは、好ましくは微粒子の形をとる。特に、120μm未満の平均粒径、好ましくは0.5から100μm、特に好ましくは0.5から50μmの平均粒径を有する。
【0027】
カルボン酸ヒドラジドとして、融点が160℃から260℃の範囲、特に175℃から240℃の範囲のカルボン酸ヒドラジドが好ましい。これらは、特に、4−ニトロフェノキシ酢酸、1−ナフチル酢酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、1−ナフチルカルボン酸、4−ビフェニルカルボン酸、3−ヒドロキシ−2−ナフチルカルボン酸、ベンゾチオフェン−2−カルボン酸、イミダゾール−4−カルボン酸、4−ニトロ安息香酸、4−クロロ安息香酸、異性体ジクロロ安息香酸のヒドラジド、ならびに以下に記述されるポリカルボン酸ヒドラジドHYである。
【0028】
ポリカルボン酸ヒドラジドHYは、カルボン酸ヒドラジドとして特に好ましい。ポリカルボン酸ヒドラジドHYは、160℃から260℃の範囲、特に175℃から240℃の範囲の融点を有し、特に式(I)を有する
【0029】
【化1】

【0030】
(式中、
Wは、(p+q)−有機基の値を表し;
pは、1または2または3を表し、
oは、0または1または2を表し、
但し(p+q)が2または3または4を表すことを条件とし;
nは0または1を表す。)。
【0031】
nが0を表す式(I)のポリカルボン酸ヒドラジドHYは、シュウ酸から得られる。この場合、合計(p+q)は2を表す。
【0032】
ポリカルボン酸ヒドラジドHYは、例えば、適切なポリカルボン酸とヒドラジンまたはヒドラジン水和物との縮合によって得ることができ、この場合ポリカルボン酸としては、特にシュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、およびイソフタル酸が適している。
【0033】
ポリカルボン酸ヒドラジドHYは、好ましくはジカルボン酸ヒドラジドであり、特にジカルボン酸ヒドラジドである。
【0034】
シュウ酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、およびイソフタル酸ジヒドラジドは、ポリカルボン酸ヒドラジドHYとして特に適している。
【0035】
ポリカルボン酸ヒドラジドHYは、シュウ酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、およびイソフタル酸ジヒドラジドからなる群から選択されることが特に好ましい。
【0036】
ポリカルボン酸ヒドラジドHYとしては、シュウ酸ジヒドラジドおよびアジピン酸ジヒドラジドが最も好ましい。
【0037】
最高約60℃の温度での保存に適するように設計された、単一成分ポリウレタン接着剤は、特に、ポリカルボン酸ヒドラジドHYと共に配合することもできる。
【0038】
本発明において、カルボン酸ヒドラジドは、硬化したポリウレタン接着剤の構成成分であり、接着剤中で遊離形態で存在し、すなわち化学的に変化していないヒドラジド基を有して存在しており、したがって接着剤のポリウレタンポリマー中に組み込まれておらず、接着剤中に固体として分散している。接着剤を加熱すると、カルボン酸ヒドラジドは、驚くほどにポリウレタンポリマーと反応し始める。前記ポリマーは、ウレタンおよび/またはチオウレタンおよび/または尿素基を典型的には含有し、このウレタン基は、特に、イソシアネート基とヒドロキシル基との反応から得られ、チオウレタン基は特にイソシアネート基とメルカプト基との反応から得られ、尿素基は特にイソシアネート基とアミノ基または水との反応から得られる。カルボン酸ヒドラジドとポリウレタンポリマーとの熱開始反応は、おそらく、高い求核性のヒドラジド基によって攻撃を受け開環するウレタン、チオウレタン、および/または尿素基を介して本質的には生じ、例えば、式(II)のアシルセミカルバジド基、ならびに遊離ヒドロキシル、メルカプト、および/またはアミノ基を生成することができる。ウレタン、チオウレタン、および/または尿素基の開環によって、ポリウレタンポリマーの鎖長または分子量は減少し;前記ポリマーは、鎖中のカルボン酸ヒドラジドとの反応によって切断される。開環したウレタン、チオウレタン、および/または尿素基の数に基づいて、硬化したポリウレタン接着剤の機械的強度に多かれ少なかれ顕著な降下がもたらされ、それによって接着剤化合物の剥離がもたらされる。次いでこれらの基は、剥離前よりも著しく少ない労力で機械的に分離することができる。
【0039】
【化2】

【0040】
剥離するために、カルボン酸ヒドラジドを含有する硬化したポリウレタン接着剤を、加熱する。接着剤化合物を剥離するために接着剤が加熱される温度は、下記において「剥離温度」とも呼ばれる。
【0041】
剥離温度は、特に少なくとも80℃であり、好ましくは100℃よりも高く、特に好ましくは120℃から240℃の範囲にあり、最も好ましくは140℃から220℃の範囲にある。
【0042】
剥離は、「使用温度」、すなわち接着剤化合物が使用される場合に生じる最高温度よりも、かなり高い温度でのみ行うことが重要であり、したがって接着剤は、その接着力を永続的に維持するようになり、無意識のうちに時期尚早の剥離がなされないようになる。内部空間での結合では、最高約50℃の使用温度を予測することができる。そのような適用例では、80℃から100℃の範囲の剥離温度が適している。しかしその範囲外で使用される接着剤の適用例では、より高い使用温度を予測することができる。例えば自動車、バス、または列車の車両における接着剤化合物は、約80℃の使用温度を有する。そのような適用例の場合、剥離温度は好ましくは100℃よりも高く、特に120℃から240℃の範囲であり、最も好ましくは140℃から220℃の範囲である。これらの比較的高い使用または剥離温度では、融点が160℃から260℃の範囲にあり、特に175℃から240℃の範囲にあるカルボン酸ヒドラジドが特に適している。これらのカルボン酸ヒドラジドは、硬化したポリウレタン接着剤において、約100℃未満の温度範囲でかなりの程度まで非反応性であるが、これはおそらく、ポリウレタン接着剤に対する溶解度が低く、かつその融点が高いからである。しかし、100℃よりも高い温度に加熱すると、これらカルボン酸ヒドラジドは、おそらくは記述された方法でポリウレタンポリマーと反応し始め;ほとんどの場合の反応は、カルボン酸ヒドラジドの融点よりも明らかに低い温度で既に開始する。
【0043】
モノカルボン酸ヒドラジドに比べ、ポリカルボン酸ヒドラジドHYは、ポリウレタン接着剤に対してさらにより低い溶解度を有し、したがってカルボン酸ヒドラジドの同様の融点により、一般にはより高い温度でのみポリウレタンポリマーと反応し始めるという利点を有する。
【0044】
硬化したポリウレタン接着剤中のカルボン酸ヒドラジドの量は、ヒドラジド基とウレタン、チオウレタン、および尿素基の合計との間の比が0.2から3になるように、特に0.5から2になるように、有利に設定される。この場合、エナミン、オキサゾリジン、アルジミン、またはケチミンなどの特に潜在性アミン硬化剤由来のアルデヒドまたはケト基など、ヒドラジド基に対してさらにより反応性のあるその他の基が、接着剤中に存在するか否かを考慮に入れることができる。この場合、ヒドラジド基の数は、そのような追加の反応性基の数だけ増加すべきであるが、それはヒドラジド基の一部が、保存中に、または遅くとも接着剤が加熱されてポリウレタンポリマー鎖の切断を介した接着剤化合物の剥離に利用できなくなるときまで、これら追加の反応性基と反応できるからである。
【0045】
したがって、硬化したポリウレタン接着剤中のカルボン酸ヒドラジドは、比(nHY−nAK)/nUHが0.2から3、特に0.5から2になるような量で存在することが有利であり、
但し、nHYは、硬化したポリウレタン接着剤中に存在するヒドラジド基の数を表し、
AKは、硬化したポリウレタン接着剤中に存在するアルデヒドおよびケト基の数を表し、
UHは、硬化したポリウレタン接着剤中に存在するウレタン、チオウレタン、および尿素基の数を表す。
【0046】
接着剤化合物の剥離では、カルボン酸ヒドラジドが微細に分散された形で硬化したポリウレタン接着剤中に存在する場合、したがって加熱中に、接着剤化合物の剥離のために可能な限り接着剤中に一様に利用可能であることが有利である。
【0047】
少なくとも1種のカルボン酸ヒドラジドを含有する硬化したポリウレタン接着剤は、例えば、少なくとも1種のポリイソシアネートおよび少なくとも1種のカルボン酸ヒドラジドを含む硬化組成物を、この組成物の硬化前および硬化中にカルボン酸ヒドラジドがポリイソシアネートとかなりの程度まで反応しないことが確実になるよう十分低い温度で硬化することによって、得ることができる。硬化温度は、好ましくは60℃よりも低く、特に室温の範囲内である。融点が160℃から260℃の範囲、特に175℃から240℃の範囲にあるカルボン酸ヒドラジド、特にポリカルボン酸ヒドラジドHYを使用する場合、このポリカルボン酸ヒドラジドHYは、80℃の範囲までのより高い硬化温度であっても、ポリイソシアネートに比べて本質的に非反応性のままであり、したがってかなりの程度まで、硬化したポリウレタン接着剤中に遊離形態であり続け、この接着剤を含む接着剤化合物の剥離に利用可能である。
【0048】
硬化組成物において、カルボン酸ヒドラジドは、比(nHY−nAK)/nNCOが0.2から3、特に0.5から2になるような量で存在することが有利であり、
但し、nHYは、組成物中に存在するヒドラジド基の数を表し、
AKは、存在し、組成物中に放出することができる、アルデヒドおよびケト基の数を表し、
NCOは、組成物中に存在するイソシアネート基の数を表す。
【0049】
ポリイソシアネートは、好ましくはポリイソシアネートPである。
【0050】
一実施形態において、ポリイソシアネートPは、イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーPUPである。
【0051】
適切なポリウレタンポリマーPUPは、少なくとも1種のポリオールと少なくとも1種のポリイソシアネートとの反応から、特に入手可能である。この反応は、ポリオールおよびポリイソシアネートが従来の方法による反応、例えば50℃から100℃の温度で、任意選択で適切な触媒の同時使用による反応に供されるので、実施することができ、ポリイソシアネートは、そのイソシアネート基が、ポリオールのヒドロキシル基に対して化学量論的に過剰に存在するように計量される。ポリイソシアネートは、NCO/OH比が1.3から5、特に1.5から3で維持されるように計量されることが有利である。「NCO/OH比」は、使用されるイソシアネート基の数と、使用されるヒドロキシル基の数との比と定義される。ポリオールのヒドロキシル基の全ての反応の後、遊離イソシアネート基の含量0.5から15重量%、特に好ましくは0.5から5重量%が、ポリウレタンポリマーPUP中に残ることが好ましい。
【0052】
任意選択で、ポリウレタンポリマーPUPは、軟化剤の同時使用により生成することができ、この使用される軟化剤は、イソシアネートに比べていかなる反応性基も含有していないものである。
【0053】
ポリウレタンポリマーPUPを生成するためのポリオールとして、例えば、下記の市販されているポリオールまたはこれらの混合物を使用することができる:
− ポリオキシアルキレンポリオール、同様にポリエーテルポリオールまたはオリゴエーテロールが挙げられ、これらは、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,2−または2,3−ブチレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフラン、またはこれらの混合物の重合生成物であり、2個以上の活性水素原子を有する出発分子、例えば水、アンモニア、またはいくつかのOHもしくはNH基を有する化合物、例えば1,2−エタンジオール、1,2−および1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、異性体ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコール、異性体ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、グリセロール、アニリン、ならびに上述の化合物の混合物などを使用して、任意選択で重合されたものである。例えば、いわゆる複金属シアン化物錯体触媒(DMC触媒)を使用して生成された、不飽和度が低い(ASTM D−2849−69に従い測定され、かつポリオール1グラム当たりの不飽和のミリ当量(mEq/g)で示される。)ポリオキシアルキレンポリオールと、例えば、NaOH、KOH、CsOH、またはアルカリアルコレートなどの陰イオン触媒を使用して生成された、不飽和度がより高いポリオキシアルキレンポリオールとの両方を、使用することができる。
ポリオキシアルキレンジオールまたはポリオキシアルキレントリオール、特にポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンジおよびトリオールが、特に適している。
不飽和度が0.02mEq/g未満であり分子量が1,000〜30,000g/molの範囲であるポリオキシアルキレンジオールおよびトリオール、ならびに分子量が400〜8,000g/molであるポリオキシプロピレンジオールおよびトリオールが特に適している。
いわゆるエチレンオキシド末端(「EO−エンドキャップ」、エチレンオキシド−エンドキャップ)ポリオキシプロピレンポリオールも、特に適している。この後者は、特にポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンポリオールであり、例えば、ポリプロポキシル化反応が終了した後に、純粋なポリオキシプロピレンポリオールで、特にポリオキシプロピレンジオールおよびトリオールで得られるものであり、エチレンオキシドでさらにアルコキシル化されて、第1級ヒドロキシル基を有している。
− スチレン−アクリロニトリル−またはアクリロニトリル−メチルメタクリレート−プラグポリエーテルポリオール。
− 公知の方法、特にヒドロキシカルボン酸の重縮合または脂肪族および/または芳香族ポリカルボン酸と2価もしくは多価アルコールとの重縮合により生成された、オリゴエステロールとも呼ばれるポリエステルポリオール。
【0054】
ポリエステルポリオールとして特に適しているものは、2価から3価、特に2価のアルコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,12−ヒドロキシステアリルアルコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ダイマー脂肪酸ジオール(ダイマージオール)、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、グリセロール、1,1,1−トリメチロールプロパン、または上述のアルコールの混合物と、有機ジまたはトリカルボン酸、特にジカルボン酸またはその無水物もしくはエステル、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、ダイマー脂肪酸、フタル酸、フタル酸無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、ヘキサヒドロフタル酸、トリメリット酸、およびトリメリット酸無水物、または上述の酸の混合物などから生成されたもの、ならびに、例えばε−カプロラクトンなどのラクトンおよび上述の2価または3価アルコールなどの出発剤からなるポリエステルポリオールである。
【0055】
特に適切なポリエステルポリオールは、ポリエステルジオールである。
− ポリカーボネートポリオールであり、例えば、ポリエステルポリオールの生成に使用される上述のアルコールと、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、またはホスゲンとの反応によって入手可能である。
− 上述のタイプのポリエーテル、ポリエステル、および/またはポリカーボネート構造を備えた少なくとも2つの異なるブロックを有する、少なくとも2種のヒドロキシル基担持ブロックコポリマーであり、特にポリエーテル−ポリエステルポリオールである。
− ポリアクリレートおよびポリメタクリレートポリオール。
− ポリヒドロキシ官能性油脂、例えば天然油脂、特にヒマシ油;または、天然油脂の化学変化によって得られたポリオール−いわゆるオレオケミカルポリオール、例えば不飽和油のエポキシド化とその後に続くカルボン酸またはアルコールによる開環によって得られたエポキシポリエステルまたはエポキシポリエーテル、または、不飽和油のヒドロホルミル化および水素化によって得られたポリオール;または、アルコール分解もしくはオゾン分解などの分解プロセスとその後に続く化学架橋によって、例えばそのように得られた分解生成物またはその誘導体の再エステル化またはダイマー化によって、天然油脂から得られたポリオール。天然油脂の適切な分解生成物は、特に脂肪酸および脂肪アルコール、ならびに脂肪酸エステルであり、特に、例えばヒドロキシ脂肪酸エステルを形成するためにヒドロホルミル化および水素化によって誘導体化することができメチルエステル(FAME)である。
− オリゴヒドロカルボノールとも呼ばれるポリ炭化水素ポリオール、例えば、ポリヒドロキシ官能性ポリオレフィン、ポリイソブチレン、ポリイソプレンなど;ポリヒドロキシ官能性エチレン−プロピレン−、エチレン−ブチレン−、またはエチレン−プロピレン−ジエンコポリマーであって、例えばKraton Polymers社製であるようなもの;特に陰イオン重合からも生成することができる、ジエン、特に1,3−ブタジエンのポリヒドロキシ官能性ポリマー;1,3−ブタジエンなどのジエンまたはジエン混合物と、スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、イソブチレン、およびイソプレンなどのビニルモノマーとからなるポリヒドロキシ官能性コポリマー、例えば、ポリヒドロキシ官能性アクリロニトリル/ブタジエンコポリマーであって、例えばエポキシドまたはアミノアルコールおよびカルボキシ末端アクリロニトリル/ブタジエンコポリマーから生成できるようなもの(例えば、Nanoresins AG, GermanyからHypro(登録商標)(以前はHycar(登録商標))CTBNおよびCTBNXおよびETBNという名称で市販されているもの、またはEmerald Performance Materials LLC);ならびにジエンの水素化ポリヒドロキシ官能性ポリマーまたはコポリマー。
【0056】
これら上述のポリオールは、好ましくは、250〜30,000g/molの平均分子量、特に400〜20,000g/molの平均分子量を有し、これらのポリオールは、好ましくは、1.6から3の範囲の平均OH官能価を有する。
【0057】
ポリオールとしては、ポリエーテル−、ポリエステル−、ポリカーボネート−、およびポリアクリレートポリオール、好ましくはジオールおよびトリオールが好ましい。ポリエーテルポリオール、特にポリオキシプロピレン−およびポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンポリオール、ならびに液体ポリエステルポリオールおよびポリエーテル−ポリエステルポリオールが特に好ましい。
【0058】
これら上述のポリオールに加え、少量の低分子2価または多価アルコール、例えば1,2−エタンジオール、1,2−および1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、異性体ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコール、異性体ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、ダイマー脂肪アルコール、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、キシリトールやソルビトール、マンニトールなどの糖アルコール、サッカロースなどの糖、より高い価数の他のアルコール、上述の2価および多価アルコールの低分子アルコキシル化生成物、ならびに上述のアルコールの混合物などを、ポリウレタンポリマーPUPの生成で同時に使用することができる。また、平均OH官能価が3よりも大きい少量のポリオール、例えば糖ポリオールを同時に使用することもできる。
【0059】
芳香族または脂肪族ポリイソシアネート、特にジイソシアネートは、イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーPUPを生成するためのポリイソシアネートとして使用される。
【0060】
芳香族ポリイソシアネートとしては、特に下記の物質、すなわち、モノマージ−またはトリイソシアネート、例えば2,4−および2,6−トルイレンジイソシアネートおよびこれら異性体(TDI)の任意の混合物、4,4’−、2,4’−、および2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよびこれら異性体(MDI)の任意の混合物、MDIおよびMDIホモログ(ポリマーMDIまたはPDMI)からなる混合物、1,3−および1,4−フェニレンジイソシアネート、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−ジイソシアナトベンゼン、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニル(TODI)、ジアニシジンジイソシアネート(DADI)、1,3,5−トリス−(イソシアナトメチル)−ベンゼン、トリス−(4−イソシアナトフェニル)−メタン、トリス−(4−イソシアナトフェニル)−チオホスフェート、上述のイソシアネートのオリゴマーおよびポリマー、ならびに上述のイソシアネートの任意の混合物が適している。MDIおよびTDIが好ましい。
【0061】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、特に下記の物質、すなわち、モノマージ−またはトリイソシアネート、例えば1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレン−1,5−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−および2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカメチレンジイソシアネート、リシンおよびリシンエステルジイソシアネート、シクロヘキサン1,3−および−1,4−ジイソシアネート、1−メチル−2,4−および−2,6−ジイソシアナト−シクロヘキサン、およびこれら異性体(HTDIまたはHTDI)の任意の混合物、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチル−シクロヘキサン(=イソホロンジイソシアネートまたはIPDI)、パーヒドロ−2,4’−および−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDIまたはH12MDI)、1,4−ジイソシアナト−2,2,6−トリメチルシクロヘキサン(TMCDI)、1,3−および1,4−ビス−(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、m−およびp−キシリレンジイソシアネート(m−およびp−XDI)、m−およびp−テトラメチル−1,3−および−1,4−キシリレンジイソシアネート(m−およびp−TMXDI)、ビス−(1−イソシアナト−1−メチルエチル)−ナフタレン、ダイマーおよびトリマー脂肪酸イソシアネート、例えば3,6−ビス−(9−イソシアナトノニル)−4,5−ジ−(1−ヘプテニル)−シクロヘキセンジメチルジイソシアネート、α,α,α’,α’,α”,α”−ヘキサメチル−1,3,5−メシチレントリイソシアネート、上述のイソシアネートのオリゴマーおよびポリマー、ならびに上述のイソシアネートの任意の混合物が適している。HDIおよびIPDIが好ましい。
【0062】
芳香族イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーPUPが好ましい。
【0063】
別の実施形態では、ポリイソシアネートPは、モノマージ−もしくはトリイソシアネート、またはモノマージイソシアネートのオリゴマー、またはモノマージイソシアネートの誘導体の形をとるポリイソシアネートPIであり、モノマージ−またはトリイソシアネートとしては、特に、上述の芳香族および脂肪族ジ−およびトリイソシアネートが適している。
【0064】
ポリイソシアネートPIとしては、下記の物質、すなわち、モノマージイソシアネート、特にHDI、IPDI、TDI、およびMDIのオリゴマーまたは誘導体が特に適している。市販のタイプは、特にHDIビウレット、例えばDesmodur(登録商標)N 100およびN 3200(Bayer製)、Tolonate(登録商標)HDBおよびHDB−LV(Rhodia製)、およびDuranate(登録商標)24A−100(旭化成製)など;HDIイソシアヌレート、例えばDesmodur(登録商標)N 3300、N 3600、およびN 3790 BA(全てBayer製)、Tolonate(登録商標)HDT、HDT−LV、およびHDT−LV2(Rhodia製)、Duranate(登録商標)TPA−100およびTHA−100(旭化成製)、およびCoronate(登録商標)HX(日本ポリウレタン製)など;HDIウレトジオン、例えばDesmodur(登録商標)N 3400(Bayer製)など;HDI−イミノオキサジアジンジオン、例えばDesmodur(登録商標)XP 2410(Bayer製)など;HDI−アロファネート、例えばDesmodur(登録商標)VP LS 2102(Bayer製)など;IPDIイソシアヌレート、例えば溶液状態にあるDesmodur(登録商標)Z 4470(Bayer製)または固体の形をとるVestanat(登録商標)T1890/100(Degussa製)など;TDIオリゴマー、例えばDesmodur(登録商標)IL(Bayer製)など;ならびにTDI/HDIをベースにした混合イソシアヌレート、例えばDesmodur(登録商標)HL(Bayer製)などが特に適している。さらに、下記の物質、すなわち、液体形態のMDI(いわゆる「変性MDI」)であってMDIとMDI誘導体との混合物であるもの、例えばMDIカルボジイミドまたはMDIウレトンイミンまたはMDIウレタンなどであり、例えばDesmodur(登録商標)CD、Desmodur(登録商標)PF、Desmodur(登録商標)PC(全てBayer製)などの商標名で知られるもの、ならびにMDIおよびMDIホモログ(ポリマーMDIまたはPMDI)の混合物であって、Desmodur(登録商標)VL、Desmodur(登録商標)VL50、Desmodur(登録商標)VL R10、Desmodur(登録商標)VL R20、およびDesmodur(登録商標)VKS 20F(全てBayer製)、Isonate(登録商標)M 309、Voranate(登録商標)M 229、およびVoranate(登録商標)M 580(全てDow製)、またはLupranat(登録商標)M 10 R(BASF製)などの商標名で入手可能なものなどが、室温では特に適している。
【0065】
上述のオリゴマーポリイソシアネートPIは、実際に、通常は異なるオリゴマー化度および/または化学構造を有する物質の混合物である。これらの物質は、2.1から4.0の平均NCO官能価を有し、特にイソシアヌレート、イミノオキサジアジンジオン、ウレトジオン、ウレタン、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトンイミン、またはオキサジアジントリオン基を含有する。これらのオリゴマーは、好ましくは、低含量のモノマージイソシアネートを有する。
【0066】
ポリイソシアネートPIとしては、室温で液体であるMDIの形態、ならびにHDI、IPDI、およびTDIのオリゴマー、特にイソシアヌレートおよびビウレットが好ましい。
【0067】
別の実施形態では、ポリイソシアネートPは、先に述べたように、少なくとも1種のポリウレタンポリマーPUPと少なくとも1種のポリイソシアネートPIとからなる混合物である。
【0068】
硬化組成物は、単一成分としてまたは2成分組成物として存在することができる。
【0069】
好ましい実施形態では、硬化組成物は、単一成分組成物である。
【0070】
本明細書では、組成物の全ての構成成分が同じドラム内で混合されて保存されており、かつ長時間にわたり室温で長い保存寿命を有しており、したがって保存によってその付着または使用特性が変化せずまたはごく僅かしか変化せず、付着により水分の動作によって硬化する硬化組成物を、「単一成分」と呼ぶ。
【0071】
単一成分組成物中で、カルボン酸ヒドラジドは、先に述べたようにポリカルボン酸ヒドラジドHYの形で存在することが好ましく、シュウ酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、およびイソフタル酸ジヒドラジドからなる群から特に選択される。
【0072】
ポリカルボン酸ヒドラジドHYは、最高約60℃の温度でイソシアネート基と反応しないので、単一成分組成物の成分として特に適しており、したがってそのような単一成分組成物は、良好な保存寿命を有する。より低い融点を有するカルボン酸ヒドラジドは、より低い温度でイソシアネート基と既に反応する可能性があり、その結果、粘度を強力に増大させ、最終的には、対応する単一成分組成物の保存中にゲル化する可能性がある。また、融点が160℃から260℃の範囲にあるモノカルボン酸ヒドラジドは、保存中にさらに低い温度でイソシアネート基と反応する可能性がある。これはおそらく、組成物中でのモノカルボン酸ヒドラジドの溶解度が、同等の融点を有するポリカルボン酸ヒドラジドの場合よりも一般に高いからであり、したがって、その融点が高いにも関わらず、さらに低い温度で、モノカルボン酸ヒドラジドはイソシアネート基の反応体として利用可能である。
【0073】
単一成分組成物中で、ポリイソシアネートPは、イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーPUPとして存在することが好ましい。
【0074】
単一成分組成物中で、ポリイソシアネートPは、組成物全体に対して5から95重量%の量で通常は存在し、好ましくは10から90重量%の量で存在する。充填された組成物中で、すなわち充填剤を含有する組成物中で、ポリイソシアネートPは、組成物全体に対して好ましくは5から60重量%の量で存在し、特に10から50重量%の量で存在する。
【0075】
単一成分組成物は、加水分解により活性化することができるブロックアミンの形をしたいわゆる潜在性硬化剤、特にオキサゾリジノまたはアルジミノ基を有する物質を、任意選択で含有する。2成分ポリウレタン組成物の構成成分として通常使用されるような第1級脂肪族ポリアミンと、適切なアルデヒドとの縮合生成物が、特に適している。特に適しているのはアルジミノ基を有するポリアルジミンであり、これはα−位のカルボニル基を表すC原子上に水素原子を全く保持しないものであり、したがって互変異性体化してエナミノ基を形成することができない。そのようなアルジミノ基は、イソシアネート基に対して水分を含まない条件下で極端に低い反応性しか示さずまたは全く反応性を示さない、したがって一般に、遊離イソシアネート基と共に保存するのに特に十分適している、特に十分に保護された(「ブロック」)第1級アミノ基である。そのような潜在性硬化剤が、イソシアネート基の存在下で水分と接触するようになる場合、この硬化剤は、アルデヒドの加水分解および放出の下でイソシアネート基と反応して、尿素基を形成する。加水分解するときに、臭いが少なくまたは臭いがない低揮発性アルデヒドを放出する潜在性硬化剤、例えば2,2−ジメチル−3−ラウロイルオキシ−プロパナルなども、特に適している。そのような潜在性硬化剤から出発して、素早く硬化して結合を形成せずかつ臭いがほとんどないか全くない単一成分ポリウレタン接着剤が入手可能であり、この性質は、多くの適用例で、特に内部空間で、大きな利点となるものである。
【0076】
単一成分組成物は、追加の構成成分、特にポリウレタン組成物で通常使用される助剤および添加剤、例えば下記の物質を、任意選択で含有する:
− 軟化剤、特にカルボン酸エステルであって、フタレート、特にフタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、またはフタル酸ジイソデシル、アジペート、特にアジピン酸ジオクチル、アゼレート、およびセバケート、有機リン酸およびスルホン酸エステルまたはポリブテン;
− 非反応性熱可塑性ポリマー、例えば不飽和モノマーのホモまたはコポリマー、特にエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、イソプレン、酢酸ビニル、およびアルキル(メタ)アクリレート、特にポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリイソブチレン、エチレンビニルアセテートコポリマー(EVA)、およびアタクチックポリ−α−オレフィン(APAO)を含む群から得られたものなど;
− 溶媒、
− 無機および有機充填剤、特に、摩砕され沈殿させた炭酸カルシウムであって、任意選択で脂肪酸でコーティングされたもの、特にステアレート、バライト(BaSO、硫酸バリウムとも呼ばれる。)、石英粉、焼成カオリン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸、特に熱分解プロセスから高度に分散されたケイ酸、カーボンブラック、特に工業的に生成されたカーボンブラック(以下において「カーボンブラック」と呼ぶ。)、PVC粉末、中空球体;
− 繊維、例えばポリエチレンで作製されたもの;
− 顔料、例えば二酸化チタンまたは酸化鉄;
− 触媒、特に有機スズ化合物、例えばジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズジアセチルアセトネート、およびジオクチルスズジラウレートなど、ビスマス化合物、例えばビスマストリオクトエートおよびビスマス−トリス(ネオデカノエート)など;tert−アミノ基を含有する化合物、特に2,2’−ジモルホリノジエチルエーテルおよび1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン;および酸、特に安息香酸、サリチル酸、または2−ニトロ安息香酸;
− レオロジー調節剤、例えば、特に増粘剤またはチキソトロープ剤、例えば尿素化合物、ポリアミドワックス、ベントナイト、または発熱性ケイ酸;
− 乾燥剤、例えば、モレキュラーシーブ、酸化カルシウム、p−トシルイソシアネートなどの高度に反応性のあるイソシアネート、オルトギ酸エステル、テトラエトキシシランなどのアルコキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのオルガノアルコキシシラン、およびシラン基に対してα−位に官能基を有するオルガノアルコキシシランなど、
− 接着促進剤、特に、オルガノアルコキシシラン(「シラン」)、例えばエポキシシラン、ビニルシラン、(メタ)アクリルシラン、イソシアナトシラン、カルバマトシラン、アルキルシラン、S−(アルキルカルボニル)−メルカプトシラン、およびアルジミノシランなど、ならびにこれらのシランのオリゴマー形態;
− 熱、光、および紫外線から保護するための安定剤;
− 難燃性物質;
− 界面活性剤、例えば特に湿潤剤、流れ増強剤、換気剤、または発泡防止剤など;
− 殺虫剤、例えば殺藻剤、殺菌剤、または真菌の増殖を阻害する物質など。
【0077】
単一成分組成物は、任意選択でさらに、組成物の熱の伝導率を増大させる材料を含有し、かつ/または、その圧電性、強磁性、もしくは超常磁性により、この組成物は、交番磁界および/または電界、特にマイクロ波、誘導、またはNIRを印加することにより加熱される。このため、一般に限られた熱伝導率を有する組成物は、より素早く加熱され、したがって、硬化した組成物または硬化したポリウレタン接着剤を含む接着剤化合物は、より素早く剥がされる。そのような材料としては、下記の物質、すなわち、特に黒鉛、導電性カーボンブラック、および金属粉末;石英、トルマリン、チタン酸バリウム、硫酸リチウム、酒石酸カリウム(ナトリウム)、酒石酸エチレンジアミン、および鉛−ジルコニウム−チタネートなどの圧電剤;金属アルミニウム、コバルト、鉄、ニッケル、およびこれらの合金などの強磁性または超常磁性剤、n−マグヘマイト(γ−Fe)、n−マグネタイト(Fe)、ならびに一般式MFeのフェライトなどの金属酸化物であって、Mが、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル、マグネシウム、カルシウム、またはカドミウムの群から得られる2価の金属を表すものが適している。この材料は、微粒子の形で好ましくは存在し、その平均粒径は120μmよりも小さく、特に50μmよりも小さい。超常磁性効果を使用するには、平均粒径が好ましくは50nmよりも小さく、特に30nmよりも小さい。
【0078】
そのような追加の構成成分を使用する場合、この構成成分が、組成物中でのカルボン酸ヒドラジド、特にポリカルボン酸ヒドラジドHYの溶解度を過度に増大させないことを、確実にすることが有利である。
【0079】
さらに、そのような追加の構成成分を使用する場合、これらの一部が単一成分組成物の保存寿命を大きく損なわないことを、確実にすることが有利である。これは、保存中にこれら構成成分が、架橋をもたらす反応をかなりの程度まで引き起こすべきではないことを意味する。特に、上述の内容は、これら構成成分の全てが水を全く含有すべきでなく、または最大でもごく微量の水しか含有すべきでないことを意味する。ある構成成分を、組成物中に混合する前に化学的にまたは物理的に乾燥することが望ましいと考えられる。
【0080】
単一成分組成物は、少なくとも1種の触媒を好ましくは含有する。
【0081】
単一成分組成物は、水分を含まない条件下で生成され保存される。この組成物は長い保存寿命を有し、すなわち、例えばドラム、バケット、バッグ、カートリッジ、またはボトルなどの適切なパッケージングまたはアレンジメント内に、水分を含まない条件下で、例えば数カ月間にわたり、その付着特性をまたは硬化後のその性質をその使用に関連する程度まで変化させることなく、保存することができる。通常、保存寿命は、粘度または押出し力を測定することによって決定される。
【0082】
硬化するのに必要とされる水分は、空気(大気湿度)から得ることができ、あるいは組成物に、例えば平滑剤を塗ることによりまたは噴霧することによる水含有成分への接触によって得ることができ、または水分は、例えば静的ミキサで混合される、例えば水性ペーストの形をした水含有成分を付着させることによって、組成物に添加することができる。
【0083】
別の実施形態では、硬化組成物が2成分組成物である。
【0084】
本明細書では、組成物の構成成分が、互いに分離しておりかつそれぞれの場合に個別のバレルで長い保存寿命で保存することができる、2成分として存在している硬化組成物を、「2成分」と呼ぶ。組成物を付着する直前になってからまたはその最中に、2成分を一緒に混合し、その後すぐに、混合した組成物を、任意選択で水分の関与により硬化する。
【0085】
2成分組成物は、第1の成分K1と第2の成分K2とからなり、この第1の成分K1はポリイソシアネートPを含有し、第2の成分K2はポリオールおよび/またはポリチオールおよび/またはポリアミンを含有する。カルボン酸ヒドラジドは、成分K1におよび/または成分K2に含有させることができる。カルボン酸ヒドラジドは、好ましくは成分K2の構成成分である。
【0086】
2成分組成物において、カルボン酸ヒドラジドは、好ましくは160℃から260℃の範囲の融点を有する。
【0087】
カルボン酸ヒドラジドがモノカルボン酸ヒドラジドの形で存在する場合、このモノカルボン酸ヒドラジドは、成分K2の構成成分に特に適している。
【0088】
特に好ましくは、カルボン酸ヒドラジドは、既に述べたようにポリカルボン酸ヒドラジドHYの形で存在し、特に、シュウ酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、およびイソフタル酸ジヒドラジドからなる群から選択される。
【0089】
2成分組成物において、ポリイソシアネートPは、既に述べたようにポリイソシアネートPIとして好ましくは存在する。
【0090】
ポリウレタンポリマーPUPの生成に関して既に先に記述されたものと同じポリオール、ならびにポリウレタンポリマーPUPの生成で同時に使用されることに関して既に先に記述された低分子2価または多価アルコールは、成分K2中のポリオールとして適している。
【0091】
例えばThiokol(登録商標)という商標名で知られている、特にLP−3、LP−33、LP−980、LP−23、LP−55、LP−56、LP−12、LP−31、LP−32、およびLP−2などのタイプ(Morton Thiokol;例えばSPI Supplies、USAから、または東レファインケミカル、日本から入手可能)の液体メルカプト末端ポリマー、ならびにチオカルボン酸から得られたポリエステル、特にペンタエリスリトールテトラメルカプトアセテート、トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート、グリコールジメルカプトアセテート、ペンタエリスリトールテトラ−(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリ−(3−メルカプトプロピオネート)、およびグリコールジ−(3−メルカプトプロピオネート)は、成分K2中のポリチオールとして適している。
【0092】
成分K2中のポリアミンとして、通常は、イソシアネート用の硬化剤として使用されるアミンが適しており、特に、
− 第1級脂肪族ポリアミン、例えば1,3−ペンタンジアミン(DAMP)、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(MPMD)、1,6−ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン(TMD)、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(=イソホロンジアミンまたはIPDA)、1,3−キシリレンジアミン、1,3−ビス−(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)−メタン、ビス−(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)−メタン、3(4),8(9)−ビス−(アミノメチル)−トリシクロ[5,2,1,02.6]デカン、1,2−、1,3−、および1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2,2,6−トリメチルシクロヘキサン(TMCDA)、および4−アミノメチル−1,8−オクタンジアミンなど;
− エーテル基含有脂肪族ジアミン、例えば3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジアミン、4,7−ジオキサデカン−1,10−ジアミン、およびポリオキシアルキレンジ−およびトリアミンなどであって、ポリオキシアルキレンジオールのアミノ化から得られる生成物を典型的には表すものであり、特に、商標名Jeffamine(登録商標)の下で入手可能なHuntsmanのタイプD−230、D−400、D−2000、T−403、およびT−5000と、その類似体であるBASFまたはNitroilから得られた化合物;
− 第2級脂肪族ポリアミン、例えばN,N’−ジブチル−エチレンジアミン;N,N’−ジ−tert−ブチル−エチレンジアミン、N,N’−ジエチル−1,6−ヘキサンジアミン、1−(1−メチルエチル−アミノ)−3−(1−メチルエチル−アミノメチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(Jefflink(登録商標)754、Huntsman製)、N4−シクロヘキシル−2−メチル−N2−(2−メチルプロピル)−2,4−ペンタンジアミン、N,N’−ジアルキル−1,3−キシリレンジアミン、ビス−(4−(N−アルキルアミノ)−シクロヘキシル)−メタン、N−アルキル化ポリエーテルアミン、例えばHuntsman製のJeffamine(登録商標)タイプSD−231、SD−401、SD−404、およびSD−2001、Michaelアクセプターへの第1級脂肪族ポリアミンのMichael型付加から得られた生成物であって、マレイン酸ジエステル、フマル酸ジエステル、シトラコン酸ジエステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ケイ皮酸エステル、イタコン酸ジエステル、ビニルホスホン酸ジエステル、ビニルスルホン酸アリールエステル、ビニルスルホン、ビニルニトリル、1−ニトロエチレン、またはKnoevenagel縮合生成物、例えば、マロン酸ジエステルと、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド、ベンズアルデヒドなどのアルデヒドとからなるものなど;
− 第1級および第2級アミノ基を有する脂肪族ポリアミン、例えばN−シクロヘキシル−1,3−プロパンジアミン、N−ブチル−1,6−ヘキサンジアミン、4−アミノメチル−ピペリジン、3−(4−アミノブチル)−ピペリジン、ジエチレントリアミン(DETA)、ジプロピレントリアミン(DPTA)、ビス−ヘキサメチレントリアミン(BHMT)と、脂肪ジアミン、例えばN−ココアルキル−1,3−プロパンジアミン、N−オレイル−1,3−プロパンジアミン、N−(大豆アルキル)−1,3−プロパンジアミン、およびN−タルクアルキル−1,3−プロパンジアミンなど、さらに脂肪族第1級ジアミンと既に述べたMichaelアクセプターとのモル比1:1でのMichael型付加反応から得られた反応生成物など;
− 第1級および/または第2級芳香族ポリアミン、例えばm−およびp−フェニレンジアミン、4’4−, 2,4’−および2,2’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、2,4−および2,6−トルイレンジアミン、3,5−ジメチルチオ−2,4−および−2,6−トルイレンジアミンの混合物(AlbemarleからEthacure(登録商標)300として入手可能)、3,5−ジエチル−2,4−および−2,6−トルイレンジアミン(DETDA)の混合物、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(M−DEA)、3,3’,5,5’−テトラエチル−2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(M−CDEA)、3,3’−ジイソプロピル−5,5’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(M−MIPA)、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(M−DIPA)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、4−アミノ−N−(4−アミノフェニル)−ベンゼンスルホンアミド、5,5’−メチレンジアントラニル酸、ジメチル−(5,5’−メチレンジアントラニレート)、1,3−プロピレン−ビス−(4−アミノベンゾエート)、1,4−ブチレン−ビス−(4−アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド−ビス−(4−アミノベンゾエート)(Air ProductsからVersalink(登録商標)として入手可能)、1,2−ビス−(2−アミノフェニルチオ)−エタン、N,N’−ジアルキル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジアルキル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2−メチルプロピル−(4−クロロ−3,5−ジアミノベンゾエート)、およびtert−ブチル−(4−クロロ−3,5−ジアミノベンゾエート)など
がある。
【0093】
成分K2の構成成分としては、さらに下記の物質、すなわち:アミノアルコール、特に2−(メチルアミノ)エタノール、2−(エチルアミノ)エタノール、2−(ブチルアミノ)エタノール、2−(シクロヘキシルアミノ)エタノール、5−アミノ−1−ペンタノール、6−アミノ−1−ヘキサノール、およびこれらの高級ホモログ、4−(2−アミノエチル)−2−ヒドロキシ−エチルベンゼン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキサノール、2−(2−アミノエトキシ)−エタノール、トリエチレングリコールモノアミン、これらの高級オリゴマーおよびポリマー、3−(2−ヒドロキシエトキシ)−プロピルアミン、3−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)−エトキシ)−プロピルアミン、3−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)−プロピルアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、3−メチル−アミノ−1,2−プロパンジオール、2−(メチルアミノ)エタノール、2−(エチルアミノ)エタノール、2−(ブチルアミノ)エタノール、および2−(シクロヘキシルアミノ)エタノール、3−ピロリジノール、3−または4−ヒドロキシ−ピペリジン、2−ピペリジンエタノール、2−[2−(1−ピペラジル)]エタノール、2−[2−(1−ピペラジル)エトキシ]エタノール、およびN−ヒドロキシエチルアニリンが適している。
【0094】
成分K2の構成成分としては、さらに下記の物質、すなわち、エナミノ、オキサゾリジン、アルジミノ、および/またはケチミノ基を用いて加水分解的に活性化することができるブロックアミン、特に、上述のポリアミンまたはアミノアルコールと適切なアルデヒドまたはケトンとの縮合生成物が適している。
【0095】
成分K2は、好ましくは、平均分子量が250から30,000g/mol、特に400から20,000g/molであり、平均OH官能価が1.6から3.0の範囲にある、少なくとも1種のポリオールを含有する。
【0096】
2成分組成物は、追加の構成成分、特に、単一成分組成物の構成成分として既に述べたようなポリウレタン組成物で通常使用される助剤および添加剤、ならびに単一成分組成物の構成成分としてやはり既に述べたような、組成物の熱伝導率を増大させかつ/または圧電性、強磁性、または超常磁性を有する材料を、任意選択で含有する。そのような追加の構成成分は、第1の成分K1の構成成分として、または第2の成分K2の構成成分として、存在することができる。
【0097】
成分K2の構成成分としては、上述の物質に加え、さらにその他の助剤および添加剤が可能であり、すなわち短時間しか保存することができずまたは遊離イソシアネート基を少しも持たない物質が可能である。特に、追加の触媒を存在させることができ、特に、亜鉛、マンガン、鉄、クロム、コバルト、銅、ニッケル、モリブデン、鉛、カドミウム、水銀、アンチモン、バナジウム、チタン、ジルコニウム、またはカリウムの化合物、例えば酢酸亜鉛(II)、亜鉛(II)−2−エチルヘキサノエート、亜鉛(II)−ラウレート、亜鉛(II)−アセチルアセトネート、鉄(III)−2−エチルヘキサノエート、コバルト(II)−2−エチルヘキサノエート、銅(II)−2−エチルヘキサノエート、ニッケル(II)−ナフテネート、乳酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム、ジイソプロポキシチタン−ビス−(エチルアセトアセテート)、酢酸カリウムなど;第3級アミン、例えばN−エチル−ジイソプロピルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−アルキレンジアミン、ペンタメチル−アルキレントリアミン、およびこれらの高級ホモログ、ビス−(N,N−ジエチルアミノエチル)−アジペート、トリス−(3−ジメチルアミノプロピル)−アミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノン−5−エン(DBN)、N−アルキルモルホリン、N,N’−ジメチルピペラジン、芳香族ニトロ化合物、例えば4−ジメチルアミノ−ピリジン、N−メチルイミダゾール、N−ビニルイミダゾール、または1,2−ジメチルイミダゾールなど;有機アンモニウム化合物、例えばベンジルトリメチルアンモニウム水酸化物、またはアルコキシル化第3級アミンなど;公知の金属またはアミン触媒を変性させた、いわゆる「遅延作用」触媒;ならびに上述の化合物の組合せ、特に金属化合物および第3級アミンの組合せを存在させることができる。
【0098】
そのような追加の構成成分を使用する場合、この構成成分が、組成物へのカルボン酸ヒドラジドの溶解度を過度に増大させないことを、確実にすることが有利である。
【0099】
2種の成分K1およびK2の生成は、互いに別々に実施され、少なくとも成分K1に関しては、水分を含まない条件下で実施される。2種の成分K1およびK2は、互いに別々に長い保存寿命を有し、すなわちこれらの成分は、利用前に数カ月間から最長1年およびそれ以上にわたり、例えばドラム、バッグ、バケット、カートリッジ、またはボトルなどの適切なパッケージングまたはアレンジメント内で、これら成分のそれぞれの性質を使用に関してある程度まで変化させることなく、それぞれ保存することができる。
【0100】
2成分組成物を付着する直前または最中に、2種の成分K1およびK2を互いに混合し、この混合では、特に静的ミキサまたは動的ミキサが使用され、混合は、連続的にまたはバッチごとに実施することができる。
【0101】
混合した2成分組成物は、既存のイソシアネート基と反応する組成物中に存在するヒドロキシル、メルカプト、アミノ、および加水分解ブロックアミノ基によって、硬化する。過剰なイソシアネート基は、水分と反応する。
【0102】
硬化組成物は、単一成分組成物の形で好ましくは存在する。
【0103】
本発明の別の対象は、
α)少なくとも1種のポリイソシアネートPと、
β)少なくとも1種のカルボン酸ヒドラジドと
を含む硬化組成物であって、
但し、比(nHY−nAK)/nNCOが0.2から3、特に0.5から2の値を有することを条件とし、
HYは、組成物中に存在するヒドラジド基の数を表し、
AKは、存在し、組成物中に放出することができるアルデヒドおよびケト基の数を表し、
NCOは、組成物中に存在するイソシアネート基の数を表す
組成物である。
【0104】
カルボン酸ヒドラジドおよびポリイソシアネートPは、先に述べたカルボン酸ヒドラジドまたは先に述べたポリイソシアネートPの形およびそれらの好ましい実施形態で、硬化組成物中に存在する。
【0105】
硬化組成物中に含有されるカルボン酸ヒドラジドは、好ましくは、160℃から260℃の範囲、特に175℃から240℃の範囲の融点を有する。
【0106】
硬化組成物中に含有されるカルボン酸ヒドラジドは、シュウ酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、およびイソフタル酸ジヒドラジドからなる群から特に選択されたポリカルボン酸ヒドラジドHYであることが好ましい。
【0107】
本発明の本質的な態様では、硬化組成物の硬化中のカルボン酸ヒドラジドは、硬化剤として作用せず、それどころか硬化組成物または硬化ポリウレタン接着剤の硬化中は遊離した形のままである。
【0108】
十分低い温度で、記述される硬化組成物の1種を硬化する際、カルボン酸ヒドラジドを含有する硬化したポリウレタン接着剤が生成される。最大限に許容可能な温度は、特に、既存のカルボン酸ヒドラジドの融点に依存する。
【0109】
少なくとも1種のカルボン酸ヒドラジドを含有する硬化組成物は、特に、記述される硬化組成物の1種を80℃未満の温度で、特に60℃未満の温度で硬化することによって得られる。
【0110】
本発明の別の対象は、カルボン酸ヒドラジドを含有する硬化したポリウレタン接着剤を、少なくとも80℃の剥離温度に加熱するステップを含む、接着剤化合物を剥離するための方法である。
【0111】
この方法では、カルボン酸ヒドラジドおよび/または硬化したポリウレタン接着剤が、先に述べたカルボン酸ヒドラジドまたはポリウレタン接着剤の形およびこれらの好ましい実施形態で存在する。
【0112】
剥離温度は、好ましくは100℃よりも高く、特に120℃から240℃の範囲にある。
【0113】
剥離温度は140℃から220℃の範囲にあることが、最も好ましい。
【0114】
少なくとも1種のカルボン酸ヒドラジドを含有する、硬化したポリウレタン接着剤を含む接着剤化合物は、基材S1と基材S2とを結合するための方法から特定の形で利用可能であり、この方法は:
i)先に述べたように、硬化組成物を、基材S1に付着させるステップ;
ii)付着した組成物を、組成物のオープンタイム内で基材S2に結合させるステップ;
または、
i’)先に述べたように、硬化組成物を、基材S2に付着させるステップ;
ii’)付着した組成物を、組成物のオープンタイム内で基材S1に結合させるステップ;
または
i”)先に述べたように、硬化組成物を、基材S1および基材S2に付着させるステップ;
ii”)付着した組成物を、組成物のオープンタイム内で一緒に結合させるステップ;
を含み、基材S2は、基材S1と同じまたは異なる材料からなるものであり;
これらのステップおよび硬化組成物の硬化は、80℃未満の温度、特に60℃未満の温度で実施される。
【0115】
硬化組成物が2成分組成物である場合、この2成分組成物は、組成物を付着させる前に一緒に混合される。
【0116】
本明細書では、その間に単一成分組成物を処理することができ、その後にポリイソシアネートのイソシアネート基を水分に接触させ、またはその間に2成分組成物を処理することができ、その後に2成分組成物を一緒に混合する時間を、「オープンタイム」と呼ぶ。
【0117】
この方法において、適切な基材S1および/またはS2は、特に、
− ガラス、ガラスセラミック、コンクリート、モルタル、レンガ、日干しレンガ、セメント、天然石、例えば花崗岩または大理石など;
− 金属または合金、例えばアルミニウム、鋼、鉄、非鉄金属、亜鉛メッキ金属など;
− 革、織物、紙、木材、樹脂結合木材製品、樹脂−織物複合材料、およびその他のいわゆるポリマー複合体;
− プラスチック、例えばポリ塩化ビニル(硬質および軟質PVC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)、SMC(シート成型化合物)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリエステル、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリエステル、エポキシド樹脂、ポリウレタン(PUR)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリオレフィン(PO)、ポリエチレン(PE)、またはポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレンコポリマー(EPM)、およびエチレン/プロピレン/ジエンターポリマー(EPDM)などであって、このプラスチックは、プラズマ、コロナ、またはフレームによって好ましくは表面処理することができるものであり;
− コーティングされた基材、例えば、粉末コーティングされた金属または合金など;ならびに塗料およびワニスなど
である。
【0118】
必要に応じて、基材は、硬化組成物を付着する前に前処理することができる。そのような前処理は、特に物理的および/または化学的な清浄化プロセス、例えば研削、サンドブラスト法、またはブラッシングなどを含み、または清浄化剤もしくは溶媒による処理、または接着促進剤、接着促進溶液、もしくはプライマーの付着を含む。
【0119】
本発明の別の対象は、基材S1と、基材S2と、基材S1および基材S2の間に位置付けられかつ少なくとも1種のカルボン酸ヒドラジドを含有して基材S1および基材S2を互いに結合する、硬化したポリウレタン接着剤とを有する複合体である。
【0120】
この複合体において、基材S1および基材S2、またはカルボン酸ヒドラジドもしくは硬化したポリウレタン接着剤は、先に述べた基材またはカルボン酸ヒドラジドもしくはポリウレタン接着剤の形、およびそれらの好ましい実施形態で存在する。
【0121】
そのような複合体は、基材S1と基材S2との結合に関して記述された方法から、特に入手可能である。
【0122】
接着剤化合物は、先に記述されたように、少なくとも80℃の温度、特に100℃よりも高い温度に加熱された少なくとも1種のカルボン酸ヒドラジドを含有する、硬化したポリウレタン接着剤によって崩壊する。この目的に必要な熱は、任意のエネルギー源で生成することができる。加熱するための適切な手段は、特に、対流式オーブン、熱風送風器、または赤外線エミッタである。基材の少なくとも1つが強磁性でありかつ/または組成物が圧電性、強磁性、もしくは超常磁性材料を含有する場合、加熱は、交番磁界および/または電界、特にマイクロ波もしくは誘導を印加することによって行うこともでき;このようにすることで、硬化したポリウレタン接着剤の特に素早い加熱が可能になる。加熱によって、ポリウレタン接着剤のポリウレタンポリマーは熱劣化し、この熱劣化は、おそらくは、接着剤中に存在するカルボン酸ヒドラジドおよびポリウレタンポリマーとの反応によって主に開始される。その結果、接着剤はその強度に関して弱くなり、接着剤化合物は、基材S1および基材S2が比較的少ない労力で互いに分離できるように、最終的には崩壊する。
【0123】
より高い剥離温度は、ポリウレタンポリマーのより早い熱劣化をもたらし、したがって接着剤化合物のより早い剥離をもたらす。したがってより低い剥離温度は、接着剤化合物を崩壊させるために、より高い剥離温度よりも長い時間にわたって維持されなければならない。約250℃よりも高い剥離温度は、ごく短く使用されまたは全く使用されないことが有利であるが、それはこの場合、ポリウレタンポリマーから有毒ガスが放出される可能性があり、そのため特殊な保護装置が必要になり、したがって望ましくないからである。
【0124】
接着化合物を剥離するための本発明は、工業製品を結合するのに、特に家電用品、自動車、輸送車両、または船舶のアセンブリに、適用可能であることが有利である。さらに本発明は、構造体を結合するのに、例えばプレートまたはパネルを壁面に接着するのに適用することができる。
【0125】
熱により崩壊することができる接着剤化合物は、複合体の修理に特に有利である。結合した構成要素を交換しなければならない場合、接着剤化合物を簡単な方法で熱により崩壊させることができ、特に接着剤化合物が非常に高強度のポリウレタン接着剤からなるものであるなら、非常に有利であると考えられる。したがって接着剤は、多大な労力によって機械的に破壊されてはならず、むしろ接着剤は、例えば自動車の、欠陥のある接着剤で付けられた構成要素を交換することができるように、十分加熱されるだけでよい。欠陥のある構成要素は、加熱後に僅かな労力で取り外すことができ、接着剤の残留物全てを車体から除去することができる。これらの接着剤残留物は、熱劣化したポリウレタン接着剤からなり、したがって僅かな強度を有するが、むしろかなりの程度までペースト状である。その結果、接着剤残留物は、簡単な方法で、例えばヘラを用いて除去することができ、その後、いくらかの溶媒で短時間の清浄化を行った後の車体は、修理用接着剤を用いて新しい構成要素を結合させる準備が整った状態になる。
【0126】
さらに、熱により崩壊することができる接着剤化合物は、結合された構成要素が使用されまたはリサイクルされる場合に有利である。
【0127】
本発明の別の対象は、下記のステップ、すなわち、
a)基材S1と、基材S2と、基材S1および基材S2の間に位置付けられかつ少なくとも1種のカルボン酸ヒドラジドを含有する硬化したポリウレタン接着剤とを有する複合体の、硬化したポリウレタン接着剤を、少なくとも80℃、好ましくは100℃よりも高い温度、特に120℃から240℃の範囲の温度に加熱して、硬化したポリウレタン接着剤の、加熱により開始された熱劣化によって、接着剤化合物を剥離するステップ;
b)その後、複合体から基材S2を除去するステップ;
c)その後、基材S1上でどのような場合にも残される熱劣化したポリウレタン接着剤の残留物を除去するステップ;
d)任意選択で、その後、基材S1を清浄化および/または前処理するステップ;
ならびに下記のステップe)およびf)、またはステップe’)およびf’)、すなわち、
e)ステップc)またはd)の後に、基材S1に修理用接着剤を付着させるステップ;
および
f)修理用接着剤と基材S2’とを結合するステップ;
e’)ステップc)またはd)の後に、基材S2’に修理用接着剤を付着させるステップ;
および
f’)修理用接着剤と基材S1とを結合するステップ
を含む修理方法である。
【0128】
この修理方法において、基材S1、S2、およびS2’、またはカルボン酸ヒドラジド、または硬化したポリウレタン接着剤は、先に述べた基材、またはカルボン酸ヒドラジド、またはポリウレタン接着剤の形、およびそれらの好ましい実施形態で存在する。
【0129】
基材S2’は、基材S1およびS2に関して先に述べたように、修理用接着剤で結合される前に、任意選択で前処理される。
【0130】
修理用接着剤、特に単一成分または2成分ポリウレタン接着剤としては、例えば先に述べたような硬化組成物が適している。特に適した修理用接着剤は、商標名Sikaflex(登録商標)およびSikaforce(登録商標)でSika Schweiz AGから市販されているような、単一および2成分ポリウレタン接着剤である。少なくとも1種のポリイソシアネートおよび少なくとも1種のカルボン酸ヒドラジドを含む、先に述べた硬化組成物を、修理用接着剤として使用できることも、当業者に明らかである。この場合、記述される修理方法は、必要に応じて再度行うことができる。
【0131】
ポリウレタン接着剤を含む接着剤化合物を、加熱によって剥がすためのカルボン酸ヒドラジドの使用には、様々な利点がある。カルボン酸ヒドラジドは、一般に、室温で固体であるポリウレタン接着剤への溶解がゆっくりである、結晶性物質である。したがってカルボン酸ヒドラジドは、硬化が十分に低い温度で行われることを前提として、組成物の硬化中にポリウレタンポリマーに組み込まれることなく、接着剤化合物の生成の際に硬化ポリウレタン組成物の構成成分として使用することが可能である。さらに、カルボン酸ヒドラジドを含有する硬化したポリウレタン接着剤は、カルボン酸ヒドラジドを含まない同等の硬化したポリウレタン接着剤と、本質的に同じ性質を有する。特に、接着剤の割合と、部分的には引張り強さや弾性率(E−モジュラス)、弾力性などの機械的性質も、接着剤化合物の使用温度が十分低いことを前提として、接着剤中の遊離カルボン酸ヒドラジドの存在によって僅かに変化する。
【0132】
接着剤化合物を剥離するためにカルボン酸ヒドラジドを使用する場合の別の利点は、剥離に必要な剥離温度が高すぎないこと、および/または剥離をもたらすためにその温度を比較的短い時間で維持すればよいことである。その結果、崩壊することになる接着剤化合物の基材が保護される。したがって、特に感熱性材料を含有する複合体、例えばポリプロピレンなどの熱可塑性ポリマーを、崩壊させることができる。
【0133】
接着剤化合物を剥離するためにカルボン酸ヒドラジドを使用する場合の別の利点は、カルボン酸ヒドラジドが一般に低毒性の物質であり、この物質がポリウレタン接着剤中に存在することによって、接着剤に特殊な特性を持たせることが僅かに可能なことである。
【0134】
融点が160℃から260℃の範囲、特に175℃から240℃の範囲にある好ましいカルボン酸ヒドラジドには、追加の利点がある。対応する硬化組成物の硬化は、カルボン酸ヒドラジドをポリウレタンポリマー中に組み込むことなく、いくらか高い温度で、特に最高約80℃で実施することができる。さらに、カルボン酸ヒドラジドは、接着剤化合物のいくらか高い使用温度、例えば最高で約60℃から100℃の範囲の温度に適している。そのような接着剤化合物を剥離するには、剥離温度が100℃よりも高いことが有利である。
【0135】
融点が160℃から260℃の範囲、特に175℃から240℃の範囲にある特に好ましいポリカルボン酸ヒドラジドHYには、追加の利点がある。ポリカルボン酸ヒドラジドはその溶解度が特に低いので、最高約60℃の温度では、遊離イソシアネート基とはかなりの程度まで反応しない。その結果、ポリカルボン酸ヒドラジドは、付着前にある特定の期間にわたり保存されることになる単一成分ポリウレタン組成物の構成成分に、特に適している。
【0136】
ポリカルボン酸ヒドラジドはポリウレタン接着剤への溶解度が特に低いので、接着剤化合物のより高い使用温度、特に約80℃から100℃の範囲の使用温度に適している。
【0137】
一方で、カルボン酸ヒドラジドは、保存に適した硬化ポリウレタン組成物の構成成分として使用することができ、そこから硬化させた、これらカルボン酸ヒドラジドを含有するポリウレタン接着剤は、遊離して組み込まれていない形で利用可能であること、他方、これらの硬化した接着剤は、実際の使用に適した使用温度で使用することができ、この場合、強度の著しい損失を被ることがなく、さらにそのような接着剤の剥離は、比較的短い時間内で適切な温度範囲で可能であることは、驚くべきことであり、かつ当業者に明らかではない。
【0138】
以下、図面を基にした本発明の実施形態について、より詳細に説明する。様々な図において、同じ要素には同じ参照番号をつける。作用の動きは矢印で示す。
【0139】
図1から8は、経時的に変化する、修理方法の段階を通した断面図を示す。
【0140】
図面は概略的である。本発明の直感的な理解に不可欠な要素のみ示す。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】少なくとも1種のカルボン酸ヒドラジド5および少なくとも1種のポリイソシアネート6を含有し、基材S1 2に付着されている硬化組成物4を示す。この具体的な実施例の範囲内で、基材S1 2は、ワニスが塗られた金属フランジである。カルボン酸ヒドラジド粒子のサイズ表示は、この図および後続の図において縮尺が合っていない。典型的には、カルボン酸ヒドラジドの平均粒径は120μmよりも小さい。
【図2】そのオープンタイム以内で基材S2 3に結合されている、付着された硬化組成物4を示す。この具体的な実施例の範囲内で、基材S2 3は、フロントガラスである。
【図3】この具体的な実施例において、硬化組成物4は、大気湿度7を用いて硬化し、その結果、図3に示されるように、硬化したポリウレタン接着剤4’を形成し、したがって複合体1を形成するが、これは基材S1 2と、基材S2 3と、基材S1 2および基材S2 3の間に位置付けられかつ基材S1および基材S2を互いに接続する、硬化したポリウレタン接着剤4’を有する。 ある時間で、接着剤化合物はゆっくりと溶解するようになり、したがって崩壊する。これは、例えばフロントガラスS2 3が跳ね石により損傷を受けており、新しいフロントガラスが使用される場合である。
【図4】このとき、図4に示されるように、複合体1の硬化したポリウレタン接着剤4’は熱8により加熱されて、接着剤の剥離温度になる。
【図5】硬化したポリウレタン接着剤4’中に存在するカルボン酸ヒドラジド5は、高い温度により反応し、その結果、図5に示されるように、熱劣化したポリウレタン接着剤4”が得られる。
【図6】次いで基材S2 3、ここでは損傷したフロントガラスは、図6に示されるように、基材S1 2およびS2 3を機械的に分離しまたは接着剤化合物を剥がすことによって、除去される。
【図7】熱劣化したポリウレタン接着剤4”の残留物を除去し、基材S1 2を清浄化し、任意選択で前処理し、最終的には図7に示されるように、修理用接着剤9を基材S1 2に付着させる。
【図8】修理用接着剤9を基材S2’ 10に、この場合は新しいフロントガラスに結合する。修理用接着剤9が硬化した後に、複合体1を生成する。
【発明を実施するための形態】
【0142】
(実施例)
温度23±1℃および相対大気湿度50±5%を、「標準雰囲気」(NK)と呼ぶ。
【0143】
Table 1(表1)からTable 3(表3)および6(表6)に示される比nHY/nNCOは、それぞれの場合に比(nHY−nAK)/nNCOであり、実施例で生ずるポリウレタン接着剤はアルデヒドおよびケトンを含有せずまたは放出しないので、値nAKは0に等しい。この場合、したがってそれぞれの場合にヒドラジド基の数とイソシアネート基の数との比になる。
【0144】
1.使用されるカルボン酸ヒドラジド
カルボン酸ヒドラジドH−1 アジピン酸ヒドラジド 融点約180℃
カルボン酸ヒドラジドH−2 イソフタル酸ジヒドラジド 融点約220℃
カルボン酸ヒドラジドH−3 シュウ酸ジヒドラジド 融点約240℃
カルボン酸ヒドラジドH−4 イソニコチン酸ヒドラジド 融点約171℃
カルボン酸ヒドラジドH−5 4−ニトロベンズヒドラジド 融点約216℃
【0145】
カルボン酸ヒドラジドを、DIN EN 21 524に従いグラインドメータを用いて決定された最大粒度が<90μmである微粒子粉末として使用した。
【0146】
2.ポリウレタン接着剤の生成
(実施例1から3および比較例4)
スクリューキャップを備えたポリプロピレンビーカー内で、Sikaflex(登録商標)221 White 60重量部を、遠心分離ミキサ(Speed−Mixer(商標)DAC 150、FlackTek Inc.;3,000rpmで30秒)を用いてカルボン酸ヒドラジドとTable 1(表1)に従い混合して、均質な塊を形成し、前記塊を、内側にワニスが塗られているアルミニウムカートリッジ内にすぐにデカンテーションし、このカートリッジを気密になるように密封する。量は、重量部で示される。
【0147】
Sikaflex(登録商標)221 Whiteは、Sika Schweiz AGから入手可能な、遊離イソシアネート基の含量が約0.7重量%である単一成分ポリウレタンシーラントおよび接着剤である。
【0148】
ポリウレタン接着剤をそこで硬化し、保存時間を変えた後、室温および延伸速度200mm/分で、引張り強さ、破断点伸び、およびE−モジュラスについて0.5〜5%の膨張で、DIN EN 53504に従い試験をした。このために、厚さ2mmの接着剤被膜を、各実施例により生成し、この被膜を標準雰囲気(NK)中で7日間硬化した。次いで長さ75mm、クロスピース長さ30mm、およびクロスピース厚さ4mmの12個のバーベルを、被膜から打ち抜き、その中の3個についてすぐに測定した。残りの9個のバーベルを、それぞれの場合に3つに分けて7日間、対流式オーブン内で、80℃または100℃または120℃で保存し、次いで測定した。結果をTable 1(表1)に示すが、それぞれの場合に値は3回の個々の測定の平均である。
【0149】
【表1】

【0150】
Table 1(表1)から、実施例1から3の硬化したポリウレタン接着剤は、温度100℃まで良好な永続性を有しており、カルボン酸ヒドラジドを含まない比較例4の場合と同等であることがわかった。実施例3のポリウレタン接着剤も、120℃で良好な永続性を依然として有していたが、実施例1および2は、ポリウレタンポリマーのある特定の劣化を既に示していた。
【0151】
(実施例5から8および比較例9)
実施例1でちょうど示したように、追加のポリウレタン接着剤を、Table 2(表2)の情報に従い生成した(量の情報は、重量部を単位として示す。)。実施例7の組成物は、実施例1の場合に該当する。
【0152】
ポリウレタン接着剤をその後硬化し、保存時間を様々にした後に、DIN 53505に従ってショアA硬さの試験をした。さらに、4つの試験片を各接着剤から生成し、試験片を標準雰囲気(NK)中で7日間硬化し、その後、ショアA硬さを測定した。次いで試験片を1つずつ、対流式オーブン内に80℃または100℃または120℃で7日間保存し、1つ試験片を対流式オーブン内に180℃で10分間保存し、次いで再びショアA硬さを測定した。結果をTable 2(表2)に示す。
【0153】
【表2】

【0154】
Table 2(表2)から、実施例5から8の硬化したポリウレタン接着剤は、アジピン酸ジヒドラジドの量を様々にした状態で、100℃までの温度で良好な永続性を有し、カルボン酸ヒドラジドを含まない比較例9の場合と同等であることがわかった。120℃で7日間経過した後、および180℃で10分間経過した後、実施例6から8は、ショアA硬さの強力な低下を示し、一方、既存のイソシアネート基に対して化学量論量のヒドラジド基を有する実施例5は、それほど強力に低下しなかった。
【0155】
(実施例10から14)
実施例1にちょうど記述したように、追加のポリウレタン接着剤を、Table 3(表3)の情報に従い生成した(量の情報は、重量部を単位として示す。)。実施例10、11、および12の組成物は、それぞれの場合に実施例1、2、および3の組成物に相当する。
【0156】
ポリウレタン接着剤をその後硬化し、保存時間を様々にした後、これらの接着剤を、実施例5で述べたように、DIN 53505に従いショアA硬さについて試験をした。
【0157】
【表3】

【0158】
Table 3(表3)から、ジカルボン酸ジヒドラジドを含有する実施例10から12の硬化したポリウレタン接着剤は、100℃までの温度で良好な永続性を有することがわかる。120℃で7日間経過した後、および180℃で10分間経過した後、実施例10は、ショアA硬さの強力な低下、したがって強力な熱劣化を示し、一方、実施例11および12は、いくらか大きな熱応力下でしかショアA硬さの低下を示さなかった。モノカルボン酸ヒドラジドを含有する実施例13および14は、100℃で7日間の温度応力で、ショアA硬さの低下を既に示した。
【0159】
3.複合体の生成
(実施例15から17および比較例18)
実施例1、2、および3と比較例4のポリウレタン接着剤を用いて、Table 4(表4)の情報に基づき複合体を生成した。さらに、それぞれの場合において、厚さ6mm、幅25mm、および長さ75mmの2枚の小さなガラス板(フロートガラス;Rocholl Company、Schonbrunn、Germany)を、Sika(登録商標)活性化剤(Sika Schweiz AGから入手可能)で前処理した。10分間のフラッシュオフタイムの後、2枚の小さな板を一緒に結合して上端が12mmだけ重なるようにし、接着剤化合物は12mm×25mmの寸法および4mmの厚さを有していた。この場合、小さな板の活性化面は、接着剤に接触していた。各実施例ごとに、12個の複合体を生成した。
【0160】
複合体中のポリウレタン接着剤を、その後7日間、標準雰囲気(NK)中で硬化し、保存時間を様々にした後、複合体の引張り強さ、破断点伸び、およびE−モジュラスを、0.5〜5%の膨張で、DIN EN 1465に従い引張り試験機(Zwick)を使用して、一定の横方向ヨーク速度20mm/分で試験をした。さらに、各実施例ごとに、12個の複合体のうち3個について、硬化後に直接測定した。残りの9個は、対流式オーブン内に、80℃または100℃または120℃で7日間保存し、次いで測定した。結果をTable 4(表4)に示すが、それぞれの場合における値は、3回の個々の測定から得た平均値である。
【0161】
【表4】

【0162】
Table 4(表4)から、実施例15から17の複合体の接着剤化合物は、100℃までの温度で良好な永続性を有することがわかる。実施例17の接着剤化合物は、120℃でも良好な永続性を依然として有しており、一方、実施例15および16は、ポリウレタンポリマーのある特定の劣化を既に示していた。
【0163】
4.接着剤化合物の剥離
(実施例19から21および比較例22)
Table 5(表5)の情報に基づいて、複合体を、実施例15でちょうど述べたように、実施例1、2、および3と比較例4とのポリウレタン接着剤を用いて生成した。これらの複合体を、標準雰囲気下で7日間硬化し、次いで接着剤化合物を剥離するための試験を行った。さらに、それぞれの場合において、3つでひと組の複合体を1つの対流式オーブン内で、185℃または190℃または200℃で15分間加熱した。次いでこれら組成物の引張り剪断強さを、実施例15で述べたように決定した。
【0164】
【表5】

【0165】
Table 5(表5)から、実施例19から21の複合体を、185℃または190℃または200℃で加熱された対流式オーブン内で15分間加熱することにより、接着剤化合物の剥離がもたらされたことがわかり;接着剤は、引張り剪断強さの機械測定がもはや望ましくはないように熱劣化し、またはその引張り剪断強さは非常に低いレベルまで降下した。したがって小さいガラス板の機械的分離は、比較的僅かな労力で可能であり、したがって接着剤化合物は容易に脱離可能である。熱応力下で、カルボン酸ヒドラジドを含まない比較例22は引張り剪断強さの低下も示したが、驚くべきことに、本発明による実施例よりもそれほど大きくはなかった。
【0166】
5.単一成分組成物の保存寿命に関する試験
(実施例23から27および比較例28)
スクリューキャップを備えたポリプロピレンビーカー内で、その生成が以下に記述されるポリマーP−1 50重量部を、遠心分離ミキサ(Speed−Mixer(商標)DAC 150、FlackTek Inc.;2,500rpmで1分)を用いてTable 6(表6)に従いカルボン酸ヒドラジドと混合した結果、均質な塊が形成され、前記塊を、内側にワニスが塗られているアルミニウム管内にすぐにデカンテーションし、この管を、気密になるよう密封した。量は、重量部を単位として示す。
【0167】
ポリマーP−1を、下記の通り生成した:
ポリオキシプロピレン−ジオール(Acclaim(登録商標)4200N、Bayer;OH価28.5mg KOH/g)4,000gおよび4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI;Desmodur(登録商標)44MCL、Bayer)520gを80℃で反応させて、遊離イソシアネート基の含量が1.90重量%であるNCO末端ポリウレタンポリマーを形成した。
【0168】
保存時間を様々に変えた後、そこで組成物をその粘度に関して試験した。さらに、各実施例ごとに、組成物をその生成後に60℃のオーブン内で密封管内に保存し、貯蔵時間が1日経過した後の第1の時間(=「粘度1d 60℃」)と、貯蔵時間が7日経過した後の第2の時間(=「粘度7d 60℃」)に測定した。この場合、粘度は20℃で、サーモスタット円錐平板粘度計Physica UM(円錐径20mm、円錐角1°、円錐先端−平板間隔0.05mm、剪断速度10から1,000秒−1)で測定した。結果をTable 6(表6)に示す。
【0169】
【表6】

【0170】
Table 6(表6)から、ジカルボン酸ジヒドラジドであるカルボン酸ヒドラジドH−1、H−2、およびH−3を含有する組成物は、保存中に粘度の僅かな増加しか示さず、したがって60℃で良好な保存寿命を有していたことがわかる。しかし、モノカルボン酸ヒドラジドが含まれるカルボン酸ヒドラジドH−4およびH−5を含有する組成物は、保存中にゲル化した。これらのカルボン酸ヒドラジドは、その高い融点にも関わらず、イソシアネート基と明らかに反応した。
【符号の説明】
【0171】
1 複合体
2 基材S1
3 基材S2
4 少なくとも1種のカルボン酸ヒドラジド5およびポリイソシアネート6を含有する硬化組成物
4’ 硬化したポリウレタン接着剤または硬化した組成物
4” 硬化した、熱劣化したポリウレタン接着剤、または硬化した、熱劣化した組成物
5 カルボン酸ヒドラジド
6 ポリイソシアネート
7 水分
8 熱
9 修理用接着剤
10 基材S2’

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸ヒドラジドを含有する硬化したポリウレタン接着剤を含む接着剤化合物を剥離するための、カルボン酸ヒドラジドの使用。
【請求項2】
前記カルボン酸ヒドラジドが、160℃から260℃、特に175℃から240℃の範囲の融点を有することを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記カルボン酸ヒドラジドが、ポリカルボン酸ヒドラジドHYであり、シュウ酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、およびイソフタル酸ジヒドラジドからなる群から特に選択される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
カルボン酸ヒドラジドを含有する硬化したポリウレタン接着剤を、少なくとも80℃の剥離温度まで加熱するステップを含む、接着剤化合物を剥離するための方法。
【請求項5】
前記カルボン酸ヒドラジドが、160℃から260℃、特に175℃から240℃の範囲の融点を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記カルボン酸ヒドラジドが、ポリカルボン酸ヒドラジドHYであり、シュウ酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、およびイソフタル酸ジヒドラジドからなる群から特に選択される、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記剥離温度が100℃よりも高く、好ましくは120℃から240℃の範囲にあり、特に好ましくは140℃から220℃の範囲にある、請求項4から6の一項に記載の方法。
【請求項8】
α)少なくとも1種のポリイソシアネートPと、
β)少なくとも1種のカルボン酸ヒドラジドと
を含み、比(nHY−nAK)/nNCOが0.2から3、特に0.5から2の値を有することを条件とする硬化組成物であって、
式中、nHYは、前記組成物中に存在するヒドラジド基の数を表し、
AKは、存在し、前記組成物中に放出することができるアルデヒドおよびケト基の数を表し、
NCOは、前記組成物中に存在するイソシアネート基の数を表すものである、硬化組成物。
【請求項9】
前記カルボン酸ヒドラジドが、160℃から260℃、特に175℃から240℃の範囲の融点を有する、請求項8に記載の硬化組成物。
【請求項10】
前記カルボン酸ヒドラジドが、ポリカルボン酸ヒドラジドHYであり、シュウ酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、およびイソフタル酸ジヒドラジドからなる群から特に選択される、請求項8または9に記載の硬化組成物。
【請求項11】
前記組成物が単一成分組成物であり、前記ポリイソシアネートPが、イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーPUPである、請求項8から10の何れか一項に記載の硬化組成物。
【請求項12】
前記組成物が、2成分組成物であり、第1の成分K1および第2の成分K2からなり、前記第1の成分K1は前記ポリイソシアネートPを含有し、前記第2の成分K2はポリオールおよび/またはポリチオールおよび/またはポリアミンを含有する、請求項8から10の何れか一項に記載の硬化組成物。
【請求項13】
80℃未満の温度、特に60℃未満の温度での、請求項8から12の何れか一項に記載の硬化組成物の硬化によって得られる、少なくとも1種のカルボン酸ヒドラジドを含有する硬化した組成物。
【請求項14】
基材S1(2)と、基材S2(3)と、基材S1(2)および基材S2(3)の間に位置付けられて基材S1と基材S2とを互いに結合する請求項13に記載の硬化した組成物(4’)とを有する複合体(1)。
【請求項15】
a)基材S1(2)と、基材S2(3)と、基材S1および基材S2の間に位置付けられかつ少なくとも1種のカルボン酸ヒドラジド(5)を含有する硬化したポリウレタン接着剤(4’)とを有する複合体(1)の、硬化したポリウレタン接着剤(4’)を、少なくとも80℃、好ましくは100℃よりも高い温度、特に120℃から240℃の範囲の温度に加熱して、硬化したポリウレタン接着剤(4’)の、加熱により開始された熱劣化の結果、接着剤化合物を剥離するステップ;
b)その後、複合体(1)から基材S2(3)を除去するステップ;
c)その後、基材S1(2)上でどのような場合にも残される熱劣化したポリウレタン接着剤(4”)の残留物を除去するステップ;
d)任意選択で、その後、基材S1を清浄化および/または前処理するステップ;
ならびに下記のステップe)およびf)、またはステップe’)およびf’)、すなわち、
e)ステップc)またはd)の後に、基材S1(2)に修理用接着剤(9)を付着させるステップ;
および
f)修理用接着剤(9)と基材S2’(10)とを結合するステップ;
e’)ステップc)またはd)の後に、基材S2’(10)に修理用接着剤(9)を付着させるステップ;
および
f’)修理用接着剤(9)と基材S1(2)とを結合するステップ
を含む、修理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−530173(P2012−530173A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515507(P2012−515507)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058596
【国際公開番号】WO2010/146144
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】