説明

ポリウレタン材料調製用容器の繰返し使用システム

【課題】 ポリウレタン材料の調製時に使用した各種容器を経済的に繰り返し使用する方法を提案すること。
【解決手段】 ポリウレタン材料の調製に使用する各種容器がポリウレタン材料と接する表面に離型面を構成する材料を貼付又は塗布する工程、該容器にポリウレタン材料を装入・混合し、該混合物を該容器から排出して前記離型面上に付着したポリウレタン材料を硬化させ膜を形成させる工程及び該ポリウレタン膜を有する容器をポリウレタン材料の調製に繰り返して使用した後、ポリウレタン膜を剥離する工程を含み、前記一連の工程を繰り返すことを特徴とするポリウレタン材料を調製する容器の繰返し使用システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン材料の調製に使用する容器を繰り返し使用するシステムに関する。詳しくは、ポリウレタン材料の調製において使用した容器を繰返し使用するに際し、通常行なわれている大量の有機溶剤による洗浄に替えて、有機溶剤による洗浄を殆ど行なうことなく容器を繰返し使用するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン材料を各種用途に、特に舗装表面を施工するに際して、使用するポリウレタン材料は、攪拌混合槽、混合材料の装入や運搬等に使用する容器及びその他容器に付属する物(以下、これらの物を含め単に容器と言う)により調製して使用される。通常、これらの容器は、容器内の材料を使用した後、ポリウレタン材料を溶解する有機溶剤により洗浄除去し、再び使用される。
しかしながら、このような方法では、人体及び環境に悪影響を及ぼす有機溶剤を、大量に使用する必要があり、且つ洗浄作業も長時間となり好ましくなく、また、洗浄に使用した有機溶剤の廃棄にも環境汚染などの観点から多大の配慮が必要である。さらに、洗浄不十分により残存した材料及び残存する洗浄用の有機溶剤が、次回の材料の混合や反応に予期せぬ悪影響を及ぼすことも起り得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、ポリウレタン材料の調製時に使用した各種容器を繰り返し使用するに際し、これらに付着残存したポリウレタン材料を有機溶剤により洗浄除去する方法に替え、洗浄用の有機溶剤を殆ど使用することなく、洗浄用溶媒に要する費用や洗浄のための作業時間を大きく削減し、またこれら有機溶剤による環境問題も解消する方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、前記課題を解決すべく種々検討し、本発明のシステムを見出した。
すなわち、本発明のシステムは、
ポリウレタン材料の調製に使用する各種容器がポリウレタン材料と接する表面に離型面を構成する材料を貼付又は塗布する工程、該容器にポリウレタン材料を装入・混合し、該混合物を該容器から排出して前記離型面上に付着したポリウレタン材料を硬化させ膜を形成させる工程及び該ポリウレタン膜を有する容器をポリウレタン材料の調製に繰り返し使用した後、ポリウレタン膜を剥離する工程を含み、前記一連の工程を繰り返すことを特徴とするポリウレタン材料を調製する容器の繰返し使用システムであり、離型面を構成する材料がワックス、シリコン系コーキング材、粘着テープ又は液体マスキング材である上記システムである。
【発明の効果】
【0005】
本発明のシステムによれば、ポリウレタン材料の調製に繰返し使用し、使用を中断又は終了した容器の後処理が、それら表面に付着したポリウレタン膜を引き剥がすことにより容易に行なえる。
したがって、該容器に付着残存するポリウレタン材料を有機溶剤により洗浄する必要がなく、環境問題上有害と見なされる有機溶剤の使用を大幅に削減することができる上に、洗浄が困難なため要していた作業時間を短くすることが出来るので、本発明のシステムは環境衛生上及び作業上も有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のシステムは、
1.ポリウレタン材料の調製に使用する各種容器がポリウレタン材料と接する表面に離型面を構成する材料を貼付又は塗布する工程、
2.該容器にポリウレタン材料を装入・混合し、該混合物を該容器から排出して、前記離型面上に付着したポリウレタン材料を硬化させ膜を形成させる工程、及び
3.ポリウレタン膜を有する該容器をポリウレタン材料の調製に繰り返して使用した後、ポリウレタン膜を剥離する工程を含み、
前記一連の工程を繰り返すことを特徴とするポリウレタン材料を調製する容器の繰返し使用システムである。
【0007】
本発明のシステムで、ポリウレタン材料の調製に使用する各種容器とは、ポリウレタン材料を混合するための槽や容器、及び混合のための攪拌羽根、温度計等の計測器を含むものである。その他、材料の計測、運搬、装入等に用いる小規模容器等をも含む。又、容器は、上記のような容器のみならず、製造工場から、ポリウレタン材料、例えば、ポリオールとポリアミン等の硬化剤、又はポリウレタンプレポリマーの主剤のそれぞれを単体として収容し搬送した後、施工現場でこれらのポリウレタン用材料を加えて混合するための容器であってもよい。
また、離型面を構成する材料とは、例えば、蜜蝋、鯨蝋、セラック蝋、その他の動物由来のワックス、例えば、カルナバ蝋、木蝋、米糠蝋(ライスワックス)、キャンデリラワックス、その他の植物由来のワックス、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、その他石油由来のワックス、例えば、モンタンワックス、オゾケライト、その他、鉱物由来のワックス、例えば、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、油脂系合成ワックス(エステル、ケトン類、アミド)、水素化ワックス、その他の合成ワックス、その他、加工変性酸化ワックス、配合ワックス、変性モンタンワックス、その他、末端商品としてのカーワックス、スキーワックス、床ワックス、タイヤワックス等が挙げられる。
また、シリコン系又は変性シリコン系等のシーリング材又はコーキング材、表面が非極性物質、例えば、長鎖アルキル基ポリマーやフッ素ポリマー、シリコン樹脂等でコーティングされた紙又は布帛に裏面が粘着剤を塗布した粘着テープ(ガムテープ)、液体マスキング材(換気扇リパック:(株)リンレイ社製)等が挙げられる。
【0008】
本発明に於いてポリウレタン材料とは、公知のポリウレタン材料システムで用いる種々の材料をいう。一般にいわゆる2液型システム、即ちポリイソシアナートまたはポリイソシアナートのイソシアナト基の一部をポリオールとあらかじめ反応させて得られるプレポリマーとポリウレタン化学において用いられる公知のポリオール、ポリアミン、充填剤、可塑剤、触媒、顔料、安定剤などの成分である。
これらの材料の他、施工目的に応じて、前記ポリウレタン材料中にゴム、発泡体、その他の骨材等を加えることもある。
【0009】
先ず、最初の工程である、各種容器がポリウレタン材料と接する表面に離型面を構成する材料を貼付又は塗布する工程とは、該使用材料の適用態様により異なる。
すなわち、その態様は、特に限定されるものではなく、ワックスでは、通常行なわれる塗布、例えば、刷毛を用いた塗布やスプレーによる塗布、またシリコンコーキング材やリパック材等はスプレーによる塗布、さらに、粘着テープは、その粘着面を容器の表面に粘着させて貼布する。
これらの塗布又は貼付は、前記容器がポリウレタン材料と接する表面を全て覆うように行なう。離型面を構成する材料は、同種のものは勿論、必要に応じ異なる2種以上を用いてもよい。
【0010】
次の工程は、内表面に離型面を構成する材料を貼付又は塗布した容器に、舗装等の施工に合わせて調製すべきポリウレタン材料を装入・混合し、該混合物を施工に使用のため排出して、その後の離型面上に残存付着したポリウレタン材料をそのまま硬化させて膜を形成させる工程である。
ポリウレタン膜は、特にその形成が限定されるものではなく、ポリウレタン施工の工法にしたがい使用した容器を、次回に使用するまで放置している間に硬化反応して形成されるものでよく、特別な膜形成処理を行なう必要はない。
【0011】
さらに、該ポリウレタン膜を有する容器をポリウレタン材料の調製に繰り返して使用した後、ポリウレタン膜を剥離する工程とは、(1)先の工程でポリウレタン膜が形成された容器に、引き続きポリウレタン施工に用いるためのポリウレタン材料を装入・混合し、ポリウレタン材料混合物を得て施工に用い、(2)前記(1)をポリウレタン材料の施工規模に合わせて繰返し、(3)この施工を中断又は終了した際に、容器に形成されているポリウレタン膜を剥離する工程である。
【0012】
ポリウレタン膜の剥離は、使用した離型面を構成する材料により、その具体的態様は次の通りである。
すなわち、(1)離型面を構成する材料がワックス等であって、ポリウレタン膜がワックス層内で容器から剥離し、ワックス等を容器表面に付着残存したまま容器から剥がれる態様、(2)材料がシリコン系コーティング材又は粘着テープであって、ポリウレタン膜がこれらの材料の表面から剥離し、シリコン系コーティング材又は粘着テープを容器表面に付着したまま剥がれる態様、及び(3)離型面を構成する材料が液体マスキング材であって、ポリウレタン膜がこれらの材料と共に容器表面から簡単に剥離し、容器表面に残存しない態様である。
これらいずれの態様であっても、ポリウレタン膜は容器に残存しないので、有機溶剤により洗浄してこれらを取り除く必要がない。
【0013】
容器を繰返し使用する場合、離型面を構成する材料がワックスでは、容器を洗浄しなくても、表面に残存付着するワックス上に新たなワックスを追加塗布することにより、前記(1)の工程に進むことができる。また粘着テープ又はシリコン系コーキング材では、ポリウレタン膜を引き剥がして、そのまま繰返し使用できる。必要により粘着テープ又はシリコン系コーキング材を剥ぎ取り、再度、貼付又は塗布して、前記(1)の工程に進むこともできる。さらに液体マスキング材では、これをポリウレタン膜と共に引き剥がした後、再度、塗布して、前記(1)の工程に進むことができる。
本発明は、以上の一連の工程を繰り返すことを特徴とするポリウレタン材料を調製する容器の繰返し使用システムである。
【実施例】
【0014】
本発明の方法は、例えば、以下のように実施することができる。
ポリウレタン材料を調製する容器がポリウレタン材料と接する表面にワックス(リンレイ社製;カーワックス)を塗布し、塗布斑がないようにスポンジ等で万遍なく延ばした。
ワックスを塗布した容器にポリウレタン材料(常温硬化型)を装入し、混合した材料を舗装に使用した。容器内表面にはポリウレタン材料が付着残存し、そのまま放置して、付着したポリウレタン材料の膜を硬化させた。
このことによって、容器内表面がポリウレタン膜である容器が得られる。この容器に再度ポリウレタン材料を装入し、ポリウレタン混合物を得た。この混合物を排出し舗装に用いた。
このような処理を所要回数繰返し、舗装施工を終えた。
容器内のポリウレタン膜の一端を剥がし、その個所からポリウレタン膜全体を引き剥がした。ポリウレタン膜はワックスの剥離効果が優れ、簡単に引き剥がすことができた。
引き剥がした後、容器の表面にワックスが残存しているので、その上に、補充のワックスを初回と同様に吹きつけ、万遍なく引き伸ばした。
この再度、表面にワックスを塗布した容器を用い前記と同様の処理を繰り返すことができた。
【0015】
従来、ポリウレタン材料を調製した容器は、ポリウレタン材料を使用後、トルエン、酢酸エチル等の有機溶剤を用いて洗浄していたが、その溶剤量は大量であり、洗浄作業にも長時間を要していた。
本発明のシステムによれば、容器表面からポリウレタン膜の剥離は簡単であり、作業手間も大きく省ける。又、有機溶剤を用いて洗浄することがないので、環境、人体への影響並びに容器の洗浄作業に要するコストを削減できる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明のシステムでは、ポリウレタン材料の調製の都度、有機溶剤により容器を洗浄する必要がないので、環境及び人体に悪影響を与える可能性が問題視されている有機溶剤の使用を大幅に削減でき実用的に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン材料の調製に使用する各種容器がポリウレタン材料と接する表面に離型面を構成する材料を貼付又は塗布する工程、該容器にポリウレタン材料を装入・混合し、該混合物を該容器から排出して前記離型面上に付着したポリウレタン材料を硬化させ膜を形成させる工程及び該ポリウレタン膜を有する容器をポリウレタン材料の調製に繰り返して使用した後、ポリウレタン膜を剥離する工程を含み、前記一連の工程を繰り返すことを特徴とするポリウレタン材料を調製する容器の繰返し使用システム。
【請求項2】
離型面を構成する材料が、ワックスである請求項1記載のシステム。
【請求項3】
離型面を構成する材料が、シリコン系コーキング材又は粘着テープである請求項1記載のシステム。
【請求項4】
離型面を構成する材料が、液体マスキング材である請求項1記載のシステム。

【公開番号】特開2006−131657(P2006−131657A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−318930(P2004−318930)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(597000906)東洋スポーツ施設株式会社 (6)
【Fターム(参考)】