説明

ポリウレタン樹脂、及びポリウレタン樹脂組成物

【課題】 本発明は、芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートに起因する繰り返し単位を導入したことを特徴とする新規なポリウレタン樹脂を提供することを目的とする。また、本発明は、新規なポリウレタン樹脂組成物、特に、その硬化物が折り曲げ性、ハンダ耐熱性などの特性が優れ、さらに表面硬度が改良された硬化性のポリウレタン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 少なくとも、(a)ジイソシアネート化合物と、(b1)芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートを含む(b)ジオール化合物とを必須成分として反応して得られる(A)ポリウレタン樹脂に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートに起因する繰り返し単位を導入したことを特徴とする新規なポリウレタン樹脂、及びそれを含んで構成されたポリウレタン樹脂性組成物、特に硬化性のポリウレタン樹脂組成物などに関する。この硬化性のポリウレタン樹脂を含んで構成されたポリウレタン樹脂組成物の硬化物は、折り曲げ性、ハンダ耐熱性などの特性が優れ、さらに表面硬度が改良されたものである。このため、本発明の硬化性のポリウレタン樹脂は、特にチップオンフィルム(COF)形式のフレキシブル配線板の絶縁膜(保護膜、ソルダレジスト、層間絶縁層など)を形成するために好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
近年、フレキシブル配線基板の絶縁膜は、主にポリイミド樹脂(特許文献1)、ポリアミドイミド樹脂(特許文献2)、ポリウレタン樹脂(特許文献3)、エポキシ樹脂などからなる樹脂硬化性組成物を用いて形成されている。これらの樹脂硬化性組成物では、その硬化物に柔軟性、折り曲げ性、低反り性などの特性を付与する目的で、樹脂成分に脂肪族ポリカーボネートなどの柔軟成分を導入して変性している。しかしながら、前記の柔軟成分で変性した樹脂を用いた硬化膜は表面硬度が十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−307183号公報
【特許文献2】特開2002−145981号公報
【特許文献3】特開2007−39673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートに起因する繰り返し単位を導入したことを特徴とする新規なポリウレタン樹脂を提供することを目的とする。また、本発明は、新規なポリウレタン樹脂組成物、特に、その硬化物が折り曲げ性、ハンダ耐熱性などの特性が優れ、さらに表面硬度が改良された硬化性のポリウレタン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は以下の各項に関する。
(1) 少なくとも、(a)ジイソシアネート化合物と、(b1)芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートを含む(b)ジオール化合物とを必須成分として反応して得られる(A)ポリウレタン樹脂。
【0006】
(2) (b1)芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートが、下記化学式(1)で表される主鎖中に芳香環を有する繰り返し単位を含んだ2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートであることを特徴とする前記項1に記載の(A)ポリウレタン樹脂。
【0007】
【化1】

(式中、Z及びZはそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖のアルカンジイル基を示し、nは1〜40の整数である。)
【0008】
(3) (b1)芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートが、前記化学式(1)で表される繰り返し単位と、下記化学式(2)で表される繰り返し単位とを有する共重合体からなる2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートであることを特徴とする前記項1または2に記載の(A)ポリウレタン樹脂。
【0009】
【化2】

(式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数3〜20の二価の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数30〜50の脂肪族及び/又は脂環式の二価の炭化水素基を示す。)
【0010】
(4) (b1)芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートにおいて、前記化学式(1)で表される繰り返し単位の数と前記化学式(2)で表される繰り返し単位の数との比([化学式(1)で表される繰り返し単位の数]/[化学式(2)で表される繰り返し単位の数])が、1/9〜9/1の範囲であることを特徴とする前記項3に記載の(A)ポリウレタン樹脂。
【0011】
(5) (b1)芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートを構成する、前記化学式(1)で表される繰り返し単位が、下記化学式(3)で表される繰り返し単位であることを特徴とする前記項1〜4のいずれかに記載の(A)ポリウレタン樹脂。
【0012】
【化3】

【0013】
(6) (b)ジオール化合物が、さらに(b2)カルボキシル基を有するジオール化合物含むことを特徴とする前記項1〜5のいずれかに記載の(A)ポリウレタン樹脂。
【0014】
(7) (b)ジオール化合物が、さらに(b3)下記化学式(4)で示される2官能性水酸基末端イミドオリゴマーを含むことを特徴とする前記項1〜6のいずれかに記載の(A)ポリウレタン樹脂。
【0015】
【化4】

(式中、Rは2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を示し、Xはテトラカルボン酸のカルボキシル基を除いた4価の基を示し、Yはジアミンのアミノ基を除いた2価の基を示し、tは0〜20の整数である。)
【0016】
(8) 前記項1〜7のいずれかに記載の(A)ポリウレタン樹脂を含有することを特徴とするポリウレタン樹脂組成物。
【0017】
(9) さらに、(B)エポキシ樹脂及び/又は(C)アミノ樹脂を含んで硬化性を有することを特徴とする前記項8に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【0018】
(10) 前記項9に記載の硬化性を有する樹脂組成物からなるソルダーレジストインキ。
【0019】
(11) 前記項9に記載の硬化性を有する樹脂組成物を硬化させたことを特徴とする硬化物。
【0020】
(12) 前記項9に記載の硬化物を含んで構成されていることを特徴とする電子部品。
【発明の効果】
【0021】
本発明によって、芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートに起因する繰り返し単位を導入したことを特徴とする新規なポリウレタン樹脂を得ることができる。また、本発明によって、新規なポリウレタン樹脂組成物、特に、その硬化物が折り曲げ性、ハンダ耐熱性などの特性が優れ、さらに表面硬度が改良された硬化性のポリウレタン樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の(A)ポリウレタン樹脂は、少なくとも、(a)ジイソシアネート化合物と、(b1)芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートを含む(b)ジオール化合物とを必須成分として反応して得られる。
【0023】
本発明において、(a)ジイソシアネート化合物は、通常のポリウレタン樹脂(ポリウレタン)を製造する際に用いられるものを好適に用いることができる。すなわち、1分子中にイソシアネート基を2個有するものであればどのようなものでもよく、脂肪族、脂環族または芳香族のポリイソシアネートであってよいが、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,9−ノナメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、2,2’−ジエチルエーテルジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジメチレレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−メチレンジトリレン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、テトラクロロフェニレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素化1,3−キシリレンジイソシアネート、水素化1,4−キシリレンジイソシアネートなどのジイソシアネートを好適に挙げることができる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本発明において、(b)ジオール化合物は、(b1)芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネート化合物を含んで構成される。
(b1)芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネート化合物は、主鎖中にカーボネート結合を有し且つ主鎖及び/又は側鎖に芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端化合物であれば特に限定されないが、前記化学式(1)で表される主鎖中に芳香環を有する繰り返し単位を含んだ2官能性水酸基末端ポリカーボネートが好ましく、さらに前記化学式(3)で表される主鎖中に芳香環を有する繰り返し単位を含んだ2官能性水酸基末端ポリカーボネートがより好ましい。
【0025】
(b1)芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネート化合物は、数平均分子量が500〜10000のものが好ましく、1000〜5000のものがより好ましい。数平均分子量が500未満になると好適な柔軟性が得難くなり、また数平均分子量が10000を越えると耐熱性や耐溶剤性が悪くなることがあるので前記程度のものが好適である。
ここで、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の値である。
【0026】
本発明で用いられる(b1)芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネート化合物は、(e)芳香族を有するジヒドロキシル化合物と(f)炭酸エステルとを触媒の存在下又は不存在下にエステル交換反応させることによって得ることができる。
【0027】
エステル反応の触媒としては、通常のエステル交換反応で使用される触媒(エステル交換触媒)が挙げられる。例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アルミニウム化合物、亜鉛化合物、マンガン化合物、ニッケル化合物、アンチモン化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物、有機スズ化合物が好ましく挙げられる。
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ金属のカルボン酸塩(酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等)、アルカリ金属アルコキシド(リチウムメトキシド、ネトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド等)等が挙げられ、アルカリ土類金属化合物としては、アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化マグネシウム等)、アルカリ土類金属アルコキシド(マグネシウムメトキシド等)等が挙げられる。
【0028】
アルミニウム化合物としては、アルミニウムアルコキシド(アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムsec−ブトキシド等)、アルミニウムアセチルアセトナート等のアルミニウム化合物等が挙げられる。
亜鉛化合物としては、亜鉛のカルボン酸塩(酢酸亜鉛等)、亜鉛アセチルアセトナート等が挙げられ、マンガン化合物としては、マンガンのカルボン酸塩(酢酸マンガン等)、マンガンアセチルアセトナート等が挙げられ、ニッケル化合物としては、ニッケルのカルボン酸塩(酢酸ニッケル等)、ニッケルアセチルアセトナート等が挙げられる。
アンチモン化合物としては、アンチモンのカルボン酸塩(酢酸アンチモン等)、アンチモンアルコキシド等が挙げられ、ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムアルコキシド(ジルコニウムプロポキシド、ジルコニウムブトキシド等)、ジルコニウムアセチルアセトナート等が挙げられる。
【0029】
チタン化合物としては、チタンアルコキシド(チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラブトキシド、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネート等)、チタンアシレート(トリブトキシチタンステアレート、イソプロポキシステアレート等)、チタンキレート(ジイソプロポキシチタンビスアセチルアセトネート、ジヒドロキシ・ビスラクタトチタン等)等が挙げられる。
有機スズ化合物としては、ジブチルチンオキシド、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート等が挙げられる。
なお、各カルボン酸塩は、炭素数2〜30のものが好ましく、炭素数2〜18のものがより好ましく、各アルコキシドは、アルコキシ基の炭素数1〜30のものが好ましく、炭素数2〜18のものがより好ましい。
前記の触媒の中では、チタン化合物、有機スズ化合物が好ましく、チタン化合物がより好ましく、チタンアルコキシドが更に好ましい。チタンアルコキシドの中では、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラブトキシドがより好ましく、チタンテトラブトキシドが特に好ましい。
なお、触媒は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
エステル交換反応は、触媒の存在下又は不存在下で行うことができるが、反応効率の観点から、触媒の存在下で行うことが好ましい。
エステル交換反応における反応温度及び反応圧力は用いる原材料によって異なるが、通常は、反応温度は90〜230℃であることが好ましく、反応圧力は常圧から30〜500mmHgの減圧とすることが好ましい。なお反応は、空気、炭酸ガス、又は不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム等)の雰囲気下又は気流中で行なうことができるが、不活性ガス雰囲気下又は気流中で行なうことが好ましい。
さらに触媒を用いる場合の使用量は、原材料の芳香族を有するジヒドロキシル化合物と炭酸エステルとの合計仕込み量に対して、触媒の重量基準で1〜20,000ppmが好ましく、10〜5,000ppmがより好ましく、100〜4,000ppmが更に好ましい。
【0031】
なお、エステル交換反応においては、交換反応の結果副生する、アルコール類などの副生物は反応系外へ抜き出しながら反応することが好適である。
【0032】
さらに、本発明において、(b1)芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートが、前記化学式(1)で表される繰り返し単位と、下記化学式(2)で表される繰り返し単位とを有する共重合体からなる2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートであることが、得られる(A)ポリウレタン樹脂の溶解性を向上できるので好ましい。
特に、(b1)芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートが、前記化学式(1)で表される繰り返し単位と、下記化学式(2)で表される繰り返し単位とを有する共重合体であって、前記化学式(1)で表される繰り返し単位の数と前記化学式(2)で表される繰り返し単位の数との比([化学式(1)で表される繰り返し単位の数]/[化学式(2)で表される繰り返し単位の数])が、1/9〜9/1、好ましくは8/2〜2/8の範囲であることが、得られる(A)ポリウレタン樹脂の溶解性を向上できるので好ましい。
【0033】
(b1)芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートが、前記化学式(1)で表される繰り返し単位と、下記化学式(2)で表される繰り返し単位とを有する共重合体からなる2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートである場合には、共重合体の数平均分子量が500〜10000のものが好ましく、1000〜5000のものがより好ましい。数平均分子量が500未満になると、得られる(A)ポリウレタン樹脂において、好適な柔軟性が得難くなり、また数平均分子量が10000を越えると、得られる(A)ポリウレタン樹脂の耐熱性や耐溶剤性が悪くなることがあるので前記程度のものが好適である。
【0034】
このような前記化学式(1)で表される繰り返し単位と下記化学式(2)で表される繰り返し単位とを有する共重合体は、(e)芳香族を有するジヒドロキシル化合物、(g)芳香環を有さないジヒドロキシ化合物、及び(f)炭酸エステルを触媒の存在下又は不存在下にエステル交換反応させることによって得ることができる。
このエステル交換反応は、前述の(e)芳香族を有するジヒドロキシル化合物と(f)炭酸エステルとのエステル交換反応と同様に行うことができる。
なお、触媒を用いる場合の使用量は、原材料の芳香族を有するジヒドロキシル化合物と芳香環を有さないジヒドロキシ化合物と炭酸エステルとの合計仕込み量に対して、触媒の重量基準で1〜20,000ppmが好ましく、10〜5,000ppmがより好ましく、100〜4,000ppmが更に好ましい。
【0035】
(e)芳香環を有するジヒドロキシ化合物は、主鎖及び/又は側鎖に芳香環を有するジヒドロキシ化合物であれば特に限定するものではない。具体的には、1,4−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジエタノール、1,4−ベンゼンジプルロパノール、1,4−ベンゼンジブタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジエタノール、1,3−ベンゼンジプロパノール、1,3−ベンゼンジブタノール、4−(4−ヒドロキシメチルフェニル)ブタノール、3−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]プロパノール等を好適に挙げることができる。
(f)炭酸エステルとしては特に限定するものでもないが、具体的には炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン等を好適に挙げることができる。
(g)芳香環を有さないジヒドロキシ化合物は、特に限定するのもではないが、具体的には1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,3−ブタンジオール、3−メチルペンタン−1,5−ジオール、2−エチルへキサンー1,6−ジオール、ネオペンタングリコール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2,2‘−ビス(4−ヒドロキシシクロへキシル)プロパン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラエチレングリコール等を好適に挙げることができる。
【0036】
本発明において、(b)ジオール化合物は、(b1)芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネート単独であってもよいが、他のジオール化合物と好適に組み合わせて用いることができる。
すなわち、本発明において、(b)ジオール化合物は、(b1)芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートを含んで構成されるが、さらに(b2)反応性極性基含有ジオール化合物を好適に含むことができる。反応性極性基含有ジオール化合物は特に限定するものではないが、置換基としてカルボキシル基を持った、炭素数が1〜30更に炭素数が2〜20のジオール化合物が好適である。具体的には、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸などを挙げることができる。
反応性極性基含有ジオール化合物を用いることによって、得られる(A)ポリウレタン樹脂に硬化性を付与することができるので、(A)ポリウレタン樹脂が、硬化性樹脂組成物の成分として好適に用いられるようにできる。
【0037】
本発明においては、(b)ジオール化合物は、さらに(b3)主鎖中にイミド環を有するジオール化合物を用いることができる。(b3)主鎖中にイミド環を有するジオール化合物は、主鎖中にイミド環を有するジオール化合物であれば限定するものではないが、例えば前記化学式(4)で表されるアルコール性水酸基末端のイミドオリゴマーを好適に用いることができる。
(b3)主鎖中にイミド環を有するジオール化合物を用いることで、ポリウレタン樹脂分子中にイミド構造を導入することが可能となる。これにより、硬化物の機械強度、耐熱性や絶縁信頼性を増大することができる。
【0038】
前記化学式(4)で表されるアルコール性水酸基末端のイミドオリゴマーは、テトラカルボン酸成分と、ジアミン化合物及び水酸基を1個有するモノアミン化合物からなるアミン成分とから得られる。式中、mは0〜20の整数を示し、特に0〜10であり、さらに好ましくは0〜5である。mが20以上では得られるポリウレタン樹脂は、溶解性が悪くなることがあるので前記程度のものが好適である。なお、このアルコール性水酸基末端のイミドオリゴマーは、限定されるものではないが、例えば特許文献1及び特開2007−238818号公報などに記載の公知の方法で容易に得ることができる。
【0039】
本発明の(A)ポリウレタン樹脂は、少なくとも、(a)ジイソシアネート化合物と、(b1)芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートを含む(b)ジオール化合物とを必須成分として、好適には溶媒中で0〜230℃の温度で0.1〜24時間、反応して得ることができる。本発明において、使用する(a)ジイソシアネート化合物と(b)ジオール化合物とのモル比[(b)ジオール化合物のモル数/(a)ジイソシアネート化合物のモル数]は、好ましくは0.5〜3.0、より好ましくは0.8〜2.5、さらに好ましくは0.9〜2.0の範囲である。前記モル比が小さくなると反応液が増粘することがある。また前記モル比が大きすぎるとポリウレタン樹脂の分子量が低くなり、耐熱性などの特性が低下することがある。
【0040】
また、(b)ジオール化合物が、(b2)反応性極性基含有ジオール化合物を含んで構成される場合に、それを使用するモル比[(b2)反応性極性基含有ジオール化合物のモル数/((b)全ジオール化合物のモル数−(b2)反応性極性基含有ジオール化合物のモル数)]は、好ましくは0.01〜10、より好ましくは0.1〜5、特に好ましくは0.2〜2の範囲である。前記モル比が小さすぎると、硬化性樹脂組成物の成分として用いた場合に、架橋基が少ないため、架橋密度が低く硬化物の耐熱性が低下することがあり、前記モル比が大きすぎると架橋基が多すぎるため、架橋密度が高くなり得られる硬化物の硬化時の変形(特に反り)が大きくなる。
【0041】
さらに、(b)ジオール化合物が、(b3)主鎖中にイミド環を有するジオール化合物を含んで構成される場合に、それを使用するモル比[(b3)主鎖中にイミド環を有するジオール化合物のモル数/((b)全ジオール化合物のモル数−(b3)主鎖中にイミド環を有するジオール化合物のモル数)]は、好ましくは0.01〜10、より好ましくは0.1〜5、特に好ましくは0.2〜2の範囲である。前記モル比が小さすぎると、硬化物の耐熱性が低下することがあり、前記モル比が大きすぎると柔軟性が低下することがある。
【0042】
(A)ポリウレタン樹脂を調製する際に使用する溶媒は、(A)ポリウレタン樹脂を溶解できる溶媒であれば限定するものではないが、例えば含窒素系溶媒、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタムなど、含硫黄原子溶媒、例えばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ヘキサメチルスルホルアミドなど、含酸素溶媒、例えばフェノ−ル系溶媒のクレゾ−ル、フェノ−ル、キシレノ−ルなど、ジグライム系溶媒のジエチレングリコ−ルジメチルエ−テル、エチレングリコールジエチルエーテル、カルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、トリエチレングリコ−ルジメチルエ−テル、テトラグライムなど、ケトン系溶媒のアセトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、シクロヘキサノン、イソホロンなど、エーテル系溶剤のエチレングリコール、ジオキサン、テトラヒドロフランなど、ラクトン系溶媒のγ−ブチロラクトンなど、を挙げることができる。特に、γ−ブチロラクトン、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコ−ルジメチルエ−テルなどを好適に挙げることができる。
【0043】
本発明で用いられる(A)ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、限定するものではないが、好ましくは3000〜100000、より好ましくは5000〜50000である。数平均分子量が前記範囲よりも低いと、得られる硬化膜の伸度、可撓性および強度などの機械的特性を損なうことがあり、一方、前記範囲を超えると粘度が必要以上に増加するために用途が限定される恐れがある。
【0044】
なお、本発明の(A)ポリウレタン樹脂は、(a)ジイソシアネート化合物と(b1)芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートを含む(b)ジオール化合物からなる必須成分以外の成分として、イソシアネート基或いはアルコール性水酸基を反応することができる反応基を有する化合物を、前記必須成分と共に反応させても構わない。そのような化合物としては、ピロメリット酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などのテトラカルボン酸二無水物などのテトラカルボン酸類や、トリメリット酸無水物のようなトリカルボン酸一無水物などのトリカルボン酸類を好適に挙げることができる。これらの化合物を導入することによって、(b)ジオール化合物を(b3)主鎖中にイミド環を有するジオール化合物を含んで構成した場合と同じように(A)ポリウレタン樹脂として、ポリウレタンにイミド環などを導入した変性ポリウレタン樹脂を好適に得ることができる。
【0045】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、(A)ポリウレタン樹脂を含んで構成された樹脂組成物である。このような組成物において、特に(b)ジオール化合物に(b2)反応性極性基含有ジオール化合物を含有させて硬化性を付与した場合に、さらに(B)エポキシ樹脂及び/又は(C)アミノ樹脂を含有させて、好適に硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0046】
(B)エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、N−グリシジル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエンなどの、一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物などを好適に用いることができる。特に脂環式エポキシ樹脂や、エポキシ化ポリブタジエンは、塩素不純物が少なく絶縁信頼性が良好であるため、好適に用いることができる。また、難燃性付与のために、塩素、臭素等のハロゲンや燐等の原子がその構造中に導入されたエポキシ化合物を使用してもよい。
【0047】
(C)アミノ樹脂としては、例えば完全アルキル化型、メチロール基型、イミノ基型、イミノ/メチロール型のメラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、グリコールウリル樹脂などを好適に用いることができる。特にベンゾグアナミン樹脂は、絶縁信頼性が良好であることから好適である。
【0048】
本発明のポリウレタン樹脂硬化性組成物においては、限定するものではないが、(A)ポリウレタン樹脂の固形分100質量部に対して、(B)エポキシ樹脂1〜50質量部、(C)アミノ樹脂0〜50質量部の割合で配合することが好適である。
【0049】
本発明のポリウレタン樹脂硬化性組成物においては、さらに(D)フィラーを好適に含有することができる。
(D)フィラーとしては公知のものを好適に使用できる。例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、ガラス粉、石英粉などの無機の微粒子、エポキシ樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、尿素樹脂粉末、グアナミン樹脂粉末、ポリエステル樹脂粉末、ポリアミド樹脂粉末、ポリイミド樹脂粉末、ゴム粒子、シリコーンパウダー等の有機の微粒子を好適に用いることができる。その粒子径(平均粒径)は、0.001〜50μm、好ましくは0.01〜10μmである。また、その配合量は、(A)ポリウレタン樹脂の固形分100質量部に対して、1〜200質量部、好ましくは10〜100質量部である。
【0050】
本発明のポリウレタン樹脂硬化性組成物で用いる(E)有機溶媒としては、(A)ポリウレタン樹脂を調製する際に使用できる有機溶媒をそのまま使用することができる。好適には、含窒素系溶媒、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタムなど、含硫黄原子溶媒、例えばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ヘキサメチルスルホルアミドなど、含酸素溶媒、例えばフェノ−ル系溶媒、例えばクレゾ−ル、フェノ−ル、キシレノ−ルなど、ジグライム系溶媒例えばジエチレングリコ−ルジメチルエ−テル(ジグライム)、トリエチレングリコ−ルジメチルエ−テル(トリグライム)、テトラグライムなど、ケトン系溶媒例えば、アセトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、シクロヘキサノン、イソホロンなどエチレングリコール、ジオキサン、テトラヒドロフランなど、ラクトン系溶媒、例えばγ−ブチロラクトンなど、を挙げることができる。特に、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、トリエチレングリコ−ルジメチルエ−テルなどを好適に使用することができる。
【0051】
また、本発明のポリウレタン樹脂硬化性組成物においては、イミダゾール類や3級アミン類などの硬化触媒、有機着色顔料、無機着色顔料などの顔料、アクリル系消泡剤、ビニル系消泡剤、シロキサン系消泡剤などの消泡剤、ヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物、ヒンダードアミン系化合物等の酸化防止剤、フェノール樹脂など公知の各種添加剤を配合してもよい。
【0052】
本発明のポリウレタン樹脂硬化性組成物をソルダーレジストインキとして用いる際には、25℃における回転粘度計での粘度が、通常5Pa・s 〜500Pa・sであり、好ましくは25Pa・s 〜200Pa・sの範囲である。スクリーン印刷によりパターン形成する場合に、滲み出しを抑制するため、シリカなどの微細なフィラーを加えてチキソ性を付与することが好ましい。
【0053】
本発明のポリウレタン樹脂硬化性組成物は、好適には加熱処理することによって硬化物を得ることができる。溶液組成物の場合には、例えばスクリーン印刷などによって塗膜を形成し、低温で溶媒を除去し、次いで加熱処理によって、少なくとも(A)ポリウレタン樹脂と、(B)エポキシ樹脂及び/又はアミノ樹脂との間の架橋反応を行わせることによって好適に硬化物を得ることができる。加熱処理条件としては、例えば60〜200℃で10分〜5時間、好ましくは80〜150℃で30分〜3時間、さらに好ましくは100〜130℃で30分〜2時間であり、熱風や赤外線によって加熱することが好ましい。
【0054】
本発明のポリウレタン樹脂硬化性組成物は、その硬化物が良好な耐熱性、機械的特性、優れた可撓性、低反り性、絶縁信頼性などに加え、より高いアンダーフィル材との接合強度を達成することができるので、プリント配線板、フレキシブルプリント配線板、チップオンフィルム(COF)などのチップ部品を実装する電気電子部品の絶縁膜(保護膜)を形成するために好適に用いることができる。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、層間絶縁膜などの電気絶縁材料、ICや超LSIの封止材料、積層板用材料等の電子部品の用途に好適に利用できる。
【0055】
ソルダーレジストとして用いる場合の加熱処理による硬化は、例えば導電性金属で形成された配線パタ−ンを有する絶縁フィルムのパタ−ン面に、乾燥膜の厚さが3〜60μm程度となるようにスクリ−ン印刷などによって塗布した後、100〜210℃程度好適には110〜200℃で5〜120分間好適には10〜60分間程度で加熱処理して硬化させることによって、良好な折り曲げ性、ハンダ耐熱性を有すると共に、表面硬度が改良された絶縁膜(硬化膜)を得ることができる。
【実施例】
【0056】
実施例及び比較例によって本発明を更に説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
以下の各例において評価は次の方法で行った。
【0058】
[引張試験]
オリエンテック株式会社製テンシロン万能試験機KTA−500を用い、ロードセル:5Kgf、拡大レンジ:100%、試験速度:50mm/min、チャック間距離:50mmの条件で測定を行った。
【0059】
[ハンダ耐熱性]
厚さ35μmの電解銅箔の光沢面に樹脂組成物を塗布し硬化させ、50μm厚の絶縁膜を形成した。絶縁膜上にロジン系フラックス(サンワ化学工業社製:SUNFLUX SF−270)を塗布した後、260℃のハンダ浴に10秒間絶縁膜を接触させた。その後のサンプルの状態を観察して評価した。異常が生じない場合を○、ふくれなどの異常が生じた場合を×で示した。
【0060】
[折り曲げ性]
ポリイミドフィルム(宇部興産製ユーピレックス35SGA)に樹脂組成物を塗布し、80℃で30分間次いで120℃で60分間加熱処理し、約10μm厚の硬化膜を形成した。このポリイミド上硬化膜を長さ2cm×幅1cmにカットし、長さ方向の中央で折り曲げ、折り曲げ部上に500gの分銅を載せ1分間静置した。押し曲げ部を顕微鏡で観察し、異常がない場合を○、クラック・白化等が見られる場合を×とした。
【0061】
[鉛筆硬度]
厚さ35μmの電解銅箔の光沢面に樹脂組成物を塗布し、80℃で30分間次いで120℃で60分間加熱処理し、約50μm厚の硬化膜を形成した。この硬化膜に3Bから3Hまでの鉛筆の芯を平らになるように研ぎ、約45°の角度で重り200gで押し付けて、塗膜が剥がれない鉛筆の硬さを記録した。
【0062】
以下の各例で使用した化合物は、次のとおりである。
[ジオール化合物]
1,4−ベンゼンジメタノール (青島和興精細化工公司製)
1,6−ヘキサンジオール (宇部興産株式会社製)
[カーボネート化合物]
ジメチルカーボネート (宇部興産株式会社製)
[(a)ジイソシアネート化合物]
デスモジュールW (住化バイエルウレタン株式会社製)
ミリオネートMT (日本ポリウレタン工業株式会社製)
コスモネートT-80 (三井化学ポリウレタン株式会社製)
[(b1)2官能性水酸基末端カーボネート]
ETETNACOLL UB−100(宇部興産株式会社製 水酸基価112.8mgKOH/g)
クラレポリオール C−1065N(株式会社クラレ製 水酸基価112mgKOH/g)
ETETNACOLL UH−100(宇部興産株式会社製 水酸基価111.7mgKOH/g)
[(b2)カルボキシル基を有するジオール化合物]
DMBA 2,2−ジメチロールブタン酸(日本化成株式会社製)
Bis−MPA 2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(広栄パーストープ株式会社社製)
[(c)アルコール化合物]
イソブタノール(和光純薬株式会社製)
[(B)エポキシ樹脂、フェノール樹脂もしくは(C)アミノ樹脂]
セロキサイド2021P (ダイセル化学株式会社製エポシキ樹脂、エポキシ当量:126)
YH−434 (東都化成株式会社 エポキシ当量:120)
H−1 (明和化成株式会社)
マイコートM136 (日本サイテックインダストリーズ株式会社製ベンゾグアナミン樹脂)
[(D)フィラー]
〔シリカ〕
アエロジルR972(日本アエロジル社製 比表面積(BET法):110m/g)
アエロジル#50(日本アエロジル社製 比表面積(BET法):50m/g)
〔硫酸バリウム〕
BARIFINE B−54 (堺化学工業株式会社製、平均粒子径0.3μm)
〔シリコーンレジンパウダー〕
KMP−590(信越化学工業社製 平均粒子径2.0μm)
[(E)有機溶媒]
γ―ブチロラクトン(三菱化学株式会社製)
ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート(和光純薬株式会社製)
[硬化触媒もしくは硬化促進剤]
チタンテトラブトキシド(日本曹達株式会社製)
DBU(アルドリッチ株式会社製、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン)
キュアゾール2E4MZ(四国化成工業株式会社製、2−エチル−4−メチルイミダゾール)
メラミン (和光純薬株式会社製)
【0063】
〔合成例1〕[2官能性水酸基末端カーボネート共重合体(PCD1)の製造]
精留塔、攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた500mlのガラス製丸底フラスコに、ジメチルカーボネート199.3g、1,4−ベンゼンジメタノール65.2g、1,6−ヘキサンジオール167.2g、チタンテトラブトキシド0.03gを仕込み、常圧、攪拌下、窒素気流中でメタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、エステル交換反応を5時間行った。この間、反応温度は95℃から200℃まで徐々に昇温させ、留出物の組成はメタノールとジメチルカーボネートの共沸組成物ないしはその近傍となるように調節した。
この後、徐々に100mmHgまで減圧し、攪拌下、メタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、195℃でエステル交換反応をさらに4時間行った。反応終了後(メタノールとジメチルカーボネートの留去終了後)、反応液を室温まで冷却し、(PCD1)ポリカーボネートジオール共重合体280gを得た。
得られた(PCD1)ポリカーボネートジオール共重合体は、数平均分子量が995であった。
【0064】
〔合成例2〕[2官能性水酸基末端カーボネート(PCD2)の製造]
精留塔、攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた500mlのガラス製丸底フラスコに、ジメチルカーボネート152.7g、1,4−ベンゼンジメタノール242.5g、チタンテトラブトキシド0.04gを仕込み、常圧、攪拌下、窒素気流中でメタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、エステル交換反応を5時間行った。この間、反応温度は100℃から200℃まで徐々に昇温させ、留出物の組成はメタノールとジメチルカーボネートの共沸組成物ないしはその近傍となるように調節した。
この後、徐々に100mmHgまで減圧し、攪拌下、メタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、195℃でエステル交換反応をさらに5時間行った。反応終了後(メタノールとジメチルカーボネートの留去終了後)、反応液を室温まで冷却し、ポリカーボネートジオール共重合体(PCD2) 285gを得た。
得られたポリカーボネートジオール(PCD2)は、数平均分子量が492であった。
【0065】
〔合成例3〕[アルコール性水酸基末端イミドオリゴマー溶液の製造]
窒素導入管、ディーンスタークレシバー、冷却管を備えた容量5リットルのガラス製セパラブルフラスコに、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物 1471g、エタノール 507g及びγ−ブチロラクトン 2092gを仕込み、窒素雰囲気下、90℃で1時間撹拌した。次いで、3−アミノプロパノール 376g、イソホロンジアミン 426gを仕込み、窒素雰囲気下、120℃で2時間、180℃2時間加熱し、イミド化反応により生じた水を反応液中に窒素を吹き込むことで除去した。このアルコール性水酸基末端イミドオリゴマー溶液は、固形分 52.3%であった。
【0066】
〔実施例1〕[ポリウレタン(PU1)の製造]
撹拌機、温度計、窒素導入管を備えたガラス製反応容器に、合成例1で合成した2官能性水酸基末端カーボネート(PCD1) 119.40g、DMBA 22.47g、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート 218.37gを仕込み、90℃で1時間攪拌し、すべての原料を溶解した。その後、70℃まで冷却し、デスモジュールW 74.42gを滴下ロートを使用して30分かけて滴下した。滴下終了後、80℃で1時間、90℃で1時間、100℃で2時間攪拌し、反応液の温度を105℃に上げた後、イソブタノールを2.07g加え4時間攪拌した。固形分 51.5%、粘度 600Pa・sのポリウレタン(PU2)溶液を得た。
【0067】
〔実施例2〕[ポリウレタン(PU2)の製造]
撹拌機、温度計、窒素導入管を備えたガラス製反応容器に、合成例1で合成した2官能性水酸基末端カーボネート(PCD1) 69.65g、γ−ブチロラクトン 198.35g、Bis−MPA 9.39g、合成例3で合成したアルコール性水酸基末端イミドオリゴマー溶液 55.99gを仕込み、50℃で溶解した後、ミリオネートMT 41.71gを加え、50℃で1時間、60℃で3時間、80℃で10時間撹拌し反応させた。固形分 41.1%、粘度 43Pa・sのポリウレタン(PU3)溶液を得た。
【0068】
〔実施例3〕[ポリウレタン(PU3)の製造]
撹拌機、温度計、窒素導入管を備えたガラス製反応容器に、合成例1で合成した2官能性水酸基末端カーボネート(PCD1) 59.80g、γ−ブチロラクトン 137.67gを仕込み、70℃で1時間攪拌し、均一溶液を得た。その後、50℃まで冷却し、トリレンジイソシアネート(T−80) 20.90gを加え、50℃で1時間、70℃で5時間反応させた。さらに、無水トリメリット酸 23.06gを加え120℃で10時間反応させた。固形分 45.0%、粘度 23Pa・sのポリウレタン(PU4)溶液を得た。
【0069】
〔比較例1〕[ポリウレタン(PU4)の製造]
撹拌機、温度計、窒素導入管を備えたガラス製反応容器に、クラレポリオールC−1065N 118.92g、DMBA 22.47g、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート 217.89gを仕込み、90℃で1時間攪拌し、すべての原料を溶解した。その後、70℃まで冷却し、デスモジュールW 74.42gを滴下ロートを使用して30分かけて滴下した。滴下終了後、80℃で1時間、90℃で1時間、100℃で2時間攪拌し、反応液の温度を105℃に上げた後、イソブタノールを2.07g加え4時間攪拌した。固形分 50.2%、粘度 604Pa・sのポリウレタン(PU3)溶液を得た。
【0070】
〔比較例2〕[ポリウレタン(PU5)の製造]
撹拌機、温度計、窒素導入管を備えたガラス製反応容器に、合成例2で合成した2官能性水酸基末端カーボネート(PCD2) 59.04g、DMBA 22.47g、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート 217.89gを仕込み、90℃で1時間、120℃で1時間、150℃で3時間攪拌したが、溶液は均一にならなかった。
【0071】
〔実施例4〕[樹脂組成物の調製、及び硬化膜の作成]
ポリウレタンとして、実施例1で得たポリウレタン(PU1)溶液に、樹脂固形分100重量部に対して、エポキシ樹脂 YH−434を9.3重量部、メラミンを1重量部と消泡剤を加え、均一に撹拌・混合した。組成物の粘度が20〜60Pa・sになるようにジエチレングリコールエチルエーテルアセテートで希釈し、樹脂組成物を得た
【0072】
〔実施例5〕[樹脂組成物の調製、及び硬化膜の作成]
ポリウレタンとして、実施例2で得たポリウレタン(PU2)溶液に、樹脂固形分100重量部に対して、アミノ樹脂 マイコートM136を10重量部、エポキシ樹脂 2021Pを3.6重量部、硬化触媒として、DBUを0.5重量部、キュアゾール2E4MZを0.5重量部、消泡剤を加え、均一に撹拌・混合した。組成物の粘度が20〜60Pa・sになるようにγ―ブチロラクトンで希釈し、樹脂組成物を得た。
【0073】
〔実施例6〕[樹脂組成物の調製、及び硬化膜の作成]
ポリウレタンとして、実施例3で得たポリウレタン(PU3)溶液に、樹脂固形分100重量部に対して、エポキシ樹脂 YH−434を10重量部と消泡剤を加え、均一に撹拌・混合した。組成物の粘度が20〜60Pa・sになるようにγ―ブチロラクトンで希釈し、樹脂組成物を得た。
【0074】
〔比較例3〕[樹脂組成物の調製、及び硬化膜の作成]
ポリウレタンとして、比較例1で得たポリウレタン(PU4)溶液に、樹脂固形分100重量部に対して、エポキシ樹脂 YH−434を9.3重量部、メラミンを1重量部と消泡剤を加え、均一に撹拌・混合した。組成物の粘度が20〜60Pa・sになるようにジエチレングリコールエチルエーテルアセテートで希釈し、樹脂組成物を得た。
【0075】
実施例4,5,6と比較例3の樹脂組成物の熱硬化被膜について引張試験、鉛筆硬度測定、折り曲げ試験、ハンダ耐熱試験を行った。これらの評価結果を表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
〔実施例7〕[樹脂組成物の調製、及び硬化膜の作成]
実施例4で得た組成物にフィラーとして、シリカ R972を5重量部、硫酸バリウム B54を10重量部、シリコーンレジンパウダー KMP−590を10重量部加え混合した後、3本ロールを用い混練した。組成物の粘度が20〜60Pa・sになるようにジエチレングリコールエチルエーテルアセテートで希釈し、樹脂組成物を得た。
【0078】
〔実施例8〕[樹脂組成物の調製、及び硬化膜の作成]
実施例5で得た組成物にフィラーとして、シリカ R972を7重量部、シリカ #50を25重量部加え混合した後、3本ロールを用い混練した。組成物の粘度が20〜60Pa・sになるようにγ―ブチロラクトンで希釈し、樹脂組成物を得た。
【0079】
〔実施例9〕[樹脂組成物の調製、及び硬化膜の作成]
実施例6で得た組成物にフィラーとして、シリカ R972を4重量部加え混合した後、3本ロールを用い混練した。組成物の粘度が20〜60Pa・sになるようにγ―ブチロラクトンで希釈し、樹脂組成物を得た。
【0080】
〔比較例4〕[樹脂組成物の調製、及び硬化膜の作成]
比較例3で得た組成物にフィラーとして、シリカ R972を5重量部、硫酸バリウム B54を10重量部、シリコーンレジンパウダー KMP−590を10重量部加え混合した後、3本ロールを用い混練した。組成物の粘度が20〜60Pa・sになるようにジエチレングリコールエチルエーテルアセテートで希釈し、樹脂組成物を得た。
【0081】
実施例7,8,9と比較例4の樹脂組成物の熱硬化被膜について引張試験、鉛筆硬度測定、折り曲げ試験、ハンダ耐熱試験を行った。これらの評価結果を表2に示す。
【0082】
【表2】

【0083】
表1,2に示した評価結果から分かるとおり、本発明の新規な硬化性樹脂組成物から得られた硬化膜は、ハンダ耐熱性及び折り曲げ性が良好であり、さらに表面硬度を改良することができた。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によって、芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートに起因する繰り返し単位を導入したことを特徴とする新規なウレタン樹脂を得ることができる。また、本発明によって、新規なウレタン樹脂組成物、特に、その硬化物が折り曲げ性、ハンダ耐熱性などの特性が優れ、さらに表面硬度が改良された硬化性のポリウレタン樹脂組成物を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、(a)ジイソシアネート化合物と、(b1)芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートを含む(b)ジオール化合物とを必須成分として反応して得られる(A)ポリウレタン樹脂。
【請求項2】
(b1)芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートが、下記化学式(1)で表される主鎖中に芳香環を有する繰り返し単位を含んだ2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートであることを特徴とする請求項1に記載の(A)ポリウレタン樹脂。
【化1】

(式中、Z及びZはそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖のアルカンジイル基を示し、nは1〜40の整数である。)
【請求項3】
(b1)芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートが、前記化学式(1)で表される繰り返し単位と、下記化学式(2)で表される繰り返し単位とを有する共重合体からなる2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートであることを特徴とする請求項1または2に記載の(A)ポリウレタン樹脂。
【化2】

(式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数3〜20の二価の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数30〜50の脂肪族及び/又は脂環式の二価の炭化水素基を示す。)
【請求項4】
(b1)芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートにおいて、前記化学式(1)で表される繰り返し単位の数と前記化学式(2)で表される繰り返し単位の数との比([化学式(1)で表される繰り返し単位の数]/[化学式(2)で表される繰り返し単位の数])が、1/9〜9/1の範囲であることを特徴とする請求項3に記載の(A)ポリウレタン樹脂。
【請求項5】
(b1)芳香環を有する2官能アルコール性水酸基末端ポリカーボネートを構成する、前記化学式(1)で表される繰り返し単位が、下記化学式(3)で表される繰り返し単位であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の(A)ポリウレタン樹脂。
【化3】

【請求項6】
(b)ジオール化合物が、さらに(b2)カルボキシル基を有するジオール化合物含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の(A)ポリウレタン樹脂。
【請求項7】
(b)ジオール化合物が、さらに(b3)下記化学式(4)で示される2官能性水酸基末端イミドオリゴマーを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の(A)ポリウレタン樹脂。
【化4】

(式中、Rは2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を示し、Xはテトラカルボン酸のカルボキシル基を除いた4価の基を示し、Yはジアミンのアミノ基を除いた2価の基を示し、tは0〜20の整数である。)
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の(A)ポリウレタン樹脂を含有することを特徴とするポリウレタン樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、(B)エポキシ樹脂及び/又は(C)アミノ樹脂を含んで硬化性を有することを特徴とする請求項8に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の硬化性を有する樹脂組成物からなるソルダーレジストインキ。
【請求項11】
請求項9に記載の硬化性を有する樹脂組成物を硬化させたことを特徴とする硬化物。
【請求項12】
請求項9に記載の硬化物を含んで構成されていることを特徴とする電子部品。

【公開番号】特開2011−157487(P2011−157487A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20721(P2010−20721)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】