説明

ポリウレタン樹脂の製造法およびそのポリウレタン成形品

【課題】ポリウレタン樹脂を加熱した際に発生(放散)されるアルデヒド類を低減する方法を提供する。
【解決手段】ポリオールおよび触媒を含んでなるポリオール混合物とポリイソシアネート化合物から、ポリウレタン樹脂を製造する方法であって、ポリオール混合物に対して、亜硫酸水素塩および二亜硫酸塩からなる群から選択された少なくとも1種の亜硫酸化合物を添加することを特徴とするポリウレタン樹脂の製造法。亜硫酸化合物の量は、ポリオール混合物100重量部に対し、0.02〜2.0重量部添加する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドの放散が極力抑制されたポリウレタン樹脂の製造法およびそのポリウレタン成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂には、その発泡体として、軟質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォームあるいは半硬質ポリウレタンフォームがありそのまま切り出して使用される場合もあるが、多くは成形品として種々の用途に使用される。用途の例は、家具用クッション、各種自動車用途(例えば、クッション、自動車のアームレスト、ハンドル、チェンジノブ、天井材、インストルメントパネルなどの内装品、ドアートリム構造材)、合成木材、あるいは器具、建築用断熱材などである。
【0003】
また、非発泡ポリウレタン樹脂もポリウレタンエラストマー、硬質ポリウレタン構造物の成形が可能であり、電気部品(たとえばコピー機の紙送りローラー)合成木材あるいは断熱アルミサッシュなどの断熱部材として応用されている。
【0004】
ポリウレタン樹脂は、応用分野の物性、反応性、成形性などに対するニーズに合わせて、ポリイソシアネート化合物と、種々のポリオール、触媒、架橋剤、必要に応じて、発泡剤、整泡剤、補強材及びその他の助剤の混合物(以下ポリオール混合物という)を混合し反応させることによって得られる。
【0005】
また、ポリウレタン樹脂を成形し成形品にする際は、基本的にはポリイソシアネート化合物とポリオール混合物を、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート当量とポリオール混合物中のポリイソシアネート化合物と反応する活性水素を持つOH基あるいは1級あるいは2級アミン基あるいは水の活性水素の平均当量の所定の比で混合すれば良い。
【0006】
発泡剤をポリオール混合物中に存在させる事でポリウレタン樹脂は容易に発泡体として成形が可能であり、また、原料が液体である事から補強材あるいは充填剤を原料に添加することも比較的容易である。
【0007】
従来、シックハウス症候群を出発点にした種々のプラスチックにおける揮発性有機化合物(VOC)問題において、特に原料としてホルムアルデヒドを使う尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂あるいはポリアセタール樹脂、ならびにこれら樹脂をバインダーとして使って建材に使われている木質ボードなどが問題となっている。
【0008】
WHOから有害物質と指定されているアルデヒド類、特にホルムアルデヒド、アセトアルデヒドの放出に関して、WHOあるいは厚生労働省の指針では、ホルムアルデヒドあるいはアセトアルデヒドの濃度基準が、それぞれ100μg/m[0.08ppm(vol/vol)]および48μg/m(0.03ppm)以下となっている。
【0009】
ポリウレタン樹脂は、構成原料にアルデヒド類を使っていないこともあり、従来アルデヒド類の発生源とは考えられていなかった。本発明者は、成形後3日の硬質および軟質ポリウレタンフォームを含む種々のポリウレタンフォーム各10から60gを、5リットル容器に詰めて、25℃で7日間放置後、ホルムアルデヒド用北川式検知管(No.171SC)を使いアルデヒド(アセトアルデヒド分含む)濃度を測定(25℃)した。その結果、検知されたアルデヒド濃度は、最大で0.6ppm[アルデヒド放出量(ホルムアルデヒド換算)のポリウレタンフォーム1g当たり換算は0.026μg]でしかなかった。仮に、10mの空気中に6kgのポリウレタンフォームが25℃の密閉状態で存在したとしても、アルデヒド濃度0.01ppmにしか相当せず、ポリウレタンフォームは常温で使用する限りアルデヒドの放出源とは考えにくい。
【0010】
通常、常温で問題とされる建築用途のVOC問題とは異なり、たとえば自動車用途のポリウレタン樹脂においては、特に、自動車が夏場に密閉状態で放置され車内が高温になっている状態で運転者が乗り込んだ場合の刺激臭、あるいは眼に対する刺激などが有り、アルデヒド類の発生放出を抑制または捕捉を検討する際には、建築用途などに比べ条件は大きく異なる。たとえば自動車内装材料として使用されている代表的なポリウレタン成形品には、最も代表的な例としてシートクッションに使われる軟質ウレタンフォーム、インストルメントパネルあるいは内装トリム類のコアー部分に使われる半硬質ウレタンフォーム、あるいはハンドルを構成する比較的高密度(約0.5g/cm)の半硬質インテグラルスキンウレタン成形品、また一部にではあるがドアートリムのバックアップ材としてガラスファイバー等で補強された硬質インテグラルスキンウレタン成形品、あるいは硬質ウレタンフォームをシート状に切り出してガラスファイバーマットなどで補強して成型天井を成型する技術等がある。
【0011】
本発明者らは、ポリウレタン樹脂が高温状態でアルデヒド類の発生(放散)原因になりうるかどうかを調査するために、作成3日後の、前述の種々の用途に使われる軟質および硬質などの各種ポリウレタンフォームの65℃におけるアルデヒド放出量を調査した。テドラーバッグ中に、ポリウレタン成形品を入れ、窒素で封入し65℃で2時間保管後サンプルから放出されるホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドの量がどの程度であるかを測定した。10Lテドラーバッグ中に入れた4Lの窒素をアルデヒド捕集(DNPH)カートリッジに捕集し、高速液体クロマトグラフ(HPLC)で分析し、ブランク値との差からサンプルから発生/放出されたアルデヒドを測定した。その結果、放散量は、ポリウレタンフォームの種類により、程度は異なるが、ポリウレタンフォーム1g当たり、ホルムアルデヒドで0.01から0.13μg/gまたアセトアルデヒで0.01から0.15μg/gの範囲であった。
【0012】
一般的にポリウレタン成形品を得る為には、種々の官能度および分子量のポリオール、触媒、ポリイソシアネート化合物を必須として、用途によって、架橋材、整泡剤、発泡剤等を使う。本発明者等は、加熱によって放出されるホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒド等のアルデヒド類が何処から来ているのかを各成分にDNPHを加えHPLCで分析し調査した。
その結果、分子量2000以上の長鎖ポリエーテルポリオール中に含まれるアルデヒド類は、ほぼ1〜2ppm以下であるが、ある種のポリエーテルポリオール特にアミン系アルコールをスタートとしてそれにEOあるいはPOを付加した分子量500前後の短鎖ポリエーテルポリオールの中には、4〜10ppmのアルデヒド類を含むものが存在する事、また、ほぼポリウレタン樹脂成形に必須のアミン触媒の大半が数百ppmのアルデヒド類を含むことを確認した。ポリウレタン樹脂成形の為に処方されたポリオール混合物の中には、ホルムアルデヒドで10ppm、アセトアルデヒドで12ppmに達するものも存在した。目標とするアルデヒド類の放散(放出)低減レベルからすると、数ppmのアルデヒド類も無視出来ないレベルである事から使用すべき各原料成分からそれぞれアルデヒド類を除去する事は非常に困難である。
【0013】
ポリウレタン樹脂の構成原料において、アルデヒド類を放出する恐れのあるそれらの各原料成分は、ポリウレタンの製造上欠かせないものも多い。それらの原料を全く使わない条件下で各用途に最も適したポリウレタン樹脂の開発を行おうとすれば非常に大きな開発制限を受ける事は明白である。
【0014】
さらに、これらの原料を加熱脱気する事による各原料からのアルデヒド類を除去する検討を通じて、主原料であるポリエーテルポリオールが100℃以上の熱に長時間さらされるとアセトアルデヒド類が生成する可能性がある事も判明した。一方、ポリウレタン成形品を得る為のウレタン化反応が発熱反応であり、ポリウレタン成形品製造時には成形品温度はかなり上昇し、成形品中央部の温度は容易に100℃に達するので、ポリウレタン成形品の製造時にアセトアルデヒド等が生成する可能性がある。よって、単純にポリエーテルポリオールからアルデヒド類を除去することが、加熱時に放散(放出)されるアルデヒド類量の低減に直接につながるものではない。
【0015】
建築材料として使われる木質ボードには、かねてからホルムアルデヒドを素原料として扱うフェノール樹脂などのアミン樹脂が接着剤として使われており、居住空間のアルデヒド濃度を低下させるための種々の検討が行われており、いわゆるアルデヒド捕捉剤あるいは屋内用消臭剤などが提案されてきている。
【0016】
例えば、特開昭49−6606号公報にはホルムアルデヒド含有木質材料からホルムアルデヒドを除去する方法としてホルムアルデヒド発生量18ppmの木質材料に尿素と亜硫酸ナトリウムを含む水溶液を塗布する事によってホルムアルデヒド発生量を0.8ppmに下げたという報告が載っており、ホルムアルデヒドを定着するする化学物質として尿素、尿素誘導体、チオ尿素、チオ尿素誘導体を例示し、これらはホルムアルデヒドと反応してメチロール尿素を作り、あるいは亜硫酸塩類として亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カルシウム、亜硫酸水素カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウムが例示され、例えば亜硫酸ナトリウムはホルムアルデヒドと反応してヒドロキシスルホン酸ナトリウムとなって固定化されると明細書に説明されている。
【0017】
特開昭50−43181号公報にはアミノ樹脂で固めたパーティクルボードから発生(放出)するホルムアルデヒドを低減するためにボードの表面に粉末状尿素を塗布し、ホルムアルデヒド発生量50ppmを3.5ppmに低下させた例が載っており、既にホルムアルデヒドキャッチャーという言葉が載っている。また尿素の他にアミン類、含アミノ基化合物、アンモニウム塩類、各種酸化剤、還元剤を併用する事も例示されている。
【0018】
同様の特許として特開平6−293009号公報(尿素、酢酸アンモン、亜硫酸アンモン、亜硫酸ソーダ、チオセミカルバジド、エチレンジアミン、天然蛋白)、特開平11−240002号公報(尿素による金属腐食を止めるために亜硫酸塩を追加)、特開2004−181045号公報(重亜硫酸塩の複塩)等があるが、いずれも木質ボードの接着剤に使用されるホルマリンを原料とする樹脂からのホルムアルデヒド放出を下げる為にこれらのアルデヒドキャッチャーを直接ボードに塗布する事に変わりは無い。基本的にはアルデヒドとの反応が確認されている化学物質なら、それなりの効果は得られるという考えである。
【0019】
木質ボード以外の用途としてアルデヒド補集材という用途があり、平3−262533号公報は空気清浄器にイオン交換繊維と、それに付加した−NH基を有しアルデヒドと反応するものは全てと説明のついた空隙材と活性炭及び/又はデキストリンからなるアルデヒド捕集材が報告されており、アミン、ヒドラジン、アミド、尿素、アミノ化合物が−NH基を有しアルデヒドと反応するものとして列記されている。
特開平9−28778号公報および特開平9−78452号公報には、消臭剤ならびに消臭繊維として、アセトアルデヒドを含む臭い成分を吸収する成分として、分子内に第一級アミンを含む化合物としてキトサン、ヒドラジド、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミンを挙げている。実施例にアジピン酸ジヒドラジドが使われている。
【0020】
以上に挙げたアルデヒド吸収技術を樹脂に応用した例としては、特開平4−345648号公報がポリアセタール樹脂にヒドラジド化合物を加えてホルムアルデヒド臭を下げる報告が、特開平10−36681号公報には、ホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドを吸収する樹脂組成物として、ヒドラジド化合物を2−20重量部含む合成樹脂が報告され、特開平10−36524号公報には、アルデヒドを生成する樹脂を梱包するための梱包材にヒドラヂノ基またはヒドラゾノ基を有する化合物を加える技術が報告されているが、すべてヒドラジン誘導体の添加が発明の中心となっている。
【0021】
一方、ポリウレタン樹脂におけるアルデヒドに関する従来技術には以下のようなものが存在する。
特開2004−339481号公報は、原料ポリオール成分中のホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒド含量がそれぞれ2ppmおよび3ppm以下であることを特徴とする圧縮残留歪の小さなポリウレタン樹脂を製造する方法を開示している。ポリオール中のアルデヒドを下げる為にはポリオールがホウ素原子を含有するか、あるいはホウ素化金属でポリオールを処理する。
【0022】
特開2005−48174号公報は、原料ポリオール中のホルムアルデヒドとアセトアルデヒド含量の総量が8ppm以下であることを特徴とするアルデヒド含有量の少ないポリウレタンフォームの製造方法を開示している。ポリオール中のアルデヒドを下げる為には還元剤で処理するまたは吸着すると記載されており、還元剤の例として、NaBH, LiAlHなどの金属水素化物、無機水素アンモニウム化合物、MHSOを例として挙げている。実施例には還元剤で処理としてNaBH処理のみが挙げられている。
これらの従来技術において、アルデヒド類を原料ポリオールから除去している。しかし、アルデヒド類が除去された原料ポリオールを用いて製造されたポリウレタンフォームでも、多量のアルデヒド類を発生(生成)することがある。ポリウレタンフォームを製造する工程、あるは製造後加熱される場合においても、アルデヒド類が発生(生成)する可能性が高いからである。
【0023】
特開2005−154599号公報は、ポリオール、整泡剤、水を含むプレミックス成分に対して、水溶性の還元剤を水に溶解して添加することを特徴とする揮発アルデヒド量の低減されたポリウレタンフォームの製造方法を開示している。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ヒドラジン化合物、アスコルビン酸、還元糖が例示され添加量は0.001−0.01%となっている。この技術においては、還元剤の添加量が非常に少なく、充分な効果は得られない。
【特許文献1】特開昭49−6606号公報
【特許文献2】特開昭50−43181号公報
【特許文献3】特開平6−293009号公報
【特許文献4】特開平11−240002号公報
【特許文献5】特開2004−181045号公報
【特許文献6】特開平9−28778号公報
【特許文献7】特開平9−78452号公報
【特許文献8】特開平4−345648号公報
【特許文献9】特開平10−36681号公報
【特許文献10】特開平10−36524号公報
【特許文献11】特開2004−339481号公報
【特許文献12】特開2005−48174号公報
【特許文献13】特開2005−154599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、ポリウレタン樹脂成形品から発生(放散)するアルデヒド類の量を低減することを目的としている。
本発明の目的は、ポリウレタン樹脂1g当たりから65℃2時間で発生(放散)するアルデヒド類の量を0.1μg以下、より好ましくは0.05μg以下、さらに好ましくは0.01μg以下、特に0.005μg以下とすることである。
またポリウレタンフォーム成形品については成形品密度も用途によって大きく異なる事から、実使用成形品たとえばシートクッションあるいはインストルメントパネルあるいはハンドルらの成形品を成形する為の原料処方で実際に使用される成形品とほぼ等しい厚さのサンプルを所定の密度で試作し、その成形品を10cm四角に切り出し、そのサンプルから65℃2時間で発生/放出するアルデヒドの量を1.0μg以下、より好ましくは0.5μg以下、さらに好ましくは、0.3μg以下とすることを目的とする。ただし、成形品が10cm以上の厚さで使用される場合には、その成形品は10cmの厚さに切り出して測定する事とする。成形品の密度は、0.03g/cmから1.8g/cmであってよい。また厚さは、0.01mmから20cmまで有って良い。また、より高い温度たとえば80℃2時間でも、ポリウレタン樹脂1g当たりから発生(放散)するアルデヒド類の量を0.3μg以下、より好ましくは0.1μg以下、さらに好ましくは、0.01μg以下とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、ポリオールおよび触媒を含んでなるポリオール混合物とポリイソシアネート化合物から、ポリウレタン樹脂を製造する方法であって、亜硫酸水素塩および二亜硫酸塩からなる群から選択された少なくとも1種の亜硫酸化合物をポリオール混合物に添加することを特徴とするポリウレタン樹脂の製造法に関する。
【0026】
本発明者等は、ポリオール、触媒および/必要に応じて添加剤、発泡剤、補強材等を含んでなるポリオール混合物とポリイソシアネート化合物から、ポリウレタン樹脂を製造するに際し、ポリオール混合物に対して、亜硫酸化合物の少なくとも1種を添加することによってポリウレタン成形品から加熱時に発生(放散)されるアルデヒド類の量を低減することを確認し、ホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドのアルデヒド類の高温、65℃から80℃での発生(放散)量が少ないポリウレタン樹脂の製造法およびその成形品を提供する。
【0027】
効果的なアルデヒド類捕捉剤あるいはアルデヒド改質剤を求めて、種々検討を続けた結果以下の事が判明した。
(1)最も代表的な還元剤として、NaBH,及び LiALH でポリオールの還元検討を行ったが、NaBHは、ホルムアルデヒドに対してはかなりの効果が観られるもののアセトアルデヒドに対する効果は観られなかった。LiALHでポリオール処理したところ、高温(150℃ 2Hrs)処理では逆にアセトアルデヒドが増加した。
(2)アセトアルデヒドを10ppm濃度になるように加えた標準ポリオール混合物150gに対して、代表的な還元剤である硫化ナトリウム、硫化水素ナトリウム、ヒドロキノン、アスコルビン酸ナトリウムの0.5%水溶液を1.0gそれぞれ加え混合攪拌後1L缶に詰め、65℃2時間後保存後の上部空気層に含まれるアセトアルデヒド濃度を調べ、各還元剤の添加効果を調べたが基準品に対する低下度は30%に過ぎなかった。(北川式検知管171SCで放出アルデヒドを定量。)
【0028】
一方アルデヒド類の定量に関する情報として、アルデヒド類と亜硫酸水素ナトリウムが付加化合物を作る事は既に知られている。但し、生成した塩は、非常に不安定で薄い酸あるいはアルカリ中で加熱すると容易に元のアルデヒド類に戻ることが知られている。また、亜硫酸ナトリウムに少量の硫酸を加えておくと、スルホン酸塩を作ることも、知られている。
【0029】
本発明者等は亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、重硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、ピロ硫酸ナトリウム、チオ硫酸ソーダ、次亜リン酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、重亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸化合物の各0.5%水溶液を固形分添加量が5mgになるように添加し、上記同様にアセトアルデヒドを10ppm濃度になるように加えた標準ポリオール混合物150gに混合し、65℃2時間後保存後の上部空気層のアセトアルデヒド濃度を北川式検知管171SCで調べ、重亜硫酸ナトリウムのみが放出アルデヒドが非検出という非常に優れたアセトアルデヒド捕捉効果を示す事を確認した。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、加熱時のアルデヒド類の発生(放散)量が低減されたポリウレタン樹脂の製造法が可能となり、その成形品が得られる。
【0031】
上記結果を基に、本発明者等は重亜硫酸塩を使ってポリウレタン樹脂から発生(放散)するアルデヒド類量の低減可能性を探る為に、ポリオール混合物に亜硫酸水素塩を加えた場合の効果を調査した。その結果、亜硫酸水素塩を加えたポリオール混合物とポリイソシアネート化合物から得られたポリウレタン樹脂は、比較的高温たとえば65℃でのアルデヒド類の発生(放散)度合いが大きく低下し、亜硫酸水素塩を加えていない従来品に比べ、ホルムアルデヒドは1/2あるいは非検出レベル以下に、アセトアルデヒドも1/2以下、場合によっては1/10以下になり、従来品に比べ、発生(放散)するアルデヒド類量がはるかに低減されたポリウレタン樹脂が得られる事を確認した。また、発生レベルは異なるものの、80℃でも同様の効果を示した。
【0032】
本発明は、アルデヒド類をポリウレタン樹脂成形品の原料から除去する必要はない。よって、アルデヒド類を含むポリウレタン樹脂成形用の原料を使用できるので、ポリウレタン樹脂成形(製造)の自由度は保持されたままである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明は、ポリオール、触媒および/必要に応じて、添加剤、発泡剤、補強材等を含んでなるポリオール混合物とポリイソシアネート化合物から、ポリウレタン樹脂を製造するに際し、ポリオール混合物に重亜硫酸塩を加える事によって、成形品から発生/放出するアルデヒド類量がはるかに低減されたポリウレタン樹脂を得る事に関する発明である。加えられた重亜硫酸塩は、その後除去される事無く、ポリウレタン成形品中に溶解あるいは分散されている必要が有る。
【0034】
ポリオール混合物に対して、亜硫酸水素塩(「重亜硫酸塩」とも言う。)または二亜硫酸塩(「ピロ亜硫酸塩」とも言う。)である亜硫酸化合物を添加する。亜硫酸化合物は金属塩またはアンモニウム塩であることが好ましい。金属塩における金属の例は、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)およびアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム)等である。
亜硫酸水素塩の具体例は、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素カルシウム、亜硫酸水素マグネシウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素アルミニウム、亜硫酸水素亜鉛、亜硫酸水素バリウムである。
二亜硫酸水素塩の具体例は、二亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸カリウム、二亜硫酸カルシウム、二亜硫酸マグネシウム、二亜硫酸アルミニウム、二亜硫酸亜鉛、二亜硫酸アンモニウム、である。
亜硫酸化合物は、単独物であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0035】
本発明において、亜硫酸水素塩は、[HSO-を含む塩である。このイオンを含む全ての塩は、本発明の目的に合致する。通常アルカリ金属類あるいはアンモニウムの亜硫酸水素塩として製造販売されている代表的な物には亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素カルシウムがある。
【0036】
ところで二亜硫酸塩は[S]-- を含む塩である。亜硫酸水素ナトリウムは、炭酸ナトリウムの冷飽和水溶液に二酸化硫黄を通じて製造でき、このときに二亜硫酸ナトリウムが析出することがある。亜硫酸水素ナトリウム塩は、水溶液としてのみ存在し、製造時に沈殿してくる固形物、あるいは亜硫酸水素ナトリウム塩の水溶液を単離して得られる固形物は二亜硫酸ナトリウム塩(ピロ亜硫酸塩とも言う。Na)である。重亜硫酸ナトリウムを入手するためには、重亜硫酸ナトリウムの水溶液を購入するか、粉末の無水重亜硫酸ナトリウムを入手しようとすると、これは二亜硫酸ナトリウム(Na)か二亜硫酸ナトリウム(Na)と亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)の混合物を入手する事になる。
亜硫酸水素カリウムも同様に二亜硫酸カリウム(K)として入手し、これの水溶液は亜硫酸水素カリウムとして扱われるとあり、本発明者等は、亜硫酸水素アンモニウムを50%水溶液として入手し、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムは二亜硫酸塩として入手したものを水溶液あるいはそのまま使用した。したがって、本発明においては、重亜硫酸塩と亜硫酸水素塩と二亜硫酸塩あるいはピロ亜硫酸塩は実質的に同じものである。このイオンを含む全ての塩は、本発明の目的に合致する。
【0037】
例えば、約1.5%の水を発泡剤としてポリオール混合物中に含む半硬質ウレタンフォーム処方において、0.7重量部の亜硫酸酸水素ナトリウムを添加しようとした場合、0.7重量部の二亜硫酸塩ナトリウムを1.5重量部の水に加え、溶解後その水溶液をポリオール混合物に添加するのが最も簡単な添加法である。しかしながら、単純な長鎖ポリエーテルポリオ−ルに亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加えた場合、ポリエーテルポリオールは普通白濁し、一定量の亜硫酸水素ナトリウムは析出する。このポリエーテルポリオールに他のポリエーテルポリオール、触媒および/必要に応じて添加剤、発泡剤、補強材等を含んでなるポリオール混合物に亜硫酸水素塩を加えた場合も同様と考えられる。また、ポリオール混合物中に存在している水分の大半は、ポリオール混合物がポリイソシアネート化合物と混合されて半硬質ウレタンフォームを形成する過程でポリイソシアネート化合物と反応してウレア結合をつくり、炭酸ガスを生成する。したがって炭酸水素ナトリウム水溶液として加えられた水の大半はウレタン樹脂を製造する過程で消失する。したがってポリウレタン成形品中に分散し残っている亜硫酸水素ナトリウムが亜硫酸水素塩である可能性は非常に低く、二亜硫酸塩である可能性が高いと考えるが、本発明において必要な条件は亜硫酸化合物をポリオール混合物に加えた後、ポリオール混合物をポリイソシアネート化合物と混合し、この塩が内部に分散されたポリウレタン成形品を作ることにある。
【0038】
ポリオール混合物添加される亜硫酸水素塩としては、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、あるいはそれらの二亜硫酸塩たとえば二亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸カリウムが望ましい。
【0039】
亜硫酸化合物が本発明の目的とする効果を得る為には、ポリオールと触媒の合計100重量部に対して最低でも0.02重量部の添加が必要であり、より望ましくは0.07重量部以上、さらに望ましくは0.20重量部以上の添加が望ましい。アルデヒド類の生成あるいは放散を抑える見地からのみ見ると効果は、さらに0.7重量部あるいは1.5重量部と添加量がより多いほど強い効果を示している。
【0040】
しかし、亜硫酸化合物は、ポリウレタン樹脂を成形する際の反応性に影響を与えるが、亜硫酸化合物の添加量が多いとこの影響は単に元になる処方で使われている触媒量を追加するだけでは、成形性あるいは生産性を含めたポリウレタン樹脂の性能を必ずしも保持しない。したがって亜硫酸化合物の添加量が多い場合は元の処方は再調整する必要が出てくる。また、亜硫酸化合物は高温で分解して亜硫酸ガスを発生する可能性もあることから、亜硫酸化合物の添加量は必要最小限であるべきである。5.0重量部以下、特に2.0重量部以下の添加が好ましい。
従って、亜硫酸化合物の添加量は、ポリオールと触媒の合計100重量部に対して、0.02〜5.0重量部、特に0.02〜2.0重量部、例えば特に0.07〜2.0重量部、更に好ましくは0.1〜1.5重量部である。
【0041】
亜硫酸化合物を、ポリオール混合物に添加した場合、亜硫酸化合物の種類によってまたはポリオール混合物の組成によって溶解度は異なる。基本的には亜硫酸水素アンモニウムが溶解性においては最も優れているが、本発明において必要な最大量の添加量を加えた場合、大半の亜硫酸化合物は析出している可能性がある。しかしながらポリウレタン樹脂から発生(放散)するアルデヒド類の低減(捕捉)効果はほぼ亜硫酸化合物の添加量に応じて改善されている。したがって本発明ではポリオール混合物に加えた亜硫酸化合物が溶解していることを必要としない。ただし、市販されている粉状の亜硫酸化合物の場合はポリオール混合物に加えても直ぐに沈降してしまうのでポリウレタン成形品を成形してもアルデヒド類の低減(捕捉)効果は得られない。
【0042】
本発明で必要な効果を得る為には、加えられた亜硫酸化合物が一定より微細な粒子としてポリオール混合物中に分散し、少なくとも1時間、望ましくは12時間、より望ましくは2日間は静置しても明らかな沈降を示さずに保存される程度の微細分散がされている事が望ましい。たとえ沈降分離した場合でも簡単に撹拌混合等の方法で再分散できる事が望ましい。この事は本発明における効果を最大限引き出す上でも、つまり、ポリウレタン樹脂内部に分散している亜硫酸化合物は、粒サイズが小さいほどアルデヒド類と反応しアルデヒド類を捕捉する確立が高くなり、また実際のポリウレタン樹脂の生産上の必要、つまり亜硫酸化合物を加えたポリオール混合物が常に攪拌混合が必要と言う事になれば、ポリウレタン樹脂の生産条件において、かなり制約を受ける事になる。最低でもポリオール混合物の温度調節などの目的でポリウレタン成形機のポリオール成分用タンクに取り付けられている攪拌機を作動していれば沈降分離が起こらない程度の分散性が確保されている事は必要である。
【0043】
亜硫酸化合物をポリオール混合物に加える方法に関しては限定されない。亜硫酸化合物の添加量が少なければ全部が溶解している場合もありうるが、ポリオール混合物に加えられた亜硫酸化合物が、出来るだけ微細な粒子としてポリオール混合物中あるいは最終成形品中に均一に分散している必要が有る。亜硫酸化合物がポリオール混合物中に均一に分散された状態にある為には、分散された亜硫酸化合物の粒子は望ましくは20ミクロン以下、より望ましくは10ミクロン以下、さらに望ましくは5ミクロン以下であることが望ましい。粒子の大きさの下限は、例えば0.01ミクロン、特に0.1ミクロンである。
【0044】
亜硫酸化合物をポリオール混合物に添加する際には、亜硫酸化合物は溶液または亜硫酸組成物であることが好ましい。亜硫酸組成物とはポリオール混合物中の成分に亜硫酸化合物が微粒子状で成分中に均一分散したものを言う。(以下「亜硫酸組成物」という)
亜硫酸化合物が一部溶解しているかあるいは微細な粒子として出来るだけ均一に分散している状態を得る為に最も簡単な方法は亜硫酸化合物を水溶液とした上で、ポリオール混合物あるいはポリオール混合物中の何らかの成分に混合すればよい。また、処方中に水分を含まない処方においては、亜硫酸化合物の水溶液をたとえばポリエーテルポリオールに混合攪拌し、その後水分を取り除いていわゆるマスターバッチを作成し、それを必要量添加することで微細な粒子が分散されたポリオール混合物を得る事も可能である。ただし、亜硫酸化合物水溶液をポリオール混合物の少量の一成分に加え混合すると混合比率によっては直ちに析出物が沈澱する場合があり、これらの沈殿固形物のサイズは概して100ミクロンを越えており、このような形で添加されている亜硫酸化合物は本発明の目的にはそぐわない。
【0045】
たとえば、無色のポリエーテルポリオール100gに30重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液を3.3g添加攪拌した1重量%塩添加ポリオールを、3時間放置し、白濁していながら何ら沈澱が発生していないことを確認して、デジタルマイクロスコープで分散物を確認したところ、10ミクロン以上の粒子は見当たらなかった。また同様に作成した二亜硫酸カリウムを0.3%加えたポリエーテルポリオールはやはり白濁は示していても、3週間沈澱発生を示さずに貯蔵でき、デジタルマイクロスコープで分散物を確認したところ、これらの亜硫酸化合物の粒子は大きいもので5ミクロン、ほとんどは3ミクロン以下であった。つまり充分に微細分散された亜硫酸化合物はポリオ-ル混合物中に分散された状態で、一定の白濁状態を保ったまま、3週間後でも沈澱は観察されない状態も作る事が出来る。
【0046】
本発明者らは、これらの亜硫酸化合物をポリオール混合物中に微細な粒子として分散している状態を作り出すために、ポリオール混合物を加熱し亜硫酸化合物の溶解度を上げる検討も行ったがこの手法は、ポリオール混合物の温度が下がるにつれて溶解していた亜硫酸化合物は析出し、その析出した亜硫酸化合物は比較的大きなサイズの結晶を作り出す結果になり、余り望ましく無いようである。
【0047】
亜硫酸組成物は液体あるいはペースト状である。
ポリエーテルポリオールと(好ましくは、亜硫酸組成物に対して10重量%〜70重量%になる)亜硫酸化合物とを混合し、亜硫酸化合物の粒子の大きさが20ミクロン以下になるように粉砕分散して得られた亜硫酸組成物をポリオール混合物に加えることが好ましい。亜硫酸組成物は、5〜70重量%、例えば10〜50重量%、特に20〜50重量%の含有量の亜硫酸化合物を含むことが好ましい。亜硫酸組成物は、ポリオール混合物における他の成分(例えば、触媒、架橋剤、添加剤)を含んでいてもよい。
また予め微粉砕された亜硫酸化合物をポリオール混合物中の成分に分散したものでも良い。
【0048】
例えば、亜硫酸化合物とポリオールとガラスビーズ(粒径:1.0〜3.0mm)を亜硫酸化合物とポリオールの合計100重量部に対して40〜100重量部とを混ぜ合わせてシェイカー(LAU disperser:DAS200)で、10分〜2時間(例えば、30分)振動処理し、亜硫酸化合物が10ミクロン、特に5ミクロン以下に粉砕されたペースト状分散体を得る。このペースト状分散体(亜硫酸組成物)とポリオール混合物の成分(各原料)とを混合することによって得たポリオール混合物は、特に優れた貯蔵安定性およびアルデヒド類の発生を抑える効果を示す。
亜硫酸化合物を微細に粉砕する方法としては、ボールミルや3本ロールあるいは回転子を持つ高速乳化分散機などを使うことも出来る。
【0049】
本発明による技術はポリイソシアネート化合物とポリオール混合物から製造される全ての種類のポリウレタン樹脂、たとえば、軟質ウレタン、硬質ウレタン、半硬質ウレタン、ポリウレタンエラストマー、高密度硬質ウレタン、あるいは2液性ポリウレタン接着剤、2液性ポリウレタン塗料、などすべて種類のポリウレタン樹脂に応用可能である。また、上記のポリウレタン樹脂を箱あるいは連続成形法によって製造し、それを必要な形状に切断したりあるいはスライスして応用するスラブフォーム分野にも応用可能である。
【0050】
本発明に用いられるポリイソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートこれらのポリイソシアネートを互いに混合したり、あるいはウレタン変性したり、アロファネート変性、カルボジイミド(CD)変性、イソシアヌレート変性した変性ポリイソシアネート、これらの混合物などが使用できる。
【0051】
ポリオールとしては、多価アルコール類、アミン類、多価フェノール類、これらにアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオール、あるいは多価アルコール類とポリカルボン酸類から誘導されるポリエステルポリオール、あるいは主に軟質系ポリウレタン樹脂の硬さ調整に使われる鎖延長剤や架橋剤と呼ばれる低分子量活性水素含有化合物(分子量好ましくは300以下、例えば50〜299)なども含まれる。
【0052】
ポリエーテルポリオールとしては、分子中に2〜8個の活性水素基を含有する化合物(プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、蔗糖などの水酸基含有化合物、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアミノ基や水酸基を含有する化合物、あるいはエチレンジアミン、ジアミノトルエンなどのアミノ基含有化合物、あるいはトルエンジアミン、メチレンジアニリン、キシレンジアミン芳香族ジアミン)に対してエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加した平均分子量が300〜20000のポリエーテルポリオール。これらのポリエーテルポリオール中でビニル化合物を付加重合したいわゆるポリマーポリオール また、本発明と同様の効果を持つことが発明者等によって確認されているポリエーテルポリオール中でポリ尿素あるいはポリヒドラゾジカルボンアミドが分散されているいわゆるPHDポリオール(特公昭55−46654)などが用いられる。
【0053】
また、ポリエステルポリオールとしては、ポリカルボン酸と低分子量の水酸基含有化合物から得られるポリエステルポリオール、カプロラクトンを開環重合して得られるラクトン系ポリエステル、ポリカーボネートポリオール、テトラヒドロフランの開環重合から得られるポリテトラメチレングリコール、ポリエーテルポリオールの水酸基をアミノ化し、あるいはポリエーテルポリオールのイソシアネートプレポリマーを加水分解して得られるポリエーテルポリアミンであって、平均活性水素当量が80〜3000のものも使用できる。
【0054】
鎖延長剤や架橋剤と呼ばれる低分子量活性水素含有化合物としては、平均分子量が62〜300の2価アルコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールや、3から8価のアルコール、たとえばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、蔗糖、あるいはこれらにプロピレンオキサイドやエチレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールも使用できる。また2価アミン、例えばジエチルトルエンジアミン、t−ブチルトルエンジアミン、ジエチルジアミノベンゼン、トリエチルジアミノベンゼン、テトラエチルジアミノジフェニルメタンなどが必要に応じて用いられ、これらにアルキレンオキシドを付加したポリエーテルポリオールなども用いられる。特公昭54−17359号公報、特開昭57−74325号公報、特公昭63−47726号公報、特公平1−34527号公報などに記載されている。鎖延長剤や架橋剤と呼ばれる低分子量活性水素含有化合物の量は、ポリオールと触媒の合計100重量部に対し、100重量部以下、例えば0.1〜50重量部、特に1〜30重量部であってよい。
【0055】
触媒としては、トリエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、1,8ジアザビシクロ−5,4,0−ウンデセン−7、ジメチルアミノエタノール、テトラメチルエチレンジアミン、ジメチルベンジルアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、イミダゾール類などの第3級アミンや第三級アミンと有機酸の塩、ジブチル錫ジラウレート、オクタン酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫チオジアセテート、などの有機金属化合物などが用いられる。また三量化触媒として、カルボン酸の金属塩、例えば酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどを使ってイソシアヌレートフォームを作る際にも応用できる。また、亜硫酸水素塩を中和し、なおかつ反応性を上げ、あるいは、亜硫酸水素塩の添加で起きたウレタン化反応の低下を補うために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、また水酸化カルシウム等の水酸化物を添加することも出来る。この場合添加する水酸化物は、ウレタン化反応を促進し、触媒としての効果を示す。触媒の量は、ポリオールと触媒の合計100重量部に対し、0.001〜10重量部であってよい。
【0056】
その他の助剤として、気泡安定剤、例えばシリコーン系整泡剤、界面活性剤、耐候剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、テトラキス〔メチレン 3−(3`,5`−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、着色剤などが必要に応じて用いられる。補強材としてガラス質、無機質、鉱物質などのファイバー、例えばミルドグラスファイバー、ワラストナイトファイバー、プロセストミネラルファイバーあるいはフレーク、例えばマイカ、ガラスフレークなども必要に応じて用いられる。これらはポリオール混合物に普通加えられる。また他のアルデヒド捕捉剤、たとえばヒドラジン誘導体との併用も自由である。他の助剤の量は、ポリオールと触媒の合計100重量部に対し、100重量部以下、例えば0.1〜50重量部であってよい。補強材の量は、ポリオールと触媒の合計100重量部に対し、300重量部以下、例えば1〜100重量部であってよい。
【0057】
発泡剤としては、ポリウレタン発泡機の仕様に応じて、液体炭酸ガス、低沸点液体である炭化水素、ペンタン、シクロペンタン、フロン、たとえばHFC134a、HCFC141b、HFC245fa、HFC245fc、HFC365mfc、あるいは水およびこれらの混合物が自由に選択使用できる。水を発泡剤として使用するシステムにおいては、この水を亜硫酸化合物を添加する際の溶剤として使用することも可能である。アミン化合物の炭酸塩、あるいはカルボン酸類、例えば蟻酸、も発泡剤として使用できる。発泡剤の量は、ポリオールと触媒の合計100重量部に対し、20重量部以下、例えば0.01〜10重量部であってよい。
【0058】
補強剤は、ガラス質、無機質、鉱物質などのファイバー、例えばミルドグラスファイバー、ワラストナイトファイバー、プロセストミネラルファイバーあるいはフレーク、例えばマイカ、ガラスフレークなどがあり、必要に応じて用いられる。またガラスマット、ガラスクロスなどを、あらかじめ型内にセットしておき、そのうえでポリウレタン原料を注入して発泡体を得ることも可能である。
また、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、水酸化アルミニウム、酸化チタン、などの無機充填材 あるいはガラス、アルミナ、シラス等からなる中空微小球も使いうる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、以下において、部および%は、特記しない限り、重量部および重量%である。
【0060】
比較例1
a)グリセリンにプロピレンオキシドとエチレンオキシドを付加した水酸基価35mgKOH/gのポリエーテルポリオール(ポリエーテルポリオールA)53部と、
b)グリセリンにプロピレンオキシドとエチレンオキシドを付加したポリエーテルポリオールで内部に約40%のアクリロニトリルとスチレンの重合したポリマー成分を含む水酸基価20mgKOH/gのポリマーポリオール(ポリマーポリオールB)、35部、
c)トリエタノールアミンにプロピレンオキシドを付加した水酸基価500mgKOH/gのポリエーテルポリオール(ポリエーテルポリオールC)、3.0部、
d)ジアミンにプロピレンオキシドを付加した水酸基価60mgKOH/gのポリエーテルポリオール(ポリエーテルポリオールD)4.0部
e)エチレンジアミンにプロピレンオキシドを付加した水酸基価630mgKOH/gのポリエーテルポリオール(ポリエーテルポリオールE)0.5部、
f)シリコーン整泡剤0.3部、
g)ジメチルエタノールアミン0.4部、
h)接着性改良剤Baycoll AV2113(BayerMaterialScience社製品)1.83部、
i)3級アミン触媒A(AirProducts社)0.75部
j)Toyocat ET(東洋ソーダ社製)0.16部を混合し、さらに
k)水1.56部、を混合して、ポリオール混合物を得た。
【0061】
このポリオール混合物100gを採取した。このポリオール混合物とポリイソシアネート化合物であるスミジュール44V20(ポリメリックMDI:住化バイエルウレタン(株)製)、をそれぞれ25℃に温度調整し、ポリオール混合物に36gのスミジュール44V20を加え、ラボミキサーで混合し、反応性を調べた。結果を表1に示す。また、同様に準備した反応混合液を40℃に温調された約20cm四角で1.0cm厚さのアルミ製型に65g注ぎ込み2分後に取り出して成形品(厚さ1cm)を得た。この成形品を一週間常温で放置し、10cm角に切り出したのち、重さを測定した。重さは約15gだった。平均密度は0.15g/cmだった。
【0062】
このサンプルを窒素置換を2回繰り返した10Lテドラーバッグ中に入れ、密閉後約1Lの窒素を入れ、アスピレーターでいったん窒素を抜いた上で、4Lの純窒素ガスをフローメーターを使用してテドラーバッグに充填し、テドラーバッグに取り付けられたシリコンチューブのバルブを閉じる。このテドラーバッグをシリコンチューブに繋げたテフロンチューブを循環式オーブンの天井穴をとうして外部に繋いでバルブを閉じた状態で65℃に設定された循環式オーブンに入れ、2時間加熱後、アルデヒド捕集(DNPH)カートリッジ(Waters DNPH Silica long type)に0.1L/min.の速度で4L捕集し、高速液体クロマトグラフ(HPLC)で分析した。ポリウレタンサンプルを含まないで同操作を繰り返し、ブランク値との差からサンプルから発生(放散)されたアルデヒドを測定した。測定は2回行い 平均値を結果とした。
その結果、発生(放散)量は半硬質ポリウレタンフォームサンプル一個当たり(約15g)ホルムアルデヒドで0.25μg、またアセトアルデヒドで0.88μg/gであった。 またポリウレタンフォーム 1.0g当たりホルムアルデヒドで0.02μg、またアセトアルデヒで0.06μg/gであった。
結果を表1に示す。
【0063】
実施例1
比較例1と同様の条件でポリオール混合物作製に際し、k)水1.56部の代わりに50%亜硫酸水素アンモニウム水溶液(試薬として購入。)0.14部と水1.49部を混ぜたものを添加し攪拌したものを使用した。(亜硫酸水素アンモニウムとして0.07部添加)スミジュール44V20と混合し、反応性を測定したところ、ゲルタイムが比較例の45秒から53秒に、ライズタイムが61秒から72秒に反応性が低下している事わかった。反応性が低下することは、ポリウレタン樹脂の成形に際し、脱型時間が長くなるのみならず、ポリオール混合物とポリイソシアネート化合物の混合液における型内部での発泡挙動が変わり、流れ性あるいは成形性にも悪影響を及ぼす可能性がある。
【0064】
実施例2
実施例1と同様の条件で比較例1のj)ToyocatET添加量を0.16部から0.23部に増加したポリオール混合物を作成した。反応性を測定したところ、ゲルタイムが45秒、ライズタイムが61秒と比較例1の結果と同じになった。このポリオール混合物を一日放置しても反応性に変化は無かった。そのポリオール混合物を使用し、比較例1と同条件で成形品を作成し、比較例1と同様にして、成形品からのアルデヒド類の発生(放散)量を測定した。
ホルムアルデヒドの発生量は、サンプルを含まないテドラーバッグで測定したブランク値と変わらず測定限界値の0.03μg以下でありND(測定限界以下)と判断した。
アセトアルデヒドの発生量は0.75μgであった。ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドを合わせたアルデヒド類の評価では約34%の削減効果であった。
【0065】
実施例3
比較例1と同様の条件でポリオール混合物の作製に際し、比較例1のj)のToyocat ETの添加量を0.16部から0.32部に増加した。またk)水1.56部の代わりに50%亜硫酸水素アンモニウム水溶液(試薬として購入。)0.4部と水1.36部を混ぜたものを添加し攪拌したものを使用した。(亜硫酸水素アンモニウムとして0.2部添加)触媒増加によって、反応性も比較例1とほぼ同じになった。ホルムアルデヒドの発生量はND(測定限界以下)、アセトアルデヒド発生量は0.63μgであった。ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドを合わせたアルデヒド類の評価では約44%の削減効果であった。
【0066】
実施例4〜6
実施例4〜6において、同様の方法で亜硫酸水素アンモニウムの添加量を増やした場合の実験を行い、その結果を表1示す。
【0067】
アルデヒド類の発生(放散)量を低減する目標に関しては、実施例4と実施例6との比較からこの半硬質ポリウレタンフォーム成形においてはポリオールと触媒の合計100重量部に対する亜硫酸水素アンモニウムの添加量は約0.71部で充分である。実施例4、実施例6では、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの発生(放散)量はともに測定限界に近い値を示しており、比較例1と比べても1/10以下になっている。実施例5、6は1.56部または1.58部の亜硫酸水素アンモニウムの添加の結果、触媒の追加無しではフォームの形成が不可能なほど反応性が低下するが、触媒の追加によって発泡が再現され、触媒が追加されたにもかかわらずアルデヒドの類発生(放散)削減効果が維持される事を示している。
全ての実施例においてアルデヒド類の全発生量は100cmサンプルで0.8μg以下であった。また ポリウレタン樹脂(半硬質ポリウレタンフォーム)1g当たり全発生量は0.05μg以下であった。
【0068】
【表1】

【0069】
比較例2
l)グリセリンにプロピレンオキシドとエチレンオキシドを付加した水酸基価28mgKOH/gのポリエーテルポリオール(ポリエーテルポリオールF)80部と、
m)グリセリンにプロピレンオキシドとエチレンオキシドを付加したポリエーテルポリオールで内部に約40%のアクリロニトリルとスチレンの重合したポリマー成分を含む水酸基価18.5mgKOH/gのポリマーポリオール(ポリマーポリオールG)、20部、
n)グリセリンにプロピレンオキシドとエチレンオキシドを付加した水酸基価37mgKOH/gのポリエーテルポリオール(ポリエーテルポリオールH)2.0部、
f)シリコーン整泡剤1.0部
h)3級アミン触媒A(AirProducts社)0.5部
j)Toyocat ET(東洋ソーダ社製)0.1部、を混合、それに
k)水3.2部を加えて混合して、ポリオール混合物を得た。
【0070】
このポリオール混合物100gとポリイソシアネート化合物のスミジュール VT−80(ポリメリックMDIとTDIの混合品:住化バイエルウレタン(株)製)、40gをそれぞれ25℃に温度調整しラボミキサーで混合し、反応性を調べた。クリームタイム 9秒、ゲルタイム72秒、ライズタイム116秒だった。また、同様に準備した反応混合液を40℃に温調された約30cm四角で10cm厚さのアルミ製型に 520g注ぎ込み3分後に取り出して、軟質ポリウレタンフォームの成形品(厚さ10cm)を得た。この成形品を一週間常温で放置し、10cm四角に切り出したのち、重さを測定した。重さは約55gだった。平均密度は0.055g/cmだった。
【0071】
このサンプルを使って比較例1と同様の条件でアルデヒド類の発生(放散)量を測定した。 その結果、発生(放散)量は軟質ポリウレタンフォームサンプル一個当たり(約55g)ホルムアルデヒドで0.25μg、またアセトアルデヒで0.9μg/gであった。また軟質ポリウレタンフォーム 1.0g当たりホルムアルデヒドで0.005μg、またアセトアルデヒで0.016μg/gであった。結果を表2に示す。
【0072】
実施例7〜11
実施例7〜11を表2に示す。
比較例2と同様に成形品を作成し、比較例1と同様にアルデヒド類の発生(放散)量を測定した。
実施例7及び8は亜硫酸水素アンモニウム50%水溶液と水を混ぜたものを比較例2のk)の水3.2部の添加の変わりに添加した。添加量は表2に示す。実施例9は亜硫酸水素ナトリウム試薬として購入した粉体0.7部を3.2部の水に溶かし、比較例2と同様に添加攪拌した。亜硫酸水素ナトリウム試薬は、亜硫酸水素ナトリウムと二亜硫酸ナトリウムの混合物との説明があった。実施例10,11は試薬として購入した二亜硫酸カリウム粉体0.7部と1.5部をそれぞれ3.2部の水に溶かし、比較例2と同様に添加攪拌した。すべて水溶液は完全に溶けて透明であった。ただし、m)ポリマーポリオールGを使用しているために水溶液を加えた際の亜硫酸水素ナトリウム試薬の溶解度は目視不可能だった。
【0073】
亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸カリウム すべて、ポリオールと触媒の合計100重量部に対して、0.29部から 1.44部まで添加した場合に優れたアルデヒドの発生(放散)量を低減する効果を示し、0.7部添加で比較した場合、効果に大差は観られず、全ての実施例において、ホルムアルデヒド発生は測定限界値以下に、アセトアルデヒド発生も約55gのサンプルで0.1μg以下となり、90%以上の削減効果を示した。全ての実施例においてホルムアルデヒドとアセトアルデヒドのアルデヒド類の全発生量は100cmサンプルで0.1μg以下であった。また 軟質ポリウレタンフォームのポリウレタン樹脂1g当たり全発生量は0.001μg以下であった。
【0074】
【表2】

【0075】
実施例12〜16
表3に比較例2と同様の軟質ポリウレタンフォームを使って、二亜硫酸カリウムの添加量とアルデヒド類発生(放散)低減効果を調べた結果を示す。既に明らかになったように、ポリウレタン化反応を阻害しないと言う意味では、二亜硫酸カリウムが他の亜硫酸水素塩に比べて優れている。ただし、二亜硫酸カリウムも添加量が増えるにしたがって、反応性は低下する傾向にあり、またフォームはオープンセル傾向にあるようである。二亜硫酸カリウムのポリオールと触媒の合計100重量部に対する添加量を実施例10,11と同様の方法で変化させ成形品を得た後、アルデヒド類の発生(放散)量を調べ比較例2と比較した。実施例12では、二亜硫酸カリウム添加量0.019部では反応性変化も無い代わりにアルデヒド類発生低減効果も25%とかなり限定されている。このレベルが低減効果の現れる限界添加量と判断した。実施例13は、0.68部の二亜硫酸カリウム添加で、ホルムアルデヒド発生が既に測定限界値以下になっている。実施例13から実施例16にかけて二亜硫酸カリウムの添加量が増加するにしたがって、アルデヒド類の発生低減効果が強くなっている事がわかる。二亜硫酸カリウムのポリエーテルポリオールに対する溶解度は水溶液添加で観察する限り、0.3部程度であることから、二亜硫酸カリウムが効果を発揮する為には二亜硫酸カリウムがポリオール混合物に必ずしも溶解している必要は無いと判断できる。
【0076】
実施例12を除く全ての実施例においてホルムアルデヒドとアセトアルデヒドを合わせたアルデヒド類の全発生量は100cmサンプルで0.9μg以下であった。また ポリウレタン樹脂(軟質ポリウレタンフォーム)1g当たり全発生量は0.02μg以下であった。
【0077】
【表3】

【0078】
比較例3
a)グリセリンにプロピレンオキシドとエチレンオキシドを付加した水酸基価35mgKOH/gのポリエーテルポリオール(ポリエーテルポリオールA)90部と、
o)エチレングリコール 5.8部、
p)ジエタノールアミン 0.3部、
k)水0.35部、
q)有機スズ触媒0.005部
j)Toyocat ET(東洋ソーダ社製)1.3部、
f)シリコーン整泡剤0.02部を混合して、
ポリオール混合物を得た。
【0079】
このポリオール混合物200gとポリイソシアネート化合物のSBUイソシアネート0632(CD変性:住化バイエルウレタン(株)製)、90gをそれぞれ25℃に温度調整しラボミキサーで混合し、反応性を調べた。結果を表1に示す。また、同様に準備した反応混合液を40℃に温調された約20cm四角で1.0cm厚さのアルミ製型に260g注ぎ込み3分後に取り出して高密度半硬質ウレタンフォームの成形品を得た。この成形品を一週間常温で放置し、10cm四角に切り出したのち、重さを測定した。 重さは約65gだった。平均密度は0.65g/cmだった。この成形品サンプルを使って比較例1と同様の条件でアルデヒド類の発生(放散)量を測定した。 その結果、発生(放散)量はポリウレタンフォームサンプル一個当たり(約65g)ホルムアルデヒドで1.0μg、またアセトアルデヒで2.3μg/gであった。 またこの高密度半硬質ウレタンフォーム(ポリウレタン樹脂)サンプル1.0g当たりホルムアルデヒドで0.02μg、またアセトアルデヒで0.035μg/gであった。 結果を表4に示す。
【0080】
比較例4
比較例3で準備したポリオール混合物200gに対して、試薬として入手した亜硫酸水素ナトリウム粉体(平均粒子径約0.5mm)を3g加え、攪拌して放置した。約2分で加えた塩の大半が沈澱した。この原料を再度低速で10分攪拌したが、やはり塩の大半が直ぐに沈澱した。一日この原料を放置した後、再度攪拌後ポリイソシアネート化合物と攪拌し、比較例3と同様に成形品を得た。このサンプルを使って比較例1と同様の条件でアルデヒド類の発生(放散)量を測定した。 その結果、ポリウレタンフォームサンプル一個当たり(約65g)ホルムアルデヒドの発生(放散)量は測定限界値以下になったが、アセトアルデヒド発生には低減効果が認められなかった。
加えた亜硫酸水素ナトリウムのうち、微細な粉体成分だけが効果を示したと考えられる。亜硫酸水素ナトリウムの平均粒子径が大きいと大半が沈澱するのでアルデヒド類の発生(放散)量を低減する効果は充分ではないと思われる。
【0081】
実施例17
水の使用量が少ない為、亜硫酸水素ナトリウム粉体10gを、ポリオール混合物に添加した場合に均一分散が可能な粒子の大きさになるまで事前にポリオール混合物に添加し沈殿を起こさず均一分散することを確認しながら乳鉢で粉砕した。
均一分散する確認ができた亜硫酸水素ナトリウム粉砕物1.5部を比較例3と同様のポリオール混合物に添加し攪拌した。添加された亜硫酸水素ナトリウムは均一分散し(平均粒径20ミクロン以下)分散状態をキープした。この原料を使って、比較例3と同様に成形品を得、アルデヒド類の発生量を測定した。結果を表4に示す。95%以上の低減効果を示し、ホルムアルデヒド発生は測定限界値以下に、アセトアルデヒド発生も約65gのサンプルで0.1μg以下となり、95%以上の削減効果を示した。また高密度半硬質ウレタンフォーム1g当たり全発生量は0.002μgであった。
【0082】
実施例18
やはり、水の使用量が少ない為、比較例に対して、ポリオール混合物中成分の一つであるo)エチレングリコールの添加量を5.8部から4.3部に下げたものを作成し、一方エチレングリコールと亜硫酸水素ナトリウム粉体をそれぞれ100gずつまぜあわせ、直径2mmのガラスビーズと一緒にシェイカー(LAU disperser:DAS200)で30分振動処理し、ペースト状分散体を得た。亜硫酸水素ナトリウム粉体が10ミクロン以下に粉砕されたことをデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製:VHX-100)で確認し、このペースト状分散体をポリオール混合物に3.00部添加した。その後、比較例3と同様に成形品を得、アルデヒド類発生量を測定した。結果を表4に示す。ホルムアルデヒド発生は測定限界値以下に、アセトアルデヒド発生も約65gのサンプルで0.1μg以下となり、95%以上の低減効果を示した。また高密度半硬質ウレタンフォーム(ポリウレタン樹脂)1g当たり全発生量は0.0004μgであった。
【表4】

【0083】
比較例5
比較例2と同様の条件で成形した軟質ポリウレタンフォームサンプルを、比較例1と同様の条件で、ただし加熱条件を65℃から80℃に上げてアルデヒド類の発生(放散)量を調べた。ホルムアルデヒド発生量は55gサンプルで、0.30μg、アセトアルデヒド発生量は1.45μgであった。試験温度の上昇によって、ホルムアルデヒド発生量は、1.5倍、アセトアルデヒド発生量は2倍に増加した。
【0084】
実施例19
実施例15と同じ条件の二亜硫酸カリウムをポリオールと触媒の合計100重量部に対して0.39部含む軟質ポリウレタンフォーム成形品を使い、比較例5と同条件でアルデヒド類の発生量を調べた。ホルムアルデヒド発生量は55gサンプルで測定限界値以下、アセトアルデヒド発生量は1.39μgであった。加熱試験温度が上昇しても、ホルムアルデヒド発生量は、充分低減出来ることを確認した。アセトアルデヒド発生の低減効果は20%であった。また軟質ポリウレタンフォーム(ポリウレタン樹脂)1g当たり全発生量は0.03μgであった。
【0085】
実施例20
実施例16と同じ条件での二亜硫酸カリウムをポリオールと触媒の合計100重量部に対して0.68部含む軟質ポリウレタンフォーム成形品を使い、比較例5と同条件でアルデヒド類の発生量を調べた。ホルムアルデヒド発生量は55gサンプルで測定限界値以下、アセトアルデヒド発生量は0.64μgであった。低減効果は65%であった。また軟質ポリウレタンフォーム(ポリウレタン樹脂)1g当たり全発生量は0.01μgであった。加熱試験温度が80℃でもアルデヒド類の低減は有効である事を確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールおよび触媒を含んでなるポリオール混合物とポリイソシアネート化合物から、ポリウレタン樹脂を製造する方法であって、亜硫酸水素塩および二亜硫酸塩からなる群から選択された少なくとも1種の亜硫酸化合物をポリオール混合物に添加することを特徴とするポリウレタン樹脂の製造法。
【請求項2】
亜硫酸化合物が、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩、アンモニウムの塩またはこれらの混合物である請求項1記載の製造法。
【請求項3】
亜硫酸化合物が、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素カルシウム、亜硫酸水素マグネシウム、亜硫酸水素アルミニウム、亜硫酸水素亜鉛、亜硫酸水素バリウム、亜硫酸水素アンモニウム、二亜硫酸水素塩の具体例は、二亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸カリウム、二亜硫酸カルシウム、二亜硫酸マグネシウム、二亜硫酸アンモニウム、またはこれらの混合物である請求項1記載の製造法。
【請求項4】
亜硫酸化合物の添加量が、ポリオールと触媒の合計100重量部に対し、0.02〜2.0重量部である請求項1〜3のいずれかに記載の製造法。
【請求項5】
亜硫酸化合物の水溶液をポリオール混合物に添加する請求項1〜4のいずれかに記載の製造法。
【請求項6】
20ミクロン以下の亜硫酸化合物の粒子がポリオール混合物中に分散している請求項1〜4のいずれかに記載の製造法。
【請求項7】
亜硫酸化合物とポリオールを混合し、亜硫酸化合物の粒子の大きさが20ミクロン以下になるように粉砕して得られた、亜硫酸化合物がポリオール中に分散している亜硫酸組成物をポリオール混合物に加える請求項6に記載の製造法。
【請求項8】
請求項1記載の製造法で作られたポリウレタン成形品であって、65℃で2時間の間にポリウレタン成形品から放散されるアルデヒド類の量がポリウレタン樹脂1g当たり0.005μg以下である事を特徴とするポリウレタン成形品。
【請求項9】
請求項1記載の方法で作られた密度が0.03〜1.8g/mで厚さが0.01mm〜20cmであるポリウレタン成形品であって、
10cmx10cm角で10cm以下の厚みに切り出した成形品サンプルから65℃で2時間の間に放散されるホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの総量が0.5μg以下である事を特徴とするポリウレタン成形品。
【請求項10】
請求項1記載の方法で作られたポリウレタン成形品であって、80℃で2時間の間に成形品から放散されるアルデヒド類の量がポリウレタン樹脂1g当たり0.01μg以下である事を特徴とするポリウレタン成形品。

【公開番号】特開2008−280410(P2008−280410A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124683(P2007−124683)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000183299)住化バイエルウレタン株式会社 (33)
【Fターム(参考)】