説明

ポリウレタン樹脂の製造法

【課題】ポリイソシアネートとして、ジフェニルメタンジイソシアネートを用い、臭気問題や毒性、環境問題を引き起こすことなく、ポリウレタン製品を生産性、流動性良く得ることができるポリウレタン樹脂の製造法を提供する。
【解決手段】ウレタン化触媒存在下、ポリオール成分とイソシアネート成分を反応させるポリウレタン樹脂の製造法であって、該ウレタン化触媒が下記一般式(1)


[式中、Xは、ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基、又はヒドロキシエチル基を表す。]で示されるアミン化合物を含有し、イソシアネート成分がジフェニルメタンジイソシアネートを含有し、かつジフェニルメタンジイソシアネート中の2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの含有量が10重量%を超える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジフェニルメタンジイソシアネートを用いたポリウレタン樹脂の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂はポリオールとポリイソシアネートとを触媒及び必要に応じて発泡剤、界面活性剤、難燃剤、架橋剤等の存在下に反応させて製造される。
【0003】
ポリウレタン樹脂の製造には、ポリオールとポリイソシアネートとの反応を促進するため、数多くの金属系化合物や第3級アミン化合物を触媒として用いることが知られている。これら触媒は単独又は併用することにより工業的にも多用されている。
【0004】
発泡剤として、水、低沸点有機化合物、又はこれらの両方を用いるポリウレタンフォームの製造においては、生産性、成形性に優れることから、これら触媒のうち、とりわけ第3級アミン化合物が広く用いられている。このような第3級アミン化合物としては、例えば、従来公知のトリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N,N−ジメチルエタノールアミン等が挙げられる(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
前記した第3級アミン触媒は、ポリウレタン製品から揮発性のアミンとして徐々に排出され、例えば、自動車内装材等では揮発性アミンによる臭気問題や他の材料、例えば表皮塩ビの変色問題を引き起こす。また、第3級アミン触媒は、一般に悪臭が強く、ポリウレタン樹脂製造時の作業環境が著しく悪化する。これら揮発性の第3級アミン触媒に対し、この問題を解決する方法として分子内にポリイソシアネートと反応しうるヒドロキシ基や1級及び2級のアミノ基を有するアミン触媒、第3級アミノ基を分子内に有する2官能の架橋剤を使用する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献6参照)。
【0006】
上記のアミン触媒を使用する方法は、ポリイソシアネートと反応した形でポリウレタン樹脂骨格中に固定化されるため上記問題を回避できるとされ、確かに、最終樹脂製品の臭気低減には有効であるが、これらのアミン触媒は樹脂化反応(ポリオールとイソシアネートの反応)の活性が劣るため、硬化性が低下する問題がある。また、上記の架橋剤を使用する方法は、最終樹脂製品の臭気低減及びポリウレタン樹脂製造時の作業環境改善に有効であるが、ポリウレタン樹脂の硬度等の物性が不充分である。
【0007】
一方、金属系触媒は、前記した第3級アミン触媒のような臭気問題や他の材料を劣化させる問題は起さないが、金属系触媒単独の使用では、生産性、物性及び成形性が悪化するとともに、金属系触媒の中には鉛、錫、水銀等の重金属を含むものがあり、製品中に残った重金属による毒性問題や環境問題が取り沙汰されて来ている。
【0008】
ところで、ポリウレタン樹脂の製造においてポリイソシアネートとして用いられるジフェニルメタンジイソシアネートは、一般にアニリンとホルマリンとの縮合物をホスゲン化して得られるポリイソシアネートである。このため、ジフェニルメタンジイソシアネートは、二核体である4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−異性体)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−異性体)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’−異性体)や二以上の多核体の混合物として存在する(ここで、「核」とはベンゼン環構造を指す)。
【0009】
近年、低粘度のポリイソシアネートが得られる等、多くの有利な特性を有することから、2,4’−異性体を多く含有するジフェニルメタンジイソシアネートを用いて、ポリウレタン樹脂を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献7参照)。
【0010】
しかしながら、ポリウレタン樹脂の製造において、ジフェニルメタンジイソシアネートを用いた場合、2,4’−異性体や2,2’−異性体はポリオールとの反応性は、4,4’−異性体に比べて低いことから、それらが未反応物としてポリウレタン樹脂に残存し、臭気問題や環境問題を引き起こすおそれがあるとともに、フォームの流動性が悪化するという問題が指摘されている。
【0011】
本件出願人は、臭気問題や環境問題を引き起こすことなくポリウレタン製品を生産性、成形性良く得ることができるとして、2−ヒドロキシメチルトリエチレンジアミンを触媒として用いたウレタン樹脂の製造法について既に特許出願している(例えば、特許文献7、特許文献8参照)。しかしながら、同公報では、ポリイソシアネートとしてジフェニルメタンジイソシアネートを用いた場合に得られるフォームの流動性については何ら検討がなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭46−4846号公報
【特許文献2】特公昭61−31727号公報
【特許文献3】特許第2971979号明細書
【特許文献4】特開昭63−265909号公報
【特許文献5】特開2008−45113公報
【特許文献6】米国特許第4007140号明細書
【特許文献7】特開2005−225879号公報
【特許文献8】特開2010−037488号公報
【特許文献9】特開2010−106192号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社 p.118
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、ポリイソシアネートとして、ジフェニルメタンジイソシアネートを用い、臭気問題や毒性、環境問題を引き起こすことなく、ポリウレタン製品を生産性、流動性良く得ることができるポリウレタン樹脂の製造法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは上記問題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ポリウレタン樹脂の製造法において、イソシアネート成分として、2,4’−異性体を特定量含有するジフェニルメタンジイソシアネートを用い、かつウレタン化触媒として、特定のアミン化合物を併用することにより、臭気問題や毒性、環境問題を引き起こすことなく、環境負荷低減が可能なポリウレタン製品が生産性、流動性良く得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりのポリウレタン樹脂の製造法である。
【0017】
[1]ウレタン化触媒存在下、ポリオール成分とイソシアネート成分を反応させるポリウレタン樹脂の製造法であって、該ウレタン化触媒が下記一般式(1)
【0018】
【化1】

【0019】
[式中、Xは、ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基、又はヒドロキシエチル基を表す。]
で示されるアミン化合物を含有すること、イソシアネート成分がジフェニルメタンジイソシアネートを含有すること、並びにジフェニルメタンジイソシアネート中の2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの含有量が10重量%を超えることを特徴とするポリウレタン樹脂の製造法。
【0020】
[2]一般式(1)で示されるアミン化合物が、2−ヒドロキシメチルトリエチレンジアミンであることを特徴とする上記[1]に記載のポリウレタン樹脂の製造法。
【0021】
[3]ジフェニルメタンジイソシアネート中の2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの含有量が20重量%を超えることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のポリウレタン樹脂の製造法。
【0022】
[4]ジフェニルメタンジイソシアネート中の2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの含有量が30重量%を超えることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のポリウレタン樹脂の製造法。
【0023】
[5]イソシアネート成分が、トルエンジイソシアネート、ポリフェニルポリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートからなる群より選ばれる一種又は二種以上の化合物とジフェニルメタンジイソシアネートとを含有することを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂の製造法。
【0024】
[6]ウレタン化触媒の使用量が、ポリオール成分100重量部に対して0.01〜30重量部の範囲であることを特徴とする上記[1]乃至[5]に記載のポリウレタン樹脂の製造法。
【発明の効果】
【0025】
本発明の製造法によれば、イソシアネート成分として、2,4’−異性体を特定量含有するジフェニルメタンジイソシアネートを用い、かつウレタン化触媒として、特定のアミン化合物を併用することにより、流動性に優れ、密度の低いポリウレタン樹脂が得られる。
【0026】
また、本発明の製造法を用いて製造されたポリウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂から揮散するアミン及び有機化合物が少ない。よって、本発明の製造法は、ポリウレタン製品を生産性、成形性良く得ることができるのみならず、臭気問題や毒性、環境問題を引き起こすことなく、更には通常のアミン触媒に起因する自動車インストルパネルのPVC変色、フォームからの揮発成分移行による窓ガラスの曇り現象防止に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例においてフォームの流動性を評価するために使用したモールドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0029】
本発明のポリウレタン樹脂製造の製造法は、ウレタン化触媒存在下、ポリオール成分とイソシアネート成分を反応させるポリウレタン樹脂の製造法であって、
(a)ウレタン化触媒が上記式(1)で示されるアミン化合物を含有すること、
(b)イソシアネート成分がジフェニルメタンジイソシアネートを含有すること、並びに
(c)ジフェニルメタンジイソシアネート中の2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの含有量が10重量%を超えること、
をその特徴とする。
【0030】
本発明において、ウレタン化触媒とは、ポリオールとポリイソシアネートとの反応を促進する機能を有する触媒をいう。
【0031】
本発明において、上記式(1)で示されるアミン化合物としては、例えば、ヒドロキシトリエチレンジアミン、ヒドロキシメチルトリエチレンジアミン、ヒドロキシエチルトリエチレンジアミン等が挙げられるが、工業的に入手可能なことから、2−ヒドロキシメチルトリエチレンジアミンが好ましい。
【0032】
上記式(1)で示される化合物は公知の方法にて製造できる。例えば、ピペラジンに対応するジブロモカルボン酸エステルを適当なモル比で反応させ、得られたエステル体を還元することにより製造することができる。
【0033】
本発明において、ウレタン化触媒として用いられる上記式(1)で示されるアミン化合物は、予め混合して調製したものを反応時に添加してもよいし、反応の際に同時に添加してもよい。また、それらを混合する際に溶媒に溶解して使用することもできる。溶媒としては特に限定するものではないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等のアルコール類、トルエン、キシレン、ミネラルターペン、ミネラルスピリット等の炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルグリコ−ルアセテート、酢酸セルソルブ等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類の有機溶媒、アセチルアセトン及びそのフッ素化置換体等のβ−ジケトン類、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のケトエステル類等のキレ−ト化可能な溶媒、水等が挙げられる。
【0034】
本発明においては、ウレタン化触媒として、上記式(1)で示されるアミン化合物のみを使用することで、十分に本発明の効果は発揮されるが、それ以外の触媒(以下、「他の触媒」という。)を使用してもよい。
【0035】
このような他の触媒としては、例えば、有機金属触媒、カルボン酸金属塩触媒、第3級アミン触媒、第4級アンモニウム塩触媒等が挙げられる。
【0036】
有機金属触媒としては、従来公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えば、スタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジオレエート、スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛、
鉄アセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナート、ニッケルアセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトナート、オクチル酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ロジン酸ビスマス、オクチル酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、等が挙げられる。
【0037】
カルボン酸金属塩触媒としては、従来公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えば、カルボン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が挙げられる。カルボン酸としては、特に限定するものではないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、2−エチルヘキサン酸、アジピン酸等の脂肪族モノ及びジカルボン酸類、安息香酸、フタル酸等の芳香族モノ及びジカルボン酸類等が挙げられる。また、カルボン酸塩を形成すべき金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属が好適な例として挙げられる。
【0038】
第三級アミン触媒としては、従来公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチル−(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン、1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ジメチルアミノプロピルイミダゾール等の第三級アミン化合物類が挙げられる。
【0039】
第4級アンモニウム塩触媒としては、従来公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えば、テトラメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、水酸化テトラメチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム水酸化物、テトラメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムギ酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩等のテトラアルキルアンモニウム有機酸塩類が挙げられる。
【0040】
本発明において、ウレタン化触媒としては、上記式(1)で示されるアミン化合物と上記した他の触媒とを併用する場合には、それらの重量比は、1/20〜20/1の範囲になるように混合比率を調節することが好ましく、1/10〜10/1の範囲とすることが更に好ましい。重量比がこの範囲を超えると、ポリウレタン樹脂の物性及び触媒活性の点で満足できる性能を発揮しない場合がある。
【0041】
本発明において、ウレタン化触媒の使用量は、使用されるポリオ−ル成分100重量部に対し、通常0.01〜30重量部の範囲であるが、好ましくは0.1〜20重量部の範囲である。0.01重量部より少ないと本発明の効果が得られない場合がある。一方、30重量部を超えると、触媒を増やした効果が得られないばかりでなく、ポリウレタン樹脂の物性が悪化する場合がある。
【0042】
本発明においては、ウレタン化触媒として、上記式(1)で示されるアミン化合物を単独で、又は上記した他の触媒と混合して使用することができるが、混合調整にあたっては、必要ならば、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、水等の溶媒を使用することができる。溶媒の使用量は、特に限定するものではないが、好ましくは触媒の全量に対して3重量倍以下である。3重量倍を超えると、得られるフォームの物性に影響を及ぼすおそれがあり、また経済上の理由からも好ましくない。このように調整されたウレタン化触媒は、ポリオール成分に添加して使用してもよいし、個々の成分を別々にポリオール成分に添加しても良く、使用上特に制限はない。
【0043】
本発明において、ポリオール成分としては、例えば、従来公知のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、更にはリン含有ポリオールやハロゲン含有ポリオール等の難燃ポリオール、植物油ポリオール等が挙げられる。これらのポリオールは単独で使用することもできるし、適宜混合して併用することもできる。
【0044】
本発明において、ポリエーテルポリオールとしては、従来公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えば、2個以上の活性水素基を有する化合物(具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン等のアミン類、エタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等が例示される。)を出発原料として、これとアルキレンオキサイド(具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等が例示される。)との付加反応により製造されたものが挙げられる[例えば、Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985) Hanser Publishers社(ドイツ),p.42−53に記載の方法参照]。
【0045】
本発明において、ポリエステルポリオールとしては、従来公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えば、二塩基酸とグリコールの反応から得られるものや、ナイロン製造時の廃物、トリメチロールプロパン、ペンタエリストールの廃物、フタル酸系ポリエステルの廃物、廃品を処理し誘導したポリエステルポリオール等が挙げられる[例えば、岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987)日刊工業新聞社 p.117の記載参照。]。
【0046】
本発明において、ポリマーポリオ−ルとしては、従来公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えば、前記ポリエーテルポリオールとエチレン性不飽和単量体(例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等が挙げられる。)をラジカル重合触媒の存在下に反応させた重合体ポリオールが挙げられる。
【0047】
本発明において、難燃ポリオールとしては、従来公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えば、リン酸化合物にアルキレンオキシドを付加して得られるリン含有ポリオールや、エピクロルヒドリンやトリクロロブチレンオキシドを開環重合して得られるハロゲン含有ポリオール、フェノールポリオール等が挙げられる。
【0048】
本発明において、植物由来ポリオールとしては、植物から得られた原料を用いて製造されるポリオールであればよく、特に限定されない。例えば、ヒマワリ油、菜種油、亜麻仁油、綿実油、キリ油、ヤシ油、ケシ油、トウモロコシ油、ヒマシ油、ピーナッツ油、大豆油等の植物油から合成されるものが挙げられる。これらのうち、工業的に入手可能なことから、ヒマシ油、大豆油及びそれらの誘導体が好ましい。これらの植物由来ポリオールは単独又は2種以上を組み合わせても良い。ヒマシ油及びその誘導体の具体例としては、ヒマシ油、水添ヒマシ油、ヒマシ油脂肪酸縮合物から合成されるポリエステルポリオール、水添ヒマシ油脂肪酸縮合物から合成されるポリエステルポリオール、及びそれらの混合物等が挙げられる。大豆油及びその誘導体の具体例としては、ヒドロキシル化大豆油、ヒドロキシル化大豆油脂肪酸縮合物から合成されるポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0049】
本発明において、ポリオール成分として、通常、平均水酸基価が20〜1000mgKOH/gの範囲のポリオ−ルが使用されるが、軟質ポリウレタン樹脂や半硬質ポリウレタン樹脂には平均水酸基価が20〜100mgKOH/gの範囲のものが、硬質ポリウレタン樹脂には平均水酸基価が100〜800mgKOH/gの範囲のものが、好適に使用される。
【0050】
本発明において、イソシアネート成分としては、ジフェニルメタンジイソシアネートを含有し、かつジフェニルメタンジイソシアネート中の2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの含有量が10重量%を超えるものが使用される。ジフェニルメタンジイソシアネート中の2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの含有量が20重量%を超えるものが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネート中の2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの含有量が30重量%を超えるものがさらに好ましい。ジフェニルメタンジイソシアネート中の2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの含有量が10重量%以下の場合、ウレタン化触媒として、上記式(1)で示されるアミン化合物を使用したとしても、ポリウレタン樹脂の流動性が悪化し、ポリウレタン樹脂の硬度が高くなる。
【0051】
本発明において、ジフェニルメタンジイソシアネートは、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート以外に、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを含有することが好ましい。また、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートについては、含有してもよいし、含有しなくてもよい。
【0052】
本発明において、イソシアネート成分として、上記したジフェニルメタンジイソシアネートのみを使用することで、十分に本発明の効果は発揮されるが、それ以外のポリイソシアネート(以下、「他のイソシアネート」という。)を使用してもよい。
【0053】
このような他のイソシアネートとしては、従来公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えば、トルエンジイソシアネート(以下、TDIと称する場合がある。)、ポリフェニルポリメチレンジイソシアネート、ナフチレンジイシシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類、ジシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート類、及びこれらの混合体等が挙げられる。これらのうち好ましくはTDIとその誘導体、ポリフェニルポリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートとその誘導体、又はイソホロンジイソシアネートとその誘導体であり、これらは上記したジフェニルメタンジイソシアネートと混合して使用される。
【0054】
TDIとその誘導体としては、例えば、2,4−TDIと2,6−TDIの混合物、TDIの末端イソシアネートプレポリマー誘導体等を挙げることができる。ヘキサメチレンジイソシアネートとその誘導体としては、末端イソシアネート基をもつヘキサメチレンジイソシアネート誘導体等を挙げることができる。イソホロンジイソシアネートとその誘導体としては、末端イソシアネート基をもつイソホロンジイソシアネート誘導体等を挙げることができる
本発明において、イソシアネート成分として、上記したジフェニルメタンジイソシアネートと上記した他のイソシアネートとを併用する場合には、これらの重量比は、1/10〜10/1の範囲になるように混合比率を調節することが好ましく、1/5〜5/1の範囲とすることが更に好ましい。重量比がこの範囲を超えると、ポリウレタン樹脂の物性や触媒活性の点で満足できる性能を発揮しない場合がある。
【0055】
本発明において、ポリオール成分とイソシアネート成分の混合割合としては、特に限定するものではないが、イソシアネートインデックス([イソシアネート基]/[イソシアネート基と反応しうる活性水素基](モル比)×100)で表すと、一般に60〜400の範囲が好ましい。
【0056】
本発明において、必要であれば、発泡剤を使用することができる。発泡剤としては、特に限定するものではないが、例えば、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)等のフロン系化合物、HFE−254pc等のハイドロフルオロエーテル類、低沸点炭化水素、水、液化炭酸ガス、ジクロロメタン、ギ酸、アセトン等が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を混合して使用することができる。低沸点炭化水素としては、通常、沸点が通常−30〜70℃の炭化水素が使用され、その具体例としては、プロパン、ブタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン及びこれらの混合物が挙げられる。
【0057】
発泡剤の使用量は、所望の密度やフォーム物性に応じて決定されるため、特に限定するものではないが、具体的には、得られるフォーム密度が、通常5〜1000kg/m、好ましくは10〜500kg/mとなるように選択される。
【0058】
本発明において、必要であれば、整泡剤として界面活性剤を用いることができる。使用される界面活性剤としては、例えば、従来公知の有機シリコーン系界面活性剤が挙げられ、具体的には、有機シロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体、シリコーン−グリース共重合体等の非イオン系界面活性剤、又はこれらの混合物等が例示される。それらの使用量は、ポリオール100重量部に対して通常0.1〜10重量部である。
【0059】
本発明において、必要であれば、架橋剤又は鎖延長剤を用いることができる。架橋剤又は鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等の低分子量の多価アルコール類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の低分子量のアミンポリオール類、エチレンジアミン、キシリレンジアミン、メチレンビスオルソクロルアニリン等のポリアミン類等を挙げることができる。
【0060】
本発明において、必要であれば、難燃剤を用いることができる。難燃剤としては、例えば、リン酸とアルキレンオキシドとの付加反応によって得られるプロポキシル化リン酸、プロポキシル化ジブチルピロリン酸等に代表される含リンポリオール等の反応型難燃剤、トリクレジルホスフェート等の第3リン酸エステル類、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有第3リン酸エステル類、ジブロモプロパノール、ジブロモネオペンチルグリコール、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン含有有機化合物類、酸化アンチモン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸アルミニウム等の無機化合物等が挙げられる。その量は特に限定されるものではなく、要求される難燃性に応じて異なるが、通常ポリオール100重量部に対して4〜20重量部である。
【0061】
本発明の方法において、必要であれば、着色剤や、老化防止剤、その他従来公知の添加剤等も使用できる。これらの添加剤の種類、添加量は、使用される添加剤の通常の使用範囲でよい。
【0062】
本発明の方法は、上記した原料を混合した混合液を急激に混合、攪拌した後、適当な容器又はモールドに注入して発泡成型することにより行われる。混合、攪拌は一般的な攪拌機や専用のポリウレタン発泡機を使用して実施すればよい。ポリウレタン発泡機としては高圧、低圧及びスプレー式の機器が使用できる。
【0063】
本発明の方法により得られるポリウレタン樹脂製品としては、発泡剤を使用しないエラストマーや発泡剤を使用するポリウレタンフォーム等が挙げられ、本発明のポリウレタン樹脂の製造法は、これらのようなポリウレタンフォーム製品の製造に好適に使用される。
【0064】
ポリウレタンフォーム製品としては、軟質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム等が挙げられるが、本発明のポリウレタン樹脂の製造法は、自動車内装材として用いられる軟質ポリウレタンフォームのカーシート、半硬質ポリウレタンフォームのインスツルメントパネルやハンドル及び硬質ポリウレタンフォームにて製造される断熱材の製造に特に好適に使用される。
【0065】
なお、本発明において、軟質ポリウレタンフォームとは、一般的にオープンセル構造を有し、高い通気性を示す可逆変形可能なフォームをいう[例えば、Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985年版)Hanser Publishers社(ドイツ),p.161〜233や、岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社、p.150〜221の記載参照。]。軟質ウレタンフォームの物性としては、特に限定するものではないが、一般的には、密度が10〜100kg/m、圧縮強度(ILD25%)が200〜8000kPa、伸び率が80〜500%の範囲である。
【0066】
また、半硬質ポリウレタンフォームとは、フォーム密度及び圧縮強度は軟質ポリウレタンフォームよりも高いものの、軟質ポリウレタンフォームと同様にオープンセル構造を有し、高い通気性を示す可逆変形可能なフォームをいう[例えば、Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985年版)Hanser Publishers社(ドイツ),p.223〜233や、岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社、p.211〜221の記載参照。]。また、使用するポリオール、イソシアネート原料も軟質ポリウレタンフォームと同様であるため、一般に軟質ポリウレタンフォームに分類される。半硬質ウレタンフォームの物性は、特に限定するものではないが、一般的には、密度が40〜800kg/m、圧縮強度(ILD25%)が10〜200kPa、伸び率が40〜200%の範囲である。本発明において、軟質ポリウレタンフォームは、使用する原料及びフォーム物性から半硬質ポリウレタンフォームを含む場合がある。
【0067】
さらに、硬質ポリウレタンフォームとは、高度に架橋されたクローズドセル構造を有し、可逆変形不可能なフォームをいう[例えば、Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985年版)Hanser Publishers社(ドイツ),p.234〜313や、岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社、p.224〜283の記載参照。]。硬質ウレタンフォームの物性は、特に限定するものではないが、一般的には、密度が10〜100kg/m、圧縮強度が50〜1000kPaの範囲である。
【実施例】
【0068】
以下、実施例、比較例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定解釈されるものではない。
【0069】
合成例1(2−ヒドロキシメチルトリエチレンジアミンの合成).
2Lのセパラブルフラスコに、ピペラジン43.1g(0.5mol)、トリエチルアミン151.8g(1.5mol)を仕込み、トルエンで希釈した。窒素置換後、これにトルエンで希釈した2,3−ジブロモプロピオン酸エチル(東京化成工業社製)を攪拌しながら添加し、100℃で24時間熟成反応を行った。析出したトリエチルアミンの塩酸塩をろ過により除去し、得られた反応液を濃縮し、エステル体を合成した。このエステル体をテトロヒドロフランに溶解させ、氷浴下、水素化アルミニウムリチウムのテトロヒドロフラン溶液に攪拌しながら添加した。室温で2時間反応後、水、15%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、不溶物をろ過により除去した。反応液を濃縮後、酢酸エチルで抽出洗浄した。酢酸エチルを除去し、目的化合物である2−ヒドロキシメチルトリエチレンジアミンを48.3g得た(収率68.0%)。
【0070】
合成例2(ジフェニルメタンジアミンの合成).
1300gのアニリンを、500gのホルマリン(溶液の重量に対して30重量%のホルムアルデヒドの水溶液)を耐圧容器に仕込み、25℃で激しく混合し、60℃まで加熱した。撹拌機を止め、上方にある水相を分離した。45℃まで反応物を冷却後、30%の塩酸水340gを温度45℃に保ちながら、混合し、約15分間撹拌した。さらに、反応性生物を2時間、5バールの圧力下で140℃まで加熱し、約15分間140℃で反応物を保持した。次いで、この反応物を常圧に戻し、100℃に冷却後、撹拌しながら、50重量%の水酸化ナトリウム水溶液270gを添加し、中和した。撹拌機を止め、静置後、下方の水相を吸引によって分離した。過剰のアニリンと残留水を、常圧下で留去し、得られたポリアミン混合物を100ミリバール、250℃で蒸留することで、低沸物を除去した。以下の組成のジフェニルメタンジアミンとポリアミンの混合物が950g得られた。
【0071】
混合物の重量に対して、4,4’−ジフェニルメタンジアミン=60.0重量%、2,4’−ジフェニルメタンジアミン=6.1重量%、2,2’−ジフェニルメタンジアミン=0.2重量%、より高分子量のポリアミン=33.7重量%。
【0072】
合成例3(ジフェニルメタンジイソシアネートの合成).
合成例2で得られたジフェニルメタンジアミンとポリアミンの混合物950gを、クロロベンゼン2850g中に溶解した。別の反応器に、33重量%(溶液の重量に対して)のホスゲン溶液を、ホスゲン1900gをクロロベンゼン3800g中に、0℃に冷却しながら溶解させることによって製造した。別々の容器で調製したアミン溶液とホスゲン溶液を激しく混合し、得られた固体の懸濁液をゆっくりと加熱すると、塩化水素ガスが発生した。溶剤を蒸留によって分離すると、以下の組成のジイソシアネートとポリイソシアネートの混合物1185gが得られた。
【0073】
混合物の重量に対して、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート=59.5重量%、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート=5.4重量%、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート=0.2重量%、より高分子量のポリイソシアネート=34.9重量%。
【0074】
得られたジフェニルメタンジアミンとポリアミンの混合物を蒸留することで、以下の蒸留組成物が得られた。
【0075】
組成物A:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート98重量%及び2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート2重量%のジフェニルメタンジイソシアネート。
【0076】
組成物B:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート57重量%及び2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート43重量%のジフェニルメタンジイソシアネート。
【0077】
一方、組成物Aと組成物Bを以下の割合で混合し、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートと2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの組成比率が異なるジフェニルメタンジイソシアネートを調製した。
【0078】
組成物Cの調製.
75gの組成物Aと25gの組成物Bを混合し、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート88重量%及び2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート12重量%のジフェニルメタンジイソシアネートを調製した。
【0079】
組成物Dの調製.
50gの組成物Aと50gの組成物Bを混合し、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート78重量%及び2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート22重量%のジフェニルメタンジイソシアネートを調製した。
【0080】
実施例1.
ポリオール、整泡剤、水、架橋剤、触媒を表1に示した原料配合比にて調合してプレミックス液とし、20℃に温度調整した。別容器で20℃に温度調整したイソシアネート液を、イソシアネートインデックス[=イソシアネート基/OH基(モル比)×100]が105となる量を、プレミックス液のカップの中に入れ、素早く攪拌機にて6000rpmで5秒間攪拌した。混合攪拌した混合液を60℃に温度調節した金型(内寸法、250mm×250mm×100mmのアルミニウム製)に注入して密閉した。60℃の熱風オーブンで6分間加熱硬化して、金型から軟質ウレタンフォームを取り出し、クラッシング後、室内(温度25℃、相対湿度50%)で24時間放置し、各種物性を測定した。
【0081】
(1)フォームのコア密度.
JIS K−6400記載の見かけ密度の測定方法に準拠して測定を行った。フォームサンプルから表皮を取り去り、直方体フォームサンプルを調製してコア密度を測定した。
【0082】
(2)フォームの硬度(表1中、「25%ILD」と略記する)。
【0083】
JIS K−6400記載のA法に準拠して測定を行った。ただし、厚さ100mmのフォームについて測定した。
【0084】
(3)フォームの流動性.
60℃に温度調節した図1に示す迷路状の溝を内部に施したモールド(内寸法、295×305×25mmのアルミ製)内に混合液を入れ、発泡したフォームがどのくらい成形性良く流れたかを調べた。発泡により迷路を通り抜けて図1の斜線で示した部分に広がったフォームの重量を、フォームの全重量で割った、重量%によって流動性を示した。数値が大きいほど、フォームの流動性が良いことを表す。
【0085】
(4)フォームの臭気
フォームコア密度を測定したフォームから5×5×5cm寸法のフォームをカットしマヨネ−ズ瓶の中に入れ蓋をした。この瓶を80℃で1時間加熱後、瓶を室温まで冷却し、10人のモニターにそのフォームの臭いを嗅がせ、臭いの強さを測定した。
【0086】
◎:殆ど臭い無し。
【0087】
○:わずかにあり。
【0088】
△:臭気あり。
【0089】
×:強い臭気有り。
【0090】
【表1】

【0091】
実施例2〜3、比較例1〜比較例5.
触媒、イソシアネート、又はそれらの両方を変更した以外は、実施例1と同じ手法を用いた。結果を表1にあわせて示す。
【0092】
実施例1〜3は本発明のポリウレタン樹脂の製造法の例であるが、フォームからアミン触媒や有機化合物の揮散はほとんどなく、流動性に優れるフォームが得られた。これに対し、比較例1は、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの含有量が10重量%以下であるジフェニルメタンジイソシアネートを使用した場合であるが、フォームの流動性が悪く、フォームの硬度(25%ILD値)が高くなった。
【0093】
一方、比較例2〜比較例5は、ウレタン触媒として一般に使用されているトリエチレンジアミン33.3%ジプロピレングリコール溶液(東ソ−社製、製品名:TEDA−L33)を用いた場合であるが、フォームの流動性が悪く、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの含有量を変更しても、フォームの流動性は改善しなかった。また、フォームからアミン触媒の臭気が確認され、アミン触媒に起因する自動車インストルパネルのPVC変色、窓ガラスの曇り現象を防止することができないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン化触媒存在下、ポリオール成分とイソシアネート成分を反応させるポリウレタン樹脂の製造法であって、該ウレタン化触媒が下記一般式(1)
【化1】

[式中、Xは、ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基、又はヒドロキシエチル基を表す。]
で示されるアミン化合物を含有すること、イソシアネート成分がジフェニルメタンジイソシアネートを含有すること、並びにジフェニルメタンジイソシアネート中の2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの含有量が10重量%を超えることを特徴とするポリウレタン樹脂の製造法。
【請求項2】
一般式(1)で示されるアミン化合物が、2−ヒドロキシメチルトリエチレンジアミンであることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン樹脂の製造法。
【請求項3】
ジフェニルメタンジイソシアネート中の2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの含有量が20重量%を超えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリウレタン樹脂の製造法。
【請求項4】
ジフェニルメタンジイソシアネート中の2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの含有量が30重量%を超えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリウレタン樹脂の製造法。
【請求項5】
イソシアネート成分が、トルエンジイソシアネート、ポリフェニルポリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートからなる群より選ばれる一種又は二種以上の化合物とジフェニルメタンジイソシアネートとを含有することを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載のポリウレタン樹脂の製造法。
【請求項6】
ウレタン化触媒の使用量が、ポリオール成分100重量部に対して0.01〜30重量部の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載のポリウレタン樹脂の製造法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−131839(P2012−131839A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282389(P2010−282389)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】