説明

ポリウレタン樹脂水性分散体

【課題】 造膜性に優れ、得られる皮膜の耐熱性、耐候性及び耐水性が良好なポリウレタン樹脂水性分散体を提供する。
【解決手段】 (メタ)アクリロイル基、(メタ)アリル基及び1−プロペニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和基を分子側鎖に1個以上有するポリウレタン樹脂(U)と水を含有し、以下の(1)〜(6)の全てを満たすポリウレタン樹脂水性分散体;
(1)(U)中のウレタン基含量が(U)の重量に基づいて0.5〜5.0mmol/gである;
(2)(U)中の末端アミノ基含量が(U)の重量に基づいて0.35mmol/g以下である;
(3)(U)の数平均分子量(Mn)が1万〜100万である;
(4)(U)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.5〜3.5である;
(5)(U)の溶融温度が40〜280℃である;
(6)(U)の体積平均粒子径(Dv)が0.01〜1μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂水性分散体に関し、更に詳しくは重合性不飽和基を分子側鎖に1個以上有するポリウレタン樹脂の水性分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂の耐候性を向上させるために、重合性不飽和基を分子末端に導入したポリウレタンアクリレート等の水性分散体が提案されている。例えば、分散体の保存安定性に優れ、硬度、帯電防止性及び防曇性等の塗膜物性に優れているものとして、ポリアルキレングリコール誘導体の水酸基と水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基とをポリイソシアネートで反応させて得られるウレタン結合を有する樹脂の水性分散体(例えば、特許文献−1参照)が提案されているが、これらのポリウレタン樹脂水性分散体は、その乾燥皮膜の耐熱性及び反発弾性において十分ではなかった。
これに対して、耐熱性、反発弾性及び密着性を改善したポリウレタン樹脂水性分散体(例えば、特許文献−2参照)が提案されているが、これは分散と同時に又は分散後に、水中で水及び/又はポリアミン化合物等によって鎖伸長させることで高分子量のポリウレタン樹脂を得るものである。この鎖伸長反応は不均一系の反応であるため、鎖伸長反応後のポリウレタン樹脂の分子量分布がブロードとなり、得られるポリウレタン樹脂水性分散体の造膜性が悪化し、得られる皮膜の性能(機械的物性、耐久性、耐薬品性及び耐磨耗性等)が低下するという問題点があった。また、鎖伸長反応後のポリウレタン樹脂はアミノ基末端となり、その親水性の高さ故に、得られる皮膜の耐水性が低下するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−201331号公報
【特許文献2】特開2005−213463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、造膜性に優れ、得られる皮膜の耐熱性、耐候性及び耐水性が良好なポリウレタン樹脂水性分散体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、上記の課題を解決できるポリウレタン樹脂水性分散体を見出した。即ち、本発明は、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アリル基及び1−プロペニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和基を分子側鎖に1個以上有するポリウレタン樹脂(U)と水を含有し、以下の(1)〜(6)の全てを満たすポリウレタン樹脂水性分散体である。
(1)(U)中のウレタン基含量が(U)の重量に基づいて0.5〜5.0mmol/gである。
(2)(U)中の末端アミノ基含量が(U)の重量に基づいて0.35mmol/g以下である。
(3)(U)の数平均分子量(Mn)が1万〜100万である。
(4)(U)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.5〜3.5である。
(5)(U)の溶融温度が40〜280℃である。
(6)(U)の体積平均粒子径(Dv)が0.01〜1μmである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体は、以下の効果を奏する。
(1)耐熱性及び耐候性が優れる。
(2)造膜性が良いため、結果として機械的物性、耐久性、耐薬品性及び耐磨耗性等が非常に優れた皮膜を得ることができる。
(3)耐水性が非常に優れた皮膜を得ることができる。
(4)分子量分布が非常に狭いポリウレタン樹脂の水性分散体である。
(5)分散安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明におけるポリウレタン樹脂水性分散体は、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アリル基及び1−プロペニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和基を分子側鎖に1個以上有するポリウレタン樹脂(U)を水中に分散して製造することができる。
【0008】
ポリウレタン樹脂(U)は、ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)、並びに(メタ)アクリロイル基、(メタ)アリル基及び1−プロペニル基からなる群から選ばれる重合性不飽和基と2個以上の水酸基を有する化合物(c)を必須成分とし、更に必要により、親水性基と活性水素原子を含有する化合物(d)、鎖伸長剤(e)及び反応停止剤(f)を反応させることにより製造される。
(メタ)アクリロイル基、(メタ)アリル基及び1−プロペニル基からなる群から選ばれる重合性不飽和基と2個以上の水酸基を有する化合物(c)を必須成分として使用することにより、ポリウレタン樹脂(U)の分子側鎖に重合性不飽和基を1個以上導入することができる。
(U)の水への分散性の観点から、親水性基と活性水素原子を含有する化合物(d)を構成成分として用いること即ち、(U)は親水性基を有したポリウレタン樹脂であることが好ましい。
【0009】
ポリウレタン樹脂(U)の必須構成成分であるポリイソシアネート(a)としては、従来ポリウレタン樹脂製造に使用されているものが使用できる。ポリイソシアネート(a)としては、2〜3個又はそれ以上のイソシアネート基を有する炭素数6〜20(イソシアネート基中の炭素を除く、以下同様)の芳香族ポリイソシアネート(a1)、炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート(a2)、炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート(a3)、炭素数8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネート(a4)及び(a1)〜(a4)の誘導体(例えばイソシアヌレート化物)が挙げられる。
【0010】
炭素数6〜20の芳香族ポリイソシアネート(a1)としては、例えば1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−又は2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4’’−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−又はp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート及びクルードMDIが挙げられる。
【0011】
炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート(a2)としては、例えばエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート及び2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等が挙げられる。
【0012】
炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート(a3)としては、例えばイソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート及び2,5−又は2,6−ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
【0013】
炭素数8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネート(a4)としては、例えばm−又はp−キシリレンジイソシアネート(XDI)及びα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)が挙げられる。
【0014】
ポリイソシアネート(a)の内、得られる皮膜の機械的物性及び耐候性の観点から好ましいのは(a2)及び(a3)、更に好ましいのは(a3)、特に好ましいのはIPDI及び水添MDIである。
【0015】
ポリオール(b)としては、数平均分子量(以下、Mnと略記)300以上の高分子ポリオール(b1)及びMn300未満の低分子ポリオール(b2)が挙げられる。
尚、本発明におけるポリオールのMnはポリエチレングリコールを標準としてゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されるものである。但し、低分子ポリオールのMnは化学式からの計算値である。
【0016】
Mn300以上の高分子ポリオール(b1)としては、ポリエーテルポリオール(b11)及びポリエステルポリオール(b12)等が挙げられる。
【0017】
ポリエーテルポリオール(b11)としては、脂肪族ポリエーテルポリオール及び芳香族環含有ポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0018】
脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリオキシエチレンポリオール[ポリエチレングリコール(以下、PEGと略記)等]、ポリオキシプロピレンポリオール[ポリプロピレングリコール等]、ポリオキシエチレン/プロピレンポリオール及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0019】
脂肪族ポリエーテルポリオールの市販品としては、PTMG1000[Mn=1,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール、三菱化学(株)製]、PTMG2000[Mn=2,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール、三菱化学(株)製]、PTMG3000[Mn=3,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール、三菱化学(株)製]及びサンニックスジオールGP−3000[Mn=3,000のポリプロピレンエーテルトリオール、三洋化成工業(株)製]等が挙げられる。
【0020】
芳香族ポリエーテルポリオールとしては、例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド(以下、EOと略記)付加物[ビスフェノールAのEO2モル付加物、ビスフェノールAのEO4モル付加物、ビスフェノールAのEO6モル付加物、ビスフェノールAのEO8モル付加物、ビスフェノールAのEO10モル付加物及びビスフェノールAのEO20モル付加物等]及びビスフェノールAのプロピレンオキサイド(以下、POと略記)付加物[ビスフェノールAのPO2モル付加物、ビスフェノールAのPO3モル付加物、ビスフェノールAのPO5モル付加物等]等のビスフェノール骨格を有するポリオール並びにレゾルシンのEO又はPO付加物等が挙げられる。
【0021】
(b11)のMnは、ポリウレタン樹脂(U)の機械物性の観点から、通常300以上、好ましくは300〜10,000、更に好ましくは300〜6,000である。
【0022】
ポリエステルポリオール(b12)としては、縮合型ポリエステルポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール及びヒマシ油系ポリオールが挙げられる。
【0023】
縮合型ポリエステルポリオールは、低分子量(Mn300未満)多価アルコールと炭素数2〜10の多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とのポリエステルポリオールである。
低分子量多価アルコールとしては、Mn300未満の2価〜8価又はそれ以上の脂肪族多価アルコール及びMn300未満の2価〜8価又はそれ以上のフェノールのアルキレンオキサイド(EO、PO、1,2−、1,3−、2,3−又は1,4−ブチレンオキサイド等を表し、以下AOと略記)低モル付加物が使用できる。
縮合型ポリエステルポリオールに使用できる低分子量多価アルコールの内好ましいのは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、ビスフェノールAのEO又はPO低モル付加物及びこれらの併用である。
【0024】
縮合型ポリエステルポリオールに使用できる炭素数2〜10の多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フマル酸及びマレイン酸等)、脂環式ジカルボン酸(ダイマー酸等)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸及びフタル酸等)、3価又はそれ以上のポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)、これらの無水物(無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸及び無水トリメリット酸等)、これらの酸ハロゲン化物(アジピン酸ジクロライド等)、これらの低分子量アルキルエステル(コハク酸ジメチル及びフタル酸ジメチル等)並びこれらの併用が挙げられる。
【0025】
縮合型ポリエステルポリオールの具体例としては、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンイソフタレートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレンプロピレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリブチレンヘキサメチレンアジペートジオール、ポリジエチレンアジペートジオール、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペートジオール、ポリ(3−メチルペンチレンアジペート)ジオール、ポリエチレンアゼレートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンアゼレートジオール、ポリブチレンセバケートジオール及びポリネオペンチルテレフタレートジオール等が挙げられる。
【0026】
縮合型ポリエステルポリオールの市販品としては、サンエスター2610[Mn=1,000のポリエチレンアジペートジオール、三洋化成工業(株)製]、サンエスター2620[Mn=2,000のポリエチレンアジペートジオール、三洋化成工業(株)製]及びサンエスター4620[Mn=2,000のポリブチレンアジペートジオール、三洋化成工業(株)製]等が挙げられる。
【0027】
ポリラクトンポリオールは、上記低分子量多価アルコールへのラクトンの重付加物であり、ラクトンとしては、炭素数4〜12のラクトン(例えばγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン及びε−カプロラクトン)等が挙げられる。
ポリラクトンポリオールの具体例としては、例えばポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール及びポリカプロラクトントリオール等が挙げられる。
【0028】
ポリカーボネートポリオールとしては、上記低分子量多価アルコールと、低分子カーボネート化合物(例えば、アルキル基の炭素数1〜6のジアルキルカーボネート、炭素数2〜6のアルキレン基を有するアルキレンカーボネート及び炭素数6〜9のアリール基を有するジアリールカーボネート)とを、脱アルコール反応させながら縮合させることによって製造されるポリカーボネートポリオール等が挙げられる。低分子量多価アルコール及びアルキレンカーボネートはそれぞれ2種以上併用してもよい。
【0029】
ポリカーボネートポリオールの具体例としては、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオール及びポリ(テトラメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオール(例えば1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールをジアルキルカーボネートと脱アルコール反応させながら縮合させて得られるジオール)等が挙げられる。
【0030】
ポリカーボネートポリオールの市販品としては、ニッポラン980R[Mn=2,000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール、日本ポリウレタン工業(株)製]及びデュラノールT4672[Mn=2,000のポリ(テトラメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオール、旭化成ケミカルズ(株)製]等が挙げられる。
【0031】
ヒマシ油系ポリオールには、ヒマシ油、及びポリオール又はAOで変性された変性ヒマシ油が含まれる。変性ヒマシ油はヒマシ油とポリオールとのエステル交換及び/又はAO付加により製造できる。ヒマシ油系ポリオールとしては、ヒマシ油、トリメチロールプロパン変性ヒマシ油、ペンタエリスリトール変性ヒマシ油、ヒマシ油のEO(4〜30モル)付加物等が挙げられる。
【0032】
ポリエステルポリオール(b12)の内好ましいのは、縮合型ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールである。
【0033】
Mn300未満の低分子ポリオール(b2)としては、脂肪族2価アルコール、脂肪族3価アルコール及び4価以上の脂肪族アルコールが挙げられる。(b2)の内、耐水性、耐熱黄変性の観点から好ましいのは、2〜3価の脂肪族アルコールであり、脂肪族2価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,6−ヘキサンジオールが特に好ましく、脂肪族3価アルコールとしては、トリメチロールプロパンが特に好ましい。
【0034】
(メタ)アクリロイル基、(メタ)アリル基及び1−プロペニル基からなる群から選ばれる重合性不飽和基と2個以上の水酸基を有する化合物(c)としては、(メタ)アクリロイル基と2個以上の水酸基を有する化合物(c1)、(メタ)アリル基と2個以上の水酸基を有する化合物(c2)等が挙げられる。
【0035】
(メタ)アクリロイル基と2個以上の水酸基を有する化合物(c1)としては、3官能以上のポリオール(分子量92以上かつMn5,000以下)の(メタ)アクリレート(c11)及びエポキシ基を有する化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物(c12)等が挙げられる。
尚、上記「分子量92」とは、化合物の化学式から計算により算出される分子量が92であることを表し、以下、低分子化合物の分子量において同様に記載する場合がある。
【0036】
3官能以上のポリオール(分子量92以上かつMn5,000以下)の(メタ)アクリレート(c11)としては、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ又はジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンモノ又はジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ、ジ、トリ又はテトラ(メタ)アクリレート及びこれらのアルキレンオキサイド(1〜100モル)付加物等が挙げられる。
【0037】
エポキシ基を有する化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物(c12)におけるエポキシ基を有する化合物としては、以下の(c121)〜(c124)等が挙げられる。
【0038】
(c121):炭素数2〜6のアルキレン基を有する(ポリ)アルキレングリコールモノ又はジグリシジルエーテル(Mn=174〜5,000);
例えば、エチレングリコールモノ又はジグリシジルエーテル、1,2−プロピレングリコールモノ又はジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールモノ又はジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールモノ−又はジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールモノ又はジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールモノ又はジグリシジルエーテル、ポリ(重合度=2〜110)エチレングリコールモノ又はジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール(重合度2〜84)モノ又はジグリシジルエーテル等。
【0039】
(c122):3価〜6価又はそれ以上のポリオールのモノ又はポリ(2〜65)グリシジルエーテル(Mn260〜5,000);
例えば、グリセリンモノ、ジ又はトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンモノ、ジ又はトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサグリシジルエーテル及びソルビトールテトラグリシジルエーテル等。
【0040】
(c123):ビスフェノールA型エポキシ樹脂;
例えば、ビスフェノールAモノ又はジグリシジルエーテル、ビスフェノールA−PO2〜40モル付加物モノ又はジグリシジルエーテル及びビスフェノールA−EO2〜40モル付加物モノ又はジグリシジルエーテル等。
【0041】
(c124):ノボラック型エポキシ樹脂;
例えば、フェノール、o−、m−又はp−クレゾール、2,3−、2,4−、2,5−、3,4−又は3,5−キシレノール、o−又はm−エチルフェノール、メジトール、p−t−ブチルフェノール、カテコール、p−t−アミルフェノール、レゾルシノール、p−オクチルフェノール、p−フェニルフェノール及びナフトール等のフェノール類を、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド及びフルフラール等のアルデヒド類と酸性条件下で反応させて得られる可溶可融性のオリゴマー(初期縮合物)のポリグリシジルエーテル化物等。
【0042】
(メタ)アリル基又は1−プロペニル基と2個以上の水酸基を有する化合物(c2)としては、3官能以上のポリオールの(メタ)アリルエーテル化物(c21)、エポキシ基を有する化合物とアルケン酸との反応生成物(c22)、及びエポキシ基を有する化合物とアルケンアミンとの反応生成物(c23)等が挙げられる。
【0043】
3官能以上のポリオールの(メタ)アリルエーテル化物(c21)としては、グリセリンモノ(メタ)アリルエーテル、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アリルエーテル、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アリルエーテル及びペンタエリスリトールジ(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【0044】
エポキシ基を有する化合物とアルケン酸との反応生成物(c22)としては、前述のエポキシ基を有する化合物(c121)〜(c124)と炭素数4〜12のアルケン酸(3−ブテン酸、クロトン酸、4−ペンテン酸及び5−ヘキセン酸等)との反応生成物等が挙げられる。
【0045】
エポキシ基を有する化合物とアルケンアミンとの反応生成物(c23)としては、前述のエポキシ基を有する化合物(c121)〜(c124)と炭素数4〜12のアルケンアミン(アリルアミン、3−ブテン−1−アミン、3−ペンテン−1−アミン、4−ペンテン−1−アミン、4−ペンテン−2−アミン、4−ヘキセン−1−アミン、5−ヘキセン−1−アミン及び5−ヘキセン−2−アミン等)との反応生成物等が挙げられる。
【0046】
(メタ)アクリロイル基、(メタ)アリル基及び1−プロペニル基からなる群から選ばれる重合性不飽和基と2個以上の水酸基を有する化合物(c)の内、得られるポリウレタン樹脂の耐候性の観点から好ましいのは、(c11)、(c121)と(メタ)アクリル酸との反応生成物及び(c21)であり、更に好ましいのは、グリセリンモノメタクリレート、エチレングリコールのジグリシジルエーテルとメタクリル酸との反応性生物及びグリセリンモノアリルエーテルである。
【0047】
(メタ)アクリロイル基、(メタ)アリル基及び1−プロペニル基からなる群から選ばれる重合性不飽和基と2個以上の水酸基を有する化合物(c)の市販品としては、グリセリンモノメタクリレートとしてブレンマーGLM[日油(株)製]、エチレングリコールのジグリシジルエーテルとメタクリル酸との反応性生物としてエポキシエステル40EM[共栄社化学(株)製]及びグリセリンモノアリルエーテルとしてネオアリルE−10[ダイソー(株)製]等が挙げられる。
【0048】
(メタ)アクリロイル基、(メタ)アリル基及び1−プロペニル基からなる群から選ばれる重合性不飽和基と2個以上の水酸基を有する化合物(c)に由来するポリウレタン樹脂(U)中の不飽和基含有量は、好ましくは、得られるポリウレタン樹脂の耐候性の観点から、0.01〜2.0mmol/gであり、更に好ましくは、ポリウレタン樹脂水性分散体の安定性の観点から、0.01〜1.0mmol/g、特に好ましくは0.05〜0.5mmol/gである。
【0049】
親水性基と活性水素原子を含有する化合物(d)としては、アニオン性基と活性水素原子を含有する化合物(d1)及びカチオン性基と活性水素原子を含有する化合物(d2)が挙げられる。
【0050】
(d1)としては、例えばアニオン性基としてカルボキシル基を含有する炭素数2〜10の化合物[ジアルキロールアルカン酸(例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸及び2,2−ジメチロールオクタン酸)、酒石酸及びアミノ酸(例えばグリシン、アラニン及びバリン)等]、アニオン性基としてスルホン酸基を含有する炭素数2〜16の化合物[3−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−1−プロパンスルホン酸及びスルホイソフタル酸ジ(エチレングリコール)エステル等]、アニオン性基としてスルファミン酸基を含有する炭素数2〜10の化合物[N,N−ビス(2−ヒドロキシルエチル)スルファミン酸等]等及びこれらの化合物を中和剤で中和した塩が挙げられる。
【0051】
(d1)の塩に用いられる中和剤としては、例えばアンモニア、炭素数1〜20のアミン化合物及びアルカリ金属水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等)が挙げられる。
炭素数1〜20のアミン化合物としては、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン及びモノエタノールアミン等の1級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン及びジイソプロパノールアミン、メチルプロパノールアミン等の2級アミン並びにトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルモノエタノールアミン及びトリエタノールアミン等の3級アミンが挙げられる。
【0052】
(d1)の塩に用いられる中和剤としては、生成するポリウレタン樹脂水性分散体の乾燥性及び得られる皮膜の耐水性の観点から、25℃における蒸気圧が高い化合物が好適である。このような観点から、(d1)の塩に用いられる中和剤としては、アンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン及びジメチルエチルアミンが好ましく、更に好ましいのはアンモニア、モノエチルアミン、ジメチルアミン及びジエチルアミン、特に好ましいのはアンモニアである。
【0053】
(d1)の内、得られる皮膜の樹脂物性及びポリウレタン樹脂水性分散体の分散安定性の観点から好ましいのは、2,2−ジメチロールプロピオン酸及び2,2−ジメチロールブタン酸及びこれらの塩類であり、更に好ましいのは2,2−ジメチロールプロピオン酸及び2,2−ジメチロールブタン酸のアンモニア又は炭素数1〜20のアミン化合物による中和塩である。
【0054】
カチオン性基と活性水素原子を含有する化合物(d2)としては、例えば炭素数1〜20の3級アミノ基含有ジオール[N−アルキルジアルカノールアミン(例えばN−メチルジエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン及びN−メチルジプロパノールアミン)及びN,N−ジアルキルモノアルカノールアミン(例えばN,N−ジメチルエタノールアミン)等]等の化合物を中和剤で中和した塩が挙げられる。
【0055】
(d2)に用いられる中和剤としては、例えば炭素数1〜10のモノカルボン酸(ギ酸、酢酸及びプロパン酸等)、炭酸、炭酸ジメチル、硫酸ジメチル、メチルクロライド及びベンジルクロライド等が挙げられる。
(d2)に用いられる中和剤としては、生成するポリウレタン樹脂の水性分散体の乾燥性及び得られる皮膜の耐水性の観点から、25℃における蒸気圧が高い化合物が好適である。このような観点から(d2)に用いられる中和剤としては、炭素数1〜10のモノカルボン酸及び炭酸が好ましく、更に好ましいのはギ酸及び炭酸、特に好ましいのは炭酸である。
【0056】
(d1)及び(d2)に用いられる中和剤は、ウレタン化反応前、ウレタン化反応中、ウレタン化反応後、水分散工程前、水分散工程中又は水分散後のいずれの時期に添加しても良いが、ウレタン樹脂の安定性及び水性分散体の安定性の観点から、水分散工程前又は水分散工程中に添加することが好ましい。
【0057】
(d)を使用する場合、その使用量は(U)中の親水性基の含有量が、(U)の重量に基づいて、通常0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜4重量%、更に好ましくは1〜3重量%となるよう調節する。
本発明における親水性基の含有量とは、未中和のカチオン性基又はアニオン性基の重量%を意味し、対イオンの重量は含まない。例えば、(d1)における親水性基の含有量は、2,2−ジメチロールプロピオン酸のトリエチルアミン塩の場合は、カルボキシル基(−COOH)の重量%を、3−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−1−プロパンスルホン酸のトリエチルアミン塩の場合はスルホ基(−SO3H)の重量%を意味する。また、(d2)における親水性基の含有量は、3級アミノ基中の窒素原子のみの重量%を意味する。
【0058】
鎖伸長剤(e)としては、水、炭素数2〜10のジアミン類(例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、トルエンジアミン及びピペラジン)、炭素数2〜10のポリアルキレンポリアミン類(例えばジエチレントリアミン及びトリエチレンテトラミン)、ヒドラジン又はその誘導体(二塩基酸ジヒドラジド例えばアジピン酸ジヒドラジド等)及び炭素数2〜10のアミノアルコール類(例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール及びトリエタノールアミン)等が挙げられる。
【0059】
反応停止剤(f)としては、炭素数1〜8のモノアルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、セロソルブ類及びカルビトール類等)、炭素数1〜10のモノアミン類(モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン及びモノオクチルアミン等のモノ又はジアルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びジイソプロパノールアミン等のモノ又はジアルカノールアミン等)が挙げられる。
【0060】
(e)及び(f)の使用量は、(U)のMn、末端アミノ基含量及びウレア基含量に影響するため、本発明の効果を損ねない範囲で使用する必要がある。具体的には、(U)のMnが後述の値となるように、また、アミン化合物を使用する場合は、(U)の末端アミノ基含量が後述の値となる範囲で使用する必要がある。また、(U)中のウレア基含量が後述の値となる量を使用することが好ましい。
ポリウレタン樹脂(U)は、単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。
【0061】
本発明におけるポリウレタン樹脂(U)は、必要により酸化防止剤、着色防止剤、耐候安定剤、可塑剤及び離型剤等の添加剤を含有することができる。これらの添加剤の使用量は(U)の重量に基づいて通常10重量%以下、更に好ましくは3重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。
【0062】
本発明におけるポリウレタン樹脂水性分散体は、(U)の分散性及び水性分散体の安定性の観点から、(U)を分散剤(h)の存在下で水に分散させることが好ましい。
【0063】
分散剤(h)としては、ノニオン性界面活性剤(h1)、アニオン性界面活性剤(h2)、カチオン性界面活性剤(h3)、両性界面活性剤(h4)及びその他の乳化分散剤(h5)が挙げられる。(h)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0064】
(h1)としては、例えばAO付加型ノニオン性界面活性剤及び多価アルコール型ノニオン性界面活性剤が挙げられる。AO付加型としては、炭素数10〜20の脂肪族アルコールのEO付加物、フェノールのEO付加物、ノニルフェノールのEO付加物、炭素数8〜22のアルキルアミンのEO付加物及びポリプロピレングリコールのEO付加物等が挙げられ、多価アルコール型としては、多価(3〜8価又はそれ以上)アルコール(炭素数2〜30)の脂肪酸(炭素数8〜24)エステル(例えばグリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート及びソルビタンモノオレエート等)及びアルキル(炭素数4〜24)ポリ(重合度1〜10)グリコシド等が挙げられる。
【0065】
(h2)としては、例えば炭素数8〜24の炭化水素基を有するエーテルカルボン酸又はその塩[ラウリルエーテル酢酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1〜100)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム等];炭素数8〜24の炭化水素基を有する硫酸エステル又はエーテル硫酸エステル及びそれらの塩[ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1〜100)ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1〜100)ラウリル硫酸トリエタノールアミン及び(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1〜100)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム等];炭素数8〜24の炭化水素基を有するスルホン酸塩[ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等];炭素数8〜24の炭化水素基を1個又は2個有するスルホコハク酸塩;炭素数8〜24の炭化水素基を有するリン酸エステル又はエーテルリン酸エステル及びそれらの塩[ラウリルリン酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1〜100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム等];炭素数8〜24の炭化水素基を有する脂肪酸塩[ラウリン酸ナトリウム及びラウリン酸トリエタノールアミン等];並びに炭素数8〜24の炭化水素基を有するアシル化アミノ酸塩[ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム及びラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム等]が挙げられる。
【0066】
(h3)としては、例えば第4級アンモニウム塩型[塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム及びエチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等]並びにアミン塩型[ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩及びオレイルアミン乳酸塩等]が挙げられる。
【0067】
(h4)としては、例えばベタイン型両性界面活性剤[ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン及びラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタインヒドロキシプロピルリン酸ナトリウム等]並びにアミノ酸型両性界面活性剤[β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等]が挙げられる。
【0068】
(h5)としては、例えばポリビニルアルコール、デンプン及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体並びにポリアクリル酸ソーダ等のカルボキシル基含有(共)重合体及び米国特許第5906704号明細書に記載のウレタン基又はエステル基を有する乳化分散剤[例えばポリカプロラクトンポリオールとポリエーテルジオールをポリイソシアネートで連結させたもの]等が挙げられる。
【0069】
分散剤(h)は、ウレタン樹脂(U)のウレタン化反応前、ウレタン化反応中、ウレタン化反応後、(U)の水分散工程前、水分散工程中又は水分散後のいずれの時期に添加しても良いが、(U)の分散性及び水性分散体の安定性の観点から、水分散工程前又は水分散工程中に添加することが好ましい。
【0070】
(h)を使用する場合、その含有量はポリウレタン樹脂(U)の重量に基づいて通常0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、更に好ましくは1〜5重量%である。
(U)は親水性基を有するポリウレタン樹脂である場合は、(U)の重量に基づく(d)の含有量と(h)の含有量の合計量は、通常0.3〜20重量%、好ましくは0.6〜10重量%、更に好ましくは1〜5重量%である。
【0071】
本発明においるポリウレタン樹脂(U)中のウレタン基含量は、(U)の重量に基づいて、0.5〜5.0mmol/gであり、得られる皮膜の機械的物性、耐久性、耐薬品性及び耐磨耗性等の観点から、好ましくは0.8〜4.2mmol/g、更に好ましくは1.1〜3.4mmol/gである。
【0072】
ポリオール(a)、ポリイソシアネート(b)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アリル基及び1−プロペニル基からなる群から選ばれる重合性不飽和基と2個以上の水酸基を有する化合物(c)並びに必要により使用する親水性基と活性水素原子を含有する化合物(d)、鎖伸長剤(e)及び反応停止剤(f)の量を適宜調整することにより、ポリウレタン樹脂(U)のウレタン基含量を所望の範囲とすることができる。
尚、本発明におけるウレタン基含量は実施例に記載の方法で測定される。
【0073】
一般にポリウレタン樹脂の分子末端は、原料の水酸基に由来する水酸基、又はイソシアネート基と水の反応若しくは原料のアミノ基に由来するアミノ基となる。また、ポリウレタン樹脂(U)を水中に分散する工程において、ウレタン基、ウレア基、アロハネート基又はビューレット基が加水分解することで、末端アミノ基が生成する。この末端アミノ基は末端水酸基と比較して耐水性が悪いため、末端アミノ基の含量が高いポリウレタン樹脂は耐水性が劣る傾向がある。
従って、本発明において、ポリウレタン樹脂(U)中の末端アミノ基含量は、(U)の重量に基づいて0.35mmol/g以下であり、耐水性の観点から、好ましくは0.2mmol/g以下、更に好ましくは0.15mmol/g以下、特に好ましくは0.1mmol/g以下である。
【0074】
ポリオール(a)、ポリイソシアネート(b)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アリル基及び1−プロペニル基からなる群から選ばれる重合性不飽和基と2個以上の水酸基を有する化合物(c)並びに必要により使用する親水性基と活性水素原子を含有する化合物(d)、鎖伸長剤(e)及び反応停止剤(f)の量を適宜調整することにより、ポリウレタン樹脂(U)の末端アミノ基含量を所望の範囲にすることができる。
尚、本発明における末端アミノ基含量は実施例に記載の方法で測定される。
【0075】
本発明においけるポリウレタン樹脂(U)中のウレア基含量は、造膜性及び得られる皮膜の耐水性の観点から、(U)の重量に基づいて2.0mmol/g以下であることが好ましく、更に好ましくは0.2mmol/g以下、特に好ましくは0.1mmol/g以下、とりわけ好ましくは0.05mmol/g以下、最も好ましくは0.02mmol/g以下である。
【0076】
ポリウレタン樹脂(U)中のウレア基含量を所望の範囲とするには、(U)の原料中のアミノ基含量、水分含量及びイソシアネート基含量を適宜調整すればよい。
尚、本発明におけるウレア基含量は実施例に記載の方法で測定される。
【0077】
本発明において、ポリウレタン樹脂(U)中のアロハネート基及びビューレット基の含有量の合計値は、造膜性及び得られる皮膜の耐水性の観点から、(U)の重量に基づいて0.1mmol/g以下であることが好ましく、更に好ましくは0.03mmol/g以下、特に好ましくは0.01mmol/g以下、とりわけ好ましくは0.003mmol/g以下、最も好ましくは0.001mmol/g以下である。
【0078】
ポリウレタン樹脂(U)のアロハネート基及びビューレット基の含有量の合計値を所望の範囲とするには、(U)の原料中のアミノ基含量、水酸基及びアミノ基の当量に対するイソシアネート基の当量の比、ウレタン化反応温度等を適宜調整すればよい。特に、反応温度については、120℃以下又は180℃以上とすることによりアロハネート基及びビューレット基の生成を抑えることができる。
尚、本発明におけるアロハネート基及びビューレット基の含有量は実施例に記載の方法で測定される。
【0079】
本発明において、ポリウレタン樹脂(U)の水への分散前の末端イソシアネート基含量は、(U)の重量に基づいて通常0.2mmol/g以下、好ましくは0.15mmol/g以下、更に好ましくは0.1mmol/g以下、特に好ましくは0.05mmol/g以下である。この範囲であれば、水への分散後の(U)のウレア基及び末端アミノ基含量を目標の範囲とすることができるため、本発明の効果を十分に発揮できる。
【0080】
水への分散前の(U)の末端イソシアネート基含量は、主に(U)の原料中のイソシアネート基の当量数と水酸基、アミノ基及び水の合計当量数の比並びにウレタン化反応の反応率によって制御することが可能である。
【0081】
本発明において、ポリウレタン樹脂(U)のMnは、1万〜100万であり、得られる皮膜の機械的物性、耐久性、耐薬品性及び耐磨耗性等の観点から、好ましくは1万〜50万、更に好ましくは1万〜20万、最も好ましくは1万〜10万である。
【0082】
ポリオール(a)、ポリイソシアネート(b)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アリル基及び1−プロペニル基からなる群から選ばれる重合性不飽和基と2個以上の水酸基を有する化合物(c)並びに必要により使用する親水性基と活性水素原子を含有する化合物(d)、鎖伸長剤(e)及び反応停止剤(f)の量を適宜調整することにより、ポリウレタン樹脂(U)のMnを所望の範囲にすることができる。
【0083】
本発明において、ポリウレタン樹脂(U)の重量平均分子量(以下、Mwと略記)とMnの比(Mw/Mn)は、1.5〜3.5であり、造膜性の観点から、好ましくは1.75〜3.25、更に好ましくは2.0〜3.0である。
【0084】
ポリウレタン樹脂(U)のMw/Mnは、(U)のウレタン化反応の均一性に関する条件(例えば撹拌・混合)等を適宜調整することにより、所定の範囲にすることができる。 尚、本発明における(U)のMw及びMnは実施例に記載の方法で測定される。
【0085】
本発明において、ポリウレタン樹脂(U)の溶融温度は、40〜280℃であり、得られる皮膜の耐熱性、機械的物性、耐久性、耐薬品性及び耐磨耗性等の観点から、好ましくは50〜200℃、更に好ましくは60〜150℃である。
【0086】
ポリオール(a)、ポリイソシアネート(b)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アリル基及び1−プロペニル基からなる群から選ばれる重合性不飽和基と2個以上の水酸基を有する化合物(c)並びに必要により使用する親水性基と活性水素原子を含有する化合物(d)、鎖伸長剤(e)及び反応停止剤(f)の種類と量を適宜調整することにより、ポリウレタン樹脂(U)の溶融温度を所望の範囲にすることができる。
尚、本発明における溶融温度は実施例に記載の方法で測定される。
【0087】
本発明において、ポリウレタン樹脂(U)の体積平均粒子径(Dv)は、0.01〜1μmであり、ポリウレタン樹脂水性分散体の分散安定性の観点から、好ましくは0.02〜0.7μm、更に好ましくは0.03〜0.4μmである。
【0088】
(U)の体積平均粒子径(Dv)は、(U)中の親水性基、分散剤量及び分散工程で使用する分散機の種類及び運転条件によってきまる。従って、(U)の体積平均粒子径(Dv)を所望の範囲とするためには、分散工程において、後述の回転式分散機、超音波式分散機及び混練機から選択される装置を用いると共に、(U)中の親水性基の含有量と分散剤(h)の含有量を適宜調整すればよい。
尚、本発明における体積平均粒子径(Dv)は実施例に記載の方法で測定される。
【0089】
本発明におけるポリウレタン樹脂水性分散体は、有機溶剤[ケトン系溶剤(例えばアセトン及びメチルエチルケトン)、エステル系溶剤(例えば酢酸エチル)、エーテル系溶剤(例えばテトラヒドロフラン)、アミド系溶剤(例えばN,N−ジメチルホルムアミド及びN−メチルピロリドン)、アルコール系溶剤(例えばイソプロピルアルコール)及び芳香族炭化水素系溶剤(例えばトルエン)等]を含有してもよいが、臭気、経時安定性、環境負荷、安全性及び生産コスト等の観点からは、有機溶剤の含有量は水性分散体の重量に基づいて、1000ppm以下であることが好ましく、更に好ましくは500ppm以下、特に好ましくは100ppm以下であり、有機溶剤を実質的に含まないことが最も好ましい。
【0090】
本発明におけるポリウレタン樹脂水性分散体が有機溶剤を実質的に含まないためには、(U)の原料及び使用する各種添加剤として有機溶剤を実質的に含有しないものを使用し、(U)の製造工程及び(U)の分散工程において有機溶剤を使用しないことが好ましい。
【0091】
本発明において、ポリウレタン樹脂(U)は、ポリオール(a)、ポリイソシアネート(b)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アリル基及び1−プロペニル基からなる群から選ばれる重合性不飽和基と2個以上の水酸基を有する化合物(c)並びに必要により使用する親水性基と活性水素原子を含有する化合物(d)、鎖伸長剤(e)及び反応停止剤(f)を、加熱可能な設備で加熱して反応することで得られる。例えば、容器中に(U)の原料を仕込んで均一撹拌後、加熱乾燥機や加熱炉で無撹拌下に加熱する方法や、簡易加圧反応装置(オートクレーブ)、コルベン、一軸若しくは二軸の混練機、プラストミル又は万能混練機等で、攪拌又は混練しながら加熱して反応する方法等が挙げられる。なかでも、攪拌又は混練しながら加熱して反応する方法は、得られるウレタン樹脂(U)の均質性が高くなり、得られる皮膜の機械的物性、耐久性、耐薬品性及び耐磨耗性等がより優れる傾向があるため好ましい。攪拌又は混練しながら加熱して反応する方法の中でも、攪拌強度及び加熱能力に優れている一軸又は二軸の混練機が好ましい。一軸又は二軸の混練機としては、コンティニアスニーダー[株栗本鐵工(株)製]、一軸混練機及び二軸押出機等が例示される。
【0092】
ポリウレタン樹脂(U)を製造する際の反応温度は、100〜250℃が好ましく、更に好ましくは100〜120℃又は180〜240℃、最も好ましくは190〜230℃である。また、(U)を製造する際の時間は、使用する設備により適宜選択することができるが、一般的に1分〜100時間が好ましく、更に好ましくは3分〜30時間であり、特に好ましくは5分〜10時間である。この範囲であれば、本発明の効果を十分に発揮できる(U)が得られる。
【0093】
ウレタン化反応速度をコントロールするために、公知の反応触媒(オクチル酸錫及びビスマスオクチル酸塩等)及び反応遅延剤(リン酸等)等を使用することができる。これらの触媒又は反応遅延剤の添加量は、(U)の重量に基づき、好ましくは0.001〜3重量%、更に好ましくは0.005〜2重量%、特に好ましくは0.01〜1重量%である。
【0094】
ウレタン化反応時の不飽和基の重合を防止する目的で重合禁止剤を添加することもできる。重合禁止剤としては、フェノール系重合禁止剤(ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、クレゾール、ジ−t−ブチルクレゾール、ジ−t−ブチルフェノール、トリ−t−ブチルフェノール等)、及びアミン系重合禁止剤(フェノチアジン、ジフェニルアミン、アルキル化ジフェニルアミン等)等が挙げられる。これらの内好ましいものはフェノール系重合禁止剤である。重合禁止剤を使用する場合、その添加量は、(U)の重量に基づき、通常0.001〜2%、好ましくは0.01〜1%、更に好ましくは0.01〜0.5%、特に好ましくは0.01〜0.2%である。
【0095】
ポリウレタン樹脂(U)を水中へ分散する工程における取扱い易さの観点から、分散前の(U)の形状を0.2〜500mmの粒状又はブロック状にすることが好ましく、その大きさは、更に好ましくは0.5〜100mm、特に好ましくは0.7〜30mm、最も好ましくは1〜10mmである。
【0096】
形状を粒状又はブロック状に調整する手段としては、例えば裁断、ペレット化、粒子化、或いは粉砕する等の手段を用いることができる。この粒状又はブロック状への調整は、水中或いは、水の非存在下において実施することができる。
例えば、シート状に圧延したポリウレタン樹脂(U)を角型ペレタイザーで粒状にする方法、鋏や超音波カッター等で裁断してブロック状にする方法、ストランド状に取り出したポリウレタン樹脂(U)をペレタイザーでカットしてペレット状にするという方法等が例示される。
【0097】
ポリウレタン樹脂(U)を水中に分散する装置としては、分散能力のある装置(A)であれば使用可能であるが、温度調整、粒状又はブロック状樹脂の供給及び分散能力等の観点から、回転式分散混合装置(A1)、超音波式分散機(A2)又は混練機(A3)を用いることが好ましく、なかでも分散能力が特に優れる(A1)が更に好ましい。
【0098】
回転式分散混合装置(A1)の主たる分散原理は、駆動部の回転等によって処理物に外部から剪断力を与えて微粒子化し、分散させるというものである。また、(A1)は、常圧、減圧又は加圧下で稼働させることができる。
【0099】
回転式分散混合装置(A1)としては、例えばTKホモミキサー[プライミクス(株)製]、クレアミックス[エムテクニック(株)製]、フィルミックス[プライミクス(株)製]、ウルトラターラックス[IKA(株)製]、エバラマイルダー[荏原製作所(株)製]、キャビトロン(ユーロテック社製)及びバイオミキサー[日本精機(株)製]等が例示される。
【0100】
回転式分散混合装置(A1)を用いてポリウレタン樹脂(U)を分散処理する際の回転数は、分散能力の観点から、通常100〜30000rpm、好ましくは500〜20000rpm、更に好ましくは1000〜10000rpmである。
【0101】
超音波式分散装置(A2)の主たる分散原理は、駆動部の振動によって処理物に外部からエネルギーを与えて微粒子化し、分散させるというものである。また、(A2)は、常圧、減圧又は加圧下で稼働させることができる。
【0102】
超音波式分散装置(A2)としては、池本理化工業(株)、コスモ・バイオ(株)及び(株)ギンセン等から市販されている超音波式分散装置等を使用できる。
【0103】
超音波式分散装置(A2)を用いてポリウレタン樹脂(U)を分散処理する際の振動数は、分散能力の観点から、通常1〜100kHz、好ましくは3〜60kHz、特に好ましくは10〜30kHzである。
【0104】
混練機(A3)の主たる分散原理は、(A3)の回転部で処理物を練ることでエネルギーを与えて微粒子化し、分散させるというものである。また(A3)は、常圧、減圧又は加圧下で稼働させることができる。
【0105】
混練機(A3)としては、二軸押出機[池貝(株)製PCM−30等]、ニーダー[(株)栗本鐵工所製KRCニーダー等]、万能混合機[プライミクス(株)製ハイビスミックス等]及びプラストミル[(株)東洋精機製作所製ラボプラストミル等]等が例示される。
【0106】
混練機(A3)を用いてポリウレタン樹脂(U)を分散処理する際の回転数は、分散能力の観点から、通常1〜1000rpm、好ましくは3〜500rpm、特に好ましくは10〜200rpmである。
【0107】
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体は、ポリウレタン樹脂(U)を分散装置(A)を用いて、水中に分散させる過程において(U)を加熱下で軟化させて目的とする微粒子まで分散させて製造される。従って、分散工程においてポリウレタン樹脂(U)の上記各物性値が加水分解等の劣化により変動しないようにすることが好ましい。
劣化を抑制するためには、(U)をその溶融温度未満で水に分散させることが好ましい。(U)を水に分散させる際の温度は、更に好ましくは25〜180℃の間でかつ(U)の溶融温度よりも5〜100℃以上低い温度、特に好ましくは90〜150℃の間でかつ(U)の溶融温度よりも10〜120℃低い温度である。
【0108】
(U)の分散を(U)の溶融温度未満で実施するには、分散処理時に(U)が水により膨潤することが好ましい。前記(d)及び/又は(h)の含有量を適宜調整することにより(U)の膨潤程度を調整することができる。
【0109】
分散装置(A)に供給される(U)と水の重量比は、目的とする水性分散体の樹脂成分含有量によって適宜選択されるが、通常は、(U)/水=10/2〜10/100であり、好ましくは10/5〜10/50である。
【0110】
また、(U)と水を分散装置(A)で処理する時間は、(A)の種類により適宜選択することができるが、分散体である(U)の分解や劣化等を防ぐ観点から、通常10秒〜10時間、更に好ましくは1分〜3時間、最も好ましくは10〜60分である。
【0111】
分散装置(A)にて分散を行う際は、必要に応じて、pH調整剤、消泡剤、抑泡剤、酸化防止剤、着色防止剤、可塑剤及び離型剤等から選ばれる添加剤を1種以上を添加することができる。また、必要に応じて、分散後に脱溶剤、濃縮、希釈等を行ってもよい。
【0112】
本発明の製造方法で得られるポリウレタン樹脂水性分散体の固形分濃度(揮発性成分以外の成分の含有量)は、水性分散体の取り扱い易さの観点から、好ましくは20〜65重量%、更に好ましくは25〜55重量%である。固形分濃度は、水性分散体約1gをペトリ皿上にうすく伸ばし、精秤した後、循環式定温乾燥機を用いて130℃で、45分間加熱した後の重量を精秤し、加熱前の重量に対する加熱後の残存重量の割合(百分率)を計算することにより得ることができる。
【0113】
本発明の製造方法で得られるポリウレタン樹脂水性分散体の粘度は、好ましくは10〜100,000mPa・s、更に好ましくは10〜5,000mPa・sである。粘度はBL型粘度計を用いて、25℃の定温下で測定することができる。
本発明の製造方法で得られるポリウレタン樹脂水性分散体のpHは、好ましくは2〜12、更に好ましくは4〜10である。pHは、pH Meter M−12[堀場製作所(株)製]で25℃で測定することができる。
【0114】
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体は、水性塗料組成物(自動車用塗料、建材用塗料、プレコートメタル用塗料等)、水性コーティング組成物(金属類の防錆コーティング、防水コーティング、撥水コーティング及び防汚コーティング等)、水性接着剤組成物、水性繊維加工処理剤組成物(顔料捺染用バインダー組成物、不織布用バインダー組成物、補強繊維用集束剤組成物、抗菌剤用バインダー組成物及び人工皮革・合成皮革用原料組成物等)、水性紙処理剤組成物や水性インキ組成物等に使用することができるが、その優れた造膜性及び耐水性から、特に水性塗料組成物、水性コーティング組成物、水性接着剤組成物として好適に使用することができる。
【0115】
これらの用途に用いる場合には、必要によりその他の添加剤、例えば塗膜形成補助樹脂、架橋剤、触媒、顔料、顔料分散剤、粘度調整剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、劣化防止剤、安定化剤及び凍結防止剤等を1種又は2種以上添加することができる。
【0116】
以下において本発明のポリウレタン樹脂水性分散体を用いた、水性塗料の調製について説明する。
水性塗料には、塗膜形成補助やバインダー機能の向上等を目的として、必要により本発明のポリウレタン樹脂水性分散体におけるウレタン樹脂(U)以外に、他の水分散性樹脂又は水溶性樹脂を併用していてもよい。
【0117】
水性塗料に併用される他の水分散性樹脂又は水溶性樹脂としては、例えば本発明におけるポリウレタン樹脂以外の水分散性又は水溶性のポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂及びポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの他の樹脂は、水性塗料の用途毎に、各用途で常用されるもの等から適宜選択することができる。
【0118】
水性塗料における本発明のポリウレタン樹脂水性分散体の固形分の含有量は、水性塗料の重量に基づいて通常0.1〜60重量%、好ましくは1〜50重量%である。
また、水性塗料における他の樹脂の含有量は、水性塗料の重量に基づいて通常60重量%以下、好ましくは50重量%以下である。
【0119】
水性塗料は、更に架橋剤、顔料、顔料分散剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、劣化防止剤、安定化剤、凍結防止剤及び水等を1種又は2種以上含有することができる。
【0120】
架橋剤としては水溶性又は水分散性のアミノ樹脂、水溶性又は水分散性のポリエポキシド、水溶性又は水分散性のブロックドポリイソシアネート化合物及びポリエチレン尿素等が挙げられる。
架橋剤の添加量はポリウレタン樹脂水性分散体の固形分重量を基準として、通常30重量%以下、好ましくは0.1〜20重量%である。
【0121】
顔料としては、水への溶解度が1以下の無機顔料(例えば白色顔料、黒色顔料、灰色顔料、赤色顔料、茶色顔料、黄色顔料、緑色顔料、青色顔料、紫色顔料及びメタリック顔料)並びに有機顔料(例えば天然有機顔料合成系有機顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、顔料色素型アゾ顔料、水溶性染料からつくるアゾレーキ、難溶性染料からつくるアゾレーキ、塩基性染料からつくるレーキ、酸性染料からつくるレーキ、キサンタンレーキ、アントラキノンレーキ、バット染料からの顔料及びフタロシアニン顔料)等が挙げられる。顔料の含有量は、水性塗料の重量に基づいて通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。
【0122】
顔料分散剤としては、上述の分散剤(h)が挙げられ、顔料分散剤の含有量は、顔料の重量に基づいて通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下である。
【0123】
粘度調整剤としては増粘剤、例えば無機系粘度調整剤(ケイ酸ソーダやベントナイト等)、セルロース系粘度調整剤(Mnが20,000以上のメチルセルロール、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシメチルセルロース等)、タンパク質系粘度調整剤(カゼイン、カゼインソーダ及びカゼインアンモニウム等)、アクリル系(Mnが20,000以上のポリアクリル酸ナトリウム及びポリアクリル酸アンモニウム等)及びビニル系粘度調整剤(Mnが20,000以上のポリビニルアルコール等)が挙げられる。
消泡剤としては、長鎖アルコール(オクチルアルコール等)、ソルビタン誘導体(ソルビタンモノオレート等)、シリコーンオイル(ポリメチルシロキサン及びポリエーテル変性シリコーン等)等が挙げられる。
【0124】
防腐剤としては、有機窒素硫黄化合物系防腐剤及び有機硫黄ハロゲン化物系防腐剤等が挙げられる。
劣化防止剤及び安定化剤(紫外線吸収剤及び酸化防止剤等)としてはヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系、リン系、ベンゾフェノン系及びベンゾトリアゾール系劣化防止剤及び安定化剤等が挙げられる。
凍結防止剤としては、エチレングリコール及びプロピレングリコール等が挙げられる。
粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、劣化防止剤、安定化剤及び凍結防止剤の含有量は、水性塗料の重量に基づいてそれぞれ通常5重量%以下、好ましくは3重量%以下である。
【0125】
水性塗料には、乾燥後の塗膜外観を向上させる目的で更に溶剤を添加してもよい。添加する溶剤としては例えば炭素数1〜20の1価アルコール(メタノール、エタノール及びプロパノール等)、炭素数1〜20のグリコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール及びジエチレングリコール等)、炭素数1〜20の3価以上のアルコール(グリセリン等)及び炭素数1〜20のセロソルブ類(メチル及びエチルセロソルブ等)等が使用できる。添加する溶剤の含有量は、水性塗料の重量基づいて、好ましくは20重量%以下、更に好ましくは15重量%以下である。
【0126】
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体を用いた水性塗料は、本発明のポリウレタン樹脂水性分散体と上記記載の各成分を混合、撹拌することで製造される。混合の際は全ての成分を同時に混合しても、各成分を段階的に投入して混合してもよい。
水性塗料の固形分濃度は、好ましくは10〜70重量%、更に好ましくは15〜60重量%である。
【0127】
以下において本発明のポリウレタン樹脂水性分散体を用いた水性接着剤について説明する。
水性接着剤に使用する樹脂として、本発明のポリウレタン樹脂水性分散体におけるウレタン樹脂(U)を単独で用いても構わないが、SBRラテックス樹脂やアクリル樹脂に代表されるウレタン樹脂以外の水分散性又は水溶性樹脂を併用することができる。併用する場合、樹脂全重量におけるポリウレタン樹脂(U)の割合は、好ましくは1重量%以上、更に好ましくは10重量%以上である。
【0128】
更に、本発明のポリウレタン樹脂水性分散体を含有する接着剤の凝集性を阻害しない範囲で通常の接着剤に使用される副資材及び添加剤、例えば、架橋剤、可塑剤、粘着付与剤、充填剤、顔料、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤及び難燃剤等を使用することも可能である。
【実施例】
【0129】
以下、実施例を以て本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。以下、部は重量部を意味する。
【0130】
<実施例1>
表1に記載の各原料を混合後に、窒素雰囲気下で二軸混練機であるKRCニーダー[栗本鐵工(株)製]に仕込み210℃で10分間混練してウレタン化反応を行った。反応物を取り出し、180℃に加熱した加圧プレス機で圧延後、角形ペレタイザー[(株)ホーライ製]にて裁断してポリウレタン樹脂(U1−1)を得た。続いて、温度制御可能な耐圧容器に表2に記載の各原料を仕込み、クレアミックス[エムテクニック(株)製]を用いて150℃3分間で分散処理することでポリウレタン樹脂水性分散体(Q−1)を得た。
【0131】
<実施例2〜6>
原料とその仕込量を表1と表2に記載のものに変更する以外は実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂(U1−2)〜(U1−6)及びポリウレタン樹脂水性分散体(Q−2)〜(Q−6)を得た。
【0132】
<比較例1>
原料とその仕込量を表1と表2に記載のものに変更する以外は実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂(U1−7)及びポリウレタン樹脂水性分散体(Q−7)を得た。
【0133】
<比較例2>
原料とその仕込量を表1と表2に記載のものに変更する以外は実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂(U1−8)及びポリウレタン樹脂水性分散体を得、その後、アクリル系耐候性付与剤としてジペンタエリスリトールペンタアクリレート[「ネオマーDA−600」、三洋化成工業(株)製]をクレアミックスを使用して室温で攪拌しながら滴下投入し、10分間攪拌混合してポリウレタン樹脂水性分散体(Q−8)を得た。
【0134】
<比較例3>
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置に表1に記載の各原料を仕込んで85℃で10時間攪拌してウレタン化反応を行い、ウレタンプレポリマーのアセトン溶液を製造した。ウレタンプレポリマーのアセトン溶液の固形分あたりのイソシアネート含量は0.42mmol/gであった。得られたウレタンプレポリマーのアセトン溶液397.56部を簡易加圧反応装置に仕込み、40℃で撹拌しながらトリエチルアミン(中和剤)12.85部及び水589.59部を加えた。60rpmで3分間攪拌後、鎖伸長剤であるエチレンジアミン2.50部を加え、減圧下に65℃で8時間かけてアセトンを留去し、ポリウレタン樹脂水性分散体(Q−9)を得た。
【0135】
実施例1〜6及び比較例1〜3で得られたポリウレタン樹脂水性分散体(Q−1)〜(Q−9)の各種物性値及び評価結果を表3に示す。尚、本発明における各種物性値の測定方法及び評価方法は以下の通りである。
<ウレタン基含量及びウレア基含量>
ポリウレタン樹脂のウレタン基含量及びウレア基含量は、窒素分析計[ANTEK7000(アンテック社製)]によって定量されるN原子含量と1H−NMRによって定量されるウレタン基とウレア基の比率及び後述のアロハネート基及びビューレット基含量から算出する。1H−NMR測定については、「NMRによるポリウレタン樹脂の構造研究:武田研究所報34(2)、224−323(1975)」に記載の方法で行う。すなわち1H−NMRを測定して、脂肪族を使用した場合、化学シフト6ppm付近のウレア基由来の水素の積分量と化学シフト7ppm付近のウレタン基由来の水素の積分量の比率からウレア基とウレタン基の重量比を測定し、該重量比と上記のN原子含量及びアロハネート基及びビューレット基含量からウレタン基及びウレア基含量を算出する。芳香族イソシアネートを使用した場合、化学シフト8ppm付近のウレア基由来の水素の積分量と化学シフト9ppm付近のウレタン基由来の水素の積分量の比率からウレア基とウレタン基の重量比を算出し、該重量比と上記のN原子含量からウレア基含量を算出する。
【0136】
<末端イソシアネート基含量>
0.5mol/lジ−n−ブチルアミンのトルエン溶液30mlにポリウレタン樹脂を溶解後、イソプロピルアルコール100mlを加え、0.5mol/l塩酸滴定用溶液を用いて自動電位差滴定装置で自動滴定を行い、滴定ml数を読み取り、次式により末端イソシアネート基含量(mmol/g)を算出する。
末端イソシアネート基含量(mmol/g)=[0.5×( B−A)×f×100]/S
A:本試験に要した0.5mol/l塩酸滴定用溶液のml数。
B:空試験に要した0.5mol/l塩酸滴定用溶液のml数。
f:0.5mol/l塩酸滴定用溶液の力価。
S:ポリウレタン樹脂採取量(g)
【0137】
<末端アミノ基含量>
以下の方法でポリウレタン樹脂の全アミン価及び3級アミン価を求めて、次式により末端アミノ基含量(mmol/g)を算出する。
末端アミノ基含量(mmol/g)=(全アミン価−3級アミン価)/56.1
(1)全アミン価
100mlのフラスコ中でトルエン50mlにポリウレタン樹脂を溶解後、無水酢酸20mlを加えて、キシレンシアノールFF・メチルオレンジ混合指示薬を用いて、0.5mol/l塩酸・メチルアルコール滴定用溶液で滴定を行い(終点は、指示薬の色が緑色から赤褐色になった点)滴定ml数を読み取り、次式により全アミン価を算出する。
全アミン価=a ×f/ (S×28.05)
a:0.5mol/l塩酸・メチルアルコール滴定用溶液の滴定ml数。
f:0.5mol/l塩酸・メチルアルコール滴定用溶液の力価。
S:ポリウレタン樹脂採取量(g)
(2)3級アミン価
100mlのフラスコ中でトルエン50mlにポリウレタン樹脂を溶解後、無水酢酸20mlを加えてよく振とうし、30分間室温にて放置。キシレンシアノールFF・メチルオレンジ混合指示薬を用いて、0.5mol/l塩酸・メチルアルコール滴定用溶液で滴定を行い(終点は、指示薬の色が緑色から赤褐色になった点)滴定ml数を読み取り、次式により3級アミン価を算出する。
3級アミン価=a ×f/ (S×28.05)
a:0.5mol/l塩酸・メチルアルコール滴定用溶液の滴定ml数
f:0.5mol/l塩酸・メチルアルコール滴定用溶液の力価
S:ポリウレタン樹脂採取量(g)
【0138】
<アロハネート基及びビューレット基の含量>
ポリウレタン樹脂のアロハネート基及びビューレット基の含量の合計は、ガスクロマトグラフ[Shimadzu GC−9A{島津製作所(株)製}]によって算出する。0.01重量%のジ−n−ブチルアミンと0.01重量%のナフタレン(内部標準)とを含む50gのDMF溶液を調整する。サンプルを共栓付き試験管に測り取り、上記のDMF溶液を2g加え、試験管を90℃の恒温水槽で2時間加熱する。常温に冷却後、10μlの無水酢酸を加え10分間振とう攪拌する。更に50μlのジ−n−プロピルアミンを添加し、10分間振とう後、ガスクロマトグラフ測定を行う。並行してブランク測定を行い、試験値との差よりアミンの消費量を求め、アロハネート基及びビューレット基の含量の合計を測定した。
(ガスクロマトグラフ条件)
装置 :Shimadzu GC−9A
カラム:10%PEG−20M on Chromosorb WAW DMLS 60/80meshガラスカラム 3mmφ×2m
カラム温度:160℃、試料導入部温度:200℃、キャリアガス:窒素 40ml/分
検出器:FID、試料注入量:2μl
(アロハネート基及びビューレット基の含量の合計の算出式)
アロハネート基及びビューレット基の含量の合計={(B−A)/B}×0.00155/S
A:試料の(ジ−n−ブチルアセトアミドのピーク面積/ナフタレンのピーク面積)
B:ブランクの(ジ−n−ブチルアセトアミドのピーク面積/ナフタレンのピーク面積)
S:ポリウレタン樹脂採取量(g)
【0139】
<Mw及びMn>
ポリウレタン樹脂又はポリウレタン水性分散体を、DMF中にポリウレタン樹脂固形分が0.0125重量%となるように加えて、常温で1時間撹拌溶解後、0.3μmの孔径のフィルターでろ過して、得られたろ液に含まれているウレタン樹脂のMwとMnを、DMFを溶媒として、また、ポリスチレンを分子量標準として用いて、GPCにより測定した。
【0140】
<溶融温度>
本発明におけるポリウレタン樹脂の溶融温度は、JIS K7210(プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイトの試験方法)において、メルトマスフローレイト測定装置として「メルトインデクサーI型」(テスター産業(株)製)を用いて、荷重2.16kgにてメルトマスフローが10g/10minとなる温度である。
【0141】
<体積平均粒子径(Dv)>
ポリウレタン樹脂水性分散体を、イオン交換水でポリウレタン樹脂の固形分が0.01重量%となるよう希釈した後、光散乱粒度分布測定装置[ELS−8000{大塚電子(株)製}]を用いて測定した。
【0142】
<ポリウレタン樹脂水性分散体の分散安定性>
25℃に温調したポリウレタン樹脂水性分散体を12時間静置しておき、沈降物の発生を目視にて評価した。沈降物が発生しない場合を○、沈降物が発生した場合を×とした。
【0143】
<乾燥皮膜の耐水性>
ポリウレタン樹脂水性分散体10部を、縦10cm×横20cm×深さ1cmのポリプロピレン製モールドに、乾燥後のフィルム膜厚が200μmになる量を流し込み、室温で12時間乾燥後、循風乾燥機で105℃で3時間加熱乾燥することによって得られるフィルムを、60℃のイオン交換水に14日間浸漬した後、目視にて皮膜の表面状態を観察した。変化が無い場合を○、白化した場合を×とした。また、取り出したフィルムを乾燥して、乾燥皮膜の物性測定を行った。浸漬前に対する浸漬後の破断伸びの変化率が0.95倍以上の場合は◎、0.9倍以上0.95倍未満の場合は○、0.8倍以上0.9倍未満の場合は△、0.8倍未満の場合は×とした。尚、破断伸びの測定は、JIS K7311に記載の5.引張試験に基づいて行った。
【0144】
<ポリウレタン樹脂水性分散体の造膜性>
ポリウレタン樹脂水性分散体10部を、縦10cm×横20cm×深さ1cmのポリプロピレン製モールドに、水分乾燥後のフィルム膜厚が200μmになる量を流し込み、25℃で48時間乾燥後に造膜しているかどうかを判定した。造膜している場合は○、造膜していない場合は×とした。
【0145】
<乾燥皮膜の耐熱性>
ポリウレタン樹脂水性分散体10部を、縦10cm×横20cm×深さ1cmのポリプロピレン製モールドに、乾燥後のフィルム膜厚が200μmになる量を流し込み、室温で12時間乾燥後、循風乾燥機で105℃で3時間加熱乾燥することによってフィルムを得た。このフィルム10mgを採って、昇温速度、10℃/min、窒素雰囲気下で熱重量分析を行い、試料重量が5%減量した温度を熱分解開始温度(℃)とした。熱重量分析装置は、TGA−50(島津製作所株式会社製)を用いた。
【0146】
【表1】

【0147】
【表2】

【0148】
【表3】

【0149】
評価例1〜6(水性塗料としての評価)
イオン交換水90部、増粘剤[「ビスライザーAP−2」、三洋化成工業(株)製]70部、顔料分散剤[「キャリボンL−400」、三洋化成工業(株)製]10部、酸化チタン[「CR−93」、石原産業(株)製]140部、カーボンブラック[「FW200P」、デグサ(株)製]及び炭酸カルシウム160部をペイントコンディショナーにより30分間混合分散した。ここに1−ノナノール20部、アクリル水性分散体[「ポリトロンZ330」、旭化成(株)製]200部及び実施例1で得たポリウレタン樹脂水性分散体(Q−1)200部を仕込み、10分間混合分散した。更にイオン交換水を用いて25℃での粘度が150mPa・sとなるよう調整し、水性塗料(W−1)を得た。尚、粘度はTOKIMEC(株)製回転式粘度計を用いて、回転数60rpmで測定した。ポリウレタン樹脂水性分散体(Q−1)を、ポリウレタン樹脂水性分散体(Q−2)〜(Q−6)に代える以外は同様にして水性塗料(W−2)〜(W−6)を得た。
水性塗料(W−1)〜(W−6)について、下記試験方法に基づいて塗膜の耐水性、造膜性及び耐候性を評価した結果を表4に示す。
【0150】
比較評価例1
ポリウレタン樹脂水性分散体(Q−1)をポリウレタン樹脂水性分散体(Q−7)〜(Q−9)に代える以外は、評価例1と同様にして比較用の水性塗料(W−7)〜(W−9)を得た。
水性塗料(W−7)〜(W−9)について、下記試験方法に基づいて塗膜の耐水性及び塗料の造膜性を評価した結果を表4に示す。
【0151】
<塗膜の耐水性評価方法>
得られた水性塗料を10cm×20cmの鋼板にスプレー塗布し、120℃で10分加熱して厚さ20μmの塗膜を作製した。この塗装した鋼板を80℃のイオン交換水中に14日間浸漬した後、取り出して表面を軽く拭き、塗膜表面を目視により以下の評価基準で評価した。
○:浸漬前後で塗膜表面の変化がない。
×:浸漬後、塗料が一部剥げ落ちている。
【0152】
<塗料の造膜性評価方法>
得られた水性塗料を10cm×20cmの鋼板にスプレー塗布し、80℃で3分加熱して厚さ20μmの塗膜を作製した。この塗装した鋼板を25℃のイオン交換水中に10分間浸漬した後、取り出して布で表面を軽く拭き、目視により以下の評価基準で評価した。
○:布に色移りしない。
×:布に色移りがみられる。
【0153】
<塗料の耐候性評価方法>
得られた水性塗料を10cm×20cmの鋼板にスプレー塗布し、80℃で3分加熱して厚さ20μmの塗膜を作製した。この塗装した鋼板を耐候性試験機(キセノンウェザーメーター)中にて200時間照射する前後の光沢を測定し、光沢の保持率で評価した。
○:光沢保持率70%以上
×:光沢保持率70%未満
【0154】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体は、水性塗料組成物(自動車用塗料、建材用塗料、プレコートメタル用塗料等)、水性コーティング組成物(金属類の防錆コーティング、防水コーティング、撥水コーティング及び防汚コーティング等)、水性接着剤組成物、接着剤組成物等に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリロイル基、(メタ)アリル基及び1−プロペニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和基を分子側鎖に1個以上有するポリウレタン樹脂(U)と水を含有し、以下の(1)〜(6)の全てを満たすポリウレタン樹脂水性分散体;
(1)(U)中のウレタン基含量が(U)の重量に基づいて0.5〜5.0mmol/gである;
(2)(U)中の末端アミノ基含量が(U)の重量に基づいて0.35mmol/g以下である;
(3)(U)の数平均分子量(Mn)が1万〜100万である;
(4)(U)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.5〜3.5である;
(5)(U)の溶融温度が40〜280℃である;
(6)(U)の体積平均粒子径(Dv)が0.01〜1μmである。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂(U)が、有機ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)、並びに(メタ)アクリロイル基、(メタ)アリル基及び1−プロペニル基からなる群から選ばれる重合性不飽和基と2個以上の水酸基を有する化合物(c)を必須構成成分として反応させて得られるポリウレタン樹脂である請求項1記載の水性分散体。
【請求項3】
前記ポリウレタン樹脂(U)中のウレア基含量が、(U)の重量に基づいて2.0mmol/g以下である請求項1又は2記載のポリウレタン樹脂水性分散体。
【請求項4】
前記ポリウレタン樹脂(U)中のアロハネート基及びビューレット基の含有量の合計値が、(U)の重量に基づいて0.1mmol/g以下である請求項1〜3のいずれか記載のポリウレタン樹脂水性分散体。
【請求項5】
前記ポリウレタン樹脂(U)が、その構成成分として更に親水性基と活性水素原子を含有する化合物(d)を含有する請求項1〜4のいずれか記載のポリウレタン樹脂水性分散体。
【請求項6】
有機溶剤の含有量が、1000ppm以下である請求項1〜5のいずれか記載のポリウレタン樹脂水性分散体。

【公開番号】特開2011−178963(P2011−178963A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47116(P2010−47116)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】