説明

ポリウレタン樹脂組成物およびそれを用いてなる中空糸膜モジュール

【課題】中空糸膜の結束材として用いた場合に、中空糸膜の種類にかかわらず、その閉塞を抑制できるポリウレタン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)を含有する主剤(I)と水酸基末端ウレタンプレポリマー(B)を含有する硬化剤(II)とを含み、水酸基末端ウレタンプレポリマー(B)が、ひまし油系ポリオール(a1)を含有するポリオール成分(a)とポリイソシアネート(b)との反応物であるポリウレタン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂組成物に関し、より詳しくは中空糸膜の結束材に用いられるポリウレタン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
中空糸膜の結束材として、ポリウレタン樹脂が用いられている。例えば、特許文献1には、ひまし油またはひまし油脂肪酸をトリメチロールアルカンで変性したポリオールを含むポリオール成分と、イソシアネート成分とを用いる中空糸膜の結束材用ポリウレタン樹脂組成物が提案されている。しかし、中空糸膜は、使用目的に応じて孔径の異なるものが多種存在し、上記従来の樹脂組成物では、中空糸膜の種類によっては中空糸膜が閉塞する場合があるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−89491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされた発明であり、中空糸膜の結束材として用いた場合に、中空糸膜の種類にかかわらず、その閉塞を抑制できるポリウレタン樹脂組成物、およびそれを用いてなる中空糸膜モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)を含有する主剤(I)と水酸基末端ウレタンプレポリマー(B)を含有する硬化剤(II)とを含み、水酸基末端ウレタンプレポリマー(B)が、ひまし油系ポリオール(a1)を含有するポリオール成分(a)とポリイソシアネート(b)との反応物であるポリウレタン樹脂組成物に関する。
【0006】
また、ポリオール成分(a)が、さらに水酸基数4〜8のポリエーテルポリオール(a2)を含有することが好ましい。
【0007】
また、前記ポリウレタン樹脂組成物が、中空糸の結束用の組成物であることが好ましい。
【0008】
本発明は、上記ポリウレタン樹脂組成物を用いてなる中空糸膜モジュールに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、中空糸膜の結束材として用いた場合に、中空糸膜の種類にかかわらず、中空糸膜の閉塞を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)を含有する主剤(I)と、水酸基末端ウレタンプレポリマー(B)を含有する硬化剤(II)とを含む。
【0011】
主剤(I)はイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)を含有し、このイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)は、ポリイソシアネートとポリオール成分との反応物である。
【0012】
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)に用いられるポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、キシリレンジイソシアネートおよびα,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートおよび2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネートおよび4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート、ならびに、これらの一部をカルボジイミド変性、ビウレット変性、アロファネート変性、イソシアヌレート変性したものなどが挙げられ、これらは単独でまたは組み合わせて使用することができる。これらのうち、水酸基との高い反応性を有することから、芳香族ポリイソシアネートおよびこれらの一部をカルボジイミド変性、ビウレット変性、アロファネート変性、イソシアヌレート変性したものの1種または2種以上が好ましい。なかでも、結晶性が低く、主剤(I)の貯蔵安定性が良好であることから、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、一部をカルボジイミド変性したジフェニルメタンジイソシアネート、またはこれらの混合物がより好ましい。
【0013】
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)に用いられるポリオール成分としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ひまし油系ポリオール、アルキレンジオールなどが挙げられ、これら公知のものを単独でまたは組み合わせて使用することができる。これらのうち、有機物の水中への溶出量を減少できるという点で、ひまし油系ポリオールが好ましく、なかでも、ひまし油がより好ましい。
【0014】
ひまし油は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの製造に使用される通常のグレードのものが使用でき、例えば平均水酸基価が約160mgKOH/gのひまし油が例示される。
【0015】
ポリイソシアネートとポリオール成分との反応は、従来公知の方法で行なうことができる。例えば、遊離のNCOを20〜48質量%含むポリイソシアネートとポリオール成分を反応させることにより、ウレタンプレポリマーの末端にイソシアネート基を持たすことができる。
【0016】
主剤(I)中のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)のNCO/OH比(モル比)は、特に限定されないが、結晶性が低く、貯蔵安定性に優れるという観点から、好ましくは2〜10、より好ましくは3〜8である。そのため、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)に用いられるポリイソシアネートとポリオール成分との配合割合、および主剤(I)中のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)の含有量は、上記と同様の理由から上記NCO/OH比を満たすように設定されることが好ましい。
【0017】
上述した成分を含有する主剤(I)の25℃における粘度は、特に限定されないが、適度な可使時間、硬化剤と混合した後の流動性を十分に確保するため、好ましくは1000〜8000mPa・sである。なお、本発明において、主剤および後述する硬化剤の粘度は、回転粘度計を用い、JIS Z8803に準拠して25℃にて測定した値である。
【0018】
硬化剤(II)は、水酸基末端ウレタンプレポリマー(B)を含有し、この水酸基末端ウレタンプレポリマー(B)は、ひまし油系ポリオール(a1)を含有するポリオール成分(a)とポリイソシアネート(b)との反応物である。
【0019】
ポリオール成分(a)は、ひまし油系ポリオール(a1)を含有する。ひまし油系ポリオール(a1)は、ひまし油、ひまし油脂肪酸、ひまし油に水素付加した水添ひまし油またはひまし油脂肪酸に水素付加した水添ひまし油脂肪酸を用いて製造されたポリオールである。このようなひまし油系ポリオール(a1)としては、ひまし油、ひまし油とその他の天然油脂とのエステル交換物、ひまし油と多価アルコールとの反応物、ひまし油脂肪酸と多価アルコールとのエステル化反応物、水添ひまし油、水添ひまし油とその他の天然油脂とのエステル交換物、水添ひまし油と多価アルコールとの反応物、水添ひまし油脂肪酸と多価アルコールとのエステル化反応物、および、これらにアルキレンオキサイドを付加重合したポリオールなどが挙げられ、これらは単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0020】
ひまし油系ポリオール(a1)の平均水酸基価は、特に限定されないが、硬化物の強度が優れる、硬化剤と混合した後の流動性を十分に確保できるという理由から、好ましくは50〜300mgKOH/g、より好ましくは100〜200mgKOH/gである。
【0021】
ポリオール成分(a)中のひまし油系ポリオール(a1)の含有量は、特に限定されないが、主剤との相溶性に優れる、硬化剤と混合した後の流動性を十分に確保できるという理由から、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは60〜90質量%、最も好ましくは65〜85質量%である。
【0022】
ポリオール成分(a)はまた、水酸基数4〜8のポリエーテルポリオール(a2)を含有してもよい。水酸基数4〜8のポリエーテルポリオール(a2)としては、ペンタエリスリトール、ソルビトールおよびショ糖などの水酸基数4〜8のポリオールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドおよびブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールなどが挙げられ、これらは単独でまたは組み合わせて使用することができる。これらのうち、耐水性に優れることからアルキレンオキサイドとしてプロピレンオキサイドおよびブチレンオキサイドを使用したものが好ましい。また、耐久性に優れるとともに主剤と混合した後の流動性を十分に確保できるポリオールとしてソルビトールを使用したものが好ましい。
【0023】
水酸基数4〜8のポリエーテルポリオール(a2)の平均水酸基価は、特に限定されないが、硬化物の硬度を高め、中空糸膜モジュールに用いた場合にその耐久性を向上させるため、好ましくは300〜800mgKOH/g、より好ましくは400〜600mgKOH/gである。
【0024】
ポリオール成分(a)中の水酸基数4〜8のポリエーテルポリオール(a2)の含有量は、特に限定されないが、硬化物の硬度を高め、中空糸膜モジュールに用いた場合にその耐久性を向上させるため、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは15〜35質量%である。
【0025】
ポリオール成分(a)はさらに、ひまし油系ポリオール(a1)および水酸基数4〜8のポリエーテルポリオール(a2)以外に、その他のポリオール(a3)を含有してもよい。その他のポリオール(a3)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびトリエチレングリコールなどの水酸基数2のポリオール、グリセリンおよびトリメチロールプロパンなどの水酸基数3のポリオール、ペンタエリスリトールなどの水酸基数4のポリオール、ソルビトールなどの水酸基数6のポリオール、ショ糖などの水酸基数8のポリオール、前記水酸基数2または3のポリオールにアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオール、アニリン、トリレンジアミン、エチレンジアミンおよびジエチレントリアミンなどのアミン化合物アルキレンオキサイドを付加したアミンポリオールなどのポリエーテルポリオールが挙げられる。また、ポリエステルポリオールやポリブタジエンポリオールなども使用できる。
【0026】
ポリオール成分(a)中のその他のポリオール(a3)の含有量は、特に限定されないが、本発明の効果を損なわないため、20質量%以下とすることが好ましい。
【0027】
ポリイソシアネート(b)としては、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)の調製に使用するポリイソシアネートと同じものが、好ましく例示される。
【0028】
ポリオール成分(a)とポリイソシアネート(b)との反応は、従来公知の方法で行なうことができる。例えば、水酸基が過剰となる条件で、ポリオール成分(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させることにより、ウレタンプレポリマーの末端に水酸基を持たすことができる。
【0029】
硬化剤(II)中の水酸基末端ウレタンプレポリマー(B)のNCO/OH比(モル比)は、特に限定されないが、主剤との相溶性に優れる、硬化剤と混合した後の流動性を十分に確保できるという理由から、好ましくは0.01〜0.5、より好ましくは0.05〜0.3である。そのため、ポリオール成分(a)とポリイソシアネート(b)の配合割合、および硬化剤(II)中の水酸基末端ウレタンプレポリマー(B)の含有量は、上記と同様の理由から上記NCO/OH比を満たすように設定されることが好ましい。
【0030】
上述した成分を含有する硬化剤(II)の平均水酸基価は、特に限定されないが、主剤と混合した後の粘度をより一層低くでき、しかもポリウレタン樹脂硬化物により一層高い硬度を付与できることから、好ましくは100〜300mgKOH/g、より好ましくは150〜250mgKOH/gである。
【0031】
また、硬化剤(II)の25℃における粘度は、特に限定されないが、主剤と混合した後の流動性を十分に確保できるという理由から、好ましくは4000〜30,000mPa・sである。
【0032】
主剤(I)と硬化剤(II)の混合比率は、NCO/OH比(モル比)で0.8〜1.3であることが硬化性が良好な点から好ましい。より好ましいNCO/OH比(モル比)は0.9〜1.2である。
【0033】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、必要に応じて公知の硬化触媒を含有してもよい。硬化触媒としては、通常、ポリウレタン樹脂の製造に使用される、金属触媒やアミン系触媒を使用することができる。金属触媒としては、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクテートなどの錫触媒、オクチル酸鉛、オクテン酸鉛、ナフテン酸鉛などの鉛触媒、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなどのビスマス触媒などを挙げることができる。アミン系触媒としては、ジエチレントリアミンなどが挙げられ、これらは単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0034】
ポリウレタン樹脂組成物中の硬化触媒の含有量は、求める硬化速度に応じて適宜調整することができるが、一般的には、主剤(I)および硬化剤(II)の合計100質量部に対して、0.0001〜3質量部である。
【0035】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、主剤(I)中に、または主剤(I)とは別にイソシアネート化合物を含有してもよい。イソシアネート化合物としては、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)の調製に使用するポリイソシアネートと同じものが、好ましく例示される。
【0036】
また、本発明のポリウレタン樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、硬化剤(II)中に、または硬化剤(II)とは別にポリオール(C)を含有してもよい。ポリオール(C)としては、ポリオール成分(a)で例示したものが好ましく例示される。
【0037】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、主剤(I)と硬化剤(II)とを混合することにより、必要に応じて硬化触媒を混合することにより硬化が始まり、ポリウレタン樹脂硬化物を生成する。
【0038】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、中空糸の結束用の組成物として特に有用である。
【0039】
中空糸は、例えばポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、酢酸セルロース、ポリフッ化ビニリデンなどからなる中空糸が挙げられ、その中空糸の束をその端部で上記ポリウレタン樹脂組成物により結束させた中空糸膜モジュールなどとして各種用途に用いられている。本発明のポリウレタン樹脂組成物はこれらの中空糸の束を端部で結束させるための結束材として有用である。
【0040】
さらに本発明は、上記ポリウレタン樹脂組成物の硬化物を結束材として用いた中空糸膜モジュールにも関する。
【0041】
また本発明の中空糸膜モジュールは、食品工業、医薬製造、化学工業、土木、半導体や電子部品の製造、塗料、機械、印刷、繊維、医学などの分野で使用され、特に、浄水器や血液処理器などに使用される中空糸膜モジュールとして好適である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中、「部」、「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準を示す。
【0043】
<評価方法>
(平均水酸基価)
JIS K1557に準じて測定した。
【0044】
(粘度)
回転粘度計(ブルックフィールド・エンジニアリング・ラボラトリーズ社製、商品名:B型粘度計BM)を用いて、JIS Z8803に準拠し、25℃にて測定した。
【0045】
(可使時間)
主剤(I)と硬化剤(II)の混合液を25℃に静置し、混合開始から粘度が100,000mPa・sになるまでの時間(分)を可使時間として測定した。結果を表1に示す。可使時間が長い方が、大型装置へのポリウレタン樹脂組成物の注入作業を余裕を持って行うことができるなど作業性に優れる。ただし、可使時間が長すぎると硬化に時間がかかりすぎ、生産性が低下するため、好ましくない。
【0046】
(硬化物の硬度)
硬度計(高分子計器(株)製のASKER D型)を用い、JIS K6253に従ってショアD硬度を測定した。結果を表1に示す。
【0047】
(中空糸膜の評価)
主剤(I)と硬化剤(II)の混合液100gを、ポリスルホン中空糸膜3000本が入ったポリカーボネート製筒状ケース(内径100mm)に入れて遠心成型することにより、中空糸膜相互の隙間および中空糸膜と筒状ケースとの隙間をシールした。続いて、25℃で4日間静置した後、シール部分の端部を切断して中空糸を開口することにより、中空糸膜モジュールを作製した。中空糸膜モジュールは、孔径が0.2μmであるポリスルホン中空糸膜を用いたものと、孔径が1μmであるポリスルホン中空糸膜を用いたものの2種類を作製した。
【0048】
得られた中空糸膜モジュールの端部をルーペにより観察し、中空糸膜の閉塞の有無を下記のとおり評価した。
◎:閉塞が全体の7%未満(210本未満)
○:閉塞が全体の7%以上10%未満(210本以上300本未満)
×:閉塞が全体の10%以上(300本以上)
【0049】
また、得られた中空糸膜モジュールに水を充填し、リークの有無を確認した。
【0050】
調製例1(主剤(I)の調製)
一部をカルボジイミド変性した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(遊離NCO量:29.5%、BASFINOAC ポリウレタン(株)製のルプラネートMM−103:商品名)70.3部と、ひまし油(平均水酸基価:160mgKOH/g、伊藤製油(株)製のひまし油カクトクA:商品名)29.7部とを混合・反応させて、NCO/OH比(モル比)が5.8のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)からなる主剤(I−1)を調製した。得られた主剤(I−1)の遊離NCO量は17%であり、25℃にて測定した粘度は4500mPa・sであった。
【0051】
調製例2(硬化剤(II)の調製)
<使用原材料>
硬化剤(II)の調製において使用した原材料は以下のとおりである。
ひまし油系ポリオール(a1)
a1−1:ひまし油(平均水酸基価:160mgKOH/g、伊藤製油(株)製のひまし油カクトクA:商品名)
a1−2:ひまし油系ポリオール(平均水酸基価:200mgKOH/g、伊藤製油(株)製のURIC H−52:商品名)
水酸基数4〜8のポリエーテルポリオール(a2)
a2−1:ソルビトールにプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオール(平均水酸基価:450mgKOH/g)
a2−2:ソルビトールにプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオール(平均水酸基価:550mgKOH/g)
その他のポリオール(a3)
a3−1:グリセリンにプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオール(平均水酸基価:561mgKOH/g)
a3−2:トリメチロールプロパン
ポリイソシアネート(b)
b−1:一部をカルボジイミド変性した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(遊離NCO量:29.5%、BASFINOAC ポリウレタン(株)製のルプラネートMM−103:商品名)
【0052】
(硬化剤(II−1)の調製)
一部をカルボジイミド変性した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート7.1部と、ひまし油100部とを混合・反応させて、NCO/OH比(モル比)が0.17の水酸基末端ウレタンプレポリマー(B)からなる硬化剤(II−1)を調製した。得られた硬化剤(II−1)の平均水酸基価は123mgKOH/gであり、25℃にて測定した粘度は4100mPa・sであった。
【0053】
(硬化剤(II−2)〜(II−9)の調製)
表1に示す成分を同表に示す割合で混合・反応させて、水酸基末端ウレタンプレポリマー(B)からなる硬化剤(II−2)〜(II−9)を調製し、NCO/OH比(モル比)、平均水酸基価および粘度(25℃)を調べた。結果を表1に示す。
【0054】
実施例1〜8および比較例1
調製例1で調製した主剤(I−1)と、調製例2で調製した硬化剤(II−1)〜(II−9)とを、NCO/OH比(モル比)が1.0となる量で25℃にて混合し、2分間攪拌した得られた混合液を用いて、可使時間、硬化物の硬度および中空糸膜の評価を行った。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1に示されるように、水酸基末端ウレタンプレポリマー(B)を含有する硬化剤(II)を用いたポリウレタン樹脂組成物(実施例1〜8)は、適切な範囲の可使時間であり、かつ中空糸膜の閉塞を抑制できた。特に、ポリオール成分(a)として、ひまし油系ポリオール(a1)と水酸基数4〜8のポリエーテルポリオール(a2)を併用したものを用いたポリウレタン樹脂組成物(実施例2〜8)の硬化物は硬度が高く、また、孔径1μの中空糸膜を使用した場合にも閉塞をより抑制できた。一方、硬化剤(II)としてひまし油系ポリオール(a1)と水酸基数4〜8のポリエーテルポリオール(a2)の混合物を用いたポリウレタン樹脂組成物(比較例1)は、中空糸膜モジュールの閉塞を抑制することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、浄水器や血液処理器などに使用する中空糸膜の結束材として使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)を含有する主剤(I)と水酸基末端ウレタンプレポリマー(B)を含有する硬化剤(II)とを含み、
水酸基末端ウレタンプレポリマー(B)が、ひまし油系ポリオール(a1)を含有するポリオール成分(a)とポリイソシアネート(b)との反応物であるポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
ポリオール成分(a)が、さらに水酸基数4〜8のポリエーテルポリオール(a2)を含有する請求項1記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリウレタン樹脂組成物が、中空糸の結束用の組成物である請求項1または2記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物を用いてなる中空糸膜モジュール。

【公開番号】特開2013−6933(P2013−6933A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139592(P2011−139592)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】