説明

ポリウレタン樹脂組成物及びその組成物を含む耐衝撃性成形品

【課題】ポリウレタンの硬度や弾性率等の調整、及び外観の改善だけでなく、衝撃強度等の機械的特性に優れたポリウレタン樹脂組成物及びその組成物を含む耐衝撃性成形品を提供する。
【解決手段】熱可塑性ポリウレタンと、特定のポリエーテルアミドエラストマー(X)を50重量%以上含むポリアミド系エラストマーとを含み、前記熱可塑性ポリウレタン中の分散粒径面積が0.10μm以下の前記ポリアミド系エラストマーの面積比率が95%以上であることを特徴とするポリウレタン樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリウレタン樹脂と、ポリアミド単位をハードセグメントとしポリエーテル単位をソフトセグメントとするポリアミド系エラストマーとを含むポリウレタン樹脂組成物及びその組成物を含む耐衝撃性成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱可塑性ポリウレタンの硬度や弾性率等を調整するために、2種類以上の熱可塑性ポリウレタンを混合する技術が知られている。しかしながら、熱可塑性ポリウレタンは、常に同じ物性を発現することが難しく、また、熱可塑性ポリウレタン同士のブレンドは混ざりが悪いため外観が悪くなってしまうという問題がある。そのため、特許文献1には、ポリウレタンを再現性よく成形するために、ポリウレタンにポリエーテルエステルアミドエラストマーを添加する熱可塑性ポリウレタンベースの組成物の成形方法が記載されている。熱可塑性ポリウレタンにポリエーテルエステルアミドエラストマーを混合することにより、硬度や弾性率等を調整するとともに、外観も優れるものを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−001154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の組成物は、熱可塑性ポリウレタン同士をブレンドした場合と比較すると外観が優れるものの、衝撃強度等の機械的特性の観点からは、さらに改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ポリウレタンの硬度や弾性率等の調整、及び外観の改善だけでなく、衝撃強度等の機械的特性に優れたポリウレタン樹脂組成物及びその組成物を含む耐衝撃性成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、以上の目的を達成するために、鋭意検討した結果、熱可塑性ポリウレタン樹脂と、ポリアミド単位をハードセグメントとしポリエーテル単位をソフトセグメントとするポリアミド系エラストマーとを含み、熱可塑性ポリウレタン中のポリアミド系エラストマーの分散の状態を調整することによって、衝撃強度等の機械的特性に優れたポリウレタン樹脂組成物及びその組成物を含む耐衝撃性成形品が得られることを見出し、本発明に至った。すなわち本発明は、熱可塑性ポリウレタンと、特定のポリエーテルアミドエラストマー(X)を50重量%以上含むポリアミド系エラストマーとを含み、前記熱可塑性ポリウレタン中の分散粒径面積が0.10μm以下の前記ポリアミド系エラストマーの面積比率が95%以上であることを特徴とするポリウレタン樹脂組成物である。
【0007】
また、本発明は、前記ポリウレタン樹脂組成物を含む耐衝撃性成形品である。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、ポリウレタンの硬度や弾性率等の調整、及び外観の改善だけでなく、衝撃強度等の機械的特性に優れたポリウレタン樹脂組成物及びその組成物を含む耐衝撃性成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1及び比較例2に係る組成物を電子顕微鏡で撮影したモルフォロジーの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るポリウレタン樹脂組成物において、ポリアミド系エラストマーは、マトリックスである熱可塑性ポリウレタン中に分散している(海−島構造である)ことが好ましいが、その分散の状態は、熱可塑性ポリウレタン中の分散粒径面積が0.10μm以下のポリアミド系エラストマーの面積比率及び分散しているポリアミド系エラストマーの最大粒径によって表すことができる。
【0011】
本発明に係るポリウレタン樹脂組成物において、熱可塑性ポリウレタン中の分散粒径面積が0.10μm以下のポリアミド系エラストマーの面積比率は、95%以上である。ここで、面積比率とは、熱可塑性ポリウレタン中に分散しているポリアミド系エラストマーの画像解析における全面積中での比率をいい、分散粒径面積が0.10μm以下のポリアミド系エラストマーの面積比率は、『画像解析A像くん』(旭化成エンジニアリング社製)を用いて測定した値である。
【0012】
また、本発明に係るポリウレタン樹脂組成物において、熱可塑性ポリウレタン中のポリアミド系エラストマーの最大粒径は、1.0μm未満であることが好ましい。最大粒径が1.0μm以上では、機械的特性や相溶性の点で好ましくない。ポリアミド系エラストマーの最大粒径は、『画像解析A像くん』(旭化成エンジニアリング社製)を用いて測定した値である。
【0013】
熱可塑性ポリウレタン中にポリアミド系エラストマーを上記のように分散させる方法は、特に限定されないが、例えばドライブレンドの場合、ペレット同士をタンブラーやブレンダーに入れ、5〜30分ブレンドする方法などが好適に用いられる。
【0014】
本発明に係るポリウレタン樹脂組成物において、熱可塑性ポリウレタンは、ポリウレタン樹脂組成物中に、50〜90重量%含むことが好ましく、65〜85重量%含むことがより好ましい。50重量%未満では、ポリウレタンとポリアミド系エラストマーの海−島構造のバランスが崩れ、ポリウレタン本来の物性が低下してしまい、90重量%を超えると、機械的特性などの物性の発現性が落ちるためあまり好ましくない。
【0015】
また、本発明に係るポリウレタン樹脂組成物において、ポリアミド系エラストマーは、ポリウレタン樹脂組成物中に、50〜10重量%含むことが好ましく、35〜15重量%含むことがより好ましい。10重量%未満では、機械的特性などの物性の発現性が落ち、50重量%を超えると、ポリウレタンとポリアミド系エラストマーの海−島構造のバランスが崩れ、ポリウレタン本来の物性が低下してしまうためあまり好ましくない。
【0016】
〔熱可塑性ポリウレタン〕
本発明に係るポリウレタン樹脂組成物において、熱可塑性ポリウレタンとしては、特に制限なく、公知のものを使用することができる。
【0017】
ポリウレタンは、ポリオール及びポリイソシアネートを反応させて得られたポリウレタン、ポリオール、ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得られたポリウレタンなどを用いることが出来る。特にポリウレタンとしては、ジオールとジイソシアネート又はジオール、ジイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得た熱可塑性ポリウレタンを用いることが好ましい。
【0018】
ポリオールとしては、縮合系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエーテルポリオールなどが用いられる。
【0019】
縮合系ポリエステルポリオールは、ジカルボン酸とジオールを1種又は2種以上用いることにより得られるポリエステルジオールが好ましく用いられる。
【0020】
ジカルボン酸としては、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セパシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、またはこれらの低級アルキルエステルを挙げることができ、これらを1種または2種以上用いることができる。これらのなかでもアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸又はこれらの低級アルキルエステルが好ましい。
【0021】
ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどの脂環式ジオールを挙げることができ、これらを1種または2種以上用いることができる。これらのなかでも3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオールなどの脂肪族ジオールを用いるのが好ましい。
【0022】
ラクトン系ポリエステルポリオールとしては、β−プロピオラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、メチル−ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、トリメチル−ε−カプロラクトン等のラクトン化合物を短鎖のジオール等のヒドロキシ化合物と共に反応させて得られたポリエステルジオールなどが挙げられる。
【0023】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、低分子ジオールとジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネートなどのカーボネート化合物との反応により得られるポリカーボネートジオールが好ましい。ポリカーボネートジオールの製造原料である低分子ジオールとしては、ポリエステルジオールの製造原料として先に例示した低分子のジオールを用いることができる。また、ジアルキルカーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどを、アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネートなどを、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネートなどを挙げることができる。
【0024】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテルジオール、ポリオキシプロピレントリオール等のポリエーテルトリオール等が挙げられる。上記のほか、公知の各種のポリウレタン用ポリオールを使用することもできる。
ポリウレタンは、ポリエステルジオール及び/又はポリエーテルジオールをソフトセグメントとする熱可塑性ポリウレタンを好ましく用いることができる。
【0025】
ポリウレタンに使用するポリイソシアネートの種類は特に制限されないが、ジイソシアネートが好ましく、ポリウレタンや熱可塑性ポリウレタンの製造に用いられているジイソシアネートのいずれもが使用できる。
ジイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、m−又はp−フェニレンジイソシアネート、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどを用いることができ、これらのポリイソシアネートの1種または2種以上を用いることができる。それらのうちでも4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく用いられる。
【0026】
ポリウレタンの製造に用いられる鎖伸長剤の種類は特に制限されず、通常のポリウレタンの製造に従来から用いられている鎖伸長剤のいずれもが使用できるが、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量300以下の低分子化合物を用いるのが好ましい。
鎖伸長剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコールなどのジオール類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類などが挙げられ、これらを1種または2種以上用いることができる。これらのなかでも、炭素数2〜10の脂肪族ジオールを用いるのが好ましく、1,4−ブタンジオールを用いるのがより好ましい。
【0027】
上記ポリウレタンは、特性を損なわない範囲で、ポリウレタンを除く他の熱可塑性ポリマー、柔軟性を有する熱可塑性ポリマー、エラストマー、ゴムなどとブレンドして用いることが出来る。
【0028】
〔ポリアミド系エラストマー〕
本発明に係るポリウレタン樹脂組成物において、ポリアミド系エラストマーは、ポリエーテルアミドエラストマー(X)を50重量%以上含んでおり、70重量%以上含んでいることが好ましく、90重量%以上含んでいることがより好ましい。ポリエーテルアミドエラストマー(X)が50重量%より少ない場合は、ポリエーテルアミドエラストマーの特性が発現し難いという点で好ましくない。
【0029】
〔ポリエーテルアミドエラストマー(X)〕
本発明に係るポリウレタン樹脂組成物において、ポリエーテルアミドエラストマー(X)は、下記式(1)で表されるトリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)、下記式(2)で表わされるジカルボン酸化合物(B)、並びに下記式(3)及び(4)のうち少なくとも1つで表わされるポリアミド形成性モノマー(C)を重合して得られる重合体である。
【0030】
【化1】

【0031】
【化2】

【0032】
【化3】

【0033】
【化4】

【0034】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)の曲げ弾性率は、好ましくは20〜450MPa、さらに好ましくは20〜400MPa、より好ましくは20〜350MPa、特に好ましくは20〜300MPaである。弾性率が上記範囲であることにより、特に強靭性とゴム弾性に優れるエラストマーが得られる。なお、本発明において、曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠して測定することができる。
【0035】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)の引張り降伏点強度は、好ましくは3〜25MPaの範囲、さらに好ましくは3〜22MPaの範囲、より好ましくは3〜20MPaの範囲、特に好ましくは3〜18MPaの範囲である。引張り降伏点強度が上記範囲であることにより、特に強靭性とゴム弾性に優れるエラストマーが得られる。なお、本発明において、引張り降伏点強度は、ASTM D−638に準拠して測定することができる。
【0036】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)の引張り破断伸びは、300%以上が好ましく、特に600%以上が好ましい。この範囲よりも少ないと、強靭性、ゴム弾性などのエラストマーとしての性能が発現しにくくなるために好ましくない場合がある。なお、本発明において、引張り破断伸びは、ASTM D−638に準拠して測定することができる。
【0037】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)の曲げ強さは、好ましくは0.8〜15MPa、さらに好ましくは1〜13MPa、より好ましくは1.1〜10MPa、特に好ましくは1.2〜9MPaである。ポリエーテルアミドエラストマー(X)の曲げ強さが、上記範囲内では、曲げ強さなどの強靭性とゴム弾性とのバランスの優れるエラストマーが得られるために好ましい。なお、本発明において、曲げ強さは、ASTM D−790に準拠して測定することができる。
【0038】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)は、23℃におけるアイゾットノッチ付き衝撃強さの測定において破壊しないこと(NBと略す)が、特に耐衝撃性に優れるために好ましい。なお、本発明において、アイゾットノッチ付き衝撃強さは、ASTM D−256に準拠して測定することができる。
【0039】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)の荷重たわみ温度は、50℃以上が好ましい。上記範囲内であると使用時に材料が変形しにくくなるために好ましい。なお、本発明において、荷重たわみ温度は、ASTM D−648に準拠して測定することができる。
【0040】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)の相対粘度(ηr)は、1.2〜2.0(0.5質量/容量%メタクレゾール溶液、25℃)の範囲にあることが好ましい。
【0041】
〔トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)〕
本発明に使用するトリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)は、下記式(1)で表されるXYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物であり、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールなどの両末端にプロピレンオキシドを付加することによりポリプロピレングリコールとした後、このポリプロピレングリコールの末端にアンモニアなどを反応させることによって製造されるポリエーテルジアミンなどを用いることができる。
【0042】
【化1】

【0043】
XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物において、x及びzは1〜20、好ましくは1〜18、さらに好ましくは1〜16、より好ましくは1〜14、特に好ましいのは1〜12であり、yは4〜50、好ましくは5〜45、さらに好ましくは6〜40、より好ましくは7〜35、特に好ましいのは8〜30である。またx、y及びzの組合せとしては、xが2〜6の範囲、yが6〜12の範囲、zが1〜5の範囲の組合せ、あるいはxが2〜10の範囲、yが13〜28の範囲、zが1〜9の範囲の組合せなどを好ましく例示することができる。
【0044】
XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物において、x及びzがそれぞれ上記の範囲より小さい場合には、得られるエラストマーの透明性が劣るため好ましくなく、yが上記範囲より小さい場合には、ゴム弾性が低くなるので好ましくない。また、x及びzが上記範囲より大きい場合、又はyが上記範囲より大きい場合、ポリアミド成分との相溶性が低くなり強靭なエラストマーが得られにくいため好ましくない。
【0045】
XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物の具体例としては、米国HUNTSMAN社製XTJ−533(上記式(1)において、xがおよそ12、yがおよそ11、zがおよそ11)、XTJ−536(上記式(1)において、xがおよそ8.5、yがおよそ17、zがおよそ7.5)、そしてXTJ−542(上記式(1)において、xがおよそ3、yがおよそ9、zがおよそ2)などを用いることができる。
【0046】
また、XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物として、XYX−1(上記式(1)において、xがおよそ3、yがおよそ14、zがおよそ2)、XYX−2(上記式(1)において、xがおよそ5、yがおよそ14、zがおよそ4)、そしてXYX−3(上記式(1)において、xがおよそ3、yがおよそ19、zがおよそ2)なども用いることができる。
【0047】
〔ジカルボン酸化合物(B)〕
本発明に使用するジカルボン酸化合物(B)は、下記式(2)で表される化合物である。
【0048】
【化2】

【0049】
上記式(2)において、Rは、炭化水素鎖を含む連結基を表し、炭素数1〜20の脂肪族、脂環族若しくは芳香族の炭化水素基又は炭素数1〜20のアルキレン基であることが好ましく、さらに好ましくは炭素数1〜15の上記炭化水素基又は炭素数1〜15のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2〜12の上記炭化水素基又は炭素数2〜12のアルキレン基であり、特に好ましくは炭素数4〜10の上記炭化水素基又は炭素数4〜10のアルキレン基である。また、mは0又は1を表す。
【0050】
ジカルボン酸化合物(B)としては、脂肪族、脂環族及び芳香族ジカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のジカルボン酸又はこれらの誘導体を用いることができる。
【0051】
ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの炭素数2〜25の直鎖脂肪族ジカルボン酸、又は、トリグリセリドの分留により得られる不飽和脂肪酸を二量化した炭素数14〜48の二量化脂肪族ジカルボン酸(ダイマー酸)及びこれらの水素添加物(水添ダイマー酸)などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、および、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸を挙げることができる。ダイマー酸及び水添ダイマー酸としては、ユニケマ社製商品名「プリポール1004」、「プリポール1006」、「プリポール1009」、「プリポール1013」などを用いることができる。
【0052】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)の全成分に対するトリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)とジカルボン酸化合物(B)との合計量の割合は、好ましくは5〜90質量%、さらに好ましくは10〜85質量%、より好ましくは15〜85質量%、特に好ましくは20〜85質量%、最も好ましくは30〜85質量である。
【0053】
〔ポリアミド形成性モノマー(C)〕
本発明に使用するポリアミド形成性モノマー(C)は、下記式(3)で表されるアミノカルボン酸化合物及び下記式(4)で表されるラクタム化合物のうち少なくとも1つである。
【0054】
【化3】

【0055】
上記式(3)において、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表し、炭素数2〜20の脂肪族、脂環族若しくは芳香族の炭化水素基又は炭素数2〜20のアルキレン基であることが好ましく、さらに好ましくは炭素数3〜18の上記炭化水素基又は炭素数3〜18のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数4〜15の上記炭化水素基又は炭素数4〜15のアルキレン基であり、特に好ましくは炭素数10〜15の上記炭化水素基又は炭素数10〜15のアルキレン基である。
【0056】
【化4】

【0057】
上記式(4)において、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表し、炭素数3〜20の脂肪族、脂環族若しくは芳香族の炭化水素基又は炭素数3〜20のアルキレン基であることが好ましく、さらに好ましくは炭素数3〜18の上記炭化水素基又は炭素数3〜18のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数4〜15の上記炭化水素基又は炭素数4〜15のアルキレン基であり、特に好ましくは炭素数10〜15の上記炭化水素基又は炭素数10〜15のアルキレン基である。
【0058】
アミノカルボン酸化合物及びラクタム化合物としては、ω−アミノカルボン酸、ラクタム、又はジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種の脂肪族、脂環族及び/又は芳香族を含むポリアミド形成性モノマー(C)が使用される。
【0059】
ω−アミノカルボン酸の具体例としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などの炭素数5〜20の脂肪族ω−アミノカルボン酸などを挙げることができる。
【0060】
ラクタムの具体例としては、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタム、ω−ウンデカラクタム、ω−ドデカラクタム、2−ピロリドンなどの炭素数5〜20の脂肪族ラクタムなどを挙げることができる。
【0061】
ジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及びそれらの塩において、ジアミンとしては、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン及び芳香族ジアミン、又はこれらの誘導体から選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物などを挙げることができる。ジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸、又はこれらの誘導体から選ばれる少なくとも一種のジカルボン酸化合物などを挙げることができる。特に、脂肪族ジアミン化合物と脂肪族ジカルボン酸化合物との組合せを使用することにより、低比重で、引張り伸びが大きく、耐衝撃性に優れ、溶融成形性が良好なポリエーテルアミドエラストマー(X)を得ることができる。
【0062】
ジアミンとジカルボン酸とのモル比(ジアミン/ジカルボン酸)は、0.9〜1.1の範囲が好ましく、0.93〜1.07の範囲がさらに好ましく、0.95〜1.05の範囲がより好ましく、0.97〜1.03の範囲が特に好ましい。このモル比が上記範囲内にあれば、高分子量化が容易となる。
【0063】
上記のジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミンなどの炭素数2〜20の脂肪族ジアミンなどのジアミン化合物を挙げることができる。
【0064】
ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸のような炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸などのジカルボン酸化合物を挙げることができる。
【0065】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)の全成分に対する、ポリアミド形成性モノマー(C)の割合は、好ましくは10〜95質量%、さらに好ましくは15〜90質量%、より好ましくは15〜85質量%、特に好ましくは15〜80質量%、最も好ましくは15〜70質量%である。ポリエーテルアミドエラストマー(X)の全成分に対するポリアミド形成性モノマー(C)の割合が、10質量%以上であれば、ポリアミド成分の結晶性を向上されることができ、強度、弾性率などの機械的物性を向上させることができる。95質量%以下であれば、ゴム弾性や柔軟性などのエラストマーとしての機能、性能を発現させることができる。
【0066】
〔ポリエーテルアミドエラストマー(X)の製造方法〕
ポリエーテルアミドエラストマー(X)の製造方法として、一例を挙げると、ポリアミド形成性モノマー(C)、トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)及びジカルボン酸化合物(B)の三成分を、加圧及び/又は常圧下で溶融重合し、必要に応じさらに減圧下で溶融重合する工程からなる方法を用いることができ、さらにポリアミド形成性モノマー(C)、トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)及びジカルボン酸化合物(B)の三成分を同時に、加圧及び/又は常圧下で溶融重合し、必要に応じさらに減圧下で溶融重合する工程からなる方法を用いることができる。なお、ポリアミド形成性モノマー(C)とジカルボン酸化合物(B)の二成分を先に重合させ、ついで、トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)を重合させる方法も利用できる。
【0067】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)の製造において、原料を仕込む方法は、特に制限はないが、ポリアミド形成性モノマー(C)、トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)及びジカルボン酸化合物(B)の仕込み割合は、全成分に対してポリアミド形成性モノマー(C)が好ましくは10〜95質量%、特に好ましくは15〜90質量%の範囲、トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)が好ましくは3〜88質量%、特に好ましくは8〜79質量%の範囲である。原料のうち、トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)とジカルボン酸化合物(B)は、トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)のアミノ基とジカルボン酸のカルボキシ基がほぼ等モルになるように仕込むことが好ましい。
【0068】
重合温度は、好ましくは150〜300℃、さらに好ましくは160〜280℃、特に好ましくは180〜250℃である。重合温度が150℃以上であれば、重合反応が良好に進行し、300℃以下であれば、熱分解が抑えられ、良好な物性のポリマーを得ることができる。
【0069】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)は、ポリアミド形成性モノマー(C)としてω−アミノカルボン酸を使用する場合、常圧溶融重合又は常圧溶融重合とそれに続く減圧溶融重合での工程からなる方法で製造することができる。
【0070】
一方、ポリアミド形成性モノマー(C)としてラクタム、又はジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及び/又はそれらの塩を用いる場合には、適量の水を共存させ、0.1〜5MPaの加圧下での溶融重合とそれに続く常圧溶融重合及び/又は減圧溶融重合からなる方法で製造することができる。
【0071】
重合時間は、通常0.5〜30時間である。重合時間が0.5時間以上であれば、分子量を上昇させることができ、30時間以下であれば、熱分解による着色などが抑えられ、所望の物性を有するポリエーテルアミドエラストマー(X)が得ることができる。
【0072】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)の製造は、回分式でも、連続式でも実施することができ、またバッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置などを単独であるいは適宜組み合わせて用いることができる。
【0073】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)の製造の際に、必要に応じて分子量調節や成形加工時の溶融粘度安定のために、ラウリルアミン、ステアリルアミン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミンなどのモノアミン及びジアミン、酢酸、安息香酸、ステアリン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのモノカルボン酸、或はジカルボン酸などを添加することができる。
これらの使用量は、最終的に得られるエラストマーの相対粘度が1.2〜2.0(0.5質量/容量%メタクレゾール溶液、25℃)の範囲になるように適宜添加することが好ましい。
【0074】
上記のモノアミン及びジアミン、モノカルボン酸及びジカルボン酸などの添加量は、得られるポリエーテルアミドエラストマー(X)の特性を阻害されない範囲とするのが好ましい。
【0075】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)の製造の際に、必要に応じて触媒として、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸などを、また触媒と耐熱剤の両方の効果をねらって亜リン酸、次亜リン酸、及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などの無機系リン化合物を添加することができる。添加量は、通常、仕込み原料に対して50〜3000ppmである。
【0076】
本発明に係るポリウレタン樹脂組成物において、ポリアミド系エラストマーは、その特性が阻害されない範囲で、耐熱剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、スリップ剤、結晶核剤、粘着性付与剤、シール性改良剤、防曇剤、離型剤、可塑剤、顔料、染料、香料、難燃剤、補強材などを添加することができる。
【0077】
また、ポリアミド系エラストマーは、吸水性が低く、溶融成形性に優れ、成形加工性に優れ、強靭性に優れ、耐屈曲疲労性に優れ、反発弾性に優れ、低比重性、低温柔軟性に優れ、低温耐衝撃性に優れ、伸長回復性に優れ、消音特性に優れ、ゴム的な性質及び透明性などに優れている。
【0078】
さらに、ポリアミド系エラストマーは、本発明で使用するポリエーテルアミドエラストマー(X)を除くポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂との相溶性が良く、これらの熱可塑性樹脂とブレンドすることにより、これらの樹脂の成形性、耐衝撃性、弾性及び柔軟性などを改良することができる。
【0079】
本発明に係るポリウレタン樹脂組成物において、ポリアミド系エラストマーは、市販品として「UBESTA XPA 9040X1、同9040F1、同9048X1、同9048F1、同9055X1、同9055F1、同9063X1、同9063F1、同9068X1、同9068F1、同9040X2、同9048X2、同9040F2、同9048F2、同9068TF1、同9063TF1、同9055TF1、同9048TF1」(宇部興産株式会社製)などを使用することができる。
【0080】
〔耐衝撃性成形品〕
本発明に係るポリウレタン樹脂組成物は、衝撃強度等の機械的特性に優れているため、射出成形や押出成形等の耐衝撃性成形品に使用することができる。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例に限られるものではない。まず、各特性値は次のようにして測定した。
【0082】
1.硬度:(ショアD)
ASTM D2240に準拠してショアDを測定した。値が高いほど硬い性質を持つ。
【0083】
2.分散性:(モルフォロジー)
分散性は電子顕微鏡(走査型電子顕微鏡 SEM)を用いて判断した。
キシレンを用いてPAEを溶解した後、倍率5000倍で測定を行った。
【0084】
3.外観性能:
目視にて確認を行った。
【0085】
4.円相当径:
ソフトウェア『画像解析A像くん』(旭化成エンジニアリング社製)の粒径解析モードを使用した。粒径解析モードでは、平均粒径、最小粒径及び最大粒径(μm)が算出出来るだけでなく、円相当径から計算された分散粒径面積(μm)及び面積比率も同時に算出される。
【0086】
5.機械的物性:
以下に示す(1)〜(3)の測定は、下記の試験片を射出成形により成形し、これを用いて行った。
(1)引張り試験(降伏応力、降伏ひずみ、引張り強さ、引張りひずみ):ISO527−1.2に記載のISO TypeA(試験部:厚さ×幅×長さ=4×10×80mm)の試験片をISO527−1.2に準拠して測定した。試験片引張り速度は50mm/minで行った。
(2)引張り試験(引張り弾性率):ISO527−1.2に準拠して、試験速度1mm/minで行った。
(3)衝撃強度(シャルピー):ISO179/ 1eAに準拠して、23℃で測定した。
【0087】
製造例1(PAE1の製造)
次に、ポリエーテルアミドエラストマー(PAE)の製造例を以下に示す。
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約130ミリリットルの反応容器に12−アミノドデカン酸(ADA)(宇部興産(株)製)25.500g、ABA型のトリブロックポリエーテルジアミン(HUNTSMAN社製:XTJ−542、全アミン:1.965meq/g)1.824g、ポリオキシプロピレンジアミン(HUNTSMAN社製:ジェファーミンD−400、全アミン:4.43meq/g)1.824g及びアジピン酸(AA)0.852gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速50ml/分で供給しながら、190℃で1時間加熱し、次に1時間かけて230℃に昇温させ、さらに230℃で8時間重合を行い、重合物を得た。
得られた重合物は、白色のポリマーであり、ηr=2.01、[COOH]=3.25×10−5eq/g、[NH2]=3.83×10−5eq/g、Mn=28200、Tm=175℃、Tc=138℃であった。ポリマー組成は、PA12/XTJ−542/D−400/AA=84.9/6.2/6.0/2.9(重量%)(ただし、PA12、XTJ−542、D−400及びAAはポリマー中の各成分を表し、PA12はナイロン12単位を、XTJ−542はABA型トリブロックポリエーテルジアミン単位を、D−400はポリオキシプロピレンジアミン単位を、AAはアジピン酸単位をそれぞれ表す。)であった。
【0088】
(実施例1)
製造例1で得られたPAEのペレット15重量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(BASFジャパン(株)製:エラストランHM76D)85重量部をタンブラーに入れ、15分間ドライブレンドすることで、実施例1に係るポリウレタン樹脂組成物を得た。
得られたポリウレタン樹脂組成物について射出成形をすることで、実施例1に係る成形品を作製した。この成形品の硬度、分散性、外観性能、機械的物性をそれぞれ上記の方法で測定し、結果を表1に示す。また、組成物の分散粒径面積及び面積比率をそれぞれ上記の方法で測定し、結果を表2に示す。
【0089】
(実施例2)
製造例1で得られたPAEのペレット30重量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(HM76D)70重量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る成形品を得た。この成形品の硬度、分散性、外観性能、機械的物性をそれぞれ上記の方法で測定し、結果を表1に示す。また、組成物の分散粒径面積及び面積比率をそれぞれ上記の方法で測定し、結果を表2に示す。
【0090】
(実施例3)
製造例1で得られたPAEのペレット35重量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(HM76D)65重量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係る成形品を得た。この成形品の硬度、分散性、外観性能、機械的物性をそれぞれ上記の方法で測定し、結果を表1に示す。また、組成物の分散粒径面積及び面積比率をそれぞれ上記の方法で測定し、結果を表2に示す。
【0091】
(比較例1)
製造例1で得られたPAEの代わりに熱可塑性ポリウレタン(BASFジャパン(株)製:ET867D50)15重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る成形品を得た。この成形品の硬度、分散性、外観性能、機械的物性をそれぞれ上記の方法で測定し、結果を表1に示す。
【0092】
(比較例2)
製造例1で得られたPAEの代わりにポリエーテルエステルアミドエラストマー(アルケマ(株)製:Pebax7033)15重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2に係る成形品を得た。この成形品の硬度、分散性、外観性能、機械的物性をそれぞれ上記の方法で測定し、結果を表1に示す。また、組成物の分散粒径面積及び面積比率をそれぞれ上記の方法で測定し、結果を表2に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
以上より、成形品の外観性能を比較してみると、比較例1の外観は、斑で見られ上手く交じり合っておらず外観が優れていないが、実施例1〜3の外観は、比較例1のような斑は見られずドライブレンドで綺麗に混ざっている事が分かった。
【0096】
また、機械的特性に関しては、熱可塑性ポリウレタンに対して粘度の異なる熱可塑性ポリウレタンをブレンドした比較例1と比較し、熱可塑性ポリウレタンに対してPAEをブレンドした実施例1〜3は、引張り強さ、引張りひずみ、引張り伸びが改善された。この結果は、マトリックスである熱可塑性ポリウレタンとドメインの材料の相溶性に起因するところがある。つまり相溶性が良いとマトリックス材に分散するドメインの粒子径が小さくなる傾向があり、機械的特性である引張り強さや引張りひずみなどや耐衝撃性が改善され易い。この時、機械的特性及び耐衝撃性が改善され易いドメインの粒子径は、1μm以下が一つの目安となる。
【0097】
さらに、実施例1と比較例2を比較すると、熱可塑性ポリウレタンに分散しているPAEとポリエステルエーテルアミドとの平均粒径及び最大粒径に大きな違いがあった。比較例2の方が、平均粒径が大きく、実施例1より熱可塑性ポリウレタンに対する相溶性が悪い事が分かる。さらに比較例2は、最大粒径では1μmを超えるものが存在しているが、実施例1では1μmより大きい粒径は存在しない事からも比較例2より熱可塑性ポリウレタンに対して、相溶性が良い事が分かる。また、実施例1及び比較例2の粒径面積分布からそれぞれの粒径分布を調べると、実施例1は、ほぼ分布が無く、分散性よく単一的に熱可塑性ポリウレタンに混ざり合っているのに対して、比較例2は、分布が広く所々凝集している事が分かる。この事からも熱可塑性ポリウレタンに対する相溶性は実施例1の方が良い事が分かる。
【0098】
また、熱可塑性ポリウレタンに対して、PAEをブレンドする事によって、密度や引張り弾性率を任意の値にする事が可能となる。さらに、耐薬品性や耐加水分解性などの物性も改善される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリウレタンと、下記式(1)で表されるトリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)、下記式(2)で表わされるジカルボン酸化合物(B)、並びに下記式(3)及び(4)のうち少なくとも1つで表わされるポリアミド形成性モノマー(C)を重合して得られるポリエーテルアミドエラストマー(X)を50重量%以上含むポリアミド系エラストマーとを含み、前記熱可塑性ポリウレタン中の分散粒径面積が0.10μm以下の前記ポリアミド系エラストマーの面積比率が95%以上であることを特徴とするポリウレタン樹脂組成物。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【請求項2】
熱可塑性ポリウレタン中のポリアミド系エラストマーの最大粒径が1.0μm未満であることを特徴とする請求項1記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
熱可塑性ポリウレタン50〜90重量%と、ポリアミド系エラストマー10〜50重量%とを含むことを特徴とする請求項1又は2記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか記載のポリウレタン樹脂組成物を含む耐衝撃性成形品。

【図1】
image rotate