説明

ポリウレタン樹脂製造用のアミン触媒組成物及びそれを用いたポリウレタン樹脂の製造方法

【課題】 オゾン層破壊や地球温暖化への悪影響を及ぼすフロン系発泡剤を用いないで、発泡マシンの腐蝕を引き起こすことがなく、ポリオールと混合しても触媒が析出することなく、優れた断熱性能を有するファインセル硬質ポリウレタンフォームを製造することができる触媒及びそれを用いたポリウレタン樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】 下記式(1)
【化1】


[上記式(1)中、Rは、エチレン基、又は炭素数3〜12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基を表す。]
で示されるアミン化合物と、グリセリン系溶媒を含有するアミン触媒組成物をポリウレタン樹脂の製造に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂製造用のアミン触媒組成物及びそれを用いたポリウレタン樹脂の製造方法に関する。
【0002】
本発明のアミン触媒組成物は、特に、硬質ポリウレタンフォーム製造用の触媒としての利用が期待される。
【背景技術】
【0003】
ポリウレタン樹脂はポリオールとポリイソシアネートとを触媒及び必要に応じて発泡剤、界面活性剤、難燃剤、架橋剤等の存在下に反応させて製造される。ポリウレタン樹脂の製造には数多くの金属系化合物や第3級アミン化合物を触媒として用いることが知られている。これら触媒は単独又は併用することにより工業的にも多用されている。
【0004】
発泡剤として、水、低沸点有機化合物、又はそれらの両方を用いるポリウレタンフォームの製造においては、生産性、成形性に優れることから、これら触媒のうち、とりわけ第3級アミン化合物が広く用いられている。このような第3級アミン化合物としては、例えば、従来公知のトリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N,N−ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。(例えば、非特許文献1参照)。金属系化合物は生産性、成形性が悪化することより、ほとんどの場合、第3級アミン触媒と併用されることが多く、単独での使用は少ない。
【0005】
ポリウレタン樹脂、中でも硬質ポリウレタンフォームは軽量で、優れた断熱性能を有し、建材用、電気冷蔵庫、冷凍倉庫、プラント等の保温、保冷用断熱材として広く利用されており、一般的には各々に独立したセル構造、すなわち独立気泡を持つウレタン樹脂である。この一つ一つの独立気泡中に比較的熱伝導率の低いガス状の発泡剤が閉じ込められているために、高い断熱性能を有する。また、セル構造は、微細な独立気泡を持つ硬質ポリウレタンフォーム程、放射伝熱が小さくなり、断熱性能が高くなる。
【0006】
硬質ポリウレタンフォームの断熱性は、一般にK−factor値と呼ばれる熱伝導率で表され、K−factor値が小さければ小さいほど、断熱性が高いことを示す。このK−factor値が小さいファインセル硬質ポリウレタンフォームを硬質ポリウレタンフォーム製造者が望む所以である。
【0007】
従来、このファインセル硬質ポリウレタンフォームの製造法としては、処方中のCFC11,HCFC141bやHFC245fa等の発泡剤を増加し、水部数を低減し、かつフォーム製造時の反応速度を早め、その結果フォームのセル径を微細にする、所謂ファインセル硬質ポリウレタン技術や、アミン化合物とギ酸との塩を使用し、ファインセル硬質ポリウレタンフォームを製造する方法等が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
しかしながら、特定フロン(CFC11,HCFC141b,HFC245fa等)を用いる前者の技術は、特定フロンの使用禁止や地球温暖化係数が高いことから敬遠される中、低沸点炭化水素、主にシクロペンタンが使用される様になったため、断熱性能が悪化しており、またフォーム製造時の反応速度を早めることにも限界があることを考えると採用可能な技術ではない。また、アミン化合物とギ酸との塩を使用する後者の技術は、発泡マシンの腐蝕を引き起こす問題がある。
【0009】
更に、このファインセル硬質ポリウレタンフォームの製造法として、アミン炭酸塩を使用する方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。アミン炭酸塩は通常固体であり、作業性を良くするため溶媒で溶液状態にして使用されるが、ポリオールに添加してシステムにする際にポリオール種によってはアミン炭酸塩が析出する場合があり、この技術も充分な解決法とはなりえていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平1−168717号公報
【特許文献2】特開2000−239339号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社 p.118
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記の背景技術に対して鑑みてなされたものであり、その目的は、オゾン層破壊や地球温暖化への悪影響を及ぼすフロン系発泡剤を用いないで、発泡マシンの腐蝕を引き起こすことがなく、ポリオールと混合しても触媒が析出することなく、優れた断熱性能を有するファインセル硬質ポリウレタンフォームを製造することができる触媒及びそれを用いたポリウレタン樹脂の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のアミン化合物とグリセリン系溶媒を含む組成物が、有効なファインセル硬質ポリウレタンフォームを形成し、更に発泡マシンに対する腐食性やポリオール中での析出がないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、以下に示すとおりのポリウレタン樹脂製造用のアミン触媒組成物及びそれを用いたポリウレタン樹脂の製造方法である。
【0015】
[1]下記式(1)
【0016】
【化1】

[上記式(1)中、Rはエチレン基、又は炭素数3〜12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基を表す。]
で示されるアミン化合物と、グリセリン系溶媒を含有するポリウレタン樹脂製造用のアミン触媒組成物。
【0017】
[2]グリセリン系溶媒が、グリセリン、ジグリセリン、及びトリグリセリンからなる群より選択される1種又は2種以上の化合物であることを特徴とする上記[1]に記載のアミン触媒組成物。
【0018】
[3]式(1)で示されるアミン化合物の含有量が、アミン触媒組成物全体に対して、2〜85重量%の範囲であることを特徴とする上記[1]乃至上記[2]に記載のアミン触媒組成物。
【0019】
[4]ポリオールと有機ポリイソシアネートとを、上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のアミン触媒組成物の存在下で反応させることを特徴とするポリウレタン樹脂の製造方法。
【0020】
[5]ポリオールと有機ポリイソシアネートとを、触媒及び発泡剤の存在下で反応させる硬質ポリウレタンフォームの製造方法であって、触媒として、上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のアミン触媒組成物を使用し、かつ発泡剤として、水、沸点が0〜50℃の範囲である炭化水素、又はそれらの両方を使用することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【0021】
[6]上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のアミン触媒組成物の使用量が、ポリオール100重要部に対する、上記[1]に記載の式(1)で示される化合物の使用量として、0.1〜10重量部の範囲であることを特徴とする上記[5]又は[6]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明のアミン触媒組成物は、初期活性が弱いため、原料ポリオールと有機イソシアネートが混合されてから、フォームの形成反応が開始されるまでの時間が延長することができる。その結果、大型モールドの隅々まで原料液を十分流しうるなど混合液の操作性や液流れ性等を改善することができる。
【0023】
また、通常の遅延性触媒は酸ブロック剤を含むため、金属材質に対する腐食性が懸念されるが、本発明のアミン触媒組成物は、酸ブロック剤を含有していないため、金属材質に対する腐食性がなく、触媒貯槽や発泡装置などのポリウレタン製造設備を侵すことがなく、生産性向上に役立つ。
【0024】
また、本発明のアミン触媒組成物は、アミン炭酸塩を含まないため、ポリオールと混合しても触媒成分が析出するようなことはない。
【0025】
更に、本発明のアミン触媒組成物を用いると、微細なセル構造を有し、熱伝導率の低い(K−factor値が小さい)、断熱性能の高い硬質ポリウレタンフォームを製造できることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0027】
本発明のポリウレタン樹脂製造用のアミン触媒組成物は、上記式(1)で示されるアミン化合物とグリセリン系溶媒とを含有する。
【0028】
本発明において、上記式(1)で示されるアミン化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン等が挙げられる。これらのうち、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンが特に好ましい。上記式(1)で示されるアミン化合物は、従来公知の方法にて製造できる。例えば、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンはジ、メチルアミンとアクリロニトリルの反応から得られるジアルキルアミノプロピオニトリルの水添反応から得られる。
【0029】
本発明において、グリセリン系溶媒としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン及びトリグリセリンが挙げられる。これらのうち、グリセリン、ジグリセリンが好ましい。
【0030】
本発明のアミン触媒組成物における上記式(1)で示されるアミン化合物の含有量は、アミン触媒組成物全体に対して、2〜85重量%の範囲であり、好ましくは5〜75重量%の範囲である。上記式(1)で示されるアミン化合物の含有量が85重量%以下とすることで、ポリウレタン樹脂の断熱性能の指標であるK−factorが小さくなり、これらの相乗効果が発揮される。一方、上記式(1)で示されるアミン化合物の含有量が2重量%以上とすることで、触媒活性が高くなり触媒使用量を低減させることができる。
【0031】
すなわち、上記式(1)で示されるアミン化合物又はグリセリン系溶媒を単独でポリウレタン樹脂の製造に用いても、触媒活性や断熱性能等が問題となり、本発明の効果は達成されず、上記式(1)で示されるアミン化合物とグリセリン系溶媒とを併用することで、本発明の相乗作用が達成される。
【0032】
上記したとおり、本発明の相乗効果は、上記式(1)で示されるアミン化合物とグリセリン系溶媒とを併用することで達成されるため、上記式(1)で示されるアミン化合物以外の触媒をさらに含有させる必要はない。ただし、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記式(1)で示されるアミン化合物以外の触媒として、従来公知の第3級アミン化合物や、第4級アンモニウム塩類、有機金属化合物等を使用することができる。
【0033】
第3級アミン化合物としては、特に限定するものではないが、トリエチレンジアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、N−ジメチルアミノエチル−N’−メチルピペラジン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、1,2−ジメチルイミダゾール等が好適なものとして挙げられる。
【0034】
第4級アンモニウム塩類としては、特に限定するものではないが、テトラメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、水酸化テトラメチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウム水酸化物類、テトラメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムギ酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩等のテトラアルキルアンモニウム有機酸塩類が挙げられる。
【0035】
有機金属化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、スタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジオレエート、スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト等が挙げられる。
【0036】
次に本発明のポリウレタン樹脂の製造方法について説明する。
【0037】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法は、ポリオールと有機ポリイソシアネートとを、上記した本発明のアミン触媒組成物、及び必要に応じて発泡剤、整泡剤、その他従来公知の助剤の存在下で反応させることをその特徴とする。
【0038】
本発明の方法において、本発明のアミン触媒組成物の使用量は、特に限定するものではないが、ポリオール100重量部に対して、上記式(1)で示される化合物の含有量として、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。
【0039】
本発明の方法において、ポリオールとしては、例えば、反応性水酸基を分子中に2個以上持つ、水酸基価200mgKOH/g〜800mgKOH/gの範囲である化合物が挙げられる。具体的には、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、フェノールポリオール、さらには含リンポリオールやハロゲン含有ポリオールなどの難燃ポリオール等が例示される。これらのポリオールは単独で使用することもできるし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−へキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールブロパン、ペンタエリスリトール、メチルグルコシド、ソルビトール、シュークロース等)、多価フェノール(例えば、ピロガロール、ハイドロキノン等)、ビスフェノール類(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、フェノールとホルムアルデヒドとの低縮合物等)、脂肪族アミン(例えば、プロピレンジアミン、へキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタメチレンヘキサミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン等)、芳香族アミン(例えば、アニリン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、メチレンジアニリン、ジフェニルエーテルジアミン等)、脂環式アミン(例えば、イソホロンジアミン、シクロヘキシレンジアミン等)、複素脂環式アミン(例えば、アミノエチルピペラジン等)、マンニッヒポリオール(例えば、前記多価フェノール、前記脂肪族アミン及びホルマリンの反応により得られる化合物等)等の活性水素化合物に、アルキレンオキサイドを付加した化合物等が挙げられる。
【0041】
活性水素化合物に付加するアルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドが挙げられる。これらを単独で使用することもできるし、2種以上を併用してもよい。これらのうち好ましいものは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、又はこれらの併用である。
【0042】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、ダイマー酸、トリメリット酸等)と多価アルコールとを反応させて得られる縮合ポリエステルポリオールや、ε−カプロラクトン等のラクトンを開環重合して得られるポリラクトンポリオール等が挙げられる。
【0043】
ポリマーポリオールとしては、例えば、上記したポリエーテルポリオールとエチレン性不飽和単量体(例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等)とをラジカル重合触媒の存在下に反応させた重合体ポリオール等が挙げられる。
【0044】
本発明の方法において、有機ポリイソシアネートとしては、特に限定するものではなく、従来公知の化合物が使用できる。例えば、芳香族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環式ポリイソシアネート及びこれらの変性物(例えば、カルボジイミド変性、アロファネート変性、ウレア変性、ビューレット変性、イソシアヌレート変性、オキサゾリドン変性等)、イソシアネート基末端プレポリマー等が挙げられる。
【0045】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば,4−又は2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、ジフェニルメタン2,4’−又は4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(粗製MDI)等が挙げられる。
【0046】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。これらを適宜混合して併用することもできる。
【0047】
本発明の方法において、有機ポリイソシアネートの使用量は、特に限定するものではないが、フォーム強度、イソシアヌレート反応の完結等を考慮すると、硬質ポリウレタンフォームの製造においては、ポリイソシアネートと反応しうる活性水素化合物(例えば、ポリオール、水等)とのイソシアネートインデックス[=(イソシアネート基/イソシアネート基と反応しうる活性水素基)(モル比)×100]が、一般に70〜400の範囲が好ましい。
【0048】
本発明の方法において、必要であれば、発泡剤を使用することができる。発泡剤としては、低沸点炭化水素、水、又はその両方が用いられる。低沸点炭化水素は、沸点が通常0〜50℃の炭化水素であり、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、シクロペンタン、又はこれらの混合物が例示される。低沸点炭化水素と水を併用する場合、その水の量としては、所望のフォーム密度や低沸点炭化水素の量に応じ、適宜変化させて使用されるため特に限定するものではないが、一般にはポリオール100重量部に対し0.5重量部以上、特に低沸点炭化水素量をコスト面より減じたい時は好ましくは0.8重量部以上使用される。
【0049】
本発明の方法において、必要であれば、整泡剤を使用することができる。整泡剤としては、例えば、オルガノポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体、シリコーン−グリコール共重合体等の非イオン系界面活性剤、又はこれらの混合物が用いられる。整泡剤の量は特に限定するものではないが、通常、ポリオール100重量部対し0.1〜5重量部の範囲である。
【0050】
また、必要であれば、架橋剤又は鎖延長剤、着色剤、難燃剤、老化防止剤その他公知の添加剤等を添加することができる。
【0051】
本発明の方法においては、例えば、触媒、発泡剤、整泡剤等を含むポリオールプレミックスとポリイソシアネートの2液を低圧発泡マシン、高圧発泡マシン、スプレーマシンを用いて混合することによってポリウレタン樹脂を製造することができる。
【0052】
本発明の方法により得られる硬質ポリウレタンフォームは、断熱材として好適に使用されるものであり、その密度は通常0.1g/cm以下、好ましくは0.05g/cm以下である。
【0053】
なお、本発明において、硬質ポリウレタンフォームとは、高度に架橋されたクローズドセル構造を有し、可逆変形不可能なフォームをいう[Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985年版)Hanser Publishers社(ドイツ),p.234〜313や、岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社、p.224〜283の記載参照]。その物性は、特に限定するものではないが、一般的には、密度が10〜100kg/m、圧縮強度が50〜1000kPaの範囲である。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定して解釈されるものではない。
【0055】
本発明の触媒組成物と従来のアミン触媒を硬質ポリウレタンフォーム製品の製造に用いた例を以下に示す。
【0056】
実施例1〜11、比較例1〜15.
触媒を変化させ、表1に示すポリオールとポリイソシアネートの配合(イソシアネートインデックス=110)により、硬質ポリウレタンフォームの調製を行った。
【0057】
【表1】

硬質ポリウレタンフォームの反応性(クリームタイム、ゲルタイム)を2Lポリエチレンカップで、アルミニウム製モールドを用いて発泡したフォームは物性[密度、熱伝導率(K−factor)、フォームの平均セル面積]を測定及び評価した。その評価結果を表2〜表4に併せて示す。
【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

ここで、硬質ポリウレタンフォームは以下の発泡条件で調製した。
【0061】
<発泡条件>
原料液温度:20±1℃,
攪拌速度:6000rpm(5秒間),
モールド:2Lポリエチレンカップ、アルミニウム製モールド(寸法:25×25×5cm)に発泡,
モールド温度:40℃。
【0062】
また、以下の項目を測定した。
【0063】
<測定項目>
・反応性.
クリームタイム:フォーミングの開始時間(秒)であり、フォームが上昇開始する時間を目視にて測定した。
【0064】
ゲルタイム:フォーミング中の状態が樹脂状組成物に変わる時間(秒)を測定した。ゲルタイムは目視による判定であり、フォーミング中のフォームに棒状物(マッチ棒)を数ミリ程度突っ込み引き抜くという操作を繰り返すと、樹脂状組成物に変わる時に糸引き現象が起こる。この時の時間をゲルタイムとする。
【0065】
・フォームの密度.
アルミニウム製モールドでフリーライズフォームを製作し、モールドからはみ出た部分をカットし、25×25×8cm寸法サンプルの全密度を測定した。更に全密度を測定したフォームを使用し、表皮部分をカットした20×20×3cmのフォームサンプルでコア密度を測定した。
【0066】
・フォームのK−factor.
コア密度を測定したフォーム(20×20×3cm)を熱伝導率測定装置(英弘精機社製、HC−074)を用いてK−factorを測定した。
【0067】
・フォームの平均セル面積.
K−factorを測定したフォームの中心部から5×5×1cm寸法のフォームをカットし、セル測定装置[Goldlucke社製(ドイツ)、製品名:PORE!SCAN]を用いて平均セル面積を測定した。
【0068】
これらの表から明らかなように、実施例1〜実施例8は、主触媒に硬質ポリウレタンフォームの成形で汎用的に使用されるジメチルシクロヘキシルアミンとN,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンのブレンド組成物に、本発明のアミン触媒組成物を用いたことで、クリームタイムが遅延化し、形成された硬質ポリウレタンフォームは、K−factorが小さく断熱性に優れることが分かる。
【0069】
実施例9、実施例10は、本発明のアミン触媒組成物を単独で用いた事例であり、クリームタイムが遅延化し、形成された硬質ポリウレタンフォームは、K−factorが小さく断熱性に優れることが分かる。
【0070】
実施例11は、主触媒に硬質ポリウレタンフォームの成形で汎用的に使用されるジメチルシクロヘキシルアミンとN,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンのブレンド組成物に、本発明のアミン触媒組成物を用い、更に従来公知の第3級アミンを併用した事例である。クリームタイムは遅延化し、形成された硬質ポリウレタンフォームは、K−factorが小さく断熱性に優れることが分かる。
【0071】
これら何れの事例も、平均セル面積の値が小さく、フォームがファインセル化していることが確認され、本発明のアミン触媒組成物が、フォームの断熱性能を向上させたことが分かる。
【0072】
これに対し、比較例1は、ジメチルシクロヘキシルアミンとN,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンのブレンド組成物で、硬質ポリウレタンフォームを形成させたものであるが、K−factorが大きく断熱性に劣ることが分かる。
【0073】
比較例2〜比較例7、比較例9〜比較例11は、ジメチルシクロヘキシルアミンとN,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンのブレンド組成物に、エチレンアミン類、又は1級及び2級アミノ基を有するアミン化合物を併用した事例であるが、K−factorが大きく断熱性に劣ることが分かる。
【0074】
比較例8は、ジメチルシクロヘキシルアミンとN,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンのブレンド組成物に本発明の触媒系の一部であるN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンをブレンドした組成で、K−factorがその他の比較例よりは小さいものの、実施例で示す断熱性能は得られず充分とは言えない。
【0075】
比較例12〜比較例14は、ジメチルシクロヘキシルアミンとN,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンのブレンド組成物に、本発明のアミン触媒組成物の一成分であるグリセリン系溶媒を併用した事例である。K−factorがその他の比較例よりは小さくなるものの、実施例で示す断熱性能は得られず充分とは言えない。
【0076】
比較例15は、本発明のアミン触媒組成物における一成分であるN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンを単独で用い、硬質ポリウレタンフォームを形成させた事例である。K−factorがその他の比較例よりは小さいものの、実施例で示す断熱性能は得られず充分とは言えない。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のアミン触媒組成物を使用すれば、微細なセル構造を有し、熱伝導率の低い、即ち断熱性能の高い硬質ポリウレタンフォームを製造できる。また、本発明の製造方法によれば、腐蝕性がなく、触媒貯槽や発泡装置などのポリウレタン製造設備を侵すことがなく、硬質ポリウレタンフォームを製造できる為、本発明の触媒は、特に、硬質ポリウレタンフォーム製造用の触媒としての利用が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

[上記式(1)中、Rは、エチレン基、又は炭素数3〜12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基を表す。]
で示されるアミン化合物と、グリセリン系溶媒を含有するポリウレタン樹脂製造用のアミン触媒組成物。
【請求項2】
グリセリン系溶媒が、グリセリン、ジグリセリン、及びトリグリセリンからなる群より選択される1種又は2種以上の化合物であることを特徴とする請求項1に記載のアミン触媒組成物。
【請求項3】
式(1)で示されるアミン化合物の含有量が、アミン触媒組成物全体に対して、2〜85重量%の範囲であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアミン触媒組成物。
【請求項4】
ポリオールと有機ポリイソシアネートとを、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のアミン触媒組成物の存在下で反応させることを特徴とするポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項5】
ポリオールと有機ポリイソシアネートとを、触媒及び発泡剤の存在下で反応させる硬質ポリウレタンフォームの製造方法であって、触媒として、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のアミン触媒組成物を使用し、かつ発泡剤として、水、沸点が0〜50℃の範囲である炭化水素、又はそれらの両方を使用することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のアミン触媒組成物の使用量が、ポリオール100重要部に対する、請求項1に記載の式(1)で示される化合物の使用量として、0.1〜10重量部の範囲であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−121996(P2012−121996A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274029(P2010−274029)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】