説明

ポリウレタン樹脂製造用の触媒組成物、及びそれを用いた軟質ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】 製品中から排出されるアミンがほとんどなく、十分な耐圧縮歪性を有した軟質ポリウレタンフォームを得るための触媒組成物、及びその触媒組成物を用いた軟質ポリウレタンフォームの製造方法を提供する。
【解決手段】 ポリオールとポリイソシアネートとを、ジグリセリン1モルに対してアルキレンオキサイドを10モルより多く16モル以下付加した化合物(1)と、分子内に活性水素基を1個以上含有する第三級アミン化合物(2)とを含有する触媒組成物及び発泡剤の存在下に反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂及び軟質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。更に詳しくは、ポリウレタン樹脂製造の際、揮発性のアミンをほとんど排出せず、十分な耐圧縮歪性を有した、軟質ポリウレタンフォームの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂はポリオールとポリイソシアネートとを触媒及び必要に応じて発泡剤、界面活性剤、架橋剤等の存在下に反応させて製造される。ポリウレタン樹脂の製造には数多くの金属系化合物や第3級アミン化合物を触媒として用いることが知られており。これら触媒は単独又は併用することにより工業的にも多用されている。
【0003】
発泡剤として水及び/又は低沸点有機化合物等を用いるポリウレタンフォームの製造においては、成形性及び生産性に優れることから、これら触媒のうち、とりわけ第3級アミン化合物が広く用いられている。このような第3級アミン化合物としては、例えば、従来公知のトリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N−エチルモルフォリン等が挙げられる(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
一方、金属系触媒は生産性、成形性が悪化することより、ほとんどの場合第3級アミン触媒と併用されることが多く単独での使用は少ない。
【0005】
前記した第3級アミン触媒等は、ポリウレタン樹脂製品中にフリーの形で残留し、揮発性のアミンとして徐々に排出するため種々の問題を引き起こす。例えば、自動車内におけるポリウレタンフォーム製品から排出される揮発性アミンの臭気問題や、ポリウレタンフォーム中の揮発性分が自動車の窓ガラスに被着し窓ガラスを曇らせ商品価値を落とす原因となっている、いわゆるフォギングと呼ばれる問題、その他、ポリウレタン製品から排出される揮発性アミンによる他の材料への汚染問題等である。
【0006】
これらの問題を解決する方法として、前記した揮発性の第3級アミン触媒の代わりに、ポリイソシアネートと反応しうる1級及び2級のアミノ基又はヒドロキシアルキル基を分子内に有するアミン触媒(以下、反応型アミン触媒と称する場合がある。)を使用する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。これらの反応型アミン触媒は、ポリイソシアネートと反応した形でポリウレタン樹脂骨格中に固定化されるため、上記問題を回避できるとされているが、ポリマーの高分子化を妨げ、固定化された反応型アミンがポリマーの劣化を促進させるため、以下に示すように耐久物性を十分満たすフォームが得られないという新たな問題が生じている。
【0007】
すなわち、軟質ポリウレタンフォームの用途として大きな割合を占める自動車用クッションに使用されている軟質高弾性フォームに要求される耐久物性として、永久圧縮歪が挙げられる。この永久圧縮歪が劣る場合、経時的にクッションの厚みが減じるため、車輛運転者の目の位置が変化したり、座り心地や乗り心地が悪くなるなどの問題が生じる。この永久圧縮歪の加速試験方法としては、耐熱老化性試験(以下、ドライセットと称する場合がある。)や耐湿熱老化性試験(以下、ウェットセットと称する場合がある。)が主流であるが、近年、安全に対する意識の向上から、永久圧縮歪の加速試験方法の試験条件が厳しくなり、高温で長時間の加湿下で処理されたフォームの圧縮歪試験(以下、湿熱後のドライセットと称する場合がある。)が欧米を中心に主流になりつつある。
【0008】
上記湿熱後のドライセット試験を、従来の反応型触媒を用いたフォームで実施した場合、従来の永久圧縮歪の加速試験方法に比べ、劣化が大きく、欧州自動車メーカーの定めた規格(15%以下)に適合しない問題が生じている。
【0009】
従来の永久圧縮歪の改良方法としては、ポリオキシアルキレンポリオールの官能基数を高めたり、低分子量で多官能の架橋剤を用いて軟質ポリウレタンフォームの架橋度を高める方法が知られている(例えば、特許文献5〜7参照)。
【0010】
ポリオキシアルキレンポリオールの官能基数を高める方法は湿熱後のドライセットの改善にも有効ではあるが、ポリオールの改良は生産コストの上昇に繋がるため、工業的方法としては好ましくない。また、低分子量で多官能の架橋剤を用いて軟質ポリウレタンフォームの架橋度を高める方法は湿熱後のドライセットの改善には有効ではないことが知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【0011】
【特許文献1】特開昭46−4846号公報
【特許文献2】特開昭59−191743号公報
【特許文献3】特公昭61−31727号公報
【特許文献4】特公昭57−14762号公報
【特許文献5】特開平02−115211号公報
【特許文献6】特開平03−06862号公報
【特許文献7】特公平06−86514号公報
【非特許文献1】岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社 p.118
【非特許文献2】J.A.Rodriguez,“POLYOLS COMPATIBLE WITH NON−FUGITIVE AMINE CATALYSTS”,UTECH(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、製品中から排出されるアミンがほとんどなく、十分な永久圧縮歪性を有する軟質ポリウレタンフォーム、特に近年要求が大きくなってきている湿熱後のドライセットが改善された軟質ポリウレタンフォームの製造方法、及びそれに使用される触媒組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記問題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、軟質ポリウレタンフォーム製造の際に、特定のジグリセリンのアルキレンオキサイド付加物と特定の反応型アミン触媒を併せて使用すると、フォーム製品からの揮発性アミンがほとんど排出せず、湿熱後のドライセットを改良した軟質ポリウレタンフォーム製品を得られることを見出し本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち本発明は、以下に示すとおりの、ポリウレタンフォーム製造用の触媒組成物、及びそれを用いた軟質ポリウレタンフォームの製造方法である。
【0015】
[1]ジグリセリン1モルに対してアルキレンオキサイドを10モルより多く16モル以下付加した化合物(1)と、分子内に活性水素基を1個以上含有する第三級アミン化合物(2)を含有することを特徴とするポリウレタン樹脂製造用の触媒組成物。
【0016】
[2]第三級アミン化合物(2)が、N’−(2−ヒドロキシエチル)−N,N,N’−トリメチルービス(2−アミノエチル)エーテル、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N、N−ジメチルプロパンジアミン、N,N−ジメチルヘキサノールアミン、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’−トリメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N’−トリメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)アミン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)イソプロパノールアミン、2−アミノキヌクリジン、3−アミノキヌクリジン、4−アミノキヌクリジン、2−キヌクリジオール、3−キヌクリジノール、4−キヌクリジノール、1−(2’−ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1−(2’−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2’−ヒドロキシエチル)イミダゾール、1−(2’−ヒドロキシエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(3’−アミノプロピル)イミダゾール、1−(3’−アミノプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(3’−ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1−(3’−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノプロピル−N’−(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジメチルアミノプロピル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジメチルアミノプロピル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミン、N,N−ジメチルアミノエチル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、及びN,N−ジメチルアミノエチル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミンからなる群より選ばれることを特徴とする上記[1]に記載の触媒組成物。
【0017】
[3]第三級アミン化合物(2)が、N’−(2−ヒドロキシエチル)−N,N,N’−トリメチルービス(2−アミノエチル)エーテル、N、N−ジメチルプロパンジアミン、N,N−ジメチルヘキサノールアミン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)イソプロパノールアミン、3−アミノキヌクリジン、3−キヌクリジノール、1−(2’−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2’−ヒドロキシエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(3’−アミノプロピル)−2−メチルイミダゾール、及びN,N−ジメチルアミノプロピル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミンからなる群より選ばれることを特徴とする上記[1]に記載の触媒組成物。
【0018】
[4]化合物(1)が、アルキレンオキサイドとして、酸化エチレン、又は酸化エチレンと酸化プロピレンを用いて調製されたものであり、且つ酸化エチレンと酸化プロピレンの混合比率が、酸化エチレン/酸化プロピレン=70/30〜100/0(重量比)であることを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の触媒組成物。
【0019】
[5]化合物(1)と第三級アミン化合物(2)との混合比率が、化合物(1)/第三級アミン化合物(2)=90/10〜10/90(重量比)の範囲であることを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の触媒組成物。
【0020】
[6]ポリオールとポリイソシアネートとを、上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の触媒組成物及び発泡剤の存在下に反応させる軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【0021】
[7] 発泡剤が、水及び/又は低沸点有機化合物であることを特徴とする上記[6]に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の方法によれば、フォームから排出されるアミンがほとんどなく、更には十分な耐圧縮歪性を有した軟質ポリウレタンフォームが得られる。よって本発明の方法は、塩化ビニル樹脂の汚染抑制及び圧縮歪の改善が要求される軟質ポリウレタンフォーム製造の際に極めて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物は、ジグリセリン1モルに対してアルキレンオキサイドを10モルより多く16モル以下付加した化合物(1)[以下、化合物(1)と称する。]と、分子内に活性水素基を1個以上含有する第三級アミン化合物(2)[以下、第三級アミン化合物(2)と称する。]を含有することをその特徴とする。
【0024】
本発明において、化合物(1)の製造方法については、文献既知の方法にて容易に製造できるため、特に限定するものではないが、具体的には、ジグリセリン1モルと微量の水酸化カリウムを攪拌した溶液に、酸化エチレン、酸化プロピレン等のアルキレンオキサイドを10モル量より多く16モル量以下を加える方法が例示される。アルキレンオキサイドを0〜10モル量加えて得られた架橋剤を、本発明の方法に適用した場合、フォーム硬度は維持できるものの、圧縮歪の改善が不充分である。また、アルキレンオキサイドを16モル量より多く加えて得られた架橋剤を、本発明の方法に適用した場合には、フォーム硬度が著しく低下する問題が生じる。
【0025】
本発明の化合物(1)においては、アルキレンオキサイドとして酸化エチレンと酸化プロピレンを混合して用いることができる。酸化エチレンと酸化プロピレンの混合比率は特に限定するものではないが、酸化エチレン/酸化プロピレン=70/30〜100/0(重量比)が好ましい。酸化エチレンが多い程、フォームの通気性が上がり、圧縮歪が改善する利点があるが、硬度が低下する欠点がある。酸化プロピレンはフォーム硬度を維持する目的で最小限度加えることが望ましい。
【0026】
本発明において、第三級アミン化合物(2)としては、特に限定するものではないが、具体的には、
N’−(2−ヒドロキシエチル)−N,N,N’−トリメチルービス(2−アミノエチル)エーテル、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N、N−ジメチルプロパンジアミン、N,N−ジメチルヘキサノールアミン、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’−トリメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N’−トリメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)アミン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)イソプロパノールアミン、
2−アミノキヌクリジン、3−アミノキヌクリジン、4−アミノキヌクリジン、2−キヌクリジオール、3−キヌクリジノール、4−キヌクリジノール、
1−(2’−ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1−(2’−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2’−ヒドロキシエチル)イミダゾール、1−(2’−ヒドロキシエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(3’−アミノプロピル)イミダゾール、1−(3’−アミノプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(3’−ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1−(3’−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、
N,N−ジメチルアミノプロピル−N’−(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジメチルアミノプロピル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジメチルアミノプロピル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミン、N,N−ジメチルアミノエチル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジメチルアミノエチル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミン等が例示される。
【0027】
これらのうち、触媒活性や入手の容易さの面から、N’−(2−ヒドロキシエチル)−N,N,N’−トリメチルービス(2−アミノエチル)エーテル、N、N−ジメチルプロパンジアミン、N,N−ジメチルヘキサノールアミン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)イソプロパノールアミン、3−アミノキヌクリジン、3−キヌクリジノール、1−(2’−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2’−ヒドロキシエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(3’−アミノプロピル)−2−メチルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノプロピル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミン等が特に好ましい。
【0028】
本発明の触媒組成物のうち、化合物(1)又は第三級アミン化合物(2)をそれぞれ単独でポリウレタンフォームの製造に用いても、揮発性のアミンをほとんど排出せず、十分な耐圧縮歪性を有した軟質ポリウレタンフォームは得られないが、驚くべきことに、化合物(1)と第三級アミン化合物(2)を所定重量で混合して用いると、揮発性のアミンをほとんど排出せず、十分な耐圧縮歪性を有した軟質ポリウレタンフォームを得ることができる。
【0029】
本発明の化合物(1)を軟質ポリウレタンフォームの製造に用いる際の使用量は、使用されるポリオ−ルを100重量部としたとき、0.5〜5重量部であるが、フォーム物性維持の点から3重量部以下、圧縮歪の改良の点から1重量部以上が望ましい。
【0030】
本発明の第三級アミン化合物(2)の使用量は使用されるポリオ−ルを100重量部としたとき、0.01〜10重量部であるが、圧縮歪悪化の抑制の点から2部以下、生産性の点から0.5重量部以上が望ましい。
【0031】
本発明の触媒組成物における混合比率は、特に限定するものではないが、化合物(1)と第三級アミン化合物(2)の重量割合が、化合物(1)/第三級アミン化合物(2)=90/10〜10/90の範囲であることが望ましい。
【0032】
本発明の触媒組成物として、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、化合物(1)と第三級アミン化合物(2)以外の触媒を含有させることができる。このような触媒としては、例えば、従来公知の有機金属触媒や第3級アミン触媒等を挙げることができる。
【0033】
このような有機金属触媒としては、例えば、スタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジオレエート、スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト等が挙げられる。
【0034】
また、第3級アミン触媒としては、従来公知のものであればよく特に限定するものではないが、例えば、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチル−(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン、1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、N,N’−ジメチルピペラジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール等の第3級アミン化合物類が挙げられる。これらのうち、触媒活性の点で、トリエチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルやN,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミンが特に好ましい。
【0035】
本発明のポリウレタンフォームの製造に使用されるポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオールである。さらには含リンポリオールやハロゲン含有ポリオール等の難燃ポリオール等を併用できる。
【0036】
ポリエーテルポリオールとしては、グリセリンやトリメチロールプロパンにエチレンオキシドやプロピレンオキシドに代表されるアルキレンオキサイドの付加反応により得られるものであって、例えば、Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985年版)Hanser Publishers(ドイツ) p.42〜53に記載の方法により製造することができる。
【0037】
ポリエステルポリオールとしては、二塩基酸(主にアジピン酸)とグリコールやトリオールとの脱水縮合反応から得られるもの、更に岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社 p.117に記載されているようなナイロン製造時の廃物、トリメチロールプロパン、ペンタエリストールの廃物、フタル酸系ポリエステルの廃物、廃品を処理し誘導したポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0038】
ポリマーポリオールとしては、例えば、前記ポリエーテルポリオールとエチレン性不飽和単量体、例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等をラジカル重合触媒の存在下に反応させた、重合体ポリオールが挙げられる。
【0039】
難燃ポリオールとしては、例えば、リン酸化合物にアルキレンオキシドを付加して得られる含リンポリオール、エピクロルヒドリンやトリクロロブチレンオキシドを開環重合して得られる含ハロゲンポリオール、フェノールポリオール等が挙げられる。
【0040】
これらの内、ポリエーテルポリオールとポリマーポリオールの組み合わせが特に好ましく、このうち、ポリエーテルポリオールの平均分子量は3,000〜15,000のものが更に好ましい。
【0041】
本発明に使用されるポリイソシアネートは、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の芳香族及びこれらの異性体、多核体及びその混合体が挙げられる。TDIとその誘導体としては、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物又はTDIの末端イソシアネートプレポリマー誘導体を挙げることができる。MDIとその誘導体としては、MDIとその重合体のポリフェニル−ポリメチレンジイソシアネートの混合体、及び/又は末端イソシアネート基をもつジフェニルメタンジイソシアネート誘導体を挙げることができる。これらの内、TDI又はその誘導体とMDI又はその誘導体を混合し用いるか、MDI又はその誘導体を単独で用いると生産性が向上し特に好ましい。
【0042】
これらポリイソシアネートとポリオールの使用比率としては、特に限定されるものではないがイソシアネートインデックス(イソシアネート基/イソシアネート基と反応しうる活性水素基)で表すと、60〜130の範囲である。
【0043】
本発明のポリウレタンフォームの製造に用いられる発泡剤は、水と低沸点有機化合物である。低沸点有機化合物としては炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系の化合物である。炭化水素系としては、公知のメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等が使用できる。ハロゲン化炭化水素としては、公知のハロゲン化メタン、ハロゲン化エタン類、フッ素化炭化水素類、例えば、塩化メチレン、HCFC−141b、HFC−245fa、HFC−356mfc等が使用できる。これら発泡剤の使用においては、水と低沸点有機化合物をそれぞれ単独使用してもよいし、併用してもよい。特に好ましい発泡剤は水である。その使用量は目的とする製品の密度により変わり得るが、通常ポリオール100重量部に対して0.1重量部以上であり、好ましくは0.5〜10重量部である。
【0044】
本発明の方法において必要であれば、界面活性剤を用いることができる。本発明において使用される界面活性剤としては、従来公知の有機シリコーン系界面活性剤であり、その使用量は、ポリオール100重量部に対して0.1〜10重量部である。
【0045】
本発明の方法において、必要であれば、架橋剤又は鎖延長剤を添加することができる。架橋剤又は鎖延長剤としては、低分子量の多価アルコール(例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等)、低分子量のアミンポリオール(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等)、又はポリアミン(例えば、エチレンジアミン、キシリレンジアミン、メチレンビスオルソクロルアニリン等)を挙げることができる。これらの内、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
【0046】
本発明の方法においては、必要に応じて、着色剤、難燃剤、老化防止剤、連通化剤その他公知の添加剤等も使用できる。これらの添加剤の種類、添加量は公知の形式と手順を逸脱しないならば通常使用される範囲で十分使用することができる。
【0047】
本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法にて製造される製品は種々の用途に使用できる。具体的な用途としては、クラッシュパッド、マットレス、シート、自動車関連のシート、ヘッドレスト等が挙げられる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例、製造例、比較例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
製造例1 化合物(1)類の調製−1
200mlオートクレーブ内に、ジグリセリン30g及び水酸化カリウム0.6gを仕込み、密閉、窒素置換後、攪拌下に120℃まで昇温した。続けて酸化エチレン100gを4時間かけて耐圧容器から段階的に供給した。1時間熟成反応を行った後、冷却してキョーワード600(協和化学社製)3gと水3gを加え60℃で2時間攪拌した。次に反応液を取り出し、ろ過し、得られた溶液を60℃/20mmgHgの条件下で2時間エバポレートし、次に100℃/4mmHgの条件下で乾燥し、生成物を125g得た。JIS−K1557に準拠して測定したこの生成物の水酸基価は330mgKOHであった(ジグリセリン1モルに対し12モル酸化エチレンが付加した場合の理論値は323mgKOHである。)。以下、この生成物をDIG12EOと称する。
【0049】
製造例2 化合物(1)類の調製−2
200mlオートクレーブ内に、ジグリセリン27g及び水酸化カリウム0.6gを仕込み、密閉、窒素置換後、攪拌下に120℃まで昇温した。続けて酸化エチレン110gと酸化プロピレン12.1を4時間かけて耐圧容器から段階的に供給した。1時間熟成反応を行った後、冷却してキョーワード600(協和化学社製)3gと水3gを加え60℃で2時間攪拌した。次に反応液を取り出し、ろ過し、得られた溶液を60℃/20mmgHgの条件下で2時間エバポレートし、次に100℃/4mmHgの条件下で乾燥し、生成物を145g得た。JIS−K1557に準拠して測定したこの生成物の水酸基価は248mgKOHであった(ジグリセリン1モルに対し14モルの酸化エチレンと2モルの酸化プロピレンが付加した場合の理論値は250mgKOHである。)。以下、この生成物をDIG16PEと称する。
【0050】
実施例1〜実施例7及び比較例1〜比較例7
本発明の触媒組成物及び比較例の触媒組成物を用い軟質ポリウレタンフォームを製造した例を示す。
【0051】
ポリオールA、ポリオールB、架橋剤、水及び整泡剤を表1に示した原料配合比にてプレミックスAを調合した。プレミックスA 100.4gを300mlポリエチレンカップに取り、表2に示す本発明の触媒及び比較例の触媒を添加し20℃に温度調整した。別容器で20℃に温度調整したイソシアネート液をイソシアネートインデックス{イソシアネート基/OH基(モル比)×100)}が100となる56.2gをプレミックスAのカップの中に入れ、素早く攪拌機にて6000rpmで5秒間攪拌した。混合攪拌した混合液を40℃に温度調節した2Lのポリエチレンカップに移し発泡中の反応性を測定した。次に同じ操作及びスケールにて60℃に温度調節したモールド(内寸法、350×350×100mmのアルミ製)内の端部より混合液を入れ蓋をして発泡成形を行った。混合液を入れた時点から4分15秒後にフォームを脱型した。結果を表3及び表4に示す。
【0052】
なお、各測定項目の測定方法は以下のとおりである。
【0053】
(1)反応性の測定項目
クリームタイム:発泡開始時間、フォームが上昇開始する時間を目視にて測定
ゲルタイム:反応が進行し液状物質より、樹脂状物質に変わる時間を測定
ライズタイム:フォームの上昇が停止する時間を目視にて測定。
【0054】
(2)コア密度
2Lのポリエチレンカップにて発泡させたフォームから中心部を6×6×12cmの寸法にカットし、コア密度を求めた。
【0055】
(3)モールドコア密度
全密度52kg/mになるよう発泡させたモ−ルドフォームから中心部を21×21×6cmの寸法にカットし、コア密度を求めた。
【0056】
(4)フォーム硬度
JIS K6401−1980に準じて、65%圧縮強度を測定した。
【0057】
(5)フォームの引き裂き強度
フォームコア密度を測定したフォームからJIS K6401−1980に準じて引き裂き強度を測定した。
【0058】
(6)圧縮歪
・ドライセットA(DSC−A)
フォームコア密度を測定したフォームから5×5×2.5cmの寸法にカットし、70℃×22hr、50%圧縮の圧縮歪を測定した
・ウェットセット(WCS)
フォームコア密度を測定したフォームから5×5×2.5cmの寸法にカットし、50℃×22hr、相対湿度95%、50%圧縮の圧縮歪を測定した
・湿熱後のドライセット(HACS)
フォームコア密度を測定したフォームから5×5×2.5cmの寸法にカットし、90℃で24時間加熱し、次に90℃、相対湿度100%、200時間加熱後、70℃で24時間乾燥させたフォームを用い、70℃×22hr、50%圧縮の圧縮歪を測定した。
【0059】
(7)塩化ビニルシート汚染試験(PVC変色)
表皮を含むフォームを7×7×3cmの寸法にカットし、これを2000mlのセパラブルフラスコに仕込み、塩化ビニルシート(フォルクスワーゲン社サンバイザーシート)5×5cmを空中に吊るし、蓋を閉じ密閉し、100℃×72時間の条件で放置後、塩化ビニルシートの汚染度合いを目視にて確認し、色の変化について以下のように評価した
○:変色なし、×:赤色に変色
塩化ビニルシートは、フォーム中から揮発するアミンにより、赤色に変色するため、シートが変色するものは、フォームからアミンが排出されていることを示し、変色しない場合、フォームから排出されるアミンが殆どないといえる。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

上記表から明らかなとおり、実施例1〜実施例6は、本発明の化合物(1)に該当するDIG12EOと本発明の第三級アミン化合物(2)に該当するCatA〜CatEとを用いた例であるが、本発明のポリウレタンフォームは、3種の異なる条件の圧縮歪を全て改善し、湿熱後のドライセット値が規格の許容範囲内にある。また塩化ビニルシートを汚染しない。
【0064】
また、実施例7は、本発明の化合物(1)に該当するDIG16PEと本発明の第三級アミン化合物(2)に該当するCatAとを用いた例であるが、本発明ポリウレタンフォームは、3種の異なる条件の圧縮歪を全て改善し、湿熱後のドライセット値が規格の許容範囲内にある。また塩化ビニルシートを汚染しない。
【0065】
これらに対し、比較例1は本発明の第三級アミン化合物(2)に該当するCatAを用い本発明の化合物(1)を用いない例であるが、圧縮歪、特に湿熱後のドライセット値が規格の許容範囲外にあり、不充分である。
【0066】
比較例2及び比較例3は、本発明の化合物(1)に該当しない化合物であるDIG及びDIG2EOと本発明の第三級アミン化合物(2)に該当するCatAとを用いた例であるが、それらのポリウレタンフォームは3種の異なる条件の圧縮歪の全てが不充分である。
【0067】
比較例4は、本発明の化合物(1)に該当しない化合物であるDIG9EOと本発明の第三級アミン化合物(2)に該当するCatAとを用いた例であるが、そのポリウレタンフォームは、圧縮歪の改善が本発明の触媒組成物に比べ不充分である。
【0068】
比較例5は、本発明の第三級アミン化合物(2)に該当するCatAに汎用の架橋剤であるトリエタノールアミンを加えた例であるが、湿熱後のドライセット値が規格の許容範囲外にあり、不充分である。
【0069】
比較例6は、汎用の3級アミン触媒を用い本発明の化合物(1)を用いない例であるが、塩化ビニルシートを汚染する。
【0070】
比較例7は本発明の化合物(1)に該当するDIG12EOと汎用の反応型触媒DMEAとを用いた例であるが、3種の異なる条件の圧縮歪の全てが不充分である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジグリセリン1モルに対してアルキレンオキサイドを10モルより多く16モル以下付加した化合物(1)と、分子内に活性水素基を1個以上含有する第三級アミン化合物(2)を含有することを特徴とするポリウレタン樹脂製造用の触媒組成物。
【請求項2】
第三級アミン化合物(2)が、N’−(2−ヒドロキシエチル)−N,N,N’−トリメチルービス(2−アミノエチル)エーテル、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N、N−ジメチルプロパンジアミン、N,N−ジメチルヘキサノールアミン、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’−トリメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N’−トリメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)アミン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)イソプロパノールアミン、2−アミノキヌクリジン、3−アミノキヌクリジン、4−アミノキヌクリジン、2−キヌクリジオール、3−キヌクリジノール、4−キヌクリジノール、1−(2’−ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1−(2’−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2’−ヒドロキシエチル)イミダゾール、1−(2’−ヒドロキシエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(3’−アミノプロピル)イミダゾール、1−(3’−アミノプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(3’−ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1−(3’−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノプロピル−N’−(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジメチルアミノプロピル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジメチルアミノプロピル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミン、N,N−ジメチルアミノエチル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、及びN,N−ジメチルアミノエチル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミンからなる群より選ばれることを特徴とする請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
第三級アミン化合物(2)が、N’−(2−ヒドロキシエチル)−N,N,N’−トリメチルービス(2−アミノエチル)エーテル、N、N−ジメチルプロパンジアミン、N,N−ジメチルヘキサノールアミン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)イソプロパノールアミン、3−アミノキヌクリジン、3−キヌクリジノール、1−(2’−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2’−ヒドロキシエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(3’−アミノプロピル)−2−メチルイミダゾール、及びN,N−ジメチルアミノプロピル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミンからなる群より選ばれることを特徴とする請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項4】
化合物(1)が、アルキレンオキサイドとして、酸化エチレン、又は酸化エチレンと酸化プロピレンを用いて調製されたものであり、且つ酸化エチレンと酸化プロピレンの混合比率が、酸化エチレン/酸化プロピレン=70/30〜100/0(重量比)であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の触媒組成物。
【請求項5】
化合物(1)と第三級アミン化合物(2)との混合比率が、化合物(1)/第三級アミン化合物(2)=90/10〜10/90(重量比)の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の触媒組成物。
【請求項6】
ポリオールとポリイソシアネートとを、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の触媒組成物及び発泡剤の存在下に反応させる軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項7】
発泡剤が、水及び/又は低沸点有機化合物であることを特徴とする請求項6に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造方法。

【公開番号】特開2006−45258(P2006−45258A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224100(P2004−224100)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】