説明

ポリウレタン樹脂製造用触媒及びポリウレタン樹脂の製造方法

【課題】キュア条件温度では急速な硬化をもたらすことができ、さらに、硬化物の着色が極力無いポリウレタン樹脂製造用触媒を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表されるシクロアミジン(C)と、炭素数0〜10のメチレン基(メチレン基の水素原子は有機基で置換されていても良い)の両末端にカルボキシル基を持つ飽和脂肪族ジカルボン酸(A)との混合物(E)を含有してなり、当該混合物(E)の水溶液のpHが7.0未満であるポリウレタン樹脂製造用触媒。


{mは2〜6の整数を表し、メチレン基の水素原子は有機基で置換されていてもよい。}

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂製造用触媒及びこれを用いたポリウレタン樹脂の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、エラストマー、硬質・半硬質・軟質フォーム等のポリウレタン樹脂製造用として好適な触媒及びこの触媒を用いたエラストマー、硬質・半硬質・軟質フォーム等に好適なポリウレタン樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオールと有機ポリイソシアネート又はイソシアネートプレポリマーとを反応させることにより形成されるポリウレタン樹脂は、多彩な物性と機能をもつ材料となるため、硬質・軟質フォーム、塗料、接着剤、エラストマー、シーラント等として生活資材から建材、自動車、電子・電気関連、工業資材等の幅広い産業分野で用いられている。
ポリオールと有機ポリイソシアネート又はイソシアネートプレポリマーを混合して硬化する、二液硬化型のポリウレタン樹脂では、二液混合後に金型へ充填したり、基材に塗布したりして硬化反応を生じさせる製造方法が一般的に行なわれている。
これらポリウレタン樹脂製造用触媒としてはアミン触媒や金属触媒が通常使用されているが、触媒を使用すると硬化反応は促進されるものの、二液混合液の可使時間(ポットライフ)が短くなることから、金型内の充填不足や基材塗布前に硬化が始まる等の問題が生じ易くなる。また、金属触媒はその強い毒性のため、安全性の観点から使用が自粛される傾向にあり、代替触媒を求めるニーズが年々大きくなっている。
この二液混合液の可使時間(ポットライフ)が短くなる問題を解決するため、二液混合後の初期の反応性を抑えることにより、金型内の充填性や基材への塗布を良好に保ち、ある一定時間後に急激な硬化をもたらすことができるシクロアミジン(塩)を触媒として使用する方法が採用されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
従来、エラストマー用に使用されるポリオールと有機ポリイソシアネート又はイソシアネートプレポリマーは常温で固状または高粘度であるものが多く、通常加熱により溶融または減粘してから使用される。このように原料を高温で配合する場合に、感温性触媒としてフェノールや2−エチルヘキサン酸等の1価の弱酸でシクロアミジンをブロックしたシクロアミジン塩が知られている(特許文献1)。
これらを使用すると、直ちに反応が進行し可使時間(ポットライフ)が短くなり、金型への充填不足等の問題が生じる。一方、スルホン酸等の強酸でブロックしたシクロアミジン塩では、可使時間(ポットライフ)は長くなるが、硬化時間が長くなり、生産性の悪化や生成したポリウレタン樹脂の物性低下をもたらす。
【0004】
上記問題を解決する方法の一つとして、シクロアミジンを分子内に不飽和結合を一つ以上有する脂肪族モノカルボン酸でブロックした触媒を使用することが提案されている(特許文献3)。
しかし、不飽和結合を有する酸とシクロアミジンの塩は、経時的に着色する傾向が有る。従って、エラストマー用触媒として使用された場合、ウレタン硬化物も残存する触媒によって着色し、外観を損ねる問題が生じやすい。
シクロアミジンと飽和ジカルボン酸でブロックした触媒は、不飽和結合を有しない酸を使用することから、経時的に着色する問題は解消されている(特許文献4)。
しかし、飽和ジカルボン酸とシクロアミジンの混合物の水溶液のpHを7.0以上にしていることから、シクロアミジンが飽和ジカルボン酸に対して等モル以上の過剰になっている結果、エラストマー製造時の高温硬化反応時に、過剰のシクロアミジンが徐々に着色する結果、ウレタン硬化物も着色して外観を損ねる問題が生じやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−34215号公報
【特許文献2】特開昭60−240415号公報
【特許文献3】特許第4022684号公報
【特許文献4】特許第4147637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記問題を解決したものであり、すなわちエラストマーのような高温でポリオールと有機ポリイソシアネート等とを混合する場合においても、二液混合後の初期の反応性を抑えることにより混合液の増粘を緩やかにすることができ、キュア条件温度では急速な硬化をもたらすことができ、さらに、硬化物の着色が極力無いポリウレタン樹脂製造用触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、特定のシクロアミジンと飽和脂肪族ジカルボン酸との混合物が、上記課題を解決できることを見いだし本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明のポリウレタン樹脂製造用触媒は、一般式(1)で表されるシクロアミジン(C)と一般式(2)で表される飽和脂肪族ジカルボン酸(A)との混合物(E)を含有してなり、当該混合物(E)の水溶液のpHが7.0未満である点を要旨とする。
【化1】

{mは2〜6の整数を表し、メチレン基の水素原子は有機基で置換されていてもよい。}
【化2】

{nは0〜10の整数を表し、メチレン基の水素原子は有機基で置換されていてもよい。}
【0009】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法は、上記のポリウレタン樹脂製造用触媒とポリオールと有機ポリイソシアネート又はイソシアネートプレポリマーとを反応させてポリウレタン樹脂を得る工程を含む点を要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリウレタン樹脂製造用触媒を用いると、ポリオールと有機ポリイソシアネート又はイソシアネートプレポリマー等の原料の温度が高温の場合においても、二液混合後の初期の反応性が抑えられ可使時間(ポットライフ)が長くなり、その後、キュア条件温度では速やかに硬化できる。さらに、硬化物の着色が極力無いウレタン硬化物を得ることができる。
【0011】
本発明の一般式(1)で表されるシクロアミジン(C)と一般式(2)で表される飽和脂肪族ジカルボン酸(A)との混合物(E)は、飽和脂肪族ジカルボン酸(A)の酸の強さpKa1が2〜5の範囲内にあることから、エラストマー用では適度な可使時間(ポットライフ)を有し、キュア条件温度では、混合物(E)中の酸が解離しシクロアミジンが硬化を促進するため、速やかに硬化が起こりポリウレタン樹脂の生産性の悪化や物性低下を防ぐことができるものと考えられる。
【0012】
一般式(2)で表される飽和脂肪族ジカルボン酸(A)は分子内に不飽和結合や芳香族環を含まないため、経時的着色の原因物質とはならない。また、混合物(E)の水溶液のpHが7.0未満となるようにすることで、塩を形成していない過剰のシクロアミジンが存在しないことから、エラストマー製造時の高温硬化反応時でも、過剰のシクロアミジンが徐々に着色する問題が無い。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<一般式(1)で表されるシクロアミジン(C)と一般式(2)で表される飽和脂肪族ジカルボン酸(A)との混合物(E)>
一般式(1)において、mは、2〜6の整数を表し、好ましくは3〜5の整数である。
メチレン基の水素原子と置換してもよい有機基としては、炭素数1〜6のアルキル基(メチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル及びn−ヘキシル等)、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基(ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシイソプロピル、3−ヒドロキシ−t−ブチル及び6−ヒドロキシヘキシル等)及び炭素数2〜12のジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジエチルアミノ、ジイソプロピルアミノ、t−ブチルメチルアミノ及びジn−ヘキシルアミノ等)等が挙げられる。
【0014】
一般式(1)で表されるシクロアミジン(C)としては、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−ノネン−5(DBN)、1,5−ジアザビシクロ[4,4,0]−デセン−5、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−ウンデセン−7(DBU;「DBU」はサンアプロ株式会社の登録商標である。)、5−ヒドロキシプロピル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−ウンデセン−7及び5−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−ウンデセン−7等が挙げられる。これらのうち、DBN及びDBUが好ましい。
【0015】
一般式(2)において、nは、0〜10の整数を表し、好ましくは1〜7の整数である。
メチレン基の水素原子と置換してもよい有機基としては、炭素数1〜6のアルキル基(メチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル及びn−ヘキシル等)、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基(ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシイソプロピル、3−ヒドロキシ−t−ブチル及び6−ヒドロキシヘキシル等)等が挙げられる。
【0016】
一般式(2)で表される飽和脂肪族ジカルボン酸(A)としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルマロン酸、グルタル酸、エチルマロン酸、メチルコハク酸、アジピン酸、プロピルマロン酸、エチルコハク酸、ジメチルコハク酸、ピメリン酸、ブチルマロン酸、ジエチルマロン酸、プロピルコハク酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等が挙げられる。これらのうち、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸が好ましい。
上記(A)は単独で用いる事はもちろん、2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
本発明において、混合物(E)は、一般式(1)で表されるシクロアミジン(C)と一般式(2)で表される飽和脂肪族ジカルボン酸(A)との塩を形成するが、(A)が過剰の場合は、当該塩と(A)の混合物となる。
本発明において、混合物(E)の水溶液のpHは7.0未満である必要がある。当該混合物(E)の水溶液のpHが7.0以上となると、酸による塩形成が不十分となり、過剰のシクロアミジンによるウレタン硬化樹脂の着色の原因となると考えられる。pHの下限は特に限度はないが、(A)の含有量が多すぎると、過剰の酸により、ウレタン樹脂の硬化不良を引き起こす恐れがある。
混合物(E)の水溶液のpHが7.0未満になるようにするには、混合物(E)中の(A)の含有量で調整することができる。
ポリウレタン処方において所望とする反応性を得るために、(A)の含有量は適宜調節してもよい。
【0018】
混合物(E)としては、DBNとマロン酸の混合物、DBNとコハク酸の混合物、DBNとグルタル酸の混合物、DBNとアジピン酸の混合物、DBNとアゼライン酸の混合物等が好ましく例示できる。
【0019】
本発明の触媒は、公知の溶媒を含有してもよい。
溶媒としては、水及びアルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール及びブタンジオール等)が挙げられる。
溶媒を含有する場合、この含有量は適宜決定でき、たとえば、混合物(E)の重量に基づいて5〜1900重量%である。
【0020】
本発明の触媒は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その他の触媒(有機金属触媒やアミン触媒等)を含有してもよい。
有機金属触媒としては、公知の有機金属触媒等が含まれ、カルボン酸カリウム(2−エチルヘキサン酸カリウム及び酢酸カリウム等)、有機スズ触媒(スタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジラウレート、スタナスジオレエート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート及びジオクチル錫ジラウレート等)、有機ビスマス触媒(オクチル酸ビスマス及びナフテン酸ビスマス等)及び有機コバルト触媒(ナフテン酸コバルト等)等が挙げられる。
【0021】
アミン触媒としては、公知のアミン触媒等が含まれ、アミン(トリエチレンジアミン、2-メチルトリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ジモルホリノジエチルアミノエーテル、ジメチルエタノールアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル及びジメチルイソプロパノールアミン、1,2−ジメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、1,2,4,5−テトラメチルイミダゾール、1−メチル−2−イソプロピルイミダゾール、1−メチル−2−フェニルイミダゾール、1−(n−ブチル)−2−メチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、イミダゾール及び2−メチルイミダゾール、第4級アンモニウム塩(水酸化テトラメチルアンモニウム塩、ヒドロキシプロピルトリメチル第4級アンモニウム2−エチルヘキサン酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムギ酸塩及びテトラメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩等)等が挙げられる。
【0022】
その他の触媒を含有する場合、その他の触媒の使用量(重量%)は、混合物(E)の重量に基づいて、5〜1900重量%が好ましく、さらに好ましくは20〜900重量%である。
【0023】
混合物(E)は、一般式(1)で表されるシクロアミジン(C)と一般式(2)で表される飽和脂肪族ジカルボン酸(A)を混合すれば得られる。混合する際、溶媒に溶解して混合してもよい。溶媒及びその使用量は前記の通りである。
【0024】
本発明の触媒は、エラストマー、硬質・半硬質・軟質フォーム等のポリウレタン樹脂の製造用として適している。
【0025】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法は、本発明のポリウレタン樹脂製造用触媒とポリオールと有機ポリイソシアネート又はイソシアネートプレポリマーとを反応させてポリウレタン樹脂を得る工程を含む。
【0026】
本発明の触媒{他の触媒と併用の場合は、混合物(E)}の使用量(重量%)は、ポリオールの重量に基づいて、0.0001〜20重量%となる量が好ましく、さらに好ましくは0.001〜10重量%となる量、特に好ましくは0.01〜5重量%となる量である。
【0027】
ポリオールとしては特に限定されず、公知のポリオール等が使用でき、ポリオキシアルキレンエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アミンポリオール、重合体ポリオール、ポリブタジエンポリオール、ひまし油系ポリオール、アクリルポリオール及びこれらの混合物等が含まれる。
【0028】
イソシアネートとしては、公知のイソシアネート等が使用でき、炭素数(イソシアネート基中の炭素原子を除く、以下同様)6〜20の芳香族ポリイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート、炭素数8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネート、これらの変性体(ウレタン変性、カルボジイミド変性、アロファネート変性、ウレア変性、ビューレット変性、ウレトジオン変性、ウレトイミン変性、イソシアヌレート変性及びオキサゾリドン変性等)及びこれらの混合物等が含まれる。
【0029】
イソシアネートプレポリマーとしては、前述のポリオールと有機ポリイソシアネートを反応させることにより得られるものが挙げられる。
【0030】
上記イソシアネートプレポリマーに対して、更に架橋剤を反応させることにより、ポリウレタンエラストマーが得られる。
【0031】
架橋剤としては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の低分子ジオール、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミン及びこれらの混合物等が含まれる。
【0032】
イソシアネートインデックスは特に限定するものではないが、50〜800が好ましく、さらに好ましくは70〜400である。この範囲であると、樹脂強度が良好であり、未反応のイソシアナト基が残存するおそれも減少する。
【0033】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法において、ポリウレタン樹脂がポリウレタン発泡体である場合は、発泡剤の存在下で、ポリウレタン樹脂製造用触媒とポリオールと有機ポリイソシアネート又はイソシアネートプレポリマーとを反応させてポリウレタン発泡体を得る工程を含む。
発泡剤としては、水及び揮発性発泡剤を用いることができる。
揮発性発泡剤としては、公知の揮発性発泡剤等が使用でき、フロン(水素原子含有ハロゲン化炭化水素){たとえば、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)}、ハイドロフルオロエーテル{たとえば、HFE−254pc}、ハロゲン化炭化水素{たとえば、メチレンクロライド}、低沸点炭化水素{たとえば、プロパン、ブタン、ペンタン、シクロペンタン}、炭酸ガス及びこれらの混合物等が挙げられる。
本発明の触媒は、これらの発泡剤のうち特に水に対して他の触媒では得られない効果を発揮する。
【0034】
発泡剤の使用量は製造するポリウレタンフォームの密度やフォーム物性に応じて適宜決定される。たとえば、得られるポリウレタンフォームの密度(kg/m)が、5〜200(好ましくは10〜100)となるように決定する。
【0035】
本発明の製造方法において、発泡剤を使用しない塗料、接着剤、エラストマー、シーラント等を製造する場合は、系中に水分が存在すると反応の際に発泡現象が起きるおそれがあるため、水分を除去することが望ましい。水分の除去の際にはポリオールやプレポリマー等の原料について、加熱真空脱水を行ったり、モレキュラーシーブやゼオライト等を系中に添加することが望ましい。
【0036】
ポリウレタン樹脂の製造において、必要により、公知の各種添加剤{架橋剤、鎖延長剤、整泡剤、難燃剤、減粘剤、溶剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤,老化防止剤、着色剤(染料,顔料)、反応遅延剤及び充填剤等}等を配合することができる。これらの各種添加剤を使用する場合、これらの添加量は、本発明の趣旨を逸脱しない限りそれぞれの機能を発揮すればよく、通常の添加量である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例、比較例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0038】
本発明の触媒と従来の触媒を調整した例を以下に示す。
【0039】
<実施例1>
ガラス製丸底フラスコに所定量のDBN及び溶剤として1,4−ブタンジオールをとり攪拌しながら、これに飽和脂肪族ジカルボン酸(A)として所定量のマロン酸を徐々に加えた後、攪拌混合した。完全に溶解するまで攪拌混合を行い、本発明の触媒DBNとマロン酸の混合物(1)を得た。
【0040】
<実施例2>
DBNと反応させる飽和脂肪族ジカルボン酸(A)をコハク酸に変えた他は実施例1と同様にして、本発明の触媒DBNとコハク酸の混合物(2)を得た。
【0041】
<実施例3>
DBNと反応させる飽和脂肪族ジカルボン酸(A)をグルタル酸に変えた他は実施例1と同様にして、本発明の触媒DBNとグルタル酸の混合物(3)を得た。
【0042】
<実施例4>
DBNと反応させる飽和脂肪族ジカルボン酸(A)をアジピン酸に変えた他は実施例1と同様にして、本発明の触媒DBNとアジピン酸の混合物(4)を得た。
【0043】
<実施例5>
DBNと反応させる飽和脂肪族ジカルボン酸(A)をアゼライン酸に変えた他は実施例1と同様にして、本発明の触媒DBNとアゼライン酸の混合物(5)を得た。
【0044】
<比較例1>
ガラス製丸底フラスコに所定量のDBN及び溶剤として1,4−ブタンジオールをとり攪拌しながら、これに1価の酸として所定量のフェノールを徐々に滴下した後、攪拌混合した。均一になるまで攪拌混合を行い、DBNとフェノールの混合物(H1)を得た。
【0045】
<比較例2>
DBNと反応させる1価の酸を2−エチルヘキサン酸に変えた他は比較例1と同様にして、DBNと2−エチルヘキサン酸の混合物(H2)を得た。
【0046】
<比較例3>
DBNと反応させる1価の酸をメタクリル酸に変えた他は比較例1と同様にして、DBNとメタクリル酸の混合物(H3)を得た。
【0047】
<比較例4>
ガラス製丸底フラスコに所定量のDBN及び溶剤として1,4−ブタンジオールをとり攪拌しながら、これに飽和脂肪族ジカルボン酸(A)として所定量のマロン酸を徐々に加えた後、攪拌混合した。完全に溶解するまで攪拌混合を行い、DBNとマロン酸の混合物(H4)を得た。
【0048】
<比較例5>
従来の重金属触媒として、有機錫触媒(ジブチル錫ジラウレート)を使用した。
【0049】
実施例1〜5及び比較例1〜5で得た触媒の組成、触媒記号、及びそれら触媒を用いて、表1に示す原料の配合により、ポリウレタンエラストマーを調製し、反応性(ポットライフ及び硬化性)、着色の有無を評価した。これらの結果を表2、表3及び図1に示した。
【0050】
【表1】

【0051】
注)
イソシアネートプレポリマー:ポリエステルポリオールを主成分とする、NCO含量6.3%のイソシアネートプレポリマー
架橋剤:1,4−ブタンジオール/トリメチロールプロパン=85/15(質量比)混合物
評価試料(触媒):触媒純分が300ppmとなるようにした。有機錫触媒については、触媒純分が5ppm、10ppm、または20ppmとなるようにした。
【0052】
<ポットライフ>
所定量の評価試料(触媒)を常温の架橋剤(硬化剤)に加え攪拌混合する。そこへ、70℃に温調したイソシアネートプレポリマーを加え、攪拌混合する。混合物の粘度をB型粘度計(No.4ローター、20rpm)で測定し、粘度が30,000mPa・sを超えた時間をポットライフとした。
【0053】
<硬化性>
所定量の評価試料(触媒)を常温の架橋剤(硬化剤)に加え攪拌混合する。そこへ、70℃に温調したイソシアネートプレポリマーを加え、攪拌混合する。混合物を140℃に調節したゲル化試験機の熱板上に約0.8g載せる。表面の糸引きが無くなり、脱型できる時間を硬化時間とした。硬化時間が短いほど、硬化性に優れることを意味する。
【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
表2、表3の結果から明らかなように、本発明の触媒は従来のシクロアミジン(塩)に比べ、水を発泡剤として使用した場合でも、モールド内の充填性を良好に保ちながら硬化を促進させることできた。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のポリウレタン樹脂製造用触媒は硬質・半硬質・軟質フォーム等のポリウレタン樹脂製造用として好適に使用される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるシクロアミジン(C)と一般式(2)で表される飽和脂肪族ジカルボン酸(A)との混合物(E)を含有してなり、当該混合物(E)の水溶液のpHが7.0未満であるポリウレタン樹脂製造用触媒。
【化1】

{mは2〜6の整数を表し、メチレン基の水素原子は有機基で置換されていてもよい。}
【化2】

{nは0〜10の整数を表し、メチレン基の水素原子は有機基で置換されていてもよい。}
【請求項2】
シクロアミジン(C)が、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7又は1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5である請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
飽和脂肪族ジカルボン酸(A)が、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸である請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒とポリオールと有機ポリイソシアネート又はイソシアネートプレポリマーとを反応させてポリウレタン樹脂を得る工程を含むポリウレタン樹脂の製造方法。


【公開番号】特開2012−72249(P2012−72249A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217289(P2010−217289)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000106139)サンアプロ株式会社 (32)
【Fターム(参考)】