説明

ポリウレタン樹脂

【課題】
本発明は、硬化後の物性が低モジュラス、高伸張である硬化性組成物に好適に使用でき、かつ優れた接着性、物性、ハンドリング性及び貯蔵安定性を有する無溶剤型ポリウレタン樹脂、及び容易かつ安価に該ポリウレタン樹脂を得る製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
平均末端水酸基数が1.3〜2.1である、モノオール及びポリオールの混合物とポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタンプレポリマー、及び分子内に架橋性シリル基とイミノ基及びアミノ基を有する化合物を反応させることによって得られるポリウレタン樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリウレタン樹脂、詳しくは、低モジュラス、高伸張の物性を有する硬化性組成物に好適に使用することができ、かつ、優れた接着性、物性、ハンドリング性及び貯蔵安定性を有する無溶剤型ポリウレタン樹脂及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分子中にアミノ基を有するシラン化合物を末端に付加したウレタンプレポリマーから製造されるポリウレタン樹脂は、分子鎖中にウレタン結合と尿素結合を有することから、優れた物性、例えば伸びおよび強靱性を有することが知られている(特許文献1及び2)。しかしながら、上記のポリウレタン樹脂は、プレポリマー中に残存する第2級アミノ基によりプレポリマーがアルカリ性を呈するため、アルコキシシリル基の加水分解が進行することによって、ゲル化や増粘が生じ、貯蔵安定性が乏しいといった問題があった。
【0003】
そこで、アルカリ性を呈するアミノ基を消去する方法として、α−β−不飽和カルボニル化合物へアミノ基を有するシラン化合物を付加させてアルコキシシラン化合物とした後、これをウレタンプレポリマーに付加させる方法が提案されている(特許文献3)。しかしながら、上記の方法は、低モジュラス、高伸張になるように調整すると樹脂の高粘度化及びハンドリング性の悪化が生じ、しかも工程が複雑であり、高コストであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平03−047825号公報
【特許文献2】特開平03−157424号公報
【特許文献3】特開平2000−169544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、硬化後の物性が低モジュラス、高伸張である硬化性組成物に好適に使用することができ、かつ良好な接着性、物性、ハンドリング性及び貯蔵安定性を有する無溶剤型ポリウレタン樹脂、及び容易かつ安価に該ポリウレタン樹脂を得る製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、平均末端水酸基数が1.3〜2.1である、モノオール及びポリオールの混合物とポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタンプレポリマー、及び分子内に架橋性シリル基とイミノ基及びアミノ基を有する化合物を反応させることによって得られるポリウレタン樹脂によって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明には、以下の好適な実施態様が含まれる。
[1](1)(a)平均末端水酸基数が1.3〜2.1である、モノオール及びポリオールの混合物、及び
(b)ポリイソシアネート
を反応させて得られるウレタンプレポリマー、及び
(2)以下の(式1):
(RO)−SiR3−n−R−NH−R−NH (式1)
(式中、
Rは、メチル基またはエチル基を表し、
は、メチル基またはエチル基を表し、
は、炭素数2〜10の炭化水素基を表し、
は、炭素数2〜10の炭化水素基を表す)
で示される分子内に架橋性シリル基とイミノ基及びアミノ基を有する化合物
を反応させることによって得られるポリウレタン樹脂。
[2] ポリオールの数平均分子量(Mn)は500〜30000である、[1]に記載のポリウレタン樹脂。
[3] ポリオールはポリオキシプロピレンジオールである、[1]または[2]に記載のポリウレタン樹脂。
[4] モノオール及びポリオールの混合物(a)とジイソシアネート(b)との反応をNCO/OHの当量比が1.6〜2.5の範囲内で行う、[1]〜[3]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂。
[5] 前記プレポリマーと(式1)で示される化合物との反応を、NCO/NHの当量比が0.6〜1.2の範囲内で行う、[1]〜[4]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂。
[6] (1)(a)平均末端水酸基数が1.3〜2.1である、モノオール及びポリオールの混合物、及び
(b)ポリイソシアネート
を反応させて得られるウレタンプレポリマー、及び
(2)以下の(式1):
(RO)−SiR3−n−R−NH−R−NH (式1)
(式中、
Rは、メチル基またはエチル基を表し、
は、メチル基またはエチル基を表し、
は、炭素数2〜10の炭化水素基を表し、
は、炭素数2〜10の炭化水素基を表す)
で示される分子内に架橋性シリル基とイミノ基及びアミノ基を有する化合物
を反応させることを特徴とする、ポリウレタン樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリウレタン樹脂は、優れた接着性、物性、ハンドリング性及び貯蔵安定性を有するので接着剤として好適に用いることができる。また、該ポリウレタン樹脂は、低い粘度を有するので、溶剤を用いずに好適に接着剤として使用することができる。また、本発明の製造方法によれば、アミノ基を不活性化させる工程が不要のため、上記ポリウレタン樹脂を安価かつ簡単に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明は、
(1)(a)平均末端水酸基数が1.3〜2.1である、モノオール及びポリオールの混合物、及び
(b)ポリイソシアネート
を反応させて得られるウレタンプレポリマー、及び
(2)以下の(式1):
(RO)−SiR3−n−R−NH−R−NH (式1)
(式中、
Rは、メチル基またはエチル基を表し、
は、メチル基またはエチル基を表し、
は、炭素数2〜10の炭化水素基を表し、
は、炭素数2〜10の炭化水素基を表す)
で示される分子内に架橋性シリル基とイミノ基及びアミノ基を有する化合物
を反応させることによって得られるポリウレタン樹脂である。
【0009】
上記モノオールとポリオールの混合物(a)は、物性、安定性の点で、平均末端水酸基数が1.3〜2.1である。
本発明においては、平均末端水酸基は、JIS K 1557−1:2007に従い測定した。
本発明においては、上記モノオールとポリオールの混合物(a)は、物性と安定性の点から、該混合物(a)全量を基準として、好適には20重量%〜80重量%、より好適には35重量%〜65重量%のモノオールと、好適には20重量%〜80重量%、より好適には35重量%〜65重量%のポリオールとを混合させることによって得ることができる。
【0010】
上記モノオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレンモノオール、ポリエステルモノオール、ポリエーテル・エステルモノオール、高級飽和モノオール、エチレン性不飽和二重結合を有するモノオール等が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用してよい。
【0011】
上記ポリオキシアルキレンモノオールとしては、例えば、活性水素を1個含有するアルキル化合物等を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキサイドを開環付加重合させた、分子内に水酸基を1個含有する高分子量のポリオキシアルキレン系モノオールが挙げられる。
上記ポリエステルモノオールとしては、既知のポリエステルポリオールの末端水酸基のアルキル化変性物、モノヒドロキシ化合物を開始剤として環状ラクトン化合物を開環付加共重合反応或いはエステル化反応させて得られるラクトン系ポリエステルモノオール、多価アルコールと飽和脂肪酸、または(メタ)アクリル酸、桂皮酸あるいは炭素数10以上の高級不飽和脂肪酸であるオレイン酸、リノール酸、リノレン酸等のエチレン性不飽和二重結合を有するカルボン酸とから得られるエステルモノオール等が挙げられる。
上記ポリエーテル・エステルモノオールとしては、脂肪酸エステルモノオールに前記(モノ)アルキレンオキサイドを付加重合させた、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルモノオール等が挙げられる。
なかでも、汎用性、安全性の点から、ポリオキシアルキレンモノオール、特にポリオキシプロピレンモノオールが好ましい。
上記モノオールの市販品の例としては、例えば、旭硝子株式会社製PML−S1006等が挙げられる。
【0012】
上記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ショ糖等の多価アルコールにプロピレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドとエチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオール類;エチレングリコール、プロピレングリコールおよびこれらのオリゴグリコール類;ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール類;ポリカプロラクトンポリオール類;ポリエチレンアジペートのようなポリエステルポリオール類;ポリブタジエンポリオール類;ヒマシ油のようなヒドロキシル基を有する高級脂肪酸エステル類;ポリエーテルポリオール類またはポリエステルポリオール類にビニルモノマーをグラフト化したポリマーポリオール類等が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用してよい。
【0013】
上記ポリオールは、プロピレンオキサイド、若しくはプロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドの付加物としてのポリオキシアルキレンポリオールであると、作業性、硬化性、物性の観点から好適である。特に、上記ポリオールとして、プロピレンオキサイドの付加物としてのポリオキシアルキレンポリオール、即ちポリオキシプロピレンポリオール、特にポリオキシプロピレンジオールを使用するのが、実用的で好ましい。
これらのポリオールは、従来既知の方法によって製造でき、具体的には、特許第3076032号公報に記載された方法を例示できる。
上記ポリオキシアルキレンポリオールの市販品の例としては、例えば、旭硝子株式会社製PML−4011F、PML−4013F等が挙げられる。
【0014】
本発明においては、上記モノオールの数平均分子量(Mn)は、コストや粘度の観点から、好適には500以上、より好適には1000以上であってよい。また、上記モノオールの数平均分子量(Mn)は、粘度の観点から、好適には25000以下、より好適には10000以下であってよい。
上記ポリオールの数平均分子量(Mn)は、物性の点から、好適には500以上、より好適には1000以上であってよい。また、上記ポリオールの数平均分子量(Mn)は、粘度の観点から、好適には30000以下、より好適には20000以下であってよい。
ここで、本発明における数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値である。
【0015】
また、本発明においては、ポリイソシアネート(b)を上記モノオール及びポリオールの混合物(a)と反応させる。
上記ポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート(トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネートなど)、脂環族ポリイソシアネート(ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、水添キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなど)、脂肪族ポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなど)等が挙げられ、中でも、黄変性の点から、脂肪族および脂環族ポリイソシアネートが好適である。
上記ポリイソシアネートの市販品の例としては、例えば、バイエル社製デスモジュールI(IPDI)、デスモジュールH(HDI)等が挙げられる。
【0016】
本発明においては、モノオール及びポリオールの混合物(a)とポリイソシアネート(b)とを、NCO/OHの当量比が、好適には1.6〜2.5、より好適には1.8〜2.2となるように反応させる。上記混合物(a)とポリイソシアネート(b)を上記範囲内で反応させることは、物性、安定性の点で有利である。
該反応は、必要に応じて、適当な反応触媒(例えば、ジブチル錫ジラウレート等の有機錫系触媒、オクチル酸ビスマス等のビスマス系触媒、1,4−ジアザ[2.2.2]ビシクロオクタン等の三級アミン系触媒)の存在下、通常、常温〜90℃(例えば60〜90℃)で1〜48時間の条件で行うことができる。
上記ウレタンプレポリマー(1)は、末端にイソシアネート基を含むプレポリマー(以下、末端NCOプレポリマーと称する)であり、その末端NCO含有量は、プレポリマーの貯蔵安定性、硬化物の柔軟性の点から、好適には0.2〜6.0重量%、より好適には0.4〜4.5重量%である。
また、上記末端NCOプレポリマーの数平均分子量は、通常、500〜30000であり、ポリウレタン樹脂のハンドリング性の点から、好適には1000〜20000である。
【0017】
本発明のポリウレタン樹脂は、上記ウレタンプレポリマー(1)と、下記の(式1):
(RO)−SiR3−n−R−NH−R−NH (式1)
(式中、
Rは、メチル基またはエチル基、好適にはメチル基を表し、
は、メチル基またはエチル基、好適にはメチル基を表し、
は、炭素数2〜10の炭化水素基、好適にはアルキレン基を表し、
は、炭素数2〜10の炭化水素基、好適にはアルキレン基を表す)
で示される化合物(2)とを反応させることにより製造することができる。
上記(式1)で示される化合物としては、アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルトリエトキシシランなどが挙げられ、中でも、物性の点で、アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルトリメトキシシランが好適である。
上記(式1)で示される化合物の市販品の例としては、例えば、信越化学株式会社製、KBM−602、KBM−603等が挙げられる。
【0018】
本発明のポリウレタン樹脂は、上記ウレタンプレポリマー(1)と上記(式1)で示される化合物(2)を、NCO/NHの当量比が、好適には0.6〜1.2、より好適には1.0〜1.2となるように反応させて得ることができる。上記ウレタンプレポリマー(1)と上記(式1)で示される化合物とを上記範囲内で反応させることは、安定性の点で有利である。
【0019】
本発明のポリウレタン樹脂は、必要に応じて通常の添加成分、例えば充填剤、可塑剤、接着性付与剤、チキソ性付与剤、老化防止剤、吸水剤、タレ防止剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、接着付与剤および硬化触媒等と混合して、接着剤、シーリング材、エラストマー材料(ウレタン系塗膜防水材、ウレタン系外壁塗装材、ウレタン系塗り床材、ウレタン系電線被覆材、ウレタン系エラストマー成型材)などに用い得る硬化性組成物とすることができる。
【0020】
上記充填剤としては、重質炭酸カルシウム、脂肪酸処理炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪藻土、焼成クレー、クレーや、ガラスビーズ、シラスバルーン、ガラスバルーン、シリカバルーン、プラスチックバルーン、粉体コーティングプラスチックバルーンなどのバルーン類、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、水添ヒマシ油、石綿、ガラス繊維などが挙げられ、中でも、重質炭酸カルシウムが好適である。本発明のポリウレタン樹脂を硬化性組成物とする場合、充填剤は、該硬化性組成物全量を基準として、好適には0〜70重量%含有させればよい。
【0021】
上記可塑剤としては、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタレート;アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル;ペンタエリスリトールエステルなどのグリコールエステル類;ジオクチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのホスフェート;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジルなどのエポキシ可塑剤;塩素化パラフィン等が挙げられ、中でも、フタル酸ジイソノニルが好適である。本発明のポリウレタン樹脂を硬化性組成物とする場合、可塑剤は、該硬化性組成物全量を基準として、好適には0〜70重量%含有させればよい。
【0022】
上記接着性付与剤としては、N−(β−アミノエチル)−N'−(γ−トリメトキシシリルプロピル)−エチレンジアミン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノアルコキシシラン;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシアルコキシシラン等が挙げられ、中でも、アミノシラン化合物が好適である。本発明のポリウレタン樹脂を硬化性組成物とする場合、接着性付与剤は、該硬化性組成物全量を基準として、好適には0〜10重量%含有させればよい。
【0023】
硬化触媒としては、有機錫化合物、例えば、オクチル酸錫、ナフテン酸錫、ステアリン酸錫、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、ジブチル錫ビストリエトキシシリケート、ジブチル錫ジオレイルマレート、ジブチル錫ジアセテート、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシカルボニル−ジスタノキサン、ジブチル錫オキシビスエトキシシリケート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物、ジブチル錫オキサイドとマレイン酸ジエステルとの反応物、ジブチル錫ジアセチルアセトナートなどが挙げられる。その他の有機金属化合物としては、ビスマス、バリウム、カルシウム、インジウム、チタン、ジルコニウム、カルシウム、亜鉛、鉄、コバルト、鉛のカルボン酸(例えば、オクチル酸)塩など、例えば、オクチル酸ビスマス、オクチル酸カルシウムなどが挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0024】
本発明のポリウレタン樹脂を含有する硬化性組成物は、上記の各成分から構成され、これらの成分を、例えば、高速攪拌混合機、パールミルなどを用いて混合することによって製造することができる。
上記硬化性組成物は、ポリウレタン樹脂および前記配合成分を一括混合した一液型、あるいはポリウレタン樹脂を含有する基剤と、硬化触媒を含有する硬化剤の二液型、またはさらに着色剤と可塑剤等からなるトナーを別の一成分とした三液型として使用し得る。
また、上記硬化性組成物は、二液型とした場合、上記基剤と上記硬化剤を、好適には100:0.5〜20、より好適には100:1〜15、さらに好適には100:5〜10の範囲から選択される少なくとも1つの重量比で計量混合し、硬化させて使用することができる。
【実施例】
【0025】
以下、次に実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない
【0026】
[ポリウレタン樹脂の調製]
実施例1
数平均分子量5000のポリオキシプロピレンモノオール(旭硝子株式会社製PML−S−1005)458gと、数平均分子量13000のポリオキシプロピレンジオール(旭硝子ウレタン株式会社製PML−4013)462gと、イソホロンジイソシアネート(住化バイエル製デスモジュールI)53gとを混合した。該混合物を90℃で24時間反応させて、ポリウレタンプレポリマーを得た。
該プレポリマー515gにアミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学株式会社製KBM−602)21gを投入し、30℃で30分間撹拌した。次いで、該プレポリマーに7.3gのアミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学株式会社製KBM−902)及び0.3gのメタノールを投入し、30℃で30分間撹拌した後、ポリウレタン樹脂を得た。
【0027】
実施例2
数平均分子量5000のポリオキシプロピレンモノオール(旭硝子株式会社製PML−S−1005)458gと、数平均分子量13000のポリオキシプロピレンジオール(旭硝子ウレタン株式会社製PML−4013)462gと、イソホロンジイソシアネート(住化バイエル製デスモジュールI)53gとを混合した。該混合物を90℃で24時間反応させて、ポリウレタンプレポリマーを得た。
該プレポリマー515gにアミノエチルアミノプロピルメチルトリメトキシシラン(信越化学株式会社製KBM−603)21gを投入し、30℃で30分間撹拌した。次いで、該プレポリマーに7.3gのアミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学株式会社製KBM−902)および0.3gのメタノールを投入し、30℃で30分間撹拌した後、ポリウレタン樹脂を得た。
【0028】
比較例1
数平均分子量10000のポリオキシプロピレンモノオール(旭硝子株式会社製PML−4011)500gとイソホロンジイソシアネート(住化バイエルウレタン製デスモジュールI)とをNCO/OHの当量比=2.0で90℃42時間反応させて、ポリウレタンプレポリマーを得た。
該プレポリマー444gにアミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学株式会社製KBM−602)51.3gを投入した。アクリル酸2エチルヘキシル91.5gを50℃10日撹拌後、ポリウレタン樹脂を得た。
【0029】
比較例2
数平均分子量10000のポリオキシプロピレンモノオール(旭硝子株式会社製PML−4011)210gとイソホロンジイソシアネート(住化バイエルウレタン製デスモジュールI)とをNCO/OHの当量比=2.0で90℃42時間反応させて、20℃での粘度20000mPa・sを有するポリウレタンプレポリマーを得た。
該プレポリマー104gにアミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学株式会社製KBM−602)8gを投入した。30℃30分間撹拌後、高粘度を有する撹拌不可能なポリウレタン樹脂を得た。
【0030】
[2成分型硬化性組成物の調製]
実施例3及び4並びに比較例3
基剤
表1に示す重量の配合資材を、加熱及び減圧装置付きの混合撹拌機に仕込み、30分間撹拌した。次いで、60℃で30分混合撹拌し、真空減圧下20分間撹拌混合し、基剤を得た。
硬化剤
表1に示す重量の硬化触媒、炭酸カルシウムを、室温にて混合し、10分間混合撹拌し、硬化剤を得た。
上記のように調製した基剤と硬化剤を100:10(重量比)で混合して、硬化性組成物を得た。
【0031】
【表1】

【0032】
(注1)松本油脂株式会社製、平均粒径60μm、Tg140℃
(注2)重質炭酸カルシウム、白石カルシウム株式会社製「ホワイトンSB」、平均粒径3.7μm
(注3)丸尾カルシウム株式会社製「カルファイン500」、一次粒子系0.05μm、BET比表面積17m/g
(注4)DINP、新日本理化株式会社製「DINP」
(注5)ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、チバ社製「tinuvin123」
(注6)株式会社アデカ製「AO−60P」
(注7)城北化学工業株式会社製「JF79」
(注8)2価錫系触媒、日東化成株式会社製「U−28」
(注9)4価錫系触媒、日東化成株式会社製「C−501」
(注10)アミン系触媒、日油株式会社製「アミンBB」
【0033】
上記のように調製した各ポリウレタン樹脂および硬化性組成物について、以下の性能試験を行った。その結果を表2および表3に示す。
【0034】
[性能試験方法]
1.粘度
上記のように調製したポリウレタン樹脂の粘度を、回転式粘度計(Brookfield社製デジタル粘度計)を用いて20℃で測定した。
【0035】
2.貯蔵安定性
上記のように調製したポリウレタン樹脂の貯蔵安定性を、恒温恒湿槽において35℃×90%RHで24時間観察した。
【0036】
3.物性評価
JIS H 4000に規定されるA5052Pアルミニウム板(50×50×5mm)にプライマー(商品名:プライマーUS−3:サンスター技研株式会社製)を塗布し、上記のように調製した2成分型硬化性組成物を打設する。養生(条件:20℃×7日+50℃×7日)後、JIS A 1439 5.20「引張接着性試験」(2004)に従い、初期養生後(20℃×7日+50℃×7日)、50%引張応力[N/mm]、最大引張応力[N/mm]および最大荷重時の伸び率[%]を測定した。
【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

【0039】
以上の結果において、実施例1及び2において製造した本発明によるポリウレタン樹脂は、粘度が50,000〜70,000mPa・sであるのに対し、比較例1及び2で製造した本発明によらないポリウレタン樹脂は粘度が200,000以上である。従って、本発明によるポリウレタン樹脂は、ハンドリング性に優れていることがわかる。また、実施例1及び2において製造した本発明によるポリウレタン樹脂は、貯蔵安定性が良好であるのに対し、比較例2において製造したポリウレタン樹脂は貯蔵安定性が充分ではないことがわかる。さらに、実施例3及び4において本発明によるポリウレタン樹脂を用いて製造した硬化性組成物は50%引張り応力が0.14N/mm以下、最大引張応力が0.51N/mm以下であるのに対し、比較例3において本発明によらないポリウレタン樹脂を用いて製造した硬化性組成物は50%引張り応力が0.30N/mm、最大引張応力が0.75N/mmである。従って、本発明によるポリウレタン樹脂を用いることによって、より低モジュラスの弾性体を製造し得ることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)(a)平均末端水酸基数が1.3〜2.1である、モノオール及びポリオールの混合物、及び
(b)ポリイソシアネート
を反応させて得られるウレタンプレポリマー、及び
(2)以下の(式1):
(RO)−SiR3−n−R−NH−R−NH (式1)
(式中、
Rは、メチル基またはエチル基を表し、
は、メチル基またはエチル基を表し、
は、炭素数2〜10の炭化水素基を表し、
は、炭素数2〜10の炭化水素基を表す)
で示される分子内に架橋性シリル基とイミノ基及びアミノ基を有する化合物
を反応させることによって得られるポリウレタン樹脂。
【請求項2】
ポリオールの数平均分子量(Mn)は500〜30000である、請求項1に記載のポリウレタン樹脂。
【請求項3】
ポリオールはポリオキシプロピレンジオールである、請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂。
【請求項4】
モノオール及びポリオールの混合物(a)とジイソシアネート(b)との反応を、NCO/OHの当量比が1.6〜2.5の範囲内で行う、請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタン樹脂。
【請求項5】
前記プレポリマーと(式1)で示される化合物との反応を、NCO/NHの当量比が0.6〜1.2の範囲内で行う、請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタン樹脂。
【請求項6】
(1)(a)平均末端水酸基数が1.3〜2.1である、モノオール及びポリオールの混合物、及び
(b)ポリイソシアネート
を反応させて得られるウレタンプレポリマー、及び
(2)以下の(式1):
(RO)−SiR3−n−R−NH−R−NH (式1)
(式中、
Rは、メチル基またはエチル基を表し、
は、メチル基またはエチル基を表し、
は、炭素数2〜10の炭化水素基を表し、
は、炭素数2〜10の炭化水素基を表す)
で示される分子内に架橋性シリル基とイミノ基及びアミノ基を有する化合物
を反応させることを特徴とする、ポリウレタン樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2011−195617(P2011−195617A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60779(P2010−60779)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(305032254)サンスター技研株式会社 (97)
【Fターム(参考)】