説明

ポリウレタン硬化用液状組成物

【課題】 本発明が解決しようとする課題は、二核体含有量の高い常温液状のMOCA混合物を得ることにあり、ポリウレタン樹脂の硬化剤であるMBOCAを取り扱い易くすること、またポリウレタン硬化剤として容易に使用できること、常温液状での溶解安定性に優れた二核体MOCA含有液状組成物からなるポリウレタン硬化剤を提供することである。
【解決手段】 下記式で表される二核体のポリアミノクロロフェニルメタン化合物を80〜100重量%含有するポリアミノクロロフェニルメタン混合物(A)と、ポリエチレングリコール(B)と、を含有し、前記(A)/(B)の重量割合が60/40〜40/60であることを特徴とするポリウレタン硬化用液状組成物。
【化1】


(式中、Xは塩素原子又は水素原子を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶解安定性に優れたポリウレタン硬化用液状組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、防水材、シーリング材、接着剤、自動車部品等、様々な分野で使用されている。
【0003】
なかでも、アミン化合物であるアミノクロロフェニルメタン化合物は、通常モカ(MOCA)、或いは、MBOCAと呼ばれ、ポリウレタン樹脂の硬化剤として使用されている。
【0004】
前記MOCAは、通常クロロアニリンとホルマリンを原料として製造されるため、二核体と反応副生成物として三核体及び四核体以上のポリアミノクロロフェニルメタン化合物とを含む混合物として得られる。
【0005】
しかしながら、前記混合物は融点が約110℃と高いため、ポリウレタン樹脂の硬化剤としてMOCAをそのまま使用するとポリウレタン樹脂製造時の硬化時間が非常に早く、製造安定性が不良であるとの問題点があった。そのため、製造安定性を向上させる観点から、MOCAをポリオールや溶剤等に溶解させ、常温で液状を示すもの、又は、110℃よりも低温で溶融できるものが使用されている。
【0006】
前記常温で液状を示すMOCA硬化剤としては、二核体のアミノクロロフェニルメタン化合物を50〜70重量%、三核体のアミノクロロフェニルメタン化合物を20〜40重量%、及び四核体以上のポリアミノクロロフェニルメタン化合物を5〜10重量%からなるポリアミノクロロフェニルメタン混合物をポリオールに均一に溶解した液状組成物が開示されている。(特許文献1)係る液状組成物は、特定の重量割合のアミノクロロフェニルメタン混合物をポリテトラメチレングリコール(特に実施例参照。)に溶解しており、溶解安定性に優れているため、ポリウレタン樹脂の製造安定性に優れている。しかしながら、係る液状組成物は、ポリアミノクロロフェニルメタン混合物中に含まれる二核体のポリアミノクロロフェニルメタン化合物の含有割合が低い。
【0007】
即ち、前記混合物においては、前記混合物中に含まれる二核体のポリアミノクロロフェニルメタン化合物の含有割合が低いためポリウレタン樹脂の機械物性に劣るため、二核体含有割合の高い混合物硬化剤が、望まれていた。
【0008】
しかしながら、前記混合物中に含まれる二核体のポリアミノクロロフェニルメタン化合物の含有割合が高くなると、混合物としての融点が上昇し、また、前記ポリテトラメチレングリコールをはじめとする各種ポリオールや溶剤に溶解しないため、二核体のポリアミノクロロフェニルメタン化合物の含有割合が高い常温液状の混合物は、得られていないのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−211076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、二核体含有量の高い常温液状のMOCA混合物を得ることにあり、ポリウレタン樹脂の硬化剤であるMBOCAを取り扱い易くすること、またポリウレタン硬化剤として容易に使用できること、常温液状での溶解安定性に優れた二核体MOCA含有液状組成物からなるポリウレタン硬化剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、前記課題を解決すべく研究を進める中で、二核体のポリアミノクロロフェニルメタン化合物の含有割合が高いポリアミノフェニルメタン混合物が、溶解し得るポリオールを研究した。
その結果、二核体のポリアミノクロロフェニルメタン化合物の含有割合が高いポリアミノフェニルメタン混合物と、ポリエチレングリコールと、を特定の重量割合に混合した場合に限り、優れた溶解安定性を示すことを見出した。
即ち、本発明は下記式で表される二核体のポリアミノクロロフェニルメタン化合物を80〜100重量%含有するポリアミノクロロフェニルメタン混合物(A)と、ポリエチレングリコール(B)と、を含有し、前記(A)/(B)の重量割合が60/40〜40/60であることを特徴とするポリウレタン硬化用液状組成物。
【0012】
【化1】

(式中、Xは塩素原子又は水素原子を表す。)
を提供するものである。
前記化1の式で表される二核体のアミノクロロフェニルメタン化合物には、全てのXが水素原子である場合が含まれるが、本願明細書では便宜上全てのXが水素原子の場合も含めて「アミノクロロフェニルメタン化合物」と称することとする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリウレタン硬化用液状組成物は、特定のポリアミノクロロフェニルメタン化合物の混合物(A)とポリエチレングリコール(B)との特定量からなることにより、常温液状での溶解安定性に優れることから、ウレタン硬化剤として容易に使用することができる。
また、本発明のポリウレタン硬化用液状組成物を使用すれば、機械物性の良好なポリウレタン樹脂を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明で使用する(A)成分は、前記化1の式で表される二核体のアミノクロロフェニルメタン化合物を80〜100重量%含有するポリアミノクロロフェニルメタン混合物(以下、混合物(A)と称する)が使用される。この混合物(A)は、クロロアニリンとホルマリンとを原料として製造され、二核体及びその生成物として三核体及び四核体以上のポリアミノクロロフェニルメタン化合物を含む混合物として得られるものである。よって、前記化1の式のXは、少なくとも1つは塩素原子である。また、この混合物(A)は、約110℃の融点を示す。
【0015】
前記混合物(A)の組成範囲を外れるものを使用すると、ポリウレタン樹脂として十分な機械物性が得られない。また、ポリウレタン樹脂の機械物性をより向上できる観点から、前記混合物(A)における二核体のポリアミノクロロフェニルメタン化合物の重量割合は85〜99重量%がより好ましく、90〜95重量%が特に好ましい。
【0016】
本発明で使用するポリエチレングリコール(B)の分子量は、200〜1700であることが好ましい。前記ポリエチレングリコール(B)は、混合物(A)と相溶し、常温(25℃)で液状のもの、あるいは常温(25℃)で固体であっても80℃以下の温度で溶融すると液状を示すものである。混合物(A)を溶解するポリエチレングリコール(B)は、前記分子量のものから選択されるが、ポリウレタン樹脂を使用する用途に合わせて適宜決定される。なお、前記分子量は、ポリスチレンを分子量標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により求める数平均分子量を示す。
【0017】
なお、本願明細書においては、流動性を示すものを液状という。
【0018】
また、前記混合物(A)と前記ポリエチレングリコール(B)とを含有するポリウレタン樹脂硬化用液状組成物(以下、液状組成物と称する。)における、前記液状組成物における混合物(A)とポリエチレングリコール(B)との重量割合は、(A)/(B)=60/40〜40/60である。(A)と(B)との重量割合が前記の範囲であれば、液状組成物が常温(25℃)で液状、あるいは常温(25℃)で固体であっても比較的低温で溶融し液状を示すことから、簡便且つ安定的にポリウレタン樹脂を製造できる。前記混合物(A)の重量割合が60より多いと液状組成物の溶解安定性が悪くなり、混合物(A)の析出物発生の問題が生じるため好ましくない。一方、40より少ない場合は、ポリエチレングリコール(B)の析出物発生の問題が生じたり、ポリウレタン樹脂の機械物性が大幅に低下する等の問題があるため好ましくない。
【0019】
これらのなかでも、前記(A)/(B)の重量割合が60/40〜50/50であり、前記ポリエチレングリコール(B)の分子量が1400〜1700であること、又は、前記(A)/(B)の重量割合が50/50〜40/60であり、前記ポリエチレングリコール(B)の分子量が500〜1100であることが溶解安定性をより向上できる観点から好ましい。
【0020】
また、前記液状組成物の粘度は、ポリウレタン樹脂を安定に製造できる観点から、300〜3000mPa・s(25℃)であることが好ましい。
【0021】
また、前記液状組成物には、必要に応じてその他の添加剤を適宜添加してもよい。前記その他の添加剤としては、例えば、ウレタン化触媒、砥粒、整泡剤、充填剤、顔料、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、難燃剤、可塑剤等が挙げられる。
【0022】
また、前記液状組成物においては、本発明の効果を損なわない範囲であれば、前記ポリエチレングリコール(B)以外のポリオールを併用しても良い。
【0023】
前記液状組成物の製造は、好ましくは100〜120℃に加熱することにより融かされた混合物(A)を、好ましくは60〜110℃に加熱されたポリエチレングリコール(B)に添加混合することにより得られる。その際、好ましくは100〜110℃に加熱し5〜10mmHgに減圧しながら、好ましくは30分〜2時間脱水することにより得られる。
【0024】
次に、本願発明の前記液状組成物を用いて製造されるポリウレタン樹脂について説明する。
【0025】
前記ポリウレタン樹脂は、例えば、本願発明の前記液状組成物と、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(以下、プレポリマーと称する。)と、必要に応じて他の活性水素含有低分子化合物を添加し、反応させることで得ることができる。
【0026】
前記プレポリマーは、ポリイソシアネート化合物(1)とポリオール(2)を事前に反応させて得られたイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーが好ましく使用される。
【0027】
前記ポリイソシアネート化合物(1)としては、例えば2,4−ないしは2,6−トルエンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ないしは1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(別名イソホロンジイソシアネート;以下IPDIという)、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(以下水添MDIという)、2−ないしは4−イソシアナトシクロヘキシル−2’−イソシアナトシクロヘキシルメタン、1,3−ないしは1,4−ビス−(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、ビス−(4−イソシアナト−3−メチルシクロヘキシル)メタン、1,3−ないしは1,4−α,α,α’α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,2’−、2,4’−ないしは4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン(以下MDIという)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−ないしはm−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートまたはジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0028】
前記ポリオール(2)としては、特に限定はないが、例えば、低分子量ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリブタジエンポリオール、シリコーンポリオール、低分子量ジオール、からなる群から選択される少なくとも一つが好ましいが、これら以外のポリオールでも良い。これらポリオールの種類及び量は使用される用途により適宜選択される。
【0029】
前記低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)、2−イソプロピル−1,4−ブタンジオール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール(例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール)、シクロヘキサンジオール(例えば1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール)、2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン等の脂環式ジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパン等の三価以上のポリオールが挙げられる。
【0030】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、前記低分子量ポリオール等のポリオールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸のエステル形成性誘導体(エステル、無水物、ハライド等)、ラクトン、ヒドロキシカルボン酸等とのエステル化物が挙げられる。前記多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸、脂肪族ジカルボン酸(例えば水添ダイマー酸、ダイマー酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、トリカルボン酸(例えばトリメリト酸、トリメシン酸、ひまし油脂肪酸の三量体等)、テトラカルボン酸(例えばピロメリット酸)等が挙げられる。前記多価カルボン酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、酸無水物、ハライド(クロライド、ブロマイド等)、エステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、アミルエステル等の低級脂肪族エステル)等が挙げられる。前記ラクトンとしては、例えば、γ−カプロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。また、前記ヒドロキシカルボン酸は、例えば、前記ラクトンが開環した構造のヒドロキシカルボン酸であっても良い。
【0031】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、ポリテトラメチレングリコール、前記低分子ポリオールのオキサイド付加物等が挙げられる。前記エチレンオキサイド付加物としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等が挙げられ、前記プロピレンオキサイド付加物としては、例えば、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。前記低分子ポリオールのオキサイド付加物としては、例えば、エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0032】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステル及び/またはホスゲンと、後述するポリオールとを反応させて得られるものを使用することができる。
【0033】
前記炭酸エステルとしては、例えばメチルカーボネートや、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネ−ト等を使用することできる。
【0034】
また、前記炭酸エステルやホスゲンと反応しうるポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ビフェノール等の比較的低分子量のジヒドロキシ化合物や、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールや、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオール等を使用することができる。
【0035】
前記他の活性水素含有低分子化合物としては、例えば、エチレングリコール、ブタンジオール、プロピレングリコール、1,6−へキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシレングリコール、等のジオール類や水、ヒドラジン、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルへキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、メチルジアミノシクロヘキサン、ビペラジン、ノルボルネンジアミン等が挙げられ、これらの化合物は単独で、あるいは混合して用いてもよい。さらに必要により、一価の低分子アルコール、低分子ジアミンなどを変性剤として用いることもできる。
【0036】
前記プレポリマーは、前記ポリイソシアネート化合物(1)と、前記ポリオール(2)と、必要に応じて他の活性水素含有低分子化合物と、を従来公知の方法に従い、反応させて得られたイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーである。前記プレポリマーを得る際の反応方法は特に限定はない。
【0037】
また、前記プレポリマーを製造する際には、必要に応じて三級アミン触媒や有機金属系触媒等を使用して反応を促進することができる。
【0038】
前記液状組成物と、前記プレポリマーの反応は、従来公知の方法に従い反応させることができる。前記ポリウレタン樹脂を製造する際の反応方法は特に限定はない。
【0039】
また、前記ポリウレタン樹脂を製造する際には、必要に応じて添加剤を適宜添加してもよい。前記添加剤としては、例えば、触媒、砥粒、整泡剤、充填剤、顔料、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、難燃剤、可塑剤等が挙げられる。
【0040】
本発明のポリウレタン硬化用液状組成物は、特定のポリアミノクロロフェニルメタン化合物の混合物(A)とポリエチレングリコール(B)との特定量からなることにより、相溶性に優れ、溶解安定性に優れることから、安定的なポリウレタン樹脂の製造を可能にするものである。
また、本発明のポリウレタン硬化用液状組成物を使用すれば、機械物性の良好なポリウレタン樹脂を与えることができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例により、一層具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。
また、本発明では、特に断りのない限り、「部」は「重量部」、「%」は「重量%」である。
なお、本発明で用いた測定方法及び評価方法は、以下の通りである。
【0042】
[実施例1]混合物(A)とポリエチレングリコール(B)との混合調整
ポリエチレングリコール(分子量1540)をフラスコに入れ、100℃でホールドする。このポリオールの40%、50%及び60%に、混合物(A)としてパンデックスE(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジクロロフェニルメタン(二核体)90重量%含有)を120℃で溶解した後、先のフラスコに60%、50%及び40%の重量割合で投入し、溶解混合し、100〜105℃で5〜100mmHgの減圧下で1時間脱水する。冷却後取出し、液状組成物を得た。
【0043】
[実施例2〜3、比較例1〜3]
使用するポリオールを表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして液状組成物を得た。
【0044】
[溶解安定性の評価]
実施例2〜3、及び比較例1〜3で得られた液状組成物を25℃で1日、1週間、1ヶ月間放置し、目視で外観を観察し、以下のように判断した。
「○」;液状を示し、結晶物の析出がない。
「△」;液状を示すが、極微量の結晶物の析出がある。
「×」;液状を示すが大量の結晶物の析出がある、又は固化している。
【0045】
【表1】


なお、表中の略語について説明する。
・PEG1540:ポリエチレングリコール(分子量1540)
・PEG1000:ポリエチレングリコール(分子量1000)
・PEG600:ポリエチレングリコール(分子量600)
・PTMG1000:ポリテトラメチレングリコール(分子量1000)
・PEs−1:テトラメチロールプロパンとテトラヒドロフランを反応させて得られたラクトンポリオール(分子量550)
・PEs−2:ブタンジオールとアジピン酸を反応させて得られたポリエステルポリオール(分子量1000)
【0046】
[参考例1]ポリウレタン樹脂(a)の製造
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1リットル4つ口丸底フラスコに、トルエンジイソシアネート477部入れ攪拌した。ついで、PTMG1000(ポリテトラメチレングリコール、分子量1000)408.4部及びDEG(ジエチレングリコール)114.6部を投入混合し、窒素気流下70℃で約5時間反応を行い、イソシアネート基当量400のウレタンプレポリマーを得た。
次いで混合物(A)(二核体のポリアミノクロロフェニルメタン化合物を90重量%含有)とPEG1540(ポリエチレングリコール、分子量1540)を重量割合=60/40で混合攪拌し液状組成物を得た。
容器に前記ウレタンプレポリマーと前記液状組成物を重量割合=100/44.9で攪拌混合し、110℃に加熱した金型(300mm×300mm×2mm)に注入した。110℃金型で約16時間放置後、取り出し、シート状ポリウレタン樹脂(a)を得た。
【0047】
[参考例2]ポリウレタン樹脂(b)の製造
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1リットル4つ口丸底フラスコに、トルエンジイソシアネート477部入れ攪拌した。ついで、PTMG1000(ポリテトラメチレングリコール、分子量1000)408.4部及びDEG(ジエチレングリコール)114.6部を投入混合し、窒素気流下70℃で約5時間反応を行い、イソシアネート基当量400のウレタンプレポリマーを得た。
次いで混合物(A)(二核体のポリアミノクロロフェニルメタン化合物を90重量%含有)とPEG1000(ポリエチレングリコール、分子量1000)を重量割合=50/50で混合攪拌し液状組成物を得た。
容器に前記ウレタンプレポリマーと前記液状組成物を重量割合=100/47.4で攪拌混合し、110℃に加熱した金型(300mm×300mm×2mm)に注入した。110℃金型で約16時間放置後、取り出し、シート状ポリウレタン樹脂(b)を得た。
【0048】
[参考例3]ポリウレタン樹脂(c)の製造
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1リットル4つ口丸底フラスコに、トルエンジイソシアネート477部入れ攪拌した。ついで、PTMG1000(ポリテトラメチレングリコール、分子量1000)408.4部及びDEG(ジエチレングリコール)114.6部を投入混合し、窒素気流下70℃で約5時間反応を行い、イソシアネート基当量400のウレタンプレポリマーを得た。
次いで混合物(A)(二核体のポリアミノクロロフェニルメタン化合物を90重量%含有)とPEG600(ポリエチレングリコール、日油(株)社製品)を重量割合=40/60で混合攪拌し液状組成物を得た。
容器に前記ウレタンプレポリマーと前記液状組成物を重量割合=100/45.1で攪拌混合し、110℃に加熱した金型(300mm×300mm×2mm)に注入した。110℃金型で約16時間放置後、取り出し、シート状ポリウレタン樹脂(c)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式で表される二核体のポリアミノクロロフェニルメタン化合物を80〜100重量%含有するポリアミノクロロフェニルメタン混合物(A)と、ポリエチレングリコール(B)と、を含有し、前記(A)/(B)の重量割合が60/40〜40/60であることを特徴とするポリウレタン硬化用液状組成物。
【化1】

(式中、Xは塩素原子又は水素原子を表す。)
【請求項2】
前記ポリエチレングリコール(B)の分子量が200〜1700である、請求項1に記載のポリウレタン硬化用液状組成物。
【請求項3】
前記(A)/(B)の重量割合が60/40〜50/50であり、前記ポリエチレングリコール(B)の分子量が1400〜1700であること、又は、前記(A)/(B)の重量割合が50/50〜40/60であり、前記ポリエチレングリコール(B)の分子量が500〜1100であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリウレタン硬化用液状組成物。

【公開番号】特開2012−67206(P2012−67206A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213609(P2010−213609)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】