説明

ポリウレタン製品の製造方法

【課題】 表面に離型剤成分が残留しないポリウレタン製品を製造すること。
【解決手段】 沸点が120〜200℃のジメチルシリコーン、若しくはかかるジメチルシリコーンと揮発性溶媒との混合物よりなる離型剤を、成形型の型内面に塗布した後、かかる成形型内にポリウレタン原料を注入して、加熱することにより、該ポリウレタン原料を反応させて、一次硬化せしめる。次いで、成形型内より反応生成物たるポリウレタン成形品を取り出し、その後、該ポリウレタン成形品を加熱して、二次硬化させることにより、目的とするポリウレタン製品を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン製品の製造方法に係り、特に、サスペンション用バンパスプリング等の車両用ポリウレタン製品を有利に製造し得る手法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは、衝撃吸収性、耐久性、耐熱性等の点において非常に優れていることから、従来より、そのような優れた特性を利用したポリウレタン製品が各種開発され、様々な用途において使用されている。そして、そのような各種ポリウレタン製品は、従来より公知の各種製造方法の中から、ポリウレタン原料の種類、目的とするポリウレタン製品の形状、特性等に応じて、適宜に選択された手法に従って、製造されている。
【0003】
例えば、車両用ポリウレタン製品の一種である筒状のサスペンション用バンパスプリングの製造方法の一つとしては、所定の成形キャビティを有する成形型内にポリウレタン原料を注入して、加熱することにより、成形型内においてポリウレタン原料を反応させて、一次硬化せしめた後、かかる成形型内より、反応生成物たるポリウレタン成形品を取り出し、次いで、その取り出されたポリウレタン成形品を加熱して、二次硬化せしめる手法が知られている。
【0004】
ところで、上述したサスペンション用バンパスプリングの製造方法を始めとする、いわゆるモールド成形法によるポリウレタン製品の製造方法においては、ポリウレタン原料の硬化により生成するポリウレタン成形品が、成形型の型内面に接着することを防止して、成形型からポリウレタン成形品の離型を容易ならしめることを目的として、ポリウレタン原料を注入する前の成形型内面に、予めワックス、金属石けん、油脂等の離型剤を塗布しておく手法が採用されているのであり、そのような離型剤としては、従来より様々なものが提案され、使用されている。
【0005】
例えば、特開平5−337953号公報(特許文献1)においては、融点が−5℃以下、沸点が120℃以上のパラフィン系炭化水素30重量%以上と、エステル系ワックス、多価アルコールエステル類、シリコーン類、フッ素含有離型剤の群から選ばれる一つ又は二以上のものとを含み、全体の融点が−5℃以下、沸点が120℃以上からなるウレタンフォーム用離型剤が提案されており、かかる離型剤を、コールドモールディングプロセスによるポリウレタンフォーム製品の製造の際に用いると、良好な離型性を示しつつ、表面状態の優れたポリウレタンフォーム製品を得ることが出来るとされている。
【0006】
しかしながら、そのような従来の離型剤を用いてポリウレタン製品を製造した場合、成形型内からのポリウレタン成形品(製品)の離型は容易であるものの、得られたポリウレタン製品の表面に離型剤の成分が残留し、そして、この残留した離型剤成分が、様々な問題を引き起こす要因となっていた。具体的には、上述の如き筒状のサスペンション用バンパスプリングの表面に各種離型剤成分が残留していると、ショックアブソーバのピストンロッドに対して外挿状態下に配置されたバンパスプリングに対して、ショックアブソーバのシリンダ(アブソーバプレート)が当接することによって、軸方向に荷重が作用せしめられて、圧縮された際に、バンパスプリングの外周面が当接して、そこに滑りが生じることによって、かかるバンパスプリングの一部が不規則に変形するようになり、その結果、座屈を生ずる恐れがあった。
【0007】
そこで、近年、得られるポリウレタン製品の表面に離型剤成分が残留することを防止したポリウレタン製品の製造方法が、各種提案されており、例えば、特開平7−329098号公報(特許文献2)においては、予め外部離型剤を塗布した成型金型に、ポリイソシアネート、ポリオール、鎖延長剤、必要に応じて触媒等の必要な助剤からなるポリウレタン原料を導入して、ポリウレタン樹脂成形品を成形する方法として、予め成型金型に塗布する外部離型剤が、金型表面上での硬化温度が20〜90℃であり、硬化した皮膜の表面張力が15〜25dyne/cmである室温硬化型シリコーンゴムであることを特徴とするポリウレタン樹脂成形品を成形する方法が、提案されている。
【0008】
しかしながら、かかるポリウレタン樹脂成形品を成形する方法にあっては、得られるポリウレタン樹脂成形品の表面に、離型剤成分が残留しないことは認められるものの、成形金型からポリウレタン樹脂成形品を取り出す際の離型性が充分なものとは認められず、結果として、特許文献2において提案されている手法に従って、ポリウレタン樹脂成形品を工業的に製造する際には、従来の離型剤を使用せざるを得なかったのであり、その表面に離型剤成分が残留しないポリウレタン製品を製造する方法としては、未だ充分なものではなかった。
【0009】
【特許文献1】特開平5−337953号公報
【特許文献2】特開平7−329098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、成形型内での一次硬化後、かかる成形型より取り出したポリウレタン成形品を二次硬化せしめることにより、目的とするポリウレタン製品を製造する方法に従って、表面に離型剤成分が残留しないポリウレタン製品を有利に製造し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして、本発明は、上述の如き課題を解決するために、型内面に離型剤が塗布されてなる成形型内にポリウレタン原料を注入して、加熱することにより、該成形型内において該ポリウレタン原料を反応させて、一次硬化せしめた後、該成形型内より反応生成物たるポリウレタン成形品を取り出し、次いで、該ポリウレタン成形品を加熱して、二次硬化せしめることにより、目的とするポリウレタン製品を製造することからなるポリウレタン製品の製造方法において、前記離型剤として、沸点が120〜200℃のジメチルシリコーン、若しくは該ジメチルシリコーンと揮発性溶媒との混合物を用いることを特徴とするポリウレタン製品の製造方法を、その要旨とするものである。
【0012】
なお、ここで、かかる本発明に従うポリウレタン製品の製造方法における好ましい態様の一つにおいては、前記離型剤を構成するジメチルシリコーンとして、沸点が150〜200℃のものが有利に用いられるのであり、また、好ましい態様の他の一つにおいては、前記揮発性溶媒として、塩化メチレン、ナフサ、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、若しくはこれらと水との混合溶媒が、有利に用いられることとなる。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明に従うポリウレタン製品の製造方法においては、成形型の型内面(成形キャビティ内面)に予め塗布せしめられる離型剤として、沸点が比較的低いジメチルシリコーン、若しくはかかるジメチルシリコーンと揮発性溶媒との混合物を用いるものであるところから、かかる離型剤を内面に塗布せしめた成形型内にポリウレタン原料を注入して、かかる成形型内においてポリウレタン原料を反応させて、一次硬化せしめた後、成形型内より反応生成物たるポリウレタン成形品を取り出す際には、型内面に塗布されたジメチルシリコーンによって良好な離型性が確保され得るのであり、また、成形型より取り出されたポリウレタン成形品の表面に残存する離型剤成分は、二次硬化のための加熱によって、効果的に揮発せしめられることにより、除去されることとなり、これによって、残留する離型剤による問題の発生が効果的に抑制乃至は回避され得ることとなるのである。
【0014】
また、本発明において、離型剤を構成するジメチルシリコーンとして、沸点が150〜200℃のものを用いたり、或いは、ジメチルシリコーンと共に離型剤を構成する揮発性溶媒として、塩化メチレン、ナフサ、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、若しくはこれらと水との混合溶媒を用いることによって、ポリウレタン成形品の成形型からの良好な離型性を確保しつつ、その表面に離型剤成分が残留することのないポリウレタン製品を、より有利に製造することが出来る利点を享受することが出来るのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ここにおいて、かくの如き本発明に従って製造されるポリウレタン製品としては、例えば、図1に示されるような、サスペンションインシュレータ4とショックアブソーバ6との間において、かかるショックアブソーバ6のピストンロッド8が外挿された状態にて配設されてなる、車両用ポリウレタン製品としてのバンパスプリング2を挙げることが出来、特に、そのようなバンパスプリング2において、本発明の特徴が有利に発揮されることとなるのである。
【0016】
そして、そのようなバンパスプリング2の製造に際しては、予め準備された、目的とするバンパスプリング2の形状に対応した成形キャビティを有する成形型に対して、本発明に従って、先ず、かかる成形型の型内面(成形キャビティ面)に、所定の沸点を有するジメチルシリコーン、若しくはかかるジメチルシリコーンと揮発性溶媒との混合物よりなる離型剤が、スプレー噴射や、刷毛塗り乃至はブラシ塗り等の公知の手法によって塗布せしめられる。次いで、かかる成形型の成形キャビティ内に所定のポリウレタン原料が注入され、例えば成形型全体を加熱することによって、成形型内のポリウレタン原料を反応させて、一次硬化操作が実施される。その後、かかる成形型内よりポリウレタン成形品を取り出し、そして、その得られたポリウレタン成形品を加熱して、二次硬化せしめることにより、目的とするバンパスプリング2が形成されるのである。
【0017】
より具体的には、かかる本発明に従うバンパスプリング2の製造においては、ポリウレタン原料を注入する前に予め成形型(一般には金型)内面に塗布せしめられる離型剤として、沸点が120〜200℃のジメチルシリコーン、若しくはかかる所定の沸点を有するジメチルシリコーンと揮発性溶媒との混合物が用いられているのであり、そしてそのような離型剤の存在下において、成形型内にて所定のポリウレタン原料を加熱により一次硬化せしめると、その反応生成物たるポリウレタン成形品と成形型内面との間に、離型剤よりなる表面張力の小さい皮膜が形成され、そしてこの皮膜によって、ポリウレタン成形品が成形型内面に固着することが効果的に防止され、以て、表面状態の優れたポリウレタン成形品を成形型内より取り出すことが可能ならしめられるのである。そして、この一次硬化が終了した後、成形型から取り出されたポリウレタン成形品の表面には、成形型に塗布したジメチルシリコーンが移行して、付着するようになるが、その場合にあっても、ジメチルシリコーンの沸点は比較的低いものとされているところから、その残留するジメチルシリコーンは、その後の二次硬化のための加熱によって効果的に揮発、除去せしめられ、以て、その表面に離型剤成分が残留しないバンパスプリング2が得られるのである。
【0018】
ここで、本発明で用いられるジメチルシリコーンとは、一般にはジメチルシリコーンオイルとも称されるジメチルポリシロキサン(化学式:(CH33SiO[(CH3)2SiO]nSi(CH3)3 )を意味するものである。本発明においては、離型剤として用いられるジメチルシリコーンの沸点が低すぎると、一次硬化によって得られたポリウレタン成形品を成形型内より取り出す際に、良好な離型性を確保することが出来なくなる恐れがあり、その一方、沸点が高すぎると、取り出したポリウレタン成形品を二次硬化せしめる際の加熱によっても、離型剤成分(ジメチルシリコーン)が充分に揮発、除去されず、得られるポリウレタン製品(バンパスプリング2)の表面に残留する恐れがあるところから、本発明においては、沸点が120〜200℃、好ましくは150〜200℃のジメチルシリコーンが用いられることとなる。
【0019】
また、本発明に従う製造方法においては、上述したようなジメチルシリコーンのみからなる離型剤を用い得ることは勿論であるが、ジメチルシリコーンオイルのみからなる離型剤を用いて工業的にポリウレタン製品を製造する際には、かかる離型剤を塗布する工程において、均一に成形型内面へ塗布する目的のために、ジメチルシリコーンと揮発性溶媒との混合物を離型剤として用いることも、本発明においては、有効な手法である。
【0020】
そして、そのような揮発性溶媒としては、高い揮発性を有する従来より公知の溶媒であって、ジメチルシリコーンが本来的に発揮する離型性を阻害しないものであれば、如何なるものであっても使用することが出来る。中でも、ジメチルシリコーンと共に成形型内面に塗布された後、成形型内へポリウレタン原料が注入されるまでの短い時間(数秒〜数十秒程度)内に揮発するようなものが有利に用いられ得るのであって、特に、そのような揮発性溶媒としては、塩化メチレン、ナフサ、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、若しくはこれらと水との混合溶媒等を、例示することが出来る。
【0021】
また、離型剤として、前記揮発性溶媒とジメチルシリコーンとの混合物を用いる場合においては、かかる混合物中の揮発性溶媒の割合は、選択した揮発性溶媒の種類、特性等に応じて、適宜に決定されることとなるが、一般には、成形型内面へ離型剤を塗布する工程において、均一に成形型内面へ塗布できる配合割合(一般に、混合物中のジメチルシリコーンの割合が1〜30重量%程度)となるように、そのような混合物が調製されることとなる。
【0022】
そして、本発明手法においては、上述したような、所定範囲の沸点を有するジメチルシリコーン、若しくはかかるジメチルシリコーンと所定の揮発性溶媒との混合物を、離型剤として、成形型の成形キャビティ面に、公知の各手法に従って塗布せしめた後、かかる成形型の成形キャビティ内に、所定のポリウレタン原料を注入して、成形型を加熱することにより、ポリウレタン原料を反応(発泡)させて、一次硬化せしめるのである。
【0023】
なお、成形キャビティ内に注入されるポリウレタン原料としては、成形型内において硬化する従来より公知の反応性原料(ポリオール成分とポリイソシアネート成分との配合物)の何れもが、特に限定されることなく、目的とするポリウレタン製品(バンパスプリング2)に応じて、適宜に選択されて使用されることとなる。例えば、そのようなポリウレタン原料を構成するポリオール成分としては、従来よりポリウレタンの製造に一般的に用いられているポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール等の公知のポリオール類の何れもが用いられ得る。また、ポリイソシアネート成分としては、少なくとも2官能以上のポリイソシアネートの全てが用いられ得、例えば、2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、オルトトルイジンジイソシアネート(TODI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI),キシリレンジイソシアネート(XDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びカーボジイミド変性MDI、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリメリックポリイソシアネートや、それらのうちの少なくとも一種をポリオールと反応せしめてなるプレポリマー等が、単独で、または組み合わせて使用されることとなる。そして、それらポリオール成分とポリイソシアネート成分は、従来と同様に、目的とするポリウレタン製品の特性に応じた割合において、配合せしめられる。
【0024】
また、それらポリオール成分とポリイソシアネート成分とが配合されてなるポリウレタン原料には、従来と同様に、水等の発泡剤や、必要に応じて触媒、整泡剤、難燃剤、減粘剤、安定剤、充填剤、架橋剤、着色剤等の各種添加剤が、所望とするポリウレタン製品に応じた割合において、適宜に添加せしめられる。
【0025】
そのようなポリオール成分とポリイソシアネート成分、並びに必要に応じて添加された各種添加剤よりなるポリウレタン原料は、成形型内において、従来より公知の条件に従って加熱されることにより、発泡し、或いは発泡することなく、一次硬化せしめられることとなる。なお、工業的にポリウレタン製品を製造する観点からは、成形型内よりポリウレタン成形品を取り出す際に、成形品が型くずれしない程度に、また成形型より取り出されても、その形状を保持し得る程度に、一次硬化が進行しておれば充分であり、具体的には、図1に例示の如きサスペンション用バンパスプリングを製造するに際しては、一般に、80〜130℃程度の温度にて、5分〜1時間程度加熱することにより、一次硬化操作が実施されることとなる。
【0026】
さらに、かかる一次硬化の後、成形型内より、ポリウレタン原料の反応生成物たるポリウレタン成形品が取り出されるのであるが、上述したように、本発明に従うポリウレタン製品の製造方法においては、離型剤としてのジメチルシリコーンが優れた離型性を発揮するものであるところから、成形型の内面に固着することなく、ポリウレタン成形品を容易に取り出すことが可能となるのである。
【0027】
そして、このようにして成形型より取り出されたポリウレタン成形品を、加熱炉等を用いて、従来より公知の条件に従って加熱し、成形品中に残存する未反応のポリオール成分とポリイソシアネート成分とを充分に反応させて、二次硬化せしめることにより、その表面に離型剤成分が残留しない、目的とするバンパスプリング2が得られるのである。
【0028】
すなわち、成形型より取り出した直後のポリウレタン成形品表面に残留する、離型剤たるジメチルシリコーンは、沸点が比較的低いために、二次硬化を進行させる際の加熱によって、成形体表面に残留するジメチルシリコーンが効果的に揮発せしめられ、以て、その表面に離型剤成分が残留しないバンパスプリング2が有利に製造されるのである。なお、かかる二次硬化の際の加熱条件は、目的とするポリウレタン製品に応じた条件が適宜に選択されて、実施されるものであって、例えば、バンパスプリングを製造する際には、100〜150℃程度の温度にて、3〜20時間程度の加熱条件が採用される。
【0029】
かくの如くして得られた、表面に離型剤成分が残留していないバンパスプリング2は、例えば、図1に示されるように、車体に取り付けられるサスペンションインシュレータ4とショックアブソーバ6とを連結するピストンロッド8に外挿せしめた状態にて用いられることとなるのであり、そして、ショックアブソーバ6より大荷重が入力した場合に、かかるバンパスプリング2は、ショックアブソーバ6のアブソーバプレート10とサスペンションインシュレータ4との間において、圧縮されて、外周面が当接するようになっても、そこに滑りが生じることがなく、そのために座屈を生じることなく、軸方向に規則的に圧縮変形せしめられることとなり、以て、ショックアブソーバ4の作動ストロークが弾性的に制限されることとなるのである。
【実施例】
【0030】
以下に、本発明の実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等が加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0031】
先ず、予め準備した6種類のジメチルシリコーン(信越化学工業株式会社製:KF96L−1cs、KF96L−1.5cs、KF96L−0.65cs、KF96L−2cs。ジーイー東芝シリコーン株式会社製:TSF451−10、TSF451−50)と、揮発性溶媒たる塩化メチレンとを、下記表1に掲げる割合にて配合して、7種類の離型剤(離型剤A〜G)を、それぞれ調製した。なお、各離型剤中のジメチルシリコーンの粘度及び沸点を、下記表1に併せて示す。
【0032】
【表1】

【0033】
一方、ポリウレタン原料のポリイソシアネート成分として、1,5−ナフチレンジイソシアネート(1,5−NDI)と、ポリエチレンアジペート(PEA)(大日本インキ化学工業株式会社製:ポリライトODX−2402)とを、1,5−NDI:25重量部、PEA:85重量部の割合において配合せしめ、予め反応させることにより、末端にNCO基(イソシアネート基)を有するプレポリマーを準備した。
【0034】
また、ポリオール成分としては、ポリエチレンブチレンアジペート(PEBA)(大日本インキ化学工業株式会社製:ポリライトTR−2330)を用いて、かかるPEBAの15重量部に対して、発泡剤及び整泡剤としての脂肪酸スルホン酸塩の50%水溶液(住化バイエルウレタン株式会社製:アディティブSV)を2重量部、更に、触媒としてのN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンを0.025重量部、配合せしめ、架橋剤(クロスリンク)を調製した。
【0035】
次いで、それらプレポリマー及びクロスリンクを、プレポリマー:クロスリンク=85:15(重量比)の割合において混合し、撹拌して得られたポリウレタン原料を、内面に離型剤A乃至Gの何れかが塗布された成形型(金型)に注入して、金型温度:100℃、硬化時間:15分間の条件にて一次硬化せしめた後、各々の成形型内よりポリウレタン成形品を取り出し、更にその後、かかるポリウレタン成形品を、加熱温度:120℃、加熱時間:12時間の条件にて二次硬化せしめることにより、ブロック形状のポリウレタン供試体(100mm×100mm×50mm)を得た。
【0036】
ここで、そのようなポリウレタン供試体の作製において、一次硬化の後に金型内よりポリウレタン成形品を取り出すに際して、かかる成形品の取出し易さ(脱型性)を評価し、その結果を下記表2に示した。なお、下記表2中の「◎」は、非常に良好に脱型できたことを、「○」は、良好に脱型できたことを、「×」は、成形体が金型に接着し、脱型が困難であったことを、それぞれ示している。
【0037】
また、得られたポリウレタン供試体表面の動摩擦係数を、JIS−K−7125に準拠して測定し、その結果を、下記表2に併せて示した。
【0038】
【表2】

【0039】
一方、上述したような、ブロック形状のポリウレタン供試体を作製した際の条件と同様な条件に従って、離型剤A〜Gをそれぞれ用いて、図1に示されているバンパスプリング2の如き、略蛇腹形状を呈する筒状のポリウレタン供試体(外径(A):50mm、内径(B):10mm、高さ(L):100mm、)を作製した。そして、得られたポリウレタン供試体に対して、6kNの圧縮荷重を繰り返し入力することにより、各ポリウレタン供試体の耐久性を評価した。具体的には、供試体に対して、10万回以上圧縮荷重を入力しても亀裂が入らなかった場合を「○」と、5〜10万回の圧縮荷重の入力によって亀裂が生じた場合を「△」と、1〜5万回の圧縮荷重の入力によって亀裂が生じた場合を「×」と、それぞれ評価し、その結果を、下記表3に示した。
【0040】
【表3】

【0041】
上記表2の結果から明らかなように、沸点が、本発明手法の範囲内にあるジメチルシリコーンを離型剤として用いた場合(実験例1〜3)においては、一次硬化後に金型内より成形品を取り出す際の離型性が良好であることが認められた。また、実験例1〜3においては、最終的に得られたポリウレタン供試体表面の動摩擦係数が比較的大きく、さらに、表3から明らかなように、沸点が本発明手法の範囲内にあるジメチルシリコーンを離型剤として用いて得られた筒状供試体の耐久性も優れている(実験例8〜10)ことから、本発明手法に従って得られたポリウレタン供試体表面においては、離型剤成分たるジメチルシリコーンが残留していないことが認められる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に従って製造されたバンパスプリングの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
2 バンパスプリング
4 サスペンションインシュレータ
6 ショックアブソーバ
8 ピストンロッド
10 アブソーバプレート10


【特許請求の範囲】
【請求項1】
型内面に離型剤が塗布されてなる成形型内にポリウレタン原料を注入して、加熱することにより、該成形型内において該ポリウレタン原料を反応させて、一次硬化せしめた後、該成形型内より反応生成物たるポリウレタン成形品を取り出し、次いで、該ポリウレタン成形品を加熱して、二次硬化せしめることにより、目的とするポリウレタン製品を製造することからなるポリウレタン製品の製造方法において、
前記離型剤として、沸点が120〜200℃のジメチルシリコーン、若しくは該ジメチルシリコーンと揮発性溶媒との混合物を用いることを特徴とするポリウレタン製品の製造方法。
【請求項2】
前記離型剤を構成するジメチルシリコーンの沸点が、150〜200℃であることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン製品の製造方法。
【請求項3】
前記揮発性溶媒が、塩化メチレン、ナフサ、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、若しくはこれらと水との混合溶媒であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリウレタン製品の製造方法。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−56132(P2006−56132A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240203(P2004−240203)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(000219668)東海化成工業株式会社 (39)
【Fターム(参考)】