説明

ポリウレタン/ポリ尿素の連続的な製造

本発明は、出発反応組成物の成分を単独で、および/または混合物として、回転する物体Aの高温の表面の内側の領域上に薄膜として施与して、薄膜が回転する物体Aの高温の表面を経由して回転する物体Aの高温の表面の外側の領域に流れ、薄膜は、ポリウレタン/ポリ尿素を含有する反応組成物として高温の表面を離れ、かつ反応組成物は、高温の表面を離れた後に急速に冷却されることによってポリウレタン/ポリ尿素を製造する連続的な方法であって、出発反応組成物の成分として、ポリイソシアネート成分およびポリオール/ポリアミン成分が存在し、高温の表面の温度は70〜400℃であり、かつ反応組成物の急速な冷却は、少なくとも30℃である方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン/ポリ尿素を製造する方法ならびに該方法により製造することができるポリウレタン/ポリ尿素に関する。
【0002】
ポリウレタン/ポリ尿素は今日まで工業的な規模では通常、不連続的な方法で製造されており、この場合、不連続的な方法の一般に公知の欠点、たとえば長い装入時間および取り出し時間、劣った伝熱および物質伝達、製品の品質の変動等が甘受されなくてはならない。プロセス強化の範囲で目的とされる、ポリウレタン/ポリ尿素の連続的な製造法では、これらの欠点は少なくとも低減されているべきである。しかし今日まで、ポリウレタン/ポリ尿素の大工業的な製造のためにはいまだ相応して満足できる方法強化の構想は存在しておらず、このことはおそらくは、ポリウレタン/ポリ尿素が温度に敏感であることと関連している。
【0003】
連続的な方法として、ベルト式もしくは反応押出機法が製造技術的な観点から重要である。この関連で、DE−C−19924089は、改善された軟化特性を有する均質なポリウレタンを製造するために「ワンショット供給法」を提案しており、この方法によれば、まずポリイソシアネート、ポリオールおよび鎖長延長剤を含有する全反応混合物を、スタチックミキサー中、500〜50000s-1の高い剪断速度で、定義された温度下に、最大で1sの短い混合時間内に均質に混合し、こうして製造された反応混合物を、場合により第二のスタチックミキサーを介して押出機に供給する。
【0004】
DE−A−19924090では、同じ方法目的で、改善された軟化特性を有するポリウレタンの製造において、攪拌される管型反応器中で、攪拌速度と処理量との規定の比率で反応混合物を形成し、その後に押出機中でポリウレタンを形成して終了している。
【0005】
いずれの方法も特に低い軟化温度を有する均質なポリウレタン品質を製造するために役立つ。
【0006】
これらの2つの方法の本質的な欠点は、混合装置(攪拌される管型反応器)が自浄性に欠けることである。従ってプロセス中、デッドスペースに生成物の堆積物が発生し、これは管型反応器の狭窄および最終的には自由な流れ断面の閉鎖につながり、製造プロセスの安定性ならびに連続性が制限される。
【0007】
本発明の課題は、良好な生成物の品質を保証する、ポリウレタン/ポリ尿素を製造するための、プロセスの柔軟性があり、かつ経済的な方法を提供することである。
【0008】
前記課題は、
α)回転軸を中心として回転する、高温の表面を有する物体A、
β)供給システムおよび
γ)急冷装置
を有する反応器中、連続的な運転方法で実施される、ポリウレタン/ポリ尿素の製造方法であって、
a)出発反応組成物の成分を、単独で、および/または混合物として、供給システムにより薄膜として、回転する物体Aの高温の表面の内側の領域上に施与し、薄膜は、回転する物体Aの高温の表面を経由して、回転する物体Aの高温の表面の外側の領域へと流れ、
b)薄膜は、ポリウレタン/ポリ尿素を含有する反応組成物として高温の表面を離れ、
c)反応組成物は、高温の表面を離れた後に、急冷装置を用いて急速に冷却され、
その際、出発反応組成物の成分として、
i)ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分および
ii)ポリオールおよび/またはポリアミンを含有するポリオール/ポリアミン成分
が存在し、高温の表面の温度は、70〜400℃であり、かつ急冷装置を用いて行われる、反応組成物の急速な冷却は、少なくとも30℃である、ポリウレタン/ポリ尿素の製造方法によって解決される。
【0009】
本発明による方法を実施する反応器は、特に短い滞留時間および高い反応温度の組み合わせを実現するプロセス実施を可能にする。従って本発明による方法によって、出発反応組成物の成分が、飛躍的に強力に加熱され、相応して迅速に反応し、その際、その後の急冷により、得られた生成物は熱によって条件付けられる不所望な副反応から保護されることが保証される。急冷装置による反応組成物の急速な冷却は、最大で5秒以内に、有利には僅か1秒以内に行われる。
【0010】
本発明による方法は、柔軟性があり、かつ簡単なプロセス最適化の可能性を提供する。種々の成分が、高温の表面の異なった箇所で、出発組成物の成分として施与されることが容易に可能になる。方法技術においてしばしば問題となる「スケールアップ」は、簡便性と、通常は使用される反応器の大きさが比較的小さいことに基づいて特に簡単である。さらに、前記の反応器の投資コストならびに維持費(クリーニング等)は極めて低いということに言及すべきである。さらに、得られる生成物、つまりポリウレタン/ポリ尿素を含有する反応組成物の品質は、プロセスパラメータ(滞留時間、温度、出発反応組成物の成分の供給)を変更することによって容易に適切に変化させることができる。
【0011】
本発明の有利な実施態様では、使用されるポリオール/ポリアミン成分のアミノ基およびヒドロキシル基の合計に対する、使用されるポリイソシアネート成分のイソシアネート基のモル比は、0.1〜10、有利には0.7〜1.3である。
【0012】
出発反応組成物の成分として、本発明による方法ではしばしばポリイソシアネートとポリオール/ポリアミンの相応する量比を使用するのみでなく、むしろ可塑剤、滑剤、分子量調節剤、難燃剤、無機/有機充填剤、着色剤、顔料および安定剤(加水分解、光および熱により条件付けられる分解に関して)、鎖長延長剤、溶剤および触媒をその他の成分として使用する。
【0013】
ポリイソシアネートとしては、ポリウレタン化学において一般に慣用されている、4〜30個のC原子を有する、脂肪族、脂環式、芳香族脂肪族および/または芳香族結合イソシアネート基を有する種を使用することができる。有利にはジイソシアネートが考えられる。特に挙げられるのは、ジイソシアネートX(NCO)2であり、ここでXは、4〜12個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、6〜15個の炭素原子を有する芳香族炭化水素、または6〜15個の炭素原子を有する脂環式または芳香族脂肪族炭化水素である。適切な芳香族ポリイソシアネートの例は、トルイレンジイソシアネート(TDI)の異性体(異性体純粋な形であっても、異性体混合物としてでもよい)である。相応する種の具体例は、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニル−メタン−4,4′−ジイソシアネート(4,4−MDI)またはジフェニルメタン2,4′−ジイソシアネート(2,4−MDI)または重合体MDI(異性体純粋な形であっても、異性体混合物としてでもよい)である。
【0014】
適切な脂環式ポリイソシアネートは、前記の芳香族ジイソシアネートの水素化生成物、たとえば4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、I−イソ−シアナトメチル−3−イソシアナト−1,5−トリメチル−シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水素化キシリレン−ジイソシアネート(H6XDI)、1−メチル−2,4−ジイソシアナト−シクロヘキサン、m−もしくはp−テトラメチルキシレンジイソシアネート(m−TMXDI、p−TMXDI)および二量体脂肪酸−ジイソシアネートである。適切な脂肪族ポリイソシアネートは、テトラメトキシブタン−1,4−ジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサン−1,6−ジイソシアネート(HDI)、1,6−ジイソシアナト−2,2,4−トリメチルヘキサン、1,6−ジイソシアナト−2,4,4−トリメチルヘキサンならびに1,12−ドデカンジイソシアネート(C12DI)である。さらに、単純な脂肪族、脂環式、芳香族脂肪族および/または芳香族ジイソシアネートを変性することにより製造された、少なくとも2つのジイソシアネートから構成される、ウレトジオン構造、イソシアヌレート構造、ウレタン構造、アロファネート構造、ビウレット構造、イミノオキサジアジンジオン構造および/またはオキサジアジントリオン構造を有するポリイソシアネートが適切である。
【0015】
モノイソシアネートの場合には、オリゴマーのウレタン/尿素が得られる。
【0016】
ポリオール成分の選択は本発明の場合には重要ではない。ポリオール/ポリアミン成分として、低分子量のポリオールも、高分子量のポリオール/ポリアミンも使用することができる。ポリオールとして、有利には分子あたり2または3のヒドロキシル基を有し、かつ400〜200000、有利には1000〜18000の分子量を有する、室温で液状の、ガラス状の固体/非晶質または結晶質のポリヒドロキシ化合物が適切である。典型的な例として、二官能性のポリプロピレングリコールが挙げられる。エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの、ヒドロキシル基を有するランダムコポリマーおよび/またはブロックコポリマーもまた使用することができる。適切なポリエーテルポリオールは、ポリウレタン化学において公知のポリエーテル、たとえば開始剤分子を使用して製造される、スチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドまたはエピクロロヒドリンからなるポリエーテルである。具体的には、特にポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(ポリ−THF)、1,2−ポリブチレングリコール、またはこれらの混合物が適切である。適切なポリエーテル種のために有利な分子量範囲(数平均)は、400〜200000、特に1000〜18000である。ポリオール成分として使用することができる、末端のヒドロキシル基を有する別のタイプのコポリマーは、一般式:
【化1】

[式中、Rは、同じであるか、または異なっており、かつ有利にはOMe、OiPr、ClまたはBrを表す]により記載される(たとえばMacromolecules 2004、37、4038-4043、"Controlled" High-Speed Anionic Polymerizationにより製造可能)。
【0017】
さらに、ポリオール成分として、ジカルボン酸またはトリカルボン酸、たとえばアジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、コルク酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、3,3−ジメチルグルタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸および/または二量体脂肪酸と、低分子ジオールもしくはトリオール、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、二量体脂肪アルコール、グリセリンおよび/またはトリメチロールプロパンとの縮合により製造することができる、液状の、ガラス状の非晶質または結晶質ポリエステルが適切である。
【0018】
ポリオールの別の適切な群は、カプロラクタムをベースとするポリエステルであり、これは「ポリカプロラクトン」ともよばれる。別の使用可能なポリオールは、ポリカーボネート−ポリオールおよび二量体ジオールならびにひまし油およびその誘導体である。さらに、ヒドロキシル基を有するポリカーボネートが考えられ、これらは炭酸誘導体、たとえばジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはホスゲンとジオールとの反応により得られる。具体的にはエチレングリコール、1,2−および1,3−プロパンジオール、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール−1,2,6、ブタントリオール−1,2,4、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット、キニット(Chinit)、マンニット、ソルビット、メチルグリコシドおよび1,3,4,6−ジアンヒドロヘキシットである。特に表品名"Poly-bd(登録商標)"で市販されている、ヒドロキシ官能性ポリブタジエンもまた、ポリオールとして、これらの水素化類似体と同様に使用することができる。さらに、商品名"Thiokol(登録商標)NPS-282"で市販されているヒドロキシ官能性ポリスルフィドならびにヒドロキシ官能性ポリシロキサンが考えられる。
【0019】
本発明により使用することができるポリアミンとして、特にヒドラジン、ヒドラジン水和物および置換されたヒドラジン、たとえばN−メチルヒドラジン、N,N′−ジメチルヒドラジン、酸二ヒドラジド、アジピン酸、メチルアジピン酸、セバシン酸、ヒドロアクリル酸、テレフタル酸、セミカルバジドアルキレン−ヒドラジド、たとえば13−セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、セミカルバジドアルキレン−カルバジンエステル、たとえば2−セミカルバジドエチル−カルバジンエステルおよび/またはアミノセミカルバジド化合物、たとえば13−アミノエチルセミカルバジドカーボネートが適切である。
【0020】
ポリアミン、たとえば表品名Jeffamine(登録商標)(ポリエーテルポリアミン)で市販されているポリアミンもまた適切である。
【0021】
本発明により使用されるポリオール/ポリアミン成分は、通常、ポリオールのみを含有するか、またはポリオールとポリアミンとの混合物を含有する。
【0022】
ポリオール/ポリアミン成分として、いわゆる鎖長延長剤として知られている種が考えられ、これは過剰のイソシアネート基と反応し、通常は400未満の分子量を有し、かつしばしばポリオール、アミノポリオールまたは脂肪族、脂環式もしくは芳香族脂肪族ポリアミンの形で存在している。
【0023】
適切な鎖長延長剤はたとえば、
●アルカンジオール、たとえばエタンジオール、1,2−および1,3−プロパンジオール、1,4−および2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,3−ジメチルプロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、
●エーテルジオール、たとえばジエチレングリコール、トリエチレングリコールまたはヒドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、
●ヒドロキシブチルヒドロキシカプロン酸エステル、ヒドロキシヘキシルヒドロキシ酪酸エステル、アジピン酸ヒドロキシエチルエステルおよびテレフタル酸ビスヒドロキシエチルエステルおよび
●ポリアミン、たとえばエチレンジアミン、1,2−および1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、2,2,4−および2,4,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミンの異性体混合物、2−メチル−ペンタメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、1,3−ならびに1,4−キシリレンジアミンおよび4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン
である。
【0024】
最後に、ポリオール/ポリアミン成分は、たとえば長鎖の、脂肪族カルボン酸または脂肪アルコールから得られる、二重結合を有する種を含有していてもよいことを挙げておくべきである。オレフィン二重結合による官能化は、たとえばアリル基の組み込みにより、またはアクリル酸もしくはメタクリル酸ならびにこれらのそれぞれのエステルの組み込みにより可能である。
【0025】
出発反応組成物の成分として、溶剤を使用することもできる(これらの溶剤は、反応の間に沸騰して気化するか、または混合物中に残留してもよい)。溶剤としてたとえばエチルアセテート、ブチルアセテート、1−メトキシプロピル−2−アセテート、3−メトキシ−n−ブチルアセテート、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンまたはテストベンジンが適切である。特に高度に置換された芳香族化合物を含有する溶剤混合物、たとえばソルベントナフサ、Solvesso(登録商標)(Exxon Chemicals,Houston、USA)、Cypar(登録商標)(Shell Chemicals、Eschborn、DE)、Cyclo Sol(登録商標)(Shell Chemicals、Eschborn、DE)、Tolu Sol(登録商標)(Shell Chemicals、Eschborn、DE)、Shellsol(登録商標)(Shell Chemicals、Eschborn、DE)も同様に適切である。使用することができる溶剤はさらに、炭酸エステル、たとえばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、1,2−エチレンカーボネートおよび1,2−プロピレンカーボネート、ラクトン、たとえば1,3−プロピオラクトン、i−ブチロラクトン、カプロラクトン、メチルカプロラクトン、プロピレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルアセテート、N−メチルピロリドンおよびN−メチルカプロラクタムである。
【0026】
本発明の有利な実施態様では、本発明による方法において、ポリウレタンの製造のために適切な触媒を使用しない。この変法は、特に高温で、かつ反応性出発成分を使用する際に使用される。触媒がポリマー方法生成物中に存在しないことは、本質的な質的な利点であるとみなすことができる。
【0027】
しかし他方で、本発明による方法において、ポリウレタンを製造するために適切な触媒が、出発反応組成物の成分として使用される。触媒として自体公知の、ポリウレタン化学で慣用の、Sn、Mn、Fe、Co、Cd、Ni、Cu、Zn、Zr、Ti、Hf、Al、Th、Ce、Bi、N、Pのような原子を含有する触媒が適切である。触媒/イソシアネートのモル比は、イソシアネートのタイプおよび触媒の種類に依存し、通常は0〜0.1、有利には0〜0.03である。
【0028】
通常、方法パラメータは、使用される量のポリオールおよびポリアミンと反応可能な、最大のイソシアネート成分のイソシアネート基の少なくとも93%、有利には少なくとも98%が、急冷装置による反応組成物の急速な冷却の後で、ポリオール/ポリアミン成分のヒドロキシル基および/またはアミノ基と反応しているように調整されている。この関連で、方法パラメータとして特に温度、滞留時間、施与される薄膜の膜厚、出発反応組成物の使用される成分の供給、種類ならびに濃度が挙げられる。
【0029】
回転軸を中心として回転する、高温の表面を有する物体Aは、有利には水平の、または水平からわずかに逸脱した(約30°までの角度を有する)回転板として存在している。あるいは、高温の表面を有する物体Aは、ツボ形、リング形もしくは円すい形であってもよい。通常、高温の表面を有する物体Aは、0.10m〜3.0m、有利には0.20m〜2.0mおよび特に有利には0.20m〜1.0mの直径を有する。高温の表面は、平滑であってもよいし、あるいは反応混合物の滞留時間に影響を与えるリブ状もしくはスパイラル状のパターンを有していてもよい。有利には高温の表面を有する物体Aは、本発明による方法の条件に関して存在する容器中に組み込まれている。
【0030】
高温の表面の温度は、有利には100〜300℃、特に有利には120〜250℃である。高温の表面の温度は重要なパラメータの一つであり、当業者は他の関連する影響値、たとえば出発反応混合物の滞留時間、種類および量と共に調整することができるべきである。
【0031】
本発明の特別な実施態様では、高温の表面は、別の回転する物体へと延びていて、反応組成物は急冷装置により冷却される前に、回転する物体Aの高温の表面から、少なくとも1の別の回転する、高温の表面を有する物体の高温の表面上に到達する。別の回転する物体は、有利には物体Aに相応して作成されている。一般に物体Aが実質的に、別の物体に反応混合物を供給する、つまり薄膜は、物体Aから、少なくとも1の別の物体へと流れ、この少なくとも1の物体を離れると、次いで急冷装置により急速に冷却される。
【0032】
急冷装置は、一般に有利には1もしくは複数の冷却壁の形で存在しており、これにより反応混合物の急速な冷却が可能になる。しばしば円筒形もしくは円すい形である冷却壁は、平滑な表面を有しているか、または、凹凸のある表面を有しており、その温度は一般に−50℃〜200℃である。急冷装置により行われる反応組成物の急速な冷却は、有利には少なくとも50℃、好ましくは少なくとも100℃である。
【0033】
使用される供給システムによって、有利な実施態様では、出発反応組成物の成分を、高温の表面の任意の箇所で供給できることが可能になる。出発反応組成物の成分の部分量または全量を予め混合し、かつ引き続き供給システムによりはじめて高温の表面上に施与することができる。
【0034】
本発明の特に有利な実施態様では、回転する物体Aは、高温の表面を上側に有する回転板として存在しており、その際、出発反応組成物の成分は、単独で、および/または混合物として、供給システムにより中央の領域に薄膜として施与され、かつ急冷装置は回転板を取り巻く冷却壁として存在しており、その上に応組成物は高温の表面を離れた後に生じる。
【0035】
高温の表面を有する物体Aの回転速度、および出発反応混合物の成分の供給速度は可変的である。通常、回転速度は毎分1〜20000回転、有利には100〜5000回転、および特に有利には500〜2000回転である。高温の表面の面積単位あたり、回転する物体A上に存在する反応混合物の体積は、一般に0.1〜10mL/dm2、有利には1.0〜5.0mL/dm2である。反応混合物の平均滞留時間(滞留時間の範囲の頻度平均)は特に、高温の表面の大きさ、出発反応混合物の成分の種類および量、高温の表面の温度、ならびに回転する物体Aの回転速度に依存し、かつ通常、0.01〜100s、有利には0.1〜10s、特に有利には1〜10sであり、従って極めて短い時間であるとみなすことができる。このことによって、不所望の副反応の度合いが著しく低減され、ひいては高品質の生成物が得られることが保証される。
【0036】
本発明の有利な実施態様では、方法パラメータとして、供給システムにより施与される薄膜の膜厚を0.1μm〜1.0mm、有利には20〜80μmに、および高温の表面上での出発反応組成物の成分の頻度平均滞留時間を、0.01〜20秒、有利には0.1〜10秒に調整する。
【0037】
本発明による方法は、有利には標準圧力で、および乾燥した保護ガスの雰囲気で実施するが、ただしその際、方法は選択的に残留イソシアネートを脱気する目的で、真空下に、または温度を高めるために加圧下に運転することができる。
【0038】
最後に、本発明は、前記の方法により製造することができるポリウレタン/ポリ尿素にも関する。
【0039】
以下では本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。
【0040】
実施例
全ての実施例において、刊行物WO00/48728、WO00/48729、WO00/48730、WO00/48731およびWO00/48732に記載されているような、Protensive Limitedの反応器タイプを使用した。
【0041】
物体Aは、直径20cmまたは10cmの円板であり、これらは異なった表面を有している。この物体Aは、−50℃〜+250℃の範囲で液体により冷却または加熱することができ、かつ10rpm(rpm=回転数/分)〜3000rpmの回転が可能である。歯車ポンプにより窒素下で前混合物を計量供給する。
【0042】
急冷装置は、冷媒がその中を流れる金属壁である。
【0043】
例1:ポリオールと脂肪族イソシアネート
1Lの容器中に、Elastogran社のLupranol(登録商標)1000(KOH技術により合成されたポリプロピレングリコール、ジオール、分子量約2000g/モル、OH価55、粘度325mPa・s)396g、Degussa GmbH社のVestanat(登録商標)IPDI(イソホロンジイソシアネート、CAS4098−71−9)104g、Borchers社の添加剤TI(p−トルエンスルホニルイソシアネート(PTSI)、CAS4083−64−1)1.50gおよびDBTDL(ジブチルスズジラウレート、CAS(Chemical Abstracts Service)77−58−7)0.2gを装入した。混合物を室温でKPG攪拌機により30分間攪拌した。直径20cmの平滑な円板として存在する物体Aを、オイルで180℃に加熱し、かつ400rpmで回転させた。歯車ポンプで窒素下に前混合物を5.00ml/sで計量供給した。ポリウレタン/ポリ尿素生成物を、冷却された(−10℃)壁により冷却した。生成物は該システムを50℃で離れ、4.49質量%の残留NCOを含有していた。反応率はほぼ100%であり、粘度(DIN EN ISO 2555ENにより測定、以下の例においても同様)は6250mPa・sであった。
【0044】
例2:ポリオール混合物と芳香族イソシアネート
2Lの容器中に、BASF SE社のPluracol 1044S(KOH技術により合成したポリプロピレングリコール、ジオール、分子量約4000g/モル、OH価30、粘度790mPa・s)625g、BASF SE社のPluracol220S(KOH技術により合成したポリプロピレングリコール、トリオール、分子量約6000g/モル、OH価26、粘度1300mPa・s)375g、およびオクタン酸ビスマス(CAS67874−71−9)0.28gを装入し、かつKPG攪拌機で混合した。200mLの容器に、Bayer AG社のDesmophen T−80 TDI(CAS584−84−9)90.8gを、Borchers社の添加剤TI(p−トルエンスルホニルイソシアネート(PTSI)、CAS4083−64−1)0.5gと混合した。直径20cmで、2回波形をつけた円板である物体Aをオイルで150℃に加熱し、かつ1000rpmで回転させた。2つの歯車ポンプを用いて、窒素下にポリオール/触媒の前混合物を4.58g/sで、およびイソシアネート前混合物を0.42g/sでスタチックミキサーに計量供給した。このスタチックミキサーにより物体A上に5.00g/sの連続した前混合物が供給された。ポリウレタン/ポリ尿素生成物を、冷却された(−10℃)壁により冷却した。生成物は、50℃で系を離れ、2.11質量%の残留NCOを含有していた。反応率はほぼ100%であり、粘度は13800mPa・sであった。
【0045】
例3:ポリオール、鎖長延長剤と脂肪族イソシアネート
2Lの容器にBayer AG社のAcclaim(登録商標)8200N(DMC技術により合成されたポリプロピレングリコール、ジオール、分子量約8000g/モル、OH価14、粘度3000mPa・s)990g、ヘキシレングリコール(CAS107−41−5)10g、BASF SE社のBasonat(登録商標)I(イソホロンジイソシアネート、CAS4098−71−9)69g、およびオクタン酸ビスマス(CAS67874−71−9)1.6gを装入した。混合物を室温でKPG攪拌機により30分間攪拌した。直径20cmの平滑な円板である物体Aを、オイルで180℃に加熱し、400rpmで回転させた。歯車ポンプにより窒素下に、前混合物を5.00ml/sで計量供給した。ポリウレタン/ポリ尿素生成物を、冷却された(−10℃)壁により冷却した。生成物は50℃で系を離れ、0.9質量%の残留NCOを含有していた。反応率はほぼ100%であり、粘度は30000mPa・sであった。
【0046】
例4:さらに小さい円板上でのポリオール、鎖長延長剤と脂肪族イソシアネート
2Lの容器に、Bayer AG社のAcclaim(登録商標)8200N(DMC技術により合成されたポリプロピレングリコール、ジオール、分子量約8000g/モル、OH価14、粘度3000mPa・s)990g、ヘキシレングリコール(CAS107−41−5)10g、BASF SE社のBasonato(登録商標)I(イソホロンジイソシアネート、CAS4098−71−9)69gおよびオクタン酸ビスマス(CAS67874−71−9)1.6gを装入した。混合物を室温でKPG攪拌機により30分間攪拌した。直径10cmの平滑な円板である物体Aを、オイルで180℃に加熱し、かつ400rpmで回転させた。歯車ポンプにより窒素下に前混合物を1.25ml/sで計量供給した。ポリウレタン/ポリ尿素生成物を、冷却された(−10℃)壁により冷却した。生成物は50℃で系を離れ、0.9質量%の残留NCOを含有していた。反応率は100%であり、粘度は30000mPa・sであった。
【0047】
例5:触媒を用いないポリオール/ジアミンと芳香族イソシアネート
2Lの容器に、Bayer AG社のAcclaim(登録商標)8200N(DMC技術により合成したポリプロピレングリコール、ジオール、分子量約8000g/モル、OH価14、粘度3000mPa・s)990g、エチレンジアミン(CAS107−15−3)10gを装入し、かつKPG攪拌機で混合した。200mLの容器に、Desmodur(登録商標)VP(2,4′−MDI約55%および4,4′−MDI約45%からなる混合物)81.4gを装入した。高いメチレンジフェニル−2,4′−ジイソシアネート(2,4′−MDI)含有率に基づいて、これは室温で液状である。直径20cmの平滑な円板である物体Aを、オイルで180℃に加熱し、かつ1000rpmで回転させた。2つの歯車ポンプを用いて窒素下に、ポリオール/ジアミン前混合物を4.68g/sで、およびイソシアネート前混合物を0.32g/sでスタチックミキサー中に計量供給した。このスタチックミキサーにより、物体Aの上に5.00g/sの連続的な前混合物が供給された。ポリウレタン/ポリ尿素生成物を、冷却された(−10℃)壁により冷却した。生成物は50℃で系を離れ、2.31質量%の残留RCOを含有していた。反応率はほぼ100%であり、粘度は35400mPa・sであった。
【0048】
全ての例において、円板上での反応は、高い温度のおかげで2秒未満で行われた。急冷装置によって、生成物は副反応を生じることなく回収することができる。生成物は、2秒後に装置を離れる。プロセスは完全に連続的であり、急速に終了することができる。「スケールアップ」は、例4および3の間での比較により首尾よく行われ、かつ簡単である。バッチ間でのクリーニング工程は不要である。というのも、純粋でない最初の50mlの生成物が除去されたからである。さらに、連続運転中に、クラスト形成、粘度および残留NCOの変動は観察されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α)回転軸を中心として回転する、高温の表面を有する物体A、
β)供給システムおよび
γ)急冷装置
を有する反応器中、連続的な運転方法で実施される、ポリウレタン/ポリ尿素の製造方法であって、
a)出発反応組成物の成分を、単独で、および/または混合物として、供給システムにより薄膜として、回転する物体Aの高温の表面の内側の領域上に施与し、薄膜は、回転する物体Aの高温の表面を経由して、回転する物体Aの高温の表面の外側の領域へ流れ、
b)薄膜は、ポリウレタン/ポリ尿素を含有する反応組成物として高温の表面を離れ、
c)反応組成物は、高温の表面を離れた後に、急冷装置を用いて急速に冷却され、
その際、出発反応組成物の成分として、
i)ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分および
ii)ポリオールおよび/またはポリアミンを含有するポリオール/ポリアミン成分
が存在し、高温の表面の温度は、70〜400℃であり、かつ急冷装置を用いて行われる、反応組成物の急速な冷却は、少なくとも30℃である、ポリウレタン/ポリ尿素の製造方法。
【請求項2】
使用されるポリオール/ポリアミン成分のアミノ基およびヒドロキシル基の合計に対する、使用されるポリイソシアネート成分のイソシアネート基のモル比が、0.1〜10、有利には0.7〜1.3であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
急冷装置による反応組成物の急速な冷却の後に、使用されるポリオールおよびポリアミンの量と反応可能な、最大のポリイソシアネート成分のイソシアネート基の少なくとも93%、有利には少なくとも98%が、ポリオール/ポリアミン成分のヒドロキシル基および/またはアミノ基と反応していることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
高温の表面が別の回転する物体上に延びており、反応組成物は、急冷装置による冷却の前に、回転する物体Aの高温の表面から、少なくとも1の別の、回転する、高温の表面を有する物体の高温の表面上に到達することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
回転する物体Aは、高温の表面を上側に有する回転板として存在しており、出発反応組成物の成分は単独で、および/または混合物として供給システムにより中央の領域で薄膜として施与され、かつ急冷装置は、回転板を包囲する冷却壁として存在し、その上に反応組成物が高温の表面を離れた後に生じることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
高温の表面の温度が、100〜300℃、有利には120〜250℃であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ポリウレタンの製造のために適切な触媒を使用しないことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ポリウレタンの製造のために適切な触媒が、出発反応組成物の成分として存在していることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
急冷装置により行われる、反応組成物の急速な冷却は、少なくとも50℃、有利には少なくとも100℃であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
方法パラメータとして、
供給システムにより施与される薄膜の膜厚は0.1μm〜1.0mm、有利には20〜80μmであり、かつ高温の表面上での出発反応組成物の成分の頻度平均滞留時間は、0.01〜20秒、有利には0.1〜10秒である
が調整されていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法により製造することができるポリウレタン/ポリ尿素。

【公表番号】特表2010−539266(P2010−539266A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524450(P2010−524450)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2008/061495
【国際公開番号】WO2009/033975
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(503343336)コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー (139)
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Albert−Frank−Strasse 32, D−83308 Trostberg, Germany
【Fターム(参考)】