説明

ポリウレタン

【課題】(a) ポリオールと、(b) 芳香族、脂環式または脂肪族のポリイソシアネートまたはこれらの組合せの中から選択されるポリイソシアネートと、(c)硫黄ブリッジを有する連鎖延長剤(i)と主連鎖延長剤(ii)とを含む連鎖延長剤の混合物(ただし、連鎖延長剤(i)は連鎖延長剤混合物全体の1〜30重量%)の反応成分の反応生成物であるポリウレタン。
【解決手段】硫黄ブリッジを有する連鎖延長剤(i)が下記式を有する:R1−A−Sx−B−R2(ここで、R1およびR2はOH、NH2またはこれらの組合せの中から選択され、AとBは二価の脂肪族、脂環式または芳香族有機基またはこれらの組合せの中から選択され、AとBは互いに同じでも異なっていてもよく、xは2〜10の整数)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリウレタンに関するものであり、より詳細にはジチオールおよび/またはジチオジアミンを含む反応物から成るポリウレタンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは多種多様な商業的用途、例えば剛性または可撓性のあるフォーム、エラストマー、コーテング剤、接着剤、シーラント等で使用されるスペシャリティーポリマーである。ポリウレタン化学ではイソシアネート(−N=C=O)と活性水素化合物(R−OH)または(R−NH2)との反応を用いてポリウレタンとして知られるポリマー群を生産する。この中にはイソシアネートとR−NH2との反応で得られるポリウレタン−尿素ポリマーも含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はポリウレタンと、このポリウレタンの製造方法と、それから得られる各種物品と、そうした物品の製造方法とを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つの具体例は、下記(a)〜(c)の反応成分:
(a) ポリオール、
(b) 芳香族、脂環式または脂肪族のポリイソシアネートまたはこれらの組合せの中から選択されるポリイソシアネート、
(c)硫黄ブリッジを有する連鎖延長剤(i)と主連鎖延長剤(ii)とを含む連鎖延長剤の混合物(ただし、連鎖延長剤(i)は連鎖延長剤混合物全体の1〜30重量%)
の反応生成物であるポリウレタンにおいて、
硫黄ブリッジを有する上記連鎖延長剤(i)が下記式を有することを特徴とするポリウレタンにある:
1−A−Sx−B−R2
(ここで、R1およびR2はOH、NH2またはこれらの組合せの中から選択され、AとBは二価の脂肪族、脂環式または芳香族の有機基またはこれらの組合せの中から選択され、AとBは互いに同じでも異なっていてもよく、xは2〜10の整数である)
【0005】
本発明の一つの実施例では反応成分として遊離硫黄および/またはゴム硬化促進剤がさらに含まれる。
本発明の一つの実施例ではポリウレタンが発泡ポリウレタン、コーテング材、シーラント、成形可能および/または注型可能な材料である。
本発明はさらに上記ポリウレタンから成る装置に関するものである。この装置の具体例は金属基材の少なくとも一つの表面上に配置されたポリウレタンを含む。金属基材の例は金属ワイヤ、金属コード、金属タイヤコード、金属ケーブル、金属ストランド、金属ロッド、金属プレート、金属フィラメントまたはこれらの組合せから選択される金属補強材要素である。
【0006】
装置の別の具体例は導管で、この導管の一つまたは複数の壁は請求項1に記載のポリウレタンエラストマーから成り、一つまたは複数の壁はそれに埋め込まれた金属基材で補強されている。この装置は例えばパイプまたはホースにすることができ、さらにはコンベヤーベルトにすることができる。
【0007】
本発明の特定の実施例では、ポリウレタンがその内部または表面上に位置した金属基材と強い結合を形成する。従って、本発明の一つの具体例は金属基材とその表面上に配置されたポリウレタンとから成る物品にある。そうした物品の一つの具体例は構造支持体となる金属基材および/またはポリウレタン補強材である。本発明の一つの実施例は水に溶けず、および/または、水中に簡単に乳化しない。
【0008】
本発明の上記およびその他の目的、特徴および利点は添付した図面を参照した以下の本発明の好ましい実施例の詳細な説明から明らになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】金属基材を有する注型成形したポリエステルキャスタの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
エラストマーは高度の可逆変形性(すなわち変形や引張荷重を除去すると元の形に戻ることができる性質)を有するポリマ材料の一つの種類である。ポリマ材料から成るエラストマーは一般に粘弾性を有する。本発明のポリウレタンの一つの実施例はエラストマー特性を有する。
【0011】
本発明のポリウレタンの一つの具体例はコーテング材、シーラントまたは接着剤として使用できる。ポリウレタンは他の材料と良く結合するのでポリウレタンはシーラント、コーテング材および/または接着剤として特に有用である。特定のポリウレタンに発泡剤を加えると、発泡ポリウレタンから物品を製作できる。さらに他の実施例は成形可能および/または注型可能なポリウレタンである。
【0012】
ポリウレタンの一つの実施例は(1) ポリオールと、(2) 芳香族、脂環式または脂肪族のポリイソシアネートまたはこれらの組合せと、(3) 主連鎖延長剤および硫黄ブリッジ連鎖延長剤を含む連鎖延長剤混合物とから成る成分を反応させて得ることができる。
【0013】
上記の硫黄ブリッジ連鎖延長剤は硫黄ブリッジを有するジアルコール、硫黄ブリッジを有するジアミンおよび/または硫黄ブリッジを有するアミノアルコールとして特徴付けることができる。ここで使用するアミノアルコールは1つのアルコール基と1つのアミン基とを含む化合物である。主鎖延長剤が重量的に連鎖延長剤混合物の主たる成分を形成する。本発明の一つの実施例では主鎖延長剤はアニオン基および/またはカチオン基を含まず、および/または、硫黄ブリッジも含まない。特にことわらない限り、反応物に加える反応成分の量はポリオール反応成分の全重量を基にした重量%で表す。
【0014】
ポリオール反応成分は一つの分子に付いた少なくとも2つのイソシアネート反応基を有するものが適している。上記分子の例としてはポリエステル、ポリエーテル、ポリカプロラクトン、ポリプロピレングリコールまたはこれらの組合せが挙げられる。本発明の一つの実施例のポリオールはヒドロキシル末端を有するポリオール、アミノ末端を有するポリオールまたはこれらの組合せである。
【0015】
本発明に適したポリオール反応成分は例えばポリウレタン化学分野またはその応用分野で広く公知のポリオールの中から選択できる。本発明の一つの実施例のポリオール反応成分はその数平均分子量が例えば約500〜約20,000グラム/モル、約600〜約20,000グラム/モル、約600〜約10,000グラム/モル、約600〜約7,000グラム/モルまたは約600〜約4000グラム/モルであることで特徴付けられる。
【0016】
本発明に適したポリオール反応成分の例としてはポリエーテルポリオール、アミン末端を有するポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ひまし油ポリオール、多環式ポリオールおよびポリカーボネートポリオールが挙げられる。ポリエーテルポリオールにはポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリプロピレンオキシドグリコール(PPO)およびポリブチレンオキシドグリコール(PBO)が含まれる。アミン末端を有するポリオールは第一または第二アミノ官能基で置換された末端水酸基を有するポリエーテルグリコールをベースにしたものである。ポリエステルポリオールは例えばポリエチレンアジパート、ポリエチレングリコールアジパート、ポリカプロラクトンジオールおよびポリカプロラクトン−ポリアジパートコポリマージオールを含む。他の多くのポリオールが利用でき、当業者に公知の方法で使用できる。本発明に適したポリオール反応成分は少なくとも2つのポリオールの混合物を含むことができる。
【0017】
本発明に適した芳香族、脂環式および/または脂肪族のポリイソシアネート反応成分は2つ以上の脂肪族、脂環式または芳香族の基に結合したイソシアナート基を有するポリイソシアネートとして特徴付けることができる。適当なポリイソシアネートの例としてはポリウレタン化学の分野またはその応用分野で公知のであるポリウレタンを含む。適した脂肪族および脂環式のポリウレタンの例は1,6-ジイソシアネートヘキサン(HDI)、l-イソシアネート-5-イソシアネートメチル-3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、ビス(4-イソシアネートシクロヘキシル)メタン(H12MDI)、l,3-ビス-(l-イソシアネート-l-メチル−エチル)ベンゼン(m-TMXDI)、これらの混合物または各脂肪族ポリウレタンの工業的異性体混合物が挙げられる。
【0018】
本発明に適した芳香族ポリウレタンの例としては2,4-トルエンジイソシアナート(TDI)、4,4'-ジフェニル−メタンジイソシアナート(MDI)が挙げられ、場合によってはその高級ホモログ(重合したMDI)、ナフタリンジイソシアナート(NDI)、重合したメチレンジフェニルジイソシアナート(PMDI)、これらの混合物または各芳香族ポリウレタンの工業的異性体混合物が含まれる。
【0019】
本発明に適したポリウレタン反応成分には例えばアロハネート(allophanate)やビウレット(biuret)、カルボジイミの形をしたポリイソシアネートの変性化合物と、イソシアネートのオリゴマーも含まれる。他の多くのポリイソシアネートが利用でき、当業者は公知の任意のポリイソシアネートを使用することができよう。
【0020】
上記ポリウレタン反応成分はポリオールの全重量をベースにして例えば10〜200重量%の量で反応物に加えられることができる。本発明の一つの実施例ではポリオールの全重量に対して例えば20〜150重量%、35〜110重量%、さらには40〜100重量%のポリウレタンを使用する。
【0021】
本発明のポリウレタンを製造する方法の一つの実施例では、先ず最初にポリオール反応成分とポリウレタン反応成分とを組み合わせて当業者に公知のプレポリマーを形成する。次に、このプレポリマーを当業者に公知の連鎖延長剤の混合物と反応させる。上記プレポリマーは上記のポリオールまたはポリイソシアネートを用いて作ることができる。本発明の一つの実施例ではNCOの含有量を1〜50%、3〜40%、7〜15%、さらには6〜20%にすることができる。
【0022】
反応物は、上記のポリオール反応成分およびポリイソシアネート反応成分の他に、主鎖延長剤(main chain extender)と硫黄ブリッジ(sulfur bridge chain extender)連鎖延長剤とを含む連鎖延長剤(chain extender)の混合物をさらに含む。連鎖延長剤混合物の主成分(majority)は主鎖延長剤から成る。この連鎖延長剤混合物はポリオールの全重量に対して例えば1〜40重量%の量で反応物に加えることができる。本発明の一つの実施例ではポリオールの全重量をベースにして例えば2〜30重量%、4〜20重量%、さらには、5〜15重量%の量の連鎖延長剤混合物を含む。
【0023】
本発明に適した硫黄ブリッジ連鎖延長剤反応成分は硫黄ブリッジを有するジアルコール、硫黄ブリッジを有するジアミンおよび/または硫黄ブリッジを有するアミノアルコールで、下記の式(1)で特徴付けられる:
1−A−Sx−B−R2 (1)
(ここで、R1およびR2はOH、NH2またはこれらの組合せ(アミノアルコールの場合)から選択され、AとBは二価の脂肪族、脂環式または芳香族の有機基またはこれらの組合せの中から選択され、xは約2〜10の整数である)
本発明の一つの実施例ではxは2〜10、2〜8または2〜5の整数で、AとBは互いに同じでも異なっていてもよい)
【0024】
硫黄ブリッジ連鎖延長剤は連鎖延長剤混合物の全重量をベースにして例えば少なくとも0.5重量%であり、30重量%以下の量で反応物に加えることができる。本発明の一つの実施例では連鎖延長剤混合物の全重量をベースにして例えば、1〜30重量%、2〜25重量、3〜23重量%、4〜20重量%、さらには5〜15重量%の量で硫黄ブリッジ連鎖延長剤を加える。
【0025】
本発明の一つの実施例では硫黄ブリッジ連鎖延長剤としてジアルコールの2.2'-ジチオジエタノールまたはジアミンの4,4'−ジチオジアニリンを含む。これら2つはともに上記一般式(1)を満たす化合物で、AおよびBがC24またはC64で、xは2である。本発明の一つの実施例のポリウレタンは式(1)のAおよびBが直鎖アルキル基を含む。本発明の他の実施例では式(1)のAおよびBは脂環式および/または芳香族の単位および/または直鎖アルキル単位であり、および/または、AおよびBは互いに同じか異なっている。
【0026】
一般式(1)を有する化合物の他の例には下記が含まれる:ヒドロキシアルキルジ(トリ、テトラまたはペンタ)スルフィド、例えばビス(ヒドロキシメチル)ジスルフィド、ビス(ヒドロキシメチル)トリスルフィド、ビス(ヒドロキシメチル)テトラスルフィド、ビス(ヒドロキシメチル)−ペンタスルフィド、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジスルフィド、ビス(2-ヒドロキシエチル)トリスルフィド、ビス(2-ヒドロキシエチル)テトラスルフィド、ビス(2-ヒドロキシエチル)ペンタスルフィド、ビス(3-ヒドロキシプロピル)ジスルフィド、ビス(3-ヒドロキシ−プロピル)トリスルフィド、ビス(3-ヒドロキシプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-ヒドロキシプロピル)ジスルフィド、ビス(2-ヒドロキシプロピル)トリスルフィド、ビス(2-ヒドロキシプロピル)テトラスルフィド、ビス(4-ヒドロキシブチル)ジスルフィド、ビス(4-ヒドロキシブチル)トリスルフィド、ビス(4-ヒドロキシブチル)テトラスルフィド、ビス(8-ヒドロキシオクチル)ジスルフィド、ビス(8-ヒドロキシオクチル)トリスルフィド、ビス(8-ヒドロキシオクチル)テトラスルフィド等、上記ヒドロキシアルキルジ(トリ、テトラまたはペンタ)スルフィのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物、ジ (2-ヒドロキシエチル)エステル(エチレンオキサイド付加物)またはジ(ヒドロキシプロピル)エステル(プロピレンオキサイド付加物)等、ジ(トリまたはテトラ)スルフィドジカルボン酸、例えば2,2'-ジチオジグリコール酸、2,2'−トリチオジグリコール酸、2,2'−テトラチオジグリコール酸、3,3'−ジチオ−ジプロピオン酸、3,3'−トリチオジプロピオン酸、3,3'-テトラチオジプロピオン酸、3,3'-ペンタチオ−ジプロピオン酸、4,4'-ジチオシブタン酸、4,4'-トリチオシブタン酸、4,4'-テトラチオシブタン酸、8,8'-ジチオジオクタン酸、8,8'-トリチオジオクタン酸、8,8'-テトラチオジオクタン酸、3,3'−ジヒドロキシジフェニルジスルフィド、3.'、3。ジヒドロキシジフェニルトリスルフィド、3,3'-ジヒドロキシジフェニルジスルフィド、3,3'-ジヒドロキシジフェニルテトラスルフィド等。
【0027】
1およびR2がNH2単位である一般式(1)の化合物の他の例は4,4'−ジアニリンジスルフィド、4,4'−ジアニリントリスルフィド、4,4'−ジアニリンテトラスルフィド、2、2'−ジアニリンジスルフィド、2、2'−ジアニリントリスルフィド、2、2'−ジアニリンテトラスルフィド等である。
【0028】
1とR2が互いに異なる一般式(1)の化合物の例はアミノアルコールの1,2−アミノエタノール、1,3−アミノプロパノールおよび1,4−アミノブタノールである。
【0029】
連鎖延長剤混合物中の主連鎖延長剤は上記の式(1)で特徴付けられる硫黄ブリッジを含まない。連鎖延長剤混合物の重量の主要部分は主連鎖延長剤からなる。本発明に適した主鎖延長剤反応成分はポリウレタン化学の分野またはその応用分野で公知の硬化剤から選択できる。本発明の一つの実施例での主鎖延長剤はアニオン基および/またはカチオン基を有していない点に特徴があるといえる。
【0030】
本発明の一つの実施例では、主鎖延長剤は脂肪族、脂環式および/または芳香族の多価アルコール、ポリアミンまたはこれらの組合せの中から選択できる。他の実施例の主鎖延長剤は短鎖のジアルコール、短鎖のジアミンまたはこれらの組合せで特徴付ける。ポリウレタンの実施例はジ−、トリ−および/またはテトラ−アルコールおよび/またはアミンであるが、一般にはジオールまたはジアミンを第2連鎖延長剤として選択する。
【0031】
本発明に適した短鎖延長剤の例は1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、プロピレンジアミン、プロピレンジオール、4,4‘−メチレンビス(3-クロル-2,6-ジエチルアニリン)(MCDEA)、4,4’−メチレンビス(2-クロルアニリン)(MOCA)、ジエチルチオトルエンジアミン(DETDA)およびジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)である。本発明に適した第2連鎖延長剤反応成分はアルバーマール社(Albermarle Corporation)からエタキュアー(ETHACURE)300の名称で商業的に入手できる。これはDMTDAから成り、分子量は214グラム/モルである。しかし、所望用途で要求される特性を有するポリウレタン組成物が得られる限り、ポリウレタン技術の当業者に公知の任意の連鎖延長剤を第2の連鎖延長剤として使用することができる。短鎖連鎖延長剤の数平均分子量は60〜600グラム/モルである。
【0032】
本発明の一つの実施例は硫黄および/または硬化促進剤をさらに含むことができる。硫黄および/または硬化促進剤を加えると特定実施例での金属基材に対するポリウレタンの結合強度が増加する。
【0033】
適した硫黄には微粉末の硫黄、ゴムメーカーの硫黄、商用硫黄および不溶性硫黄が含まれる。本発明の一つの実施例では硫黄はポリオールの0.5〜10重量%の量にするか、または、添加する硫黄のモル数が硫黄ブリッジ連鎖延長剤の全モル数の90〜110モル%となる量で反応物に加えることができる。
【0034】
本発明に適した硬化促進剤はゴム用硬化促進剤として公知のものの中から選択できる。本発明の一つの実施例では硬化促進剤はポリオールの0.5〜10重量%の量または加える硬化促進剤のモル数が硫黄ブリッジ連鎖延長剤の全モル数の90〜110モル%となる量で反応物に加えることができる。
【0035】
下記[表1]はモートン編、H L. Stephans、Rubber Technology、1987、第3版、第2章、"The Compounding and Vulcanization of Rubber"に記載のゴム硬化促進剤の分類法の一つである。
【表1】

【0036】
この文献の内容は本願明細書の一部を成す。
ジチオカルバメート促進剤の例は下記である:亜鉛ジベンジルジチオカルバメート(ZBEC、CAS番号14726-36-4)、亜鉛-N-ジメチル−ジチオカルバメート(ZDMC)、亜鉛-N-ジエチルジチオカルバメート(ZDEC、CAS番号14323-55-1)、亜鉛-N-ジブチル−ジチオカルバメート(ZDBC、CAS番号35884-05-0)、亜鉛-N-エチルフェニル−ジチオカルバメート(ZEBC、CAS番号14364-93-6)、亜鉛-N-ペンタメチレンジチオカルバメート(ZPMC、CAS番号13878-54-1)、ピペリジニウムペンタメチレンジチオカルバメート(CAS番号98-77-1)、ナトリウムジエチルジチオカルバメート(CAS番号148-18-5)、ビスマスジメチルジチオカルバメート(CAS番号21260-46-8)、カドニウムジエチルジチオカルバメート(CAS番号14239-68-0)、銅ジブチルジチオカルバメート(CAS番号13927-71-4)、銅ジメチルジチオカルバメート(CAS番号137-29-1)、シクロヘキシルエチルアンモニウムシクロヘキシルエチルジチオカルバメート、ジメチルアンモニウムジメチルジチオカルバメート(CAS番号598-64-1)、ジメチルシクロヘキシルアンモニウムジブチルジチオカルバメート(CAS番号149-82-6)、鉛ジアミルジチオカルバメート(36501-84-5)、鉛ジメチルジチオカルバメート(CAS番号19010-66-3);CAS番号72146-43-1、CAS 72146-41-9、CAS番号72146-42-0、ニッケルジイソブチルジチオカルバメート(CAS番号15317-78-9)、ニッケルジブチルジチオカルバメート(CAS番号13927-77-0)、ニッケルジメチルジチオカルバメート(CAS番号15521-65-0)、N-オキシジエチレンチオカルバミル-N-オキシジエチレンスルフェンアミド(CAS番号13752-51-7)、カリウムジメチルジチオカルバメート(CAS番号128-03-0)、セレニウムジエチルジチオカルバメート(CAS番号5456-28-0)、セレニウムジメチルジチオカルバメート(CAS番号144-34-3)、ナトリウムシクロヘキシルエチルジチオカルバメート、ナトリウムジベンジルジチオカルバメート(CAS番号55310-46-8)、ナトリウムジブチルジチオカルバメート(CAS番号136-30-1)、ナトリウムジメチルジチオカルバメート(CAS番号128-04-1)、ジナトリウムエチレン−ビス−ジチオカルバメート、ナトリウムジイソブチルジチオカルバメート(CAS番号2219-18-3)、テルリウムジエチルジチオカルバメート(CAS番号20941-65-5)、亜鉛ジアミルジチオカルバメート(CAS番号15337-18-5)、亜鉛ジブチルジチオカルバメート(CAS No.136-23-2)、亜鉛ジイソブチルジチオカルバメート(CAS番号36190-62-2)、亜鉛ジメチルジチオカルバメート(CAS番号137-30-4)、N,N-ジメチルシクロヘキシルジチオカルバミン酸アンモニウム、2,2'-ジチオ(エチルアンモニウム)ビス(ジベンジルジチオカルバメート)。
【0037】
チウラム促進剤の例はテトラメチルチウラムスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)である。キサンテート促進剤の例は亜鉛イソプロピルキサンテート(ZIX)、ナトリウムイソプロピルキサンテート(SIX)、亜鉛ブチルキサンテート(ZBX)、ジブチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲナート、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジイソブチルキサントゲンジスルフィドである。ジチオホスフェート促進剤の例は銅ジイソプロピルジチオホスフェート、亜鉛-O-,O-ジ-n-ブチルホスホロジチオエートである。
【0038】
他に適した促進剤の例にはチアゾール、スルフェンアミド、グアニジン、チオ尿素誘導体、アミン誘導体およびこれらの組合せが含まれる。これらには2-メルカプトベンゾチアゾール(ZMBT)、ジフェニルグアニジン(DPG)、トリフェニルグアニジン(TPG)、ジチオトリルグアニジン(DOTG)、o-トリルビグアニド(OTBG)、エチレンチオ尿素(ETU)、ジエチルチオ尿素(DETU)、ジフェニルチオ尿素(DPTU)、ベンゾチアゾールジサルファイド(MBTS)およびヘキサメチレンテトラミン(HMT)の亜鉛塩またはナトリウム塩が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
本発明のポリウレタン組成物の各具体例を生産するための各反応成分の選択はそのポリウレタンの特定用途と所望特徴によって決まる。各反応成分が得られるポリウレタン組成物の物理特性や反応時間に影響を与え、それによってポリウレタンの製造プロセスに影響を与える。そうした選択は当業者に周知の方法で行うことができ、本発明の一部を成すものではない。
【0040】
本発明の各実施例では当業者に公知の他の成分を含むことができる。そうした成分の例には触媒、着色剤、熱安定化剤および/または紫外線安定化剤、抗酸化剤およびこれらの組合せが含まれる。
【0041】
本発明の一つの実施例は水に可溶性でない。「可溶性でない」とは当業者が使用する通常の意味を有し、水に溶け難いか、溶けないということを意味する。従って、本発明の一つの実施例はアニオン基および/またはカチオン基を有しない第2の連鎖延長剤を含む。
【0042】
本発明の一つの具体例は、芳香族、脂環式または脂肪族のポリイソシアネートまたはこれらの組合せの中から選択されるポリイソシアネートと、ポリオールと、上記の式(1)を有する硫黄ブリッジとを有するジアルコールとを含む反応成分の反応で得られるポリウレタンで作られた物品を提供する。本発明のさらに他の実施例では追加の反応成分として硬化剤を更に含むポリウレタンで作られた物品が提供される。他の実施例の特徴は硬化剤がアニオン基および/またはカチオン基を有しない点にある。本発明のさらに別の実施例では上記ポリウレタンが付着する少なくとも一つの表面を有する金属基材をさらに有する。この基材は装飾目的のためのものでもよいが、より一般的にはポリウレタン物品の構造支持体および/または補強材の役目をする。
【0043】
ポリウレタンの物品は金属基材で補強できる。金属基材はポリウレタンの表面上にあってもよいが、一般には金属基材はポリウレタン中に埋め込まれる。金属基材の役目をする金属としては例えば鋼、銅、錫、真鍮、ニッケル、バナジウム、アルミニウムおよびこれらのアロイが挙げられるが本発明がこれらに限定されるものではない。金属基材を他の金属手被覆した例えば真鍮被覆した鋼にすることもできる。
【0044】
金属基材を記述するの用いる多くの用語はポリウレタン物品を装飾、強化、支持および/または補強するために用いられる。コード、タイヤコード、ケーブル、ストランド、ワイヤ、ロッド、プレートおよびフィラメントといった用語は全てポリウレタン物品を強化するのに用いる要素を補強する金属を記述するのに用いることができる。ここで使用する金属補強材という用語は上記のものを含めたポリウレタン物品を補強するための全ての物品を含む。従って、金属補強材には金属ワイヤ、金属コード、金属タイヤコード、金属ケーブル、金属ストランド、金属ロッド、金属プレート、金属フィラメントまたはこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されるものではない。同様に、装飾用金属基材には金属ロッド、金属ストランド、金属プレート、金属ボールまたはこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
金属基材の支持体を有するポリウレタン物品の例は家具、台車や移動式機器を支持し、移動するのに使用するキャスタである。[図1]は本発明による典型的なキャスタの斜視図である。このキャスタ10は硫黄ブリッジを有するジアルコールと上記の他の反応物とを含む反応成分から得られるポリウレタンで作られている。キャスタ10はハブ22の周りに成形されたスポーク14とリム12とを有し、ハブ22はベアリング用ハウジングを有している。キャスタ10はさらに、リム12中に埋込まれた金属の補強ワイヤ24を有している。このキャスタ10は当業者に周知の方法で補強ワイヤ24の周りに成形して作られる。
【0046】
ポリウレタンの製造方法は当業者に周知であり、ワンショット法(一段法)およびプレポリマー法があることは当業者に公知である。さらに、発泡ポリウレタンを生産するための発泡方法も周知である。発泡ポリウレタンを製造する場合には発泡剤を添加する。
【0047】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
実施例1
プレポリマー法を用いてポリウレタンのいくつかのサンプルを作った。成分とその量は[表2]に示してある。加えた各反応成分の量はプレポリマーの全重量をベースにした重量%で表してある。
【0049】
【表2】

【0050】
ビブラタネ(VIBRATHANE)B-836はプレポリマーで、チェムテュラ(Chemtura)社から入手可能なポリエーテルとMDIとをベースにしたプレポリマーである。
チタン触媒はベルテック(VERTEC)社から入手可能である。
コクール(COCURE)55はニュージャージーのラザフォード化学(Rutherford Chemicals)から入手可能な有機寸銀触媒である。
DABCO触媒はトリメチレンジアミン触媒として知られている。
コナップ(CONAP)1146はサイテ社(Cytec Industries)から市販の硬化プロセス中に基材に液体ウレタンを結合するための高強度接着剤として公知のものである。
【0051】
1,4−ブタンジオール(BDO)は主連鎖延長剤であり、2,2'-ジチオジエタノールおよび4,4'-ジチオジアニリンは硫黄ブリッジ連鎖延長剤である。
【0052】
各混合物を使用する際には、プレポリマーと混合する前に、チタン触媒およびDABCO触媒をBDOに加える。また、DPGと硫黄ブリッジ連鎖延長剤とを使用する場合には、プレポリマーと混合する前にBDOに加える。
【0053】
プレポリマーを約70℃に加熱し、減圧下で約10分間脱気する。元素状硫黄を使用する場合には、硫黄の大部分が溶けるまで減圧下に混合する。次に、BDO混合物をプレポリマーに加え、15〜60秒間混合する。その後に混合物を金型に注入する。
【0054】
金型キャビナィーの寸法は12.5mm×12.5mm×200mmであった。引抜き金型は15スロットを有し、深さは約6.25mmである。スロットは金型キャビナィーに対して直角である。ポリウレタン混合物を金型中へ注入する前に金属ケーブルをスロット中に配置する。
【0055】
金型を150℃に30分間加熱してポリウレタンを金型中で硬化させる。得られた複合材を離型し、オーブンに入れ、100℃で一晩、後硬化させる。ポリウレタンブロックは室温で少なくとも7日間後硬化するのが好ましい。
【0056】
実施例2
金属ケーブルを実施例1と同様に金型のスロット中に配置した。使用したケーブルは直径が約1mmの標準的なタイヤケーブルであった。一組のケーブルは真鍮被覆をしたものであり、別の第2セットは真鍮被覆を剥がして鋼を露出させたものである。各ケーブルは酢酸エチルを用いて表面から油を除去した。メーカーの推薦に従ってCONAP 1146接着剤をケーブル表面に塗布し、加熱した。他は実施例1と同じ。
Example 1の上で目撃者テストに適用できる場合、熱くなった。
実施例3
【0057】
実施例1で硬化したサンプルをゴム/タイヤ・ケーブルの接着テストであるASTM D2229の方法と同様な引抜き(pullout)手順を使用してテストした。INSTRON 5500Rを使用して5kN負荷セルを用いて硬化したポリウレタンブロックからケーブルを引き抜いた。金属ケーブルの把持には規格のINSTRONクランプ(カタログno. 2712-017)を用いた。全てのテストで50mmゲージ長と100mm/分の移動速度を使用した。引抜き力は[表2]にニュートン(N)で示してある。
【0058】
請求項および明細書で用いた「成る」、「含む」、「有する」という用語は他の構成要素を含むことができるオープンな構成を表す。
請求項および明細書で用いる「基本的に〜から成る」という用語は本発明の基本的および新規な特徴を変更しないという条件で他の構成要素を含むことができる部分的にオープンな構成を表す。
【0059】
単数で表した構成は同じものの複数の形を含む。
「少なくとも一つ」および「一つ以上」の用語は同じことを意味する。
「単一」という用語は唯一であることを意味する。同様に他の特定の整数値、例えば「2つ」は特定の数を意味するときに使用する。
「好ましくは」「好ましい」「必要に応じて」「さらに好ましくは」「〜することができる」等の用語は好ましい項目、条件またはステップ等を表し、オプション(任意)であることを示すのに用いる。
「a〜b」という範囲の基は「a」および「b」の値を含む。
【0060】
本発明の好ましい実施例には本発明の精神から逸脱せずに種々の変更および改良が可能であるということは上記の説明から理解できよう。上記の説明は単なる例示であって、限定的に解釈されてはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(c)の反応成分:
(a) ポリオール;
(b) 芳香族、脂環式または脂肪族のポリイソシアネートまたはこれらの組合せの中から選択されるポリイソシアネート;
(c)硫黄ブリッジを有する連鎖延長剤(i)と主連鎖延長剤(ii)とを含む連鎖延長剤の混合物(ただし、連鎖延長剤(i)は連鎖延長剤混合物全体の1〜30重量%)
の反応生成物であるポリウレタンにおいて、
硫黄ブリッジを有する上記連鎖延長剤(i)が下記式を有することを特徴とするポリウレタン:
1−A−Sx−B−R2
(ここで、R1およびR2はOH、NH2またはこれらの組合せの中から選択され、AとBは二価の脂肪族、脂環式または芳香族有機基またはこれらの組合せの中から選択され、AとBは互いに同じでも異なっていてもよく、xは2〜10の整数である)
【請求項2】
反応成分が遊離硫黄をさらに含む請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項3】
反応成分がゴム硬化促進剤をさらに含む請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項4】
ゴム硬化促進剤がジフェニルグアニジンである請求項3に記載のポリウレタン。
【請求項5】
主連鎖延長剤(ii)がカチオン基を有しない請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項6】
主連鎖延長剤(ii)が短鎖の連鎖延長剤である請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項7】
主連鎖延長剤(ii)が1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、プロピレンジアミン、プロピレンジオール、4,4'−メチレンビス(3-クロル-2,6-ジエチルアニリン)(MCDEA)、4,4'−メチレンビス(2-クロルアニリン)(MOCA)、ジエチルチオトルエンジアミン(DETDA)、ジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)またはこそれの組合せの中から選択される請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項8】
主連鎖延長剤(ii)がジアルコール、ジアミンまたはこれらの組合せの中から選択される請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項9】
連鎖延長剤混合物が硫黄ブリッジを有する連鎖延長剤を連鎖延長剤混合物全体の2〜25重量%の比率で含む請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項10】
連鎖延長剤混合物が硫黄ブリッジを有する連鎖延長剤を連鎖延長剤混合物全体の5〜15重量%の比率で含む請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項11】
ポリイソシアネートがジイソシアナートである請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項12】
硫黄ブリッジを有する連鎖延長剤が2,2−ジチオジエタノール、4,4−ジチオジアニリンまたこれらの組合せの中から選択される請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項13】
ポリウレタンが成形可能である請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項14】
請求項1に記載のポリウレタンを金属基材の少なくとも一つの表面上に有する装置。
【請求項15】
ポリウレタンが金属基材の全表面上にある請求項14に記載の装置。
【請求項16】
金属基材が金属補強材要素である請求項14に記載の装置。
【請求項17】
金属補強材要素が金属ワイヤ、金属コード、金属タイヤコード、金属ケーブル、金属ストランド、金属ロッド、金属プレート、金属フィラメントまたはこれらの組合せの中から選択される請求項16に記載の装置。
【請求項18】
装置が導管で、この導管の壁が請求項1に記載のポリウレタンエラストマーから成り、一つまたは複数の壁が埋込まれた金属基材で補強されている請求項14に記載の装置。
【請求項19】
装置がパイプまたはホースから選択される請求項18に記載の装置。
【請求項20】
装置がコンベヤーベルトである請求項14に記載の装置。
【請求項21】
装置がキャスタである請求項14に記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2010−513703(P2010−513703A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543246(P2009−543246)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/088476
【国際公開番号】WO2008/077151
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(599140471)ソシエテ ドゥ テクノロジー ミシュラン (96)
【出願人】(597011441)ミシュラン ルシェルシェ エ テクニク ソシエテ アノニム (94)
【Fターム(参考)】