説明

ポリエステル、その合成中間体及び該中間体を含む重合性組成物

【課題】優れた耐熱性を有するポリエステル、その合成中間体及び該中間体を含む重合性組成物の提供。
【解決手段】式(1)で表される構造単位を有するポリエステル。


〔式(1)中、R1は、単結合、アルカンジイル基又はアルケンジイル基を示し、R2は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基等を示し、Aは、−S−、−S(=O)−又は−S(=O)2−を示し、nは、1又は2を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル、その合成中間体及び該中間体を含む重合性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硬化時の体積収縮が抑制されたポリエステルとして、特定の双環状γ−ブチロラクトンと特定のエポキシ化合物とを交互共重合させて得られるポリエステルが知られている(特許文献1及び非特許文献1〜6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−62065号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】T. Takata, A. Tadokoro, and T. Endo Macromolecules 1992, 25,2782.
【非特許文献2】A. Tadokoro, T. Takata, and T. Endo Macromolecules 1993, 26,4400.
【非特許文献3】T. Takata, A. Tadokoro, K. Chung, and T. Endo Macromolecules1995, 28, 1340.
【非特許文献4】K. Chung, T. Takata, and T. Endo Macromolecules 1995, 28, 3048.
【非特許文献5】K. Chung, T. Takata, and T. Endo Macromolecules 1997, 30, 2532.
【非特許文献6】S. Ohsawa, K. Morino, A. Sudo, and T. Endo Macromolecules 2010, 43, 3585.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記のような従来のポリエステルは、電子材料をはじめとする各種機能性高分子材料として用いられているものの、耐熱性が十分には満足できるものではなかった。
したがって、本発明の課題は、優れた耐熱性を有するポリエステル、その合成中間体及び該中間体を含む重合性組成物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、イオウ原子を含む特定の置換基を構造単位中に有するポリエステルが、優れた耐熱性を有することを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記式(1)で表される構造単位(以下、構造単位(1)とも称する)を有するポリエステルを提供するものである。
【0008】
【化1】

【0009】
〔式(1)中、R1は、単結合、アルカンジイル基又はアルケンジイル基を示し、R2は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基又は下記式(2)
【0010】
【化2】

【0011】
(式(2)中、R5は、アルカンジイル基を示し、*は、式(1)中のAと結合している位置を示し、R1、R3、R4、A及びnは、式(1)中のものと同義である。)
で表される構造単位(以下、構造単位(2)とも称する)を示し、R3は、それぞれ独立して、水素原子、アミノ基又は1価の炭化水素基を示し、R4は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アリールオキシアルキル基又は下記式(3)
【0012】
【化3】

【0013】
(式(3)中、R6は、単結合又はアルカンジイル基を示し、R7は、アルカンジイル基を示し、**は、式(1)中のR4に隣接する炭素原子と結合する位置を示し、R1、R2、R3、A及びnは、式(1)中のものと同義である。)
で表される構造単位(以下、構造単位(3)とも称する)を示し、Aは、−S−、−S(=O)−又は−S(=O)2−を示し、nは、1又は2を示す。〕
【0014】
また、本発明は、下記式(4)で表される化合物(以下、化合物(4)とも称する)と、下記式(5)で表される化合物(以下、化合物(5)とも称する)及び下記式(6)で表される化合物(以下、化合物(6)とも称する)から選ばれる1種以上とを含む重合性組成物を提供するものである。
【0015】
【化4】

【0016】
〔式(4)中、R8は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基又は下記式(7)
【0017】
【化5】

【0018】
(式(7)中、R5は、アルカンジイル基を示し、***は、式(4)中のAと結合している位置を示し、R1、R3及びAは、前記と同義である。)
で表される基を示し、R1、R3及びAは、前記と同義である。〕
【0019】
【化6】

【0020】
〔式(5)中、R9は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基又はアリールオキシアルキル基を示し、nは、前記と同義である。〕
【0021】
【化7】

【0022】
〔式(6)中、R6、R7及びnは、前記と同義である。〕
【0023】
更に、本発明は、下記式(4)で表される化合物を提供するものである。
【0024】
【化8】

【0025】
〔式(4)中、R1、R3、R8及びAは前記と同義である。〕
【発明の効果】
【0026】
本発明のポリエステルは優れた耐熱性を有する。
また、本発明によれば、前記ポリエステルの合成に有用な重合性組成物及び前記ポリエステルの合成中間体として有用な化合物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ポリエステルS1〜S4の1H−NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔ポリエステル〕
本発明のポリエステルは前記式(1)で表される構造単位を有する。まず、式(1)中の各記号について説明する。なお、該記号は、式(2)〜(7)中の各記号と同義である。
【0029】
1は、単結合、アルカンジイル基又はアルケンジイル基を示す。
この中でも、アルカンジイル基、アルケンジイル基が好ましい。なお、斯かるアルカンジイル基及びアルケンジイル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
【0030】
1で示されるアルカンジイル基の炭素数としては、1〜12が好ましく、2〜8がより好ましく、3〜6が特に好ましい。
アルカンジイル基としては、例えば、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
【0031】
また、前記アルケンジイル基の炭素数としては、2〜12が好ましく、3〜8がより好ましく、3〜4が特に好ましい。
アルケンジイル基としては、例えば、エチレン−1,1−ジイル基、エチレン−1,2−ジイル基、2−プロピレン−1,1−ジイル基、1−プロピレン−1,3−ジイル基、3−ブテン−1,2−ジイル基、2−ペンテン−1,4−ジイル基等が挙げられる。
【0032】
また、前記アルカンジイル基及びアルケンジイル基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、例えば、シクロヘキシル基等の炭素数4〜8のシクロアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基;フェノキシ基等の炭素数6〜12の芳香族オキシ基;メチルスルファニル基、エチルスルファニル基、イソプロペニルスルファニル基、ドデカニルスルファニル基、シクロアルキルスルファニル基、フェニルスルファニル基、ベンジルスルファニル基等のスルフェニル基;メチルジチオ基、エチルジチオ基等のアルキルジチオ基;イソプロペニルジチオ基等のアルケニルジチオ基;フェニルジチオ基等のアリールジチオ基等が挙げられる。これら置換基の位置及び数は任意であり、置換基を2以上有する場合、該置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0033】
2は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基又は前記式(2)で表される構造単位を示す。なお、前記アルキル基及びアルケニル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
【0034】
2で示されるアルキル基の炭素数としては、1〜30が好ましく、2〜26がより好ましく、4〜20が更に好ましく、6〜18が更に好ましく、10〜16が更に好ましく、10〜14が更に好ましく、12〜14が特に好ましい。
また、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基等が挙げられる。この中でも、ドデシル基が特に好ましい。
【0035】
また、前記シクロアルキル基の炭素数としては、3〜12が好ましく、5〜8がより好ましく、6〜7が特に好ましい。
また、シクロアルキル基としては、単環式のシクロアルキル基、多環式のシクロアルキル基が挙げられる。
前記単環式のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。この中でも、シクロヘキシル基が好ましい。
また、前記多環式のシクロアルキル基としては、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基等が挙げられる。
【0036】
また、前記アルケニル基の炭素数としては、2〜16が好ましく、4〜14がより好ましく、8〜12がより好ましい。
また、アルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等が挙げられる。
【0037】
また、前記アリール基の炭素数としては、6〜20が好ましく、6〜16がより好ましく、6〜12が特に好ましい。斯様なアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0038】
また、前記アラルキル基の炭素数としては、7〜30が好ましく、7〜24がより好ましく、7〜16が更に好ましく、7〜10が特に好ましい。
また、アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基、フェニルデシル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。この中でも、ベンジル基が好ましい。
【0039】
また、前記アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、R1で示されるアルカンジイル基に置換していてもよいものと同様のものが挙げられる。斯様な置換基の中でも、シクロヘキシル基等の炭素数4〜8のシクロアルキル基が好ましい。
【0040】
また、式(2)中、R5で示されるアルカンジイル基としては、R1で示されるアルカンジイル基と同様のものが挙げられるが、その炭素数は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは3〜14であり、更に好ましくは5〜8である。
【0041】
また、R2が式(2)で表される構造単位を示す場合、本発明のポリエステルが有する構造単位(1)は下記式(1−A)で表される。
【0042】
【化9】

【0043】
(式中の各記号は前記と同義である。)
【0044】
また、上述のようなR2の中でも、優れた耐熱性を得る観点から、式(2)で表される構造単位が好ましく、一方、架橋点が少ない化学構造でありながら充分な耐熱性及び硬化収縮性を得る観点から、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基が好ましい。
【0045】
3は、それぞれ独立して、水素原子、アミノ基又は1価の炭化水素基を示す。斯かる「1価の炭化水素基」は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を包含する概念である。なお、該炭化水素基は分子内に不飽和結合を有していてもよく、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
【0046】
前記脂肪族炭化水素基の炭素数としては、1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい。
また、脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニルが挙げられるが、アルキル基が好ましい。該アルキル基としては、R2で示されるアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0047】
また、前記脂環式炭化水素基の炭素数としては、3〜12が好ましく、3〜8がより好ましく、3〜6が特に好ましい。
また、脂環式炭化水素基としては、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等が挙げられるが、シクロアルキル基が好ましい。該シクロアルキル基としては、R2で示されるシクロアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0048】
また、前記芳香族炭化水素基の炭素数としては、6〜20が好ましく、6〜18がより好ましく、6〜12が更に好ましく、6〜8が特に好ましい。
また、芳香族炭化水素基としては、アリール基が好ましい。該アリール基としては、R2で示されるアリール基と同様のものが挙げられる。
【0049】
また、前記1価の炭化水素基は、カルボキシル基、ヒドロキシ基が置換していてもよく、また、エステル結合、エーテル結合若しくはカルボニル基を有していてもよい。
【0050】
また、上述のようなR3の中でも、水素原子、アルキル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0051】
4は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アリールオキシアルキル基又は前記式(3)で表される構造単位を示す。なお、該アルキル基及びアルケニル基、並びにアルコキシ基、アルコキシアルキル基及びアリールオキシアルキル基中のアルキル鎖は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
【0052】
4で示されるアルキル基の炭素数としては、1〜16が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜8が更に好ましく、1〜4が特に好ましい。また、前記アルケニル基の炭素数としては、2〜12が好ましく、2〜8がより好ましく、2〜4が特に好ましい。
また、これらアルキル基、アルケニル基としては、R2で示されるアルキル基、アルケニル基と同様のものが挙げられる。
【0053】
また、前記アルコキシ基の炭素数としては、1〜12が好ましく、1〜8が好ましく、1〜4が特に好ましい。斯様なアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。
【0054】
また、前記アルコキシアルキル基の炭素数としては、1〜12が好ましく、1〜8が好ましく、1〜4が特に好ましい。斯様なアルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシエチル基等が挙げられる。
【0055】
また、前記アリールオキシアルキル基の炭素数としては、7〜30が好ましく、7〜22がより好ましく、7〜14が更に好ましく、7〜10が特に好ましい。斯様なアリールオキシアルキル基としては、フェノキシメチル基、フェノキシエチル基、フェノキシプロピル基等が挙げられる。この中でも、フェノキシメチル基が好ましい。
なお、前記アリールオキシアルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基が置換していてもよい。該アルキル基の位置及び数は任意であり、アルキル基を2以上有する場合、該アルキル基は同一でも異なっていてもよい。
【0056】
また、式(3)中、R6としてはアルカンジイル基が好ましい。斯かるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは1〜12であり、より好ましくは1〜6であり、更に好ましくは1〜4であり、特に好ましくは2〜3である。なお、R6のベンゼン環に対する結合位置は特に限定されないが、4,4’位が好ましい。
また、R7で示されるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは1〜12であり、より好ましくは1〜8であり、更に好ましくは1〜4であり、特に好ましくは1又は2である。なお、式(3)中のR7は同一でも異なっていてもよい。
6及びR7で示されるアルカンジイル基としては、R1で示されるアルカンジイル基と同様のものが挙げられる。
【0057】
また、R4が式(3)で表される構造単位を示す場合、本発明のポリエステルが有する構造単位(1)は下記式(1−B)で表される。
【0058】
【化10】

【0059】
(式中の各記号は前記と同義である。)
【0060】
上述のようなR4の中でも、優れた耐熱性を得る観点から、式(3)で表される構造単位が好ましく、一方、架橋点が少ない化学構造でありながら充分な耐熱性及び硬化収縮性を得る観点から、アルコキシアルキル基、アリールオキシアルキル基が好ましい。
【0061】
Aは、−S−、−S(=O)−又は−S(=O)2−を示す。これらの中でも、耐熱性の観点から、−S−、−S(=O)2−が好ましい。
また、nは、1又は2を示すが、1が好ましい。
【0062】
また、本発明のポリエステルの数平均分子量(Mn)としては、1,000〜100,000が好ましく、2,500〜50,000がより好ましく、3,000〜30,000が特に好ましい。また、Mw/Mnとしては、1〜12が好ましく、1〜3がより好ましい。なお、数平均分子量(Mn)及びMw/Mnは、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
また、本発明のポリエステルの形状としては、線状、網目状等が挙げられる。
【0063】
次に、本発明のポリエステルの合成方法を説明する。
本発明のポリエステルは、公知の反応を適宜組み合わせて合成できる。例えば、R1がアルカンジイル基であるポリエステルは以下の方法により合成できる。
【0064】
【化11】

【0065】
【化12】

【0066】
【化13】

【0067】
(式中、R1’は、アルカンジイル基を示し、R10は、アルケニル基を示し、R11は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、R2、R3及びR5〜R9、A並びにnは前記と同義である。)
【0068】
<工程1−A>
工程1−Aは、化合物(8)と化合物(9)とをラジカル開始剤の存在下で反応させ、化合物(4−1−1−1)を得る工程である。
【0069】
本反応で用いる化合物(8)としては、例えば、2,8−ジオキサ−1−(イソプロペニル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン等が挙げられる。
【0070】
また、本反応で用いる化合物(9)としては、例えば、1−ドデカンチオール、シクロヘキサンチオール、ベンジルチオール、1−オクタンチオール、シクロヘキサメタンチオール、1−ナフタレンチオール等が挙げられる。
本反応において、化合物(9)の合計使用量は特に限定されないが、化合物(8)1モルに対して、通常、0.5〜3モル程度である。
【0071】
また、ラジカル開始剤としては、アゾ系のものが好ましい。斯様なラジカル開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等が挙げられる。
また、ラジカル開始剤の合計使用量は特に限定されないが、化合物(8)1モルに対して、通常、0.001〜5モル程度である。
【0072】
また、本反応は溶媒存在下で行うのが好ましい。該溶媒としては、クロロブタン、ブロムヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン等のハロゲン系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族アルカン系溶媒;シクロヘキサン、シクロヘプタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;これらから選ばれる2種以上が挙げられる。これらの中でも、反応効率の観点から、ハロゲン系溶媒が好ましい。
また、溶媒の合計使用量は適宜設定すればよい。通常、化合物(8)1質量部に対して、0.01〜100質量部程度である。
【0073】
なお、本反応の反応時間は特に限定されないが、通常、0.5〜72時間程度であり、反応温度は、沸点以下で適宜選択すればよい。
【0074】
<工程1−B>
工程1−Bは、化合物(8)と化合物(10)とをラジカル開始剤の存在下で反応させ、化合物(4−1−1−2)を得る工程である。
本反応で用いる化合物(10)としては、1,6−ヘキサンジチオール等が挙げられる。化合物(10)の合計使用量は特に限定されないが、化合物(8)1モルに対して、通常、0.25〜1.5モル程度である。
本反応は、前記工程1−Aと同様にして行えばよい。
【0075】
<工程2−1>
工程2−1は、工程1−Aで得た化合物(4−1−1−1)又は工程1−Bで得た化合物(4−1−1−2)(これら化合物を総称して化合物(4−1−1)ともいう)の−S−を−S(=O)−に変換し、化合物(4−1−2)を得る工程である。
本反応で用いる化合物(4−1−1)としては、例えば、2,8−ジオキサ−1−(2−ドデシルスルファニルイソプロピル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン(化合物4−1−1−A)、2,8−ジオキサ−1−(2−シクロヘキシルスルファニルイソプロピル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン(化合物4−1−1−B)、2,8−ジオキサ−1−(2−ベンジルスルファニルイソプロピル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン(化合物4−1−1−C)、2,8−ジオキサ−1−(2−オクチルスルファニルイソプロピル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン、2,8−ジオキサ−1−(2−シクロヘキシルメチルスルファニルイソプロピル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン、2,8−ジオキサ−1−(2−(1−ナフチル)スルファニルイソプロピル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン、ビス[2−(2,8−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオニル)イソプロピルスルファニル]ヘキサン(化合物4−1−1−D)等が挙げられる。
【0076】
また、前記工程2−1は、酸化剤存在下で行うのが好ましい。該酸化剤は、有機酸化剤と無機酸化剤とに大別される。
前記有機酸化剤としては、例えば、硝酸アセチル等のペルオキシド系のもの;過酢酸、過安息香酸、メタクロロ過安息香酸等の過カルボン酸系のものの他、N−ブロモスクシンイミド、ヨードシルベンゼン等が挙げられる。この中でも、過カルボン酸系のものが好ましく、過安息香酸系のものがより好ましい。
【0077】
一方、無機酸化剤としては、例えば、過酸化水素、メタ過ヨウ素酸ナトリウム、オゾン、二酸化セレン、クロム酸、四酸化二窒素等が挙げられる。
【0078】
また、酸化剤の合計使用量は適宜設定すればよい。通常、化合物(4−1−1)1モルに対して、0.05〜1.5モル程度である。
【0079】
また、本反応は、溶媒存在下で行うのが好ましい。該溶媒としては、工程1−Aで使用する溶媒と同様のものが挙げられるが、特に好ましくはジクロロメタンである。
また、溶媒の合計使用量は適宜設定すればよい。通常、化合物(4−1−1)1質量部に対して、0.01〜100質量部程度である。
【0080】
なお、本反応の反応時間は特に限定されないが、通常、0.5〜72時間程度であり、反応温度は、沸点以下で適宜選択すればよいが、好ましくは0℃以下である。
【0081】
<工程2−2>
工程2−2は、工程2−1で得た化合物(4−1−2)の−S(=O)−を−S(=O)2−に変換し、化合物(4−1−3)を得る工程である。本反応は、工程2−1と同様にして行えばよい。
【0082】
本反応で用いる化合物(4−1−2)としては、例えば、2,8−ジオキサ−1−(2−ドデシルスルフィニルイソプロピル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン(化合物4−1−2−A)、2,8−ジオキサ−1−(2−シクロヘキシルスルフィニルイソプロピル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン、2,8−ジオキサ−1−(2−ベンジルスルフィニルイソプロピル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン、2,8−ジオキサ−1−(2−オクチルスルフィニルイソプロピル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン、2,8−ジオキサ−1−(2−シクロヘキシルメチルスルフィニルイソプロピル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン、2,8−ジオキサ−1−(2−(1−ナフチル)スルフィニルイソプロピル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン、ビス[2−(2,8−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオニル)イソプロピルスルフィニル]ヘキサン等が挙げられる。
【0083】
なお、工程2−1において、化合物(4−1−1)に対し酸化剤を2モル等量程度用いても化合物(4−1−3)を得ることができる。
【0084】
<工程3−A>
工程3−Aは、化合物(4−1−1)、化合物(4−1−2)又は化合物(4−1−3)(これら化合物を総称して化合物(4−1)ともいう)と、化合物(5)とを含む本発明の重合性組成物を、加熱又は光照射することによって、化合物(4−1)と化合物(5)とを重合(好ましくは共重合、より好ましくは交互共重合)させる工程である。これにより、式(1−1)で表される構造単位を有するポリエステルが得られる。
【0085】
本反応で用いる化合物(4−1−1)及び化合物(4−1−2)の具体例は前記のとおりである。また、化合物(4−1−3)としては、例えば、2,8−ジオキサ−1−(2−ドデシルスルホニルイソプロピル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン(化合物4−1−3−A)、2,8−ジオキサ−1−(2−シクロヘキシルスルホニルイソプロピル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン、2,8−ジオキサ−1−(2−ベンジルスルホニルイソプロピル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン、2,8−ジオキサ−1−(2−シクロヘキシルメチルスルホニルイソプロピル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン、2,8−ジオキサ−1−(2−(1−ナフチル)スルホニルイソプロピル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン、ビス[2−(2,8−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオニル)イソプロピルスルホニル]ヘキサン等が挙げられる。
一方、本反応で用いる化合物(5)としては、例えば、グリシジルフェニルエーテル、グリシジル(2−メチルフェニル)エーテル、グリシジル(3−メチルフェニル)エーテル、(4−イソプロペニルフェニル)(グリシジル)エーテル等が挙げられる。
【0086】
本反応は、後述する重合開始剤、溶媒の存在下で行うのが好ましい。斯かる態様において、後述する重合性組成物が重合開始剤、溶媒を含む場合は、そのまま加熱又は光照射を行えばよく、重合性組成物が重合開始剤、溶媒を含まない場合は、本反応を行うときに重合性組成物に重合開始剤、溶媒を含有せしめて加熱又は光照射を行えばよい。
【0087】
また、本反応においては、加熱及び光照射のいずれを行ってもよいが、加熱を行うのが好ましい。該加熱の温度は特に限定されないが、通常、50〜200℃程度であり、好ましくは、80〜150℃である。
本反応の反応時間は特に限定されないが、通常、1〜360時間程度であり、好ましくは2〜50時間である。また、前記加熱又は光照射後、必要に応じて酢酸等で反応を停止させてもよい。
【0088】
<工程3−B>
工程3−Bは、化合物(4−1)と、化合物(6)とを含む本発明の重合性組成物を、加熱又は光照射することによって、化合物(4−1)と化合物(6)とを重合させる工程である。これにより、式(1−2)で表される構造単位を有するポリエステルが得られる。
本反応で用いる化合物(6)としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、4,4’−ビス(グリシジルオキシ)−1,1’−ビフェニル等が挙げられる。
本反応は、前記工程3−Aと同様にして行えばよい。
【0089】
<工程3−C>
工程3−Cは、化合物(4−1)と化合物(5)と化合物(6)とを含む本発明の重合性組成物を、加熱又は光照射することによって、化合物(4−1)と、化合物(5)及び化合物(6)とを重合させる工程である。これにより、式(1−3)で表される構造単位を有するポリエステルが得られる。
本反応は、前記工程3−A、3−Bと同様にして行えばよい。
【0090】
なお、前記各工程において、各反応生成物の単離は、必要に応じて、ろ過、洗浄、乾燥、再結晶、遠心分離、各種溶媒による抽出、中和、クロマトグラフィー等の通常の手段を適宜組み合わせて行えばよい。
【0091】
そして、上述のようにして得られる本発明のポリエステルは、十分な接合性があり、且つ優れた耐熱性を有する。
したがって、本発明のポリエステルは、電子材料をはじめとする各種機能性高分子材料として使用でき、特に、電気・電子部品、自動車、航空機、建設等の分野において、封止剤、接着剤、粘着剤等の接合材料として有用である。また、前記化合物(4)は、斯様なポリエステルの合成中間体として有用である。
【0092】
〔重合性組成物〕
次に、本発明の重合性組成物について説明する。
本発明の重合性組成物は、前記化合物(4)と、前記化合物(5)及び前記化合物(6)から選ばれる1種以上とを含むものである。なお、これら化合物(4)、化合物(5)及び化合物(6)は、それぞれが1種又は2種以上含まれていてもよい。
【0093】
式(4)中、R8は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基又は前記式(7)で表される基を示す。
8で示されるアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基は、それぞれR2で示されるものと同様である。R8としては、耐熱性の観点から、式(7)で表される基が好ましく、一方、線状高分子でありながら優れた耐熱性を得る観点から、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基が好ましい。
【0094】
また、化合物(4)の合計含有量としては、重合性組成物中、30〜95質量%が好ましく、40〜90質量%がより好ましく、50〜80質量%が更に好ましい。
【0095】
また、式(5)中、R9で示されるアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アリールオキシアルキル基は、それぞれR4で示されるものと同様である。
なお、式(6)中のnは、それぞれ同一でもよく異なっていてもよい。
【0096】
また、R8が式(7)で表される基を示す場合、本発明で用いる化合物(4)は下記式(4−A)で表される。
【0097】
【化14】

【0098】
(式中の各記号は前記と同義である。)
【0099】
また、重合性組成物中の化合物(5)及び/又は化合物(6)の合計含有量としては、耐熱性の観点から、化合物(4)1モルに対し、0.1〜10モルが好ましく、0.1〜5モルが好ましく、0.1〜3モルが特に好ましい。
また、化合物(5)及び化合物(6)のうち、化合物(5)のみを用いることにより、架橋点が少ない化学構造でありながら充分な耐熱性及び硬化収縮性を有するポリエステルが得られ、少なくとも化合物(6)を用いることにより、優れた耐熱性を有するポリエステルが得られる。
また、化合物(5)と化合物(6)とを組み合わせて用いる場合、重合性組成物に含まれる化合物(5)と化合物(6)とのモル比は、通常、200:1〜1:200であるが、耐熱性および硬化収縮性の観点から、20:1〜1:20が好ましく、10:1〜1:10がより好ましく、5:1〜1:5が更に好ましく、1.5:1〜1:3が更に好ましく、1:1〜1:2が特に好ましい。
【0100】
また、斯かる重合性組成物は、前記化合物(4)〜(6)の他に、重合開始剤(例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤)、溶媒を含んでいてもよい。なお、重合性組成物が、重合開始剤、溶媒を含まない場合は、ポリエステルを合成するとき、重合性組成物に重合開始剤、溶媒を含有せしめることで、本発明のポリエステルを合成できる。
【0101】
前記重合開始剤は特に限定されないが、効率よくポリエステルを得る観点から、アニオン開始剤が好ましい。
上記アニオン開始剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン等のホスフィン系のもの;カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド等のアルコキシド系のもの;カリウムフェノキシド、セシウムフェノキシド等のフェノキシド系のもの;トリエチルアミン等のアミン系のものの他、酢酸カリウム等が挙げられ、1種又は2種以上使用できる。この中でも、ホスフィン系のものが好ましく、トリアリールホスフィンがより好ましい。該アリール基の炭素数は、好ましくは6〜12である。
【0102】
また、前記重合開始剤の合計含有量は適宜設定すればよい。通常、化合物(4)1モルに対し、0.005〜3モル程度であるが、好ましくは0.03〜1モルである。
【0103】
また、前記溶媒としては、前記工程1で使用する溶媒と同様のものが挙げられる。中でも、エーテル系溶媒が好ましく、テトラヒドロフランが特に好ましい。
また、溶媒の合計含有量は適宜設定すればよい。通常、化合物(4)1質量部に対して、10-5〜10質量部程度であり、好ましくは10-5〜10-1質量部である。
【0104】
そして、前述のとおり、本発明の重合性組成物を用いることにより、簡便に本発明のポリエステルを合成できる。したがって、該重合性組成物は、封止剤、接着剤、粘着剤等の接合材料用として特に有用である。
【実施例】
【0105】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0106】
〔試薬〕
実施例で使用した試薬は以下に示す通りである。
2,8−ジオキサ−1−(2−ドデシルスルファニルイソプロピル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン(以下、イソプロペニルビスラクトンと称す)は、後述する合成例1で得たものを使用した。
1−ドデカンチオール:和光純薬工業株式会社製
シクロヘキサンチオール:東京化成工業株式会社製
ベンジルチオール:東京化成工業株式会社製
1,6−ヘキサンジチオール:東京化成
アゾビスイソブチロニトリル(AIBN):和光純薬工業株式会社製
クロロベンゼン:和光純薬工業株式会社製
メタクロロ安息香酸:和光純薬工業株式会社製
グリシジルフェニルエーテル:東京化成工業株式会社製
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(BisA−GDE):新日鐵化学株式会社
トリフェニルホスフィン:和光純薬工業株式会社製
テトラヒドロフラン:和光純薬工業株式会社製
【0107】
〔分析条件〕
実施例における各分析の条件は以下に示す通りである。
【0108】
<NMRスペクトル>
1H−NMRスペクトルは、CDCl3を溶媒、テトラメチルシランを内部標準物質として用いて、Varian製Inova 400(400MHz)により測定した。
13C−NMRスペクトルは、CDCl3を溶媒、テトラメチルシランを内部標準物質と
して用いて、Varian製Inova 400(100MHz)により測定した。
【0109】
<IRスペクトル>
IRスペクトルは、Thermo Scientific製のSMARTiTRサンプリングユニット付NICOLET iS10によりATR法で測定した。
【0110】
<分子量測定>
数平均分子量(Mn)及び分散度(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを溶媒として用いて、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)HLC−8320GPC(東ソー(株)製)により測定温度40℃で測定した。測定値はポリスチレン換算によるものである。
【0111】
<熱重量分析>
熱重量分析(TGA)は、セイコーインスツルメント社製TG−DTA6200により、アルミパンを用いて、50mL/minの窒素気流中10℃/minで昇温させて測定した。なお、熱重量分析において、Td5、Td10は、それぞれ化合物の5%重量減少温度、10%重量減少温度を意味する。
【0112】
<示差走査熱分析>
示差走査熱分析(DSC)は、セイコーインスツルメント社製DSC6200を用いて、ポリエステル10mgをアルミパン内に封入し、窒素気流中、50℃から300℃まで、5℃/minで昇温させて測定した。
【0113】
合成例1 イソプロペニルビスラクトンの合成
30mL容量の二口ナスフラスコに、1,2,3−プロパントリカルボン酸1.0g(5.6mmol)と、ビス(メタクリル酸)無水物2.6g(17.0mmol)と、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン0.14g(1.1mmol)と、塩化銅(II)23mg(0.17mmol)を入れ、窒素雰囲気下、140℃で6時間反応させた。反応終了後、0.04mmHg、75℃で、反応混合物から未反応のビス(メタクリル酸)無水物及び副製したメタクリル酸を留去した。次いで、残った混合物を酢酸エチルに溶解させ、これをジエチルエーテル200mLに滴下して、再沈殿させた。この沈殿物をろ別した後、残渣からジエチルエーテルを留去した後、この残渣を酢酸エチルに再度溶解させて、炭酸水素ナトリウム水溶液で分液洗浄した。次いで、回収した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、硫酸マグネシウムをろ別して、ろ液から溶媒を留去した。このろ液を、アセトン 50mLに溶解させ、活性炭(アルカリ性)0.25gで処理した後、ろ過により活性炭を除去した。次いで、ろ液からアセトンを留去し、トルエンを用いて再結晶させることにより、単離収率50.4%で、イソプロペニルビスラクトンを得た。以下にイソプロペニルビスラクトンの化学構造を示す。
【0114】
【化15】

【0115】
実施例1 2,8−ジオキサ−1−(2−ドデシルスルファニルイソプロピル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン(化合物4−1−1−A)の合成
10mL容量のアンプルに、合成例1で得たイソプロペニルビスラクトン0.30g(1.65mmol)と、1−ドデカンチオール0.33g(1.63mmol)と、AIBN0.03g(0.18mmol)と、クロロベンゼン0.8mLを入れた後、脱気、封管し、60℃で3時間反応させた。反応終了後、クロロベンゼンを留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)により精製し、単離収率89%で化合物4−1−1−Aを得た。以下に化合物4−1−1−Aの化学構造と分析結果を示す。
【0116】
【化16】

【0117】
IR (neat): 2921, 2851, 1787, 1467, 1239, 1171, 1135, 970, 865 cm-1.
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ0.88 (t, 3H, CH3), 1.20 (d, 3H, CH3), 1.25-1.57 (m, 20H, alkyl), 2.26 (m, 1H, CH), 2.40-2.65 and 2.85 (m, 2H, OCOCH2 and 4H SCH2), 3.03 (q, 2H, OCOCH2), 3.32 (m, 1H, CCH).
13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ14.5, 26.8, 27.0, 27.1, 31.9, 34.6, 34.7, 36.7, 37.0, 37.1, 42.1, 45.6, 117.2, 172.4, 172.5.
【0118】
実施例2 2,8−ジオキサ−1−(2−シクロヘキシルスルファニルイソプロピル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン(化合物4−1−1−B)の合成
10mL容量のアンプルに、イソプロペニルビスラクトン0.30g(1.65mmol)と、シクロヘキサンチオール0.19g(1.63mmol)と、AIBN0.03g(0.18mmol)と、クロロベンゼン0.8mLを入れた後、脱気、封管し、60℃で3時間反応させた。反応終了後、クロロベンゼンを留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)により精製し、単離収率72%で化合物4−1−1−Bを得た。以下に化合物4−1−1−Bの化学構造と分析結果を示す。
【0119】
【化17】

【0120】
IR (neat): 2928, 1784, 1238, 1173, 1137, 1120, 1015, 969, 946, 889, 863, 794 cm-1.
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ1.17 (d, 3H, CH3), 1.23-2.03 (m, 10H, cyclohexyl), 2.26 (m, 1H, CH), 2.42-2.51 (m, 1H, SCH2), 2.54 and 2.59 (m, 2H, OCOCH2), 2.57-2.67 (b, 1H, SCH), 2.88 and 2.90 (m, 1H, SCH2) 3.01 and 3.08 (m, 2H, OCOCH2), 3.34 (m, 1H, CCH).
13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ14.5, 26.8, 27.0, 27.1, 31.9, 34.6, 34.7, 36.7, 37.0, 37.1, 42.1, 45.6, 117.2, 172.4, 172.5.
【0121】
実施例3 2,8−ジオキサ−1−(2−ベンジルスルファニルイソプロピル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン(化合物4−1−1−C)の合成
10mL容量のアンプルに、イソプロペニルビスラクトン0.30g(1.65mmol)と、ベンジルチオール0.20g(1.63mmol)と、AIBN0.03g(0.18mmol)と、クロロベンゼン0.8mLを入れた後、脱気、封管し、60℃で6時間反応させた。反応終了後、クロロベンゼンを留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)により精製し、単離収率63%で化合物4−1−1−Cを得た。以下に化合物4−1−1−Cの化学構造と分析結果を示す。
【0122】
【化18】

【0123】
IR (neat): 2981, 2937, 1782, 1495, 1453, 1422, 1317, 1052, 943, 863, 718, 692 cm-1.
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ1.13 (d, 3H, CH3), 2.04 (m, 1H, CH), 2.33-2.39 (m, 1H, SCH2), 2.46-2.50 (m, 2H, OCOCH2), 2.74 (m, 1H, SCH2), 2.84-2.95 (m, 2H, OCOH2), 3.13 (m, 1H, CCH), 3.71 (s, 2H, SCH2Ph), 7.23-7.35 (m, 5H, Ph).
13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ13.5, 32.4, 35.3, 35.7, 35.9, 36.0, 37.2, 40.5, 116.1, 127.4, 128.8, 129.0, 138.0, 172.3, 172.4.
【0124】
実施例4 2,8−ジオキサ−1−(2−ドデシルスルフィニルイソプロピル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン(化合物4−1−2−A)の合成
100mL容量の二つ口ナスフラスコに、実施例1で得た化合物4−1−1−Aを1.16g(3.00mmol)仕込み、ジクロロメタン30mLを注いで溶解させた。別途50mL容量のナスフラスコに、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)0.52g(3.00mmol)を仕込み、ジクロロメタン30mLを注いで溶解させた。氷浴中で化合物4−1−1−Aの溶液にmCPBAの溶液を滴下した後、室温で24時間反応させた。反応終了後、溶液を飽和亜硫酸ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水で洗浄した後、有機相を硫酸マグネシウムにより乾燥させた。硫酸マグネシウムを濾別し、溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル)により精製し、単離収率72%で化合物4−1−2−Aを得た。以下に化合物4−1−2−Aの化学構造と分析結果を示す。
【0125】
【化19】

【0126】
IR (neat): 2922, 2852, 1790, 1465, 1245, 1123, 1025, 972, 945 cm-1.
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ 0.88 (t, 3H, CH3CH2CH2), 1.19-1.55 (m, 21H, CH2CH2CH2 and CH3CH(-C)C), 1.65-1.85 (m, 2H, SCH2CH2), 2.50-2.85 (m, 6H, OC(=O)CH2CH,CH3CH(-C)C,SCH2CH and SCH2CH2), 3.00-3.13 (m, 3H, OC(=O)CH2CH and SCH2CH), 3.25-3.39(m, 1H, CCH(-CH2)CH2).
13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ14.2, 15.2, 16.1, 22.6, 22.8, 28.9, 29.5, 29.6, 29.7, 32.0, 53.6, 115.4, 172.3.
【0127】
実施例5 2,8−ジオキサ−1−(2−ドデシルスルホニルイソプロピル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン(化合物4−1−3−A)の合成
50mL容量の二つ口ナスフラスコに、実施例4で得た化合物4−1−2−Aを0.40g(1.00mmol)仕込み、ジクロロメタン10mLを注いで溶解させた。別途25mL容量のナスフラスコに、mCPBA0.52g(3.00mmol)を仕込み、ジクロロメタン10mLを注いで溶解させた。氷浴中で化合物4−1−2−Aの溶液にmCPBAの溶液を滴下した後、室温で24時間反応させた。反応終了後、溶液を飽和亜硫酸ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水で洗浄した後、有機相を硫酸マグネシウムにより乾燥させた。硫酸マグネシウムを濾別し、溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル)により精製し、単離収率98%で化合物4−1−3−Aを得た。以下に化合物4−1−3−Aの化学構造と分析結果を示す。
【0128】
【化20】

【0129】
IR (neat): 2922, 2853, 1790, 1465, 1240, 1114, 1023, 971, 945 cm-1.
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ 0.88 (t, 3H, CH3CH2CH2), 1.18-1.52 (m, 21H, CH2CH2CH2 and CH3CH(-C)C), 1.83 (m, 2H, SCH2CH2), 2.56-2.72 (m, 2H, OC(=O)CH2CH), 2.72-2.86 (m, 1H, OC(=O)CH2CH), 2.92-3.22 (m, 5H, SCH2CH2, SCH2CH(-C)CH2, OC(=O)CH2CH),3.29-3.39 (m, 1H, OC(=O)CH2CH), 3.40-3.49 (m, 1H, SCH2CH(-C)CH2).
13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ14.2, 14.4, 22.0, 22.7, 28.5, 29.1, 29.3, 29.4, 29.6, 29.7, 31.9, 35.3, 35.8, 35.9, 36.0, 52.6 54.8, 115.1, 172.2, 172.4.
【0130】
実施例6 ビス[2−(2,8−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオニル)イソプロピルスルファニル]ヘキサン(化合物4−1−1−D)の合成
10mL容量のアンプルに、イソプロペニルビスラクトン2.26g(12.4mmol)と、1,6−ヘキサンジチオール983mg(6.53mmol)と、AIBN102mg(623μmol)と、クロロベンゼン12.4mLを入れた後、脱気、封管し、60℃で3時間反応させた。反応終了後、クロロベンゼンを留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)により精製し、単離収率72%で化合物4−1−1−Dを得た。以下に化合物4−1−1−Dの化学構造と分析結果を示す。
【0131】
【化21】

【0132】
IR (neat): 2928, 2853, 1785, 1459, 1237, 1168,1035, 968, 864 cm-1.
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ1.18 (d, 6H, CH3), 1.40 (m, 4H, alkyl), 1.59 (m, 4H, alkyl), 2.27 (m, 2H, CH), 2.40-2.65 and 2.85 (m, 4H, OCOCH2 and 8H SCH2), 3.05 (q, 4H, OCOCH2), 3.32 (m, 2H, CCH).
13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ13.5, 28.3, 29.4, 32.9, 33.1, 35.8, 36.1, 40.9, 116.2, 172.6.
【0133】
実施例7 ポリエステルの合成(1)
窒素雰囲気下、10mL容量のアンプルに、実施例1で得た化合物4−1−1−A(92.6mg、0.24mmol)、グリシジルフェニルエーテル(36.0mg、0.24mmol)、トリフェニルホスフィン(2.5mg、9.0μmol)、及びテトラヒドロフラン0.1mLを入れ、脱気封管をした後、120℃で24時間重合反応を行った。反応終了後、反応混合物を冷却した後、酢酸のクロロホルム溶液(1vol%、1mL)を加えることによって、反応を停止させた。この反応溶液をメタノールに注ぎ、メタノールに不溶なオイル状の生成物を集め、真空乾燥を行い、収率71%でポリエステルS1を得た。得られたポリエステルS1の1H−NMRスペクトルを図1−(a)に示す。また、分子量測定の結果、ポリエステルS1の数平均分子量(Mn)は6100、分散度(Mw/Mn)は1.5であった。そして、熱重量分析の結果、Td5は−20℃、Td10は265℃であった。
以下に、ポリエステルS1の化学構造と分析結果(IRスペクトル、1H−NMRスペクトル)を示す。
【0134】
【化22】

【0135】
IR (neat): 2924, 2853, 1741, 1716, 1599, 1497, 1457, 1374, 1243, 1173, 1050, 754, 691 cm-1.
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ 0.88 (t, 3H, CH3 (dodecyl)), 1.10-1.73 (br, 23H, CH3 (isopropyl) and CH2 (alkyl)), 2.46 (br, 5H, CH2COO, SCH2, and CH (isopropyl)), 2.72-3.03 (br, 4H, CH2COO and SCH2), 3.48 (s, 1H, CH), 4.06 (br, 2H, COOCH2), 4.29-4.40 (br, 2H, CH2OPh), 5.32 (s, 1H, COOCH), 6.87-7.26 (m, 5H, Ph).
【0136】
実施例8 ポリエステルの合成(2)
窒素雰囲気下、10mL容量のアンプルに、実施例2で得た化合物4−1−1−B(110.3mg、0.37mmol)、グリシジルフェニルエーテル(55.5mg、0.37mmol)、トリフェニルホスフィン(3.9mg、14.8μmol)、及びテトラヒドロフラン0.2mLを入れ、脱気封管をした後、120℃で24時間重合反応を行った。反応終了後、反応混合物を冷却した後、酢酸のクロロホルム溶液(1vol%、2mL)を加えることによって、反応を停止させた。この反応溶液をメタノールに注ぎ、メタノールに不溶なオイル状の生成物を集め、真空乾燥を行い、収率80%でポリエステルS2を得た。得られたポリエステルS2の1H−NMRスペクトルを図1−(b)に示す。また、分子量測定の結果、ポリエステルS2の数平均分子量(Mn)は5000、分散度(Mw/Mn)は1.5であった。そして、熱重量分析の結果、Td5は−1℃、Td10は281℃であった。
以下に、ポリエステルS2の化学構造と分析結果(1H−NMRスペクトル)を示す。
【0137】
【化23】

【0138】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ 1.10-2.99 (m, 13H, CH3 (isopropyl) and CH2 (cyclohexyl)), 2.46-3.01 (m, 9H, CH2COO, SCH2, CH (isopropyl)), 3.49 (s, 1H, CH), 4.06 (br, 2H, COOCH2), 4.19-4.45 (br, 2H, CH2OPh), 5.31 (s, 1H, COOCH), 6.87-7.26 (m, 5H, Ph).
【0139】
実施例9 ポリエステルの合成(3)
窒素雰囲気下、10mL容量のアンプルに、実施例3で得た化合物4−1−1−C(113.2mg、0.37mmol)、グリシジルフェニルエーテル(55.5mg、0.37mmol)、トリフェニルホスフィン(3.9mg、14.8μmol)、及びテトラヒドロフラン0.2mLを入れ、脱気封管をした後、120℃で24時間重合反応を行った。反応終了後、反応混合物を冷却した後、酢酸のクロロホルム溶液(1vol%、2mL)を加えることによって、反応を停止させた。この反応溶液をメタノールに注ぎ、メタノールに不溶なオイル状の生成物を集め、真空乾燥を行い、収率78%でポリエステルS3を得た。得られたポリエステルS3の1H−NMRスペクトルを図1−(c)に示す。また、分子量測定の結果、ポリエステルS3の数平均分子量(Mn)は4400、分散度(Mw/Mn)は1.7であった。そして、熱重量分析の結果、Td5は2℃、Td10は265℃であった。
以下に、ポリエステルS3の化学構造と分析結果(1H−NMRスペクトル)を示す。
【0140】
【化24】

【0141】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ 1.10 (s, 3H, CH3), 2.21-2.89 (m, CH2COO, SCH2, CH (isopropyl)), 3.40 (m, 1H, CH), 3.64 (s, 2H, SCH2Ph), 4.05 (br, 2H, COOCH2), 4.15-4.48 (br, 2H, CH2OPh), 5.31 (s, 1H, COOCH), 6.87-7.26 (m, 10H, Ph).
【0142】
実施例10 ポリエステルの合成(4)
窒素雰囲気下、10mL容量のアンプルに、実施例5で得た化合物4−1−3−A(154.0mg、0.37mmol)、グリシジルフェニルエーテル(55.5mg、0.37mmol)、トリフェニルホスフィン(3.9mg、14.8μmol)、及びテトラヒドロフラン0.2mLを入れ、脱気封管をした後、120℃で24時間重合反応を行った。反応終了後、反応混合物を冷却した後、酢酸のクロロホルム溶液(1vol%、2mL)を加えることによって、反応を停止させた。この反応溶液をメタノールに注ぎ、メタノールに不溶なオイル状の生成物を集め、真空乾燥を行い、収率26%でポリエステルS4を得た。得られたポリエステルS4の1H−NMRスペクトルを図1−(d)に示す。また、分子量測定の結果、ポリエステルS4の数平均分子量(Mn)は4500、分散度(Mw/Mn)は1.3であった。そして、熱重量分析の結果、Td5は6℃、Td10は276℃であった。
以下に、ポリエステルS4の化学構造と分析結果(IRスペクトル、1H−NMRスペクトル)を示す。
【0143】
【化25】

【0144】
IR (neat): 2923, 2853, 1737, 1716, 1599, 1588, 1497, 1456, 1406, 1373, 1242, 1154, 1133, 753 cm-1.
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ 0.8 (t, 3H, CH2CH2CH3), 1.06-1.41 (br, 21H, CH2CH2CH2 and CH3CH(-C)C), 1.62-1.83 (br, 2H, SCH2CH2), 2.21-2.87 (br, 2H, OC(=O)CH2CH), 3.37-3.65 (br, 1H, OC(=O)CH2CH), 3.85-4.49 (m, 5H, SCH2CH2, SCH2CH(-C)CH2, OC(=O)CH2CH), 5.27 (br, 1H, CHCH2OPh), 6.75-7.30 (br, 5H, Ph).
【0145】
実施例11 ポリエステルの合成(5)
10mL容量のアンプルに、実施例6で得た化合物4−1−1−D(380mg、0.739mmol)と、グリシジルフェニルエーテル(222mg、1.48mmol)と、トリフェニルホスフィン(7.75mg、29.5μmol)と、テトラヒドロフラン0.74mLを入れた後、封管し、120℃で24時間反応させた。反応終了後、クロロホルムを溶媒に用いたソックスレー抽出により溶媒や触媒を除去し、クロロホルム不溶部を乾燥することにより、単離収率93%でポリエステルS5(硬化物)を得た。得られたポリエステルS5について熱重量分析を行った結果、Td5は257℃、Td10は276℃であった。また、示差走査熱分析の結果、ガラス転移温度(Tg)は27℃であった。
以下に、ポリエステルS5の化学構造と分析結果(IRスペクトル)を示す。
【0146】
【化26】

【0147】
IR (neat): 2929, 1733, 1713, 1598, 1587, 1495,1455, 1409, 1372, 1238, 1152, 1046, 980, 886, 813, 753, 691 cm-1.
【0148】
実施例12 ポリエステルの合成(6)
10mL容量のアンプルに、実施例6で得た化合物4−1−1−D(380mg、0.739mmol)と、グリシジルフェニルエーテル(166mg、1.11mmol)と、BisA−DGE(62.8mg、0.185mmol)と、トリフェニルホスフィン(7.75mg、29.5μmol)と、テトラヒドロフラン0.74mLを入れた後、封管し、120℃で24時間反応させた。反応終了後、クロロホルムを溶媒に用いたソックスレー抽出により溶媒や触媒を除去し、クロロホルム不溶部を乾燥することにより、単離収率95%でポリエステルS6(硬化物)を得た。得られたポリエステルS6について熱重量分析を行った結果、Td5は259℃、Td10は280℃であった。また、示差走査熱分析の結果、ガラス転移温度(Tg)は36℃であった。
以下に、ポリエステルS6の化学構造と分析結果(IRスペクトル)を示す。
【0149】
【化27】

【0150】
IR (neat): 2927, 1733, 1713, 1599, 1588, 1495,1456, 1410, 1372, 1235, 1151, 1045, 980, 887, 813, 753, 691 cm-1.
【0151】
実施例13 ポリエステルの合成(7)
グリシジルフェニルエーテルとBisA−DGEの使用量を換えた以外は、実施例12と同様にしてポリエステルを合成した。
すなわち、10mL容量のアンプルに、実施例6で得た化合物4−1−1−D(380mg、0.739mmol)と、グリシジルフェニルエーテル(111mg、0.739mmol)と、BisA−DGE(126mg、0.369mmol)と、トリフェニルホスフィン(7.75mg、29.5μmol)と、テトラヒドロフラン0.74mLを入れた後、封管し、120℃で24時間反応させた。反応終了後、クロロホルムを溶媒に用いたソックスレー抽出により溶媒や触媒を除去し、クロロホルム不溶部を乾燥することにより、単離収率97%でポリエステルS7(硬化物)を得た。得られたポリエステルS7について熱重量分析を行った結果、Td5は263℃、Td10は285℃であった。また、示差走査熱分析の結果、ガラス転移温度(Tg)は47℃であった。
以下に、ポリエステルS7の分析結果(IRスペクトル)を示す。
【0152】
IR (neat): 2928, 1732, 1713, 1599, 1506, 1495,1412, 1372, 1224, 1151, 1045, 980, 829, 753, 691 cm-1.
【0153】
実施例14 ポリエステルの合成(8)
グリシジルフェニルエーテルとBisA−DGEの使用量を換えた以外は、実施例12と同様にしてポリエステルを合成した。
すなわち、10mL容量のアンプルに、実施例6で得た化合物4−1−1−D(380mg、0.739mmol)と、グリシジルフェニルエーテル(55.5mg、0.369mmol)と、BisA−DGE(189mg、0.554mmol)、トリフェニルホスフィン(7.75mg、29.5μmol)と、テトラヒドロフラン0.74mLを入れた後、封管し、120℃で24時間反応させた。反応終了後、クロロホルムを溶媒に用いたソックスレー抽出により溶媒や触媒を除去し、クロロホルム不溶部を乾燥することにより、単離収率99%でポリエステルS8(硬化物)を得た。得られたポリエステルS8について熱重量分析を行った結果、Td5は266℃、Td10は289℃であった。また、示差走査熱分析の結果、ガラス転移温度(Tg)は57℃であった。
以下に、ポリエステルS8の分析結果(IRスペクトル)を示す。
【0154】
IR (neat): 2928, 1733, 1712, 160, 1507, 1455,1412, 1361, 1224, 1154, 1043, 980, 829, 751, 692 cm-1.
【0155】
実施例15 ポリエステルの合成(9)
10mL容量のアンプルに、実施例6で得た化合物4−1−1−D(380mg、0.739mmol)と、BisA−DGE(251mg、0.739mmol) と、トリフェニルホスフィン(7.75mg、29.5μmol)と、テトラヒドロフラン0.74mLを入れた後、封管し、120℃で24時間反応させた。反応終了後、クロロホルムを溶媒に用いたソックスレー抽出により溶媒や触媒を除去し、クロロホルム不溶部を乾燥することにより、単離収率98%でポリエステルS9(硬化物)を得た。得られたポリエステルS9について熱重量分析を行った結果、Td5は275℃、Td10は301℃であった。また、示差走査熱分析の結果、ガラス転移温度(Tg)は68℃であった。
以下に、ポリエステルS9の化学構造と分析結果(IRスペクトル)を示す。
【0156】
【化28】

【0157】
IR (neat): 2928, 1733, 1712, 1607, 1507, 1455,1410, 1361, 1227, 1179, 1040, 982, 829, 750, 691 cm-1.
【0158】
実施例7〜15の結果から、化合物(4)と、化合物(5)及び/又は化合物(6)とを含む重合性組成物を用いることにより、優れた耐熱性を有するポリエステルを合成できることがわかった。また、この結果から、化合物(4)がポリエステルの合成中間体として有用であることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造単位を有するポリエステル。
【化1】

〔式(1)中、R1は、単結合、アルカンジイル基又はアルケンジイル基を示し、R2は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基又は下記式(2)
【化2】

(式(2)中、R5は、アルカンジイル基を示し、*は、式(1)中のAと結合している位置を示し、R1、R3、R4、A及びnは、式(1)中のものと同義である。)
で表される構造単位を示し、R3は、それぞれ独立して、水素原子、アミノ基又は1価の炭化水素基を示し、R4は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アリールオキシアルキル基又は下記式(3)
【化3】

(式(3)中、R6は、単結合又はアルカンジイル基を示し、R7は、アルカンジイル基を示し、**は、式(1)中のR4に隣接する炭素原子と結合する位置を示し、R1、R2、R3、A及びnは、式(1)中のものと同義である。)
で表される構造単位を示し、Aは、−S−、−S(=O)−又は−S(=O)2−を示し、nは、1又は2を示す。〕
【請求項2】
2が、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数7〜30のアラルキル基又は式(2)で表される構造単位である請求項1記載のポリエステル。
【請求項3】
下記式(4)で表される化合物と、下記式(5)で表される化合物及び下記式(6)で表される化合物から選ばれる1種以上とを含む重合性組成物。
【化4】

〔式(4)中、R1は、単結合、アルカンジイル基又はアルケンジイル基を示し、R3は、それぞれ独立して、水素原子、アミノ基又は1価の炭化水素基を示し、R8は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基又は下記式(7)
【化5】

(式(7)中、R5は、アルカンジイル基を示し、***は、式(4)中のAと結合している位置を示し、R1、R3及びAは、式(4)中のものと同義である。)
で表される基を示し、Aは、−S−、−S(=O)−又は−S(=O)2−を示す。〕
【化6】

〔式(5)中、R9は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基又はアリールオキシアルキル基を示し、nは、1又は2を示す。〕
【化7】

〔式(6)中、R6は、単結合又はアルカンジイル基を示し、R7は、アルカンジイル基を示し、nは、前記と同義である。〕
【請求項4】
更に、重合開始剤を含む請求項3記載の重合性組成物。
【請求項5】
8が、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数7〜30のアラルキル基又は式(7)で表される基である請求項3又は4記載の重合性組成物。
【請求項6】
下記式(4)で表される化合物。
【化8】

〔式(4)中、R1は、単結合、アルカンジイル基又はアルケンジイル基を示し、R3は、それぞれ独立して、水素原子、アミノ基又は1価の炭化水素基を示し、R8は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基又は下記式(7)
【化9】

(式(7)中、R5は、アルカンジイル基を示し、***は、式(4)中のAと結合している位置を示し、R1、R3及びAは、式(4)中のものと同義である。)
で表される基を示し、Aは、−S−、−S(=O)−又は−S(=O)2−を示す。〕
【請求項7】
8が、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数7〜30のアラルキル基又は式(7)で表される基である請求項6記載の化合物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−236963(P2012−236963A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182676(P2011−182676)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年5月10日、社団法人 高分子学会「高分子学会予稿集 60巻1号〔2011〕」に発表、平成23年5月27日、社団法人 高分子学会「第60回高分子学会」に文書をもって発表
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】