説明

ポリエステルからのテレフタル酸ジメチルの製造方法

【課題】本発明が解決しようとする課題はテレフタル酸ジメチルの製造において、エステル交換反応に用いるエネルギー負荷が小さく、かつ収率良くテレフタル酸ジメチルを製造する方法を提供することである。
【解決手段】上記課題は、アルキレンテレフタレート単位を有するポリエステルをアルキレングリコールによって解重合反応を行い、ビス(ω−ヒドロキシアルキル)テレフタレートを含む解重合液を得た後、該解重合反応液中に含まれるビス(ω−ヒドロキシアルキル)テレフタレートをメタノールとエステル交換反応させるに際し、解重合反応に用いたアルキレンテレフタレート単位を有するポリエステルに対して重量比で0.01重量%〜10重量%のカルシウムを含む触媒を用い、エステル交換反応の反応温度が35℃以上90℃以下であることを特徴とするテレフタル酸ジメチルの製造方法によって解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレフタル酸ジメチルの製造方法、特に、ポリエステル製品からテレフタル酸ジメチルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートはその優れた特性により繊維、フィルム、樹脂等として広く用いられているが、これらの製造工程において発生する繊維状、フィルム状、樹脂状等のポリエステル屑の有効利用はコストの面からのみならず環境問題も含め大きな課題となっている。また、ポリエステルの製品に関しても、製品使用後に発生する廃棄物(例えば、使用後の空のペットボトルなど)の処理が環境面で問題となる。
【0003】
その処理方法としてマテリアルリサイクル、サーマルリサイクル、ケミカルリサイクルによる各種の提案が成されている。このうちマテリアルリサイクルについては例えば、ペットボトル等のポリエステル樹脂屑が自治体を中心に回収され積極的な再利用が実施されている。しかし、マテリアルリサイクルは通常カスケードリサイクルであり、リサイクルするごとに品質が低下する。また、ポリエステル廃棄物を燃料に転化するサーマルリサイクルは、ポリエステル廃棄物の燃焼熱の再利用という利点を有するが、発熱量が比較的低く、多量のポリエステル廃棄物を燃焼させることに他ならないため、ポリエステル原料損失という問題点があり、省資源の面から好ましくない。
【0004】
これに対してケミカルリサイクルではポリエステル廃棄物を原料モノマーに再生するため、再生に伴う品質の低下が少なく、クローズドループのリサイクルとして優れている。ケミカルリサイクルにおいては樹脂屑、フィルム屑を対象としたものが大部分であるが、例えば、ポリエステル屑を過剰のエチレングリコール(以下、EGと略記することがある)により解重合した後、得られたビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート(以下、BHETと略記することがある)を直接重縮合して再生ポリエステルを得る方法等が提案されている(例えば、特許文献1および2参照。)。これらの方法ではポリエステル原料としてBHETを得ているが、BHETは蒸留精製が難しいために、得られるBHETの純度が低い傾向がある。一方、ポリエステル屑から高純度のポリエステル原料を得る方法として、ポリエステル屑をEGで解重合し、得られたBHETをメタノールとエステル交換反応させることで高純度のテレフタル酸ジメチル(以下、DMTと略記することがある)を得る方法が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、エステル交換として用いている炭酸ナトリウムは触媒活性が十分ではなく、更なる高活性の触媒が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭48−061447号公報
【特許文献2】特開2005−330444号公報
【特許文献3】特許第4067306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、テレフタル酸ジメチルの製造において、エステル交換反応に用いるエネルギー負荷が小さく、かつ収率良くテレフタル酸ジメチルを製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記従来技術に鑑み、発明の課題を解決させるべく鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、アルキレンテレフタレート単位を有するポリエステルをアルキレングリコールによって解重合反応を行い、ビス(ω−ヒドロキシアルキル)テレフタレートを含む解重合液を得た後、該解重合反応液中に含まれるビス(ω−ヒドロキシアルキル)テレフタレートをメタノールとエステル交換反応させるに際し、解重合反応に用いたアルキレンテレフタレート単位を有するポリエステルに対して重量比で0.01重量%〜10重量%のカルシウムを含む触媒を用い、エステル交換反応の反応温度が35℃以上90℃以下であることを特徴とするテレフタル酸ジメチルの製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、テレフタル酸ジメチルの製造において、従来よりもエネルギー負荷が小さく、かつ収率良くテレフタル酸ジメチルを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施形態に基づき以下に説明する。
本実施形態におけるアルキレンテレフタレート単位を有するポリエステルは、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートなどを挙げることができる。より詳細には、ポリエチレンテレフタレートを主として含む製品であることが好ましく、更にそのポリエステルに異素材が含まれていてもよく、異素材としては、たとえば、繊維製品では、ポリエチレンテレフタレート繊維の染色に用いられる染料に加え、混紡等の形で含まれているナイロンや木綿等の他の繊維素材や、表面改質等の目的のために使用される他のプラスッチック成分が含まれていてもよい。ここで「主として」とはポリエステルに対して80重量%以上、好ましくは90重量%以上であることを表す。
【0010】
本実施形態におけるアルキレングリコールは、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ビス(トリメチレン)グリコール)[別名:ビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテル]、ビス(テトラメチレン)グリコール[別名:ビス(4−ヒドロキシブチル)エーテル]、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどを挙げることができる。これらの中でも上記のポリアルキレンテレフタレート単位のアルキレン部分に対応する同一の化学構造式を有するアルキレングリコールを用いることが好ましく、エチレングリコールを用いることがより好ましい。その解重合工程で用いるアルキレングリコールはポリアルキレンテレフタレートの重量に対して0.5〜20重量倍用いることが好ましく、1.0〜10重量倍がより好ましい。
【0011】
本発明においては、ポリアルキレンテレフタレートを含む製品(ポリエステル)へ過剰モル量のアルキレングリコールを加え、解重合し、ビス(ω−ヒドロキシアルキル)テレフタレート(以下、BHATと略記することがある)およびそれらのオリゴマー成分を含む解重合液を得ることができる。尚、解重合反応においては、公知の解重合触媒を公知の触媒濃度範囲内で使用し、120〜230℃に加熱された過剰のアルキレングリコール中で解重合反応させることが好ましい。アルキレングリコールの温度が120℃未満であると、解重合時間が非常に長くなり効率的ではなくなる。一方、230℃を越えるとポリエステルがポリエステル繊維であって、該ポリエステル繊維屑に含まれる異素材等の熱分解が顕著になり、分解して発生した窒素化合物等が回収する有用成分中に分散して、後の有用成分回収のための工程では分離困難となる。また解重合反応においては、その反応時の圧力は0.1〜0.5MPaに保持することができる。解重合触媒の種類としては、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、リチウムアルコキシド、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、ルビジウムアルコキシド、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、マグネシウムアルコキシド、カルシウムアルコキシドからなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物を用いるのが好ましい。これらの解重合触媒の添加量はポリアルキレンテレフタレートに対して0.01〜10.0重量%が好ましく、0.01〜5.0重量%の範囲がより好ましい。
【0012】
また、解重合反応終了後に得た解重合液から一部のアルキレングリコールを蒸留・蒸発させて解重合液を濃縮することができる。この操作を行うことによって、その後のエステル交換反応において使用するメタノール量を低減することができる。さらに、蒸留・蒸発により回収したアルキレングリコールを例えば再度前述の解重合反応に用いる等の有効利用することが可能となる。またこの工程で蒸留・蒸発させるアルキレングリコールの量は解重合反応を行う際に添加するアルキレングリコールの量に対して0.1〜1.0重量倍とすることや、アルキレングリコールとポリアルキレンテレフタレートとの重量比率が0.5〜2.0倍になるまで実施することが好ましい。またこの蒸留・蒸発させる工程の際には温度を120〜180℃の範囲にして行うことが、純度が高く、後に解重合反応等に用いることができるアルキレングリコールを得られることができる点で好ましい。また、この蒸留・蒸発させる工程の際の圧力は0.001〜0.1MPaが好ましい。
【0013】
次いで、解重合反応によって得られた解重合液を、カルシウムを含む触媒を用いてメタノールと反応させ、エステル交換反応を行う。エステル交換反応で用いるメタノール量は、エステル交換反応が平衡反応であることから、平衡反応の観点からはメタノール量が多いほうが好ましいが、多すぎると反応後のメタノールの分離、精製が困難になるので、ポリアルキレンテレフタレートの重量に対して0.5〜10.0重量倍用いることが好ましく、1.0〜5.0重量倍がより好ましい。
【0014】
本実施形態におけるカルシウムを含む触媒としては、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭化カルシウム、ハイドロキシアパタイト、塩化カルシウム、フッ化カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、カルシウムアルコキシド、酢酸カルシウム、グリコール酸カルシウム、グリセリン酸カルシウム水和物、ステアリン酸カルシウム、3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸カルシウム、3−メチル−2−オキソ吉草酸カルシウム、4−アミノサリチル酸カルシウム七水和物、4−クロロベンゾイル−L−トリプトファンカルシウム、ビス(2,4−ペンタンジオナト)カルシウム(II)などが挙げられる。好ましくは、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムである。これらはそのまま触媒として用いても良いし、担体に担持して用いても良い。本実施形態におけるカルシウムを担持する担体としては、特に限定されないが、無機物担体としては、例えば、無機酸化物担体、無機水酸化物担体、活性炭担体などが挙げられる。より具体的には、無機酸化物としては、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ、マグネシア、酸化亜鉛、酸化スズなどから選択される一種または二種以上の無機酸化物またはその複合物が挙げられる。無機酸化物の複合物としては、マグネシウムアルミネートなどの複合酸化物やβ−ゼオライト(Na)などのゼオライトが挙げられる。無機水酸化物としては、水酸化チタン、水酸化ジルコニウム、水酸化アルミナ、水酸化マグネシア、水酸化亜鉛、水酸化スズなどが挙げられる。好ましくは、シリカ、アルミナ(γ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、α−アルミナ)、アルミの水酸化物(ギブサイト、バイヤーライト、ベーマイト、ダイアスポア)などが挙げられ、より好ましくはシリカ又はアルミナである。
【0015】
担体にカルシウムを担持する際のカルシウム担持量は特に限定されないが、効率的にテレフタル酸ジメチルを製造する観点から、触媒全体量に対して、5.0〜30重量%が好ましく、10〜25重量%がより好ましい。上記カルシウム担持触媒を製造する方法は特に限定されないが、担体にカルシウム含有液を含浸させた後、乾燥、次に焼成すれば良い。なお、触媒製造におけるカルシウム含有液の量が多量である場合には、前記含浸および乾燥を繰り返し行うIncipient wetness法や、蒸発乾固法により触媒を製造しても良い。また、前記触媒の製造過程における担体を含浸するときの温度および乾燥するときの温度は、特に限定されるものではない。上記焼成の温度は、特に限定されないが、300〜700℃が好ましく、500℃がより好ましい。また、上記焼成時の雰囲気も、大気雰囲気、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気、水素等の還元性ガス雰囲気等、特に限定されないが、当該焼成時の雰囲気として好ましいのは、大気雰囲気である。また、エステル交換反応における触媒の使用量としては、解重合反応に用いるアルキレンテレフタレート単位を有するポリエステルに対して、言い換えると解重合工程に投入するポリアルキレンテレフタレート単位を有するポリエステルに対して重量比で0.01〜10.0重量%が好ましく、効率的かつ十分に反応を進行させる目的から、0.1〜9.0重量%がより好ましい。
【0016】
またこのエステル交換反応の際の触媒としてカルシウムを含む触媒以外に他の公知のアルカリ土類金属化合物またはアルカリ金属化合物等を加えても良い。具体的には、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸スズ、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、リチウムアルコキシド、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、ルビジウムアルコキシド、マグネシウムアルコキシド、ストロンチウムアルコキシドからなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物を用いるのが好ましい。これらの化合物の添加量はカルシウムを含む触媒を含めて上記の使用量とすることが好ましい。これらの化合物の添加量はカルシウムを含む触媒を含めて上記の使用量とすることが好ましい。本発明の製造方法においては、メタノール等のアルコールとのエステル交換反応について従来の触媒と対比してカルシウムを含む触媒を用いると、所定量の範囲内であれば、水が存在していてもメタノールからの脱プロトン化が有効に進行されると考えられる。その結果、解重合反応物のエステル結合に対する求核置換反応が水の存在下であっても有効に進行するために当該エステル交換反応が効率的に進行するもとの考える。
【0017】
本実施形態におけるエステル交換反応の温度・圧力は、エネルギー負荷を小さく、かつ収率良くテレフタル酸ジメチルを製造する観点から、エステル交換反応の反応温度は35以上90℃以下が好ましく、エステル交換反応の反応圧力が常圧以上0.24MPa以下では反応温度は40℃以上88℃以下がより好ましく、エステル交換反応の反応圧力が常圧では反応温度は40以上70℃以下がより好ましい。エステル交換反応の反応温度が40℃未満だと、反応液が固化することがあるために撹拌効率が低下し、テレフタル酸ジメチルの収率が低下することがあり好ましくない。エステル交換反応の反応温度が90℃を超えると、エネルギー負荷が高くなり、本発明の効果を奏することができない。エステル交換の反応時間としては、より効率的にテレフタル酸ジメチルを製造する観点から、3時間以内が好ましく、2時間以内がより好ましい。エステル交換反応後、生成したテレフタル酸ジメチルの結晶を遠心分離等の固液分離手段により固液分離することによって、テレフタル酸ジメチルを製造する事ができる。また高純度の物が所望の際には、得られた粗テレフタル酸ジメチルを蒸留精製することによってテレフタル酸ジメチルの純度を上げることができる。
【0018】
また、エステル交換反応後において、テレフタル酸ジメチルを分離した残液から、メタノールおよびエチレングリコールを取り除いた残渣を、新たに解重合反応に加える事によって、残液中に流出しているカルシウム成分およびBHATやテレフタル酸ジメチル等の有効成分を回収することができる。このリサイクルプロセスは、所定量の投入ポリアルキレンテレフタレートに対するテレフタル酸ジメチル生成量を高めたい場合に好適である。
【実施例】
【0019】
以下、実施例により本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定を受けるものではない。生成物の分析は、水素炎イオン化検出器を使用したガスクロマトグラフ(GC)で行った。GCには株式会社島津製作所社製「GC−17A」を使用し、分析用GCカラムにはジーエルサイエンス株式会社製キャピラリーカラム「TC−5HT」(カラム内径0.25mm、長さ30m)を使用した。水分の測定には、三菱化学株式会社製カールフィッシャー水分計CA−06を使用した。
【0020】
以下の実施例、比較例で示す「テレフタル酸ジメチル製造量」とは、下記式(1)に基づいて算出した値である。
数式(1):テレフタル酸ジメチル製造量=(固液分離後のケーク重量)×(ケーク中のテレフタル酸ジメチル純度(重量%))/100
【0021】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート50g、EG200g、解重合触媒として炭酸ナトリウム1.5gを還流管付きの三ツ口フラスコに仕込み、反応温度200℃、常圧で3時間撹拌しながら解重合反応させ、BHETを含む解重合液を得、その後、同反応器にて温度160℃、圧力13.3kPaの条件でEGを150g留去し、解重合液を濃縮した。次いで同反応器へエステル交換触媒として酸化カルシウム0.185g、メタノール88gを添加し、常圧下、反応温度40℃で1時間エステル交換反応させた。この時、DMT結晶の析出はエステル交換反応開始後30分後に確認された。反応後、反応液を10℃まで冷却した後に吸引ろ過して固液分離し、得られたケークをメタノール50gで2回洗浄ろ過、90℃で一昼夜乾燥し、テレフタル酸ジメチルを主成分とするケークを得た。テレフタル酸ジメチルの製造量は41.8gであった。結果を表1に示した。
【0022】
[実施例2]
エステル交換反応時の反応温度を50℃へ替えたこと以外は実施例1と同様にしてテレフタル酸ジメチルの製造を行った。この時、DMT結晶の析出はエステル交換反応開始後20分後に確認され、テレフタル酸ジメチルの製造量は41.1gであった。結果を表1に示した。
【0023】
[実施例3]
エステル交換反応時の反応温度を60℃へ替えたこと以外は実施例1と同様にしてテレフタル酸ジメチルの製造を行った。この時、DMT結晶の析出はエステル交換反応開始後10分後に確認され、テレフタル酸ジメチルの製造量は40.4gであった。結果を表1に示した。
【0024】
[実施例4]
エステル交換反応時の反応温度を70℃へ替えたこと以外は実施例1と同様にしてテレフタル酸ジメチルの製造を行った。この時、DMT結晶の析出はエステル交換反応開始後5分後に確認され、テレフタル酸ジメチルの製造量は39.9gであった。結果を表1に示した。
【0025】
[実施例5]
エステル交換反応時の反応温度を78℃へ替えたこと以外は実施例1と同様にしてテレフタル酸ジメチルの製造を行った。この時、DMT結晶の析出はエステル交換反応開始後5分後に確認され、テレフタル酸ジメチルの製造量は37.5gであった。結果を表1に示した。
【0026】
[実施例6]
エステル交換触媒として酸化カルシウム0.185gを水酸化カルシウム0.245gに替えたこと以外は実施例2と同様にしてテレフタル酸ジメチルの製造を行った。この時、DMT結晶の析出はエステル交換反応開始後30分後に確認され、テレフタル酸ジメチルの製造量は39.8gであった。結果を表1に示した。
【0027】
[実施例7]
(前駆体溶液調製工程)
硝酸カルシウム四水和物11.7846gを蒸留水50mLに溶解し、軽く撹拌して溶液を均一にし、前駆体溶液を調製した。
(担持工程)
調製した前駆体溶液を、担体となるγ−アルミナ7.2016gに、スポイトを用いて担体が満遍なく濡れる程度まで滴下し、ガラス棒を用いて撹拌した後、80℃程度の熱をかけて水分を飛ばし、乾燥させた。前駆体溶液がなくなるまで同様の操作を行った。その後、前駆体溶液を含浸した固体を110℃の恒温乾燥機で一晩乾燥させた。
(焼成工程)
乾燥後の固体を、マッフル炉で空気中500℃、3時間焼成し、Ca(20)/γ−アルミナ触媒を得た(金属元素記号直後の括弧内の数字は、触媒全体重量中に占める担持したカルシウムの重量%を示した)。
(テレフタル酸ジメチルの製造)
エステル交換触媒として酸化カルシウム0.185gを上記調製したCa(20)/γ−アルミナ2.5gに代えたこと以外は実施例2と同様にしてテレフタル酸ジメチルの製造を行った。この時、DMT結晶の析出はエステル交換反応開始後15分後に確認され、テレフタル酸ジメチルの製造量は40.5gであった。結果を表1に示した。
【0028】
[実施例8]
ポリエチレンテレフタレート50g、EG200g、解重合触媒として炭酸ナトリウム1.5gをオートクレーブに仕込み、反応温度200℃、常圧で3時間撹拌しながら解重合反応させ、BHETを含む解重合液を得、その後、同反応器にて温度160℃、圧力13.3kPaの条件でEGを150g留去し、解重合液を濃縮した。次いで同反応器へエステル交換触媒として酸化カルシウム0.185g、メタノール88gを添加し、反応温度88℃(この時圧力は絶対圧で0.24MPa)で1時間エステル交換反応させた。この時、DMT結晶の析出はエステル交換反応開始後3分後に確認された。反応後、反応液を10℃まで冷却した後に吸引ろ過して固液分離し、得られたケークをメタノール50gで2回洗浄ろ過、90℃で一昼夜乾燥し、テレフタル酸ジメチルを主成分とするケークを得た。テレフタル酸ジメチルの製造量は37.1gであった。結果を表1に示した。
【0029】
[比較例1]
エステル交換触媒として酸化カルシウム0.185gを炭酸ナトリウム0.35gに代えたこと以外は実施例1と同様にしてテレフタル酸ジメチルの製造を行った。しかし、エステル交換反応開始から1時間経過してもDMT結晶の析出は見られず、反応不十分として実験を中止した。結果を表1に示した。
【0030】
[比較例2]
エステル交換触媒として酸化カルシウム0.185gを炭酸ナトリウム0.35gに替えたこと以外は実施例2と同様にしてテレフタル酸ジメチルの製造を行った。この時、DMT結晶の析出はエステル交換反応開始後50分後に確認され、テレフタル酸ジメチルの製造量は2.4gであった。結果を表1に示した。
【0031】
[比較例3]
エステル交換触媒として酸化カルシウム0.185gを酸化マグネシウム0.13gに代えたこと以外は実施例2と同様にしてテレフタル酸ジメチルの製造を行った。しかし、エステル交換反応開始から1時間経過してもDMT結晶の析出は見られず、反応不十分として実験を中止した。結果を表1に示した。
【0032】
【表1】

【0033】
表1に示すとおり、エステル交換触媒としてカルシウムを含む触媒を用いることで、低い反応温度でも効率的にテレフタル酸ジメチルを製造できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、テレフタル酸ジメチルの製造において、エステル交換触媒としてカルシウムを含む触媒を用いることで、低い反応温度で収率良くテレフタル酸ジメチルを製造することができ、その工業的な意義は大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキレンテレフタレート単位を有するポリエステルをアルキレングリコールによって解重合反応を行い、ビス(ω−ヒドロキシアルキル)テレフタレートを含む解重合液を得た後、該解重合反応液中に含まれるビス(ω−ヒドロキシアルキル)テレフタレートをメタノールとエステル交換反応させるに際し、解重合反応に用いたアルキレンテレフタレート単位を有するポリエステルに対して重量比で0.01重量%〜10重量%のカルシウムを含む触媒を用い、エステル交換反応の反応温度が35℃以上90℃以下であることを特徴とするテレフタル酸ジメチルの製造方法。
【請求項2】
エステル交換反応の反応時間が3時間以内であることを特徴とする請求項1記載のテレフタル酸ジメチルの製造方法。
【請求項3】
エステル交換反応の反応圧力が常圧以上0.24MPa以下であって、エステル交換反応の反応温度が40℃以上88℃以下であって、エステル交換反応の反応時間が2時間以内であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のテレフタル酸ジメチルの製造方法。
【請求項4】
エステル交換反応の反応圧力が常圧であって、エステル交換反応の反応温度が40℃以上70℃以下であって、エステル交換反応の反応時間が2時間以内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のテレフタル酸ジメチルの製造方法。
【請求項5】
カルシウムを含む触媒が、酸化カルシウム、水酸化カルシウム又は炭酸カルシウムを含む触媒であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のテレフタル酸ジメチルの製造方法。
【請求項6】
カルシウムを含む触媒は、アルミナおよびシリカから選ばれる少なくとも1種に担持されたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のテレフタル酸ジメチルの製造方法。

【公開番号】特開2012−131729(P2012−131729A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284533(P2010−284533)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】