説明

ポリエステルとその製造法

【課題】リグニン含有バイオマスに由来する2−ピロン−4,6−ジカルボン酸から誘導されるδ−バレロラクトン誘導体の開環重合により得られる新規ポリエステル及びその製法を提供すること。
【解決手段】本発明に係るポリエステルは、以下の式(1):


{式中、Rは、独立に、H;炭素数1〜6個を有する1価のアルキル基;芳香族基;又は複素環基である。}で表される繰り返し単位を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルとその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、各種ポリマー、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等が、各種容器等の成形品やゴミ袋、包装袋等に広く使用されている。しかしながら、これらのポリマーは、主に石油を原料としているため、廃棄の際、焼却すれば大気中の二酸化炭素を増加させて、地球温暖化の一因とされている。一方、焼却せずに、埋立て処分すると、自然環境下でほとんど分解されないものが多いため、半永久的に地中に残存することになる。
【0003】
近年、植物由来の原料や微生物による代謝を介して得られる植物由来のポリマーが注目されている。なぜなら、これらのポリマーは、石油を原料としない環境循環型の素材であり、植物に固定された二酸化炭素を大気中に戻すことになるという意味で、焼却しても大気中の二酸化炭素を増加させない。また、焼却せずに埋立て処分しても、土壌中の微生物により分解されるため、環境破壊を招く虞がない。かかる植物由来のポリマーとして、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸等が挙げられ、将来性のある生物分解性である環境循環型の素材として、各種成形品への用途開発が進められている。しかしながら、かかる植物由来のポリマーは、澱粉等を含む穀物である食物を原料とする場合には、供給において食物と競合するという問題がある。これは、人類に対する食料の安定供給の観点から問題である。
【0004】
ところで、植物由来の芳香族高分子化合物であるリグニンは、植物細胞壁に普遍的に含まれているバイオマス資源であるけれども、その化学構造が多様な成分で構成されていることや複雑な高分子構造であるため、未だ、有効な利用技術が開発されていない。そのため、例えば、製紙産業において大量に副生するリグニンは有効利用されずに、重油の代替燃料として焼却処分されている。
【0005】
近年、リグニン等の植物由来芳香族成分が、加水分解、酸化分解、加溶媒分解等の化学的分解法、又は超臨界水や超臨界有機溶媒による物理化学的分解法により、数種の低分子化合物の混合物に変換されて単一の化合物である2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を製造する方法が開発されてきた。例えば、特開2005−278549号公報(以下、特許文献1参照)には、リグニンを含む植物原料を低分子化技術により得たバニリン、シリンガアルデヒド、バニリン酸、シリンガ酸、プロトカテク酸を含む低分子混合物から多段階の酵素反応を介して単一の化合物である2−ピロン−4,6−ジカルボン酸(以下、PDCともいう。)を発酵生産技術により製造する方法が開示されている。また、特開2008−79603号公報(以下、特許文献2参照)には、微生物により生産された2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を含む発酵液に、陽イオンの塩を存在させて2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を精製する方法や遊離2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を抽出する方法が開示されている。
また、PDCのエステルは、例えば、国際公開WO99/54376パンフレットに記載された方法により得ることができる(以下、特許文献3を参照のこと)。
【0006】
このようにして得られた単一の化合物である2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を、生物分解性のプラスチックや各種化学製品の原料として使用することができれば、供給において、食物と競合しない、リグニン含有植物原料(バイオマス)を有効利用することができることになる。しかしながら、リグニン含有バイオマスに由来する2−ピロン−4,6−ジカルボン酸の利用方法は未だ確立されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−278549号公報
【特許文献2】特開2008−79603号公報
【特許文献3】国際公開WO99/54376パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、リグニン含有バイオマスに由来する2−ピロン−4,6−ジカルボン酸から誘導されるδ−バレロラクトン誘導体の開環重合により得られる新規ポリエステル及びその製法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決するため、実験を繰り返し、鋭意研究を重ねた結果、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸からδ−バレロラクトン誘導体(以下、テトラヒドロ−2H−ピロン−4,6−ジカルボキシレートともいう。)を実際に製造し、かかるδ−バレロラクトン誘導体を開環重合してポリエステルを実際に製造し、その製造方法を確立し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[9]である:
【0010】
[1]以下の式(1):
【化1】

{式中、Rは、独立に、H又は炭素数1〜6個を有する1価のアルキル基である。}で表される繰り返し単位を有するポリエステル。
【0011】
[2]以下の式(1):
【化2】

{式中、Rは、独立に、芳香族基又は複素環基である。}で表される繰り返し単位を有するポリエステル。
【0012】
[3]以下の式(2):
【化3】

で表される繰り返し単位を有するポリエステル。
【0013】
[4]以下の式(3):
【化4】

{式中、Rは、独立に、H;炭素数1〜6個を有する1価のアルキル基;芳香族基;又端複素環基である。}で表されるδ−バレロラクトン誘導体を、触媒の存在下、重合させて、以下の式(1):
【化5】

{式中、Rは、独立に、H;炭素数1〜6個を有する1価のアルキル基;芳香族基;又は複素環基である。}で表される繰り返し単位を有するポリエステルを製造する方法。
【0014】
[5]以下の式(4):
【化6】

で表される2−ピロン−4,6−ジカルボン酸ジメチルを、触媒の存在下、重合させて、以下の式(2):
【化7】

で表される繰り返し単位を有するポリエステルを製造する方法。
【0015】
[6]前記触媒が有機スズである、前記[4]又は[5]に記載の方法。
【0016】
[7]前記有機スズが2−エチルヘキサン酸スズである、前記[4]〜[6]のいずれかに記載の方法。
【0017】
[8]前記重合反応が室温〜130℃で行われる、前記[4]〜[7]のいずれか1に記載の方法。
【0018】
[9]前記重合反応が1〜24時間の時間期間にわたり行われる、前記[4]〜[8]のいずれかに記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
重合反応の出発物質であるモノマー、δ−バレロラクトン誘導体は、以下の式(3):
【化8】

{式中、Rは、独立に、H;非置換の炭素数1〜6個を有する1価のアルキル基;芳香族基:又は複素環基である。}で表される。式中、Rは、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピルメチル基、シクロペンチルメチル基できる。Rが、メチル基である場合、モノマー、δ−バレロラクトン誘導体は、以下の式(4):
【化9】

で表される2−ピロン−4,6−ジカルボン酸ジメチルである。
【0020】
重合反応の出発物質であるモノマー、δ−バレロラクトン誘導体の入手方法は問わないが、例えば、前記した特許文献1に開示されるように、リグニンを含む植物原料を低分子化技術により得たバニリン、シリンガアルデヒド、バニリン酸、シリンガ酸、プロトカテク酸を含む低分子混合物から多段階の酵素反応を介した発酵生産技術により製造して得た2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を、エステル化し、これを水素化触媒の存在下で還元することにより入手することができる。
【0021】
PDCのエステル化は、例えば、特許文献3に記載されるように、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸等の酸の存在下で、PDCと、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、ポリアルキレングリコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリアルキレンオキシド、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドとを、必要により加熱しながら反応させることにより行われる。
【0022】
例えば、以下の反応スキームに従って、PDCエステルは、δ−バレロラクトン誘導体(テトラヒドロ−2H−ピロン−4,6−ジカルボキシレート)に還元される。
【化10】

{式中、Rは、独立に、H;炭素数1〜6個を有する1価のアルキル基;芳香族基;又は複素環基である。}。
【0023】
PDCエステルの還元における水素源としては、水素ガス、ギ酸、ギ酸ナトトリウム、シリルヒドリド、シクロヘキサンジエン、メチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン等の炭化水素が挙げられる。水素源の使用量は、使用するPDCエステルの量に対して通常2モル以上であり、その上限は特にない。
【0024】
水素化触媒としては、例えば、パラジウム触媒、ニッケル触媒、白金触媒、ルテニウム触媒、レニウム触媒、銅触媒、ロジウム触媒又はこれらの混合物が挙げられる。とりわけ、反応性及び経済性の観点から、パラジウム触媒、ニッケル触媒、白金触媒又はルテニウム触媒が好ましい。パラジウム触媒としては、例えば、パラジウムカーボン、パラジウムアルミナ、パラジウムシリカ、パラジウムシリカアルミナ、ゼオライト担持パラジウム等が挙げられる。パラジウム触媒としては、乾燥品又は含水品のいずれも使用してもよいが、工業製法上の安定性の観点から、含水品が好ましい。ニッケル触媒としては、例えば、ニッケル珪藻土、スポンジニケル、ニッケルアルミナ、ニッケルシリカ、ニッケルカーボン等が挙げられる。白金触媒としては、例えば、白金シリカ、白金シリカアルミナ、ゼオライト担持白金等が挙げられる。ルテニウム触媒としては、例えば、ルテニウムカーボン、ルテニウムアルミナ、ルテニウムシリカ、ルテニウムアルミナ、ゼオライト担持ルテニウム等が挙げられる。還元に使用する上記水素化触媒の量は、金属換算で、使用するPDCエステルのモル数に対して、通常、0.1〜1モル%であることができる。
【0025】
還元反応は、0℃〜室温で数時間〜数日間行うことができる。水素源としてギ酸を用いる場合には、反応溶媒を必要としないが、以下の反応溶媒を更に加えてもよい。反応溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシテンなどの芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタニールなどの低級アルコール;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイシプロピルエーテルなどのエーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;シメチルスルホキシド;1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールなどのジオール;又はこれらの混合溶媒が挙げられる。還元の際に加えられる溶媒の量は、使用するPDCエステルの量に対して、通常、1〜200重量倍であることができる。
【0026】
得られたδ−バレロラクトン誘導体(テトラヒドロ−2H−ピロン−4,6−ジカルボキシレート)は、常法により単離・精製される。
【0027】
以下の反応スキーム:
【化11】

に従って、δ−バレロラクトン誘導体を、触媒の存在下、開環重合させて式(1){式中、Rは、独立に、H;炭素数1〜6個を有する1価のアルキル基;芳香族基;又は複素環基である。}で表される繰り返し単位を有するポリエステルポリエステルを製造することができる。
【0028】
上記重合反応に使用する重合触媒は、チタンの塩又は酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物又は炭酸塩からなる触媒;金属アルコキシド等の塩基カチオン系触;スズ、アルミニウム、亜鉛、希土類金属、チタン、パラジウム、モリブデン等の錯体、例えば、有機スズ系触媒、例えば、2−エチルヘキサン酸スズであることができる。使用する触媒の使用量は、重合開始剤及びラクトンモノマーの合計に対し0.1〜1モル%程度であることができる。
【0029】
重合反応において、重合開始剤を使用することができる。重合開始剤としては、アルコラート、例えば、メタノールと水酸化ナトリウムとを脱水して得られるナトリウムメチラートが挙げられる。
【0030】
重合反応は、重合溶媒中で行うこともできる。重合溶媒としては、重合反応を阻害しないものであれば特に制限されないが、例えば、炭素数5〜18個の脂肪族炭化水素や環式炭化水素、炭素数6〜20個の芳香族炭化水素等の不活性溶媒、例えば、トルエン、n−ヘプタン、イソペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン、クロロホルム、ジクロロエタン等の塩素系有機溶媒、エチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類が挙げられる。なお、アルコール類は、重合反応の遅延、抑制、停止を導くので使用すべきではない。
前記重合反応は、室温〜130℃の温度範囲内で、例えば、約80℃で行われることができる。前記重合反応は、通常、1〜24時間の時間期間にわたり行われる。
【0031】
出発原料モノマーであるδ−バレロラクトン誘導体(テトラヒドロ−2H−ピロン−4,6−ジカルボキシレート)は、低粘性液体であるので、重合反応において、マグネチックスターラー等で容易に攪拌することができる。重合反応においては、例えば、Sn触媒を添加してものを攪拌することができる。
【0032】
重合反応により得られたポリマーはポリエステルであるが、エステル型ポリアクリル酸メチルである。ポリマーのユニット間にも側鎖メチル基にもエステル結合が存在するため、得られたポリマーは、アルカリで分解され易い。さらに、エステル交換反応を介して架橋構造を形成し易い。したがって、得られたポリマーをさらに修飾することで、多様な目的に合った機能を付加することが可能になる。
【実施例】
【0033】
以下、非制限的な実施例によって本発明を説明する。
参照例1:δ−バレロラクトン誘導体(ジメチルテトラヒドロ−2H−ピロン−4,6−ジカルボキシレート)の製造
100mlナスフラスコに、WO99/54376に記載の方法によって製造した2H−ピラン−4,6−ジカルボキシレート(4.8g,22.9mmol)及びブタンジオール(20mL)を加え、脱気と窒素導入を3回繰り返し、系内を窒素雰囲気下にした。ここに、Pd/C(0.48g)を添加し、再び脱気と窒素導入を3回繰り返した。系内を減圧後、水素ガスを導入し、激しく攪拌して水素添加反応を開始した。薄層クロマトグラフィー(TLC)により原料の濃度低下と新たなスポットの出現を適宜確認しながら、1日反応させた。反応物をろ過、Pd/Cを除去し、ろ液中のブタノールをエバポレータで除去し、粗生成物(5.4g)を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:クロロホルム/酢酸エチル(7/3)にて精製し、化合物(A1)を得た。この化合物は、各種スペクトルの測定により、下記式:
【化12】

で表されるジメチルテトラヒドロ−2H−ピロン−4,6−カルボキシレートであることが判明した。
H−NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm):2.39−2.41(q),2.55−2.68(m),2.68−2.81(m),2.81−2.94(m),2.98−3.11(m),3.72(s),3.82(s),4.97(d)。
13C−NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm):31.5(ピラン環CH),33.8(ピラン環CH),34.0(ピラン環CH),51.8(CH),52.6(CH),73.7(ピラン環CH),170.2(ピラン環アシル),170.7(カルボニル),176.9(カルボニル)。
GC−MS:m/z=185,171,157,143,125。
IR(ν(cm−1)):2959(−CH),2858(−CH−),1750(カルボン酸のC=O),1733(ラクトンのC=O),1444(−CH),1062(C−O)。
【0034】
製造例1:δ−バレロラクトン誘導体(ジメチルテトラヒドロ−2H−ピロン−4,6−ジカルボキシレート)の製造
100mlナスフラスコに、ギ酸(8ml)、及び特許文献3に記載される方法に従って製造された2−ピロン−4,6−ジカルボン酸ジメチル(2.5g,1.1mmol)を加え、攪拌して懸濁液を調製した。次いで、ナスフラスコ内を脱気して窒素ガスで置換した後、Pd/C(1.2g)を添加し、ギ酸が沸騰しないように減圧しながら攪拌を続けた。薄層クロマトグラフィー(TLC)により原料の濃度低下を適宜確認しながら、ギ酸の添加と脱気を行い、5日間反応を続けた。反応物を、ろ過してPd/Cを除去し、ろ液中のギ酸をエバポレータで除去して、粗生成物を得た(2.5g)。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開液:クロロホルム/酢酸エチル(7/3)を用いて精製し、下記式(4):
【化13】

で表される化合物ジメチルテトラヒドロ−2H−ピロン−4,6−ジカルボキシレート(1.5g、収率36%)を得た。
【0035】
還元生成物がジメチルテトラヒドロ−2H−ピロン−4,6−ジカルボキシレートであることは、1H−NMR、13C−NMR、GC−MS、IR測定により確認した。
(1)1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm):2.39−2.41(q、1.2H)、2.63−2.65(m、2.3H)、2.65−2.82(t、0.2H)、2.86(dd,1H)、3.04−3.11(m,1.8H)、3.72(3H)、4.97(d,1H)
(2)13C−NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm):31.6、33.9、34.0、51.9、52.6、73.7、170.2、171.1、176.8
(3)GC−MS:m/z=185、171、157、125(PDCジメチル:m/z=212、181、153、125)
(4)IR(ν(cm−1)):2959(−CH)、2858(−CH−)、1750(カルボン酸のC=O)、1733(ラクトンのC=O)、1444(−CH)、1062(C−O)
【0036】
実施例1:δ−バレロラクトン誘導体(ジメチルテトラヒドロ−2H−ピロン−4,6−ジカルボキシレート)の開環重合によるポリマー(ポリアクリル酸メチル)の製造
10mlナス型フラスコに、製造例1において得られたジメチルテトラヒドロ−2H−ピロン−4,6−ジカルボキシレート(ジメチル6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2,4−ジカルオキシレートともいう。)1.0g(4.6mmol)と2−エチルヘキサン酸スズを0.02ml入れ、室温下で攪拌して反応させた。その後、メタノールを0.01ml滴下し、さらに1時間加熱後、純水中で分散させた。沈殿物をろ過して回収し、60℃真空下で乾燥させて、透明粘性溶液状のポリアクリル酸メチル(0.57g、収率57%)を得た。
【0037】
上記反応によりポリエステル(ポリアクリル酸メチル)が得られたことを、1H−NMR、13C−NMR、GPC、IR測定により確認した。
(1)1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ(ppm):2.25−2.29(m,末端)、2.36−2.50(m,主鎖CH)、2.58−2.75(m,主鎖CH)、2.81−2.94(m,主鎖CH)、3.00−3.15(m,主鎖)、3.69−3.81(m,側鎖CH)、4.21(t,末端)、4.98(t,主鎖CH)(from TMS)
(2)13C−NMR(500MHz,CDCl3)δ(ppm):31.5(主鎖CH)、33.8(主鎖CH)、34.0(主鎖CH、CH)、52.3(側鎖、CH)、73.7(主鎖CH)、170.5−171.4(側鎖C=O)、177.2(側鎖C=O)、182.6(主鎖C=O)(from TMS)
(3)GPC測定:Mn=約1045(THF溶媒)
(4)IR測定(cm−1):2965(−CH−)、2911(CH)、1736(C=O)、1439(CH)、1271(CO)、1063(CO)
【0038】
実施例2:δ−バレロラクトン誘導体(ジメチルテトラヒドロ−2H−ピロン−4,6−ジカルボキシレート)の開環重合によるポリマー(ポリアクリル酸メチル)の製造
10mlナス型フラスコに、製造例1において得られたジメチルテトラヒドロ−2H−ピロン−4,6−ジカルボキシレート(ジメチル6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2,4−ジカルオキシレートともいう。)0.64gと2−エチルヘキサン酸スズを0.02ml入れ、80℃で攪拌しながら、1.5時間反応させた。その後、メタノールを0.01ml滴下し、さらに1時間加熱した後、純水中に分散させた、沈殿物をろ過して回収し、60℃真空下で乾燥させて、ポリアクリル酸メチル(0.1143g、収率17%)を得た。
1H−NMR及び13C−NMR測定結果は、実施例1におけるものと同じであった。GPC測定により、Mn=約4000(THF溶媒)であることを確認した。また、IR測定(cm−1)は、2972(−CH−)、2876(CH)、1734(C=O)、1439(CH)、1278(CO)、1066(CO)であった。また、Tg(ガラス転移温度)は、−71℃(10℃/分の昇速度で測定)であり、熱分解温度は130℃(5wt%重量減少)、261℃(50wt%重量減少)であった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る方法に従って、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸から誘導されるδ−バレロラクトン誘導体の開環重合により新規ポリエステルを製造することができるので、本発明は、食物と競合しないリグニン含有バイオマスの有効利用に貢献する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1):
【化1】

{式中、Rは、独立に、H又は炭素数1〜6個を有する1価のアルキル基である。}で表される繰り返し単位を有するポリエステル。
【請求項2】
以下の式(1):
【化2】

{式中、Rは、独立に、芳香族基;又は複素環基である。}で表される繰り返し単位を有するポリエステル。
【請求項3】
以下の式(2):
【化3】

で表される繰り返し単位を有するポリエステル。
【請求項4】
以下の式(3):
【化4】

{式中、Rは、独立に、H;炭素数1〜6個を有する1価のアルキル基;芳香族基;又端複素環基である。}で表されるδ−バレロラクトン誘導体を、触媒の存在下、重合させて、以下の式(1):
【化5】

{式中、Rは、独立に、H;炭素数1〜6個を有する1価のアルキル基;芳香族基;又端複素環基である。}で表される繰り返し単位を有するポリエステルを製造する方法。

【公開番号】特開2010−254932(P2010−254932A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110083(P2009−110083)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【出願人】(304021288)国立大学法人長岡技術科学大学 (458)
【出願人】(501186173)独立行政法人森林総合研究所 (91)
【Fターム(参考)】