説明

ポリエステルの製法

【課題】 原料モノマーを重縮合(エステル化)した後、脱グリコールしてポリエステルを製造するに当たり、エステル化に要する時間を短縮すると共に、脱グリコール反応時に飛散する低分子化合物量を低減することによって、脱グリコール反応時間を長時間化することなく生産性を向上させることのできるポリエステルの製法を提供する。
【解決手段】 モノマーを常圧下および減圧下で重縮合した後、脱グリコールしてポリエステルを製造する際に、エステル化率30〜70%の時点で減圧を開始するポリエステルの製法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノマーを重縮合してポリエステルを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成繊維やフィルムの素材としてポリエステルが使用されている。ポリエステルは、原料となるモノマーを重縮合(エステル化)して低分子量ポリエステルを得、これを脱グリコールにより高分子量化させることにより得られる。
【0003】
ところで、低分子量ポリエステルに含まれる未反応のアルコール類(例えば、グリコールや多価アルコールなど)は、減圧下で行われる脱グリコール反応で除去される。このとき低分子量ポリエステル内には、未反応のアルコール類の他に、種々の低分子化合物が含まれることが多く、脱グリコール反応時にはこうした低分子化合物も併せて除去される。しかし脱グリコール時に低分子量化合物が多く飛散すると、飛散物が減圧系内(例えば、真空ラインや真空ポンプ、飛散物回収用コンデンサなど)を閉鎖してしまうため、減圧能力が低下し、脱グリコール反応が長時間化することがあった。
【0004】
本発明者らは、脱グリコール反応時における飛散物量を低減する技術として、先に特許文献1の技術を提案している。この技術は、汎用されている真空ポンプを利用した程度の減圧度でモノマーを重縮合させることができ、且つ、副反応や分解反応によって生じる揮発分の生成量を抑制することにより生分解性を有し、しかも従来より融点の高い脂肪族ポリエステルを短時間で製造するものである。そしてこの技術では、脂肪族ポリエステルの原料または重合物を反応温度:180〜280℃で、反応圧力:0.3〜5.0mmHgの条件下で重縮合している。
【0005】
しかし原料モノマーをエステル化して低分子量ポリエステルを得るにはかなり時間がかかるため(具体的には、特許文献1の実施例1で52時間)、生産性を高める観点からエステル化に要する時間を短縮することが求められていた。
【特許文献1】特開平9−221542号公報([特許請求の範囲]、[0009]、[0075]参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この様な状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、原料モノマーを重縮合(エステル化)した後、脱グリコールしてポリエステルを製造するに当たり、エステル化に要する時間を短縮すると共に、脱グリコール反応時に飛散する低分子化合物量を低減することによって、脱グリコール反応時間を長時間化することなく生産性を向上させることのできるポリエステルの製法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、原料モノマーを重縮合(エステル化)してポリエステルを製造するに当たり、エステル化反応と脱グリコール反応に要する時間を短縮して生産性を高めるべく鋭意検討を重ねた。その結果、原料モノマーのエステル化を促進するには、減圧を開始するタイミングが重要であることを本発明者らは見出した。しかもエステル化反応時における減圧のタイミングを適切に調整すれば、エステル化して得られる低分子量ポリエステルを脱グリコールしても飛散する低分子化合物量が少ないため、減圧系内の閉塞が抑制され、その結果、脱グリコール反応時間の長時間化が防止できることも判明した。
【0008】
即ち、本発明に係るポリエステルの製法とは、モノマーを常圧下および減圧下で重縮合した後、脱グリコールしてポリエステルを製造する際に、エステル化率30〜70%の時点で減圧を開始する点に要旨を有する。本発明の製法は、前記モノマーとして、ジオールとジカルボン酸を用いる際や、前記モノマーとしてエチレングリコールとコハク酸を用いる際に好適に採用できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製法によれば、原料モノマーをエステル化して低分子量ポリエステルを得、これを脱グリコールしてポリエステルを製造するに当たり、減圧条件(特に、減圧を開始するタイミング)を適切に調整することによって、エステル化に要する時間を短縮できる。しかもこうして得られた低分子量ポリエステルから脱グリコールしても脱グリコール反応時に飛散する低分子化合物量が少なくなり、減圧系内を閉塞することもない。そのため減圧度は低下せず、生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ポリエステルは、原料となるモノマーをエステル化して低分子量ポリエステルを得、これを脱グリコールにより高分子化させることにより得られる。このときモノマーのエステル化反応は常圧で行われるか、エステル化開始後、200℃前後の高温に到達した時点から減圧され、次いでエステル化して得られる低分子量ポリエステルの脱グリコールは減圧下で行われるのが一般的である。200℃前後の高温に到達した時点から減圧されるのは、モノマーの飛散を防ぐためである。
【0011】
これに対し本発明者らは、上述した如く特許文献1に原料モノマーを常圧から減圧下でエステル化させることを記載している。ところがこの文献では、前述した一般的な方法と同様に、ある程度の高温でエステル化した後に減圧を開始している。しかしこの段階で減圧を開始してもエステル化に要する時間を充分に短縮できないことが分かった。そこで本発明者らは減圧条件について更に検討を重ねた。その結果、モノマーを常圧下および減圧下で重縮合した後、脱グリコールしてポリエステルを製造する際に、エステル化率30〜70%の時点で減圧を開始すれば、エステル化に要する時間を短縮できることが分かった。
【0012】
本発明の製法では、原料モノマーを常圧下および減圧下で重縮合する。常圧を含めたのは、少なくとも重縮合開始時点は常圧とする意味である。原料モノマーのエステル化が開始していない段階を減圧状態にすると、原料モノマーのうち低分子量のものが揮発してしまい、仕込み量が変動してポリエステルの収率を下げてしまうからである。
【0013】
そして本発明の製法では、重縮合時のエステル化率が30〜70%の時点で減圧を開始することが重要である。即ち、原料モノマーのエステル化が開始した後、できるだけ初期の段階から減圧を開始する。初期の段階から減圧を開始することによって、縮合水を系外へ効率よく除去できるため、平衡が正方向に移動してエステル化が促進する。その結果、エステル化に要する時間を短縮でき、生産性を高めることができる。しかも縮合水を系外へ効率よく除去することによって、低沸点のオリゴマーやモノマー中に残存する水の量を低減できるため、脱グリコール時に飛散する物質量も低減できる。好ましくはエステル化率が60%以下、更に好ましくはエステル化率が50%以下の時点で減圧を開始することが推奨される。
【0014】
但し、エステル化開始直後から減圧を開始すると、原料モノマーとして含まれる低分子量の化合物が飛散してしまい、仕込み量のバランスが崩れて収率が悪くなる恐れがある。そこで系内の減圧は重縮合時のエステル化率が30%以上になった時点から開始する。好ましくは40%以上である。なお、仕込みバランスを調整するために、減圧によって飛散しやすい化合物をやや過剰ぎみに仕込んだり、飛散量に応じて後から追加添加してもよい。
【0015】
本発明の製法では、減圧を開始するタイミングを原料モノマーのエステル化率で定めることとする。使用する原料モノマーの種類や製造対象とするポリエステルの種類によってエステル化の開始温度は多少変動するため、減圧を開始するタイミングを厳密に規定するためである。
【0016】
エステル化率は、原料モノマーがエステル化することにより生成する出水量から算出できる。即ち、エステル化が開始すると、水酸基とカルボキシル基の間で縮合が起こり、このとき水が副生成物として生成する。そこで原料モノマーの仕込み量からエステル化によって生成する水の量の理論値(理論出水量)を計算により求めると共に、エステル化反応の途中で実際に生成した水の量(実出水量)を測定し、理論出水量と実出水量から下記式で出水率を算出する。そして算出された出水率をエステル化率とする。
出水率=(実出水量/理論出水量)×100
【0017】
本発明の製法では、重縮合時のエステル化率が30〜70%の時点で減圧を開始する。減圧とは、常圧よりも低い圧力に下げることを指し、減圧度は特に限定されない。但し、エステル化率が70%以上範囲では60〜80kPa程度に減圧することが好ましい。より好ましくはエステル化率が80%以上の範囲では40〜60kPa程度、90%以上の範囲では10〜40kPa程度に減圧するのがよい。即ち、エステル化率の増大に伴い、系内の圧力を下げることが好ましい。
【0018】
減圧の仕方は特に限定されず、段階的に減圧してもよいし、連続的に減圧してもよい。段階的に減圧するか、連続的に減圧するかは減圧に用いるポンプの性能によるところが大きい。なお、各々の減圧度における減圧時間を短くするほどエステル化反応に要する時間を短縮できるが、その一方で、各々の減圧度における減圧時間を許容される範囲内で長くすれば、低沸点のオリゴマーを減少させることができるため、エステル化反応の後段に行われる脱グリコール反応時において、飛散物量を低減できる。
【0019】
モノマーを重合してポリエステルを製造するための具体的な条件については特に限定されず、公知の条件を採用できる。即ち、還流コンデンサ、撹拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計および減圧用排気口を備えた反応容器に、原料モノマーおよびエステル化触媒を仕込んだ後、系内を窒素置換する。
【0020】
本発明で製造しようとするポリエステルの種類は特に限定されず、種々のポリエステルを製造する際に本発明の製法を採用できる。但し、不飽和ポリエステルの反応はほとんどの場合エステル化で終了してしまうため、本発明の製法を採用しても得られる効果は少ない。そのため本発明の製法は特に飽和ポリエステルを製造する際に好適に採用できる。
【0021】
また製造対象とするポリエステルは、脂肪族ポリエステルであってもよいし、芳香族ポリエステルであってもよいが、実際に本発明の製法を採用するにあたっては、脂肪族ポリエステルの方が一般的に高分子量化が求められるにもかかわらず高分子量化が困難であるため、脂肪族ポリエステルを製造する際に本発明の方法を適用するのがよい。しかも芳香族ポリエステルを製造する際には、通常、エステル化反応を高温で行うため、ジオール成分が縮合水と共に系外へ流出し易く、制御し難いからである。
【0022】
こうしたポリエステルは、イ)多塩基酸(あるいはそのエステル)と多価アルコールを重縮合する方法、ロ)ヒドロキシカルボン酸(あるいはそのエステル)を重縮合する方法、ハ)環状エステルを開環重合する方法によって得ることができ、各方法で使用する原料モノマーの種類は、公知のものを用いることができる。
【0023】
多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、アコニット酸、イタコン酸などの不飽和多塩基酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルコハク酸、ヘキシルコハク酸、グルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族飽和多塩基酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族飽和多塩基酸、ナディク酸、1,2−ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式飽和多塩基酸、およびこれらの酸の無水物が挙げられ、これらは単独、または2種以上での併用で用いることができる。
【0024】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコールやジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,4−ブタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,4−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−ブタンジオール、4,5−ノナンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等、さらに、多価アルコールの前駆体であるエポキシ化合物を多価アルコールとして用いてもよく、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、スチレンオキサイド、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられ、これらは単独、または2種以上での併用で用いることができる。
【0025】
ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシ−2、2−ジメチルプロピオン酸、3−ヒドロキシ−3−メチル−酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、5−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、クエン酸、リンゴ酸あるいはそれらのエステル等が挙げられる。
【0026】
環状エステルとしては、例えば、β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、β−ブチロラクトン、グリコリド、ラクチドなどが挙げられる。開環重合は公知の開環重合触媒を用い、溶媒中での重合や塊状重合等の方法により行うことができる。
【0027】
本発明の製法は、上記原料モノマーのなかから、ジオールとジカルボン酸を用いて製造する際に好適に適用できる。本発明の製法は、特に、エチレングリコールとコハク酸を用い、ポリエチレンサクシネートを製造する際に好適に適用できる。これらのモノマーはエステル化反応時に環状物などの副生成物を生じ難いため、縮合水とエチレングリコールに基づいて減圧度を調節することが可能だからである。
【0028】
エステル化触媒は、原料モノマーを重縮合してポリエステルとするのに必須成分であり、一般的に用いられるものを使用できる。例えば、チタン、ゲルマニウム、亜鉛、鉄、マンガン、コバルト、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、イリジウム、ランタン、セリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、スズ、バリウム、ニッケル等よりなる群から選ばれる少なくとも一種の金属を含む有機金属化合物、有機酸塩、金属アルコキシド、金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、および塩化物等が挙げられ。これら触媒は、単独で用いてもよいし、二種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0029】
上記金属のなかでも、特にチタン(Ti)を含む触媒が好ましい。Tiを含む触媒は反応性が高く、またこの触媒を用いて重合されたポリエステルの色調はよくなるので好ましく用いることができる。Tiを含む触媒のなかでも、特にチタンテトライソプロポキシドは安価で入手し易いため好適に使用できる。
【0030】
入手のし易さを考慮すると、上記触媒のなかでも有機酸塩(特に、カルボン酸塩)、金属アルコキシドおよび金属酸化物のいずれか1種を用いることが好ましい。
【0031】
こうしたエステル化触媒は、仕込みモノマー全量に対して10〜1000ppm存在させればよい。10ppm未満では、原料モノマーのエステル化が充分に進行せず、ポリエステルが得られない。好ましくは50ppm以上である。しかし1000ppmを超えると、重合して得られるポリエステルの色調が悪くなったり、耐熱性が悪くなるという新たな問題を生じるため1000ppm以下とすべきである。好ましくは500ppm以下である。
【0032】
次に、窒素ブローしつつ系内を撹拌し、樹脂温度:140〜280℃程度でエステル化して低分子量ポリエステルを得る。このときの系内の圧力条件は上述した通りである。得られた低分子量ポリエステルを圧力:300〜1000Pa程度に減圧してある程度脱グリコールした後、引き続き300Pa程度以下に減圧して低分子量ポリエステルから完全に脱グリコールする。
【0033】
更に高分子量化が必要な場合は、脱グリコールした後、増粘剤を添加して樹脂温度:150〜200℃、常圧で撹拌し、増粘反応すればよい。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実験例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0035】
実験例1
分留コンデンサ、攪拌装置、窒素導入口、サンプリング口、加熱装置、温度計および減圧用排気口を備えたセパラブルフラスコ(容量:2L)に、原料モノマーとしてコハク酸:491.7g、エチレングリコール:273.8g、およびトリメチロールプロパン:1.12g、エステル化触媒としてチタンテトライソプロポキシド:0.06g(仕込みモノマー全量に対して76ppm)を仕込み、次いで系内を窒素置換した。
【0036】
次に、系内を窒素気流下で、常圧で攪拌すると共に、オイルバスを用いて系内を昇温した。その結果、樹脂温度が145℃(バス温度:180℃)に到達するとエステル化による縮合が開始し、縮合水が留出し始めた。なお、仕込み量から縮合水総量の理論値を計算すると150gである。
【0037】
エステル化縮合開始後、バス温度を段階的に上げ(180℃で60分、次いで200℃で30分)、最終的に樹脂温度:220℃(バス温度:225℃)とした。バス温度を段階的に上げる際に、縮合水が75g(出水率:50%)となった時点で減圧を開始して系内を70kPaとし、縮合水が120g(出水率:80%)となった時点で更に減圧して系内を50kPaとし、縮合水が135g(出水率:90%)となった時点で更に減圧して系内を20kPaとして反応させて低分子量ポリエステルを得た。減圧して各圧力に到達した時点から該圧力で保持した時間を下記表1に示す。また、反応途中で出水率を算出し、エステル化反応時間と出水率の関係を図1に○で示す。さらに、各出水率に到達するまでに要した時間(出水時間)を下記表2に示すと共に、各出水率に到達したときの樹脂温度を測定し、結果を表2に併せて示す。なお、縮合水が120g(出水率:80%)となった時点からは、セパラブルフラスコの上部および分留コンデンサを加温して150℃に維持した。
【0038】
次に、得られた低分子量ポリエステルから脱グリコールした。即ち、樹脂温度:220℃(バス温度:225℃)で20kPaに維持された系内を、0.5kPaに減圧して1時間撹拌した後、0.2kPa以下に減圧して4時間撹拌して上記低分子量ポリエステルから脱グリコールした。脱グリコール中に、室温トラップに捕集された飛散物の質量を測定し、結果を下記表1に併せて示す。また、脱グリコール反応を開始してから1時間毎に系内からサンプルを採取し、この重量平均分子量を測定した。重量平均分子量はHLC−8220GPC(東ソー社製)で測定した。脱グリコール反応を開始してから2時間後と5時間後におけるサンプルの重合平均分子量を下記表1に示す。
【0039】
実験例2
上記実験例1において、エステル化縮合開始後の条件を次のように代えて行った。即ち、エステル化縮合開始後、系内の樹脂温度を追随させつつバス温度を段階的に上げ(180℃で90分、次いで200℃で45分)、最終的に樹脂温度:220℃(バス温度:225℃)とした。樹脂温度が220℃に到達した時点で、縮合水は135g(出水率:90%)生成していた。次に、系内を20kPaに減圧してエステル化縮合反応を促進し、低分子量ポリエステルを得た。減圧して各圧力に到達した時点から該圧力で保持した時間を下記表1に示す。また、反応途中で出水率を算出し、エステル化反応時間と出水率の関係を図1に●で示す。さらに、各出水率に到達するまでに要した時間(出水時間)を下記表2に示すと共に、各出水率に到達したときの樹脂温度を測定し、結果を表2に併せて示す。なお、縮合水が120g(出水率:80%)となった時点からは、セパラブルフラスコの上部および分留コンデンサを加温して150℃に維持した。
【0040】
次に、上記実験例1と同じ条件で、得られた低分子量ポリエステルから脱グリコールした。脱グリコール中に、室温トラップに捕集された飛散物の質量を測定し、結果を下記表1に併せて示す。また、脱グリコール反応を開始してから2時間後と5時間後におけるサンプルの重合平均分子量を下記表1に示す。
【0041】
実験例3
上記実験例1において、エステル化縮合開始後の条件を次のように代えて行った。即ち、エステル化縮合開始後、バス温度を段階的に上げ(175℃で50分、次いで195℃で40分、次いで215℃で30分)、最終的に樹脂温度:220℃(バス温度:225℃)とした。バス温度を段階的に上げる際に、縮合水が33.5g(出水率:22%)となった時点で減圧を開始して系内を70kPaとし、縮合水が113.6g(出水率:76%)となった時点で更に減圧して系内を50kPaとし、縮合水が127.8g(出水率:86%)となった時点で更に減圧して系内を20kPaとして反応させて低分子量ポリエステルを得た。減圧して各圧力に到達した時点から該圧力で保持した時間を下記表1に示す。また、反応途中で出水率を算出し、エステル化反応時間と出水率の関係を図1に▲で示す。さらに、各出水率に到達するまでに要した時間(出水時間)を下記表2に示すと共に、各出水率に到達したときの樹脂温度を測定し、結果を表2に併せて示す。なお、縮合水が127.8g(出水率:86%)となった時点からは、セパラブルフラスコの上部および分留コンデンサを加温して150℃に維持した。
【0042】
次に、上記実験例1と同じ条件で、得られた低分子量ポリエステルから脱グリコールした。脱グリコール中に、室温トラップに捕集された飛散物の質量を測定し、結果を下記表1に併せて示す。また、脱グリコール反応を開始してから2時間後と5時間後におけるサンプルの重合平均分子量を下記表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
実験例1によれば、図1と表2から出水率が100%に到達するまでの時間を短くすることができ、短時間のうちにエステル化縮合反応を完了させることができることが分かる。また表1から明らかなように、実験例1で得られる低分子量ポリエステルを脱グリコールすると、脱グリコール時における飛散物量を格段に低減できるため、減圧手段に閉塞を生じず、良好な減圧状態で脱グリコールを行うことができる。一方、実験例2によれば、図1と表2からエステル化にかなりの時間が必要である。実験例3によれば、図1と表2から明らかなように、エステル化に要する時間は短縮できるものの、表1から脱グリコール時における飛散物量が格段に多くなることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】エステル化反応時間と出水率の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマーを常圧下および減圧下で重縮合した後、脱グリコールしてポリエステルを製造する際に、エステル化率30〜70%の時点で減圧を開始することを特徴とするポリエステルの製法。
【請求項2】
前記モノマーとして、ジオールとジカルボン酸を用いる請求項1に記載の製法。
【請求項3】
前記モノマーとして、エチレングリコールとコハク酸を用いる請求項1に記載の製法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−104331(P2006−104331A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292653(P2004−292653)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】