説明

ポリエステルの製造方法

【課題】 ポリオール製造からポリエステル製造までの全工程時間を大幅に短縮することができるポリエステルの製造法を提供する。
【解決手段】 少なくとも2個の活性水素を有する活性水素化合物にアルキレンオキシドを付加させたポリオキシアルキレンポリオールをポリオール成分として用いるポリエステルの製造法において、該ポリオキシアルキレンポリオールが触媒として4個のアルキル基が炭素数4以下のアルキル基であるテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドを用いたことを特徴とするポリエステル製造法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステルの製造方法に関するものである。特にポリオール成分として用いられるポリオキシアルキレンポリオールが特定の触媒を用いて製造されたポリエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシアルキレンポリオールはポリエステル製造用原料のポリオール成分として広く使用されている。これらポリオキシアルキレンポリオールは活性水素含有化合物にアルキレンオキシドを開環重合させて製造することができる。
上記アルキレンオキシド付加反応に用いる触媒としては、従来からアルカリ触媒、例えば、KOH、NaOH等のアルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属(Na、K等)、及びその水素化物(NaH、KH等)、アミン類(トリエチルアミン、トリメチルアミン等)、BF3、BCl3、AlCl3、FeCl3、SnCl3等のルイス酸及びそれらの錯体[例えばBF3エーテル錯体、BF3・THF錯体(BF3・THF)]、H2SO4、HClO4等のプロトン酸等が用いられている。
【0003】
アルカリ金属系触媒や酸類を用いてアルキレンオキシド付加反応を行った場合、そのままではエステル化の反応を阻害したり、ポリエステル物性に悪影響を与えたりするため処理により触媒を取り除く必要がある。処理の方法としては、吸着剤で処理した後、濾過を行って触媒を取り除く方法、中和した後、濾過を行って触媒を取り除く方法等が挙げられる。吸着処理後の濾過や、中和後の濾過には多大な時間とコストを費やすため、これらの処理工程を無くす方法が望まれていた。
アミン類を触媒として用いてアルキレンオキシド付加反応を行った後、減圧留去により取り除くことが可能である。これによると、低沸点のアミンを用いた場合、エステル化工程の条件下すなわち減圧で180〜250℃という高温下においては容易に留去されるため、処理工程を省くことが可能である。しかしながらアミン類は触媒活性が低く、所望する重合度を得るために工程時間が長くなるという問題点がある。
上記問題点に対して、ポリオールへのアルキレンオキシド付加反応の触媒としてテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドを用いる方法(例えば、特許文献1、2)が提案されている。
【特許文献1】特開昭62−62814号公報
【特許文献2】特開昭56−38323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開昭62−62814号公報に記載の技術は吸着剤等を加え濾過を行うものであり、処理工程の短縮には至っていない。
特開昭56−38323号公報に記載の技術は、ポリウレタン原料としてのポリオキシアルキレンポリオールの製造に関するものであるため、この触媒はウレタン化反応に影響を与えるため、ウレタン化反応の前に事前に触媒を処理しておく必要がある。そしてこの処理方法としては、アルキレンオキシド付加反応後、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドを熱分解して減圧留去するものであるが、完全に留去するためには工程時間が非常に長くなるという問題点もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、少なくとも2個の活性水素を有する活性水素化合物にアルキレンオキシドを付加させたポリオキシアルキレンポリオールをポリオール成分として用いるポリエステルの製造法において、該ポリオキシアルキレンポリオールが触媒として4個のアルキル基が炭素数4以下のアルキル基であるテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドを用いたことを特徴とするポリエステル製造法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリエステル製造法は、
(1)エステル化工程で触媒の熱分解と除去を同時に行えるため、ポリオール製造からポリエステル製造までの全工程時間を大幅に短縮することができる。
(2)アルキレンオキシド付加反応後の処理工程無しでエステル化に進めることは、特に反応スケールが大きい時に有効である。
(3)アルキレンオキシド付加に従来のアルカリ金属触媒を使用した場合と同等のポリエステル物性を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のポリオキシアルキレンポリオールは、4個のアルキル基が炭素数4以下のアルキル基であるテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド(a)を触媒として用い、活性水素含有化合物(b)にアルキレンオキシド(c)を開環重合させたものである。
上記(a)のアルキル基としては、メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基が挙げられ、4個のアルキル基は同一でも異なっていても良い。より好ましくはメチル基であり、特に好ましくは4個のアルキル基の全てがメチル基のものである。炭素数が4を超えると、触媒活性が低くなり、また分解後の成分が高沸点であるためエステル化工程において留去が容易でなくなる。
【0008】
活性水素含有化合物(b)は少なくとも2個の活性水素を有する活性水素化合物であり、好ましくは2〜10個の活性水素を含有する化合物であり、より好ましくは2〜6個の活性水素を含有する化合物である。具体的には水、アルコール化合物、フェノール化合物からなる群から選択された化合物である。
【0009】
アルコール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン、2,2−ビス(4,4’−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等の2価アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセリン、α−メチルグルコシド、ソルビトール、キシリット、マンニット、ジペンタエリスリトール、グルコース、フルクトース、ショ糖等の4〜8価のアルコール等が挙げられる。
フェノール化合物としては、ピロガロール、カテコール、ヒドロキノン、ノボラック等の2〜10価の多価フェノール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類;ポリブタジエンポリオール、ひまし油系ポリオール、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの(共)重合体、ポリビニルアルコール類等の分子量1000以下の多官能(例えば官能基数2〜50)ポリオール等が挙げられる。
【0010】
さらに上記の活性水素含有化合物(b)にアルキレンオキシド(c)を開環重合させて得られる分子量1000以下のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン、ポリプロピレン)グリコール、ポリブチレングリコール、ハイドロキノンアルキレンオキシド付加物、ビスフェノール類アルキレンオキシド付加物、ポリアルキレングリコールアジペート、ポリアルキレングリコールフタレート、ポリアルキレングリコールラクテートポリアルキレングリコールエーテル等もまた活性水素化合物として用いることができる。
これらの内好ましくは、アルコール化合物、フェノール化合物であり、より好ましくは、ビスフェノール類、ビスフェノール類アルキレンオキシド付加物である。
【0011】
上記活性水素含有化合物(b)に開環付加重合させるアルキレンオキシド(c)としては、炭素数2〜12の1,2−アルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシド(以下EOと略称する)、プロピレンオキシド(以下POと略称する)、1,2−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、シクロヘキシレンオキシド、シクロヘキシルエチレンオキシド、オキセタン、ジメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、3―メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、スチレンオキシド、1,2−ヘキシレンオキシド、1,2−ドデセンオキシド、1,2−ラウリレンオキシド、及びこれらのハロ置換体(エピクロルヒドリン等)等が挙げられる。(c)は1種のみを用いても良く、2種以上の環状エーテルを併用してもよい。
これらのうち好ましくは、EO、PO、BO及びTHFであり、より好ましくはEO、POである。
【0012】
ポリオキシアルキレンポリオールを製造する際の(b)、(c)のモル比は特に限定されないが、好ましくは(b)1モルに対し(c)2〜10モルである。
テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド(a)の使用量は、好ましくは得られるポリオキシアルキレンポリオールに対して0.01〜1.0重量%であり、より好ましくは0.05〜0.2重量%である。
【0013】
(c)を開環付加重合させる際の反応温度は、反応が完結するまで触媒の大部分が分解されないような温度で行われ、好ましくは40℃〜130℃であり、より好ましくは80℃〜120℃である。反応圧力は好ましくは−0.1〜0.5MPaである。
反応時間は好ましくは2〜15時間であり、より好ましくは3〜10時間である。
このようにして得られたポリオキシアルキレンポリオールは触媒をそのまま残した状態で、次のエステル化工程に使用されるが、必要に応じて中和しても構わない。中和に用いる酸は、好ましくはポリエステルの酸成分として用いるものである。
【0014】
ポリエステルはポリオールとポリカルボン酸及びその誘導体との反応により生成する。ここでポリカルボン酸及びその誘導体としては、ポリカルボン酸の他にポリカルボン酸誘導体(ポリカルボン酸無水物、炭素数1〜4のアルキル基を有するそのポリカルボン酸低級アルキルエステル、ポリカルボン酸ハロゲン化物等)が挙げられる。また、同一分子内にヒドロキシ基とカルボン酸基の両方を持つ化合物を含んでも構わない。
【0015】
ポリオール成分は上記の本発明のポリオキシアルキレンポリオールであるが、必要により上記に(b)に挙げられた成分をその他のポリオール成分として配合することができる。その他のポリオール成分として好ましいものはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノール類アルキレンオキシド付加物、ノボラック型フェノール樹脂オキシアルキレンエーテルである。
【0016】
一方、ポリカルボン酸及びその誘導体としては下記のものが挙げられる。
(1)ポリカルボン酸としては炭素数4〜30、2〜8価又はそれ以上のポリカルボン酸が挙げられ、具体的には下記の化合物が挙げられる。
(i) 重合性不飽和基を有しないポリカルボン酸;
フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、キシリレンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ハイミック酸、テトラブロモフタル酸、テトラクロロフタル酸、ジフェニルジカルボン酸等の2価芳香族ポリカルボン酸;ベンゼントリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸等の3価以上の芳香族ポリカルボン酸;マロン酸、コハク酸、プロパンジカルボン酸、チオジプロピオン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の2価脂肪族ポリカルボン酸;プロパントリカルボン酸、メチルシクロヘキサントリカルボン酸、シクロヘキセントリカルボン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸等の3価以上の脂肪族ポリカルボン酸
(ii)重合性不飽和基を有するポリカルボン酸;
マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸等の重合性不飽和基を有するポリカルボン酸;
等が挙げられる。
【0017】
(2) ポリカルボン酸の酸無水物は、上記のポリカルボン酸の酸無水物であり、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、ヘキサブロモ無水フタル酸、無水ハイミック酸、無水ヘット酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
(3) ポリカルボン酸のエステルとしては、上記ポリカルボン酸の炭素数1〜4の低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル等)が挙げられる。
(4) ポリカルボン酸のハロゲン化物としては上記ポリカルボン酸の酸塩化物、臭素化物、フッ素化物、ヨウ化物が挙げられ、例えばマレイン酸塩化物、イタコン酸塩化物、フマル酸臭化物、シトラコン酸塩化物等が挙げられる。
【0018】
これらのうちで好ましいものは(1)(2)であり、より好ましいのは、マレイン酸(無水物)、フマル酸、フタル酸(無水物)、イソフタル酸、テレフタル酸、ベンゼントリカルボン酸である。
【0019】
同一分子内にヒドロキシ基とカルボン酸基の両方を持つ化合物としては例えば、乳酸、グリコール酸、3−ヒドロキシブチリックアシッド、4−ヒドロキシブチリックアシッド、3−ヒドロキシバレリックアッシド、5−ヒドロキシバレリックアッシド、6−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸、及びヒドロキシカルボン酸の環化物、オリゴマーが挙げられる。これらのうちで好ましいのは乳酸、ラクチドである。
【0020】
ポリオールとポリカルボン酸との比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基
[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、好ましくは2/1〜1/2、より好ましくは1.6/1〜1/1.6であり、特に好ましくは1.3/1〜1/1.3である。
【0021】
本発明のポリエステルはポリオール成分とポリカルボン酸成分を公知のエステル化触媒の存在下で重縮合することにより得られる。
エステル化触媒としては、スズ、チタン、アンチモン、マンガン、ニッケル、亜鉛、鉛、鉄、マグネシウム、カルシウム、ゲルマニウム等の金属;及びこれらの金属含有化合物、例えばジブチルスズオキシド、オルソジブチルチタネート、テトラブチルチタネート、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸コバルト、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン等が挙げられる。エステル化の原料100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。
反応温度としては好ましくは150℃〜280℃である。反応時間は好ましくは1〜20時間であり、より好ましくは1〜10時間である。
反応方法は公知の方法が適用でき、典型的には常圧で加熱し生成する水若しくは低級アルコール若しくはハロゲン化水素を除去しながら反応させて低重合物を得る第1段階の反応と、第1段階の反応生成物を減圧下(例えば30mmHg以下)で加熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第2段階の反応によって製造される。
反応は、反応物の性質、例えば酸価(AV値)、水酸基価等が所望の値に到達した時点、あるいは反応機の撹拌トルク又は撹拌動力が所定の値に到達した時点で反応を停止させることによって、反応をコントロールすることができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において、部及び%はそれぞれ重量部及び重量%を示す。
【0023】
実施例1
撹拌装置、温度制御装置付きの容積2リットルのステンレス製オートクレーブに、「ニューポール BP−3P」(三洋化成工業社製;ビスフェノールAのPO3モル付加物;「ニューポール」の製造に用いられた触媒は吸着剤で除去されている。以下同様) 200g(0.5モル)、ビスフェノールA 720g(3.1モル)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの25%水溶液 10g(純分で0.17重量%)を仕込み、100℃、30mmHg以下の減圧下で脱水した。プロピレンオキサイド 540g(9.4モル)を、反応温度100℃を保持制御しながら、3時間かけて滴下した後、100℃で7時間熟成し、液状の粗製ポリエーテル 1,450gを得た。この粗製ポリエーテルに無水マレイン酸 2gを加えて85〜95℃で1時間撹拌中和して、POが平均3モル付加のビスフェノールAポリオキシプロピレンポリオール 1,450gを得た。得られたこのポリオールの水酸基価は281、50℃の粘度は2,050mPa・sであった。また、仕込み始めからポリオールを得るまでの総工程時間は13時間であった。
【0024】
実施例2
撹拌装置、温度制御装置付きの容積1リットルのステンレス製オートクレーブに、「ニューポール」 BP−2P(三洋化成工業社製;ビスフェノールAのPO2モル付加物) 100g(0.3モル)、ビスフェノールA 405g(1.8モル)、テトラ(t−ブチル)アンモニウムヒドロキシドの10%メタノール溶液 14g(純分で0.19質量%)を仕込み、60℃、30mmHg以下でメタノールを減圧留去した。プロピレンオキサイド 215g(3.7モル)を、反応温度70℃を保持制御しながら、3時間かけて滴下した後、70℃で10時間熟成し、液状の粗製ポリエーテル 720gを得た。この粗製ポリエーテルに無水フタル酸 2gを加えて80〜90℃で1時間撹拌中和して、POが平均2モル付加のビスフェノールAポリオキシプロピレンポリオール 720gを得た。得られたこのポリオールの水酸基価は321、60℃の粘度は1,650mPa・sであった。また、仕込み始めからポリオールを得るまでの総工程時間は17時間であった。
【0025】
比較例1
触媒をテトラ(n−オクチル)アンモニウムヒドロキシドの10%メタノール溶液(純分で0.19質量%)に変更する以外は実施例2と同様に行い、反応温度70℃を保持制御しながら、3時間かけてプロピレンオキサイドを滴下した後、70℃で11時間熟成し、液状の粗製ポリエーテル 720gを得た。この粗製ポリエーテルに無水フタル酸 2gを加えて80〜90℃で1時間撹拌中和して、POが平均2モル付加のビスフェノールAポリオキシプロピレンポリオール 720gを得た。得られたこのポリオールの水酸基価は320、60℃の粘度は1,680mPa・sであった。また、仕込み始めからポリオールを得るまでの総工程時間は18時間であった。
【0026】
比較例2
撹拌装置、温度制御装置付きの容積2リットルのステンレス製オートクレーブに、「ニューポール BP−3P」(三洋化成工業社製;ビスフェノールAのPO3モル付加物) 200g(0.5モル)、ビスフェノールA 720g(3.1モル)、触媒としてトリエチルアミン 4g(0.27質量%)を仕込み、プロピレンオキサイド 540g(9.4モル)を、反応温度100℃を保持制御しながら、8時間かけて滴下した後、100℃で23時間熟成し、液状の粗製ポリエーテル 1,450gを得た。この粗製ポリエーテルに無水マレイン酸 3.8gを加えて85〜95℃で1時間撹拌中和して、POが平均3モル付加のビスフェノールAポリオキシプロピレンポリオール 1,450gを得た。得られたこのポリオールの水酸基価は285、50℃の粘度は2,350mPa・sであった。また、仕込み始めからポリオールを得るまでの総工程時間は34時間であった。
【0027】
比較例3
撹拌装置、温度制御装置付きの容積2リットルのステンレス製オートクレーブに、ニューポール BP−3P(三洋化成工業社製;ビスフェノールAのPO3モル付加物) 200g(0.5モル)、ビスフェノールA 720g(3.1モル)、触媒として水酸化カリウム 2.9g(0.20質量%)を仕込み、プロピレンオキサイド 540g(9.4モル)を、反応温度120℃を保持制御しながら、3時間かけて滴下した後、120℃で10時間熟成し、液状の粗製ポリエーテル 1,450gを得た。この粗製ポリエーテルに、イオン交換水 10g、キョーワード600(協和化学工業社製)10gを加えて75〜85℃で30分間撹拌した後、減圧濾過、および脱水を行い、POが平均3モル付加のビスフェノールAポリオキシプロピレンポリオール 1,320gを得た。得られたこのポリオールの水酸基価は281、50℃の粘度は2,020mPa・sであった。また、仕込み始めからポリオールを得るまでの総工程時間は23時間であった。
【0028】
実施例3〜4、比較例4〜6
得られた各ポリオールについて下記エステル化を行い、Tg、軟化点、窒素含量について評価した。結果を表1に示す。
<用いたポリオール>
実施例3:実施例1で得られたポリオール
実施例4:実施例2で得られたポリオール
比較例4:比較例1で得られたポリオール
比較例5:比較例2で得られたポリオール
比較例6:比較例3で得られたポリオール
【0029】
(エステル化工程)
トルク検知器の付いた攪拌機、温度計、冷却器及び窒素導入菅を装備した反応槽に上記ポリオールを940部、テレフタル酸を380部、無水トリメリット酸を60部及びジブチルスズオキシド2.5部を入れて、窒素気流下230℃で反応させた。反応物に透明感が出た時点から反応温度を200℃に下げて減圧下でポリエステル化反応を進めた。反応物の酸価が2.0〜3.0となった時点で反応を停止し、反応物を取り出し急冷し、ポリエステル樹脂を得た。
評価は次の通りに行った。
(a)ガラス転移温度(Tg)
ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)。
(b)軟化点
フローテスター(CFT−500、島津製作所製)で1.0mmφ×1.0mmのノズルを用 い、荷重10kg、昇温速度5℃/分で測定し、1.5gのサンプルの1/2が流出した時の 温度を求める。
(c)窒素含量
窒素分析装置(ANTEK7000、(米)アンテック社製)で測定した。
【0030】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の製造法は、アルキレンオキシドを付加したポリオールを用いてポリエステルを製造する場合に有用である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2個の活性水素を有する活性水素化合物にアルキレンオキシドを付加させたポリオキシアルキレンポリオールをポリオール成分として用いるポリエステルの製造法において、該ポリオキシアルキレンポリオールが触媒として4個のアルキル基が炭素数4以下のアルキル基であるテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドを用いて製造されたことを特徴とするポリエステル製造法。
【請求項2】
前記4個のアルキル基がすべてメチル基であることを特徴とする請求項1記載のポリエステル製造法。
【請求項3】
前記ポリオキシアルキレンポリオールを前記触媒を除去せずにそのままポリエステルの製造に用いることを特徴とする請求項1又は2記載のポリエステル製造法。
【請求項4】
前記活性水素化合物がビスフェノール類及び/又はビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物である請求項1〜3の何れか記載のポリエステル製造法。






【公開番号】特開2006−2022(P2006−2022A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179355(P2004−179355)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】