説明

ポリエステルの製造方法

【課題】 酸化チタンを含有するポリエステルを製造する触媒として製造及び取り扱いが容易なチタン系触媒を用い、良好な色調を有しつつ異物が少ないポリエステルを製造する方法を提供する。
【解決手段】 芳香族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分と、ジオール成分とをエステル化反応するエステル化工程、及びエステル化工程の反応生成物を重縮合する重縮合工程を有し、重縮合工程を酸化チタンの存在下に実施するポリエステルの製造方法であって、(1)4A族金属化合物、(2)2B族金属化合物、および含酸素有機溶媒を用いて調製された重縮合用触媒を使用し、かつ該重縮合用触媒として溶存酸素量が4.0mg/L以下のものを用いることを特徴とするポリエステルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化チタンを含有するポリエステルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルは、機械的強度、化学的安定性、ガスバリア性及び衛生性等に優れ、また比較的安価で軽量であるために、ボトルやフィルム等としての各種包装資材、あるいは繊維等として幅広く用いられてきている。特に、その汎用性、実用性の点で主にテレフタル酸とエチレングリコールを主原料とするポリエステルが好適に使用されている。
また、繊維用やフィルム用として使用されるポリエステルは通常無機あるいは有機のフィラーを含有させ、その特性を改善するが、特に酸化チタンを含有するポリエステルは白色度および経済性の観点から繊維用、フィルム用として好適に使用される。
【0003】
そして、これらポリエステルは、従来、主としてアンチモン化合物を重縮合触媒として用いて製造されているが、アンチモン化合物を用いた場合には、特にフィルム、繊維用途において得られるポリエステルにアンチモン金属の析出による異物の発生や、その異物による濾過圧の上昇、紡糸の際の糸切れなどの問題があること、あるいは、アンチモン化合物では300〜400ppmと多量の触媒が必要であること等から、アンチモン化合物に代わる高活性なポリエステル製造用触媒の開発が強く望まれている。
【0004】
アンチモン化合物に代わる触媒としてはゲルマニウム化合物が知られているが、非常に高価であり汎用的に用いることは困難であった。そこで4A族化合物、特にチタン化合物を重縮合触媒として用いる方法が数多く提案されている。
【0005】
たとえばチタン化合物と、マグネシウム化合物、アルミニウム化合物、バリウム化合物などから選ばれる少なくとも1種の化合物とを重合時に添加して使用することが知られており、具体的には、テトラブトキシチタンと酢酸マグネシウムを重合時に添加すること等が示されている(特許文献1参照)。
【0006】
ここに示された方法を酸化チタンを含有するポリエステルの製造に用いた場合、得られるポリエステルの色調が悪いという問題があり、複数の金属化合物を組み合わせて触媒とする場合はそれぞれの金属化合物の添加時期を厳密に調整する必要があるなど、実用に際しては何らかの制限を受ける場合があった。
【0007】
また、チタン化合物系重縮合触媒として、例えば、チタン化合物と、周期律表の1A、2A、8A、1B、2B、3B及び4Bの群から選択された金属の金属化合物との同時的な加水分解による沈殿により製造される共沈物を単独で、又は混合物として使用することが知られている。具体的には、テトライソプロポキシチタンと例えばマグネシウムアルコキシド等のアルコキシ化合物とを、無水エタノール中で水により同時に加水分解して得られる共沈物を触媒として使用すること等が示されている(特許文献2参照)。
【0008】
ここに例示されている触媒の調製には、アルコキシ化合物を加水分解した後遠心分離し、更に洗浄、乾燥させるといった多数の工程が必要である。また、調製された触媒は、一度乾燥させた後にエチレングリコールなどの溶媒のスラリーとして重縮合反応に供されるため、触媒の粒子が粗く、得られるポリエステル中に異物として残留する場合があり、酸化チタンを含有するポリエステルの重合触媒として用いた場合、異物が多数ポリエステル中に残存するため、このポリエステルを繊維に用いた場合に糸切れなどの問題を引き起こすと考えられた。
また、その触媒の調製時および使用時の溶存酸素量を規定することで得られるポリエステルの色調が改善される旨、開示されているが、本発明者等の検討によると上で述べたように本発明の触媒によっても得られたポリエステルを繊維用ポリエステルとして使用しても異物に関しては不十分である。
【0009】
このように、アンチモン化合物に代わるポリエステル製造用触媒として、チタン化合物系触媒が提案されているが、本発明者等の検討によると、従来のチタン化合物系触媒は、製造工程が煩雑であるものが多く、色調の面でいまだ満足できず、またチタン系複合酸化物触媒を用いる方法では、異物の面で不十分であることが判明した。
それ故、酸化チタン含有ポリエステルとして優れた色調を達成し、また含有される異物量を低減できるポリエステルの重合触媒が望まれているのである。
【特許文献1】特開2000−143789号公報
【特許文献2】特開2004−175838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、酸化チタンを含有するポリエステルを製造するに際し、触媒として製造及び取り扱いが容易なチタン系触媒を用い、良好な色調を有しつつ異物が少ないポリエステルを製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、重縮合触媒として、少なくとも、(1)4A族金属化合物(以下「化合物(1)」と記す場合がある)、(2)2B族金属化
合物(以下「化合物(2)」と記す場合がある)及び含酸素有機溶媒を含有してなるポリエステル製造用触媒、あるいは化合物(1)、化合物(2)、(3)ケイ素化合物(以下「化合物(3)」と記す場合がある)、及び含酸素有機溶媒を含有してなるポリエステル製造用触媒が、ポリエステル製造用触媒として高活性であり、かつこの触媒中の溶存酸素量が4.0mg/L以下であればこの触媒を使用して製造される酸化チタン含有ポリエチ
レンテレフタレートが極めて品質に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の要旨は、芳香族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分と、ジオール成分とをエステル化反応するエステル化工程、及びエステル化工程の反応生成物を重縮合する重縮合工程を有し、重縮合工程を酸化チタンの存在下に実施するポリエステルの製造方法であって、(1)4A族金属化合物、(2)2B族金属化合物、および含酸素有機溶媒を用いて調製された重縮合用触媒を使用し、かつ該重縮合用触媒として溶存酸素量が4.0mg/L以下のものを用いることを特徴とするポリエステルの製造方法に存する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリエステル製造方法によれば、色調に優れ、かつ異物の含有量が少ないというきわめて優れた特性を有する酸化チタン含有ポリエステルを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は本発明の実施態様の代表例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【0015】
本発明のポリエステルの製造方法は、芳香族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分とジオール成分をエステル化反応するエステル化工程、並びにエステル化工程の反応生成物を重縮合する重縮合工程を有し、重縮合工程を酸化チタンの存在下に実施するポリエステルの製造方法であって、少なくとも、(1)4A族金属化合物、(2)2B族金属化合物、および含酸素有機溶媒を用いて調製された溶存酸素量 4.0mg/L以下の重縮合用触媒を使用することを特徴とするポリエステルの製造方法である。
【0016】
化合物(1)の例としては、チタン化合物、ジルコニウム化合物、ハフニウム化合物が挙げられ、中でもチタン化合物が好ましく用いられる。
【0017】
チタン化合物としては、具体的には、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどのアルコキシチタン、チタンのアセチルアセトナート塩などの有機チタン化合物などが通常使用される。このうち、アルコキシチタンが好ましい。アルコキシチタンのアルコキシ基は、直鎖状であっても分岐していてもよく、その炭素数としてはそれぞれが独立して1〜30が好ましく、より好ましくはそれぞれが独立して1〜10である。
【0018】
また、化合物(1)は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
【0019】
化合物(2)として好ましいものは、マグネシウム化合物、及び/又はカルシウム化合物であり、特に好ましくはマグネシウム化合物である。化合物(2)としては、2B族金属原子の対イオンが重縮合反応に悪影響を及ぼさないものであればよく、具体的には、水酸化物、酢酸塩等のカルボン酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、炭酸塩、アルコキシド、アセチルアセトナート等を使用することができる。これらのうち、好ましくは酢酸塩等のカルボン酸塩、及びアルコキシドが用いられる。カルボン酸やアルコキシ基の炭素数はそれぞれが独立して1〜30が好ましく、より好ましくはそれぞれが独立して1〜10である。
【0020】
化合物(2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。化合物(2)を用いることにより、得られるポリエステルの体積固有抵抗値が低下する傾向となるので、特にフィルム用途のポリエステルを得るために好適である。
【0021】
含酸素有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどの1価のアルコール類、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族2価アルコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、2,5−ノルボルナンジメチロール等の脂環式2価アルコール、及び、キシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等の芳香族2価アルコール、ならびに、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキサイド付加物又はプロピレンオキサイド付加物などの2価アルコール類等を挙げることができる。これらの含酸素有機化合物のうち、2価アルコールが好ましく、また脂肪族2価アルコールがより好ましく、更にエチレングリコール、テトラメチレングリコールが好ましい。特に好ましいのは、エチレングリコールである。
【0022】
これらの含酸素有機溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明のポリエステルの製造方法に用いられる重縮合用触媒中に含有される化合物(1)由来の4A族金属原子の量としては、含酸素有機溶媒に対して通常10〜100000重量ppmが好ましく、より好ましくは50〜50000重量ppm、特に好ましくは100〜10000重量ppmである。
【0024】
また、化合物(1)に対する化合物(2)の割合は、化合物(1)由来の4A族金属原子と、化合物(2)由来の2B族金属原子とのモル比で、4A族金属原子:2B族金属原子=95:5〜5:95の範囲であり、特に95:5〜10:90の範囲、とりわけ90:10〜10:90の範囲とすることが好ましい。化合物(1)に対する化合物(2)の割合が多過ぎても少な過ぎても、以下に記載する化合物(1)と化合物(2)との併用による効果を十分に得ることができない。
【0025】
本発明のポリエステルの製造方法に用いる重縮合用触媒は、化合物(1)、化合物(2)、及び含酸素有機溶媒が混合した一液タイプの触媒であり、透明溶液であっても固形物が析出したスラリー状であってもよい。しかし、本発明のポリエステルの製造方法に用いられる触媒は、従来公知の加水分解共沈物を触媒として使用する場合に比べて一般に固形物が少なく、そのために、得られるポリエステル中の異物が少ないという特性を有する。なお、化合物(2)がマグネシウム化合物の場合はカルシウム化合物や亜鉛化合物に比べて固形物の析出が多い傾向となるが、従来公知の加水分解共沈物を一度乾燥させてポリエステル製造用触媒として使用する場合と異なり、含酸素有機溶媒中で生成した固形物をそのまま触媒として使用する。ここで析出する固形物は六方晶系の微細な結晶であり、この六方晶系の結晶は、化合物(1)由来の4A族金属原子及び/又は化合物(2)由来のマグネシウム原子1原子が、エチレングリコール6分子で溶媒和された構造となっている。析出する固形物が微細であることは、沈降、固化等を起こしにくく、得られるポリエステル中の異物が少ない理由のひとつと考えられる。
【0026】
また、本発明のポリエステルの製造方法で用いる重縮合用触媒が六方晶系の結晶構造をとるものである場合、色調の良好なポリエステルを得ることができる。その理由の詳細は不明であるが、重縮合用触媒が特定の構造をとることによって4A族化合物の重縮合反応触媒としての活性を損なうことなく、着色の原因となるような4A族化合物による分解反応を抑制する等の特性をより良く発現するものと考えられる。また、一液タイプの触媒であるので、従来の触媒に比べて運搬や保管、製造工程での添加操作等の取り扱いが容易であるという利点もある。
【0027】
本発明のポリエステルの製造方法に用いる重縮合用触媒は、化合物(1)、化合物(2)、及び含酸素有機溶媒を混合して調製される。化合物(1)、化合物(2)、及び含酸素有機溶媒の混合方法は特に限定されず、混合槽内で混合する回分法や、送液中の配管内でラインミキサーなどを用いて混合する連続法が挙げられるが、通常は回分法が用いられる。化合物(1)、化合物(2)、及び含酸素有機溶媒を混合する順序は特に限定されず、例えば、次の1)〜5)の方法などが挙げられるが、このうち操作性の観点から1)、2)、3)及び4)の方法が好ましく、特に工業規模での実施においては操作性の観点から1)及び2)の方法が特に好ましく用いられる。
1) 含酸素有機溶媒に化合物(1)を添加し、引き続いて化合物(2)を添加する方法
2) 含酸素有機溶媒に化合物(2)を添加し、引き続いて化合物(1)を添加する方法
3) 化合物(1)と化合物(2)を混合し、引き続いて含酸素有機溶媒を混合する方法
4) 含酸素有機溶媒に化合物(1)を添加し、引き続いて別途調製した化合物(2)と含酸素有機溶媒の混合物を添加する方法
5) 含酸素有機溶媒に化合物(2)を添加し、引き続いて別途調製した化合物(1)と含酸素有機溶媒の混合物を添加する方法
本発明のポリエステルの製造方法に用いられる重縮合用触媒は、更に(3)ケイ素化合物(化合物(3))を含有することが好ましい。
【0028】
化合物(3)としては特に制限されないが、一般式R2nSi(OR1)4−nで表されるケイ酸エステル化合物が好ましく使用される。本式中において、R1、R2はそれぞれ独立した置換基で、直鎖又は分岐のアルキル基、フェニル基等のアリール基等であり、nは0〜3の整数である。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラベンジルオキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン及びジフェニルジエトキシシランなどの化合物が挙げられる。このうち、特に、nが0のオルトケイ酸エステル化合物が好ましく用いられ、R1、R2の炭素数としてはそれぞれが独立して1〜30が好ましく、より好ましくはそれぞれが独立して1〜10である。
【0029】
本発明のポリエステルの製造方法に用いる重縮合用触媒が化合物(3)を含む場合、化合物(1)に対する化合物(3)の割合は、化合物(3)由来のケイ素原子と化合物(1)由来の4A族金属原子とのモル比が、通常、ケイ素原子:4A族金属原子=95:5〜5:95の範囲であり、特に90:10〜5:95の範囲、とりわけ90:10〜30:70の範囲であることが好ましい。化合物(3)の使用量が多すぎると重縮合触媒としての活性が低下する傾向となり、少なすぎると以下に述べる化合物(3)による改良効果が不十分となる場合がある。
【0030】
本発明のポリエステルの製造方法に用いる重縮合用触媒が、化合物(3)を含有する場合に更に有効である理由の詳細は不明であるが、(1)4A族金属化合物、(2)2B族金属化合物、(3)ケイ素化合物、及び含酸素有機溶媒を混合した一液タイプの触媒として重縮合反応に使用されると、重縮合反応系内で、本発明のポリエステル製造用触媒の有効成分の分散性が化合物(3)によって改良され、触媒性能が更に向上することによるものと考えられる。
【0031】
本発明のポリエステルの製造方法に用いられる重縮合用触媒が、好ましい態様として化合物(3)を含有する場合も、化合物(1)、化合物(2)、化合物(3)、及び含酸素有機溶媒の混合方法は特に限定されず、予め混合槽内で混合を行う回分法や、送液中の配管内でラインミキサーなどを用いて混合を行う連続法で行うことができるが、通常は回分法で行われる。化合物(1)、化合物(2)、化合物(3)、及び含酸素有機溶媒の混合方法は特に限定されず、例えば次の6)〜14)の方法などが挙げられるが、このうち、添加、混合の効率や操作性などの観点から8)、10)、12)の方法が好ましく用いられる。
【0032】
6) 含酸素有機溶媒に化合物(1)を添加し、引き続いて化合物(2)、更に化合物(3)を添加する方法
7) 含酸素有機溶媒に化合物(1)を添加し、引き続いて化合物(3)、更に化合物(2)を添加する方法
8) 含酸素有機溶媒に化合物(3)を添加し、引き続いて化合物(2)、更に化合物(1)を添加する方法
9) 含酸素有機溶媒に化合物(3)を添加し、引き続いて化合物(1)、更に化合物(2)を添加する方法
10) 含酸素有機溶媒に化合物(2)を添加し、引き続いて化合物(3)、更に化合物(1)を添加する方法
11) 含酸素有機溶媒に化合物(2)を添加し、引き続いて化合物(1)、更に化合物(3)を添加する方法
12) 含酸素有機溶媒に化合物(3)を添加し、引き続いて別途調製した化合物(2)と含酸素有機溶媒の混合物、更に別途調製した化合物(1)と含酸素有機溶媒の混合物を添加する方法
13) 含酸素有機溶媒に化合物(1)、化合物(3)及び化合物(2)を同時に添加する方法
14) 化合物(1)と化合物(3)を予め混合したものを含酸素有機溶媒に添加し、引き続いて化合物(2)を添加する方法
【0033】
本発明のポリエステルの製造方法に用いる重縮合用触媒を調製する際の温度条件、即ち、各成分を混合する際の温度条件は特に制限されないが、150℃以下で調製するのが好ましく、100℃以下で調製を行うのが更に好ましい。調製する際の温度が高いほど混合中に加水分解反応が起きやすく、ポリエステル製造用触媒としての効果が低下する傾向となる。なお、調製する際の温度の下限については特に制限はないが、調製する際の温度が低いほど溶存酸素量が増加する傾向となり、また、化合物(1)及び/又は化合物(2)の溶解度や分散性が不十分となる場合があるので、通常は0℃以上、好ましくは10℃以上で調製を行う。
【0034】
本発明のポリエステルの製造方法に用いられる触媒は、その性能を損なわない範囲で他の金属元素を含有する化合物、例えばアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、コバルト化合物、スズ化合物等を含有していてもよい。しかし、本発明の効果は、重縮合用触媒として「化合物(1)、化合物(2)、及び含酸素有機溶媒」のみを用いて調製したもの、または「化合物(1)、化合物(2)、化合物(3)及び含酸素有機溶媒」のみを用いて調製したものを用いることで、最もよく奏される。
【0035】
本発明のポリエステルの製造方法に用いられる重縮合用触媒は、溶存酸素量が4.0mg/L以下であることが必要で、好ましくは3.0mg/L以下である。
【0036】
上記触媒中の溶存酸素量を低下させる方法としては、重縮合用触媒の性能およびポリエステルの性質を悪化させない限り特に限定されず、例えば、窒素やアルゴン等の不活性ガスを用いる方法等で行うことができる。以下、代表的な不活性ガスである窒素を用いる方法を例にとると、窒素ガスを溶媒中に吹き込む、窒素雰囲気下にて激しく攪拌する、密閉容器内で減圧および窒素充填を繰り返す、減圧下で冷却による溶媒の固化と液化を繰り返した後、窒素雰囲気下にする、重縮合用触媒の調製を窒素下で実施し、特に調製時の加熱後の冷却を窒素下で実施する方法などが挙げられるが、重縮合用触媒の調製を窒素雰囲気下で行い、溶存酸素量を下げる方法が簡便で好ましい。
【0037】
また、重縮合用触媒の保管時に溶存酸素量が増加することもあるので、触媒の保管は酸素濃度9%以下の雰囲気下で、さらに好ましくは酸素濃度5%以下の雰囲気下で、特に好ましくは酸素濃度3%以下の雰囲気下で行うのがよい。
重縮合要触媒の保管に用いる容器としては、溶存酸素量を4.0mg/L以下に保つように密閉することができる容器であれば特に制限されず、保存期間等に応じて適宜選択することが出来る。容器の材質としては、例えば樹脂製、金属製等の容器を用いることができ、樹脂製容器の例としては、高密度ポリエチレン製の容器を一般に用いることができ、2mm程度の厚みであれば1ヶ月程度の保存が可能である。また、金属製容器としてはステンレス製の容器を、耐腐食性や入手の容易さから好ましく用いることが出来る。
【0038】
溶存酸素量の測定方法としては、滴定法や溶存酸素計を用いる等の従来公知の方法を適宜選択することが出来る。しかしながら、一般的には有機溶媒中での滴定法による溶存酸素量の定量は困難であるので、溶存酸素計を用いて測定するのが好ましい。溶存酸素計を用いた測定方法の例としては、酸素濃度計(飯島電子製DOメーター B−505)を用い、測定対象となる液体の温度を20℃として測定用のセンサー挿入し、該センサーに対して測定対象の液体が十分な流速となるようにし、センサーの数値が安定するまで(約2〜5分)放置するという方法が挙げられる。このような測定時にも、測定容器を測定対象の溶液で満たして測定を実施する等、測定時に外部雰囲気の酸素の影響が出ないような処置を、必要に応じ適宜行うことができる。
【0039】
本発明のポリエステルの製造方法において、ジカルボン酸成分の主成分である芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ジブロモイソフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、フェニレンジオキシジカルボン酸、4,4'−
ジフェニルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4'−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、等が挙げられる。これらの中で、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、特にテレフタル酸が好ましい。
【0040】
これらの芳香族ジカルボン酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、ここで主成分とするとは、芳香族ジカルボン酸がジカルボン酸成分の80モル%以上であることを言い、90モル%以上が好ましく、95モル%以上が更に好ましく、98モル%以上であるのが特に好ましい。
【0041】
なお、前記芳香族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、例えば、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸、及び、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
【0042】
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族2価アルコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、2,5−ノルボルナンジメチロール等の脂環式2価アルコール、及び、キシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等の芳香族2価アルコール、ならびに、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキサイド付加物又はプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらの中で、エチレングリコール、テトラメチレングリコールが好ましく、特にエチレングリコールが好ましい。
【0043】
これらのジオール成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
本発明のポリエステルの製造方法では、上記ジカルボン酸成分及びジオール成分の他、更に、例えば、グリコール酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やアルコキシカルボン酸、及び、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸等の単官能成分、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール等の三官能以上の多官能成分等の1種又は2種以上を、共重合成分として用いてもよい。
【0045】
ジカルボン酸成分とジオール成分との反応において、ジカルボン酸成分に対するジオール成分の使用割合は、通常1〜3倍モルである。
【0046】
本発明のポリエステルの製造方法は、エステル化工程、並びにエステル化工程の反応生成物を重縮合する重縮合工程を有し、重縮合工程を酸化チタン及び前記重縮合用触媒を用いる以外には特に制限されず、ポリエステルの慣用の製造方法を用いることができ、重縮合工程では、溶融重縮合、及び必要に応じてそれに続いて固相重縮合を行うことができる。以下に代表的な製造例を示す。
【0047】
まず、ジカルボン酸成分とジオール成分とを、エステル化反応槽で、必要に応じてエステル化触媒の存在下に、通常240〜280℃、好ましくは250〜270℃の温度、絶対圧力で通常0.1〜0.4MPa、好ましくは0.1〜0.3MPaの圧力下で、攪拌下に1〜10時間エステル化反応させる。次いで、得られたエステル化反応生成物であるポリエステル低分子量体を重縮合槽に移送し、重縮合用触媒の存在下に、通常260〜290℃、好ましくは265〜285℃の温度で、常圧から漸次減圧して最終的に絶対圧力で通常1.3×101〜1.3×103Pa、好ましくは6.7×101〜6.7×102Paとし、攪拌下に1〜20時間溶融重縮合させる。これらは連続式、又は回分式のいずれの方法で行ってもよい。
【0048】
通常、溶融重縮合により得られた樹脂は、重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、水冷しながら若しくは水冷後、カッターで切断されてペレット状、チップ状等の粒状体とされるが、更に、この溶融重縮合後の粒状体を、必要に応じて固相重縮合に供することもできる。この場合には、例えば、窒素、二酸化炭素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、又は水蒸気雰囲気下、或いは水蒸気含有不活性ガス雰囲気下で、通常60〜180℃、好ましくは150〜170℃の温度で加熱して樹脂粒状体表面を結晶化させた後、不活性ガス雰囲気下、及び/又は、絶対圧力1.3×101〜1.3
×103Pa程度の減圧下で、通常、樹脂の粘着温度直下〜80℃低い温度、好ましくは
粘着温度より10〜60℃低い温度で、粒状体同士が膠着しないように流動等させながら、通常50時間以下の時間で加熱処理して固相重縮合させることができる。この固相重縮合により、得られるポリエステルを更に高重合度化させ得ると共に、反応副生物のアセトアルデヒドや低分子オリゴマー等を低減化することができる。
【0049】
また、更に、前記のような溶融重縮合又は固相重縮合により得られた樹脂は、重縮合触媒を失活させる等の目的に応じて、更に処理を行ってもよい。例えば、40℃以上の水に10分以上浸漬させる水処理、あるいは、60℃以上の水蒸気又は水蒸気含有ガスに30分以上接触させる水蒸気処理等の処理を施すことができる。
【0050】
本発明のポリエステルの製造方法において、上記の重縮合用触媒の添加時期はエステル化工程の任意の段階、又は、溶融重縮合工程の初期の段階のいずれであってもよい。中でもエステル化率が90%以上で添加することが好ましく、実質的にエステル化工程が終了した後、溶融重縮合工程の初期の段階までの間に添加するのがさらに好ましく、溶融重縮合開始前までに添加するのがより好ましい。エステル化率が90%未満で重縮合用触媒を添加すると、未反応のカルボン酸によって重縮合用触媒が失活する場合があり、好ましくない。
【0051】
また、本発明のポリエステルの製造方法において、重縮合触媒の添加方法は特に制限されず、例えば必要な量を1度に添加してもよく、必要に応じて複数回に分けて添加してもよい。
【0052】
本発明のポリエステルの製造方法で用いられる重縮合用触媒は、ポリエステル樹脂の理論収量に対し、化合物(1)由来の4A族金属原子として、通常0.1〜200重量ppmの範囲、好ましくは0.5〜100重量ppmの範囲となるように添加することが好ましい。
【0053】
また本発明の製造方法では重縮合反応を酸化チタンの存在下に実施することが要件であるが、酸化チタンの添加はエステル化反応時、あるいはエステル化反応終了後、重縮合反応開始までの任意の時期に添加することができる。しかし、前記の重縮合用触媒と混合して添加すると重縮合用触媒の活性が低下する傾向となるので好ましくなく、前記重縮合用触媒と酸化チタンとは別々に添加するほうが好ましい。重縮合用触媒と酸化チタンを混合すると、重縮合用触媒として活性を有する4A族金属化合物の成分が、酸化チタンの表面に吸着されるため、重縮合の活性が低下するものと考えられる。
【0054】
酸化チタンの添加方法は特に制限されず、粉体のまま添加する方法やスラリーとして添加する方法等で行うことができるが、容易に添加し添加量の調整を精度よく行うにはスラリーによる添加が好ましい。酸化チタンをスラリーとする溶媒は特に制限されないが、得られるポリエステルの物性に与える影響が少ないという点でジオール類が好ましく、中でもエチレングリコールおよびジエチレングリコールが好ましく、特に得られるポリエステルの強度が高くなるという点でエチレングリコールが好ましい。スラリー濃度は特に制限されないが、一般的に流動性および重縮合反応系内へのジオール成分の過剰な供給を抑えるという点で上限は50重量%、好ましくは45重量%、特に好ましくは35重量%であり、下限は5重量%、好ましくは10重量%、特に好ましくは15重量%である。スラリーの添加方法は、例えばバッチ法や連続法が挙げられるが、重縮合反応を連続で行っている場合には、添加量の制御の容易にするために連続法による添加が好ましい。酸化チタンをエチレングリコールのスラリーとする調製方法としては、例えば、酸化チタンをエチレングリコールに分散させた後に、該分散液をサンドミルを用いてガラスビーズによって酸化チタンの粗大粒子を粉砕し、更にデカンター及び濾過によってガラスビーズの破片を取り除く調製方法が挙げられる。
【0055】
本発明で用いることのできる酸化チタンは特に限定されないが、一般的に繊維用にはアナターゼ型のものが好ましく用いられる。用いることのできる酸化チタンの粒径は、遠心沈降法という測定法で通常は1μm以下、好ましくは0.3±0.15μmの粒径のものが用いられる。酸化チタンの粒径が大きすぎると、成形時に異物となり、たとえば紡糸工程で糸切れを起こすため好ましくない。また、酸化チタンの添加量は、得られるポリエステル樹脂に対して通常0.05〜3.0重量%、好ましくは0.1〜2.0重量%、特に好ましくは0.2〜1.0重量%である。添加量が上記範囲を超えると、成形体に異物として析出する場合があり、添加量が上記範囲未満であるとフィルムに成形したばあい十分な滑り性を付与できない傾向となるので好ましくない。酸化チタンは得られるポリエステル中の分散性を改良する目的で、表面処理したものを用いることもできる。このような酸化チタンは必要とする機能を付与するために合成することも可能であるが、通常は市販のものを用いることができ、市販されている酸化チタンの例としてはTA−300(富士チタン社製)やKA−20(チタン工業社製)等が挙げられる。
【0056】
また、本発明では、更に、ポリエステルの劣化を防止する助剤、安定剤としてリン化合物を用いることが好ましい。リン化合物としては、例えばトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル類、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート等の酸性リン酸エステル類、及びリン酸、亜リン酸、ポリリン酸等が挙げられる。
【0057】
上記リン化合物の添加時期は、原料スラリー調製時やエステル化工程の任意の段階あるいは溶融重縮合工程の初期に供給することが好ましい。リン化合物は、リン原子の重量として、通常全重縮合原料に対して通常1〜1000重量ppmの範囲で用いられるが、3〜30重量ppmの範囲が色調の改善、重合活性および得られるポリエステルの熱安定性の改善の観点から好ましい。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における各種物性値の測定は次のようにして行った。
【0059】
<重縮合用触媒のX線結晶構造解析>
調製した重縮合用触媒を遠心分離してエタノールで洗浄した後、得られた固形物を顕微鏡で観察して単結晶を取り出しX線構造解析を行った。測定装置はBruker Smart1000を用い、測定条件はX線出力(MoKα)50kV、40mA、コリメーター径0.5phi、露光時間30秒、撮影枚数1321枚で実施した。
【0060】
<溶存酸素量>
酸素濃度計(飯島電子製DOメーター B−505)を用いて20℃で測定した。
測定方法は、センサーに対して測定対象の溶液を十分な流速とし、センサーの数値が安定するまで(約2〜5分)放置するという、メーカー推奨の方法により測定した。
また、測定時に外部雰囲気の酸素の影響が出ないように、測定容器を測定対象の溶液で満たして測定を実施した。
【0061】
<エステル化率>
得られたポリエステル試料を重水素化クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール(重量比7/3)の混合溶媒に濃度3重量%で溶解した溶液について、核磁気共鳴分析装置(日本電子社製「JNM−EX270型」)にて、トリメチルシリルクロライド(TMS)を標準物質として1H−NMRを測定して各ピークを帰属し、末端カルボキシル基量
(M 単位:モル/試料トン)をピークの積分値から計算し、以下の式により、テレフタル酸単位の全カルボキシル基のうちエステル化されているものの割合としてのエステル化率(E 単位:%)を算出した。
エステル化率(E)=〔1−M/{(1000000/192.2)×2}〕
×100
【0062】
<固有粘度>
ポリエステル試料0.50gを、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒に、濃度(c)を1.0g/dlとして、110℃で20分間かけて溶解させた後、ウベローデ型毛細粘度管を用いて、30℃で、原液との相対粘度(ηrel)を測定し、この相対粘度(ηrel)−1から求めた比粘度(ηsp)と濃度(c)との比(ηsp/c)を求め、同じく濃度(c)を0.5g/dl、0.2g/dl、0.1g/dlとしたときについてもそれぞれの比(ηsp/c)を求め、これらの値より、濃度(c)を0に外挿したときの比(ηsp/c)を固有粘度〔η〕(dl/g)として求めた。
【0063】
<色調>
ポリエステル試料を、内径36mm、深さ15mmの円柱状の粉体測色用セルにすりきりで充填し、測色色差計(日本電色工業社製「ZE−2000」)を用いて、日本工業規格、(JIS Z8730の参考1)に記載されるLab表色系におけるハンターの色差式の色座標bを、反射法で、セルを90度ずつ回転させて4箇所測定した値の算術平均値として求めた。
このとき10以下を良好、12以下を使用可能、それ以上を使用不可として判定した。
【0064】
<粒径10μm以上の異物量>
ポリエステル試料3.0mgを精秤し、2枚のプレパラートにはさみホットプレート上
で加熱し、上から軽く押さえてポリエステル試料を薄く延ばした。プレパラートは急冷した後、位相差顕微鏡を用いて300倍の倍率で透過光で観察し10μm以上の大きさの異物をマーキングした。次に、反射光に切り替え異物の色を観察し、茶色の劣化物由来の異物以外の異物の数を数え、それを異物量とした。測定を2回実施し、測定値を平均し試料10mgの値に換算した。このとき10μm以上の異物量が0〜10個の場合を良好、11〜15個の場合を使用可能、16個以上の場合を不良と判断した。
【0065】
実施例1(Ti/Mg/Si/エチレングリコール系)
<重縮合用触媒の調製>
500mlのフラスコに200mlのエチレングリコールを秤取し、窒素雰囲気下でこのフラスコを攪拌しながら酢酸マグネシウム四水和物1.6gを添加して30分室温で攪拌した。その後テトラエトキシシラン0.4gを滴下し、滴下終了後、更に30分室温で攪拌した。攪拌終了後、テトラブトキシチタン0.7gを攪拌しながら滴下した(Ti/Si/Mg=1/1/4:モル比)。滴下終了後、1時間室温で攪拌した。
調製終了後、溶存酸素量を測定したところ1.9mg/Lであった。
触媒調製の概略及びX線結晶構造解析の結果を表1に示す。
【0066】
<溶融重縮合>
テレフタル酸とエチレングリコールを原料として、直接エステル化法により製造したエチレンテレフタレート低重合体157gを260℃で溶解させた。この低重合体のエステル化率は96.5%であった。その後、酸化チタンを得られるポリエステルの理論収量に対して0.35重量%となるようにエチレングリコールのスラリーとして添加し、さらに上記の通りに調製した重縮合用触媒を、得られるポリエステルの理論収量に対してチタン原子として6重量ppmとなるよう添加した。このときの触媒溶液中の溶存酸素量も1.9mg/Lであった。
次いで溶解液を攪拌翼により攪拌しながら、80分間で280℃まで段階的に昇温するとともに、反応系の圧力を60分間で常圧から絶対圧力1.3×102Paまで段階的に
下げ、温度280℃、絶対圧力2.6×102Paに到達した後は、温度、圧力を一定に
保った。
減圧開始270分後、攪拌を止め、系内に窒素ガスを導入して重縮合反応を停止した。その後ポリマーを反応容器より抜き出し、水冷することにより、ストランド状のポリマーを得た。これを切断することによりペレット状にし、評価を実施した。
減圧開始から重縮合反応停止までの時間(重縮合反応時間)、得られたポリエステルの固有粘度、色調としての色座標b及び異物量の測定結果を表2に示す。
【0067】
実施例2(Ti/Mg/Si/エチレングリコール系)
<重縮合用触媒の調製>
実施例1と同様にして調製した溶存酸素量が1.9mg/Lの重縮合用触媒を、保管雰囲気を空気として1日間保管した。1日間保管後の溶存酸素量は3.1mg/Lであった
。触媒調製の概略及びX線結晶構造解析の結果を表1に示す。
<溶融重縮合>
上記の通りに調製した溶存酸素量が3.1mg/Lの重縮合用触媒を使用した以外は、実施例1と同様にして重縮合反応及び評価を実施した。
評価の結果を表2に示す。
【0068】
実施例3(Ti/Mg/Si/エチレングリコール系)
<重縮合用触媒の調製>
酢酸マグネシウム四水和物の添加量を0.4gとした以外は、実施例1と同様に重縮合用触媒を調製した。(Ti/Si/Mg=1/1/1:モル比)。
このときの溶存酸素量は2.2mg/Lであった。
触媒調製の概略及びX線結晶構造解析の結果を表1に示す。
<溶融重縮合>
上記の通りに調製した溶存酸素量が2.2mg/Lの重縮合用触媒を使用した以外は、実施例1と同様にして重縮合反応及び評価を実施した。評価の結果を表2に示す。
【0069】
実施例4(Ti/Mg/Si/エチレングリコール系)
<重縮合用触媒の調製>
実施例1と同様に重縮合用触媒の調製を行い、溶存酸素量を測定したところ1.9mg/Lであった。
触媒調製の概略及びX線結晶構造解析の結果を表1に示す。
<溶融重縮合>
テレフタル酸とエチレングリコールを原料として、直接エステル化法により製造したエチレンテレフタレート低重合体157gを260℃で溶解させた。その後、酸化チタンを得られるポリエステルの理論収量に対して0.35重量%となるようにエチレングリコールのスラリーとして添加し、さらに上記の通りに調製した重縮合用触媒を、得られるポリエステルの理論収量に対してチタン原子として6重量ppmとなるよう添加した。このときの触媒溶液中の溶存酸素量も1.9mg/Lであった。さらにトリエチルホスフェート
を得られるポリエステルの理論収量に対してリン原子として10重量ppmになるように添加した。
次いで溶解液を攪拌翼により攪拌しながら、70分間で280℃まで段階的に昇温するとともに、反応系の圧力を60分間で常圧から絶対圧力1.3×102Paまで段階的に
下げ、温度280℃、絶対圧力2.6×102Paに到達した後は、温度、圧力を一定に
保った。
減圧開始270分後、攪拌を止め、系内に窒素ガスを導入して重縮合反応を停止した。その後ポリマーを反応容器より抜き出し、水冷することにより、ストランド状のポリマーを得た。これを切断することによりペレット状にし、評価を実施した。
評価の結果を表2に示す。
【0070】
実施例5(Ti/Mg/Si/エチレングリコール系)
<重縮合用触媒の調製>
実施例2と同様に重縮合用触媒を調製したところ、重縮合用触媒の溶存酸素量は3.1mg/Lであった。
触媒調製の概略及びX線結晶構造解析の結果を表1に示す。
<溶融重縮合>
上記の通りに調製した溶存酸素量が3.1mg/Lの重縮合用触媒を使用した以外は、実施例4と同様にして重縮合反応及び評価を実施した。評価の結果を表2に示す。
【0071】
実施例6
<重縮合用触媒の調製>
実施例1と同様に重縮合用触媒の調製を実施したところ、溶存酸素量は1.9mg/L
であった。
触媒調製の概略及びX線結晶構造解析の結果を表1に示す。
<溶融重縮合>
テレフタル酸とエチレングリコールを原料として、直接エステル化法を実施し、その反応途中のエチレンテレフタレート低重合体を取り出した。そのうちの157gを260℃で溶解させた。この低重合体のエステル化率は87.2%であった。その後、酸化チタンを得られるポリエステルの理論収量に対して0.35重量%となるようにエチレングリコールのスラリーとして添加し、さらに上記の通りに調製した溶存酸素量が1.9mg/L
の重縮合用触媒を、得られるポリエステルの理論収量に対してチタン原子として6重量ppmとなるよう添加した。
次いで溶解液を攪拌翼により攪拌しながら、80分間で280℃まで段階的に昇温するとともに、反応系の圧力を60分間で常圧から絶対圧力1.3×102Paまで段階的に
下げ、温度280℃、絶対圧力2.6×102Paに到達した後は、温度、圧力を一定に
保った。
減圧開始270分後、攪拌を止め、系内に窒素ガスを導入して重縮合反応を停止した。その後ポリマーを反応容器より抜き出し、水冷却することにより、ストランド状のポリマーを得た。これを切断することによりペレット状にし、評価を実施した。評価の結果を表2に示す。
【0072】
比較例1(Ti/Mg/Si/エチレングリコール系)
<重縮合用触媒の調製>
実施例1と同様にして調製した溶存酸素量が1.9mg/Lの重縮合用触媒を、保管雰囲気を空気として5日間保管した。5日間保管後の溶存酸素量は4.7mg/Lであった。触媒調製の概略及びX線結晶構造解析の結果を表1に示す。
<溶融重縮合>
上記の通りに調製した溶存酸素量が4.7mg/Lの重縮合用触媒を使用した以外は、実施例1と同様にして重縮合反応及び評価を実施した。評価の結果を表2に示す。
【0073】
比較例2(Ti/Mg/Si/エチレングリコール系)
<重縮合用触媒の調製>
酢酸マグネシウム四水和物の添加量を0.4gとした以外は、実施例1と同様に重縮合用触媒を調製(Ti/Si/Mg=1/1/1:モル比)したところ、溶存酸素量は2.2mg/Lであった。
この触媒の保管雰囲気を空気として5日間保管した。5日間保管後の溶存酸素量は5.
8mg/Lであった。触媒調製の概略及びX線結晶構造解析の結果を表1に示す。
<溶融重縮合>
上記の通りに調製した溶存酸素量が5.8mg/Lの重縮合用触媒を使用した以外は、実施例1と同様にして重縮合反応及び評価を実施した。評価の結果を表2に示す。
【0074】
比較例3(Ti+Mg系)
<重縮合用触媒の調製>
テトラブトキシチタン溶液を、以下の方法で調製した。窒素雰囲気下で200mlのフラスコに100mlのエチレングリコールを秤取し、このフラスコを攪拌しながらテトラブトキシチタン0.7gを滴下した。滴下終了後、室温で1時間攪拌したところ、無色透明の溶液が得られた。得られた溶液の溶存酸素量は2.4mg/Lであった。
酢酸マグネシウム溶液を、以下の方法で調製した。500mlのフラスコに200mlのエチレングリコールを秤取し、このフラスコを攪拌しながら酢酸マグネシウム四水和物1.1gを投入した。投入終了後、室温で30分攪拌したところ、無色透明の溶液が得られた。
触媒調製の概略を表1に示す。
【0075】
<溶融重縮合>
実施例1において、反応器内に重縮合用触媒を投入する代わりに、溶存酸素量が2.4mg/Lのテトラブトキシチタンのエチレングリコール溶液を得られるポリエステルの理論収量に対してチタン原子として6重量ppm、及び酢酸マグネシウム四水和物のエチレングリコール溶液を得られるポリエステルの理論収量に対してマグネシウム原子として12重量ppm(Ti/Mg=1/4:モル比)となるように別々に投入した以外は実施例1と同様にして重縮合反応及び評価を実施した。評価の結果を表2に示す。
【0076】
比較例4(Ti/Si)
<重縮合用触媒の調製>
500mlのビーカーに、エタノール40gを入れ、室温で撹拌しながらテトラエトキシシラン6gとテトライソプロポキシチタン7.5g(Ti/Si=1/1:モル比)を別々に投入した。更にこの中へ蒸留水18gとエタノール40gの混合溶液を滴下した。25℃で1時間撹拌した後、生成した沈殿を5000回転5分間の遠心沈降で上清と分離した。得られた沈殿を蒸留水で1回洗浄し、5000回転5分間の遠心沈降で沈殿を分離した。分離した沈殿はロータリーエバポレーターを使用して、70℃、3時間減圧乾燥した後、100μm以下に粉砕した。更に、粉砕固体0.15重量部をエチレングリコール100重量部に添加し、窒素雰囲気下、198℃で15分加熱した後、60分かけて100℃まで冷却し、溶存酸素量が1.9mg/Lの重縮合用触媒を得た。
触媒調製の概略を表1に示す。なおこの沈殿は明確な結晶構造を持っていなかった。
<溶融重縮合>
上記の通りに調製した重縮合用触媒を、得られるポリエステルの理論収量に対してチタン原子として10重量ppmとなるように添加した以外は、実施例1と同様にして重縮合反応及び評価を実施した。評価の結果を表2に示す。
【0077】
【表1】

【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分と、ジオール成分とをエステル化反応するエステル化工程、及びエステル化工程の反応生成物を重縮合する重縮合工程を有し、重縮合工程を酸化チタンの存在下に実施するポリエステルの製造方法であって、(1)4A族金属化合物、(2)2B族金属化合物、および含酸素有機溶媒を用いて 調製された重縮合用触媒を使用し、かつ該重縮合用触媒として溶存酸素量が4.0mg/L以下のものを用いることを特徴とするポリエステルの製造方法。
【請求項2】
重縮合反応用触媒が、(3)ケイ素化合物を含む請求項1に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項3】
重縮合反応用触媒を、エステル化工程のエステル化率が90%以上に達した後に添加する請求項1または2に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項4】
さらにリン化合物を使用する請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステルの製造
方法。

【公開番号】特開2006−249330(P2006−249330A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69773(P2005−69773)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】