説明

ポリエステルアルコールの製造方法

本発明は、少なくとも一種の多官能性カルボン酸と少なくとも一種の多官能性アルコールとの触媒反応による及び/又は触媒の存在下での環状エステルの触媒的開環重合によるポリエステルアルコールの製造方法であって、ゼオライトを触媒として用いることを特徴とする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルアルコールの製造方法とこれらポリエステルアルコールのポリウレタン製造への利用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルアルコールの製造とこれらの製品のポリウレタン化学での利用は古くから知られており、広く記載されている。これらの製品は、通常多価カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体と多価アルコールまたはポリオールとの重縮合反応で製造される。例えば、プラスチックハンドブック(Kunststoffhandbuch),第VII巻,ポリウレタン, Carl−Hanser−Verlag, Munich 1st edition 1966, edited by Dr. R Vieweg and Dr. A. Hochtlen, and also 2nd edition 1983 and the 3rd revised edition 1993, edited by Dr. G. Oertelを参照。ポリエステルアルコールが、ω−ヒドロキシカルボン酸の重縮合反応または環状エステル(ラクトンとも呼ばれる)の開環重合で製造されることも知られている。
【0003】
しかしながら、ポリエステルのスクラップを、特にポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリブチレンテレフタレート(PBT)のスクラップを加工することも可能である。本目的のプロセスの全体が公知であり記載されている。いくつかのプロセスの基礎となるのは、ポリエステルのテレフタル酸ジエステルへの、例えばテレフタール酸ジメチルへの変換である。DE−A1003714とUS−A5,051,528には、メタノールとエステル交換触媒とを用いるこのようなエステル交換が記載されている。
【0004】
これらのポリエステルアルコールを、特にポリウレタン(以下、PURと称す)の製造に利用する場合、特に軟質PUR発泡体や硬質PUR発泡体、他の多孔性または非発泡性PUR材料の製造に利用する場合には、特定の出発原料の選択が求められ、また重縮合技術の実施が求められる。ポリウレタンの製造には、用いるポリエステルアルコールが低い酸価(ウルマン工業化学辞典,電子版,Wiley−VCH−Verlag GmbH, Weinheim, 2000、「ポリエステル」, 2.3章 「品質規格と試験」を参照)をもつことが特に重要である。末端の酸基は末端ヒドロキシル基よりゆっくりとジイソシアネートと反応するため、この酸価はできる限り小さいほうがよい。したがって、高酸価をもつポリエステルアルコールは、ポリエステルアルコールとイソシアネートからポリウレタンを形成する反応において形成される分子量が小さくなる。
【0005】
高酸価のポリエステルアルコールのポリウレタン反応への利用のもう一つの問題は、多くの末端酸基とイソシアネートの反応で、二酸化炭素の遊離を伴うアミド成形が起こることである。このガス状の二酸化炭素は、望ましくない泡の発生を引き起こすことがある。また、遊離のカルボキシル基は、ポリウレタン反応において触媒を阻害し、得られるポリウレタンの加水分解に対する安定性を低下させる。
【0006】
既知のポリエステルアルコール製造のための重縮合技術では、多官能性の芳香族及び/又は脂肪族カルボン酸またはその無水物と、二官能性、三官能性及び/又は多官能性アルコール、特にグリコールとを用い、これらを、特に150〜280℃の温度で大気圧下及び/又はやや真空下で、触媒の存在下で反応水を除去しながら相互に反応させる。既存の技術が、例えばDE−A−2904184に記載されているが、例えば合成初期に反応成分を適当な触媒と混合し、同時に温度を上げ圧力を下げる。この合成の進行と共に、温度と減圧度をさらに変化させる。これらの重縮合反応は、溶媒の存在下で行っても非存在下で行ってもよい。
【0007】
一つの欠点は、この高温下での重縮合反応でしばしば副生成物が生成することである。また、逆反応を避けるためこれらの高温重縮合を水を除きながら行う必要がある。これは、水を完全に除去するために、一般的には縮合を減圧下で行うか、不活性ガス雰囲気下で、あるいは共留ガスの存在下で行って実施される。
【0008】
このような高温下での重縮合のもう一つの欠点は、反応が比較的ゆっくりと進行することである。従って高温下での重縮合反応を加速するためにエステル化触媒がしばしば使用される。従来から用いられているエステル化触媒としては、例えば、金属、金属酸化物または金属塩の形態の鉄系触媒やカドミウム、コバルト、鉛、亜鉛、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、アンチモン、マグネシウム、チタン、スズ系触媒、または硫酸やp−トルエンスルホン酸などの酸、または水酸化カリウムやナトリウムメトキシドなどの塩基があげられる。
【0009】
これらのエステル化触媒は均一であり、通常反応終了後にポリエステルアルコール中に残留する。この欠点は、ポリエステルアルコール中に残存するエステル化触媒が、製造されるポリエステルアルコールの耐加水分解性を低下させ、後工程でのこれらのポリエステルアルコールのポリウレタンへの変換を阻害する可能性があることである。
【0010】
また、ポリエステルアルコール中に均一触媒が存在すると変色を引き起こすことがある。
【0011】
この欠点を克服するために、WO2006/100231には、酵素を触媒として使用するポリエステルアルコールの製造方法が記載されている。酵素によるポリエステルアルコールの製造またはエステル交換は、回分式に実施しても連続的に実施してもよい。連続的なプロセスでは、触媒が固定化された状態で存在し、反応を流動反応器中で行うことが好ましい。
【0012】
しかしながら、ポリエステルアルコールの製造用の高温重縮合と酵素触媒重縮合はともに、ポリエステルアルコールの製造が、複雑な周囲を必要とするプラント中で縮合反応で行われるという欠点を有している。従来の高温重縮合と酵素的重縮合はともに、反応器の上に液体及び/又は固体の定量供給のための設備を必要とする。反応混合物から減圧下で、不活性ガスの導入で、あるいは共留により水を除く必要がある。また、ジオールは、酸成分の対する反応パートナーとして反応混合物に残留する必要があるため、蒸留でジオールから水を除く必要がある。水とジオールの分離は、一般的には蒸留塔で行われる。ポンプなどの減圧装置や、蒸留塔などのジオール/水の分離装置、不活性ガス流の導入装置は、高い資本経費を必要とする。また特に高温縮合の場合、反応器内部を160〜270℃の高温に加熱する設備が必要である。
【0013】
酵素触媒の欠点は、高価格であることと、得られるポリエステルアルコールの臭気と色に悪影響があることである。また支持体から酵素が脱離することもある。
【0014】
DE102008004343には、多金属シアン化物触媒(DMC触媒とも呼ばれる)を不均一触媒として用いるポリエステルアルコールの製造方法が記載されている。このような触媒は公知であり、反応性水素原子をもつ化合物にアルキレンオキシドを添加してポリエーテルアルコールを製造する触媒としてしばしば用いられている。ポリエステルアルコールの製造において、DMC触媒は触媒能が不十分であり、均一な生成物を得ることができないため不適当であることがわかった。
【0015】
EP1679322には、多官能性アルコールを多官能性カルボン酸と反応させるポリエステルの製造方法が記載されている。金属ケイ酸塩が触媒として使用されている。この文書に記載の生成物はポリエステルアルコールではなく、むしろ熱可塑性生成物である。上記の触媒の使用で、非常に高分子量の生成物の製造が容易になると述べられている。また、生成物の熱可塑的加工での挙動と最終製品の機械的性質が改善されるという。特に、加工中の生成物の熱劣化性が低下すると言われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、不均一触媒を用いるポリエステルアルコールの触媒的製造方法であって、単純で安価な方法を開発することである。この方法は、複雑な後処理なしでポリウレタンの製造に使用可能な、無色で触媒を含有しない生成物を与える。また、これらの触媒が、固定床として使用できる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
驚くべきことに、本目的は、ポリエステルアルコールの製造用触媒としてゼオライトを使用することで達成できる。
【0018】
従って、本発明は、少なくとも一種の多官能性カルボン酸と少なくとも一種の多官能性アルコールとの触媒反応による及び/又は触媒の存在下での環状エステルの触媒的開環重合によるポリエステルアルコールの製造方法であって、ゼオライトを触媒として用いることを特徴とする方法を提供する。
【0019】
本発明の方法のある実施様態においては、モノマーからポリエステルアルコールへの全体の反応が、ゼオライトを用いて行われる。
【0020】
しかしながら、この反応の一部のみを、ゼオライトを使用して行うことも可能である。この反応の残りの部品は、触媒の非存在下で行われるか、他のエステル化触媒の存在下で行われる。
【0021】
周知のように、ゼオライトは、規則的な流路と空孔開口部がマイクロポア領域にあるかご状構造をもつ結晶性のアルミノケイ酸塩である。IUPAC(国際純正応用化学連合)によると、マイクロポアとは、その直径が2nmより小さな空孔をいう。このようなゼオライトの骨格は、共通の酸素ブリッジでつながったSiO四面体とAlO四面体である。また、ゼオライトと同様な構造を有するAlPOやMeAPO、MeAPSOなどのPO四面体とAlO四面体からなるアルミノリン酸塩と、ゼオライトと同様な構造を有するZIFなどの金属イミダゾラートがある。ゼオライトと同様なこれらの材料もすべて本発明の範囲内に含まれる。既知の構造の概説が、Ch. Baerlocher, W.M. Meier, D.H. Olson, 「ゼオライト骨格種の図解」, 第5版、Elsevier, 2001に見られる。
【0022】
まったくアルミニウムを含まず、Ti(IV)としてのチタンがケイ酸塩格子中のSi(IV)を置き換えているゼオライトも知られている。これらのチタンゼオライト、特にMFI型の結晶構造をもつものとそれらの可能な製造方法が、例えばEP−A311983またはEP−A405978に記載されている。ケイ素とチタンに加えて、これらの材料は、さらに他の元素を含むこともでき、例えばアルミニウムやジルコニウム、ゲルマニウム、スズ、鉄、コバルト、ニッケル、ガリウム、ホウ素または少量のフッ素を含むことができる。
【0023】
ゼオライトとして、チタンを含むもの(以下、チタンゼオライトと呼ぶ)を使用することが好ましい。したがって「チタンゼオライト」は、酸化ケイ素に加えて少量のチタンをゼオライト構造中に含んでいる材料をいう。
【0024】
好ましいチタンゼオライトは、その構造内にペンタシル単位を、例えばMFI、MEL、BEA、MOR、MWW構造をもつものであり、特にX線結晶学的にMFIやMOR、BEA、MWW、RRO、LEV、FER構造に帰属可能な型を持つものであり、特にMFI構造、MEL構造または混合MFI/MEL構造に帰属可能な型のものである。この種のゼオライトは、例えば、「ゼオライト骨格種の図解」, Ch. Baerlocher, W.M. Meier, D.H. Olson, 第5版、Elsevier, 2001に記載されている。
【0025】
上記のチタンゼオライトは、通常SiO源と、二酸化チタンまたはチタンアルコキシドなどのチタン源と、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシドなどの上記構造を形成するための窒素含有有機テンプレートとの水混合物を、必要ならアルカリ金属化合物とともに、圧力容器中で高温で数時間から数日反応させて結晶性生成物を形成して製造される。この生成物を、例えばろ過により分離し、洗浄、乾燥し、高温で焼成して有機態窒素基剤を除く。本発明のポリエステルアルコール製造用触媒では、チタンのケイ素+チタンの合計に対するモル比が、一般的には0.01:1〜0.1:1の範囲である。このようにして得られる粉末中では、このチタンが少なくとも部分的に、オライト骨格内で交互4配位、5配位または6配位で存在している。MFI構造をもつチタンゼオライトは、特定のX線回折パターンで、また約960cm−1での赤外(IR)領域における骨格振動バンドで同定でき、従ってアルカリ金属チタネートまたは結晶性及び非晶性のTiO相とは異なっていることが知られている。
【0026】
このようにして製造されるチタンゼオライトは、粉末、噴霧乾燥凝集物、あるいは押出品や破砕物、リング、中空円筒、球またはペレットなどの成型物の形で使用できる。成型プロセスとしては、原理的には、触媒製造に一般的には用いられているすべての適当な成型方法を使用可能である。成型が通常の押出機内での押出成型で行われて、例えば直径が通常1〜10mm、特に2〜5mmである押出品を与えるプロセスが好ましい。バインダー及び/又は助剤が必要な場合、押出成型の前に混合または混練プロセスを行うことが好ましい。適当なら、押出成型の後で焼成工程が行われる。得られる押出品は必要なら微粉砕することができ、粒子径が0.1〜5mmである、特に0.5〜2mmである顆粒または破砕物とすることが好ましい。
【0027】
好適なバインダーは、原理的にはこのような目的に使用されるすべての化合物である。ケイ素やアルミニウム、ホウ素、リン、ジルコニウム及び/又はチタンの化合物、特に酸化物が、またモンモリロナイトやカオリンやベントナイトまたは他のゼオライトなどの粘土が好ましい。成型工程においてシリカゾルとして導入可能な、あるいはテトラアルコキシシランの形の二酸化ケイ素が、バインダーとして特に興味がある。この圧縮成型プロセス用の助剤としては、例えば押出成型助剤があげられる。従来から使用されている押出成型助剤はメチルセルロースである。このような薬剤は通常、続く焼成工程で完全に燃焼除去される。
【0028】
成型体に加工された触媒は、触媒の総質量に対して最大で50重量%のバインダーを含むが、このバインダー含量は0.1〜30重量%が好ましく、2〜25重量%が特に好ましい。
【0029】
これらの触媒は、一般的には使用前に高温で、好ましくは100〜800℃で、特に好ましくは200〜600℃で、また当業界の熟練者には公知の他の条件で活性化される。多くの場合、これらの触媒は、空気との反応で、希薄空気、即ち窒素と酸素の混合物で酸素含量が空気より少ないものとの反応で、あるいは有機溶媒または水での抽出または洗浄で再生可能である。
【0030】
粉末として用いる場合、これらの触媒は、好ましくはポリエステルアルコールの重量に対して0.001〜1重量%の量で用いられる。触媒の量は、好ましくはポリエステルアルコールの重量に対して0.15〜0.25重量%の範囲である。
【0031】
この反応の後、触媒を生成物から除く。これは濾過で行うことが好ましい。
【0032】
精製の後、このポリエステルアルコールは、通常1ppm未満のチタンと100ppm未満のケイ素を含み、好ましくは0.5ppm未満のチタンと50ppm未満のケイ素を、特に好ましくは0.2ppm未満のチタンと20ppm未満のケイ素を、特に0.1ppm未満のチタンと10ppm未満のケイ素を含む。
【0033】
分離した触媒は本方法で再使用できる。なお、再使用の前に、残留するポリエステルアルコールを除くこともできる。
【0034】
原則としてこの触媒をポリエステルアルコール中に残してもよいが、ポリウレタンへの、特に熱可塑性ポリウレタン(TPU)への更なる加工の際に問題を引き起こすことがあるので、触媒を残留させないほうがよい。
【0035】
上記触媒の存在下におけるこれら出発原料のポリエステルアルコールへの変換は、この目的に通常用いられている条件で行われる。
【0036】
上述のように、これらのポリエステルアルコールの製造は、多官能性カルボン酸と多官能性アルコールとの反応で行うことが好ましい。
【0037】
これらのポリエステルアルコールの製造を、一段で行っても二段で行ってもよい。単一段プロセスでは、カルボン酸とアルコールのエステル化が全反応中で行われ、最終のポリエステルアルコールが分離される。二段反応では、第一段a)で、あるポリエステルアルコールが製造され、第二段b)でこれが更なるカルボン酸とアルコールまたはポリエステルアルコールと反応させられる。
【0038】
反応の全体または一部を、ゼオライト触媒を用いて行うことができる。二段反応の場合、一段でゼオライト触媒を使用し、他の段では他の触媒を用いることができる。この手法を用いる場合、第2段はゼオライト触媒を用いて行うことが好ましい。
【0039】
所望の用途によっては、本発明の方法で製造されるポリエステルアルコールのヒドロキシル価が20〜400mg−KOH/gの範囲となる。軟質ポリウレタンフォームと多孔性または熱可塑性ポリウレタンエラストマーの製造に用いられるポリエステルアルコールのヒドロキシル価は、20〜250mg−KOH/gの範囲であることが好ましい。硬質ポリウレタンフォームに用いられるポリエステルアルコールのヒドロキシル価は、好ましくは100mg−KOH/gより大きく、特に100〜400mg−KOH/gの範囲である。
【0040】
多官能性カルボン酸として、通常脂肪族ジカルボン酸が、好ましくはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン二酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸が、あるいはフタル酸、イソフタル酸またはテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸が用いられる。これらのジカルボン酸は単独で用いても、相互の混合物として用いてもよい。上記ジカルボン酸に代えてあるいはこれらと混合して、相当するジカルボン酸誘導体を、例えば1〜4個の炭素原子をもつアルコールとのジカルボン酸エステルまたは無水フタル酸などの無水物を使用することもできる。
【0041】
好適なポリヒドロキシル化合物は、すべての少なくとも二価のアルコールであるが、エチレングリコールやジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどのジオール成分が好ましい。ポリエステルアルコールの官能価を上げるために、3官能性以上の機能的アルコールを使用することもできる。このようなアルコールの例としては、グリセロールやトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールがあげられる。少なくとも2個のヒドロキシル基をもつオリゴマー状またはポリマー状製品を使用することもできる。このような製品の例としては、ポリテトラヒドロフランやポリラクトン、ポリグリセロール、ポリエーテルオール、ポリエステルオール、α−ω−ジヒドロキシポリブタジエンがあげられる。
【0042】
ポリエステルアルコールを製造するには、上記有機ポリカルボン酸及び/又は誘導体と多価アルコールとを、モル比が1:1〜2.1で、好ましくは1:1.05〜1.9で重縮合することが好ましい。
【0043】
上述のように、単一段でのポリエステルアルコールの製造、あるいは二段でのポリエステルアルコールの製造の反応工程a)は、水を除去しながら多官能性カルボン酸と多官能性アルコールを反応させて行われる。加工工程a)は攪拌器と蒸留塔を備えた攪拌槽反応器を用いて行うことが好ましい。この装置は一般的には閉鎖系であり、一般的には真空ポンプで減圧とされる。これらの出発原料を撹拌下で加熱し、好ましくは空気を除きながら(例えば、窒素雰囲気中または減圧下で)加熱する。重縮合で生成する水を、低圧で、あるいは連続的な減圧により(Batchwise Vacuum−Melt−Verfahren(回分的真空溶融プロセス), Houben−Weyl 14/2, 2を参照)除くことが好ましい。
【0044】
反応温度は160〜280℃の範囲であることが好ましい。反応中圧力を徐々に下げて、最終圧力を200mbarとすることが好ましい。この圧力ではこの反応が所望変換度にまで進行する。
【0045】
単一段法では、全体の反応をゼオライト触媒を用いて行うことが好ましい。反応中に異なる触媒を使用することもできるが、この実施様態は好ましくない。単一段で製造されるポリエステルアルコールは通常上記のヒドロキシル価と酸価として2mg−KOH/g未満の値をもつ。
【0046】
ポリエステルアルコールの二段での製造の場合、工程a)の反応生成物の数平均分子量が200g/mol〜10000g/molの範囲であることが好ましく、特に500〜5000g/molの範囲であることが好ましい。
【0047】
工程a)で得られる基本ポリエステルアルコールの酸価は、好ましくは10g−KOH/kg未満であり、より好ましくは5g−KOH/kg未満、特に2g−KOH/kg未満である。酸価は、ポリエステルオール中のフリー有機酸含量の尺度となるこの酸価は、1g(または1kg)の試料を中和するのに消費されるKOHのmg数(またはKOHのg数)で求められる。
【0048】
使用原料によっては、工程a)で得られる基本ポリエステルアルコールの官能価が1.9〜4.0の範囲となり、より好ましくは2.0〜3.0の範囲となる。
【0049】
上述のように工程a)をゼオライト触媒を用いて行うことができる。しかしながら、触媒を使用せずにあるいは通常のエステル化触媒を用いて行うこともできる。通常のエステル化触媒の例としては、好ましくはチタンテトラブトキシドやスズジオクトエートまたはジブチルスズジラウレートなどの有機金属化合物、硫酸やパラトルエンスルホン酸などの酸、または水酸化カリウムまたはナトリウムメトキシドなどの塩基があげられる。これらのエステル化触媒は、一般的には均一であり、一般的には反応の終了後ポリエステルアルコール中に残留する。この反応は160〜280℃で、好ましくは200〜260℃で行われる。
【0050】
二段プロセスの第二加工工程(工程b))は、すべてゼオライト触媒により行うことが好ましい。工程b)での反応は、
1.グリコール分解のないゼオライト触媒によるエステル交換であるか、
2.エステル交換のないゼオライト触媒によるグリコール分解、または
3.ゼオライト触媒によるエステル交換とゼオライト触媒によるグリコール分解の両方を含む混合反応である。
【0051】
ゼオライト触媒によるエステル交換(No.1参照)において、工程a)からの2種以上の基本ポリエステルアルコールが十分な量のゼオライト触媒と混合されるが、この場合、多官能性ポリヒドロキシ化合物(ジオールやグリコール)を添加しない。この結果、理想的な場合、用いたすべての基本ポリエステルアルコールのモノマーからなるランダムコポリマーである新たなポリエステルオールが得られる。
【0052】
ゼオライト触媒によるグリコール分解では、工程a)からの一種のみの基本ポリエステルアルコールが、一種以上のポリヒドロキシ化合物、好ましくはジオールまたはポリオールと、また適当な量のゼオライト触媒と反応させられる。この場合、この基本ポリエステルアルコールの平均分子量は、一般的にはエステル結合の一部のグリコール分解あるいはアルコール分解で低下する。
【0053】
あるいは、加工工程b)において、ゼオライト触媒によるエステル交換とゼオライト触媒によるグリコール分解またはアルコール分解とを含む混合反応が起こりうる。ここでは、工程a)からの少なくとも2種の基本ポリエステルアルコールの混合物と少なくとも一種の多官能性のポリヒドロキシ化合物、好ましくはジオールまたはポリオールとが、適当量のゼオライト触媒により反応する。加工工程b)のこの実施様態における基本ポリエステルアルコールの平均分子量等のパラメーターの変化、例えば粘度、酸価または融点の変化は、この特定の場合に用いる成分に依存し、特に用いる基本ポリエステルアルコールの種類と量にまた用いるポリヒドロキシ化合物の種類と量に依存する。
【0054】
工程b)からの最終生成物の特性は、工程b)でのエステル交換またはグリコール分解が完全に進行したかどうかによる。工程b)でエステル交換またはグリコール分解が完了するかどうかは、今度は反応時間に依存し、反応時間が長くなるとエステル交換またはグリコール分解が完全となる。エステル交換工程b)の反応時間は、最終的に得られるポリエステルアルコールが、従来の単一段高温重縮合プロセスで製造されたポリエステルアルコールに特性に非常に類似した特性をもつように選ばれることが好ましい。工程b)のエステル交換またはグリコール分解の反応時間は1〜36時間であってよく、好ましくは2〜24時間である。
【0055】
加工工程a)と同じように、加工工程b)での反応を溶媒の存在下で行ってもよく、溶媒の非存在下で行ってもよい(「バルク」反応)。
【0056】
加工工程b)での反応を溶媒の存在下で行う場合、あらゆる既知の適当な溶媒が使用可能であり、特にトルエンやジオキサン、ヘキサン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、キシレン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、クロロホルムなどの溶媒が使用可能である。このような場合、溶媒の選択は、用いる出発原料(基本のポリエステルアルコールとポリヒドロキシ化合物)に依存し、特にこれらの溶解度特性に依存する。しかしながら、溶媒の存在下での加工工程b)の反応は、他の加工段階を含むという、即ち少なくとも一種の基本ポリエステルアルコールを溶媒中に溶解する工程と反応後の溶媒を除去する工程を含むという欠点を持っている。また、基本ポリエステルアルコールの疎水性によっては、この少なくとも一種の基本ポリエステルアルコールの溶媒への溶解に問題があり、収率を低下させることがある。
【0057】
本方法の他の好ましい実施様態においては、加工工程b)を、基本ポリエステルアルコールと、また適当なら他のポリヒドロキシル化合物を、両者が一緒となって水分率が0.1重量%未満として、好ましくは0.05重量%未満、より好ましくは0.03重量%未満、特に0.01重量%未満として用いて行なうことが好ましい。加工工程b)での水分率が高いとエステル交換に加えて加水分解が起こることがあり、その結果として工程b)中でポリエステルアルコールの酸価が望ましくないように増加することがある。従って、本発明の方法の工程b)を0.1重量%未満、好ましくは0.05重量%未満、より好ましくは0.03重量%未満、特に0.01重量%未満の水分率で行うと、最終生成物として低酸価のスペシャリティーポリエステルアルコールを形成することとなる。遊離の酸基は逆反応を、即ち加水分解を触媒するため、一般的には低酸価のポリエステルアルコールが、高酸価のポリエステルアルコールより加水分解に対して安定である。
【0058】
水分率が0.1重量%を超えるポリエステルアルコールを製造すると、酸価が10mg−KOH/gを超えるポリエステルアルコールとなる。しかしながら、このような高酸価(10mg−KOH/gを超える)のポリエステルアルコールは不適当であり、多くの工業用用途、特にポリエステルアルコールの製造用途にはあまり適していいない。
【0059】
大気の湿度と温度によっては、ポリエステルアルコールが少なくとも0.01重量%の水を取り込むことがあり、一般的には少なくとも0.02重量%の、多くの場合0.05重量%を超える量の水を取り込むことがある。用いる基本ポリエステルアルコールの変換度と分子量によっては、この水濃度が平衡水濃度より大きくなることがある。加工工程b)の前にこのポリエステルアルコールを乾燥させないと、不可避的にポリエステルアルコールの加水分解が起こる。
【0060】
したがって、加工工程b)でのエステル交換の前に、工程b)で用いる基本ポリエステルアルコールの水分率を乾燥により低下させることが好ましい。上述のエステル交換中の低水分率を達成するために、用いるいずれの多官能性ポリヒドロキシル化合物、例えばジオールも、エステル交換反応の前に乾燥させることが好ましい。乾燥は、先行技術に公知の通常の乾燥方法で実施可能で、例えばモレキュラーシーブ上で、あるいは流下液膜式蒸発器による乾燥で実施可能である。あるいは、加工工程a)の反応と少なくともいずれか一種の基本ポリエステルアルコールの一時的な貯蔵とを、完全に不活性な条件下で、例えば不活性ガス雰囲気中、好ましくは窒素雰囲気中で行うことでも、低水分率の、好ましくは水分率が0.1重量%未満の、より好ましくは0.05重量%未満、より好ましくは0.03重量%未満、特に0.01重量%未満の基本ポリエステルアルコールを得ることができる。この場合、これらの基本ポリエステルアルコールは、初めより環境から比較的多量の水を吸収する機会がない。この場合は、さらなる乾燥工程は不必要である。
【0061】
本方法の他の好ましい実施様態においては、加工工程a)からの少なくとも一種の基本ポリエステルアルコールは、したがって、加工工程b)中での反応の前に水分率を低く保つために不活性ガス雰囲気中で一時的に保存することが好ましい。エステル交換後またいずれか他のポリヒドロキシ化合物によるグリコール分解後に非常に特異な物理的性質をもち、また特定の構造をもつ特定のスペシャリティーポリエステルアルコールを得るために、一時的に保存されている2種以上の基本ポリエステルアルコールから適当な比率で、2種以上の基本ポリエステルアルコールの混合物にまとめることができる。
【0062】
本発明の二段方法で製造されたポリエステルアルコールは、一般的には比較的に小さな酸価をもち、具体的には好ましくは3mg−KOH/g−ポリエステルオール未満の酸価を、より好ましくは2mg−KOH/g−ポリエステルオール未満の、特に1mg−KOH/g−ポリエステルオール未満の酸価をもつ。
【0063】
特に加工工程b)が好ましくは水分率が0.1重量%で未満で行われると、より好ましくは0.05重量%未満で、より好ましくは0.03重量%未満、特に0.01重量%未満で行われると、このような低値の実現が確実となる。
【0064】
上述のように、これらのポリエステルアルコールは、環状エステルの、好ましくはラクトン、特にε−カプロラクトンの開環重合で製造することもできる。これらの環状エステルは、単独で用いても、上記の出発原料との混合物として用いてもよい。
【0065】
加工工程a)を実施するのに、従来の高温重縮合(ウルマン工業化学辞典(電子版),章:ポリエステル,文節:ポリウレタンの中間体としてのポリエステルを参照)での使用が知られているすべての反応器を使用することができる。
【0066】
加工工程b)は、通常50〜160℃の温度範囲で、好ましくは大気圧下で行われる。この反応は、好ましくは不活性雰囲気中で水分を除きながら、例えば反応混合物の上に窒素を流しながら行われる。加工工程b)は、加熱された攪拌槽または固定床反応器中で行うことが好ましい。本発明の方法は、回分的に行っても半連続的または連続的に行ってもよい。
【0067】
本発明の方法で製造されたポリエステルアルコールは、イソシアネートと反応させてポリウレタンを、例えば硬質ポリウレタンフォーム、軟質ポリウレタンフォーム、靴底などの一体発泡体を製造することが好ましい。特に好ましい利用分野は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPUとも称す)の製造である。
【0068】
ポリウレタンの製造方法は、同様に一般に公知である。例えば、熱可塑性ポリウレタンは、触媒及び/又は通常の助剤の存在下あるいは非存在下で、ジイソシアネートと、少なくとも2個のイソシアネート基反応性の水素原子をもつ化合物、好ましくは二官能性アルコールと、また適当なら分子量が50〜499である連鎖延長剤とを反応させて製造できる。
【0069】
ジイソシアネートとしては、通常の芳香族、脂肪族、脂環式及び/又は芳香脂肪族イソシアネートが使用でき、好ましくは、ジフェニルメタン2,2’−、2,4’−及び/又は4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン1,5−ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニルジイソシアネート、1,2−ジフェニルエタンジイソシアネート及び/又はフェニレンジイソシアネート、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン及び/又はオクタメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、2−エチルブチレン1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、ブチレン1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1−メチルシクロヘキサン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4−、2,4−及び/又は2,2’−ジイソシアネート(H12MDI)、2,6−ジイソシアナト−ヘキサンカルボン酸エステル、1,4−及び/又は1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキサン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート及び/又はジシクロヘキシルメタン4,4’−、2,4’−及び2,2’−ジイソシアネート、好ましくはジフェニルメタン2,2’−、2,4’−及び/又は4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン1,5−ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’−、2,4’−及び/又は2,2’−ジイソシアネート(H12MDI)、及び/又はIPDIなどのジイソシアネートが使用でき、特に4,4’−MDI及び/又はヘキサメチレンジイソシアネート及び/又はH12MDIが使用できる。
【0070】
イソシアネートに反応性の化合物としては、上述のように本発明のポリエステルアルコールが使用される。これらと混合して、公知のイソシアネート反応性化合物を、例えばポリエステルオールやポリエーテルオール及び/又はポリカーボネートジオール(通常、総称して「ポリオール」を呼ばれる)で、分子量が500〜12000g/molで、好ましくは600〜6000g/mol、特に800〜4000g/molであり、好ましくは平均官能基数が1.8〜2.3、好ましくは1.9〜2.2、特に2であるものを使用することができる。このイソシアネート反応性化合物として、本発明のポリエステルアルコールのみを使うことが好ましい。
【0071】
イソシアネート反応性化合物には、鎖延長剤も含まれる。鎖延長剤としては、公知の脂肪族、芳香脂肪族、芳香族及び/又は脂環式化合物で分子量が50〜499のものを使用でき、好ましくはアルキレン基中に2〜10個の炭素原子をもつアルカンジオール(好ましくは1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−プロパン−ジオール、1,2−エチレングリコール)及び/又は3〜8個の炭素原子をもつジアルキレンやトリアルキレン、テトラアルキレン、ペンタアルキレン、ヘキサアルキレン、ヘプタアルキレン、オクタアルキレン、ノナアルキレン及び/又はデカアルキレングリコールなどの二価の化合物を使用でき、好ましくは非分岐アルカンジオール、特に1,3−プロパンジオールや1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールを使用することができる。
【0072】
ジイソシアネートのNCO基と構成成分のヒドロキシル基との間の反応を加速する触媒が通常用いられる。これらは、先行技術で既知の通常の第三級アミンであり、例えばトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N,N’−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等であり、特にチタン酸エステルなどの有機金属化合物や、鉄(III)アセチルアセトネートなどの鉄化合物、スズジアセテートやスズジオクトエート、スズジラウレートなどのスズ化合物、またはジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレートなどの脂肪族カルボン酸のジブチルスズ塩などである。これらの触媒は、通常100重量部のポリヒドロキシル化合物に対して0.00001〜0.1重量部の量で使用される。
【0073】
触媒とは別に、通常使用されている助剤を構成成分に添加することもできる。例としては、表面活性物質や、難燃剤、核剤、潤滑剤や離型剤、染料や顔料、阻害剤、加水分解、光、熱、酸化または変色に対する安定剤、微生物劣化の保護剤、無機及び/又は有機充填材、強化材、可塑剤があげられる。
【0074】
上述の助剤や添加物に関するさらなる詳細が専門文献中に、例えば「プラスチック添加剤ハンドブック」、第5版, H. Zweifel編、Hanser Publishers, Munich, 2001に記載されている。本明細書中に記載の分子量の単位はすべて[g/mol]である。
【0075】
TPUの硬度を調整するため、構成成分のポリオールと鎖延長剤の量は、比較的広いモル比の範囲で変更可能である。ポリオールの用いられる総鎖延長剤に対するモル比は、10:1〜1:10であることが、特に1:1〜1:4であることが有用であるとわかった。なお、TPUの硬度は、鎖延長剤の量の増加と共に上昇する。
【0076】
ポリウレタンの製造は、既知の方法で、例えばワンショットまたはプレポリマープロセスで、好ましくはワンショットプロセスで反応押出機またはベルトプロセスを用いて行うことができ、回分的に行っても連続的に行ってもよい。プレポリマープロセスでは、反応するイソシアネートやポリオール、適当なら連鎖延長剤や触媒及び/又は助剤の成分を、逐次または同時に相互に混合し、直ちに反応を始めることができる。押出機プロセスでは、イソシアネートとポリオール、適当なら連鎖延長剤と触媒及び/又は助剤の構成成分が、個別にまたは混合物として押出機に導入され、通常100℃〜280℃の温度で、好ましくは140℃〜250℃の温度で反応させられる。得られるTPUを押し出し、冷却し、ペレット化する。
【0077】
驚くべきことに、本発明の方法により、これらのポリエステルアルコールの製造に必要な反応時間を短縮させることができた。これらのポリエステルアルコールは、改善された貯蔵安定性と低い色数を示す。ポリエステルアルコールを用いて製造されたポリウレタンの加工特性及び物性に欠点は見られなかった。
【0078】
本発明を以下の実施例で説明する。
【0079】
実施例1 ゼオライト押出品の製造
パンミル中で3.0kgのチタンゼオライト粉末を、2.5kgのルドックス(R)AS40と3.83kgの33.5%ポリスチレン分散液と120gのワロセル(R)と40gのポリエチレンオキシドと1000gの水と、65分間混合した。次いでこの混合物を140barの圧力で押し出して1.5mmの押出品を得た。この押出品を120℃で16時間乾燥し、さらに大気下、490℃で5時間熱処理した。この結果、3.75kgのTi含量が1.5%でSi含量が44.0%である押出品を得た。
【0080】
ポリエステルアルコールの製造
比較例1
6040.1gのアジピン酸と1406.8gのエチレングリコールと2042.6gの1,4−ブタンジオールと1ppmのチタンテトラブトキシドと5ppmのオクタン酸スズを、容量が12リットルの丸底フラスコ中に投入した。この混合物を撹拌下で180℃まで加熱し、この温度で3時間維持した。生成する水は蒸留で除いた。
次いでこの混合物を240℃まで加熱し、この温度で40mbarの減圧下で、酸価が1mg−KOH/g未満となるまで維持した。
得られる無色の液体ポリエステルアルコールは、以下の特性を有していた。
ヒドロキシル価:56.5mg−KOH/g
酸価:0.10mg−KOH/g 粘度:670mPa・s(75℃)
水分率:0.04%
色数:64APHA/Hazen
サイクル時間:14時間
ポリエステルアルコール中の金属含量: Ti:0.21ppm; Sn:1.2ppm
【0081】
比較例2
5301.6gのアジピン酸と1586.4gの1,6−ヘキサンジオールと2419.5gの1,4−ブタンジオールと10ppmのオクタン酸スズを、容量が12リットルの丸底フラスコに投入した。この混合物を撹拌下で180℃まで加熱し、この温度で3時間維持した。生成する水は蒸留で除いた。
次いでこの混合物を240℃まで加熱し、この温度で40mbarの減圧下で、酸価が1mg−KOH/g未満となるまで維持した。
得られる無色の液体ポリエステルアルコールは、以下の特性を有していた。
ヒドロキシル価:56mg−KOH/g
酸価:0.27mg−KOH/g
粘度:690mPa・s(75℃)
水分率:0.1%
色数:50APHA/Hazen
サイクル時間:11時間
ポリエステルアルコール中の金属含量: Sn:2.6ppm
【0082】
実施例1
6040.1gのアジピン酸と1406.8gのエチレングリコールと2042.6gの1,4−ブタンジオールと18.9gのチタンゼオライト触媒を、容量が12リットルの丸底フラスコ中に投入した。この混合物を撹拌下で180℃まで加熱し、この温度で3時間維持した。生成する水は蒸留で除いた。
次いでこの混合物を240℃まで加熱し、この温度で40mbarの減圧下で、酸価が1mg−KOH/g未満となるまで維持した。
濾過でチタンゼオライト触媒を除去すると、以下の特性を持つ無色の液体ポリエステルアルコールが得られた。
ヒドロキシル価:57mg−KOH/g
酸価:0.1mg−KOH/g
粘度:660mPa・s(75℃)
水分率:0.05%
色数:12APHA/Hazen
サイクル時間:10時間
ポリエステルアルコール中の金属含量: Ti:<0.1ppm
【0083】
実施例2
5301.6gのアジピン酸と1586.4gの1,6−ヘキサンジオールと2419.5gの1,4−ブタンジオールと18.6gのチタンゼオライト触媒を、容量が12リットルの丸底フラスコ中に投入した。この混合物を撹拌下で180℃まで加熱し、この温度で3時間維持した。生成する水は蒸留で除いた。
次いでこの混合物を240℃まで加熱し、この温度で40mbarの減圧下で、酸価が1mg−KOH/g未満となるまで維持した。
濾過でチタンゼオライト触媒を除去すると、以下の特性を持つ無色の液体ポリエステルアルコールが得られた。
ヒドロキシル価:56mg−KOH/g
酸価:0.51mg−KOH/g
粘度:680mPa・s(75℃)
水分率:0.04%
色数:18APHA/Hazen
サイクル時間:9時間
ポリエステルアルコール中の金属含量: Ti:<0.1ppm
【0084】
【表1】

【0085】
表1から、本発明の方法で製造したポリエステルオールが短サイクル時間で製造可能であり、本発明の方法で製造されたポリエステルオールの変色が少ないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種の多官能性カルボン酸と少なくとも一種の多官能性アルコールとの触媒反応による及び/又は触媒の存在下での環状エステルの触媒的開環重合によるポリエステルアルコールの製造方法であって、ゼオライトを触媒として用いることを特徴とする方法。
【請求項2】
上記ゼオライトがチタンゼオライトである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記ゼオライトが、エックス線結晶学的に、「ゼオライト骨格種の図解」、Ch. Baerlocher, W.M. Meier, D.H. Olson, 第5版、Elsevier, 2001に記載のMFI、MOR、BEA、MWW、RRO、LEV、FER、MEL構造または混合MFI/MEL構造に帰属される請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
上記ゼオライトが、エックス線結晶学的に、「ゼオライト骨格種の図解」、Ch. Baerlocher, W.M. Meier, D.H. Olson, 第5版、Elsevier, 2001に記載のMFI構造、MEL構造または混合MFI/MEL構造に帰属される請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
上記反応全体がチタンゼオライトの存在下で行われる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記チタンゼオライトが固定床として用いられる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記チタンゼオライトが粉末として用いられる請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記反応が二段で行われ、
a)いずれの場合も少なくとも一種のジカルボン酸を、いずれの場合も少なくとも一種のポリヒドロキシル化合物と反応させて少なくとも一種の基本ポリエステルアルコールを製造する工程と、
b)工程a)からの生成物または工程a)からの生成物の混合物を、必要なら他のポリヒドロキシル化合物と混合して、チタンゼオライトと反応させる工程
とからなる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程a)がエステル化触媒の存在下で行われる請求項7に記載の方法。
【請求項10】
工程a)が、トルエンスルホン酸と有機金属化合物からなる群から選ばれるエステル化触媒の存在下で行われる請求項8に記載の方法。
【請求項11】
上記有機金属化合物がチタン系またはスズ系の化合物である請求項8に記載の方法。
【請求項12】
上記有機金属化合物が、チタンテトラブトキシドまたはオクタン酸スズ(II)、ジブチルスズジラウレート及び/又は塩化スズである請求項8に記載の方法。
【請求項13】
工程b)が連続的に行われる請求項7に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項により製造されるポリエステルアルコール。
【請求項15】
請求項14に記載のポリエステルアルコールのポリウレタンの製造のための利用。

【公表番号】特表2013−502475(P2013−502475A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525155(P2012−525155)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061895
【国際公開番号】WO2011/020815
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】