説明

ポリエステルフィルムの製造方法

【課題】 重剥離力領域における剥離力のコントロールが容易で、平坦なフィルム表面においても良好な滑り性を有し、シリコーン離型層とポリエステルフィルムの界面での密着性不良の懸念がない、例えば、プリント配線基盤の絶縁層成型用、セラミック製品製造分野(セラミック積層コンデンサー等)、粘着剤層保護用として好適な離型フィルムを安価に提供する。
【解決手段】 フィルム表面のSi量が0.50g/m以下である、シリコーン成分を含有するポリエステルからなるフィルムの製造方法であって、幅方向の両端部にシリコーンを含有しないポリエステルを用い、中央部にシリコーン含有ポリエステルを用いて共押出された未延伸シートを少なくとも一軸方向に延伸した後、両端部を除去することを特徴とするポリエステルフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は離型性を有するポリエステルフィルムの製造方法に関し、詳しくは、シリコーン成分を含有するポリエステルを用いてフィルムに離型性を付与し、シート成形用(グリーンシート成形用等)、粘着用(ラベル用、医療用、事務用品用等)等、各種離型性を必要とするフィルムの製造方法に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、離型性を有する塗布層では得ることが困難である、重剥離領域の離型フィルムを安価に提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、成形用、粘着用等として、離型フィルムが種々の分野で使用されているが、離型フィルムの問題点として離型層を塗布する工程があるために、製造コストが高くなってしまう。また、重剥離領域の離型フィルムを得るために架橋剤を増加させた場合は、セパレーターエージングによる軽剥離化となってしまったり、重剥離コントロール剤を用いた場合では、基材への密着性を低下させたり、剥離力の安定性に劣ったりする等の問題がある。また、塗布厚さを薄くする方法では、塗布厚さが非常に薄いため、剥離力のコントロールが難しく、塗布欠陥が発生しやすい等の問題がある。
【0003】
さらに、離型層の構成材料として汎用的に用いられているシリコーンは、ポリエステルフィルムとの密着性が悪いため、密着性の良い離型フィルムを得るためには、予めポリエステルフィルムに易接着層を設けたポリエステルフィルムを用いる必要がある。また、ポリエステルフィルムに滑り性を与えるために、フィルム中に無機粒子などを添加し、フィルム表面に微小突起を形成させるが、セラミック積層コンデンサー等の小型電子部品などに用いられる場合は、その微小突起が欠陥となるなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−152137号公報
【特許文献2】特開平5−32802号公報
【特許文献3】特開昭61−136572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記実状に鑑みなされたものであり、その解決課題は、重剥離力領域における剥離力のコントロールが容易で、平坦なフィルム表面においても良好な滑り性を有し、シリコーン離型層とポリエステルフィルムの界面での密着性不良の懸念がない、例えば、プリント配線基盤の絶縁層成型用、セラミック製品製造分野(セラミック積層コンデンサー等)、粘着剤層保護用として好適な離型フィルムを安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題に取り組み鋭意検討した結果、ある特定の構成からなるポリエステルフィルムの製造方法によれば、離型用として優れた特性を有するフィルムを提供することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、フィルム表面のSi量が0.50g/m以下である、シリコーン成分を含有するポリエステルからなるフィルムの製造方法であって、幅方向の両端部にシリコーンを含有しないポリエステルを用い、中央部にシリコーン含有ポリエステルを用いて共押出された未延伸シートを少なくとも一軸方向に延伸した後、両端部を除去することを特徴とするポリエステルフィルムの製造方法に存する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造法により得られる離型フィルムはコートタイプの離型フィルムでは得ることのできない重剥離領域の剥離力を有し、ポリエステルフィルムと離型層の密着性不良の問題も無く、離型層をコートする工程が省略できるため製造コストの低減ができ、例えば、プリント配線基盤の絶縁層成型用、セラミック製品製造分野(セラミック積層コンデンサー等)、粘着剤層保護用等、各種離型用として好適であり、その工業的価値は極めて高い。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で言うポリエステルとは、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸のような芳香族ジカルボン酸またはそのエステルとエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのようなグリコールとを重縮合させて製造されるポリエステルである。
【0010】
これらの酸成分とグリコール成分とからなるポリエステルは、通常行われている方法を任意に採用して製造することができる。例えば、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとの間でエステル交換反応を行わせる方法、芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接エステル化して実質的に芳香族ジカルボン酸のビスグリコールエステル、またはその低重合体を形成させ、次いでこれを減圧下240℃以上の温度で重縮合させる方法等が採用される。この際、通常の触媒、安定剤、各種添加剤等を任意に使用することができる。本発明で用いるポリエステルの代表例としては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートあるいはポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート等が挙げられる。これらのポリエステルは、ホモポリマーであっても第三成分を少量共重合させたものでもよく、また、これらのポリエステルを混合したものであってもよい。
【0011】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。本発明においては、ポリエステルフィルムに離型性を付与するために、予めシリコーン成分を含有するポリマーを練り込んだポリエステルを用いることが好ましく、含有するシリコーンの種類、含有量などにより、剥離力や滑り性等フィルム特性のコントロールを行うことができる。本発明でポリエステルに含有するシリコーンとは、例えばシロキサン結合によりなるポリオルガノシロキサンを指し、性状などからオイル、ゴム、レジンに分類されている。
【0012】
シリコーンオイルは、総称してストレートシリコーンオイルと呼ばれるジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルや、有機物との相溶性や化学反応性、帯電防止性、潤滑性などを付与するために、メチル基の一部に各種有機基、例えばメチルスチレン、長鎖アルキル、ポリエーテル、カルビノール、アミン、エポキシ、カルボキシル、高級脂肪酸、メルカプト、メタクリル等を導入し、特殊な有機基を分子構造中に含む、総称して変性シリコーンオイルと呼ばれるものがある。また、官能性有機基の位置により構造が4つに分類でき、ポリシロキサンの側鎖に官能性有機基を導入した側鎖型、両末端に導入した両末端型、側鎖と両末端に導入した側鎖/両末端型、および片末端に導入した片末端型に分けられる。
【0013】
シリコーンゴムは、重合度5,000〜10,000程度の線状ポリマーでオルガノポリシロキサンを主成分とするミラブル型シリコーンゴムと、重合度100〜2,000程度の線状ポリマーを主成分とする液状シリコーンゴムとに大別される。シリコーンゴムはシリコーン生ゴムにシリカ系充填剤、潤滑剤などを添加したもので、主成分のシリコーン生ゴムは、重合度5,000〜10,000程度で平均分子量40万〜80万の高分子体であり、ジメチル系、メチルビニル系、メチルフェニルビニル系、メチルフロロアルキル系が一般的に使用されている。シリコーンレジンは、オルガノシラン類を共加水分解し重合して得られる三次元網状構造をとったポリマーであり、大別してシリコーン本来の性質を利用した純シリコーンレジンと、ほかの樹脂と変性して多様な特性を加味した変性シリコーンレジンとに分けられる。
【0014】
シリコーンレジンは、一般にSiO、CHSiO3/2、(CHSiO、(CHSiO1/2の構造単位の組み合わせでできる共重合であるメチルシリコーンレジンと、CHSiO3/2、(CHSiO、CSiO3/2、(C)(CH)SiO、(CSiOの構造単位を組み合わせてできるメチルフェニルシリコーンレジンとに大別できる。変性シリコーンレジンは、シリコーンと有機反応性モノマーやオリゴマーを共重合することにより得られ、シリコーンアルキッド、シリコーンポリエステル、シリコーンアクリル、シリコーンエポキシ、シリコーンフェノールなどは縮合反応により得られる。
【0015】
本発明においてフィルムに配合するシリコーンは特に限定はしないが、ジメチルシリコーンのオイルや生ゴム、ビニルシリコーンのオイルや生ゴム、フェニルシリコーンのオイルや生ゴム、各種反応性シリコーンオイル、シリコーンとエポキシ基、カルボキシ基、水酸基等を有する有機反応性モノマーを共重合したシリコーン変性レジンなどが好ましく用いられる。シリコーンの含有量に関しては、特に制限はないが0.05〜5.0重量%の範囲が好ましい。シリコーン含有量が0.05重量%未満では、シリコーンを含有した効果が発揮されない場合がある。また、シリコーン含有量が5.0重量%を超えた場合は、含有したシリコーンによりフィルムヘーズが高くなる傾向がある。
【0016】
本発明においては、フィルム表面のSi量により剥離力のコントロールを行うが、フィルム表面のSi量は蛍光X線を用いることにより測定ができ、そのSi量の範囲は0.50g/m以下、好ましくは0.01〜0.30g/mの範囲とする。Si量が0.50g/m2を超えた場合は、フィルムヘーズが高くなるため、用途が限定されるため好ましくない。また、Si量が0.01g/m未満では、シリコーンを含有したことによる離型性の効果が見られない場合がある。なお、フィルム表面のSi量は、離型性を有していない通常のポリエステルでも0.0002g/m2程度のSi量が検出されている。
【0017】
本発明の重剥離領域は、離型性を有する塗布層をフィルム表面に被覆した従来の塗布タイプの離型フィルムでは、非常に生産が難しい領域である。塗布型の離型層として広く用いられているシリコーンで重剥離の離型層を得る方法としては、架橋剤を増加する方法と、重剥離コントロール剤による方法が一般的であるが、架橋剤を増加する方法は、架橋剤量が多いと硬化性、基材への密着性などは良くなるが、セパレーターエージングによる軽剥離化が著しくなるという問題がある。また、重剥離コントロール剤としては非反応性レジンと反応性レジンがある。非反応性レジンは、剥離力の安定性は高いが、シリコーン皮膜に結合されていないため、粘着剤表面に移行し、接着力やタックを低下させたり、基材への密着性を低下させたりする問題がある。一方、反応性レジンは、ビニル基と架橋剤が反応し、シリコーン皮膜に組み込まれるため、非反応性レジンの有する欠点はないが、剥離力の安定性に劣る問題点がある。
【0018】
さらに、重剥離の離型層を得る方法としては、塗布厚みを非常に薄くする方法を挙げることができるが、剥離力のコントロール性が悪く、塗布欠陥も発生しやすい問題がある。シリコーンを塗布した離型層による重剥離は、上述した欠点を有すると同時に、具体的な剥離力として2000mN/cmより重い領域を得ることは難しいのが現状である。本発明における重剥離領域の具体的な剥離力は、2000〜4500mN/cmの範囲が好ましく、従来の塗布による離型層では得ることのできない領域である。剥離力が2000mN/cm未満のフィルムは、シリコーンの含有量が多くなるためフィルムヘーズが高くなり用途が限定されるため好ましくない。剥離力が4500mN/cmを超えた場合は離型フィルムとしての性能が不十分となり好ましくない。
【0019】
前記したシリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーンレジン等をポリエステルに配合する方法は特にこだわらないが、ポリマー中でのシリコーンの分散性や、生産時の取り扱い性などより、予め二軸押し出し機等を用いてポリエステルとシリコーンを練り混み、10〜60%程度のマスターバッチ(MB)を作成し、フィルム製膜時にポリエステルと所定のMBを配合する方法が、ポリマー中でのシリコーンの分散性に優れ好ましい方法である。本発明のフィルムは、シリコーンを含有したポリマーの層が少なくとも一つの最外層を形成していれば積層フィルムでも構わない。二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法としては、公知の方法を採用することができる。例えば、予め乾燥したポリエステルチップとシリコーン含有MBと必要な添加剤を混合して押出機のホッパー投入し、押出機にて200〜300℃の温度で溶融混練し、ダイからシート状に押し出して、約70℃以下のキャスティングドラム(回転冷却ドラム)上で急冷して未延伸シートを得、得られたシートを縦および横方向に4倍以上、好ましくは9倍以上の面積倍率で延伸し、さらに120〜250℃の温度で熱固定を行う方法を採用することができる。
【0020】
しかしながら、本発明で得られるフィルムは離型性や易滑性を有するため、その製造方法としては、少なくとも共押出しにより端部と中央部を有する未配向シートを得る方法において、中央部にシリコーン含有ポリエステルを用いる方法を挙げることができる。ポリエステルの二軸延伸工程において、横延伸はフィルムの両端部をクリップして行うが、シリコーンが含有されたポリエステルは離型性と易滑性を有するために、横延伸の際にクリップ外れが多発してしまう問題がある。そのため、フィルムがクリップされる両端部にはシリコーンを実質的に含有しないポリマーを用いて、横延伸時のクリップ外れを防止する方法が好ましい。
【0021】
両端部ポリエステルと中央部ポリエステルを、前述のように幅方向に合わせて溶融押出する方法は従来知られている方法、例えば、特開昭55−118832号公報、特開平1−118428号公報、特開平8−207119号公報などに開示されている合わせ方法が適用できる。これらの方法で、幅方向に見て端部ポリエステル/中央部ポリエステル/端部ポリエステルの順となるように溶融ポリエステル融液を事前に合流させ共押出した後は常法に従って二軸延伸を施す。本発明においては、必要に応じポリエステルフィルムの表面に塗布層を形成しても構わない。
【0022】
二軸延伸ポリエステルフィルムの表面に塗布層を形成する方法は、特に制限されないが、ポリエステルフィルムを製造する工程中で塗布液を塗布する方法が好適に採用される。具体的には、未延伸シート表面に塗布液を塗布して乾燥する方法、一軸延伸フィルム表面に塗布液を塗布して乾燥する方法、二軸延伸フィルム表面に塗布液を塗布して乾燥する方法等が挙げられる。これらの中では、未延伸フィルムまたは一軸延伸フィルム表面に塗布液を塗布後、フィルムに熱処理を行う過程で同時に塗布層を乾燥硬化する方法が経済的である。また、塗布層を形成する方法として、必要に応じ、前述の塗布方法の幾つかを併用した方法も採用し得る。具体的には、未延伸シート表面に第一層を塗布して乾燥し、その後、一軸方向に延伸後、第二層を塗布して乾燥する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中「部」とあるのは固形分としての「重量部」を示す。また、本発明で用いた評価方法は次の通りである。
【0024】
(1)蛍光X線によるフィルム表面のSi量の算出方法
蛍光X線測定装置((株)島津製作所製 型式「XRF−1500」)を用いて、FP(Fundamental Parameter Method)法により、下記測定条件下、シリコーンを含有したポリエステルフィルムの表面(B)、およびシリコーンを含有していないポリエステルフィルムの表面(A)の珪素元素量を測定し、その差をもってシリコーン含有フィルム表面のSi量を算出した。
《測定条件》
分光結晶:PET(ペンタエリスリトール)
2θ:108.88°管電流:95mA管電圧:40kv
【0025】
(2)剥離力評価測定
試料の離型面に両面粘着テープ(日東電工製「No.502」)を貼り付けて、室温にて1時間放置後の剥離力を測定した。剥離力は引張試験機((株)インテスコ製「インテスコモデル2001型式」)を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離試験を行い、測定した。
【0026】
(3)ラブオフテスト
ポリエステルフィルムの試料を23℃/50%RHの室内に30日間放置後、離型面を指先で数回摩擦し、離型面の具合を下記の評価基準にて判断し、密着性の目安とした。
○:フィルム表面に変化が見られず良好
×:フィルム表面に指で擦った痕が見られ、剥離力も変化している
【0027】
(4)フィルムヘーズ
JIS−K6714に準じ、日本電色工業社製分球式濁度計NDH−20Dによりフィルムの濁度を測定した。
【0028】
(5)製膜時のテンタークリップ外れの評価
無定形シートを縦延伸後、横延伸する際、横延伸機(テンター)の延伸点において、フィルム端部を固定するクリップから横延伸フィルムが滑って外れる状況を次に示す3ランクにて判定評価した。この評価は、連続製膜性を示すもので、生産性の良否を判別する重要な項目である。
〇:殆どクリップ外れがなく生産性良好
×:フィルムがズルズル滑ってクリップ外れを起こし、生産性が全くない
【0029】
(6)重剥離タイプの離型フィルム実用特性
重剥離タイプの離型フィルムの生産性や実用特性より次の3ランクにて判定評価した。なお、剥離力が2000〜4500mN/cmの範囲を重剥離領域として評価した。
○:重剥離領域の離型フィルムが得られ、生産性も良好である。フィルムヘーズが低く多用途に使用できる
△:重剥離領域の離型フィルムは得られ、生産性も良好である。フィルムヘーズが若干高いが、実用上問題ないレベル
×:重剥離領域の離型フィルムが得られない。フィルムヘーズが高く用途が限定され、特に光学用には使用できない
【0030】
次に、下記の例において用いた原料ポリエステルおよびフィルムの製造方法について説明する。
・ポリエステルの製造
ポリエステル−(1)
ジメチルテレフタレート100重量部、エチレングリコール60重量部および酢酸マグネシウム・4水塩0.09重量部を反応器にとり、加熱昇温すると共にメタノールを留去し、エステル交換反応を行い、反応開始から4時間を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次いでエチレングリコールスラリーエチルアシッドフォスフェート0.04重量部、三酸化アンチモンを0.04重量部添加した後、100分で温度を280℃、圧力を15mmHgに達せしめ、以後も徐々に圧力を減じ、最終的に0.3mmHgとした。4時間後、系内を常圧に戻し、固有粘度0.61のポリエチレンテレフタレート−(1)を得た。
【0031】
ポリエステル−(2)
ポリエチレンテレフタレート−(1)80重量部、シリコーン変性アクリル樹脂20重量部を、290℃の温度に設定したベント付き二軸押し出し機にて、溶融押し出しを行い、シリコーンレジンを20重量%含有したポリエステル−(2)を得た。
【0032】
ポリエステル−(3)
ポリエステル−(2)の製造において、シリコーン変性アクリル樹脂を粘度10000mm2/sのジメチルシリコーンオイルに変えた以外は同様の方法で、シリコーンオイルを20重量%含有したポリエステル−(3)を得た。
【0033】
実施例1:
ポリエステル−(1)とポリエステル−(2)を乾燥後、それぞれ別の押出機で290℃にて溶融し、Tダイから押し出すに際して幅方向に、ポリエステル−(1)/ポリエステル−(1)97.5重量部とポリエステル−(2)2.5重量部/ポリエステル−(1)の構成となるよう溶融ポリマーを事前に合流させた。溶融ポリマーが合流してからTダイより押し出されるまでの温度は290℃として、Tダイよりシート状に押出し、表面温度を40℃に設定した回転冷却ドラムで静電印加冷却法を利用して急冷固化させ、厚み550μmの実質的に非晶質のシートを作成した。尚、この時の各ポリエステル領域は、幅方向の長さ比で1:8:1であった。次いでこの無定型シートを縦方向に85℃で3.7倍縦延伸し、横方向に100℃で横方向に3.9倍延伸し210℃で3秒間熱処理を行い、耳部(端部)をトリミングにより除去し、厚さ38μmの二軸配向フィルムを製造した。延伸工程でのクリップ外れは見られず、製膜の連続性は良好であった。
【0034】
実施例2〜5、比較例1:
実施例1において、巾方向の中央部を下記表1の配合に変えた以外は実施例1と同様の方法で、実施例2〜5、比較例2〜3のフィルムを得た。
【0035】
【表1】

【0036】
比較例2:
ポリエステル−(1)を乾燥後、押出機で290℃にて溶融し、Tダイよりシート状に押出し、表面温度を40℃に設定した回転冷却ドラムで静電印加冷却法を利用して急冷固化させ、厚み550μmの実質的に非晶質のシートを作成した。次いでこの無定型シートを縦方向に85℃で3.7倍縦延伸し、横方向に100℃で横方向に3.9倍延伸し210℃で3秒間熱処理を行い、耳部(端部)をトリミングにより除去し、厚さ38μmの二軸配向フィルムを製造した。得られたフィルムは、シリコーンを含有していないポリエステルフィルムの表面(A)として、蛍光X線により珪素元素量の測定を行った。
【0037】
比較例3:
比較例2において、ポリエステル−(1)をポリエステル−(1)97.5重量部とポリエステル−(2)2.5重量部に変えた以外は比較例−1と同様の方法でポリエステルフィルムの製造を行ったが、横延伸工程でクリップ外れが多発し、ポリエステルフィルムは得られなかった。
【0038】
比較例4
(離型フィルムの製造)
比較例2で得られたポリエステルフィルムに、下記組成からなる離型層を、表面Si量が0.0200g/m2となるように塗布量を設定し離型フィルムを得た。
[離型剤組成]
硬化型シリコーン樹脂(KS−847H:信越化学製) 100部
硬化触媒(PL−50T:信越化学製) 1部
MEK/トルエン=1/1混合溶媒 3200部
【0039】
比較例5:
さらに重剥離化のフィルムを得るために、比較例4において、離型層の表面Si量が0.0100g/m2となるように塗布量を変えた以外は比較例4と同様の方法で離型フィルムの製造を行ったが、塗布ムラなどのコート欠陥により離型フィルムは得られなかった。各実施例、比較例で得られたフィルムの評価結果をまとめて下記表2に示す。
【0040】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の製造方法によって得られるポリエステルフィルムは、例えば、プリント配線基盤の絶縁層成型用、セラミック製品製造分野(セラミック積層コンデンサー等)、粘着剤層保護用等の離型フィルムとして好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム表面のSi量が0.50g/m以下である、シリコーン成分を含有するポリエステルからなるフィルムの製造方法であって、幅方向の両端部にシリコーンを含有しないポリエステルを用い、中央部にシリコーン含有ポリエステルを用いて共押出された未延伸シートを少なくとも一軸方向に延伸した後、両端部を除去することを特徴とするポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項2】
フィルムの剥離力が2000〜4500mN/cmの範囲であることを特徴とする請求項1記載のポリエステルフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2012−35635(P2012−35635A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238055(P2011−238055)
【出願日】平成23年10月29日(2011.10.29)
【分割の表示】特願2001−208993(P2001−208993)の分割
【原出願日】平成13年7月10日(2001.7.10)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】