説明

ポリエステルフィルム及びその製造方法、太陽電池用バックシート、及び太陽電池モジュール

【課題】傷の発生を抑制し、耐加水分解性及び耐電圧性に優れたポリエステルフィルムが得られる製造方法を提供する。
【解決手段】溶融したポリエステル樹脂を押出機から溶融押出しする押出工程と、
溶融押出しされたポリエステル樹脂をキャスティングドラム上で冷却固化することにより、厚みが2.5mm以上5.0mm以下の未延伸ポリエステルフィルムを形成する未延伸フィルム形成工程と、
形成された未延伸ポリエステルフィルムを、平均温度T1(℃)が下記式(1)で示す関係を満たし、且つ、表面温度が中心温度よりも0.3℃以上15℃未満高くなるように加熱した後、少なくとも一方向に延伸する延伸工程と、
を有するポリエステルフィルムの製造方法。
Tg−20<T1<Tg+25 ・・・式(1)
[式(1)中、Tgは前記未延伸ポリエステルフィルムのガラス転移温度(℃)を表す。]。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルフィルムの製造方法、それにより得られたポリエステルフィルム、太陽電池用バックシート、及び太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境の保護の観点から、太陽光を電気に変換する太陽光発電が注目されている。この太陽光発電に用いられる太陽電池モジュールは、太陽光が入射するガラスの上に、(封止剤)/太陽電池素子/封止剤/バックシートがこの順に積層された構造を有している。
【0003】
太陽電池モジュールは、風雨や直射日光に曝される過酷な使用環境下でも、数十年もの長期間に亘って発電効率などの電池性能を保持できるよう、高い耐候性能を備えていることが必要とされる。このような耐候性能を与えるためには、太陽電池モジュールを構成するバックシートや素子を封止する封止材などの諸材料も耐候性が求められる。
【0004】
太陽電池モジュールを構成するバックシートには、一般に、ポリエステルなどの樹脂材料が使用されている。ポリエステルフィルムの表面には、通常カルボキシル基や水酸基が多く存在しており、水分が存在する環境では加水分解を起こしやすく、経時で劣化する傾向にある。そのため、屋外等の常に風雨に曝されるような環境に置かれる太陽電池モジュールに用いられるポリエステルフィルムには、その加水分解性が抑えられていることが求められる。また、太陽電池モジュールに用いられるポリエステルフィルムには、耐電圧性も求められる。
【0005】
ポリエステルフィルムを適用した太陽電池裏面封止用フィルムとしては、ポリエステルフィルム上に熱接着層を積層した太陽電池裏面封止用フィルムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、下記特許文献2には、触媒由来のチタン化合物とリン化合物の含有量が特定の範囲内であり、末端カルボキシル基の濃度が40当量/トン(eq/t)以下である太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルムが開示されている。
【0006】
熱可塑性樹脂フィルムの製造においては、溶融した熱可塑性樹脂材料により未延伸フィルムを形成した後、これを延伸する方法が従来より用いられている。下記特許文献3には、熱可塑性樹脂フィルムを製造する際に発生する端部のシワやキズ、横段等の欠点の少ない熱可塑性樹脂フィルムの製造方法として、予熱ロールの温度を熱可塑性樹脂シートを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度以下にするとともに、周囲に断熱材を配置した輻射加熱源を用いて熱可塑性樹脂シートを加熱し延伸する製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−60218号公報
【特許文献2】特開2007−204538号公報
【特許文献3】特開2009−233928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のごとく、太陽電池用バックシートに適用されるポリエステルフィルムに求められる物性として、耐加水分解性と耐電圧性とが挙げられる。
耐電圧性については、ポリエステルフィルムの厚みを大きくすることで向上させることができる。しかし、厚みの大きなポリエステルフィルムは剛性が高く、フィルム製造時に延伸する際に、フィルムが延伸ロールに押し付けられる力がより大きくなることから、フィルム表面に傷が発生し易くなる。ポリエステルフィルム表面に発生した傷は、フィルム表面の平滑性を損ね、延いては耐電圧性を損なう要因となる。
前記特許文献3には、熱可塑性樹脂フィルムを製造する際に発生する端部のシワやキズ等を抑制する技術が開示されるが、同文献に開示の技術では、厚手のポリエステルフィルム(例えば、2500μm以上)の製造に適用した場合において、傷の発生を抑制しえず、フィルム表面の平滑性が損われる。また、延伸時におけるポリエステルフィルム表面の傷の発生を低減する方策としては、未延伸フィルムの温度を上げることも考えられる。しかし、未延伸フィルムの温度を単に上昇させることは、フィルムの配向性を低下させてしまい、延いては耐加水分解性の低下を来す。
【0009】
このように、耐加水分解性と耐電圧性とを兼ね備えた厚手のポリエステルフィルムを製造しうる方法は、未だ提供されていないのが現状である。
【0010】
本発明は、上記の状況に鑑みなされたものであり、厚みの大きいポリエステルフィルムを製造する場合であっても、フィルム表面の平滑性に優れ、耐加水分解性及び耐電圧性に優れたポリエステルフィルムが得られるポリエステルフィルム製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、耐加水分解性及び耐電圧性に優れ、太陽電池用途などの過酷な環境下での長期使用に適したポリエステルフィルム、これを用いた太陽電池用バックシート及び太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための具体的手段は、以下の通りである。
<1> ポリエステル樹脂を押出機により溶融押出して、冷却することにより、厚みが2.5mm以上5.0mm以下の未延伸ポリエステルフィルムを形成する未延伸フィルム形成工程と、
形成された未延伸ポリエステルフィルムを、平均温度T1(℃)が下記式(1)で示す関係を満たし、且つ、表面温度が中心温度よりも0.3℃以上15℃未満高くなるように加熱した後、少なくとも一方向に延伸する延伸工程と、
を有するポリエステルフィルムの製造方法。
Tg−20℃<T1<Tg+25℃ ・・・式(1)
[式(1)中、Tgは前記未延伸ポリエステルフィルムのガラス転移温度(℃)を表す。]
<2> 前記延伸工程が、未延伸ポリエステルフィルムを、予熱ロールを用いて加熱した後、近赤外ヒーター又は遠赤外ヒーターによって加熱しながら延伸ロールにより延伸することにより行われ、該予熱ロールの表面温度及び周辺雰囲気温度が、いずれも下記式(2)で示す関係を満たす温度T2(℃)である<1>に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
Tg−25℃<T2<Tg+40℃ ・・・式(2)
[式(2)中、Tgは前記未延伸ポリエステルフィルムのガラス転移温度(℃)を表す。]
<3> 前記ポリエステル樹脂の固有粘度が、0.6dl/g以上0.9dl/g以下の範囲である<1>又は<2>に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
<4> 前記ポリエステル樹脂が有する末端COOH量が、5eq/t以上25eq/t以下である<1>〜<3>のいずれかに記載のポリエステルフィルムの製造方法。
<5> 前記延伸工程において、前記未延伸ポリエステルフィルムを搬送方向に延伸する<1>〜<4>のいずれかに記載のポリエステルフィルムの製造方法。
<6> <1>〜<5>のいずれかに記載のポリエステルフィルムの製造方法により得られたポリエステルフィルム。
<7> <6>に記載のポリエステルフィルムを含む太陽電池用バックシート。
<9> <6>に記載のポリエステルフィルムを備えた太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、厚みの大きいポリエステルフィルムを製造する場合であっても、フィルム表面の平滑性に優れ、耐加水分解性及び耐電圧性に優れたポリエステルフィルムが得られるポリエステルフィルムの製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、耐加水分解性及び耐電圧性に優れ、太陽電池用途などの過酷な環境下での長期使用に適したポリエステルフィルム、これを用いた太陽電池用バックシート及び太陽電池モジュールを提供することができる
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】太陽電池モジュールの構成例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
[ポリエステルフィルム及びその製造方法]
本発明のポリエステルフィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法とも称する。)は、ポリエステル樹脂を押出機により溶融押出して、冷却することにより、厚みが2.5mm以上5.0mm以下の未延伸ポリエステルフィルムを形成する未延伸フィルム形成工程と、形成された未延伸ポリエステルフィルムを、平均温度T1(℃)が下記式(1)で示す関係を満たし、且つ、表面温度が中心温度よりも0.3℃以上15℃未満高くなるように加熱した後、少なくとも一方向に延伸する延伸工程と、を有する。
Tg−20℃<T1<Tg+25℃ ・・・式(1)
[式(1)中、Tgは前記未延伸ポリエステルフィルムのガラス転移温度(℃)を表す。]
【0016】
本発明の製造方法は、上記の工程を有することで、厚みの大きいポリエステルフィルムを製造する場合であっても、フィルム表面の平滑性に優れ、耐加水分解性及び耐電圧性に優れたポリエステルフィルムを製造することができる。
【0017】
ここで、「フィルム表面の平滑性が優れる」とは、ポリエステルフィルムの表面において、亀裂等の傷、延伸ロール等との粘着に起因する突起、等の発生が抑制されていることを意味する。
【0018】
以下、本発明の製造方法が有する各工程について順次説明する。
【0019】
(1)未延伸フィルム形成工程
未延伸フィルム形成工程では、ポリエステル樹脂を押出機により溶融押出して、冷却することにより、厚みが2.5mm以上5.0mm以下の未延伸ポリエステルフィルムを形成する。
【0020】
未延伸フィルム形成工程におけるポリエステル樹脂の溶融は、例えば、後述するポリエステル樹脂を原料樹脂とし、これを乾燥して、残留水分を100ppm以下にした後、押出機を用いて溶融すればよい。溶融温度は、250℃以上320℃以下が好ましく、260℃以上310℃以下がより好ましく、270℃以上300℃以下がさらに好ましい。押出し機は、1軸でも多軸でもよい。熱分解による末端COOHの発生をより抑制できる点で、押出し機内を窒素置換して行なうのがより好ましい。
【0021】
なお、本発明の製造方法に用いるポリエステル樹脂の詳細については後述する。
【0022】
ポリエステル樹脂の溶融物(以下、「メルト」とも称する。)は、ギアポンプ、濾過器等を通して、押出ダイから、チルロール(冷却キャストドラム)上に押出す。このとき、単層で押出してもよいし、多層で押出してもよい。
【0023】
押出機から押出されたメルトは、その厚みが2.5mm以上5.0mm以下、好ましくは2.8mm以上4.5mm以下、より好ましくは3mm以上4mm以下にする。
メルトの厚みを2.5mm以上とすることで、延伸工程において延伸倍率を高くしても、厚膜(例えば、200μm以上)のポリエステルフィルムが得られ、耐電圧性を向上させることができる。一方、2.5mm未満の厚みでは、ポリエステルフィルムにおける充分な耐電圧性の向上が得られない。
メルトの厚みを5.0mm以下とすることで、延伸工程における傷の発生が抑制される。一方、5.0mmよりも大きな厚みでは、フィルム内部の剛性が高くなることに起因して、傷の発生を充分に抑制することができなくなる。
また、メルトの厚みを2.5mm以上とすることは、押出しから冷却までの間に、ポリエステル中のOH基やCOOH基がポリエステル内部に拡散されて、加水分解の発生の要因となるOH基やCOOH基が、ポリエステルフィルムの表面に露出することが抑制される。
【0024】
押出機から溶融物(メルト)を押出す場合、押出し時の剪断速度を所望の範囲に調整することが好ましい。押出し時の剪断速度は、1s−1以上300s−1以下が好ましく、より好ましくは10s−1以上200s−1以下であり、さらに好ましくは30s−1以上150s−1以下である。これにより、ダイから押出された際に、ダイスエル(メルトが厚み方向に膨張する現象)が発生する。すなわち、厚み方向(フィルム法線方向)に応力が働くため、メルトの厚み方向の分子運動が促進される。
【0025】
このような高剪断での溶融物(メルト)の押出しによるダイスエルの影響により、メルトがダイリップと接触しダイラインが発生し易い。そのため、メルトの押出し量に好ましくは0.1%以上5%以下、より好ましくは0.3%以上4%以下、さらに好ましくは0.5%以上3%以下の変動(脈動)を与えることで対策できる。
すなわち、変動に合せてダイスエルの量も変動する。つまり、溶融物(メルト)が押出ダイに接触する時間を抑制できるため、連続したダイラインが発生しない。この範囲内であると、厚みムラに起因するベコの増加が抑えられる。このような断続的なダイラインであれば、メルトの粘性効果により解消でき、事実上問題となることは少ない。さらに、このようなダイスエルの変動は厚み方向の応力を変動させ、これによりCOOHやOHの運動を促す効果も有する。
このような押出し量の変動は、押出機のスクリュー回転数に変動を与えてもよく、押出機とダイとの間にギアポンプを設け、これの回転数を変動させてもよい。
【0026】
押出機から押出されたメルトは、チルロール(冷却キャストドラム)及び冷却キャストドラムに対面して設置された補助冷却装置を用いて冷却する。冷却速度としては、100℃/分以上800℃/分以下の速度が好ましい。チルロール反対面から冷風を当てたり、冷却ロールを接触させ、冷却を促すことにより、厚手の溶融フィルム(具体的には、延伸前の厚みが2.0mm以上であり、延伸後の厚みが100μm以上、更には255μm以上のフィルム)であっても、効果的に冷却が行われ、上記の冷却速度で急冷することができる。
【0027】
冷却速度は、冷却キャストドラムおよび冷却キャストドラムに対面して設置された補助冷却装置(メルトに冷却風を吹き出す装置)により強制的に冷却することにより得られる。補助冷却装置としては、特開平7−266406号公報、特開平9−204004号公報、特開2006−281531号公報などに記載の補助冷却装置を用いることができる。また、水のミスト吹き型や霧吹型や水槽などの補助冷却装置を用いることができる。
【0028】
冷却時のチルロールの温度は、−10℃以上30℃以下が好ましく、より好ましくは−5℃以上25℃以下、さらに好ましくは0℃以上15℃以下である。さらに、メルトとチルロールとの間で密着性を高め、冷却効率を上げる観点からは、チルロールにメルトが接触する前に静電気を印加しておくことが好ましい。キャストドラム内部に冷媒を通し、所定の表面温度に制御できる。
【0029】
厚手フィルムの製膜では、冷却キャストドラム上での冷却速度が低下することで、球晶が生成して延伸ムラが発生し易い。しかし、延伸ムラは、冷却キャストドラムにおける温度ムラを0.1℃以上5℃以下、より好ましくは0.3℃以上4℃以下、さらに好ましくは0.5℃以上3℃以下付与することで解消できる。
ここで、温度ムラとは、冷却キャストドラムの温度をドラム幅方向に測定し、最高温度と最低温度との差をさす。
このように温度差があると、冷却キャストドラム上でメルトに温度差が発生しメルトに伸張/収縮応力が働く。メルトが冷却キャストドラムに接触した際、空気層を巻き込み温度ムラを生じるが、上記範囲の温度ムラを付与すると、メルトが収縮/伸張することで空気層を排除して密着を促し、冷却を促す。一方、上記範囲を超える温度ムラを付与すると、キャスト時の冷却温度ムラに起因する収縮ムラが発生し、キャストフィルムにベコが発生し好ましくない。
このような冷却キャストドラム上の温度分布は、ドラム内部に邪魔板を設け、この中に熱媒を通し、この流路を乱すことで温度ムラを発現させることができる。
【0030】
押出ダイからメルトを押出した後、冷却キャストドラムに接触させるまでの間(エアギャップ)は、湿度を5%RH以上60%RH以下、さらに好ましくは10%RH以上55%RH以下、さらに好ましくは15%RH以上50%RH以下に調整することが好ましい。
エアギャップでの湿度を上記範囲にすることで、表面カルボン酸量や表面OH量を調節することができる。
すなわち、上述のように空気の疎水性を調整することで、COOH基やOH基のフィルム表面からの潜り込みを調整できる。
このとき、高湿度にすることで表面OH量、表面カルボン酸量は増加し、低湿度にすることで表面OH量、表面カルボン酸量は減少する。
【0031】
このエアギャップの効果は、特に表面COOH量に影響する。これは、OH基よりCOOH基の方が極性が強く、エアギャップの湿度の影響を受け易いためである。
このような低湿度での押出しでは、冷却キャストドラムへの密着が低下し、冷却ムラが発生しやすいが、キャストロールに温度分布を0.1℃以上5℃以下で与えることで上記のように冷却ムラを低減できる。
【0032】
以上のようにして得られた厚みが2.5mm以上5.0mm以下の未延伸ポリエステルフィルムを、後述する延伸工程において延伸する。
【0033】
(2)延伸工程
延伸工程では、未延伸フィルム形成工程により得られた未延伸ポリエステルフィルムを、平均温度T1(℃)が下記式(1)で示す関係を満たし、且つ、表面温度が中心温度よりも0.3℃以上15℃未満高くなるように加熱した後、少なくとも一方向に延伸する。
Tg−20℃<T1<Tg+25℃ ・・・式(1)
[式(1)中、Tgは前記未延伸ポリエステルフィルムのガラス転移温度(℃)を表す。]
【0034】
延伸工程は、未延伸ポリエステルフィルムを、予熱ロールにより加熱した後、近赤外ヒーター又は遠赤外ヒーターによって加熱しながら延伸ロールにより延伸する工程であることが好ましい。
【0035】
延伸に供される未延伸ポリエステルフィルムは、平均温度T1(℃)が上記式(1)で示す関係を満たし、且つ、表面温度が中心温度よりも0.3℃以上15℃未満高くなるように加熱される。2.5mm以上5.0mm以下の未延伸ポリエステルフィルムを用い、且つ、該フィルムの温度を特定の範囲に制御することにより、延伸時における傷の発生を抑制しうる程度にフィルム表面の近傍を柔らかくできる一方、フィルムの内部においては配向性を保つことができる。このため、2.5mm以上5.0mm以下の厚手の未延伸ポリエステルフィルムを、傷の発生を抑制し且つフィルムの配向性を低下させることなく延伸することができることから、本発明の製造方法により得られた延伸後のポリエステルフィルムは、フィルム表面の平滑性を保持しつつも、耐加水分解性及び耐電圧性の双方に優れたものとなる。
【0036】
一方、未延伸ポリエステルフィルムが、前記式(1)で示す関係及び表面温度と中心温度との関係の少なくとも1つを満たさない場合には、フィルム表面に傷や延伸ロール等との粘着に起因する突起が発生して、フィルム表面の平滑性が損なわれたり、配向性の低下が生じてしまい、延伸後のポリエステルフィルムは耐加水分解性及び耐電圧性を発揮しえないものとなる。
【0037】
未延伸ポリエステルフィルムの平均温度T1(℃)とは、加熱された未延伸ポリエステルフィルムの表面温度と中心温度との平均値である。
本発明に係る温度に関する測定方法の詳細は、以下に示す通りである。
【0038】
フィルムの表面温度は、測定対象となるフィルムの表面2面に、熱電対を貼り付けて測定する。フィルムの中心温度は、測定対象となるフィルムの膜厚方向における中心部に、熱電対を埋め込むことによって測定する。
測定範囲は、フィルムの表面温度及び中心温度のいずれについても、測定開始点を延伸開始点より3m前(フィルム搬送方向長)とし、該測定開始点から延伸開始点までとする。ここで、「延伸開始点」とは、搬送された未延伸ポリエステルフィルムが、延伸ロールと接触する点を意味する。
測定は、測定開始点及び測定開始から100msec経過する毎に、フィルムの表面温度及び中心温度の双方を測定することにより行う。
平均温度T1(℃)は、測定された表面温度及び中心温度の平均値を各測定点毎に算出し、それらを相加平均することにより算出する。
フィルムの表面温度と中心温度との差は、測定された表面温度から中心温度を減じた値を各測定点毎に算出し、それらの値を相加平均することにより算出する。
【0039】
未延伸ポリエステルフィルムの温度を、平均温度T1(℃)が前記式(1)で示す関係を満たし、且つ、表面温度が中心温度よりも0.3℃以上15℃未満高くなるように制御する方法としては、予熱ロールの温度を調整する態様、予熱ロールの温度及び予熱ロール周囲の温度を調整する態様、ロール間距離、フィルム搬送速度を調整する態様が挙げられる。
【0040】
未延伸ポリエステルフィルムの平均温度T1(℃)は、下記式(1−2)の関係を満たすことがより好ましい。
Tg−10℃<T1<Tg+20℃ ・・・式(1−2)
[式(2)中、Tgは前記未延伸ポリエステルフィルムのガラス転移温度(℃)を表す。]
【0041】
また、予熱ロールにより加熱された未延伸ポリエステルフィルムの表面温度と中心温度との関係は、表面温度が中心温度よりも1℃以上10℃以下高いことがより好ましい。
【0042】
延伸工程においては、未延伸ポリエステルフィルムの加熱に用いる予熱ロールの表面温度及び周辺雰囲気温度が、いずれも下記式(2)で示す関係を満たす温度T2(℃)であることが好ましい。
Tg−25℃<T2<Tg+40℃ ・・・式(2)
[式(2)中、Tgは前記未延伸ポリエステルフィルムのガラス転移温度(℃)を表す。]
【0043】
なお、予熱ロールが2本以上設置される場合には、すべての予熱ロールにおける表面温度、及び、これらの予熱ロールの周辺雰囲気温度が、上記式(2)で示す関係を満たすことが好ましい。
予熱ロールの表面温度及び周辺雰囲気温度の双方が、上記式(2)で示す関係を満たす温度T2(℃)であることで、延伸時における傷の発生をより効果的に抑制することができる。
【0044】
予熱ロールの表面温度は、予熱ロールの表面を、放射温度計((株)チノー製、型番:RT60)にて測定することができる。
予熱ロールの周辺雰囲気温度は、予熱ロール表面の周辺空間であって、予熱ロールからの熱放射の影響を受けない位置における温度(℃)を、熱電対にて測定した測定値である。
【0045】
予熱ロールの周辺雰囲気温度を、式(2)で示す関係を満たすように調整する方法としては、熱風の送風、IRヒータでの加熱、予熱ロール周辺の断熱材によるケーシング等が挙げられる。
【0046】
予熱ロールにより加熱された未延伸ポリエステルフィルムは、延伸ロールにより少なくとも一方向に延伸される。延伸方法は、一軸延伸であってもよいし、二軸延伸であってもよい。
【0047】
本発明における延伸方法の好適な態様の一つは、予熱ロールの雰囲気温度を管理した中で、未延伸ポリエステルフィルムを予熱ロールにて予熱し、近赤外ヒーターにて加熱を開始した箇所から所定の速度比に調整した延伸ロールによって搬送方向に延伸する縦一軸延伸を行った後、テンターにて横延伸する延伸方法である。
【0048】
また、本発明においては二軸延伸を行ってもよい。
二軸延伸では、例えば、ポリエステルシートに対して、ポリエステルシートの長手方向に、延伸応力が5MPa以上15MPa以下、かつ、延伸倍率が2.5倍以上4.5倍以下の縦延伸を行い、幅方向に延伸倍率が2.5倍以上5倍以下の横延伸を行えばよい。
【0049】
より具体的には、ポリエステルシートを、70℃以上120℃以下の温度に加熱されたロール群に導き、長手方向(縦方向、すなわちフィルムの進行方向)に、延伸応力が5MPa以上15MPa以下、かつ、延伸倍率が2.5倍以上4.5倍以下、より好ましくは、延伸応力が8MPa以上14MPa以下、かつ、延伸倍率が3.0倍以上4.0倍以下の縦延伸を行う。縦延伸後、20℃以上50℃以下の温度のロール群で冷却することが好ましい。
【0050】
続いて、ポリエステルシートの両端をクリップで把持しながらテンターに導き80℃以上180℃以下の温度に加熱された雰囲気中で、長手方向に直角な方向、すなわち、幅方向に延伸応力が8MPa以上20MPa以下であり、かつ、延伸倍率が3.4倍以上4.5倍以下の横延伸を行うことが好ましく、延伸応力が10MPa以上18MPa以下、かつ、延伸倍率が3.6倍以上5倍以下の横延伸を行うことがより好ましい。
【0051】
上記二軸延伸による延伸面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は、9倍以上20倍以下であることが好ましい。面積倍率が9倍以上20倍以下であると、延伸後の厚みが250μm以上500μm以下であり、面配向度が高く、30%以上40%以下の結晶化度を有し、平衡含水率が0.1質量%以上0.25質量%以下である二軸配向したポリエステルフィルムが得られる。
【0052】
二軸延伸する方法としては、上述のように、長手方向と幅方向の延伸とを分離して行なう逐次二軸延伸方法のほか、長手方向と幅方向の延伸を同時に行なう同時二軸延伸方法のいずれであってもよい。
【0053】
(3)熱固定工程
得られた二軸延伸フィルムの結晶配向を完了させて、平面性と寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内にて、熱固定処理を行うことが好ましい。二軸延伸後のフィルムを、張力が1kg/m以上10kg/m以下、かつ、170℃以上230℃以下で熱固定処理を行うことが好ましい。このような条件下で熱固定処理を行うことで、平面性と寸法安定性が向上し、任意の10cm間隔で測定した含水率の差を0.01質量%以上0.06質量%以下にすることができる。
【0054】
好ましくは、未延伸ポリエステルフィルムのガラス転移温度(Tg)以上融点(Tm)未満の温度で1秒以上30秒以下の熱固定処理を行ない、均一に徐冷後、室温まで冷却する。一般に、熱固定処理温度(Ts)が低いとフィルムの熱収縮が大きいため、高い熱寸法安定性を付与するためには、熱処理温度は高い方が好ましい。しかしながら、熱処理温度を高くし過ぎると配向結晶性が低下し、その結果形成されたフィルム中の含水率が上昇して耐加水分解性に劣ることがある。そのため、本発明のポリエステルフィルムの熱固定処理温度(Ts)としては、40℃≦(Tm−Ts)≦90℃であるのが好ましい。より好ましくは、熱固定処理温度(Ts)を50℃≦(Tm−Ts)≦80℃、更に好ましくは55℃≦(Tm−Ts)≦75℃とすることが好ましい。
【0055】
得られたポリエステルフィルムは、太陽電池モジュールを構成するバックシートとして用いることができるが、モジュール使用時には雰囲気温度が100℃程度まで上昇することがあるため、熱固定処理温度(Ts)としては、160℃以上Tm−40℃(但し、Tm−40℃>160℃)以下であるのが好ましい。より好ましくは170℃以上Tm−50℃(但し、Tm−50℃>170℃)以下、更に好ましくはTsが180℃以上Tm−55℃(但し、Tm−55℃>180℃)以下である。上記の熱固定処理温度は、2つ以上に分割された領域で、温度差を1〜100℃の範囲で順次降温しながら熱固定することが好ましい。
【0056】
また必要に応じて、幅方向あるいは長手方向に1〜12%の弛緩処理を施してもよい。
熱固定されたポリエステルフィルムは通常Tg以下まで冷却され、ポリエステルフィルム両端のクリップ把持部分をカットしロール状に巻き取られる。この際、最終熱固定処理温度以下、Tg以上の温度範囲内で、幅方向及び/または長手方向に1〜12%弛緩処理することが好ましい。
また、冷却は、最終熱固定温度から室温までを毎秒1℃以上100℃以下の冷却速度で徐冷することが寸法安定性の点で好ましい。特に、Tg+50℃からTgまでを、毎秒1℃以上100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。冷却、弛緩処理する手段は特
に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながら、これらの処理を行うことが、ポリエステルフィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。
また、上記ポリエステルフィルムの製造に際し、ポリエステルフィルムの強度を向上させる目的で、多段縦延伸、再縦延伸、再縦横延伸、横・縦延伸など公知の延伸フィルムに用いられる延伸を行ってもよい。縦延伸と横延伸の順序を逆にしてもよい。
【0057】
(ポリエステル樹脂)
以下、本発明の製造方法に用いるポリエステル樹脂について詳細に説明する。
本発明の製造方法に用いるポリエステル樹脂は、(A)ジカルボン酸成分と(B)ジオール成分とをエステル化反応により反応させて得られたエステル化反応生成物を、重縮合反応させて重縮合物を得る工程を経ることで合成することができる。
なお、ポリエステル樹脂としては、市販品を用いてもよい。
【0058】
−エステル化反応−
ポリエステル樹脂の原料物質として用いられる(A)ジカルボン酸成分としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、イソソルビド、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン酸等の芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸もしくはそのエステル誘導体が挙げられる。
【0059】
(B)ジオール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビドなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3―ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、などの芳香族ジオール類等のジオール化合物が挙げられる。
【0060】
(A)ジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸の少なくとも1種が用いられる場合が好ましい。より好ましくは、ジカルボン酸成分のうち、芳香族ジカルボン酸を主成分として含有する。なお、「主成分」とは、ジカルボン酸成分に占める芳香族ジカルボン酸の割合が80質量%以上であることをいう。芳香族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分を含んでもよい。このようなジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸などのエステル誘導体等である。
また、(B)ジオール成分としては、脂肪族ジオールの少なくとも1種が用いられる場合が好ましい。脂肪族ジオールとして、エチレングリコールを含むことができ、好ましくはエチレングリコールを主成分として含有する。なお、主成分とは、ジオール成分に占めるエチレングリコールの割合が80質量%以上であることをいう。
【0061】
脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール)の使用量は、前記芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸)及び必要に応じそのエステル誘導体の1モルに対して、1.015〜1.50モルの範囲であるのが好ましい。該使用量は、より好ましくは1.02〜1.30モルの範囲であり、更に好ましくは1.025〜1.10モルの範囲である。該使用量は、1.015以上の範囲であると、エステル化反応が良好に進行し、1.50モル以下の範囲であると、例えばエチレングリコールの2量化によるジエチレングリコールの副生が抑えられ、融点やガラス転移温度、結晶性、耐熱性、耐加水分解性、耐候性など多くの特性を良好に保つことができる。
【0062】
エステル化反応には、従来から公知の反応触媒を用いることができる。該反応触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、リン化合物などを挙げることができる。通常、ポリエステルの製造方法が完結する以前の任意の段階において、重合触媒としてアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましい。このような方法としては、例えば、ゲルマニウム化合物を例に取ると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加することが好ましい。
【0063】
例えば、エステル化反応は、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを、チタン化合物を含有する触媒の存在下で重合する。このエステル化反応では、触媒であるチタン化合物として、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体を用いると共に、工程中に少なくとも、有機キレートチタン錯体と、マグネシウム化合物と、置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルとをこの順序で添加する過程を設けて構成されることが好ましい。
【0064】
まず初めに、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールを、マグネシウム化合物及びリン化合物の添加に先立って、チタン化合物である有機キレートチタン錯体を含有する触媒と混合する。有機キレートチタン錯体等のチタン化合物は、エステル化反応に対しても高い触媒活性を持つので、エステル化反応を良好に行なわせることができる。このとき、ジカルボン酸成分及びジオール成分を混合した中にチタン化合物を加えてもよいし、ジカルボン酸成分(又はジオール成分)とチタン化合物を混合してからジオール成分(又はジカルボン酸成分)を混合してもよい。また、ジカルボン酸成分とジオール成分とチタン化合物とを同時に混合するようにしてもよい。混合は、その方法に特に制限はなく、従来公知の方法により行なうことが可能である。
【0065】
より好ましいポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)であり、さらに好ましいものはPETである。さらに、PETは、ゲルマニウム(Ge)系触媒、アンチモン(Sb)系触媒、アルミニウム(Al)系触媒、及びチタン(Ti)系触媒から選ばれる1種又は2種以上を用いて重合されるものが好ましく、より好ましくはTi系触媒である。
【0066】
Ti系触媒は、反応活性が高く、重合温度を低くすることができる。そのため、特に重合反応中にPETが熱分解し、COOHが発生するのを抑制することが可能であり、本発明により得られるポリエステルフィルムにおいて、末端COOH量を所定の範囲に調整するのに好適である。
【0067】
Ti系触媒としては、酸化物、水酸化物、アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、蓚酸塩、有機キレートチタン錯体、及びハロゲン化物等が挙げられる。Ti系触媒は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、二種以上のチタン化合物を併用してもよい。
Ti系触媒の例としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートテトラマー、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート等のチタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解により得られるチタン酸化物、チタンアルコキシドと珪素アルコキシドもしくはジルコニウムアルコキシドとの混合物の加水分解により得られるチタン−珪素もしくはジルコニウム複合酸化物、酢酸チタン、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウム、蓚酸チタンナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸−水酸化アルミニウム混合物、塩化チタン、塩化チタン−塩化アルミニウム混合物、チタンアセチルアセトナート、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体、等が挙げられる。
【0068】
Ti系触媒を用いた重合により得たTi触媒系PETの製造には、例えば、特開2005−340616号公報、特開2005−239940号公報、特開2004−319444号公報、特許3436268号公報、特許3979866号公報、特許3780137号、特開2007−204538号公報等に記載の重合方法を用いることができる。
【0069】
ポリエステルを重合する際においては、触媒としてチタン(Ti)系化合物を、1ppm以上30ppm以下、より好ましくは2ppm以上20ppm以下、さらに好ましくは3ppm以上15ppm以下の範囲で用いて重合を行なうことが好ましい。この場合、本発明のポリエステルフィルムには、1ppm以上30ppm以下のチタンが含まれる。
Ti系化合物の量は、1ppm以上であると好ましいIVが得られ、30ppm以下であると、末端COOHを上記の範囲を満足するように調節することが可能である。
【0070】
このようなTi系化合物を用いて重合されたTi系ポリエステルの合成には、例えば、特公平8−30119号公報、特許2543624号、特許3335683号、特許3717380号、特許3897756号、特許3962226号、特許3979866号、特許3996871号、特許4000867号、特許4053837号、特許4127119号、特許4134710号、特許4159154号、特許4269704号、特許4313538号等に記載の方法を適用することができる。
【0071】
<チタン化合物>
触媒成分であるチタン化合物としては、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体の少なくとも1種が用いられる。有機酸としては、例えば、クエン酸、乳酸、トリメリット酸、リンゴ酸等を挙げることができる。中でも、クエン酸又はクエン酸塩を配位子とする有機キレート錯体が好ましい。
【0072】
例えば、クエン酸を配位子とするキレートチタン錯体を用いた場合、微細粒子等の異物の発生が少なく、他のチタン化合物に比べ、重合活性と色調の良好なポリエステル樹脂が得られる。更に、クエン酸キレートチタン錯体を用いる場合でも、エステル化反応の段階で添加することにより、エステル化反応後に添加する場合に比べ、重合活性と色調が良好で、末端カルボキシル基の少ないポリエステル樹脂が得られる。この点については、チタン触媒はエステル化反応の触媒効果もあり、エステル化段階で添加することでエステル化反応終了時におけるオリゴマー酸価が低くなり、以降の重縮合反応がより効率的に行なわれること、またクエン酸を配位子とする錯体はチタンアルコキシド等に比べて加水分解耐性が高く、エステル化反応過程において加水分解せず、本来の活性を維持したままエステル化及び重縮合反応の触媒として効果的に機能するものと推定される。
また、一般に、末端COOH量が多いほど耐加水分解性が悪化することが知られており、末端カルボキシル基量が少なくなることで、耐加水分解性の向上が期待される。
【0073】
クエン酸キレートチタン錯体としては、例えば、ジョンソン・マッセイ社製のVERTEC AC−420など市販品として容易に入手可能である。
【0074】
芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールは、これらが含まれたスラリーを調製し、これをエステル化反応工程に連続的に供給することにより導入することができる。
【0075】
エステル化反応させる際においては、チタン化合物を触媒として用い、Ti添加量が元素換算値で1ppm以上30ppm以下、より好ましくは3ppm以上20ppm以下、さらに好ましくは5ppm以上15ppm以下の範囲で重合反応させる態様が好ましい。チタン添加量は、1ppm以上であると、重合速度が速くなる点で有利であり、30ppm以下であると、良好な色調が得られる点で有利である。
【0076】
また、チタン化合物としては、有機キレートチタン錯体以外には、一般に、酸化物、水酸化物、アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、蓚酸塩、及びハロゲン化物等が挙げられる。本発明の効果を損なわない範囲であれば、有機キレートチタン錯体に加えて、他のチタン化合物を併用してもよい。
このようなチタン化合物の例としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートテトラマー、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート等のチタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解により得られるチタン酸化物、チタンアルコキシドと珪素アルコキシドもしくはジルコニウムアルコキシドとの混合物の加水分解により得られるチタン−珪素もしくはジルコニウム複合酸化物、酢酸チタン、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウム、蓚酸チタンナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸−水酸化アルミニウム混合物、塩化チタン、塩化チタン−塩化アルミニウム混合物、チタンアセチルアセトナート等が挙げられる。
【0077】
このようなチタン化合物を用いたTi系ポリエステルの合成には、例えば、特公平8−30119号公報、特許2543624号、特許3335683号、特許3717380号、特許3897756号、特許3962226号、特許3979866号、特許3996871号、特許4000867号、特許4053837号、特許4127119号、特許4134710号、特許4159154号、特許4269704号、特許4313538号等に記載の方法を適用することができる。
【0078】
本発明においては、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを、チタン化合物を含有する触媒の存在下で重合するとともに、チタン化合物の少なくとも一種が有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体であって、有機キレートチタン錯体とマグネシウム化合物と置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルとをこの順序で添加する過程を少なくとも含むエステル化反応工程と、エステル化反応工程で生成されたエステル化反応生成物を重縮合反応させて重縮合物を生成する重縮合工程と、を設けて構成されているポリエステル樹脂の製造方法により作製されるのが好ましい。
【0079】
この場合、エステル化反応の過程において、チタン化合物として有機キレートチタン錯体を存在させた中に、マグネシウム化合物を添加し、次いで特定の5価のリン化合物を添加する添加順とすることで、チタン触媒の反応活性を適度に高く保ち、マグネシウムによる静電印加特性を付与しつつ、かつ重縮合における分解反応を効果的に抑制することができるため、結果として着色が少なく、高い静電印加特性を有するとともに高温下に曝された際の黄変色が改善されたポリエステル樹脂が得られる。
これにより、重合時の着色及びその後の溶融製膜時における着色が少なくなり、従来のアンチモン(Sb)触媒系のポリエステル樹脂に比べて黄色味が軽減され、また、透明性の比較的高いゲルマニウム触媒系のポリエステル樹脂に比べて遜色のない色調、透明性を持ち、しかも耐熱性に優れたポリエステル樹脂を提供できる。また、コバルト化合物や色素などの色調調整材を用いずに高い透明性を有し、黄色味の少ないポリエステル樹脂が得られる。
【0080】
このポリエステル樹脂は、透明性に関する要求の高い用途(例えば、光学用フィルム、工業用リス等)に利用が可能であり、高価なゲルマニウム系触媒を用いる必要がないため、大幅なコスト低減が図れる。加えて、Sb触媒系で生じやすい触媒起因の異物の混入も回避されるため、製膜過程での故障の発生や品質不良が軽減され、得率向上による低コスト化も図ることができる。
【0081】
エステル化反応させるにあたり、チタン化合物である有機キレートチタン錯体と添加剤としてマグネシウム化合物と5価のリン化合物とをこの順に添加する過程を設ける。このとき、有機キレートチタン錯体の存在下、エステル化反応を進め、その後はマグネシウム化合物の添加を、リン化合物の添加前に開始する。
【0082】
<リン化合物>
5価のリン化合物としては、置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルの少なくとも一種が用いられることが好ましい。本発明における5価のリン酸エステルとしては、例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリ−n−ブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリス(トリエチレングリコール)、リン酸メチルアシッド、リン酸エチルアシッド、リン酸イソプロピルアシッド、リン酸ブチルアシッド、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸トリエチレングリコールアシッド等が挙げられる。
【0083】
5価のリン酸エステルの中では、炭素数2以下の低級アルキル基を置換基として有するリン酸エステル〔(RO)P=O;R=炭素数1又は2のアルキル基〕が好ましく、具体的には、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルが特に好ましい。
【0084】
特に、チタン化合物として、クエン酸又はその塩が配位するキレートチタン錯体を触媒として用いる場合、5価のリン酸エステルの方が3価のリン酸エステルよりも重合活性、色調が良好であり、更に炭素数2以下の5価のリン酸エステルを添加する態様の場合に、重合活性、色調、耐熱性のバランスを特に向上させることができる。
【0085】
リン化合物の添加量としては、P元素換算値が50ppm以上90ppm以下の範囲となる量が好ましい。リン化合物の量は、より好ましくは60ppm以上80ppm以下となる量であり、さらに好ましくは65ppm以上75ppm以下となる量である。
【0086】
<マグネシウム化合物>
マグネシウム化合物を含めることにより、静電印加性が向上する。この場合に着色がおきやすいが、本発明においては、着色を抑え、優れた色調、耐熱性が得られる。
マグネシウム化合物としては、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等のマグネシウム塩が挙げられる。中でも、エチレングリコールへの溶解性の観点から、酢酸マグネシウムが最も好ましい。
【0087】
マグネシウム化合物の添加量としては、高い静電印加性を付与するためには、Mg元素換算値が50ppm以上となる量が好ましく、50ppm以上100ppm以下の範囲となる量がより好ましい。マグネシウム化合物の添加量は、静電印加性の付与の点で、好ましくは60ppm以上90ppm以下の範囲となる量であり、さらに好ましくは70ppm以上80ppm以下の範囲となる量である。
【0088】
エステル化反応工程においては、触媒成分であるチタン化合物と、添加剤であるマグネシウム化合物及びリン化合物とを、下記式(i)から算出される値Zが下記の関係式(ii)を満たすように、添加して溶融重合させる場合が特に好ましい。ここで、P含有量は芳香環を有しない5価のリン酸エステルを含むリン化合物全体に由来するリン量であり、Ti含有量は、有機キレートチタン錯体を含むTi化合物全体に由来するチタン量である。このように、チタン化合物を含む触媒系でのマグネシウム化合物及びリン化合物の併用を選択し、その添加タイミング及び添加割合を制御することによって、チタン化合物の触媒活性を適度に高く維持しつつも、黄色味の少ない色調が得られ、重合反応時やその後の製膜時(溶融時)などで高温下に曝されても黄着色を生じ難い耐熱性を付与することができる。
(i)Z=5×(P含有量[ppm]/P原子量)−2×(Mg含有量[ppm]/Mg原子量)−4×(Ti含有量[ppm]/Ti原子量)
(ii)+0≦Z≦+5.0
これは、リン化合物はチタンに作用するのみならずマグネシウム化合物とも相互作用することから、3者のバランスを定量的に表現する指標となるものである。
前記式(i)は、反応可能な全リン量から、マグネシウムに作用するリン分を除き、チタンに作用可能なリンの量を表現したものである。値Zが正の場合は、チタンを阻害するリンが余剰な状況にあり、逆に負の場合はチタンを阻害するために必要なリンが不足する状況にあるといえる。反応においては、Ti、Mg、Pの各原子1個は等価ではないことから、式中の各々のモル数に価数を乗じて重み付けを施してある。
【0089】
本発明においては、特殊な合成等が不要であり、安価でかつ容易に入手可能なチタン化合物、リン化合物、マグネシウム化合物を用いて、反応に必要とされる反応活性を持ちながら、色調及び熱に対する着色耐性に優れたポリエステル樹脂を得ることができる。
【0090】
式(ii)においては、重合反応性を保った状態で、色調及び熱に対する着色耐性をより高める観点から、+1.0≦Z≦+4.0を満たす場合が好ましく、+1.5≦Z≦+3.0を満たす場合がより好ましい。
【0091】
本発明における好ましい態様として、エステル化反応が終了する前に、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールに、1ppm以上30ppm以下のクエン酸又はクエン酸塩を配位子とするキレートチタン錯体を添加後、該キレートチタン錯体の存在下に、60ppm以上90ppm以下(より好ましくは70ppm以上80ppm以下)の弱酸のマグネシウム塩を添加し、該添加後にさらに、60ppm以上80ppm以下(より好ましくは65ppm以上75ppm以下)の、芳香環を置換基として有しない5価のリン酸エステルを添加する態様が挙げられる。
【0092】
エステル化反応は、少なくとも2個の反応器を直列に連結した多段式装置を用いて、エチレングリコールが還流する条件下で、反応によって生成した水又はアルコールを系外に除去しながら実施することができる。
【0093】
また、エステル化反応は、一段階で行なってもよいし、多段階に分けて行なうようにしてもよい。
エステル化反応を一段階で行なう場合、エステル化反応温度は230〜260℃が好ましく、240〜250℃がより好ましい。
エステル化反応を多段階に分けて行なう場合、第一反応槽のエステル化反応の温度は230〜260℃が好ましく、より好ましくは240〜250℃であり、圧力は1.0〜5.0kg/cmが好ましく、より好ましくは2.0〜3.0kg/cmである。第二反応槽のエステル化反応の温度は230〜260℃が好ましく、より好ましくは245〜255℃であり、圧力は0.5〜5.0kg/cm、より好ましくは1.0〜3.0kg/cmである。さらに3段階以上に分けて実施する場合は、中間段階のエステル化反応の条件は、前記第一反応槽と最終反応槽の間の条件に設定するのが好ましい。
【0094】
−重縮合−
重縮合は、エステル化反応で生成されたエステル化反応生成物を重縮合反応させて重縮合物を生成する。重縮合反応は、1段階で行なってもよいし、多段階に分けて行なうようにしてもよい。
【0095】
エステル化反応で生成したオリゴマー等のエステル化反応生成物は、引き続いて重縮合反応に供される。この重縮合反応は、多段階の重縮合反応槽に供給することにより好適に行なうことが可能である。
【0096】
例えば、3段階の反応槽で行なう場合の重縮合反応条件は、第一反応槽は、反応温度が255〜280℃、より好ましくは265〜275℃であり、圧力が100〜10torr(13.3×10−3〜1.3×10−3MPa)、より好ましくは50〜20torr(6.67×10−3〜2.67×10−3MPa)であって、第二反応槽は、反応温度が265〜285℃、より好ましくは270〜280℃であり、圧力が20〜1torr(2.67×10−3〜1.33×10−4MPa)、より好ましくは10〜3torr(1.33×10−3〜4.0×10−4MPa)であって、最終反応槽内における第三反応槽は、反応温度が270〜290℃、より好ましくは275〜285℃であり、圧力が10〜0.1torr(1.33×10−3〜1.33×10−5MPa)、より好ましくは5〜0.5torr(6.67×10−4〜6.67×10−5MPa)である態様が好ましい。
【0097】
重縮合において得られた重縮合物は、ペレット状などの小片形状の形状にしてもよい。
【0098】
上記のエステル化反応及び重縮合を行うことにより、チタン原子(Ti)、マグネシウム原子(Mg)、及びリン原子(P)を含むと共に、下記式(i)から算出される値Zが、下記の関係式(ii)を満たすポリエステル樹脂を得ることができる。
(i)Z=5×(P含有量[ppm]/P原子量)−2×(Mg含有量[ppm]/Mg原子量)−4×(Ti含有量[ppm]/Ti原子量)
(ii)+0≦Z≦+5.0
【0099】
ポリエステル樹脂は、+0≦Z≦+5.0を満たすものであることで、Ti、P、及びMgの3元素のバランスが適切に調節されているので、重合反応性を保った状態で、色調と耐熱性(高温下での黄着色の低減)とに優れ、かつ高い静電印加性を維持することができる。また、本発明では、コバルト化合物や色素などの色調調整材を用いずに高い透明性を有し、黄色味の少ないポリエステル樹脂を得ることができる。
【0100】
前記式(i)は既述のように、リン化合物、マグネシウム化合物、及びリン化合物の3者のバランスを定量的に表現したものであり、反応可能な全リン量から、マグネシウムに作用するリン分を除き、チタンに作用可能なリンの量を表したものである。値Zが+0未満、つまりチタンに作用するリン量が少な過ぎると、チタンの触媒活性(重合反応性)は高まるが、耐熱性が低下し、得られるポリエステル樹脂の色調は黄色味を帯び、重合後の例えば製膜時(溶融時)にも着色し、色調が低下する。また、値Zが+5.0を超える、つまりチタンに作用するリン量が多過ぎると、得られるポリエステルの耐熱性及び色調は良好なものの、触媒活性が低下しすぎ、生成性に劣る。
本発明においては、上記同様の理由から、前記式(ii)は、1.0≦Z≦4.0を満たす場合が好ましく、1.5≦Z≦3.0を満たす場合がより好ましい。
【0101】
Ti、Mg、及びPの各元素の測定は、高分解能型高周波誘導結合プラズマ−質量分析(HR-ICP-MS;SIIナノテクノロジー社製AttoM)を用いてPET中の各元素を定量し、得られた結果から含有量[ppm]を算出することにより行なうことができる。
【0102】
また、生成されるポリエステル樹脂は、更に、下記の関係式(iii)で表される関係を満たすものであることが好ましい。
重縮合後にペレットとしたときのb値 ≦ 4.0 ・・・(iii)
重縮合して得られたポリエステル樹脂をペレット化し、該ペレットのb値が4.0以下であることにより、黄色味が少なく、透明性に優れる。b値が3.0以下である場合、Ge触媒で重合したポリエステル樹脂と遜色ない色調になる。
【0103】
b値は、色味を表す指標となるものであり、ND−101D(日本電色工業(株)製)を用いて計測される値である。
【0104】
また更に、ポリエステル樹脂は、下記の関係式(iv)で表される関係を満たしていることが好ましい。
色調変化速度[Δb/分]≦ 0.15 ・・・(iv)
重縮合して得られたポリエステル樹脂ペレットを、300℃で溶融保持した際の色調変化速度[Δb/分]が0.15以下であることにより、加熱下に曝された際の黄着色を低く抑えることができる。これにより、例えば押出機で押し出して製膜する等の場合に、黄着色が少なく、色調に優れたフィルムを得ることができる。
【0105】
前記色調変化速度は、値が小さいほど好ましく、0.10以下であることが特に好ましい。
【0106】
色調変化速度は、熱による色の変化を表す指標となるものであり、下記方法により求められる値である。すなわち、
ポリエステル樹脂のペレットを、射出成形機(例えば東芝機械(株)製のEC100NII)のホッパーに投入し、シリンダ内(300℃)で溶融保持させた状態で、その保持時間を変更してプレート状に成形し、このときのプレートb値をND−101D(日本電色工業(株)製)により測定する。b値の変化をもとに変化速度[Δb/分]を算出する。
【0107】
以上のようにして得られたポリエステル樹脂は、光安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、易滑剤(微粒子)、核剤(結晶化剤)、結晶化阻害剤などの添加剤を更に含有することができる。
【0108】
−固相重合−
本発明の製造方法に用いるポリエステル樹脂は、更に、固相重合を経たものであってもよい。固相重合は、既述の合成方法により得られたポリエステル樹脂又は市販のポリエステル樹脂をペレット状などの小片形状にし、これを用いて好適に行なえる。固相重合は、150℃以上250℃以下、より好ましくは170℃以上240℃以下、さらに好ましくは180℃以上230℃以下で1時間以上50時間以下、より好ましくは5時間以上40時間以下、さらに好ましくは10時間以上30時間以下の条件で行なうのが好ましい。また、固相重合は、真空中あるいは窒素気流中で行なうことが好ましい。
【0109】
固相重合を行うことにより、ポリエステルフィルムの含水率、結晶化度、末端カルボキシル基の濃度(AV:Acid value)、固有粘度(IV:Interisic viscosity)を、それぞれ本発明における好適な範囲に制御できる。
【0110】
固相重合は、連続法(タワーの中に樹脂を充満させ、これを加熱しながらゆっくり所定の時間滞流させた後、順次送り出す方法)でもよく、バッチ法(容器の中に樹脂を投入し、所定の時間加熱する方法)でもよい。具体的には、固相重合として、特許第2621563号、特許第3121876号、特許第3136774号、特許第3603585号、特許第3616522号、特許第3617340号、特許第3680523号、特許第3717392号、特許第4167159号等に記載の方法を用いることができる。
【0111】
固相重合の温度は、170℃以上240℃以下が好ましく、より好ましくは180℃以上230℃以下であり、さらに好ましくは190℃以上220℃以下である。温度が上記範囲内であると、末端COOH量(AV)がより大きく低減することの点で好ましい。また、固相重合時間は、5時間以上100時間以下が好ましく、より好ましくは10時間以上75時間以下であり、さらに好ましくは15時間以上50時間以下である。時間が上記範囲内であると、末端COOH量(AV)と固有粘度(IV)を本発明における好ましい範囲に容易に制御できる点で好ましい。固相重合は、真空中あるいは窒素雰囲気下で行なうことが好ましい。
【0112】
本発明の製造方法に用いるポリエステル樹脂は、固有粘度(IV)が0.6dl/g以上0.9dl/g以下であることが好ましく、更に好ましくは、0.75dl/g以上0.88dl/g以下である。
【0113】
固有粘度(IV)は、溶液粘度(η)と溶媒粘度(η)の比η(=η/η;相対粘度)から1を引いた比粘度(ηsp=η−1)を濃度で割った値を濃度がゼロの状態に外挿した値である。IVは、ウベローデ型粘度計を用い、ポリエステルを1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール(=2/3[質量比])混合溶媒に溶解させ、25℃の溶液粘度から求められる。
【0114】
本発明の製造方法に用いるポリエステル樹脂は、末端COOH量(AV)が、5eq/t以上25eq/t以下であることが好ましく、固有粘度(IV)が0.6dl/g以上0.9dl/g以下であることが好ましく、更に好ましくは、0.75dl/g以上0.88dl/g以下である。
末端COOH量は、H. A. Pohl, Anal. Chem. 26 (1954) p.2145に記載の方法に従って、滴定法にて測定される値である。
【0115】
本発明のポリエステルフィルムは、以上述べた本発明の製造方法により得られたポリエステルフィルムであり、その厚みは、100μm以上350μm以下が好ましく、より好ましくは240μm以上350μm以下、更に好ましくは250μm以上340μm以下である。
【0116】
なお、本明細書におけるポリエステルフィルムの厚みは、接触式膜厚測定計(ヤマブン)を用いて測定した、フィルムの平均厚みである。具体的には、接触式膜厚測定計により、ポリエステルフィルムの長手方向に0.5mに渡り等間隔に50点をサンプリングし、幅方向に製膜全幅にわたり等間隔(幅方向に50等分した点)に50点をサンプリングし、これらの100点の厚みを測定する。得られた100点の厚みの平均値を求め、これをポリエステルフィルムの厚みとする。
【0117】
本発明のポリエステルフィルムは、耐加水分解性及び耐電圧性に優れたポリエステルフィルムである。
【0118】
本発明のポリエステルフィルムの耐加水分解性については、破断伸度保持時間により評価することができる。破断伸度保持時間は、強制的に加熱処理(サーモ処理)することで加水分解を促進させた際の破断伸度の低下から求められる。
【0119】
本発明のポリエステルフィルムは、70時間〜150時間[hr]の破断伸度保持時間を持つことが好ましい。破断伸度保持時間が70時間以上であると、上記のように加水分解の進行が抑えられており、剥がれ、密着不良を防ぐことができる。また、破断伸度保持時間が150時間以下であると、フィルム含水率が少なくなるためにフィルムに結晶構造が発達し過ぎるのが抑えられ、弾性率、伸張応力を剥がれが生じない程度に保つことができる。
中でも、好ましい破断伸度保持時間は、80時間〜145時間であり、さらに好ましくは80〜140時間である。
【0120】
破断伸度保持時間は、85℃、85%RHで湿熱処理(サーモ処理)した後の破断伸度保持率が、湿熱処理前の破断伸度に対して50%以上の範囲に保持できる破断伸度半減時間[hr]である。破断伸度保持率は、下記式で求められる。
破断伸度保持率[%]=(85℃サーモ処理後の破断伸度)/(サーモ処理前の破断伸度)×100
【0121】
本明細書では、具体的には、85℃、85%RHで、10時間〜300時間[hr]の熱処理(サーモ処理)を10時間間隔で実施した後、各サーモ処理サンプルの破断伸度を測定し、得られた測定値をサーモ処理前の破断伸度で除算し、各サーモ処理時間での破断伸度保持率を求める。そして、横軸にサーモ時間、縦軸に破断伸度保持率をとってプロットし、これを結んで破断伸度保持率が50%となるまでの処理時間[hr]を求める。
【0122】
破断伸度は、引っ張り試験機にポリエステルフィルムのサンプルをセットし、25℃、60%RH環境下で20mm/分で引っ張ることにより破断するまでの伸度を、ポリエステルフィルムをTD方向(横方向;Transverse Direction)に10等分した各点にて、20cm間隔でMD方向(縦方向;Machine Direction)に位置をずらしながら5回繰り返し測定して、計50点を測定し、得られた値を平均して求められる値である。なお、上記で得られる50点の破断伸度保持時間の最大値と最小値の差(絶対値)を、50点の破断伸度保持時間の平均値で除算し百分率で示すことにより、破断伸度保持時間分布[%]を得ることができる。
【0123】
また、本発明のポリエステルフィルムの耐電圧は、部分放電試験器KPD2050(菊水電子工業(株)製)を用い、部分放電電圧を求めることで評価することができる。
【0124】
[太陽電池用バックシート]
本発明の太陽電池用バックシートは、本発明の製造方法により得られたポリエステルフィルム(本発明のポリエステルフィルム)を備えて構成されたものであり、被着物に対して易接着性の易接着性層、紫外線吸収層、光反射性のある白色層などの機能性層を少なくとも1層設けて構成することができる。
本発明の太陽電池用バックシートは、本発明のポリエステルフィルムを備えるので、長期使用時において安定した耐久性能を示す。
【0125】
本発明の太陽電池用バックシートは、例えば、本発明の製造方法により得られたポリエステルフィルムに下記の機能性層を塗設してもよい。塗設には、ロールコート法、ナイフエッジコート法、グラビアコート法、カーテンコート法等の公知の塗布技術を用いることができる。
また、これらの塗設前に表面処理(火炎処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理等)を実施してもよい。さらに、粘着剤を用いて貼り合わせることも好ましい。
【0126】
−易接着性層−
太陽電池用バックシートは、太陽電池モジュールを構成する場合に太陽電池素子が封止剤で封止された電池側基板の該封止材と向き合う側に、易接着性層を有していることが好ましい。封止剤(特にエチレン−酢酸ビニル共重合体)を含む被着物(例えば太陽電池素子が封止材で封止された電池側基板の封止剤の表面)に対して接着性を示す易接着性層を設けることにより、バックシートと封止材との間を強固に接着することができる。具体的には、易接着性層は、特に封止材として用いられるEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)との接着力が10N/cm以上、好ましくは20N/cm以上であることが好ましい。
さらに、易接着性層は、太陽電池モジュールの使用中にバックシートの剥離が起こらないことが必要であり、そのために易接着性層は高い耐湿熱性を有することが望ましい。
【0127】
(1)バインダー
易接着性層はバインダーの少なくとも1種を含有することができる。
バインダーとしては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることができる。中でも、耐久性の観点から、アクリル樹脂、ポリオレフィンが好ましい。また、アクリル樹脂として、アクリルとシリコーンとの複合樹脂も好ましい。好ましいバインダーの例として、以下のものを挙げることができる。
前記ポリオレフィンの例として、ケミパールS−120、同S−75N(ともに三井化学(株)製)が挙げられる。前記アクリル樹脂の例として、ジュリマーET−410、同SEK−301(ともに日本純薬工業(株)製)が挙げられる。また、前記アクリルとシリコーンとの複合樹脂の例として、セラネートWSA1060、同WSA1070(ともにDIC(株)製)、及びH7620、H7630、H7650(ともに旭化成ケミカルズ(株)製)が挙げられる。
前記バインダーの量は、0.05〜5g/mの範囲が好ましく、0.08〜3g/mの範囲が特に好ましい。バインダー量は、0.05g/m以上であることでより良好な接着力が得られ、5g/m以下であることでより良好な面状が得られる。
【0128】
(2)微粒子
易接着性層は、微粒子の少なくとも1種を含有することができる。易接着性層は、微粒子を層全体の質量に対して5質量%以上含有することが好ましい。
微粒子としては、シリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化錫等の無機微粒子が好適に挙げられる。特にこの中でも、湿熱雰囲気に曝されたときの接着性の低下が小さい点で、酸化錫、シリカの微粒子が好ましい。
微粒子の粒径は、10〜700nm程度が好ましく、より好ましくは20〜300nm程度である。粒径が前記範囲の微粒子を用いることにより、良好な易接着性を得ることができる。微粒子の形状には特に制限はなく、球形、不定形、針状形等のものを用いることができる。
微粒子の易接着性層中における添加量としては、易接着性層中のバインダー当たり5〜400質量%が好ましく、より好ましくは50〜300質量%である。微粒子の添加量は、5質量%以上であると、湿熱雰囲気に曝されたときの接着性に優れており、1000質量%以下であると、易接着性層の面状がより良好である。
【0129】
(3)架橋剤
易接着性層は、架橋剤の少なくとも1種を含有することができる。
架橋剤の例としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。湿熱経時後の接着性を確保する観点から、これらの中でも特にオキサゾリン系架橋剤が好ましい。
前記オキサゾリン系架橋剤の具体例として、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2、2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等が挙げられる。さらに、これらの化合物の(共)重合体も好ましく利用することができる。
また、オキサゾリン基を有する化合物として、エポクロスK2010E、同K2020E、同K2030E、同WS500、同WS700(いずれも日本触媒化学工業(株)製)等も利用できる。
架橋剤の易接着性層中における好ましい添加量は、易接着性層のバインダー当たり5〜50質量%が好ましく、より好ましくは20〜40質量%である。架橋剤の添加量は、5質量%以上であることで良好な架橋効果が得られ、反射層の強度低下や接着不良が起こりにくく、50質量%以下であることで塗布液のポットライフをより長く保てる。
【0130】
(4)添加剤
易接着性層には、必要に応じて、更にポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリカ等の公知のマット剤、アニオン系やノニオン系などの公知の界面活性剤などを添加してもよい。
【0131】
(5)易接着性層の形成方法
易接着性層の形成方法としては、易接着性を有するポリマーシートをポリエステルフィルムに貼合する方法や塗布による方法があるが、塗布による方法は、簡便でかつ均一性の高い薄膜での形成が可能である点で好ましい。塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターなどの公知の方法を利用することができる。塗布に用いる塗布液の溶媒としては、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトンのような有機溶媒でもよい。溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0132】
(6)物性
易接着性層の厚みには特に制限はないが、通常は0.05μm〜8μmが好ましく、より好ましくは0.1μm〜5μmの範囲である。易接着性層の厚みは、0.05μm以上であることで必要とする易接着性が得られやすく、8μm以下であることで面状をより良好に維持することができる。
また、易接着性層は、ポリエステルフィルムとの間に着色層(特に反射層)が配置された場合の該着色層の効果を損なわない観点から、透明性を有していることが好ましい。
【0133】
−紫外線吸収層−
本発明の太陽電池用バックシートには、上記の紫外線吸収剤を含む紫外線吸収層が設けられてもよい。紫外線吸収層は、ポリエステルフィルム上の任意の位置に配置することができる。
紫外線吸収剤は、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロースエステル樹脂等とともに、溶解、分散させて用いることが好ましく、400nm以下の光の透過率を20%以下にするのが好ましい。
【0134】
−着色層−
本発明の太陽電池用バックシートには、着色層を設けることができる。着色層は、ポリエステルフィルムの表面に接触させて、あるいは他の層を介して配置される層であり、顔料やバインダーを用いて構成することができる。
【0135】
着色層の第一の機能は、入射光のうち太陽電池セルで発電に使われずにバックシートに到達した光を反射させて太陽電池セルに戻すことにより、太陽電池モジュールの発電効率を上げることにある。第二の機能は、太陽電池モジュールをオモテ面側から見た場合の外観の装飾性を向上することにある。一般に太陽電池モジュールをオモテ面側から見ると、太陽電池セルの周囲にバックシートが見えており、バックシートに着色層を設けることにより装飾性を向上させることができる。
【0136】
(1)顔料
着色層は、顔料の少なくとも1種を含有することができる。顔料は、2.5g/m〜8.5g/mの範囲で含有されるのが好ましい。より好ましい顔料含有量は、4.5g/m〜7.5g/mの範囲である。顔料の含有量が2.5g/m以上であることで、必要な着色が得られやすく、光の反射率や装飾性をより優れたものに調整することができる。顔料の含有量が8.5g/m以下であることで、着色層の面状をより良好に維持することができる。
【0137】
顔料としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、群青、紺青、カーボンブラック等の無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料が挙げられる。これら顔料のうち、入射する太陽光を反射する反射層として着色層を構成する観点からは、白色顔料が好ましい。白色顔料としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルクなどが好ましい。
【0138】
顔料の平均粒径としては、0.03μm〜0.8μmが好ましく、より好ましくは0.15μm〜0.5μm程度が好ましい。平均粒径が前記範囲外であると、光の反射効率が低下する場合がある。
入射した太陽光を反射する反射層として着色層を構成する場合、顔料の反射層中における好ましい添加量は、用いる顔料の種類や平均粒径により変化するため一概には言えないが、1.5g/m〜15g/mが好ましく、より好ましくは3〜10g/m程度である。添加量は、1.5g/m以上であることで必要な反射率が得られやすく、15g/m以下であることで反射層の強度をより一層高く維持することができる。
【0139】
(2)バインダー
着色層は、バインダーの少なくとも1種を含有することができる。バインダーを含む場合の量としては、前記顔料に対して、15〜200質量%の範囲が好ましく、17〜100質量%の範囲がより好ましい。バインダーの量は、15質量%以上であることで着色層の強度を一層良好に維持することができ、200質量%以下であることで良好な反射率や装飾性を得ることができる。
着色層に好適なバインダーとしては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることができる。バインダーは、耐久性の観点から、アクリル樹脂、ポリオレフィンが好ましい。また、アクリル樹脂として、アクリルとシリコーンとの複合樹脂も好ましい。好ましいバインダーの例として、以下のものが挙げられる。
前記ポリオレフィンの例としては、ケミパールS−120、同S−75N(ともに三井化学(株)製)などが挙げられる。前記アクリル樹脂の例としては、ジュリマーET−410、SEK−301(ともに日本純薬工業(株)製)などが挙げられる。前記アクリルとシリコーンとの複合樹脂の例としては、セラネートWSA1060、WSA1070(ともにDIC(株)製)、H7620、H7630、H7650(ともに旭化成ケミカルズ(株)製)等を挙げることができる。
【0140】
(3)添加剤
着色層には、バインダー及び顔料以外に、必要に応じて、さらに架橋剤、界面活性剤、フィラー等を添加してもよい。
【0141】
架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。架橋剤の着色剤中における添加量は、着色層のバインダーあたり5〜50質量%が好ましく、より好ましくは10〜40質量%である。架橋剤の添加量は、5質量%以上であることで良好な架橋効果が得られ、着色層の強度や接着性を高く維持することができ、また50質量%以下であることで、塗布液のポットライフをより長く維持することができる。
【0142】
界面活性剤としては、アニオン系やノニオン系等の公知の界面活性剤を利用することができる。界面活性剤の添加量は、0.1〜15mg/mが好ましく、より好ましくは0.5〜5mg/mが好ましい。界面活性剤の添加量は、0.1mg/m以上であることでハジキの発生が効果的に抑制され、また、15mg/m以下であることで接着性に優れる。
【0143】
さらに、着色層には、上記の顔料とは別に、シリカ等のフィラーなどを添加してもよい。フィラーの添加量は、着色層のバインダーあたり20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下である。フィラーを含むことにより、着色層の強度を高めることができる。また、フィラーの添加量が20質量%以下であることで、顔料の比率が保てるため、良好な光反射性(反射率)や装飾性が得られる。
【0144】
(4)着色層の形成方法
着色層の形成方法としては、顔料を含有するポリマーシートをポリエステルフィルムに貼合する方法、ポリエステルフィルム成形時に着色層を共押出しする方法、塗布による方法等がある。このうち、塗布による方法は、簡便でかつ均一性の高い薄膜での形成が可能である点で好ましい。塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターなどの公知の方法を利用することができる。塗布に用いられる塗布液の溶媒としては、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトンのような有機溶媒でもよい。しかし、環境負荷の観点から、水を溶媒とすることが好ましい。
溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0145】
(5)物性
着色層は、白色顔料を含有して白色層(光反射層)として構成されることが好ましい。反射層である場合の550nmの光反射率としては、75%以上であるのが好ましい。反射率が75%以上であると、太陽電池セルを素通りして発電に使用されなかった太陽光をセルに戻すことができ、発電効率を上げる効果が高い。
【0146】
白色層(光反射層)の厚みは、1μm〜20μmが好ましく、1μm〜10μmがより好ましく、更に好ましくは1.5μm〜10μm程度である。膜厚が1μm以上である場合、必要な装飾性や反射率が得られやすく、20μm以下であると良好な面状を得ることができる。
【0147】
−下塗り層−
本発明の太陽電池用バックシートには、下塗り層を設けることができる。下塗り層は、例えば、着色層が設けられるときには、着色層とポリエステルフィルムとの間に下塗り層を設けてもよい。下塗り層は、バインダー、架橋剤、界面活性剤等を用いて構成することができる。
【0148】
下塗り層中に含有するバインダーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等が挙げられる。下塗り層には、バインダー以外にエポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤、アニオン系やノニオン系等の界面活性剤、シリカ等のフィラーなどを添加してもよい。
【0149】
下塗り層を塗布形成するための方法や用いる塗布液の溶媒には、特に制限はない。
塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターを利用することができる。前記溶媒は、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトンのような有機溶媒でもよい。溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0150】
塗布は、2軸延伸した後のポリエステルフィルムに塗布してもよいし、1軸延伸後のポリエステルフィルムに塗布してもよい。この場合、塗布後に初めの延伸と異なる方向に更に延伸してフィルムとしてもよい。さらに、延伸前のポリエステルフィルムに塗布した後に、2方向に延伸してもよい。
下塗り層の厚みは、0.05μm〜2μmが好ましく、より好ましくは0.1μm〜1.5μm程度の範囲が好ましい。膜厚が0.05μm以上であることで必要な接着性が得られやすく、2μm以下であることで、面状を良好に維持することができる。
【0151】
−フッ素系樹脂層・ケイ素系樹脂層−
本発明の太陽電池用バックシートには、フッ素系樹脂層及びケイ素系(Si系)樹脂層の少なくとも一方を設けることが好ましい。フッ素系樹脂層やSi系樹脂層を設けることで、ポリエステル表面の汚れ防止、耐候性向上が図れる。具体的には、特開2007−35694号公報、特開2008−28294号公報、WO2007/063698明細書に記載のフッ素樹脂系塗布層を有していることが好ましい。
また、テドラー(DuPont社製)等のフッ素系樹脂フィルムを張り合わせることも好ましい。
【0152】
フッ素系樹脂層及びSi系樹脂層の厚みは、各々、1μm以上50μm以下の範囲が好ましく、より好ましくは1μm以上40μm以下の範囲が好ましく、更に好ましくは1μm以上10μm以下である。
【0153】
−無機層−
本発明の太陽電池用バックシートは、更に、無機層が設けられた形態も好ましい。無機層を設けることで、ポリエステルへの水やガスの浸入を防止する防湿性やガスバリア性の機能を与えることができる。無機層は、ポリエステルフィルムの表裏いずれに設けてもよいが、防水、防湿等の観点から、ポリエステルフィルムの電池側基板と対向する側(前記着色層や易接着層の形成面側)とは反対側に好適に設けられる。
【0154】
無機層の水蒸気透過量(透湿度)としては、10g/m・d〜10−6g/m・dが好ましく、より好ましくは10g/m・d〜10−5g/m・dであり、さらに好ましくは10g/m・d〜10−4g/m・dである。
このような透湿度を有する無機層を形成するには、下記の乾式法が好適である。
【0155】
乾式法によりガスバリア性の無機層(以下、ガスバリア層ともいう。)を形成する方法としては、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、誘導加熱蒸着、プラズマやイオンビームによるアシスト法などの真空蒸着法、反応性スパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、ECR(電子サイクロトロン)スパッタリング法などのスパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理的気相成長法(PVD法)、熱や光、プラズマなどを利用した化学的気相成長法(CVD法)などが挙げられる。中でも、真空下で蒸着法により膜形成する真空蒸着法が好ましい。
【0156】
ここで、ガスバリア層を形成する材料が無機酸化物、無機窒化物、無機酸窒化物、無機ハロゲン化物、無機硫化物などを主たる構成成分とする場合は、形成しようとするガスバリア層の組成と同一の材料を直接揮発させて基材などに堆積させることも可能であるが、この方法で行なう場合には、揮発中に組成が変化し、その結果、形成された膜が均一な特性を呈さない場合がある。そのため、1)揮発源として、形成するバリア層と同一組成の材料を用い、無機酸化物の場合は酸素ガスを、無機窒化物の場合は窒素ガスを、無機酸窒化物の場合は酸素ガスと窒素ガスの混合ガスを、無機ハロゲン化物の場合はハロゲン系ガスを、無機硫化物の場合は硫黄系ガスを、それぞれ系内に補助的に導入しながら揮発させる方法、2)揮発源として無機物群を用い、これを揮発させながら、無機酸化物の場合は酸素ガスを、無機窒化物の場合は窒素ガスを、無機酸窒化物の場合は酸素ガスと窒素ガスの混合ガスを、無機ハロゲン化物の場合はハロゲン系ガスを、無機硫化物の場合は硫黄系ガスを、それぞれ系内に導入し、無機物と導入したガスを反応させながら基材表面に堆積させる方法、3)揮発源として無機物群を用い、これを揮発させて、無機物群の層を形成させた後、それを無機酸化物の場合は酸素ガス雰囲気下、無機窒化物の場合は窒素ガス雰囲気下、無機酸窒化物の場合は酸素ガスと窒素ガスの混合ガス雰囲気下、無機ハロゲン化物の場合はハロゲン系ガス雰囲気下、無機硫化物の場合は硫黄系ガス雰囲気下で保持することにより無機物層と導入したガスを反応させる方法、等が挙げられる。
これらのうち、揮発源から揮発させることが容易であるという点で、2)又は3)がより好ましく用いられる。さらには、膜質の制御が容易である点で2)の方法が更に好ましく用いられる。また、バリア層が無機酸化物の場合は、揮発源として無機物群を用い、これを揮発させて、無機物群の層を形成させた後、空気中で放置することで、無機物群を自然酸化させる方法も、形成が容易であるという点で好ましい。
【0157】
また、アルミ箔を貼り合わせてバリア層として使用することも好ましい。厚みは、1μm以上30μm以下が好ましい。厚みは、1μm以上であると、経時(サーモ)中にポリエステルフィルム中に水が浸透し難くなって加水分解を生じ難く、30μm以下であると、バリア層の厚みが厚くなり過ぎず、バリア層の応力でフィルムにベコが発生することもない。
【0158】
[太陽電池モジュール]
本発明の太陽電池モジュールは、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子を、太陽光が入射する透明性の基板と既述の本発明のポリエステルフィルム(太陽電池用バックシート)との間に配置して構成されている。基板とポリエステルフィルムとの間は、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体等の樹脂(いわゆる封止材)で封止して構成することができる。
【0159】
太陽電池モジュールは、例えば、図1に示されるように、電気を取り出す金属配線(不図示)で接続された発電素子(太陽電池素子)3をエチレン・酢酸ビニル共重合体系(EVA系)樹脂等の封止剤2で封止し、これを、ガラス等の透明基板4と、本発明のポリエステルフィルムを備えたバックシート1とで挟んで互いに張り合わせることにより構成されてもよい。
【0160】
太陽電池モジュール、太陽電池セル、バックシート以外の部材については、例えば、「太陽光発電システム構成材料」(杉本栄一監修、(株)工業調査会、2008年発行)に詳細に記載されている。
【0161】
透明性の基板は、太陽光が透過し得る光透過性を有していればよく、光を透過する基材から適宜選択することができる。発電効率の観点からは、光の透過率が高いものほど好ましく、このような基板として、例えば、ガラス基板、アクリル樹脂などの透明樹脂などを好適に用いることができる。
【0162】
太陽電池素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、銅−インジウム−ガリウム−セレン、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル、ガリウム−砒素などのIII−V族やII−VI族化合物半導体系など、各種公知の太陽電池素子を適用することができる。
【実施例】
【0163】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0164】
[実施例1〜20、比較例1〜6]
以下のようにして、実施例及び比較例の各ポリエステルフィルムを作製した後、該ポリエステルフィルムを備えたバックシート、及び該バックシートを備えた太陽電池モジュールを作製した。
【0165】
〔ポリエテルフィルムの作製〕
(実施例1のポリエテルフィルムの作製)
<原料ポリエステル樹脂1の合成>
以下に示すように、テレフタル酸及びエチレングリコールを直接反応させて水を留去し、エステル化した後、減圧下で重縮合を行なう直接エステル化法を用いて、連続重合装置によりポリエステル樹脂(Ti触媒系PET)を得た。
【0166】
(1)エステル化反応
第一エステル化反応槽に、高純度テレフタル酸4.7トンとエチレングリコール1.8トンを90分かけて混合してスラリー形成させ、3800kg/hの流量で連続的に第一エステル化反応槽に供給した。更にクエン酸がTi金属に配位したクエン酸キレートチタン錯体(VERTEC AC−420、ジョンソン・マッセイ社製)のエチレングリコール溶液を連続的に供給し、反応槽内温度250℃、攪拌下で平均滞留時間約4.3時間で反応を行なった。このとき、クエン酸キレートチタン錯体は、Ti添加量が元素換算値で9ppmとなるように連続的に添加した。このとき、得られたオリゴマーの酸価は600当量/トンであった。
【0167】
この反応物を第二エステル化反応槽に移送し、攪拌下、反応槽内温度250℃で、平均滞留時間で1.2時間反応させ、酸価が200当量/トンのオリゴマーを得た。第二エステル化反応槽は内部が3ゾーンに仕切られており、第2ゾーンから酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液を、Mg添加量が元素換算値で75ppmになるように連続的に供給し、続いて第3ゾーンから、リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を、P添加量が元素換算値で65ppmになるように連続的に供給した。
【0168】
(2)重縮合反応
上記で得られたエステル化反応生成物を連続的に第一重縮合反応槽に供給し、攪拌下、反応温度270℃、反応槽内圧力20torr(2.67×10−3MPa)で、平均滞留時間約1.8時間で重縮合させた。
【0169】
更に、第二重縮合反応槽に移送し、この反応槽において攪拌下、反応槽内温度276℃、反応槽内圧力5torr(6.67×10−4MPa)で滞留時間約1.2時間の条件で反応(重縮合)させた。
【0170】
次いで、更に第三重縮合反応槽に移送し、この反応槽では、反応槽内温度278℃、反応槽内圧力1.5torr(2.0×10−4MPa)で、滞留時間1.5時間の条件で反応(重縮合)させ、反応物(ポリエチレンテレフタレート(PET))を得た。
【0171】
次に、得られた反応物を、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてポリエステル樹脂のペレット<断面:長径約4mm、短径約2mm、長さ:約3mm>を作製した。また、このペレットを180℃で真空乾燥した後、シリンダ内にスクリュを備えた一軸混練押出機の原料ホッパーに投入し、押し出すことによりフィルム成形することができる。
【0172】
得られたポリエステル樹脂について、高分解能型高周波誘導結合プラズマ−質量分析(HR-ICP-MS;SIIナノテクノロジー社製AttoM)を用いて以下に示すように測定した結果、Ti=9ppm、Mg=75ppm、P=60ppmであった。Pは当初の添加量に対して僅かに減少しているが、重合過程において揮発したものと推定される。
得られたポリマーは、固有粘度(IV)=0.65、末端COOH量(AV)=22当量/トン、融点=257℃、溶液ヘイズ=0.3%であった。
【0173】
−固相重合−
上記で重合したPETサンプルをペレット化(直径3mm、長さ7mm)し、得られた樹脂ペレットの一部は、バッチ法で固相重合を実施した。
固相重合は、樹脂ペレットを容器に投入した後、真空にして撹拌しながら、以下の条件で行った。
150℃で予備結晶化処理した後、190℃で30時間の固相重合反応を行った。
得られた固相重合後のポリエステル樹脂(PET−1)は、固有粘度(IV)=0.78dl/g、末端COOH量(AV)=27当量/トンであった。
【0174】
−未延伸フィルムの形成−
上記のように固相重合を終えたPET−1を、含水率20ppm以下に乾燥させた後、直径50mmの1軸混練押出し機のホッパーに投入し、300℃で溶融して押出した。この溶融物(メルト)をギアポンプ、濾過器(孔径20μm)を通した後、下記(a)〜(c)の条件でダイから冷却(チル)キャストドラムに押出した。なお、押出されたメルトは、静電印加法を用い冷却キャストドラムに密着させた。
<条件>
(a)ダイから押出されたメルトの厚み
押出し機の吐出量、ダイのスリット高さを調整する。これにより、2.52mm厚みを有する未延伸フィルムに調節した。
(b)メルトの冷却速度
冷却キャストドラムの温度、及び冷却キャストドラムに対面して設置された補助冷却装置から吹き出した冷風の温度と風量を調整し、メルト膜状物に当てて冷却を促進させることで、冷却速度を600℃/分に調整した。冷却速度は、押し出されたメルトのキャストドラムの着地点の温度及びキャストドラムから剥離点の温度から求める。
(c)冷却ロール中の温度ムラ
中空のチルロール(冷却キャストドラム)を用い、この中に冷媒(例えば水)を通して温調する。この際、チルロール内に邪魔板を設置し、温度ムラを発生させる。温度ムラは、チルロール表面の温度を非接触温度計(サーモビュアー)で測定しながら、邪魔板を調整する。
得られた未延伸ポリエステルフィルムのガラス転移温度は、75℃であった。
【0175】
−未延伸フィルムの延伸−
予熱ロール周辺の雰囲気温度を、セラミックヒーターを利用した温風発生器により温度制御を行い、42℃の温風を供給することで30℃に調整した。次いで、直径:180mm〜200mm、設置間隔(ローラーの面間距離):10mm、表面温度:75〜85℃の範囲とした予熱ロール15本にて、上記にて得られた未延伸フィルムを搬送した。このとき、前記の測定方法により測定したフィルムの表面温度と中心温度との差は3.5℃であった。
その後、近赤外ヒーターにより予熱後フィルムを、90℃に加熱しながら、近赤外ヒーターの前後に設置した周速の異なる2本の延伸ロールにより、延伸倍率:3.5倍、で、縦方向(搬送方向)に延伸した。
【0176】
なお、実施例及び比較例における各未延伸フィルムの厚み(mm)、表面温度(℃)と中心温度(℃)との差、平均温度(℃)、予熱ロール周辺雰囲気温度(℃)は、以下のようにして求めた。結果を表1にまとめて示す。
【0177】
<厚み>
未延伸フィルムの厚みは、キャストドラムの出口に設置した自動厚み計(横河電機(株)製「WEBFREX」)により測定した。
【0178】
<表面温度と中心温度との差>
フィルムの表面温度は、実施例及び比較例のポリエステルフィルムの各々について、その表面2面に熱電対を貼り付けて測定した。
フィルムの中心温度は、測定対象となるフィルムの膜厚方向における中心部に、熱電対を埋め込むことによって測定した。
表面温度と中心温度との差は、表面温度の測定値から中心温度の測定値を減じた値(℃)である。
なお、熱電対としては、名古屋科学機器(株)製「K熱電対」を用いた。
測定範囲は、フィルムの表面温度及び中心温度のいずれについても、延伸開始点より5m前(フィルム搬送方向長)から延伸開始点までとし、当該測定範囲にて得られたデータを100msec毎に取り込み、各点での表面温度と中心温度との差の平均値を、フィルムの表面温度と中心温度との差とした。
【0179】
<平均温度(℃)>
上記により測定された未延伸ポリエステルフィルムの表面温度と中心温度との平均値を、未延伸ポリエステルフィルムの平均温度T1(℃)とした。
【0180】
<予熱ロール周辺雰囲気温度(℃)>
搬送方向の上流側に配置された延伸ロールと該延伸ロールの1本前に配置された予熱ロールとの間の距離の中心位置であり、かつフィルムの幅方向の中心位置である点を測定点とし、該測定点におけるフィルム表面から垂直方向に10cm離れた空間における温度を熱電対にて測定した。
【0181】
−熱固定・熱緩和−
続いて、縦延伸及び横延伸を終えた後の延伸フィルムを、210℃で熱固定した(熱固定時間:10秒)。さらに、熱固定した後、テンター幅を縮め熱緩和した(熱緩和温度:210℃)。
【0182】
−巻き取り−
熱固定及び熱緩和の後、両端を20cmずつトリミングした。その後、両端に幅10mmで押出し加工(ナーリング)を行なった後、張力25kg/mで巻き取った。なお、製膜幅は2.5m、巻長は2000mであった。
以上のようにして、実施例1のポリエテルフィルムを得た。
【0183】
(実施例2〜3のポリエテルフィルムの作製)
実施例1の未延伸フィルムの形成において、押出し機の吐出量、ダイのスリット高さ、ラインを調整することにより、未延伸フィルムの厚みを下記表1に記載の厚みとし、各厚みに適した冷却速度にした以外は、実施例1と同様にして、実施例2及び3の各ポリエテルフィルムを得た。
【0184】
(実施例4〜7のポリエテルフィルムの作製)
実施例1において、予熱ロールの温度を調節することによって、延伸に供したフィルムの表面温度と中心温度との差を、下記表1に記載の温度にした以外は、実施例1と同様にして、実施例4〜7の各ポリエテルフィルムを得た。
【0185】
(実施例8〜10のポリエテルフィルムの作製)
実施例1において、予熱ロール温度及び予熱ロール周辺雰囲気温度を調節することによって、延伸に供されたフィルムの平均温度T1を、下記表1に記載の平均温度T1に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例8〜10の各ポリエテルフィルムを得た。
【0186】
(実施例11〜14のポリエテルフィルムの作製)
実施例1において、予熱ロール周辺雰囲気温度を、下記表1に記載の温度に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例11〜14の各ポリエテルフィルムを得た。
【0187】
(実施例15〜20のポリエテルフィルムの作製)
実施例1において、未延伸フィルムを構成するポリエステル樹脂の固有粘度又は末端COOH量を、表1に記載の値に調節した以外は、実施例1と同様にして、実施例15〜20の各ポリエテルフィルムを得た。
【0188】
(比較例1、2のポリエテルフィルムの作製)
実施例1において、未延伸フィルムの厚みを、表1に記載の厚みとした以外は、実施例1と同様にして、比較例1及び2の各ポリエテルフィルムを得た。
【0189】
(比較例3、4のポリエテルフィルムの作製)
実施例1において、延伸工程におけるフィルムの表面温度と中心温度との差を、表1に記載の値に調節した以外は、実施例1と同様にして、比較例3及び4の各ポリエテルフィルムを得た。
【0190】
(比較例5、6のポリエテルフィルムの作製)
実施例1において、延伸に供したフィルムの平均温度T1を、表1に記載の値に調節した以外は、実施例1と同様にして、比較例5及び6の各ポリエテルフィルムを得た。
【0191】
−フィルムの評価−
また、実施例及び比較例にて得られた延伸後の各ポリエテルフィルムについて、フィルムの表面平滑性(傷の発生の有無、粘着由来の突起の有無)、破断伸度保持時間、耐電圧を評価した。
さらに、破断伸度保持時間の評価結果と耐電圧の評価結果とから、各ポリエテルフィルムの総合評価として耐候性を評価した。
それぞれの測定結果及び評価結果を、下記表1に示す。
各物性の測定、評価は、以下の方法により行なった。
【0192】
(AV:末端COOH量の測定)
中和滴定法によって、末端COOHの量を、以下のごとく測定した。
未延伸ポリエステルフィルムをベンジルアルコールに溶解し、フェノールレッド指示薬を加え、水酸化ナトリウムの水/メタノール/ベンジルアルコール溶液で滴定した。
【0193】
(IV:固有粘度の測定)
固有粘度(IV)は、溶液粘度(η)と溶媒粘度(η)の比η(=η/η;相対粘度)から1を引いた比粘度(ηsp=η−1)を濃度で割った値を濃度がゼロの状態に外挿した値である。IVは、ウベローデ型粘度計を用い、実施例又は比較例にて用いた原料ポリエステル樹脂を、1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール(=2/3[質量比])混合溶媒に溶解させ、25℃の溶液粘度から求めた。
【0194】
(フィルム表面の平滑性の評価)
延伸後の各ポリエステルフィルムについて、キーエンス社製レーザー顕微鏡により目視で観察し、幅方向の中心部分である100mm×100mmの範囲における傷の発生個数及び粘着に由来する突起の発生個数を計数した。
傷の発生については、長さ1mm以上かつ深さ0.1μm以上の傷が5本以上あった場合、粘着に由来する突起については、長さ1mm以上かつ5mm未満、高さ0.1μm以上の突起が5個以上あった場合に、フィルム表面の平滑性がないと判断する。
【0195】
(破断伸度保持率半減期による耐加水分解性の評価)
延伸後の各ポリエステルフィルムに対し、85℃、85%RHの雰囲気下で、105時間[hr]サーモ処理し、サーモ処理後の各サンプルの破断伸度とサーモ処理前の各サンプルの破断伸度とを測定した。
破断伸度(%)は、ポリエステルフィルムから、10mm×200mmの大きさのサンプル片を切り出し、このサンプル片を、初期試料長50mm、0.5mm/分にて引っ張って測定した。
得られた測定値をもとに、サーモ処理後の破断伸度をサーモ処理前の破断伸度で除算し、各サーモ処理時間での破断伸度保持率を下記式から求めた。横軸にサーモ時間、縦軸に破断伸度保持率をとってプロットし、これを結んで破断伸度保持率が50%になるまでの熱処理の時間(hr;破断伸度保持率半減期)を求めた。
破断伸度保持率[%]=(85℃サーモ処理後の破断伸度)/(サーモ処理前の破断伸度)×100
破断伸度保持率半減期(hr)は、その時間が長いほど、ポリエステルフィルムが耐加水分解性に優れることを示す。
【0196】
耐加水分解性としては、50%以上の破断伸度保持率を2000時間以上3000時間未満保持できることが実用上許容できる範囲であり、3000時間以上保持できることがより好ましい。
【0197】
(耐電圧の評価)
延伸後の各ポリエステルフィルムを、23℃、65%RHの室内で一晩放置したものを用いて試料として、部分放電試験器KPD2050(菊水電子工業(株)製)を用い、部分放電電圧を測定した。
測定は、試料としたフィルムの一方の面を上部電極側にした場合と下部電極側にした場合のそれぞれについて、フィルム面内において任意の10カ所で実施し、得られた測定値の平均値を求め、それぞれの平均値のうち、より高い方の値をもって、部分放電電圧V0とした。試験条件は下記の通りである。
<試験条件>。
・出力シートにおける出力電圧印加パターンは、1段階目が0Vから所定の試験電圧までの単純に電圧を上昇させるパターン、2段階目が所定の試験電圧を維持するパターン、3段階目が所定の試験電圧から0Vまでの単純に電圧を降下させるパターンの3段階からなるパターンのものを選択する。
・周波数は50Hzとする。
・試験電圧は1kVとする。
・1段階目の時間T1は10sec、2段階目の時間T2は2sec、3段階目の時間T
3は10secとする。
・パルスカウントシートにおけるカウント方法は「+」(プラス)、検出レベルは50%
とする。
・レンジシートにおける電荷量はレンジ1000pcとする。
・プロテクションシートでは、電圧のチェックボックスにチェックを入れた上で2kVを入力する。また、パルスカウントは100000とする。
・計測モードにおける開始電圧は1.0pc、消滅電圧は1.0pcとする。
【0198】
耐電圧としては、上記により測定された部分放電電圧V0が、700V以上であることが目標範囲であり、1000V以上であることがより好ましい。
【0199】
(総合評価:耐候性)
総合評価は、以下の評価基準により判断した。
−評価基準−
◎:破断伸度保持時間が3000時間以上であり、かつ部分放電電圧が1000V以上である場合
○:破断伸度保持時間が2000時間以上であり、かつ部分放電電圧が700V以上である場合
×:◎及び○以外の場合
総合評価が、◎又は○であることは、ポリエステルフィルムが耐候性に優れていることを意味する。
【0200】
〔バックシートの作製〕
実施例及び比較例の各ポリエステルフィルムの片面に、下記の(i)反射層と(ii)易接着性層をこの順に塗設した。
【0201】
(i)反射層(着色層)
まず初めに、下記組成の諸成分を混合し、ダイノミル型分散機により1時間分散処理して顔料分散物を調製した。
<顔料分散物の処方>
・二酸化チタン ・・・39.9質量%
(タイペークR−780−2、石原産業(株)製、固形分100%)
・ポリビニルアルコール ・・・8.0質量%
(PVA−105、(株)クラレ製、固形分10%)
・界面活性剤(デモールEP、花王(株)製、固形分:25%)・・・0.5質量%
・蒸留水 ・・・51.6質量%
【0202】
次いで、得られた顔料分散物を用い、下記組成の諸成分を混合することにより反射層形成用塗布液を調製した。
<反射層形成用塗布液の処方>
・上記の顔料分散物 ・・・71.4質量部
・ポリアクリル樹脂水分散液 ・・・17.1質量部
(バインダー:ジュリマーET410、日本純薬(株)製、固形分:30質
量%)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル ・・・2.7質量部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・オキサゾリン化合物 ・・・1.8質量部
(エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分:25質量%;架橋剤)
・蒸留水 ・・・7.0質量部
【0203】
上記より得られた反射層形成用塗布液をサンプルフィルムに塗布し、180℃で1分間乾燥して、二酸化チタン塗布量が6.5g/mの反射層(乾燥厚み=5μm;白色層)を形成した。
【0204】
(ii)易接着性層
下記組成の諸成分を混合して易接着性層用塗布液を調製し、これをバインダー塗布量が0.09g/mになるように反射層の上に塗布した。その後、180℃で1分間乾燥させ、乾燥厚み1μmの易接着性層を形成した。
<易接着性層用塗布液の組成>
・ポリオレフィン樹脂水分散液 ・・・5.2質量%
(バインダー:ケミパールS75N、三井化学(株)製、固形分:24%)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル ・・・7.8質量%
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・オキサゾリン化合物 ・・・0.8質量%
(エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分25質量%)
・シリカ微粒子水分散物 ・・・2.9質量%
(アエロジルOX−50、日本アエロジル(株)製、固形分:10質量%)
・蒸留水 ・・・83.3質量%
【0205】
次に、サンプルフィルムの反射層及び易接着性層が形成されている側と反対側の面に、下記の(iii)下塗り層、(iv)バリア層、及び(v)防汚層をサンプルフィルム側から順次、塗設した。
【0206】
(iii)下塗り層
下記組成の諸成分を混合して下塗り層用塗布液を調製し、この塗布液をサンプルフィルムに塗布し、180℃で1分間乾燥させ、下塗り層(乾燥塗設量:約0.1g/m)を形成した。
<下塗り層用塗布液の組成>
・ポリエステル樹脂 ・・・1.7質量%
(バイロナールMD−1200、東洋紡(株)製、固形分:17質量%)
・ポリエステル樹脂 ・・・3.8質量%
(ペスレジンA-520、高松油脂(株)製、固形分:30質量%)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル ・・・1.5質量%
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・カルボジイミド化合物 ・・・1.3質量%
(カルボジライトV−02−L2、日清紡(株)製、固形分:10質量%)
・蒸留水 ・・・91.7質量%
【0207】
(iv)バリア層
続いて、形成された下塗り層の表面に下記の蒸着条件にて厚み800Åの酸化珪素の蒸着膜を形成し、バリア層とした。
<蒸着条件>
・反応ガス混合比(単位:slm):ヘキサメチルジシロキサン/酸素ガス/ヘリウム=1/10/10
・真空チャンバー内の真空度:5.0×10−6mbar
・蒸着チャンバー内の真空度:6.0×10−2mbar
・冷却・電極ドラム供給電力:20kW
・フィルムの搬送速度 :80m/分
【0208】
(v)防汚層
以下に示すように、第1及び第2防汚層を形成するための塗布液を調製し、バリア層の上に第1防汚層用塗布液、第2防汚層用塗布液の順に塗布し、2層構造の防汚層を塗設した。
【0209】
<第1防汚層>
−第1防汚層用塗布液の調製−
下記組成中の成分を混合し、第1防汚層用塗布液を調製した。
<塗布液の組成>
・セラネートWSA1070(DIC(株)製)・・・45.9部
・オキサゾリン化合物(架橋剤)・・・7.7質量部
(エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分:25質量%)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル ・・・2.0部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・反射層で用いた顔料分散物 ・・・33.0部
・蒸留水 ・・・11.4部
【0210】
−第1防汚層の形成−
得られた塗布液を、バインダー塗布量が3.0g/mになるように、バリア層の上に塗布し、180℃で1分間乾燥させて第1防汚層を形成した。
【0211】
−第2防汚層用塗布液の調製−
下記組成中の成分を混合し、第2防汚層用塗布液を調製した。
<塗布液の組成>
・フッ素系バインダー:オブリガード(AGCコーテック(株)製)・・・45.9部
・オキサゾリン化合物 ・・・7.7部
(エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分:25質量%;架橋剤)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル ・・・2.0部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・前記反射層用に調製した前記顔料分散物 ・・・33.0部
・蒸留水 ・・・11.4部
【0212】
−第2防汚層の形成−
調製した第2防汚層用塗布液を、バインダー塗布量が2.0g/mになるように、バリア層上に形成された第1防汚層の上に塗布し、180℃で1分間乾燥させて第2防汚層を形成した。
【0213】
以上のようにして、ポリエステルフィルムの一方の側に反射層及び易接着層を有し、他方の側に下塗り層、バリア層、及び防汚層を有するバックシートを作製した。
【0214】
−バックシートの評価−
前記(i)〜(v)の各層が設けられたバックシートを、サーモ処理(120℃、100%RH、80時間)した後、上記同様の方法で評価した。実施例のポリエステルフィルムを用いて作製したバックシートは、比較例のポリエステルフィルムを用いて作製したものと比べ、いずれも良好な耐加水分解性及び耐電圧性を有することを分かった。
【0215】
〔太陽電池モジュールの作製〕
上記のようにして作製したバックシートの各々を用い、特開2009−158952号公報の図1に示す構造になるように透明充填剤に貼り合わせ、太陽電池モジュールを作製した。このとき、バックシートの易接着性層が、太陽電池素子を包埋する透明充填剤に接するように貼り付けた。
【0216】
【表1】

【0217】
表1に示される結果から、各実施例にて得られたポリエステルフィルムは、比較例との対比において、製造時に傷や粘着由来の突起の発生が抑制されて、表面の平滑性に優れており、耐加水分解性及び耐電圧に優れたものであることが分る。
このことは、実施例のポリエステルフィルムを適用した太陽電池用ポリエステルフィルムは優れた耐候性を有し、そのような太陽電池用ポリエステルフィルムを備えた太陽電池発電モジュールは、長期に亘り安定的な発電性能が得られることを意味する。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明のポリエステルフィルムは、例えば、太陽電池モジュールを構成する裏面シート(太陽電池素子に対し太陽光の入射側と反対側に配置されるシート;いわゆるバックシート)の用途に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0219】
1・・・バックシート
2・・・封止剤
3・・・太陽電池素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂を押出機により溶融押出して、冷却することにより、厚みが2.5mm以上5.0mm以下の未延伸ポリエステルフィルムを形成する未延伸フィルム形成工程と、
形成された未延伸ポリエステルフィルムを、平均温度T1(℃)が下記式(1)で示す関係を満たし、且つ、表面温度が中心温度よりも0.3℃以上15℃未満高くなるように加熱した後、少なくとも一方向に延伸する延伸工程と、
を有するポリエステルフィルムの製造方法。
Tg−20℃<T1<Tg+25℃ ・・・式(1)
[式(1)中、Tgは前記未延伸ポリエステルフィルムのガラス転移温度(℃)を表す。]
【請求項2】
前記延伸工程が、未延伸ポリエステルフィルムを、予熱ロールを用いて加熱した後、近赤外ヒーター又は遠赤外ヒーターによって加熱しながら延伸ロールにより延伸することにより行われ、該予熱ロールの表面温度及び周辺雰囲気温度が、いずれも下記式(2)で示す関係を満たす温度T2(℃)である請求項1に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
Tg−25℃<T2<Tg+40℃ ・・・式(2)
[式(2)中、Tgは前記未延伸ポリエステルフィルムのガラス転移温度(℃)を表す。]
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂の固有粘度が、0.6dl/g以上0.9dl/g以下の範囲である請求項1又は請求項2に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂が有する末端COOH量が、5eq/t以上25eq/t以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記延伸工程において、前記未延伸ポリエステルフィルムを搬送方向に延伸する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの製造方法により得られたポリエステルフィルム。
【請求項7】
請求項6に記載のポリエステルフィルムを含む太陽電池用バックシート。
【請求項8】
請求項6に記載のポリエステルフィルムを備えた太陽電池モジュール。

【図1】
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【公開番号】特開2012−136016(P2012−136016A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262902(P2011−262902)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】