説明

ポリエステルフィルム積層体、およびこれを用いてなるガスバリア性易開封包装袋

【課題】 印刷を施しても、引裂きやすく、食品、医薬品、雑貨等の包装袋の易開封性とガスバリア性を兼備したポリエステルフィルム積層体を提供する。
【解決手段】 二軸延伸ポリエステルフィルムと、これ以外の少なくとも一種のフィルムと、蒸着層と、印刷層とからなる積層体であって、二軸延伸ポリエステルフィルムが、ポリエチレンテレフタレート(PET)と、ポリエステルエラストマーとを、PET/ポリエステルエラストマー=70/30〜95/5(質量比)の割合で混合した原料を用いて製造されたものであり、蒸着層が酸化アルミニウム、酸化珪素のうち少なくとも一種の金属化合物からなるものであり、蒸着層は二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面に積層され、印刷層は蒸着層面に積層され、積層体の引裂伝播抵抗が1500mN以下であることを特徴とする、ガスバリア性と引裂直進性とを有するポリエステルフィルム積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの少なくとも長手方向の引裂直線性を有し、かつ、引裂抵抗が小さく、かつ優れたガスバリア性を有するポリエステルフィルム積層体、およびこれを用いたガスバリア性易開封包装袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品、雑貨の包装には、各種のプラスチックフィルムを用いた包装袋が多く使用されており、二軸延伸されたプラスチックフィルムとヒートシール可能な無配向プラスチックをラミネートした、2層以上からなる包装袋が使用されている。特に、近年、賞味期間、賞味期限などをより長くすることができるように、ガスバリア性フィルムを利用するケースが非常に増加している。二軸延伸ポリエステルフィルムは強度、寸法安定性、保香性に優れているが、長期保存性が要求される食品包装用途には、酸素や水蒸気に対するより高度なバリア性が求められる。包装用途におけるガスバリア性素材としては、ポリ塩化ビニリデンコ−トフィルム、エチレンビニルアルコ−ルフィルムや、アルミ箔をラミネートしたフィルムなどが用いられているが、近年の環境問題に関する規制が広がる中で、アルミ箔のような焼却残渣が発生する素材や、ポリ塩化ビニリデンのように焼却時に塩素ガスの発生する素材の使用が制限されている。また、焼却炉において排出規制されるダイオキシン類の生成も懸念されるため、ますます使用が削減されると推定される。また、アルミ蒸着フィルムもあるが、中身が見えない、レンジが使えないなどの問題がある。そのため、透明蒸着フィルムが用いられている。
【0003】
また、包装袋には、強度と開封するときの易引裂性の一見相反すると思われる二つの特性を兼備していることが要求される。従来より用いられている易開封技術としては、VノッチやUノッチを付けたり、ティアテープ、ミシン目、フィルム表面に微細な傷を付ける等の工夫がなされている。しかし、このような従来の技術では、引き裂けたとしても必要以上に力を要したり、直線的に引裂けないというトラブルがしばしば発生し、衣服や調度品を汚したりするなどの問題があった。また、フィルムを引裂いた際の引裂直線性に優れる易開封性材料としては、一軸延伸ポリオレフィンフィルムを中間層としてラミネ−トしたものがある。このような構成としては、たとえば、二軸延伸ポリエステルフィルム/一軸延伸ポリオレフィンフィルム/無延伸ポリオレフィンフィルムの3層ラミネ−トフィルムがあるが、わざわざ中間層を設けなければならずコスト的に問題があり、用途が限定されていた。
【0004】
本出願人は、先に、分子量600〜4000のポリテトラメチレングリコール(PTMG)単位を5〜20重量%含有したポリブチレンテレフタレート(変性PBT)と、ポリエチレンテレフタレート(PET)とを、PET/変性PBT=70/30〜95/5(重量比)の割合で混合した原料を用いて製造した二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、酸化アルミニウム、酸化珪素などの金属化合物を蒸着することにより、これらの問題を解決した(特許文献1)。
しかしながら、このフィルムの蒸着層面に印刷を施し、さらに他のフィルムを積層した場合、引裂直進性はあるものの、特に印刷部において引裂き抵抗が大きくなることがあり、さらに簡単に引裂けるように要望されていた。
【0005】
一方、無機物を蒸着したフィルムは、他の樹脂のフィルムやシートなどと加工して包材を形成する場合、従来のラミネート用接着剤やアンカーコート剤等では接着力が低いという問題があった。この問題に対しては、ポリウレタン樹脂とシランカップリング剤との配合物および/または反応物を主成分とする接着剤を使用することにより、接着性および引裂性は改良されるものの、印刷部においては易引裂性および直進引裂性は不十分なものであった(特許文献2)。
【特許文献1】特開2001−162752号公報
【特許文献2】特開2002−275448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の諸問題を解決し、印刷を施しても、引裂きやすく、食品、医薬品、雑貨等の包装袋の易開封性とガスバリア性を兼備したポリエステルフィルム積層体、およびこれを用いたガスバリア性易開封包装袋を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決する方法を鋭意検討した結果、下記のフィルムを用いることにより上記課題を解決するに至った。すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
(1) 二軸延伸ポリエステルフィルムと、これ以外の少なくとも一種のフィルムと、蒸着層と、印刷層とからなる積層体であって、二軸延伸ポリエステルフィルムが、ポリエチレンテレフタレート(PET)と、ポリエステルエラストマーとを、PET/ポリエステルエラストマー=70/30〜95/5(質量比)の割合で混合した原料を用いて製造されたものであり、蒸着層が酸化アルミニウム、酸化珪素のうち少なくとも一種の金属化合物からなるものであり、蒸着層は二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面に積層され、印刷層は蒸着層面に積層され、積層体の引裂伝播抵抗が1500mN以下であることを特徴とする、ガスバリア性と引裂直進性とを有するポリエステルフィルム積層体。
(2) ポリエステルエラストマーが、分子量600〜4000のポリテトラメチレングリコール単位を5〜20質量%含有したポリブチレンテレフタレート(変性PBT)であることを特徴とする(1)記載のポリエステルフィルム積層体。
(3) 印刷層が、シランカップリング剤を添加したインキによって形成されたことを特徴とする(1)または(2)に記載のポリエステルフィルム積層体。
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかに記載の積層体を用い、易引裂方向が袋の引裂方向となるように製袋してなるガスバリア性易開封包装袋。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリエステルフィルム積層体を用いて、引裂方向がフィルムの易引裂方向となるように製袋することにより、印刷が施されていても、易開封性袋が得られ、食品、医薬品、雑貨などの包装袋として有用に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明におけるPETは、公知の製法、すなわち、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとからのエステル交換反応法、あるいは、テレフタル酸とエチレングリコールとからの直接エステル化法によりオリゴマーを得た後、溶融重合、あるいはさらに固相重合して得られるが、本発明の効果を損ねない範囲であれば他の成分を共重合することができる。
【0010】
他の共重合成分としては、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などのジカルボン酸、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトン、乳酸などのオキシカルボン酸、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのグリコールや、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多官能化合物が挙げられる。
【0011】
本発明におけるポリエステルエラストマーは、結晶性ハードセグメントと非晶性ソフトセグメントからなものであり、結晶性ハードセグメントとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などが挙げられ、特にポリブチレンテレフタレート(PBT)が好ましい。一方、非晶性ソフトセグメントとしては、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリブチレングリコール(PBG)などが挙げられる。その中でもPTMGが好ましい。結晶性ハードセグメントがPBTであり、非晶性ソフトセグメントがPTMGであるポリエステルエラストマー(変性PBT)は、例えばテレフタル酸とブチレングリコールを用いて常法にてポリブチレンテレフタレートの重合反応を行う際に、ポリテトラメチレングリコールを添加することにより得ることができる。
【0012】
本発明において非晶性ソフトセグメントとしてPTMGを用いる場合、その分子量は、600〜4000が好ましく、さらに1000〜3000が好ましく、1000〜2000がより好ましい。分子量が600未満の場合には引裂直線性が低下することがあり、4000を超える場合には、機械的強度、寸法安定性、ヘーズなどの性能が低下し、また、安定したフィルムの引裂直線性が発現しないことがある。
【0013】
本発明において、変性PBTの構成成分であるPTMG単位の含有量は5〜20質量%が好ましく、さらに10〜20質量%が好ましく、10〜15質量%がより好ましい。PTMGの含有量が5質量%未満の場合には、得られる二軸延伸ポリエステルフィルムの引裂直線性が発現せず、20質量%を超える場合には、得られるフィルムの機械的強度、寸法安定性、ヘーズなどの性能が低下し、また、安定したフィルムの引裂直線性を得ることが困難となる。また、PTMGの含有量が20質量%を超える場合には、特に量産スケールで生産した場合に押出時にフィルムが脈動する現象(いわゆるバラス現象)が発現することがありフィルムの厚み斑が大きくなるという問題が発生する。
【0014】
本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムを製造するためには、PETとポリエステルエラストマーの混合比率を、PET/ポリエステルエラストマー=70/30〜95/5(質量比)、好ましくは80/20〜90/10(質量比)、さらに好ましくは85/15〜90/10(質量比)とすることが必要である。ポリエステルエラストマーの混合比率が5質量%未満の場合には引裂直線性が得られず、30質量%を超える場合には、フィルムの厚み変動が大きくなったり、得られるフィルムの引裂直線性が低下するのみならず、機械的強度、寸法安定性、ヘーズなどの性能が低下して実用性能に問題が生じる。
【0015】
本発明におけるポリエステルエラストマーの製造方法としては、ポリエステルエラストマーが変性PBTである場合、PBTの重合工程においてPTMGを添加して重縮合して得ることができるが、より簡便な方法としては、PBTとPTMGを押出機で溶融混練することによっても得ることができる。
【0016】
また、本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムの原料樹脂には、本発明の効果を損ねない範囲であれば、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートなどの他のポリマーを混合することができる。また、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、顔料、蛍光増白剤等や、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル、スチレン等を構成成分とする有機粒子を必要に応じて適宜含有してもよい。
【0017】
本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムを製造するには、たとえば、変性PBTとPETを混合したものを押出機に投入し、加熱溶融した後、Tダイのダイオリフィスからシート状に押し出し、未延伸シートを製造する。次に、Tダイのダイオリフィスから押し出されたシートを、静電印加キャスト法などにより冷却ドラムに密着して巻きつけて冷却し、温度80〜140℃で、縦横にそれぞれ3.0〜5.0倍の倍率で延伸し、さらに温度210〜245℃で熱処理し、二軸延伸フィルムとする。
【0018】
延伸温度が90℃未満の場合には、均質な延伸フィルムを得ることができない場合があり、140℃を超えると、PETの結晶化が促進されて透明性が悪くなる場合がある。延伸倍率が3.0倍未満の場合には、得られる延伸フィルムの強度が低く、袋にしたときにピンホールが発生しやすくなり、延伸倍率が5.0倍を超えると延伸が困難となる場合がある。また、熱処理温度が210℃より低いと、得られる延伸フィルムの熱収縮率が大きくなり、製袋後の袋が変形する場合があり、また、熱処理温度が245℃より高いとフィルムの溶断が発生する場合がある。
【0019】
二軸延伸方法としては、テンター同時二軸延伸法、ロールとテンターによる逐次二軸延伸法のいずれでもよい。また、チューブラー法で二軸延伸フィルムを製造してもよい。
【0020】
本発明のポリエステルフィルム積層体は、上記のようにして得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、酸化珪素、酸化アルミニウムなどの金属化合物を蒸着したものである。フィルムに蒸着されるこれらの金属化合物は、単独または混合して用いることができる。また、蒸着薄膜の作製方法としては、真空蒸着法、EB蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などを用いることができる。
【0021】
また、二軸延伸ポリエステルフィルムと酸化アルミニウム等の蒸着皮膜との密着性を向上させるために、フィルムの表面をあらかじめコロナ放電処理やアンカーコート剤を塗布するなどの方法により前処理しておくことが望ましい。
【0022】
本発明において印刷層の形成に用いられるインキは特に限定されるものではない。たとえば含トルエンインキ、ノントルエンインキ、水性インキなどが挙げられる。環境の面から考えると、ノントルエンインキ、水性インキなどが好ましい。
【0023】
本発明において、蒸着層の上に積層される印刷層は、シランカップリング剤を添加したインキによって形成することが好ましい。インキに添加するシランカップリング剤としては、アミノ系、エポキシ系、イソシアネート系、ビニル系、メタクリロキシ系などが挙げられる。安定性や反応性の面から、アミン系、エポキシ系のシランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤の添加量は、印刷に使用するインキ100質量部に対して0.1〜5質量部、好ましくは0.5〜4質量部、さらに好ましくは、1〜3質量部がよい。添加量が0.1質量部より少ないと引裂性に効果がなく、5質量部を超えると性能が頭打ちになるのと同時に、コストの面から好ましくない。
【0024】
本発明のポリエステルフィルム積層体は、上記の二軸延伸ポリエステルフィルムと、蒸着層と、印刷層とに加えて、二軸延伸ポリエステルフィルム以外の少なくとも一種のフィルムを積層したものである。たとえば、本発明の積層体を包装袋用として使用する場合には、二軸延伸ポリエステルフィルム以外の少なくとも一種のフィルムとして、ヒートシール性を付与するためのフィルムが使用される。ヒートシール性を付与するためのフィルムの具体例としては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー等のシーラントとよばれる無延伸フィルムが挙げられる。また、本発明の積層体に更なる易引裂性を得たい場合には、二軸延伸ポリエステルフィルム以外の少なくとも一種のフィルムとして、易引裂シーラントを用いることにより対応することができる。さらに、本発明の積層体の要求性能に応じて、たとえば、ナイロンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム等を積層してもよい。これら二軸延伸ポリエステルフィルム以外の少なくとも一種のフィルムの積層方法としては、特に制限はなく、ドライラミネート法、押出ラミネート法などの方法が用いられる。
【0025】
本発明のポリエステルフィルム積層体は、引裂伝播抵抗が1500mN以下であることが必要であり、1000mN以下であることが好ましく、700mNであることがさらに好ましい。引裂伝播抵抗が1500mNを超えると、引裂く際に過度の力を加える必要があり、引裂き方によっては中身が散乱したり、場合によっては引裂けないという問題がある。
【0026】
本発明のポリエステルフィルム積層体を製袋して、ガスバリア性易開封包装袋を製造することができる。製袋する際に、積層体の易引裂方向が包装袋の引裂方向となるようにすることにより、易開封包装袋を得ることができる。
【実施例】
【0027】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、実施例の評価法は次の通りである。
【0028】
(1)引裂直線性
ポリエステルフィルム積層体を用いて、長手方向(MD)200mm、幅方向(TD)300mmの包装袋を作成した。TD方向に左右各5mmの切り込みを設け、右手前から左手前方向に100mm引き裂いた位置の切り込みからのMD方向のズレ幅の最大寸法を測定した。この操作を5回行った。切り込み部からのMD方向のズレ幅の最大寸法が、5mm未満を〇、5mm以上10mm未満を△、10mm以上を×とした。
(2)引裂伝播抵抗(mN)
JIS K−7128−1に準じて、易引裂き方向に対して測定した。
(3)酸素透過度(ml/m・day・MPa)
JIS K−7129 に準じて、モダンコントロール社製、OX−TRAN100型を用いて、温度20℃、湿度65%RHの条件下で測定した。
(4)水蒸気透過度(g/m・day)
JIS K−7129 に準じて、モダンコントロール社製、PARMATRAN W3/31を用いて温度40℃、湿度90%RHの条件下で測定した。
(5)ラミネート強力(N/cm)
幅15mmのポリエステルフィルム積層体を試料として用い、20℃×65%RHの環境下にて、引張速度300mm/minの速度で剥離し、T型剥離法によりラミネート強力を測定した。
【0029】
製造例1
二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法は、下記のとおりである。
ジメチルテレフタレート194質量部、1,4−ブタンジオール108質量部、およびテトラブチルチタネート80ppm(ポリマーに対するチタン金属の質量に換算した数値)を加え、150℃から210℃に加熱昇温しながら2.5時間エステル交換反応を行った。得られたエステル交換反応生成物90質量部を重合缶に移送し、テトラブチルチタネートを40ppm添加した後、分子量1100のPTMGを10質量部添加して、相対粘度1.60の変性PBTを得た。PETと変性PBTとを質量比85/15で単純チップ混合したものを、コートハンガータイプのTダイを具備した200mmφ押出機を使用して樹脂温度280℃で溶融押出し、20℃に温調されたキャストロールにピニングワイヤーに7kVの印加電圧をかけて密着急冷し、厚さ約190μmの未延伸シートを得た。得られた未延伸シートをロール縦延伸機で90℃で3.5倍、テンター横延伸機で120℃で4.5倍に延伸した後、横方向の弛緩率を3%として、235℃で熱処理を施し、室温まで徐冷し、厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0030】
印刷に使用したインキは以下の通りである。
FINE STAR R39藍(東洋インキ社製、ノントルエン型)
NEW LPスーパー R641白(東洋インキ社製、含トルエン型)
【0031】
シランカップリング剤は以下の通りである。
3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBE−903、信越シリコーン社製)
【0032】
接着剤/硬化剤は以下の通りである。
A968/A8(三井武田ケミカル社製)
TM593/CAT56(東洋モートン社製)
【0033】
ラミネートに使用したシーラントフィルムは以下の3種類である。
TUX−FCS:直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(東セロ社製、厚み40μm)
HR−543:易引裂性直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(ケイエフフィルム社製、厚み40μm)
RXC−3:無延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ社製、厚み40μm)
【0034】
実施例1
製造例1で得られたフィルムの片面に、真空蒸着法にて厚み500オングストロームの酸化珪素蒸着を施した。得られた酸化珪素蒸着フィルムの蒸着面に、シランカップリング剤をインキ100質量部に対して2.5質量部添加したFINE STAR藍を使用して印刷を施し、塗布量3.0g/mで接着剤/硬化剤にTM593/CAT56を印刷面に塗布し、シーラントにTUX−FCSを用いてラミネートし、エージングを40℃、3日して得られたフィルム積層体の引裂直線性、引裂伝播抵抗、酸素透過度、水蒸気透過度、ラミネート強力を測定した結果を表1に示した。
【0035】
実施例2
シーラントにHR−543を用いること以外は実施例1と同様にして得られたフィルム積層体の引裂直線性、引裂伝播抵抗、酸素透過度、水蒸気透過度、ラミネート強力を測定した結果を表1に示した。
【0036】
実施例3
分子量2000のPTMGの含有量が15質量%である変性PBTを使用して、PETと変性PBTとを質量比90/10で押出した以外は、製造例1のようにして得られたフィルムの片面に、真空蒸着法にて厚み500オングストロームの酸化珪素蒸着を施した。得られた酸化珪素蒸着フィルムの蒸着面に、シランカップリング剤をインキ100質量部に対して1.5質量部添加したFINE STAR藍で印刷を施し、接着剤/硬化剤にA968/A8を塗布量3.0g/mで塗布し、シーラントにRXC−3を用いてラミネートし、エージングを40℃、3日して得られたフィルム積層体の引裂直線性、引裂伝播抵抗、酸素透過度、水蒸気透過度、ラミネート強力を測定した結果を表1に示した。
【0037】
実施例4
PTMG含有量が15質量%である変性PBTを使用して、PETと変性PBTとを質量比80/20で押出した以外は、製造例1のようにして得られたフィルムの片面に、真空蒸着法にて厚み500オングストロームの酸化アルミ蒸着を施した。得られた酸化アルミ蒸着フィルムの蒸着面に、シランカップリング剤をインキ100質量部に対して1.5質量部添加したFINE STAR藍で印刷を施し、接着剤/硬化剤にTM593/CAT56を、塗布量3.0g/mで塗布し、シーラントにHR−543を用いてラミネートし、エージングを40℃、3日して得られたフィルム積層体の引裂直線性、引裂伝播抵抗、酸素透過度、水蒸気透過度、ラミネート強力を測定した結果を表1に示した。
【0038】
実施例5
シランカップリング剤をインキ100質量部に対して1.5質量部添加したNEW LPスーパー白で印刷を施し、またシーラントにはRXC−3を使用したこと以外は実施例4と同様にして得られたフィルム積層体の引裂直線性、引裂伝播抵抗、酸素透過度、水蒸気透過度、ラミネート強力を測定した結果を表1に示した。
【0039】
実施例6
分子量300のPTMGの含有量が15質量%である変性PBTを使用して、PETと変性PBTとを質量比85/15で押出した以外は、製造例1のようにして得られたフィルムの片面に、真空蒸着法にて厚み500オングストロームの酸化アルミニウム蒸着を施した。得られた酸化アルミニウム蒸着フィルムの蒸着面に、シランカップリング剤をインキ100質量部に対して1.5質量部添加したNEW LP スーパー白で印刷を施し、塗布量3.0g/mで接着剤/硬化剤にTM593/CAT56を塗布し、シーラントにHR−543を用いてラミネートをし、エージングを40℃、3日して得られた積層フィルムの引裂直線性、引裂伝播抵抗、酸素透過度、水蒸気透過度、ラミネート強力を測定した結果を表1に示した。
【0040】
比較例1
シランカップリング剤を添加しないこと、およびシーラントにHR−543を用いたこと以外は実施例1のようにして作成した積層フィルムついて、引裂直線性、引裂伝播抵抗、酸素透過度、水蒸気透過度、ラミネート強力を測定した結果を表1に示した。
【0041】
比較例2
接着剤/硬化剤にA968/A8を、シーラントにTUX−FCSを用いたこと以外は比較例1と同様にして得られた積層フィルムの引裂直線性、引裂伝播抵抗、酸素透過度、水蒸気透過度、ラミネート強力を測定した結果を表1に示した。
【0042】
比較例3
PETフィルムの片面に、真空蒸着法にて厚み500オングストロームの酸化珪素蒸着を施した。得られた酸化珪素蒸着フィルムの蒸着面に、シランカップリング剤をインキ100質量部に対して2.5質量部添加したFINE STAR藍で印刷を施し、塗布量3.0g/mで接着剤/硬化剤にA968/A8を塗布し、シーラントにRXC−3を用いてラミネートし、エージングを40℃、3日して得られた積層フィルムの引裂直線性、引裂伝播抵抗、酸素透過度、水蒸気透過度、ラミネート強力を測定した結果を表1に示した。
【0043】
【表1】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸延伸ポリエステルフィルムと、これ以外の少なくとも一種のフィルムと、蒸着層と、印刷層とからなる積層体であって、二軸延伸ポリエステルフィルムが、ポリエチレンテレフタレート(PET)と、ポリエステルエラストマーとを、PET/ポリエステルエラストマー=70/30〜95/5(質量比)の割合で混合した原料を用いて製造されたものであり、蒸着層が酸化アルミニウム、酸化珪素のうち少なくとも一種の金属化合物からなるものであり、蒸着層は二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面に積層され、印刷層は蒸着層面に積層され、積層体の引裂伝播抵抗が1500mN以下であることを特徴とする、ガスバリア性と引裂直進性とを有するポリエステルフィルム積層体。
【請求項2】
ポリエステルエラストマーが、分子量600〜4000のポリテトラメチレングリコール単位を5〜20質量%含有したポリブチレンテレフタレート(変性PBT)であることを特徴とする請求項1記載のポリエステルフィルム積層体。
【請求項3】
印刷層が、シランカップリング剤を添加したインキによって形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステルフィルム積層体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の積層体を用い、易引裂方向が袋の引裂方向となるように製袋してなるガスバリア性易開封包装袋。

【公開番号】特開2006−150617(P2006−150617A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340512(P2004−340512)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】