説明

ポリエステルフィルム

【課題】高い輝度と光沢度感、電磁波透過性を有したグレーメタリック調のポリエステルフィルムを得ること。
【解決手段】ポリエステル樹脂Aおよびポリエステル樹脂Bおよびカーボンブラックからなるポリエステルフィルムであって、ポリエステル樹脂Bが1.0重量%〜15重量%、カーボンブラックが0.01重量%〜3重量%含まれていることを特徴とするポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グレーな光沢を有するフィルムに関するものである。更に詳細には、本発明は、装飾用部材、例えば自動車用外部材、携帯電話の装飾材などの光沢調装飾材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の装飾材において、より意匠性が高く、より視覚効果の高いものが求められてきている。パールホワイト(真珠光沢)、ピアノブラック(黒光沢)、シルバーメタリック(金属メッキ調)、グレーメタリック(暗灰金属調)などは高級感があることから、カメラや携帯電話の筐体・自動車のコンパネ部材として需要を伸ばしつつある(特許文献1、特許文献2)。これらの装飾材の視覚効果を高めるには、高い輝度や金属光沢を有することが重要である。一般的に金属光沢を付与するには二通りの方法がある。第一の方法としては金属蒸着及び金属箔貼合がある。この方法は、優れた輝度と鮮明性が再現できる反面、非常に高価である。第二の方法としてはメタリックインキと呼ばれるインキ中に主にアルミペースト、パール顔料、ブロンズパウダー等を混合したものを使用してこれを印刷することにより、輝度や鮮明性に劣るものの簡便かつ安価に大量生産できる(特許文献3、特許文献4)。これらの方法は、金属成分により成型性が劣ることや電波障害を引き起こすなどの問題が指摘されている。そのため、金属レスでありながら金属光沢を有するフィルムが求められてきている。
【特許文献1】特開2006−137887号公報
【特許文献2】特開2004−359786号公報
【特許文献3】特開2006−327117号公報
【特許文献4】特開2003−231232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑み、成型性と電磁波透過性に優れ、高い輝度と光沢度感を有したグレーメタリック調のポリエステルフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本発明の積層フィルムは以下の構成からなる。
【0005】
すなわち、ポリエステル樹脂A、および、それと非相溶なポリエステル樹脂B、カーボンブラックからなるポリエステルフィルムであって、フィルム中にポリエステル樹脂Bが1.0重量%〜15重量%、カーボンブラックが0.01重量%〜3重量%含まれていることを特徴とするポリエステルフィルムである。
【0006】
また、本発明のポリエステルフィルムの好ましい態様によれば、ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Bの相溶化剤Cが以下の式1の範囲で添加されている。
【0007】
B/C=1〜5 (式1)
B:ポリエステル樹脂Bの重量%
C:相溶化剤Cの重量%
また、本発明のポリエステルフィルムの好ましい態様によれば、上記ポリエステルフィルムの少なくとも片側に実質的に透明な層が積層されている。
【0008】
また、本発明のポリエステルフィルムの好ましい態様によれば、ポリエステル樹脂Bがポリオレフィンである。
【0009】
また、本発明のポリエステルフィルムの好ましい態様によれば、ポリエステル樹脂Bがポリメチルペンテンである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、高い輝度と光沢度感、電磁波透過性を有したグレーメタリック調のポリエステルフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂Aおよびポリエステル樹脂Bおよびカーボンブラックからなるポリエステルフィルムであって、ポリエステル樹脂Bが1.0重量%〜15重量%、カーボンブラックが0.01重量%〜3重量%含まれていなければならない。このような構成をとることにより、グレーで高輝度のポリエステルフィルムを得ることができる。ポリエステル樹脂Bが1.0量%未満である場合、高い輝度が得られない。15重量%より大きい場合、輝度は高くなるものの光沢感が失われるため好ましくない。また、カーボンブラックが0.01重量%未満であると、遮蔽性が失われるとともに好適な色合い(灰色光沢)が得られない。また、3重量%より多くすると、製膜性やフィルム物性が悪化する。
【0013】
本発明におけるポリエステルとは、ジカルボン酸誘導体とジオール誘導体との重縮合体であるポリエステル樹脂を含み、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレートなどを用いることができる。特にポリエチレンテレフタレートは、安価であるため、非常に多岐にわたる用途に用いることができ、効果が高い。また、これらの樹脂はホモ樹脂であってもよく、共重合体またはブレンド体であってもよい。
【0014】
本発明のジカルボン酸誘導体としてはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレン酸、1,5−ナフタレン酸、2,6−ナフタレン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、セバシン酸、ダイマー酸などが挙げられ、またそれらをエステル化したものなどが挙げられる。また、ジオール誘導体としては1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0015】
ポリエステル樹脂Bとは、ポリエステル樹脂Aに混練したときに、微分散せずに不透明化する樹脂全般をさす。その確認方法としては、試験管にてポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Bを2.5重量%〜15重量%の割合で混合した後に、溶融温度以上に加熱した状態で、30分間撹拌した後に、不透明であれば、両者が非相溶であることが確認できる。高分子間の混練にあたって分子レベルまで相溶する樹脂はごく少なく、ポリエステルの骨格を持つ樹脂以外はほとんど非相溶樹脂に該当するが、溶解度パラメーター(SP値)を参照すれば、両者が相溶系であるかどうかの指針がたつ。SP値は、例えば1993年度版の日本接着学芸誌29号(5)の8頁に記載されている。
【0016】
例としてあげれば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂などの樹脂が好ましい。これらの非相溶性樹脂の中では、白色性、耐熱性、機械特性の点から、ポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリビニル−t−ブタン、1,4−トランス−ポリ−2,3−ジメチルブタジエン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリスチレン、エチレンビニルアルコール(EVOH)、酢酸ビニルポリマー(EVA)、およびそれらの各種共重合体などを用いることができる。
【0017】
さらに好ましくは、延伸時のボイドの発生が好ましく生じるとともに、熱処理時のボイド潰れが生じにくいポリメチルペンテンが好ましい。また、これらの非相溶性樹脂は二種以上を併用して使用することもできる。
【0018】
この層中に分散した非相溶樹脂が延伸によって無数のボイドを発生させ、このボイドによって光散乱が生じるため、カーボンブラックの黒と混色して高輝度なグレーメタリック調のフィルムとなる。
【0019】
また、ボイドによる空気散乱が強すぎると金属調の外観に見えない場合があるため、延伸によって生じたボイドを、熱処理によってマトリクスを融かして埋めることにより散乱は抑えられる。この場合、輝度は低くなるものの金属調の外観に近くなることから好ましい。
【0020】
このときのポリエステル樹脂Bの好適な粒径は、分散径によって異なり、分散径を細かくすることにより、徐々にグレーメタリック調となる。好適な粒径は0.1〜30μmである。粒径が30μm以上であると、御影石のようなベルファストブラックとなり好ましくない。また、0.1μm未満とすろと、光沢感が薄まるため好ましくない。
【0021】
本発明のカーボンブラックは、導電性タイプでもよく、導電性タイプの使用は帯電防止効果が得られるのでより好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。平均粒子径は、0.01〜5μmが好ましく、0.1〜3μmの範囲にあるものがより好ましい。
【0022】
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Bの相溶化剤Cが以下の式1の範囲で添加されていることが好ましい。
【0023】
B/C=1〜5 (式1)
B:ポリエステル樹脂Bの重量%
C:相溶化剤Cの重量%
相溶化剤が添加されることにより、樹脂Bは微分散し、より高い輝度が得られるようになり好ましい。B/Cが1未満の場合、樹脂Bの分散体である白点が目視で見られるようになることから好ましくない。また、B/Cは5以上になってもさらなる微分散向上効果はないため、5以下であることが好ましい。
【0024】
本発明のポリエステルフィルムは、上記ポリエステルフィルムの少なくとも片側に実質的に透明な層が積層されていることが好ましい。実質的に無色透明な層とは、層に含まれる平均粒径が5nm以上の粒子や異物の含有量が0重量%以上0.01重量%以下であり、可視光線吸収率が5%以下で定義される。より好ましくは、平均粒径が5nm以上の粒子や異物の含有量が0重量%以上0.001重量%以下であり、可視光線透過率が1%以下である。この層の好ましい層厚みは、5μm以上50μm以下であり、この場合、ポリエステルフィルムの表面の凹凸散乱が抑えられるために、光沢のあるものとなる。より好ましい範囲は15μm以上30μm以下であり、この場合、光沢がありさらに表面の鮮明さもましてさらに好ましいものとなる。
【0025】
また、本発明のポリエステルフィルムは、その表面に易接着層、易滑層、ハードコート層、帯電防止層、耐摩耗性層、反射防止層、色補正層、紫外線吸収層、印刷層、金属層、透明導電層、ガスバリア層、ホログラム層、剥離層、粘着層、エンボス層、接着層などの機能性層を形成してもよい。
【0026】
本発明のポリエステルフィルムを用いた成形体は、ポリマーのみから構成することが可能であり、金属や重金属などを含まないため、環境負荷が小さく、リサイクル性にも優れ、電磁波障害を起こさないものである。また、真空成形、真空圧空成形、プラグアシスト真空圧空成形、インモールド成形、インサート成形、冷間成形、プレス成形などの各種成型法が適用できるため、低コストで成形体を得ることが可能である。本発明の成形体は、自動車内装や外装、携帯電話、各種家電製品、建材部品などの金属調装飾材として好適である。
【0027】
次に、本発明の積層フィルムの好ましい製造方法を以下に説明する。
【0028】
ポリエステル樹脂Aおよびポリエステル樹脂Bをペレットなどの形態で用意する。ここで、樹脂Aまたは樹脂Bはカーボンブラックを含んでなることが好ましいが、カーボンブラックのマスターペレットCを別途添加することも可能である。このペレットは、必要に応じて、熱風中あるいは真空下で乾燥された後、押出機に供給される。押出機内において、融点以上に加熱溶融された樹脂は、ギヤポンプ等で樹脂の押出量を均一化され、フィルタ等を介して異物や変性した樹脂などを取り除かれる。また、表面に光沢感を持たせるために、透明な層を設ける場合は、2種類の熱可塑性樹脂を同様にして、2台の押出機にて加熱溶融を行い、積層装置に送り込む。積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィールドブロック、ピノール等を用いて、片面もしくは両表層を透明樹脂で積層する方法を使用することができる。
【0029】
次にダイにて目的の形状に成形された後、吐出される。そして、ダイから吐出されたシートは、キャスティングドラム等の冷却体上に押し出され、冷却固化され、キャスティングフィルムが得られる。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させることが好ましい。また、スリット状、スポット状、面状の装置からエアーを吹き出してキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させたり、ニップロールにて冷却体に密着させ急冷固化させる方法も好ましい。
【0030】
このようにして得られたキャスティングフィルムは、必要に応じて二軸延伸することが好ましい。二軸延伸とは、長手方向および幅方向に延伸することをいう。延伸は、逐次に二方向に延伸しても良いし、同時に二方向に延伸してもよい。また、さらに長手方向および/または幅方向に再延伸を行ってもよい。
【0031】
逐次二軸延伸の場合についてまず説明する。ここで、長手方向への延伸とは、フィルムに長手方向の分子配向を与えるための延伸を言い、通常は、ロールの周速差により施され、この延伸は1段階で行ってもよく、また、複数本のロール対を使用して多段階に行っても良い。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+100℃が好ましい。
【0032】
このようにして得られた一軸延伸されたフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。
【0033】
また、幅方向の延伸とは、フィルムに幅方向の配向を与えるための延伸を言い、通常は、テンターを用いて、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、幅方向に延伸する。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+120℃が好ましい。こうして二軸延伸されたフィルムは、樹脂Bが非相溶であるために、樹脂A内で無数のボイドが発生するため、フィルムの黒とボイドによる光散乱とが混ざり合い、色調が黒から高輝度なグレーへと変化する。
【0034】
また、平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で、ポリエステル樹脂Aまたはポリエステル樹脂Bの延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましい。また、フィルムが白すぎる場合、熱処理温度を樹脂Aまたは樹脂Bの融点以上とすることにより、輝度が抑えられる。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に弛緩処理などを併用してもよい。
【0035】
同時二軸延伸の場合について次に説明する。同時二軸延伸の場合には、得られたキャストフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。
【0036】
次に、キャストフィルムを、同時二軸テンターへ導き、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時および/または段階的に延伸する。同時二軸延伸機としては、パンタグラフ方式、スクリュー方式、駆動モーター方式、リニアモーター方式があるが、任意に延伸倍率を変更可能であり、任意の場所で弛緩処理を行うことができる駆動モーター方式もしくはリニアモーター方式が好ましい。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、面積倍率として6〜50倍が好ましく、積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、面積倍率として8〜30倍が特に好ましく用いられる。特に同時二軸延伸の場合には、面内の配向差を抑制するために、長手方向と幅方向の延伸倍率を同一とするとともに、延伸速度もほぼ等しくなるようにすることが好ましい。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+120℃が好ましい。
【0037】
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましい。この熱処理の際に、幅方向での主配向軸の分布を抑制するため、熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理を行っても良い。熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理する。
【実施例】
【0038】
本発明に使用した物性値の評価法を記載する。
(物性値の評価法)
(1)ガラス転移温度(Tg)・融点(Tm)・結晶融解熱量
示差熱量分析(DSC)を用い、JIS−K−7122(1987年)に従って測定・算出した。吐出後、すぐに10℃以下の冷水で冷却した溶融混練ポリエステルチップを、25℃から290℃まで5℃/minで昇温した。このとき、結晶融解時のピークトップを融点とし、ベースラインからの積分値を結晶融解熱量とした。
装置:セイコー電子工業(株)製”ロボットDSC−RDC220”
データ解析”ディスクセッションSSC/5200”
サンプル質量:5mg
(2)屈折率
ポリエステルチップを、120℃・5時間真空乾燥後、溶融押出機にてフィルム上に押し出した。得られた約100μmのフィルムを、長さ3×2cmの寸法で切り出し、アッベ屈折率計4T(アタゴ(株)製)を用いて屈折率を求めた。光源は、ナトリウムD線 波長589nmを用いた。なお、浸液には、ヨウ化メチレン、テストピースの屈折率は、1.74のものを用いた。
(3)固有粘度
オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度から、算出した。また、溶液粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。単位は[dl/g]で示した。なお、n数は3とし、その平均値を採用した。
(4)光沢度
JIS−7105(1999年度 JISハンドブック記載)のプラスチックの光学的特性試験方法に従い、デジタル変角光沢計UGV−5D(スガ(株)製)を用いて測定した。黒色ガラス板(60°で光沢度89.5)にて調整後、1つのサンプルについて3回測定を行い、その平均を求めた。
(5)明度
サンプルを5cm×5cmで切り出し、コニカミノルタ(株)製CM−3600dを用いて、測定径φ8mmのターゲットマスク(CM−A106)条件下で正反射光を除去したSCE方式および、全反射光を捉えたSCI方式のL*値(明度)を測定し、n数3の平均値を求めた。なお、白色校正板はCM−A103、ゼロ校正ボックスはCM−A104を用いた。
(6)電磁波透過性
サンプルをフィルムを20cm×20cmにカットし、(社)関西電子工業振興センターのKEC法にて、電磁波透過性を測定した。測定は0.1〜1000MHzまでの周波数範囲で行った。電界透過性に関しては300MHzでの減衰率で表した。なお、1つのサンプルについて3回測定を行い、値が安定している部分での平均を求めた。
(7)外観
フィルムの表面を観察したときに次のような判定基準にて判断した。
◎:色がグレーであり、高い光沢感と輝度を有する。
○:色がグレーであり、ある程度の光沢感と輝度を有する。
△:ある程度の光沢感と輝度を有するものの、色が白っぽいためにグレーに見えない。
×:色がグレーではない、あるいは透明である。
(8)断面観察
フィルム断面は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、電子顕微鏡観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡HU−12型((株)日立製作所製)を用い、フィルムの断面を1000倍〜5000倍に拡大観察し、断面上の粒径を測定した。
(実施例1)
ポリエステル樹脂Aとして、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル樹脂Bとして、三井住友ポリオレフィン(株)製のポリオレフィン(PP)U44N2を1重量%、カーボンブラックを0.02重量%添加した原料を用い、180℃で3時間乾燥した後、押出機に供給した。280℃に溶融加熱された原料は、20μmのフィルタにて濾過した後、Tダイに導きシート状に押出して溶融シートとした。該溶融シートを表面温度25℃に保たれた冷却ドラム上に静電荷法で密着冷却こさせ未延伸フィルムを得た。
【0039】
続いて、該未延伸フィルムを常法に従い8℃に加熱されたロール群を用いて長手方向に3.2倍延伸し、25℃のロール群で冷却した。さらに、該延伸フィルムをテンターに導き125℃に加熱された雰囲気中で長手方向に垂直な方向に3.4倍延伸した。その後、テンター内で220℃の熱固定を行い均一に徐冷後巻き取り、厚み100μmの微細気泡含有フィルムを得た。このときのPPの粒径は
10〜25μであった。かくして得られたフィルムの特性は、表1の通りであり、グレーメタリックなフィルムが得られた。
(実施例2)
ポリエステル樹脂Bとして、三井化学製ポリメチルペンテン(PMP)DX820を1重量%、カーボンブラックの添加量を0.06重量%、相溶化剤である分子量40000のポリエチレングリコール(PEG)を0.1重量%添加した以外は実施例1と同様の方法にて製膜を行った。このときのPMP結果を表1に示す。
(実施例3)
ポリエステル樹脂BとしてPMPを5重量%、カーボンブラックの添加量を2.5重量%、PEGの添加量を1.5重量%とした以外は実施例1と同様の方法にて製膜を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
A/B2層のピノールを用いて、2層複合フィルムとした。実施例3の溶融シートと、固有粘度0.65のPETを、積層比10/1の比率で積層を行った以外は、実施例3と同様に製膜を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
PMPの添加量を15重量%、PEGの添加量を3重量%とした以外は実施例4と同様にして行った。結果表1に示す。
(比較例1)
PMPの添加量を20重量%、PEGの添加量を3重量%とした以外は実施例3と同様にして行った。結果表1に示す。拡散光が強すぎるために外観がかなり白っぽくなってしまった。
(比較例2)
PMPの添加量を1重量%、カーボンブラックの添加量を3.3重量%とした以外に、PEGの添加量を0.1重量%とした以外は実施例3と同様にして行った。結果表1に示す。性能としては問題ないが、カーボンブラックの量が多いことにより、横延伸時の破断が生じやすかった。
(比較例3)
ポリエステル樹脂Bのかわりに、粒径160nmのコロイダルシリカを使用した。それ以外の条件は実施例1と同様にした。結果表1に示す。白色なフィルムが得られた。
(比較例4)
カーボンブラックを2.5重量部添加して実施例1と同様にして製膜したPETフィルム上に、メルク製Xiralic T60−10WNT(粒子サイズ5μm)を、ドライ厚み2μmとなるようにして、メタバーで塗布し、110℃で1分間乾燥を行った。このフィルム物性を表1に示す。光輝性があるものの、外観はかなり白っぽさが目立った。
(比較例5)
カーボンブラックを2.5重量部添加して実施例1と同様にして製膜したPETフィルム上に、Wolstenholme社製クラシックインキ(商標名)を、ドライ厚み10μmとなるように刷毛塗りして、110℃で5分間乾燥を行った。このフィルム物性を表1に示す。結果表1に示す。外観としてはもっとも優れているが、電磁波透過性が悪かった。
【0040】
【表1−1】

【0041】
【表1−2】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、グレーな光沢を有するフィルムに関するものである。更に詳細には、本発明は、装飾用部材、例えば自動車用外部材、携帯電話の装飾材などに用いられる意匠性フィルムもしくはその成型体に関するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂A、および、それと非相溶なポリエステル樹脂B、カーボンブラックからなるポリエステルフィルムであって、フィルム中にポリエステル樹脂Bが1.0重量%〜15重量%、カーボンブラックが0.01重量%〜3重量%含まれていることを特徴とするポリエステルフィルム。
【請求項2】
ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Bの相溶化剤Cが以下の式1の範囲で添加されている請求項1に記載のポリエステルフィルム。
3≦B/C≦10 (式1)
B:ポリエステル樹脂Bの重量%
C:相溶化剤Cの重量%
【請求項3】
上記ポリエステルフィルムの少なくとも片側に実質的に透明な層が積層されている請求項1または2に記載のポリエステルフィルム。
【請求項4】
ポリエステル樹脂Bがポリオレフィンである請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項5】
ポリエステル樹脂Bがポリメチルペンテンである請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2009−46567(P2009−46567A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213350(P2007−213350)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】