説明

ポリエステルペレットを熱処理する方法

部分結晶作用を達成するために、PETパレットを熱処理する方法であり、ポリエステル溶融物は、水中造粒機に供給され、粒状化される。得られた粒状体は水/固体セパレータに導入され、乾燥した粒状体は100℃以上の粒状体温度で運動装置に導入され、当該運動装置を粒状体は100°以上の温度で出る。更に本発明はこの方法を実施するための装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶作用を達成するために、ポリエステルパレットを熱処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)はエステル基を繰り返すポリエステルである。
【0003】
PETは様々な構造において、即ち、アモルファス(非結晶質)形態若しくは結晶質形態若しくは部分結晶質形態において存在し得る。そして非結晶質PETが大部分透明である一方、結晶質PETは不透明若しくは白色である。非結晶質又は結晶質形態で存する熱可塑性物質すべての場合のように、PETの場合も100%の結晶度は可能でない。PET構造の一部だけが、配向する状況に、要するに結晶する状況にある。結晶範囲と非結晶範囲は交互に現れる。それゆえ厳密に言って、部分結晶が使用に適した用語である。
【0004】
PETの場合、パレットや顆粒物が互いにくっつく事態を防ぐために、約50%の結晶度を達成するのがよい。これは、この状態で分子鎖の半分が互いに配向し、要するに互いに平行に隣り合っておかれるか、円形に巻かれていることを意味する。必然的に、部分結晶質領域において分子鎖間の相互作用(ファン・デル・ワールス力)が大きくなる。それで鎖は相互に引き寄せ合い、分子間の隙間が小さくなる。
【0005】
熱可塑性材料として、PETは250℃の温度で成形可能である。その際、分子鎖は、プラスチック材料が溶融してほぼ任意の形状に形成され得る粘性塊となるように、動かされる。冷却の際、分子鎖は再び固まり、プラスチック材料は所望形状に凝固する(単純で何度でも繰り返し得る原則)。この手法は、例えばPETボトルの製造の際にも用いられる。第1段階において、所謂プリフォーム(母材)が作られる。PETボトルの前駆体として、このプリフォームは既に、最終的なねじ山を有している。適当なボトルにするために、プリフォームは再び100℃で柔らかくされ、圧縮空気で伸ばされボトルにブローされる(ストレッチブロー成形プロセス)。
【0006】
顆粒形状の結晶質PETの製造は、これまで、大規模で複雑な渦層乃至流動床法を伴い、これは大きな投資と高いランニングコストを必要とした(特許文献1)。
【0007】
PET顆粒物は、当該顆粒物が合着から固く殆ど加工することができない塊になることを避けるべく、材料がねばねばになる温度よりも低い温度で結晶化されなければならない。結晶質ポリエステルの溶解温度は240〜250℃の範囲にあるけれども、既に結晶化の前に約70℃を超える温度でねばねばしている。
【0008】
乾燥PET顆粒物を製造するための連続方法が知られている限りでは、だいたいにおいて長い結晶化時間を要するので非常に大きな設備が必要である。
【0009】
それで例えば特許文献2では、ポリエステルパレットを処理容器に導入し、液状媒体も同様にこの容器に導入し、パレットと液状媒体を互いに混合するパレット熱処理のための方法が提案されている。この際、加圧水あるいは所謂過熱水が液状媒体として提案プロセスで用いられる。煮沸温度は反応容器内の圧力の変化によって容易に制御可能である。実施例では、ポリエステルパレットが120°〜182℃で処理される。水は160℃で導入され、液状状態に維持され反応器ユニットにおける圧力を7kg/cm以上に保ってパレットと混合される。そのような方法が著しくコスト高で、経済的に殆ど実施されないことは明らかである。
【0010】
空力的な処理で作用する公知の方法も、大量の不活性ガスを用いるという重大な欠点を有する。ここでもエネルギーコストと方法コストが実用的なラージスケールでの適用にとって高すぎる。
【0011】
従来技術において材料を十分に結晶化するために、要するに結晶化プロセスに十分な外部エネルギー若しくは熱量を供給することが常に必要であった。これら既述の問題はこれまでPETリサイクルを困難なものにしていた。
【0012】
【特許文献1】DE19848245A
【特許文献2】US5532335A
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の基礎をなす課題は、外部エネルギー若しくは熱量の供給なしで済み、長い滞留時間を必要としないPET顆粒物の結晶化のための方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の基礎をなすこの課題は、主たる請求項の教示によって解決される。
有利な態様は従属請求項に説明されている。
【0015】
言い換えれば、PET原料を押し出し機において適温で押し出し成形することが提案される。その後、汚染物質が例えば篩い交換技術(Siebwechslertechnik)を用いて濾し出される。ポリマー溶融物は「水中・熱裁断・顆粒化システム」(以下「水中顆粒化」と称する)に供給され、水中顆粒化のために球体形状又はレンズ形状を有し高い核心温度を備える顆粒物に加工される。
【0016】
このPET顆粒物は搬送ラインを介して高速で水/固体分離装置へ搬送され、その際、搬送媒体として特に98℃までの熱水が用いられる。本発明に係る方法の有効性のための重要な点は、顆粒化室と水/固体分離装置の間の比較的短い搬送路である。
【0017】
PET顆粒物は、当該PETの押し出し成形温度をできるだけ長く維持し続けることが配慮されるので、130〜180℃の核心温度で水/固体分離装置を離れる。
【0018】
この温度を有する顆粒物は、結晶化が始まる際に、動きを受けている。本発明に係る方法に従うこの結晶化は固有熱(Eigenwaerme)によって引き起こされ、それで製品、即ち、顆粒物がもはや丸く固まったり、もはや互いにくっつくことがない。この作用はまた、結晶化される製品が球体形状やレンズ形状を有して接触面をできるだけ小さくすることによって、強められる。
【0019】
運動段階にある球体顆粒物の滞留時間は例えば3〜8分であり、この段階を通過後、PET顆粒物は40%以上結晶化され、100℃を超える温度である。顆粒物がもはやねばねばしていないので、熱いPET顆粒物の貯蔵庫又は後処理ステーションへの搬送が可能である。
【0020】
本発明は更に、顆粒物の動きを効果的に可能にする装置を提案する課題を基礎とする。
顆粒物のための運動装置として、特に所謂結晶化樋(Kristallisationsrinne)が予定される。この結晶化樋は、その構造において、顆粒物搬送樋に類似しているが、搬送方向で見て、堰によって互いに分けられた相前後するチャンバーに分かれている。結晶化樋は振動モータを有し、その中にある顆粒物を持続的に動かし、その固有エネルギーを他の顆粒物に与え得る。個々のチャンバーにおいてPET顆粒物の循環が起き、顆粒物のくっつきはもはや可能でない。
【0021】
本発明に係る方法と本発明に係る装置とで、PET顆粒物の穏やかで経済的で迅速な結晶化が達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施例を以下に図面に基づき説明する。
図1において、符号1でメルトポンプと篩い交換器を示す。上記篩い交換器に矢印Fに対応してポリエステルが供給される。篩い交換器の出口に水中造粒機2が備えられ、これによって球体形状若しくはレンズ形状の顆粒物が製造される。この顆粒物は搬送装置によって水/固体分離装置3、例えば遠心分離機へ導かれる。その際、搬送は好ましくは80°以上の温度を有する処理水によって行われる。顆粒物は水/固体分離装置3を110°以上の温度で離れ、搬送樋4に供給される。当該搬送樋には符号5で空気が供給され、搬送装置4を符号6で出て、湿気の排出がなされる。搬送装置4は、搬送方向に対して直交する堰7を備えた搬送樋として形成される。顆粒物は100°以上の顆粒物温度で搬送装置4を離れ、所謂顆粒物スイッチ8を介して後処理装置9か貯蔵庫10のいずれかへ供給され得る。この顆粒物は40%以上結晶化され良好な取り扱い性となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るポリエステルパレットの熱処理方法を実施するための装置の図である。
【符号の説明】
【0024】
1 メルトポンプと篩い交換器
2 水中造粒機
3 水/固体分離装置
4 搬送樋
7 堰
8 顆粒物スイッチ
9 後処理装置
10 貯蔵庫


【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分結晶化を達成するためにポリエステルパレットを熱処理する方法において、ポリエステル溶融物が水中造粒機に供給され、粒状にされ、得られた顆粒物が水/固体分離装置に送り込まれ、乾燥した顆粒物が100℃より高い顆粒物温度で運動装置に送り込まれ、顆粒物は80°以上の顆粒物温度で当該運動装置を離れることを特徴とする方法。
【請求項2】
顆粒物が運動装置に110°以上の顆粒物表面温度で送り込まれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
顆粒物が運動装置上で動いている間に流体によって運ばれることを特徴する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
顆粒物が運動装置上で動いている間に流体によって流れ過ぎられることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
水中造粒機から水/固体分離装置への顆粒物の搬送が熱い処理水を用いて行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
処理水の温度が98℃であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
部分結晶化をもたらす熱処理が顆粒物中に存する固有熱を用いて行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
メルトポンプと篩い交換器と水中造粒機を用いて部分結晶化を達成するためにポリエステルパレットを熱処理する方法を実施するための装置において、水中造粒機(2)と水/固体分離装置(3)に、顆粒物搬送のためのコンベア装置(4)が後続し、この搬送装置(4)上で顆粒物が動かされ、当該顆粒物自身の熱によって搬送の間に結晶化されることを特徴とする装置。
【請求項9】
コンベア装置(4)が振動コンベア装置として構成されていることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
コンベア装置(4)が搬送樋として構成されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の装置。
【請求項11】
搬送樋(4)の長さにわたって分配し互いに間隔をおき夫々材料バックアップを生じる堰を備えることを特徴とする前記請求項の1つ又は多数に記載の装置。
【請求項12】
コンベア装置(4)がケーシングによって少なくとも部分的に取り囲まれていることを特徴とする前記請求項の1つ又は多数に記載の装置。
【請求項13】
水/固体分離装置(3)として遠心分離機が備えられていることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分結晶化を達成するためにポリエステルパレットを熱処理する方法において、
ポリエステル溶融物が水中・熱裁断・顆粒化システムに供給され、粒状にされ、
得られた顆粒物が上記水中・熱裁断・顆粒化システムから短い移送路で水/固体分離装置に送り込まれ、
乾燥した顆粒物が次いで外部エネルギー乃至熱の供給なしに110℃より高い顆粒物温度で運動装置に送り込まれ、
部分結晶化をもたらす熱処理が、上記顆粒物に存する固有熱を用いてなされることを特徴とする方法。
【請求項2】
顆粒物が運動装置上で動いている間に流体によって運ばれることを特徴する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
顆粒物が運動装置上で動いている間に流体によって流れ過ぎられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
水中造粒機から水/固体分離装置への顆粒物の搬送が熱い処理水を用いて行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
処理水の温度が98℃であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
顆粒物が運動装置を80°以上の顆粒物温度中で離れることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
メルトポンプと篩い交換器と水中造粒機を用いて部分結晶化を達成するためにポリエステルパレットを熱処理する方法を実施するための装置において、水中・熱裁断・造粒機(2)と水/固体分離装置(3)に、顆粒物搬送のためのコンベア装置(4)が後続して、上記顆粒物を持続的に動かし、当該顆粒物が顆粒物の体熱によって搬送の間に結晶化されることを特徴とする装置。
【請求項8】
コンベア装置(4)が振動コンベア装置として構成されていることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
コンベア装置(4)が搬送樋として構成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の装置。
【請求項10】
搬送樋の長さにわたって分配し互いに間隔をおき夫々材料バックアップを生じる堰を備えることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
コンベア装置(4)がケーシングによって少なくとも部分的に取り囲まれていることを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
水/固体分離装置(3)として遠心分離機が備えられていることを特徴とする請求項7に記載の装置。

【公表番号】特表2006−526049(P2006−526049A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508127(P2006−508127)
【出願日】平成16年8月7日(2004.8.7)
【国際出願番号】PCT/DE2004/001778
【国際公開番号】WO2005/044901
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(502263570)ベーカーゲー ブルックマン ウント クライエンボルク グラヌリールテヒニーク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】