説明

ポリエステルペレット

【課題】
本発明は、再利用性に優れ、かつ優れた透明性を有し着色が少なく、パソコンのCPU(中央処理装置)用途の基材フィルムなどに好適に用いることができるポリエスペレットを提供することにある。
【解決手段】
下記(1)の条件を満たす回収したポリエステルを用いて得られる、下記(2)及び(3)の条件を満たすポリエステルペレット。
(1)回収したポリエステルの水分量は500ppm以下である。
(2)ポリエステルペレットの固有粘度は0.4〜0.7dl/gである。
(3)ポリエステルペレットのb値は13以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回収したポリエステルを使用して得たポリエステルペレット(以下、回収したポリエステルを用いて得られるポリエステルペレットを、再生ポリエステルペレットということがある。)に関するものであり、更に詳しくは本発明の再生ポリエステルペレットを単独に使用することもできるが、さらにバージンペレットに混合させることもでき、着色を抑え透明かつ製膜可能な再生ポリエステルペレットに関する。種々の用途に適用できるが、特にパソコンのCPU(中央処理装置)用途の基材フィルムなどに好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは、機械的性質、電気的性質、寸法安定性、透明性、耐熱性などに優れた性質を有することから磁気記録材料、包装材料、電気絶縁材料、各種写真材料、グラフィックアーツ、印刷材料などの多くの分野の基材フィルムとして広く使用されている。また、近年環境への意識の高まりにより、従来は廃棄されていたポリエステルフィルムを回収し、再度、着色の少ない透明な再生ポリエステルペレットへ戻すことが望まれている。
【0003】
ポリエステルフィルムを製造する際には、必ず屑フィルムが生じる。例えば、立上げるまでの間に発生したフィルム屑や、または製品から切断除去したフィルム端部等の屑フィルムについて再利用またはリサイクルする方法が試みられてきた。しかし、回収したフィルム屑からなるポリエステル屑を再生ポリエステルペレットにするには溶融押出して成形する必要がある。溶融には熱を与えることとなり、熱劣化による変色が起こり透明性を維持することが困難とされている。また、熱劣化を低減させると固有粘度が低下し、再生ポリエステルペレットを利用したフィルムの製造工程において破れといった不具合が生じる。回収したポリエステルから再生ポリエステルペレットを製造することにおいて透明性を維持し、かつ固有粘度を保持させることは重要な課題となっている。
【0004】
特許文献1を例として、回収した固有粘度1.0〜1.4dl/gのポリエステル屑(A)を固有粘度0.5〜1.0のバージンポリエステル(B)に混合することで得られる難燃性再生原着ポリエステル繊維の再利用方法が提供されている。この文献によると再生ポリエステルの固有粘度が高いことから製膜性に不具合が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−259405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
着色を抑えて透明性を付与する方法としては、通常、製膜中の熱劣化を低減させることが重要である。
【0007】
しかしながら、一般にこの熱劣化を低減させようとすると固有粘度を下げる必要があり、フィルム製造工程において破れといった不具合が生じやすい。着色を抑えて透明性を有するフィルムを得るための、再生ポリエステルペレットを製造することは重要な課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下である。
【0009】
下記(1)の条件を満たす回収したポリエステルを用いて得られる、下記(2)及び(3)の条件を満たすポリエステルペレット。
(1)回収したポリエステルの水分量は500ppm以下である。
(2)ポリエステルペレットの固有粘度は0.4〜0.7dl/gである。
(3)ポリエステルペレットのb値は13以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の再生ポリエステルペレットを利用し、単独に、或いはバージンペレットと混合してフィルムを得た場合、着色が比較的少なく優れた透明性を有するフィルムとすることができる。そのため、本発明のポリエステルペレットは、特にパソコンのCPU(中央処理装置)用途の基材フィルムなどに好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のポリエステルペレットは、下記(1)の条件を満たす回収したポリエステルを用いて得られる、下記(2)及び(3)の条件を満たすポリエステルペレットである。
(1)回収したポリエステルの水分量は500ppm以下である。
(2)ポリエステルペレットの固有粘度は0.4〜0.7dl/gである。
(3)ポリエステルペレットのb値は13以下である。
【0012】
以下、発明の各要件について詳細に説明する。
【0013】
本発明の再生ポリエステルペレットは、ポリエステルフィルムやポリエステル繊維などから回収したポリエステルを原料として作製したものである。回収したポリエステルとは、例えばポリエステルフィルムについていうと、製造工程において、トラブルが発生して不良となったフィルムや、フィルム端部の製品としては不要となった屑フィルムなどであり、特に限定されるものではない。
【0014】
本発明においては、回収したポリエステルッペレットの水分量を500ppm以下にすることが必要である。フィルムの製造工程から回収したフィルム屑は、大気中に放置することによって水分量が通常、1000〜2500ppmに増大する。このような水分を多く含んだ屑フィルムを用いると、再生ポリエステルペレットを製造する際に加水分解が起こりやすく、フィルム強度が低下し、黄変する問題が発生する。回収したポリエステルの水分量を500ppm以下にすれば、上記のような問題は解決される。なお、回収したポリエステルッペレットの水分量を500ppm以下にするとは、質量を基準として判断する。
【0015】
水分の除去方法としては、例えばフィルム屑を粉砕し、嵩密度、形状を変化させて表面積を増やし、熱伝達性を向上させながら温度100〜160℃、時間20〜45分で乾燥する。
【0016】
また本発明のポリエステルペレットの固有粘度は0.4〜0.7dl/gの範囲内にすることが必要である。固有粘度が0.4dl/g未満になると、再生ペレットを使用して得られたフィルムの機械的強度が低くなりすぎ、一方、0.7dl/gを超えると、溶融粘度が高くなりことに伴い製膜性が不良となり、平滑なフィルムが得ることが困難になる。
【0017】
また、本発明のポリエステルペレットは、その色調、特に黄味−青味を示すb値が13以下であることが重要である。再生ポリエステルペレットのb値が13を超えると、製膜して得られたフィルムの黄味が強くなり、劣化、変色といった印象を与え商品価値が損なわれる。一方、再生ポリエステルペレットのb値下限については限定されないものの、通常は7近辺である。
【0018】
再生ポリエステルペレットの具体的な作製方法を具体的に述べる。先ず、乾燥したフィルム屑を押出機にて溶融し、ダイからストランド状に吐出せしめて冷水で急冷固化させる。押出機での溶融を温度260〜270℃、時間15〜30分とすることによって熱劣化を抑制する。更に真空ポンプを用いて真空引きし30mbar以下とし、熱伝達性を向上させることが望ましい。また、固化したストランドはストランドカッタにてペレット形状に切断した後、フィルム製膜時の乾燥工程で融着を防ぐために、熱風乾燥機等でペレットの表面を結晶化させてもよい。
【0019】
本発明の再生ポリエステルペレットを単独に用いてフィルムを製造する方法も有用であるが、バージンのポリエステルペレットに本発明の再生ポリエステルペレットを混合して使用することもできる。フィルム総重量の50重量%以上含有することにより、(財)日本環境協会エコマーク事務局からエコマークの認定を受けることができ、環境への意識を強くPRすることが可能となる。
【0020】
このようにして得られた再生ポリエステルペレットは、再利用性が高いので環境への負荷が小さく、かつ、透明で着色の少ないパソコンのCPU(中層処理装置)用途の基材フィルムなどに好適に用いることができる。
【実施例】
【0021】
本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0022】
(物性値の評価法)
(1)回収したポリエステル(フィルム)の水分量
三菱化成製微量水分測定装置CA−02を用いてカールフィッシャー法によって測定した。また、電量滴定用試薬としては、発生液層にアクアミクロン(商品名、三菱化成製)、対極液層にアクア≧クロンCミツビシ(商品名、三菱化成製)をそれぞれ用いた。
【0023】
(2)ペレット、フィルムの色調 b値
粒径4mm以下のペレットを、測定用石英セル(φ=50mm、高さ20mm)に充填し、色差計(スガ試験機社製、SMカラーコンピュータ型式SM−T45)を用いて、ハンター色度のペレットのb値を測定した。
一方、フィルムのb値はNIPPON DENSHOKU社製分光式色彩計SE−2000を使用し、JIS−K−7105(1981年)に従い透過法で測定した。
【0024】
(3)ペレットの固有粘度
サンプルをオルトクロロフェノールに溶解させる。溶解しない部分は取り除き、溶解する部分について粘度の測定を行う。オルトクロロフェノール中、オストワルド粘度計を用いて25℃で測定したサンプルの粘度を溶液粘度とした。
【0025】
また、オルトクロロフェノールのみをオストワルド粘度計を用いて25℃で測定した粘度を溶媒粘度とした。そして、得られた溶液粘度と溶媒粘度とから、下式により計算される値を、ペレットの固有粘度とした。
η sp/C=[η]+K[η]・C
ここで、η sp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1、Cは溶媒100ml当たりの溶解ポリマー重量(g/100ml)、Kはハギンス定数(0.343とする)、[η]はペレット(サンプル)の固有粘度(単位は(dl/g))である。
【0026】
(4)厚み
フィルムの全体厚みを測定する際は、ダイヤルゲージを用いて、フィルムから切り出した試料の任意の場所5ヶ所の厚みを測定し、平均して求めた。
【0027】
(5)ヤング率
ASTM−D882(1997年)準拠してフィルムのヤング率を測定する。なお、インストロンタイプ引張試験器を用い、5回の測定結果の平均値をヤング率とした。
測定装置:インストロン社製超精密試験器MODEL5848
試料サイズ:
フィルムTD方向の場合、フィルムMD方向2mm×フィルムTD方向12.6mm
フィルムMD方向の場合、フィルムTD方向2mm×フィルムMD方向12.6mm
引張速度:1mm/分
測定環境:温度23℃、湿度65%RH
測定回数:5回測定し、平均値から算出する。
【0028】
(6)破断強度、伸度
JIS−K−7127(1999年)に規定された方法に従って、インストロンタイプの引張試験機を用いて測定した。測定は下記の条件で行い、サンプルを変更して5回測定を行い、平均値を求めた。
測定装置:オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100”
試料サイズ:幅10mm×試長間200mm(フィルムMD方向に)
試料の形状:短冊状
引張速度:300m/分
測定環境:温度25℃、湿度65%RH
初期引張チャック間距離:100mm
(実施例1)
先ず、回収した水分量1000ppmを有するフィルム屑を粉砕し、その後、温度110℃の温度で時間45分間加熱処理して水分量を450ppmにした。この乾燥した粉砕品を270℃で30分溶融押出し、ストランド状にした。その後、ペレタイザーによってペレット状に切断、成形し、再生ポリエステルペレットを作製した。
【0029】
得られたペレット用いて、160℃で4時間乾燥した後、別々の押出機に供給した。押出機にて280℃の溶融状態とし、ギヤポンプおよびフィルターを介した後、フィードブロックにて合流させた。合流させた後はマルチマニホールドダイに供給、シート状に成形した後、静電印加にて表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化した。
【0030】
得られたキャストフィルムを、75℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間長100mmの間で、フィルム両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、縦方向に3.0倍延伸し、その後一旦冷却した。この一軸延伸フィルムをテンターに導き、100℃の熱風で予熱後、110℃の温度で横方向に3.3倍延伸した。延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で240℃の熱風にて熱処理を行い、続いて同温度にて幅方向に8%の弛緩処理を施し、その後、室温まで徐冷後、巻き取った。製膜したフィルムはパソコンのCPU(中央処理装置)用途とし、厚みが38μmで、得られた結果を表1に示す。
【0031】
(実施例2)
回収したフィルム屑を粉砕して乾燥温度120℃、時間30分として、水分量490ppmになるように乾燥させた。溶融押出し時間を20分とした。作製した再生ポリエステルペレット50質量部をバージンペレット50質量部と混合した。その他条件については実施例1と同様にした。得られた結果を表1に示す。
【0032】
(実施例3)
溶融押出し温度を265℃とした。作製した再生ポリエステルペレット20質量部をバージンペレット80質量部と混合した。そのた他条件については実施例2と同様にした。得られた結果を表1に示す。
【0033】
(比較例1)
実施例1にいて、水分量1000ppm未乾燥状態の回収したフィルム屑を用いて粉砕した。温度を270℃で60分溶融押出する。作製したポリエステルペレット20質量部をバージンペレット80質量部と混合した。その他条件については実施例1と同様にした。比較例1で得られたペレットは固有粘度が低く、破れの発生から製膜性が悪い。そして、混合して得られたフィルムにおいてはヤング率、破断強度、破断伸度が弱く混合しての使用においても評価規格を満足していない。
【0034】
(比較例2)
実施例1において、温度170℃、時間60分として、水分量350ppmになるように乾燥させた。作製した再生ポリエステルペレット100質量部で得られた結果を表1に示す。その他条件については実施例1と同様にした。比較例2で得られたペレットはb値が高い。そして、単独で得られたフィルムにおいてもb値が高く評価規格を満足していない。
【0035】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0036】
パソコンのCPU(中央処理装置)用途の基材フィルムなどに好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)の条件を満たす回収したポリエステルを用いて得られる、下記(2)及び(3)の条件を満たすポリエステルペレット。
(1)回収したポリエステルの水分量は500ppm以下である。
(2)ポリエステルペレットの固有粘度は0.4〜0.7dl/gである。
(3)ポリエステルペレットのb値は13以下である。