説明

ポリエステルモノフィラメント、その製造方法および工業用織物

【課題】これまでにない高い引掛強度特性を有効的に発現するとともに、優れた引張強度を保持し、工業用織物に使用した場合には、過酷な使用状況においてもジョイント部の破断を起こすことなく、安定で高い耐久性を保持した工業用織物に好適なポリエステルモノフィラメントとその製造方法、および工業用織物を提供する。
【解決手段】引掛強度が7.0cN/dtex以上、引張強度が2.0cN/dtex以上、引掛引張強度比率が150%以上のポリエステルモノフィラメント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規特性を有するポリエステルモノフィラメントとその製造方法、およびこのポリエステルモノフィラメントを少なくとも一部に使用した工業用織物に関するものである。さらに詳しくは、高い引掛強度と優れた引張強度を有し、工業用織物の接合強力と耐久性を飛躍的に向上させることができるポリエステルモノフィラメントとその製造方法、および工業用織物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工業用織物の形成材料としては、従来から合成樹脂モノフィラメント、中でもポリエステルモノフィラメントが広く用いられている。しかるに、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートからなるポリエステルモノフィラメントは、ポリアミドモノフィラメントに比べ吸水率が極めて低く、寸法安定性に優れ、塩素や酸化剤に侵されにくいという優れた特性を有している反面、その剛直さに起因して、引掛強度が低く、繊維軸と直行する方向に働く応力(以下、剪断応力と言う)に弱いといった欠点があった。
【0003】
一方、工業用織物として代表的なものには製紙用織物、フィルター用織物およびベルト用織物などが挙げられるが、いずれの工業用織物についても近年、一層の生産効率の向上を目指して、工程の高温度化や走行速度の高速化が図られている。このため、工業用織物に使用されるポリエステルモノフィラメントの使用環境は益々過酷となり、ポリエステルモノフィラメントの破断や織物の部分破断がしばしば発生している。中でも経糸の両端部をループ状に形成してできる接合部(以下、ジョイント部と言う)を互いに噛み合わせ、そこに芯線を通して織物の両端を接合した無端状織物においては、ジョイント部分のポリエステルモノフィラメントに高い剪断応力がかかるため、引掛強度不足により使用中に織物が突然破断するなどの深刻な問題が起きている。
【0004】
ポリエステルモノフィラメントの高強度化を目指した検討については従来から種々行われており、例えば、2セット以上のホットロールからなる多段延伸工程により製造された改良ポリエステルモノフィラメント(例えば、特許文献1参照)や、ジメチルホルムアミド水溶液に浸漬処理後、延伸する方法により製造されたポリエステルモノフィラメント(例えば、特許文献2参照)などが知られているが、いずれも高モジュラス、高引張破断強度特性は得られるものの、引掛強度の向上効果は認められないものであった。また、ポリエチレンナフタレートからなる高ヤング率かつ高引掛強度のポリエステルモノフィラメント(例えば、特許文献3および特許文献4参照)が提案されているが、このポリエステルモノフィラメントはヤング率と引掛強度の均衡化を目的としたものであり、その引掛強度は従来のポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどの他のポリエステルモノフィラメントの引掛強度レベルまで達してはいないことから、工業用織物形成材料としては強度不足なものであった。
【0005】
以上のとおり、工業用織物としての十分な引掛強度特性を有するポリエステルモノフィラメントについては未だに開発されておらず、その実現が従来から望まれていた。
【特許文献1】特開2001−279526号公報
【特許文献2】特開平7−42021号公報
【特許文献3】特開2003−268626号公報
【特許文献4】特開平7−278954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、これまでにない高い引掛強度特性と優れた強度を保持し、工業用織物とした際には過酷な使用状況においてもジョイント部の破断を起こすことなく、安定で高い耐久性を保持したポリエステルモノフィラメントとその効率的な製造方法、およびこのポリエステルモノフィラメントを少なくとも一部に使用した工業用織物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、ポリエステルモノフィラメントの特性について鋭意検討した結果、引張強度のレベルを低下させることなく、これまでにない高い引掛強度特性と優れた引張強度を有するポリエステルモノフィラメントとその製造方法を見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明のポリエステルモノフィラメントは、ポリエステル樹脂を溶融紡糸して得られるモノフィラメントであって、JIS L1013に準じて測定した引掛強度が7.0cN/dtex以上、引張強度が2.0cN/dtex以上、式(引掛強度/引張強度)×100で表される引掛引張強度比率が150%以上であることを特徴とするものである。
【0009】
また、前記ポリエステルモノフィラメントの製造方法は、ポリエステル樹脂を溶融紡糸した後、2段以上の多段延伸を行うに際し、1段目の延伸を行うに際し、0.001〜0.05MPaの水蒸気中において2.5〜6.0倍の延伸倍率で行うことを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の工業用織物は、前記ポリエステルモノフィラメントを、経糸および/または緯糸の少なくとも一部に使用したことを特徴とする。
【0011】
さらにまた、本発明の工業用織物は、経糸の少なくとも一部に前記ポリエステルモノフィラメントを使用してなり、経糸の両端をループ状に折り返してできるジョイント部を互いに噛み合わせ、ジョイント部に芯線を通して無端状にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高い引掛強度と優れた引張強度を有するポリエステルモノフィラメントを効率的に得ることができ、さらには本発明のポリエステルモノフィラメントを使用した工業用織物は、ジョイント部での破断が発生しにくく、高い耐久性を発現するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0014】
ポリエステルモノフィラメントの引掛強度が低いと、工業用織物に使用した場合、ジョイント部のループ状の経糸と芯線が互いに食い込み易くなるため、ポリエステルモノフィラメントが破断しやすくなり、工業用織物の使用寿命も短くなる傾向がある。
【0015】
また、ポリエステルモノフィラメントの引張強度が低いと、繊維軸方向の強さが十分でないため、工業用織物に使用した場合、ジョイント部で破断しやすくなるばかりか、ジョイント部以外の織物表面上でも部分破断が発生しやすくなり、特に製紙用織物とした場合には紙の表面に部分破断の跡が付き、紙の品質に支障をきたすため好ましくない。
【0016】
さらに、ポリエステルモノフィラメントの引掛引張強度比率が低いと、工業用織物に使用した場合、ジョイント部の経糸と芯線との食い込み耐久性やジョイント部以外の経糸および緯糸の一部に使用した際の強度および耐久性が、従来の工業用織物のレベルとなんら変わらないものとなり、本発明の目的とする性能を発揮することができない。
【0017】
したがって、本発明のポリエステルモノフィラメントに要求される特性は、引掛強度が7.0cN/dtex以上、引張強度が2.0cN/dtex以上、式(引掛強度/引張強度)×100で表される引掛引張強度比率が150%以上であることが必要であり、さらには、引掛強度が7.5cN/dtex以上、引張強度が3.0cN/dtex以上、引掛引張強度比率が160%以上であることが好ましい。
【0018】
なお、本発明のポリエステルモノフィラメントを構成するポリエステル樹脂については特に限定はなく、ジカルボン酸成分とグリコール成分とからなるものである。例えば、ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、2,6ーナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、1,4ーシクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられ、グリコール成分としては、エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,4―シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられ、これらのジカルボン酸成分とグリコール成分とを適宜組み合わせて使用することができる。これらのうちでも、ジカルボン酸成分の90モル%以上がテレフタル酸からなり、グリコール成分の90モル%がエチレングリコールからなるポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)が本発明にとっては最も好適である。
【0019】
また、これらのポリエステル樹脂には、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、耐熱剤、耐候剤、耐光剤、耐酸化防止剤、帯電防止剤、染料および顔料などを任意に添加することができる。
【0020】
さらに、本発明のポリエステルモノフィラメントの繊維軸方向に垂直な断面形状(以下、断面形状もしくは断面と言う)には特に限定はなく、円形、中空、扁平、正方形、半月状、三角形、5角以上の多角形、多葉状、ドックボーン状、繭型などいかなる断面形状を有するものでよいが、工業用織物を構成するポリエステルモノフィラメント、特に、工業用織物の経糸の末端部をループ状に形成してできるジョイント部を噛み合わせ、芯線を通して織物の両端を接合した無端状織物に使用する場合には、円もしくは扁平の形状であることが好ましい。本発明における扁平とは、楕円、正方形、もしくは長方形のことであるが、数学的に定義される正確な楕円、例えば正方形および長方形の角を丸くした形状を含むものである。また、楕円の場合は、この楕円の中心で直角に交わる長軸の長さをLD、短軸の長さをSD、または、正方形もしくは長方形の場合は、長方形の長辺の長さをLDと短辺の長さをSDとした場合、1.0≦LD/SD≦10の関係を満足することが好ましい。
【0021】
なお、上記断面形状の他、芯鞘複合型、海島複合型などの複合ポリエステルモノフィラメントであってもよい。
【0022】
さらにまた、本発明のポリエステルモノフィラメントの直径または断面寸法は用途によって適宜選択できるが、通常0.05〜3.0mmの範囲が最もよく使用される。
【0023】
次に、本発明のポリエステルモノフィラメントの製造方法について説明する。
【0024】
まず、ジカルボン酸成分とグリコール成分とからなる、極限粘度が0.5以上のポリエステル樹脂ペレットを乾燥後、エクストルーダー型またはメルトプレッシャー型溶融紡糸機に供給し、ギヤポンプで計量して口金ノズルから溶融押出する。次に、溶融押出されたポリエステル溶融物を冷却浴に導き急冷固化する。なおこの時、冷却浴の温度が低いと、冷却固化した未延伸糸が冷却浴内で蛇行するために線径バラツキの原因となり、逆に冷却浴の温度が高いと、未延伸糸の真円性が損なわれ、均一な線径が得られにくくなる。したがって、冷却浴の温度は40℃以上90℃以下、さらには50℃以上80℃以下が好ましい。
【0025】
ここで使用する冷却浴の冷媒としては、未延伸糸の表面から容易に除去できるものであって、ポリエステル樹脂に物理的、化学的な変化を与えず、上記の冷却液温度範囲において液状を保持し得るものであれば特に制限はなく、例えば、水、パラフィン、エチレングリコール、グリセリン、アルコールおよびキシレンなどが挙げられる。
【0026】
そして冷却固化された未延伸糸は、工業用織物用ポリエステルモノフィラメントとして極めて高い引掛強度と優れた引張強度を得るために、引き続き2段以上の多段で延伸される。この延伸工程において、柔軟な部分を含み、引掛強度が極めて高く、優れた引張強度を有するポリエステルモノフィラメントを得るためには、1段目の延伸を行うに際し、0.001MPa〜0.05MPaの水蒸気中において2.5〜6.0倍の延伸倍率で行う必要がある。この1段目の水蒸気圧が低すぎると延伸時に断糸しやすくなり、逆に高すぎると分子配向が進みすぎることから延伸張力が著しく低下し、延伸が困難となるため好ましくない。さらに、1段目の延伸倍率が低すぎると、延伸斑の原因となり、強度特性の不均一による製織時の断糸などが発生しやすくなる。逆に、延伸倍率が高すぎると繊維軸方向の分子配向が進みすぎるため、柔軟な部分を含み、引掛強度の高いポリエステルモノフィラメントが得られにくくなるため好ましくない。なお、さらに高い引掛強度特性と優れた引張強度特性を得るためには、1段目の延伸を行うに際し、0.005MPa〜0.025MPaの水蒸気圧において2.5〜4.0倍の延伸倍率で行うことが好ましい。
【0027】
1段目で延伸されたポリエステルモノフィラメントは、次に2段目以降の延伸において高沸点の不活性液体を有する液体浴、空気炉、不活性ガス炉、赤外線炉、高周波炉などの加熱装置で加熱延伸される。なお、熱媒体には、ポリエステルモノフィラメントの表面から容易に除去でき、物理的、化学的に本質的な変化を与えない物質であれば特に限定はされない。
【0028】
こうして、延伸されたポリエステルモノフィラメントは、必要に応じて弛緩熱処理された後、静電除去あるいは製織時の平滑性向上などを目的に油剤が適宜付与され、巻き取られる。
【0029】
さらに、本発明の工業用織物は、上記ポリエステルモノフィラメントを少なくとも一部に使用したものであり、具体的には抄紙網やドライヤーカンバスなどの製紙用織物、食品類搬送ベルトや汚泥処理用ベルトプレス用フィルター、砂利採取時の汚濁水処理用プレスフィルターなどのフィルター用織物、さらには不織布製造工程の製品乾燥用ベルトなどのベルト用織物などが挙げられる。特に、本発明の工業用織物は、上記のポリエステルモノフィラメントを経糸の少なくとも一部に使用し、この経糸の両端をループ状に折り返してできるジョイント部を互いに噛み合わせ、ジョイント部に芯線を通して無端状織物とした場合に、ジョイント部の経糸の強度が飛躍的に向上し、高い耐久性を実現できる。
【0030】
なお、本発明のポリエステルモノフィラメントが、抄紙ドライヤーカンバスなどの高温多湿な雰囲気中で使用される工業用織物の構成素材として用いられる場合には、ポリエステルの加水分解を抑制する目的で、各種カルボジイミド化合物、エポキシ化合物およびオキサゾリン化合物などをポリエステルモノフィラメントの構成成分として添加することもでき、特に未反応のカルボジイミド化合物を含有したものは高い耐加水分解性が得られる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0032】
なお、以下に述べる実施例における各特性の測定、評価は次の方法に従って行った。
【0033】
[繊度]
JIS L1013−1999の8.3に準じて測定した。
【0034】
[引張強度、引掛強度および引掛引張強度比率]
JIS L1013−1999の8.5および8.7に準じて引張強さと引掛強さを測定し、繊度で割返した値を引張強度および引掛強度(単位:cN/dtex)とした。また、得られた引張強度および引掛強度を用いて、式(引掛強度/引張強度)×100から引掛引張強度比率(%)を求めた。
【0035】
[ジョイントループ強度評価]
まず、直径0.40mmのポリエステルモノフィラメントを経糸に使用し、平織織物を作成した。次に、平織物の両端部の経糸をループ状に形成してできたジョイント部を互いに噛み合わせ、そこに芯線を通して無端状の平織物にした。
【0036】
この無端状の平織物をベルトプレスフィルター工程で約1ヶ月間使用し、ジョイント部におけるポリエステルモノフィラメントの破断本数発生率でジョイントループ強度評価を行った。評価基準は以下のとおりである。
○ ・・・発生率10%未満
△ ・・・発生率10〜30%未満
× ・・・発生率30%以上
【0037】
[実施例1]
東レ(株)製PET樹脂T701Tを、乾燥後、40mmφのエクストルーダー型紡糸機に連続供給し、285℃の溶融紡糸温度でノズルから押出した。その後、押し出されたポリエステル溶融物を70℃の温水浴で冷却固化し、続いて1段目延伸において得られた未延伸糸を0.01MPaの水蒸気中で3.00倍に延伸し、さらに180℃の熱風炉で全延伸倍率が5.50倍になるように2段目延伸を行った。続いて、250℃の熱風炉で15%の弛緩熱処理を行い、直径0.40mmのポリエステルモノフィラメントを得た。
【0038】
得られたポリエステルモノフィラメントの引張強度、引掛強度、引掛引張強度比率、およびジョイントループ強度評価結果を表1に示す。表1に示すとおり、引掛強度は極めて高く、引張強度も工業用織物用として十分なポリエステルモノフィラメントが得られた。
【0039】
[実施例2〜4]
1段目の延伸倍率を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同じ条件で製造した。得られたポリエステルモノフィラメントの引張強度、引掛強度、引掛引張強度比率、およびジョイントループ強度評価結果を表1に示す。表1に示すとおり、延伸倍率が高い条件(実施例4)では引掛引張強度比率が低くなる傾向にあるが、ジョイントループ強度評価においては実施例1と同等の結果が得られた。
【0040】
[実施例5]
1段目延伸の水蒸気圧を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同じ条件で製造した。得られたポリエステルモノフィラメントの引張強度、引掛強度、引掛引張強度比率、ジョイントループ強度評価結果を表1に示す。表1に示すとおり、水蒸気圧を低くしたことで引掛引張強度比率が低くなる傾向にあるが、ジョイントループ強度評価においては実施例1と同等の結果が得られた。
【0041】
[実施例6]
1段目の水蒸気圧と延伸倍率を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同じ条件で製造した。得られたポリエステルモノフィラメントの引張強度、引掛強度、引掛引張強度比率、ジョイントループ強度評価結果を表1に示す。水蒸気圧と延伸倍率をともに高くしたことで引掛引張強度比率が低くなる傾向にあるが、ジョイントループ強度評価においては実施例1と同等の結果が得られた。
【0042】
[比較例1〜4]
1段目の延伸熱媒体を90℃の温水に変更した以外は、実施例1〜4と同じ条件で製造した。得られたポリエステルモノフィラメントの引張強度、引掛強度、引掛引張強度比率、ジョイントループ強度評価結果を表1に示す。表1に示すとおり、引掛引張強度比率が実施例1〜6に比べ低く、ジョイントループ強度評価においては耐久性が実施例1〜6より劣る結果であった。
【0043】
[比較例5]
1段目の延伸倍率を1.8倍に変更した以外は、実施例1と同じ条件で行ったが、延伸斑が多発して線径の不均一なポリエステルモノフィラメントとなり、さらに2段目の延伸で断糸も発生したため、製造を中止した。
【0044】
[比較例6]
1段目の延伸倍率を6.7倍に変更した以外は、実施例1と同じ条件で行ったが、糸条の半数以上が断糸したため製造を中止した。
【0045】
[比較例7]
1段目延伸の水蒸気圧を0.0005MPaに変更した以外は、実施例1と同じ条件で行ったが、延伸時の熱量不足によって糸条の半数以上が断糸したため製造を中止した。
【0046】
[比較例8]
1段目延伸の水蒸気圧を0.100MPaに変更した以外は、実施例1と同じ条件で行ったが、延伸張力が著しく低下し、延伸が困難となったため製造を中止した。
【0047】
[実施例7]
実施例1で得られたポリエステルモノフィラメントを経糸および緯糸に使用して平織物を作成し、その平織物の両端の経糸をループ状に折り返してできるジョイント部を互いに噛み合わせ、そこに芯線を通して無端状の平織物を作成した。この無端状の平織物を汚泥処理ベルトプレスフィルターとして使用した結果、従来のポリエステルモノフィラメントを使用した同ベルトプレスフィルターより1.5倍の耐久性を示す良好な結果が得られた。
【0048】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のポリエステルモノフィラメントを少なくともその一部に使用した製紙用織物、フィルター用織物およびベルト用織物に代表される工業用織物は、過酷な使用状況においてもジョイント部の破断を起こすことなく、安定で高い耐久性を保持することから、工業用織物として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂を溶融紡糸して得られるモノフィラメントであって、JIS L1013に準じて測定した引掛強度が7.0cN/dtex以上、引張強度が2.0cN/dtex以上、式(引掛強度/引張強度)×100で表される引掛引張強度比率が150%以上であることを特徴とするポリエステルモノフィラメント。
【請求項2】
ポリエステル樹脂を溶融紡糸した後、2段以上の多段延伸を行うに際し、1段目の延伸を、0.001〜0.05MPaの水蒸気中において2.5〜6.0倍の延伸倍率で行うことを特徴とする請求項1に記載のポリエステルモノフィラメントの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のポリエステルモノフィラメントを、経糸および/または緯糸の少なくとも一部に使用したことを特徴とする工業用織物。
【請求項4】
経糸の少なくとも一部に請求項1に記載のポリエステルモノフィラメントを使用してなり、前記経糸の両端をループ状に折り返してできる接合部を互いに噛み合わせ、接合部に芯線を通して無端状にしたことを特徴とする工業用織物。

【公開番号】特開2006−28704(P2006−28704A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212519(P2004−212519)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000219288)東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【Fターム(参考)】